特許第6754308号(P6754308)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754308
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20200831BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20200831BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20200831BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20200831BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20200831BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   H01L29/78 657B
   H01L29/78 652M
   H01L29/78 652T
   H01L29/78 653A
   H01L29/78 652S
   H01L29/86 301F
   H01L29/86 301D
   H01L29/78 652K
   H01L29/78 301B
   H01L29/78 301K
   H01L27/06 102Z
   H01L27/06 311B
   H01L29/78 301G
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-19443(P2017-19443)
(22)【出願日】2017年2月6日
(65)【公開番号】特開2018-129327(P2018-129327A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 侑佑
(72)【発明者】
【氏名】杉本 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】海老原 康裕
【審査官】 杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−011846(JP,A)
【文献】 特開2009−302510(JP,A)
【文献】 特開2010−027639(JP,A)
【文献】 特開2008−218527(JP,A)
【文献】 特開2008−060416(JP,A)
【文献】 特開2015−118966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/12
H01L 29/872
H01L 27/06
H01L 21/8234
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1半導体領域と第2導電型の第2半導体領域と第1導電型の第3半導体領域を有しており、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域と前記第3半導体領域が第1方向に沿ってこの順で並んでいる半導体基板と、
前記第3半導体領域に接する第1主電極と、
前記第1方向に沿って前記第1主電極から離れている第2主電極と、
絶縁ゲート部と、
ゲート分離金属電極と、を備えており、
前記絶縁ゲート部は、
前記第1半導体領域と前記第2半導体領域と前記第3半導体領域に接するゲート絶縁膜と、
少なくとも前記第1半導体領域と前記第3半導体領域の間に位置する前記第2半導体領域の部分に前記ゲート絶縁膜を介して対向する第1導電型の半導体のゲート電極と、を有しており、
前記ゲート分離金属電極は、前記ゲート絶縁膜よりも前記第2主電極側に配置されている部分を少なくとも有しており、前記第1半導体領域と前記ゲート電極にショットキー接触しており、前記第1半導体領域と前記ゲート電極を隔てている、半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート分離金属電極は、前記第1主電極に電気的に接続されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート電極は、不純物濃度が相対的に高濃度な高濃度ゲート電極と不純物濃度が相対的に低濃度な低濃度ゲート電極を有しており、
前記高濃度ゲート電極が、前記第1半導体領域と前記第3半導体領域の間に位置する前記第2半導体領域の部分の全範囲に前記ゲート絶縁膜を介して対向しており、
