特許第6754332号(P6754332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754332
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】共振形電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20200831BHJP
【FI】
   H02M3/28 Q
   H02M3/28 H
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-147136(P2017-147136)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-30122(P2019-30122A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2019年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石垣 卓也
(72)【発明者】
【氏名】渡部 與久
(72)【発明者】
【氏名】上井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 真人
(72)【発明者】
【氏名】大橋 敬典
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−029436(JP,A)
【文献】 特開2016−067087(JP,A)
【文献】 特開2017−060236(JP,A)
【文献】 特開2017−028873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源主回路と、電源制御回路と、を備え、
前記電源主回路は、
トランスと、
前記トランスの一次側と接続された共振素子と、
前記共振素子と接続された一次側半導体素子と、を有し、
前記一次側半導体素子は、複数のスイッチング素子からなり、前記共振素子に入力される入力電圧のスイッチングを所定のスイッチング周波数で行い、
前記電源制御回路は、
前記電源主回路から出力される出力電圧、及び前記出力電圧の目標値であるリファレンス電圧に基づいて、前記出力電圧の調整に要する制御量を算出し、前記スイッチング周波数の上限値であるスイッチング周波数上限値を設定し、算出した前記制御量及び設定した前記スイッチング周波数上限値に基づいて前記スイッチング素子ごとのスイッチング制御信号を生成し、
前記出力電圧が前記リファレンス電圧より小さいときの前記スイッチング周波数上限値を、前記出力電圧が前記リファレンス電圧以上であるときよりも高く設定する、
共振形電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の共振形電源装置において、
前記出力電圧が前記リファレンス電圧より小さいとき、
前記電源制御回路は、前記出力電圧が上昇するにつれて前記スイッチング周波数上限値を低下させる、
共振形電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載の共振形電源装置において、
前記電源制御回路は、起動信号が入力されるまで、前記スイッチング周波数上限値を第1の上限値に設定し、前記起動信号が入力されると、前記出力電圧が前記リファレンス電圧に達するまでの間、前記出力電圧と前記リファレンス電圧との差分に基づいて前記スイッチング周波数上限値を第2の上限値まで順次低下させる、
共振形電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の共振形電源装置において、
前記出力電圧が前記リファレンス電圧以上のとき、
前記電源制御回路は、前記スイッチング周波数上限値を前記第2の上限値に固定する、
共振形電源装置。
【請求項5】
請求項1に記載の共振形電源装置において、
前記出力電圧が前記リファレンス電圧より小さいとき、
前記電源制御回路は、前記スイッチング周波数上限値を第3の上限値に設定し、
前記出力電圧が前記リファレンス電圧以上になると前記スイッチング周波数上限値を前記第3の上限値より小さい第4の上限値に低下させる、
共振形電源装置。
【請求項6】
請求項1に記載の共振形電源装置において、
前記電源制御回路は、前記スイッチング周波数上限値を前記共振素子の共振周波数の2倍以下の値に設定する、
共振形電源装置。
【請求項7】
請求項3に記載に共振形電源装置において、
前記電源制御回路には、前記出力電圧からなる前記起動信号が入力されている、
共振形電源装置。
【請求項8】
請求項1に記載の共振形電源装置において、
前記電源制御回路は、
算出した前記制御量が前記スイッチング周波数上限値に相当する制御量以下のとき、算出された前記制御量に相当する周波数を新たな前記スイッチング周波数に設定し、新たに設定した前記スイッチング周波数に基づいて前記スイッチング素子ごとの前記スイッチング制御信号を生成し、
算出した前記制御量が前記スイッチング周波数上限値に相当する前記制御量より大きいとき、前記スイッチング周波数上限値以下の所定の値を新たな前記スイッチング周波数に設定し、算出した前記制御量と新たな前記スイッチング周波数に相当する制御量との差分に相当する時比率調整量を算出し、新たに設定した前記スイッチング周波数及び前記時比率調整量に基づいて前記スイッチング素子ごとの前記スイッチング制御信号を生成する、
共振形電源装置。
【請求項9】
請求項8に記載の共振形電源装置において、
前記電源制御回路は、