前記低濃度ゲート電極が、前記ゲート分離金属電極と前記高濃度ゲート電極の間に設けられている、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1方向は、前記半導体基板の厚み方向であり、
前記第1主電極が前記半導体基板の表面に設けられており、
前記第2主電極が前記半導体基板の裏面に設けられており、
前記絶縁ゲート部が、前記半導体基板の前記表面から前記第3半導体領域及び前記第2半導体領域を貫通して前記第1半導体領域に侵入するトレンチ内に設けられており、
前記ゲート絶縁膜は、前記トレンチの側面を被覆しており、
前記ゲート電極は、前記トレンチの底面に露出しており、
前記ゲート分離金属電極が、前記トレンチの底面に露出する前記ゲート電極にショットキー接触する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板の前記厚み方向に沿って伸びており、前記ゲート分離金属電極に接する接続領域をさらに有しており、
前記接続領域は、前記半導体基板の前記表面に直交する方向から観測したときに、前記絶縁ゲート部の長手方向の端部よりも外側に配置されており、
前記ゲート分離金属電極は、前記接続領域を介して前記第1主電極に電気的に接続されている、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記接続領域は、第2導電型の半導体である、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1半導体領域がドリフト領域であり、前記第2半導体領域がボディ領域であり、前記第3半導体領域がソース領域であり、第1主電極がソース電極であり、第2主電極がドレイン電極である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と称される半導体装置は、トレンチ型又はプレーナ型の絶縁ゲート部を備えることが多い。例えばMOSFETを例にすると、このような半導体装置では、絶縁ゲート部のドレイン側端部のゲート絶縁膜に電界が集中するという問題が知られている。特許文献1は、このような電界集中を緩和するために、トレンチ型の絶縁ゲート部の底部、即ち、絶縁ゲート部のドレイン側端部のゲート絶縁膜に接するようにp型の電界緩和領域を設ける技術を開示する。電界緩和領域は、絶縁ゲート部のドレイン側端部のゲート絶縁膜に集中する電界を緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−98188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電界緩和領域が設けられていても、絶縁ゲート部のドレイン側端部のゲート絶縁膜に集中する電界によってゲート絶縁膜が絶縁破壊し、半導体装置の信頼性が低下することが懸念される。本明細書は、ゲート絶縁膜の絶縁破壊を抑制し、信頼性の高い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体装置は、例えば縦型又は横型のMOSFET、縦型又は横型のIGBTを含むことができる。本明細書が開示する半導体装置の一実施形態は、半導体基板、第1主電極、第2主電極、絶縁ゲート部及びゲート分離金属電極を備えることができる。半導体基板は、第1導電型の第1半導体領域と第2導電型の第2半導体領域と第1導電型の第3半導体領域を有しており、第1半導体領域と第2半導体領域と第3半導体領域が第1方向に沿ってこの順で並んでいる。半導体装置が縦型の場合、第1方向が半導体基板の厚み方向であり、第1半導体領域と第2半導体領域と第3半導体領域が半導体基板の厚み方向に沿ってこの順で並んでいる。半導体基板が横型の場合、第1方向が半導体基板の面方向であり、第1半導体領域と第2半導体領域と第3半導体領域が半導体基板の面方向に沿ってこの順で並んでいる。必要に応じて、これら半導体領域の間に他の半導体領域が介在してもよい。第1主電極は、第3半導体領域に接する。第2主電極は、第1方向に沿って第1主電極から離れて配置されている。絶縁ゲート部は、ゲート絶縁膜と第1導電型の半導体のゲート電極を有する。ゲート絶縁膜は、第1半導体領域と第2半導体領域と第3半導体領域に接する。ゲート電極は、少なくとも第1半導体領域と第3半導体領域の間に位置する第2半導体領域の部分にゲート絶縁膜を介して対向する。ゲート分離金属電極は、ゲート絶縁膜よりも第2主電極側に配置されている部分を少なくとも有しており、第1半導体領域とゲート電極にショットキー接触しており、第1半導体領域とゲート電極を隔てている。
【0006】
上記実施形態の半導体装置では、ゲート分離金属電極が、ゲート絶縁膜よりも第2主電極側に配置されている部分を少なくとも有するとともに第1半導体領域とゲート電極にショットキー接触するように構成されていることを1つの特徴とする。このため、上記実施形態の半導体装置は、従来構造の第2主電極側端部に存在するゲート絶縁膜がゲート分離金属電極に置き換えられたように構成されている。このように、上記実施形態の半導体装置では、電界集中が起きやすい箇所にそもそもゲート絶縁膜が存在しないことから、ゲート絶縁膜の絶縁破壊が抑制される。また、上記実施形態の半導体装置では、ゲート分離金属電極が第1半導体領域とゲート電極の双方にショットキー接触することを1つの特徴とする。これにより、第1半導体領域とゲート分離金属電極とゲート電極が逆向きに接続された一対のショットキーダイオードを構成する。このため、上記実施形態の半導体装置では、ゲート絶縁膜の一部がゲート分離金属電極に置き換えられたような構成であっても、リーク電流が抑えられ、安定したオン動作及びオフ動作を実行することができる。
【0007】
上記実施形態の半導体装置では、ゲート分離金属電極が、第1主電極に電気的に接続されていてもよい。ゲート分離金属電極が第1主電極に電気的に接続されていると、オフのときにゲート分離金属電極と第1半導体領域の接合面から伸展する空乏層幅が大きくなり、電界を良好に緩和することができる。上記実施形態の半導体装置は、高い耐圧を有することができる。
【0008】
上記実施形態の半導体装置では、ゲート電極が、不純物濃度が相対的に高濃度な高濃度ゲート電極と不純物濃度が相対的に低濃度な低濃度ゲート電極を有することができる。高濃度ゲート電極が、第1半導体領域と第3半導体領域の間に位置する第2半導体領域の部分の全範囲にゲート絶縁膜を介して対向する。低濃度ゲート電極が、ゲート分離金属電極と高濃度ゲート電極の間に設けられている。この態様によると、高濃度ゲート電極が、第2半導体領域のうちの反転層が形成される領域に対向することができる。このため、半導体装置がオンのときに、第2半導体領域に十分な電界を加えることができ、第2半導体領域に高密度な反転層が形成され、低いチャネル抵抗が実現される。
【0009】
上記実施形態の半導体装置は、縦型素子として構成され得る。この場合、第1方向は半導体基板の厚み方向であり、第1主電極が半導体基板の表面に設けられており、第2主電極が半導体基板の裏面に設けられている。絶縁ゲート部は、半導体基板の表面から第3半導体領域及び第2半導体領域を貫通して第1半導体領域に侵入するトレンチ内に設けられている。ゲート絶縁膜は、トレンチの側面を被覆している。ゲート電極は、トレンチの底面に露出している。ゲート分離金属電極は、トレンチの底面に露出するゲート電極にショットキー接触する。この態様によると、絶縁ゲート部の底部、即ち、絶縁ゲート部の第2主電極側端部にゲート絶縁膜が存在しないことから、ゲート絶縁膜の絶縁破壊が抑制される。
【0010】
上記実施形態の半導体装置が縦型素子として構成されている場合、半導体装置は、接続領域をさらに有することができる。接続領域は、半導体基板の厚み方向に沿って伸びており、ゲート分離金属電極に接する。接続領域は、半導体基板の表面に直交する方向から観測したときに、絶縁ゲート部の長手方向の端部よりも外側に配置されている。ゲート分離金属電極は、接続領域を介して第1主電極に電気的に接続されている。接続領域には、ゲート分離金属電極と第1主電極を電気的に接続することが可能な限り、様々な材料を採用することができる。例えば、接続領域は、第2導電型の半導体とすることができる。この態様では、接続領域が、絶縁ゲート部が設けられている範囲の外側に配置されている。これにより、絶縁ゲート部によって形成されるチャネル領域の特性を阻害することなく、接続領域を介してゲート分離金属電極と第1主電極を電気的に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の半導体装置の要部断面図であり、図2のI-I線に対応した断面図を模式的に示す。
図2】第1実施形態の半導体装置の要部断面図であり、図1のII-II線に対応した断面図を模式的に示す。
図3】第1実施形態の半導体装置の要部断面図であり、図2のIII-III線に対応した断面図を模式的に示す。
図4】第1実施形態の半導体装置と比較例の半導体装置の耐圧特性を示す。