算出した前記制御量が前記スイッチング周波数上限値に相当する制御量より大きいとき、前記スイッチング周波数上限値を新たな前記スイッチング周波数に設定し、算出した前記制御量と前記スイッチング周波数上限値に相当する制御量との差分に相当する前記時比率調整量を算出する、
共振形電源装置。
【請求項10】
請求項8に記載の共振形電源装置において、
算出した前記制御量が前記スイッチング周波数上限値に相当する前記制御量より大きいとき、
前記電源制御回路は、
前記時比率調整量を一定の値に保持し、算出した前記制御量と前記時比率調整量に相当する制御量との差分を算出し、算出した制御量の前記差分に相当する周波数を新たな前記スイッチング周波数に設定する、
共振形電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振形電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
共振形電源装置は、例えば、産業用機器や情報機器等に用いられる。共振形電源装置には、LLC電流共振形回路が設けられている。LLC電流共振形回路は、共振現象を利用して正弦波状の電流を流し、電流が小さくなるタイミングでスイッチング素子をターンオフする。これにより、スイッチング損失が小さく高効率な共振形電源装置が実現される。
【0003】
このような共振形電源装置は、スイッチング周波数を調整して出力電圧を制御する。しかし、LLC電流共振形回路の特性上、仕様範囲の入力電圧と出力電圧の比(以下、入出力電圧比と呼ぶ)が広範囲に及ぶ場合、高い入力電圧から低い出力電圧へ変換できない場合がある。
【0004】
これに対し、時比率を調整することで低電圧を出力することが可能な装置が特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1によれば、充電装置は、ハーフブリッジ型のスイッチング電源であって、複合共振のための共振回路を備える。充電制御回路CNは、充電が開始されてから電池電圧が規定の目標電圧に達するまでは充電電流が定電流になるように、スイッチング素子Q1、Q2のオンオフを制御する。また、充電制御回路CNは、電池電圧が切替電圧未満の領域では、電池電圧が低いほどスイッチング素子のオン期間の時比率を小さくするように時比率を変化させ、電池電圧が切替電圧以上の領域では、スイッチング素子のオン期間の時比率を一定に保つとともに、電池電圧が高いほどスイッチング素子の駆動周波数を引き下げる。切替電圧は、駆動周波数が電流共振と電圧共振との境界で規定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−005596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の充電装置は、時比率を変えることで、ある程度低い電圧を出力することが可能である。しかしながら、出力電圧が低い状態では、入力電圧と出力電圧との差が大きくなるため、スイッチング素子に過大な電流が流れたり、スイッチング素子にリカバリ電流が流れる場合がある。そうすると、スイッチング素子が破壊されるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、スイッチング素子の破壊による不具合の発生を抑えた共振形電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0010】
本発明の代表的な実施の形態による共振形電源装置は、電源主回路と、電源制御回路と、を備えている。電源主回路は、トランスと、トランスの一次側と接続された共振素子と、共振素子と接続された一次側半導体素子と、を有している。一次側半導体素子は、複数のスイッチング素子からなり、共振素子に入力される入力電圧のスイッチングを所定のスイッチング周波数で行う。電源制御回路は、電源主回路から出力される出力電圧、及び出力電圧の目標値であるリファレンス電圧に基づいて、スイッチング周波数の修正値であるスイッチング周波数修正値を算出するとともに、スイッチング周波数の上限値であるスイッチング周波数上限値を設定する。また、電源制御回路は、スイッチング周波数修正値及びスイッチング周波数上限値に基づいてスイッチング素子ごとのスイッチング制御信号を生成し、出力電圧がリファレンス電圧より小さいときのスイッチング周波数上限値を、出力電圧がリファレンス電圧以上であるときよりも高く設定する。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0012】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、スイッチング素子の破壊による不具合の発生が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態1に係る共振形電源装置の構成の一例を示す図である。
図2】共振形電源装置の周波数特性の例を示す図である。
図3】スイッチング素子のゲートに印加される電圧及び共振素子に流れる電流の例を示す図である。
図4】スイッチング素子のゲートに印加される電圧及び共振素子に流れる電流の例を示す図である。
図5】起動時におけるスイッチング素子のゲートに入力される信号の波形、及びスイッチング素子に流れる電流の波形の例を示す図である。
図6】起動時におけるスイッチング素子のゲートに入力される信号の波形、及びスイッチング素子に流れる電流の波形の例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態1に係るスイッチング周波数上限値の変化の一例を示す図である。
図8】本発明の実施の形態2に係る共振形電源装置の構成の一例を示す図である。