図5】第1実施形態の半導体装置と比較例の半導体装置の内蔵ダイオードの順方向特性を示す。
図6】第1実施形態の半導体装置の変形例の要部断面図を模式的に示す。
図7】第2実施形態の半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)図1〜3に示されるように、半導体装置1は、MOSFETと称されるパワー半導体素子であり、半導体基板10、半導体基板10の裏面を被覆するドレイン電極22、半導体基板10の表面を被覆するソース電極24、半導体基板10の表層部に設けられているトレンチ型の絶縁ゲート部30及び絶縁ゲート部30のドレイン側端部に設けられているゲート分離金属電極40を備える。なお、ソース電極24が第1主電極の一例であり、ドレイン電極22が第2主電極の一例である。
【0013】
半導体基板10は、炭化珪素(SiC)を材料とする基板であり、n+型のドレイン領域11、n-型のドリフト領域12、p型のボディ領域13、p+型のボディコンタクト領域14、n+型のソース領域15及びp+型の接続領域16を有する。ドレイン領域11とドリフト領域12とボディ領域13とソース領域15は、半導体基板10の厚み方向に沿ってこの順で並んでいる。
【0014】
ドレイン領域11は、半導体基板10の裏層部に配置されており、半導体基板10の裏面に露出する。ドレイン領域11は、ドリフト領域12がエピタキシャル成長するための下地基板でもある。ドレイン領域11は、半導体基板10の裏面を被膜するドレイン電極22にオーミック接触する。一例では、ドレイン領域11は、その厚みが約1〜300μmであり、その不純物濃度が約1×1018〜1×1023cm-3である。
【0015】
ドリフト領域12は、ドレイン領域11上に設けられている。ドリフト領域12は、絶縁ゲート部30の側面に接する。ドリフト領域12は、エピタキシャル成長技術を利用して、ドレイン領域11の表面から結晶成長して形成される。一例では、ドリフト領域12は、その厚みが約5〜200μmであり、その不純物濃度が約1×1013〜1×1017cm-3である。なお、ドリフト領域12は、第1半導体領域の一例である。
【0016】
ボディ領域13は、ドリフト領域12上に設けられており、半導体基板10の表層部に配置されている。ボディ領域13は、絶縁ゲート部30の側面に接する。ボディ領域13は、エピタキシャル成長技術を利用して、ドリフト領域12の表面から結晶成長して形成される。一例では、ボディ領域13は、その厚みが約1〜5μmであり、その不純物濃度が約1×1016〜1×1018cm-3である。なお、ボディ領域13は、第2半導体領域の一例である。
【0017】
ボディコンタクト領域14は、ボディ領域13上に設けられており、半導体基板10の表層部に配置されており、半導体基板10の表面に露出する。ボディコンタクト領域14は、半導体基板10の表面を被膜するソース電極24にオーミック接触する。ボディコンタクト領域14は、イオン注入技術を利用して、半導体基板10の表層部にアルミニウム又はボロンを導入して形成される。一例では、ボディコンタクト領域14は、そのドーズ量が約1×1014〜1×1015cm-2であり、そのピーク濃度が約1×1019〜2×1020cm-3である。
【0018】
ソース領域15は、ボディ領域13上に設けられており、半導体基板10の表層部に配置されており、半導体基板10の表面に露出する。ソース領域15は、ボディ領域13によってドリフト領域12から隔てられている。ソース領域15は、絶縁ゲート部30の側面に接する。ソース領域15は、半導体基板10の表面を被膜するソース電極24にオーミック接触する。ソース領域15は、イオン注入技術を利用して、半導体基板10の表層部に窒素又はリンを導入して形成される。一例では、ソース領域15は、そのドーズ量が約1×1014〜5×1015cm-2であり、そのピーク濃度が約1×1019〜5×1020cm-3である。ソース領域15は、第3半導体領域の一例である。
【0019】
絶縁ゲート部30は、半導体基板10の表面から深部に向けて伸びており、ゲート絶縁膜32及びゲート電極34を有する。絶縁ゲート部30は、ソース領域15及びボディ領域13を貫通してドリフト領域12の一部に侵入するトレンチ30T内に設けられている。ゲート絶縁膜32は、トレンチ30Tの側面を被覆しており、酸化シリコンで構成されている。ゲート絶縁膜32は、半導体基板10の表層部にトレンチ30Tを形成した後に、CVD(Chemical Vapor Deposition)技術を利用して、そのトレンチ30Tの側面に選択的に堆積することで形成される。ゲート電極34は、ゲート絶縁膜32によってソース領域15、ボディ領域13及びドリフト領域12から隔てられており、n-型のポリシリコンで構成されている。特に、ゲート電極34は、ドリフト領域12とソース領域15の間に位置するボディ領域13の部分に対向しており、この対向部分に反転層を形成するように構成されている。ゲート電極34は、トレンチ30Tの底面に露出しており、ゲート分離金属電極40に接する。一例では、ゲート電極34は、その不純物濃度が約1×1013〜1×1017cm-3である。
【0020】
ゲート分離金属電極40は、絶縁ゲート部30の底部に対応して配置されており、ゲート絶縁膜32よりもドレイン電極22側に配置されており、ドリフト領域12によってドレイン領域11及びボディ領域13から隔てられている。ゲート分離金属電極40は、ドリフト領域12とゲート電極34の間に配置されており、ドリフト領域12とゲート電極34に接しており、ドリフト領域12とゲート電極34を隔てる。ゲート分離金属電極40の材料には、n型の炭化珪素のドリフト領域12とn型のポリシリコンのゲート電極34の双方にショットキー接触可能なものが採用されている。この例では、ゲート分離金属電極40の材料がタングステンである。これにより、ゲート分離金属電極40は、ドリフト領域12とゲート電極34の双方にショットキー接触している。ドリフト領域12とゲート分離金属電極40とゲート電極34が連続して配置されているので、ドリフト領域12とゲート分離金属電極40が1つのショットキーダイオードを構成しており、ゲート分離金属電極40とゲート電極34が1つのショットキーダイオードを構成しており、これらショットキーダイオードが逆向きに配置されている。ゲート分離金属電極40は、半導体基板10の表層部にトレンチ30Tを形成した後に、蒸着技術を利用して、トレンチ30Tの底面に選択的に堆積することで形成される。
【0021】
接続領域16は、半導体基板10の表面に直交する方向から観測したときに、絶縁ゲート部30の長手方向の端部よりも外側に配置されている。接続領域16は、絶縁ゲート部30の長手方向の端部側面に沿って半導体基板10の厚み方向に沿って伸びている。接続領域16の一端はゲート分離金属電極40にオーミック接触しており、接続領域16の他端は半導体基板10の表面に露出してソース電極24にオーミック接触する。このように、接続領域16は、ゲート分離金属電極40とソース電極24を電気的に接続する。なお、接続領域16は、ゲート分離金属電極40からドリフト領域12を超えてボディ領域13に達していればよく、ソース電極24に接していなくてもよい。ボディ領域13はソース電極24に電気的に接続されているので、この場合でも、接続領域16はゲート分離金属電極40とソース電極24を電気的に接続することができる。接続領域16は、半導体基板10の表層部に絶縁ゲート部30用のトレンチ30Tを形成した後に、斜めイオン注入技術を利用して、トレンチ30Tの長手方向の端部側面にアルミニウム又はボロンを導入して形成される。一例では、接続領域16の不純物濃度が約1×1018〜1×1023cm-3である。
【0022】
次に、半導体装置1の動作を説明する。ドレイン電極22に正電圧が印加され、ソース電極24が接地され、絶縁ゲート部30のゲート電極34が接地されていると、半導体装置1はオフである。このとき、半導体装置1では、ドリフト領域12とゲート分離金属電極40で構成されるショットキーダイオードのショットキー障壁により、ドレイン電極22とゲート電極34の間は絶縁され、ドレイン電極22とゲート電極34の間にリーク電流が流れることは抑制されている。したがって、半導体装置1は、安定したオフ動作を実行することができる。また、ドリフト領域12とゲート分離金属電極40の間のショットキー接合から伸びる空乏層により、絶縁ゲート部30の底部の電界が緩和される。特に、半導体装置1では、絶縁ゲート部30の底部にゲート絶縁膜32が設けられていない。絶縁ゲート部30の底部、即ち、絶縁ゲート部30のドレイン側端部は電界集中が起きやすい箇所である。半導体装置1では、電界集中が起きやすい箇所にそもそもゲート絶縁膜32が存在しないことから、ゲート絶縁膜32の絶縁破壊が抑制される。このように、半導体装置1は、絶縁ゲート部30のゲート絶縁膜32の絶縁破壊が抑制され、高い信頼性を有することができる。
【0023】