図9】本発明の実施の形態2に係るスイッチング周波数上限値の変化の一例を示す図である。
図10】本発明の実施の形態3に係るスイッチング周波数上限値の変化の一例を示す図である。
図11】本発明の実施の形態4に係る共振形電源装置の構成の一例を示す図である。
図12】本発明の実施の形態5に係る共振形電源装置の構成の一例を示す図である。
図13】本発明の実施の形態6に係る共振形電源装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全ての図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
(実施の形態1)
<共振形電源装置の構成>
<<電源主回路の構成>>
図1は、本発明の実施の形態1に係る共振形電源装置の構成の一例を示す図である。共振形電源装置1は、図1に示すように、電源主回路10、電源制御回路30を備えている。共振形電源装置1は、外部に設けられた入力電源1001から入力された電圧を所定の電圧に変換し、変換した電圧を負荷1002へ出力する。
【0016】
入力電源1001の高電位側の端部は、後述する電源主回路10の一方の入力端P1と接続され、入力電源1001の低電位側の端部は、電源主回路10の他方の入力端P2と接続されている。負荷1002の高電位側及び低電位側の端部は、電源主回路10の出力端P3、P4とそれぞれ接続されている。
【0017】
電源主回路10は、図1に示すように、入力側コンデンサ11、一次側半導体素子12、共振素子13、トランス14、二次側半導体素子15、出力側コンデンサ16を備えている。
【0018】
入力側コンデンサ11は、電圧リプル吸収用のコンデンサである。入力側コンデンサ11の一対の電極は、図1に示すように、電源主回路10の入力端P1、P2とそれぞれ接続されている。入力側コンデンサ11には、入力電源1001により所定の入力電圧(Vin)が印加される。
【0019】
一次側半導体素子12は、所定のスイッチング周波数で、共振素子13に入力される電圧のスイッチングを行う。一次側半導体素子12は、図1に示すように、例えばNMOS(N−Channel MOS)等のMOSFETからなる複数のスイッチング素子12a〜12dで構成されている。これらのスイッチング素子12a〜12dは、図1に示すように、ブリッジ状に接続されている。
【0020】
例えば、スイッチング素子12aの一方の端部、及びスイッチング素子12cの一方の端部は、図1に示すように、電源主回路10の一方の入力端P1と接続されている。スイッチング素子12bの一方の端部、及びスイッチング素子12dの一方の端部は、図1に示すように、電源主回路10の他方の入力端P2と接続されている。スイッチング素子12aの他方の端部、及びスイッチング素子12bの他方の端部は、後述する共振素子13の共振インダクタ13aと接続されている。スイッチング素子12cの他方の端部、及びスイッチング素子12dの他方の端部は、後述する共振素子13の共振コンデンサ13bと接続されている。スイッチング素子12a〜12dのゲートは、後述するスイッチング制御信号生成回路34とそれぞれ接続されている。
【0021】
スイッチング素子12a〜12dのゲートには、電源制御回路30から出力されるスイッチング制御信号Vg1〜Vg4がそれぞれ入力される。スイッチング素子12a〜12dは、それぞれに対応するスイッチング制御信号Vg1〜Vg4に基づいてオン・オフを切り替える。例えば、スイッチング素子がNMOSで構成されていれば、ゲートにハイレベルのスイッチング制御信号が入力されると、スイッチング素子はオン状態となる。一方、ゲートにローレベルのスイッチング制御信号が入力されると、スイッチング素子はオフ状態となる。
【0022】
スイッチング素子12a〜12dは、スイッチング制御信号Vg1〜Vg4に基づいてオン・オフを繰り返し、共振素子13にパルス状の電圧を入力する。例えば、スイッチング素子12a、12dがオン状態、スイッチング素子12b、12cがオフ状態のとき、共振素子13には所定の電圧(Vin)が入力される。一方、スイッチング素子12a、12dがオフ状態、スイッチング素子12b、12cがオン状態のとき、共振素子13には所定の電圧(−Vin)が入力される。これらの動作を繰り返すことにより、共振素子13には、所定の振幅(Vin)のパルス状の電圧が入力される。
【0023】
共振素子13は、図1に示すように、共振インダクタ13a及び共振コンデンサ13bを備えている。共振インダクタ13aの一方の端部は、図1に示すように、スイッチング素子12aの他方の端部及びスイッチング素子12bの他方の端部と接続されている。また、共振インダクタ13aの他方の端部は、図1に示すように、トランス14の一方の入力端P11を介してトランス14と接続されている。
【0024】
共振コンデンサ13bの一方の端部は、図1に示すように、トランス14の他方の入力端P12を介してトランス14と接続されている。また、共振コンデンサ13bの他方の端部は、図1に示すように、スイッチング素子12cの他方の端部及びスイッチング素子12dの他方の端部と接続されている。
【0025】
共振インダクタ13a及び共振コンデンサ13bは、直列に接続されている。なお、共振インダクタ13aの共振インダクタンスLrには、トランス14の漏れインダクタンス(図示は省略)が含まれているものとする。共振インダクタンス及び漏れインダクタンスは、直列の関係となっている。
【0026】