ドレイン電極22に正電圧が印加され、ソース電極24が接地され、絶縁ゲート部30のゲート電極34にソース電極24よりも正となる電圧が印加されていると、半導体装置1はオンである。このとき、半導体装置1では、ゲート分離金属電極40とゲート電極34で構成されるショットキーダイオードのショットキー障壁により、ドレイン電極22とゲート電極34の間は絶縁され、ドレイン電極22とゲート電極34の間にリーク電流が流れることは抑制されている。したがって、半導体装置1は、安定したオン動作を実行することができる。
【0024】
上記したように、半導体装置1は、安定したオン動作及びオフ動作を実行することが可能であるとともに、ゲート絶縁膜32の絶縁破壊が抑制され、高い信頼性を有することができる。さらに、半導体装置1では、絶縁ゲート部30の底部にゲート絶縁膜32が存在しないので、帰還容量が極めて小さく、スイッチング速度が向上する。
【0025】
図4に、半導体装置1の耐圧特性を示す。ここで、比較例は、ゲート分離金属電極40がソース電極24に接続されていない例である。図4に示されるように、半導体装置1は、比較例に比して高い耐圧を有することができる。半導体装置1では、ゲート分離金属電極40がソース電極24に電気的に接続されているので、ゲート分離金属電極40が接地電位に固定される。これにより、半導体装置1がオフのときに、ドリフト領域12とゲート分離金属電極40の間のショットキー接合から伸展する空乏層幅が大きくなり、絶縁ゲート部30の底部の電界が良好に緩和される。このため、半導体装置1は、高い耐圧を有することができる。
【0026】
図5に、半導体装置1の内蔵ダイオードの順方向電圧特性を示す。ここで、比較例は、ゲート分離金属電極40がソース電極24に接続されていない例である。図5に示されるように、半導体装置1の内蔵ダイオードは、比較例に比して低い順方向電圧を有することができる。半導体装置1では、ボディ領域13とドリフト領域12で構成されるpnダイオードに加えて、ゲート分離金属電極40がソース電極24に接続されていることにより、ゲート分離金属電極40とドリフト領域12で構成されるショットキーダイオードも内蔵ダイオードとして動作することができる。さらに、接続領域16とドリフト領域12で構成されるpnダイオードも内蔵ダイオードとして動作することができる。これにより、半導体装置1の内蔵ダイオードは、低い順方向電圧を有することができる。
【0027】
図6に、変形例の半導体装置2を示す。半導体装置2のゲート電極34は、不純物濃度が相対的に高濃度な高濃度ゲート電極34aと不純物濃度が相対的に低濃度な低濃度ゲート電極34bを有する。高濃度ゲート電極34aはトレンチ30T内の上側部分に配置されており、低濃度ゲート電極34bはトレンチ30T内の下側部分に配置されている。高濃度ゲート電極34aと低濃度ゲート電極34bの境界が、ドリフト領域12とボディ領域13の境界深さと同一又はその境界深さよりも深い位置にあるのが望ましい。換言すると、高濃度ゲート電極34aがドリフト領域12とソース領域15の間に位置するボディ領域13の部分の全範囲にゲート絶縁膜32を介して対向しており、低濃度ゲート電極34bがゲート分離金属電極40と高濃度ゲート電極34aの間に配置されている。一例では、高濃度ゲート電極34aの不純物濃度が約1×1018〜1×1023cm-3であり、低濃度ゲート電極34bの不純物濃度が約1×1013〜1×1017cm-3である。
【0028】
半導体装置2では、オンしているときに、ゲート分離金属電極40と低濃度ゲート電極34bの間のショットキー接合から伸びる空乏層が、高濃度ゲート電極34a内に深く伸びることが抑制される。このため、半導体装置2では、高濃度ゲート電極34aの全体に亘って一定のゲート電圧が印加されるので、ボディ領域13に対して十分な電界を加えることができる。このため、ドリフト領域12とソース領域15の間に位置するボディ領域13の部分の全範囲に亘って高密度な反転層が形成され、低いチャネル抵抗が実現される。
【0029】
(第2実施形態)図7に示されるように、半導体装置3は、MOSFETと称されるパワー半導体素子であり、半導体基板100、半導体基板100の表面の一部を被覆するドレイン電極122、半導体基板100の表面の一部を被覆するソース電極124、半導体基板100の表面の一部であってドレイン電極122とソース電極124の間に配置されているプレーナ型の絶縁ゲート部130及び半導体基板100の表面の一部であって絶縁ゲート部130のドレイン側端部に設けられているゲート分離金属電極140を備える。
【0030】
半導体基板100は、炭化珪素(SiC)を材料とする基板であり、n+型のドレイン領域111、n-型のドリフト領域112、p型のボディ領域113、p+型のボディコンタクト領域114及びn+型のソース領域115を有する。ドレイン領域111とドリフト領域112とボディ領域113とソース領域115は、半導体基板10の面方向に沿ってこの順で並んでいる。
【0031】
ドレイン領域111は、半導体基板100の表層部に配置されており、半導体基板100の表面に露出する。ドレイン領域111は、イオン注入技術を利用して、半導体基板100の表層部に窒素又はリンを導入して形成される。ドレイン領域111は、半導体基板100の表面を被膜するドレイン電極122にオーミック接触する。
【0032】
ドリフト領域112は、ドレイン領域111とボディ領域113の間に設けられており、半導体基板100の表面に露出する。ドリフト領域112は、絶縁ゲート部130の下面に接する。ドリフト領域112は、半導体基板100の他の半導体領域を形成した残部として構成されている。なお、ドリフト領域112は、第1半導体領域の一例である。
【0033】
ボディ領域113は、半導体基板10の表層部に配置されており、ドリフト領域112とソース領域115の間に設けられており、半導体基板100の表面に露出する。ボディ領域113は、絶縁ゲート部130の下面に接する。ボディ領域113は、イオン注入技術を利用して、半導体基板100の表層部にアルミニウム又はボロンを導入して形成される。なお、ボディ領域113は、第2半導体領域の一例である。
【0034】
ボディコンタクト領域114は、ボディ領域113上に設けられており、半導体基板100の表層部に配置されており、半導体基板100の表面に露出する。ボディコンタクト領域114は、イオン注入技術を利用して、半導体基板100の表層部にアルミニウム又はボロンを導入して形成される。ボディコンタクト領域114は、半導体基板100の表面を被膜するソース電極124にオーミック接触する。
【0035】
ソース領域115は、ボディ領域113上に設けられており、半導体基板100の表層部に配置されており、半導体基板100の表面に露出する。ソース領域115は、ボディ領域113によってドリフト領域112から隔てられている。ソース領域115は、絶縁ゲート部130の下面に接する。ソース領域115は、半導体基板100の表面を被膜するソース電極124にオーミック接触する。ソース領域115は、イオン注入技術を利用して、半導体基板100の表層部に窒素又はリンを導入して形成される。なお、ソース領域115は、第3半導体領域の一例である。
【0036】
絶縁ゲート部130は、半導体基板100の表面上に設けられており、ゲート絶縁膜132及びゲート電極134を有する。ゲート絶縁膜132は、半導体基板100の表面を被覆しており、酸化シリコンで構成されている。ゲート電極134は、ゲート絶縁膜132によってソース領域115、ボディ領域113及びドリフト領域112から隔てられており、n型のポリシリコンで構成されている。ゲート電極134は、不純物濃度が相対的に高濃度な高濃度ゲート電極134aと不純物濃度が相対的に低濃度な低濃度ゲート電極134bを有する。高濃度ゲート電極134aと低濃度ゲート電極134bの境界が、ドリフト領域112とボディ領域113の境界と同一又はその境界よりもドレイン側に位置するのが望ましい。換言すると、高濃度ゲート電極134aがドリフト領域112とソース領域115の間に位置するボディ領域113の部分の全範囲にゲート絶縁膜132を介して対向しており、低濃度ゲート電極134bがゲート分離金属電極140と高濃度ゲート電極134aの間に配置されている。
【0037】
ゲート分離金属電極140は、半導体基板100の表面上に設けられており、ドリフト領域112上に設けられている。ゲート分離金属電極140は、絶縁ゲート部130のドレイン側端部に対応して配置されており、ゲート絶縁膜132よりもドレイン電極122側に配置されており、ドリフト領域112によってドレイン領域111及びボディ領域113から隔てられている。ゲート分離金属電極140は、ドリフト領域112とゲート電極134の間に配置されており、ドリフト領域112とゲート電極134に接しており、ドリフト領域112とゲート電極134を隔てる。ゲート分離金属電極140の材料には、n型の炭化珪素のドリフト領域112とn型のポリシリコンのゲート電極134の双方にショットキー接触可能なものが採用されている。この例では、ゲート分離金属電極140の材料がタングステンである。これにより、ゲート分離金属電極140は、ドリフト領域112とゲート電極134の双方にショットキー接触している。ドリフト領域112とゲート分離金属電極140とゲート電極134が連続して配置されているので、ドリフト領域112とゲート分離金属電極140が1つのショットキーダイオードを構成しており、ゲート分離金属電極140とゲート電極134が1つのショットキーダイオードを構成しており、これらショットキーダイオードが逆向きに配置されている。また、ゲート分離金属電極140は、ソース電極124に電気的に接続されている。ゲート分離金属電極140は、例えば紙面奥行方向において絶縁ゲート部130から延出し、その部分でソース電極124にオーミック接触することができる。ゲート分離金属電極140は、蒸着技術を利用して、半導体基板100の表面の一部に堆積して形成される。
【0038】
次に、半導体装置3の動作を説明する。ドレイン電極122に正電圧が印加され、ソース電極124が接地され、絶縁ゲート部130のゲート電極134が接地されていると、半導体装置3はオフである。このとき、半導体装置3では、ドリフト領域112とゲート分離金属電極140で構成されるショットキーダイオードのショットキー障壁により、ドレイン電極122とゲート電極134の間は絶縁され、ドレイン電極122とゲート電極134の間にリーク電流が流れることは抑制されている。したがって、半導体装置3は、安定したオフ動作を実行することができる。また、ドリフト領域112とゲート分離金属電極140の間のショットキー接合から伸びる空乏層により、絶縁ゲート部130のドレイン側端部の電界が緩和される。特に、半導体装置3では、絶縁ゲート部130のドレイン側端部にゲート絶縁膜132が設けられていない。絶縁ゲート部130のドレイン側端部は電界集中が起きやすい箇所である。半導体装置3では、電界集中が起きやすい箇所にそもそもゲート絶縁膜132が存在しないことから、ゲート絶縁膜132の絶縁破壊が抑制される。このように、半導体装置3は、絶縁ゲート部130のゲート絶縁膜132の絶縁破壊が抑制され、高い信頼性を有することができる。また、半導体装置3では、ゲート分離金属電極140がソース電極124に電気的に接続されているので、ゲート分離金属電極140が接地電位に固定される。これにより、半導体装置3がオフのときに、ドリフト領域112とゲート分離金属電極140の間のショットキー接合から伸展する空乏層幅が大きいので、上記したリーク電流の抑制及び電界緩和の効果が大きい。
【0039】
ドレイン電極122に正電圧が印加され、ソース電極124が接地され、絶縁ゲート部130のゲート電極134にソース電極124よりも正となる電圧が印加されていると、半導体装置3はオンである。このとき、半導体装置3では、ゲート分離金属電極140とゲート電極134で構成されるショットキーダイオードのショットキー障壁により、ドレイン電極122とゲート電極134の間は絶縁され、ドレイン電極122とゲート電極134の間にリーク電流が流れることは抑制されている。したがって、半導体装置3は、安定したオン動作を実行することができる。
【0040】
上記したように、半導体装置3は、安定したオン及びオフの動作を実行することが可能であるとともに、ゲート絶縁膜132の絶縁破壊が抑制され、高い信頼性を有することができる。また、図6に示す半導体装置2と同様に、ゲート電極134が高濃度ゲート電極134aと低濃度ゲート電極134bを有しているので、ドリフト領域112とソース領域115の間に位置するボディ領域113の全範囲に亘って高密度な反転層が形成され、低いチャネル抵抗が実現される。
【0041】
上記では、MOSFETを例にして本明細書が開示する技術を説明した。本明細書が開示する技術は、MOSFETに限らず、他の半導体装置にも適用可能であり、例えばIGBTに適用することができる。特に、本明細書が開示する技術は、逆導通IGBTに適用した場合に、上記と同様に、内蔵ダイオードの順方向電圧を低下させることができる。
【0042】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0043】
1:半導体装置
10:半導体基板
11:ドレイン領域
12:ドリフト領域
13:ボディ領域
14:ボディコンタクト領域
15:ソース領域
16;接続領域
22:ドレイン電極
24:ソース電極
30:絶縁ゲート部
30T:トレンチ
32:ゲート絶縁膜
34:ゲート電極
40:ゲート分離金属電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7