図1では、共振インダクタ13a及び共振コンデンサ13bは、トランス14を介して別々に配置されているが、このような配置に限定されるものではない。例えば、共振インダクタ13a及び共振コンデンサ13bは、図1に示す共振インダクタ13a側に配置されてもよいし、共振コンデンサ13b側にも配置されてもよい。共振素子13には、一次側半導体素子12より、前述したパルス状の電圧が入力される。パルス状の電圧が入力されると、共振素子13及びトランス14には、共振インダクタンスLr及び共振キャパシタンスCrに基づいて規定される共振周波数F0の正弦波状の電流が流れる。
【0027】
トランス14では、図1に示すように、一次側コイルの巻数がN1、二次側コイルの巻数がN2、励磁インダクタンスがLmとなっている。トランス14は、共振素子13を介して一次側に入力された入力電圧(Vin)を、二次側で所定の出力電圧(Vo)に変換し、変換した出力電圧(Vo)を電源主回路10の外部へ出力する。
【0028】
二次側半導体素子15は、トランス14の二次側の電流を整流する素子である。二次側半導体素子15は、図1に示すように、複数のダイオード15a〜15dを備えている。これらのダイオード15a〜15dは、図1に示すように、ブリッジ状に接続されている。例えば、ダイオード15aのアノード側の端部、及びダイオード15bのカソード側の端部は、図1に示すように、トランス14の一方の出力端P13と接続されている。ダイオード15cのアノード側の端部、及びダイオード15dのカソード側の端部は、図1に示すように、トランス14の他方の出力端P14と接続されている。
【0029】
ダイオード15aのカソード側の端部、及びダイオード15cのカソード側の端部は、図1に示すように、出力側コンデンサ16の一方の電極、及び電源主回路10の一方の出力端P3と接続されている。ダイオード15bのアノード側の端部、及びダイオード15dのアノード側の端部は、図1に示すように、出力側コンデンサ16の他方の電極、及び電源主回路10の他方の出力端P4と接続されている。
【0030】
出力端P13の電圧が出力端P14の電圧より高い場合、トランス14の二次側の電流は、ダイオード15a、15dにより整流される。これに対し、出力端P14の電圧が出力端P13の電圧より高い場合、トランス14の二次側の電流は、ダイオード15c、15bにより整流される。
【0031】
出力側コンデンサ16は、出力電圧安定化用のコンデンサである。電源主回路10は、出力側コンデンサ16の両電極間の電圧(出力端P3、P4間の電圧)を出力電圧(Vo)として検出し、検出した出力電圧(Vo)の情報を電源制御回路30へ出力する。また、電源主回路10は、出力端P3、P4を介して出力電圧(Vo)を負荷1002へ出力する。
【0032】
<<電源制御回路の構成>>
電源制御回路30は、図1に示すように、制御量演算回路31、スイッチング周波数上限値調整回路32、シフト量演算回路33、スイッチング制御信号生成回路34を備えている。
【0033】
制御量演算回路31には、図1に示すように、電源主回路10で検出された出力電圧(Vo)の情報、及び出力電圧(Vo)の目標値であるリファレンス電圧(Vref)が入力されている。リファレンス電圧(Vref)は、外部装置から入力されたものである。外部装置は、例えば、共振形電源装置1を有する装置内に設けられてもよいし、共振形電源装置1を有する装置の外部に設けられてもよい。
【0034】
制御量演算回路31は、リファレンス電圧(Vref)と入力された出力電圧(Vo)との電圧の差分(ΔV)を算出し、算出した差分(ΔV)をスイッチング周波数上限値調整回路32へ出力する。
【0035】
また、制御量演算回路31は、電源主回路10から入力された出力電圧(Vo)及び外部装置から入力されたリファレンス電圧(Vref)に基づいて、出力電圧(Vo)の調整に要する制御量を算出する。制御量は、出力電圧(Vo)をリファレンス電圧(Vref)に調整するために算出されるものである。制御量演算回路31は、制御量を、例えば周波数の単位で算出してもよい。制御量演算回路31は、例えば、周波数の単位で算出した制御量(Fsw_shift)をシフト量演算回路33へ出力する。
【0036】
スイッチング周波数上限値調整回路32は、スイッチング周波数の上限値であるスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を設定する。スイッチング周波数上限値調整回路32は、例えば、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)より小さいとき、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)以上であるときよりもスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を高く設定する。
【0037】
また、スイッチング周波数上限値調整回路32は、例えば、所定の電圧閾値(Vt)を設定し、リファレンス電圧(Vref)と入力された出力電圧(Vo)との電圧の差分(ΔV)が電圧閾値(Vt)より大きいとき、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を、差分(ΔV)が所定の電圧閾値(Vt)より小さいときより高く設定してもよい。
【0038】
例えば、スイッチング周波数上限値調整回路32は、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)より小さいとき、出力電圧(Vo)が上昇するにつれてスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を低下させるようにしてもよい。
【0039】
また、例えば、スイッチング周波数上限値調整回路32は、起動信号(RUN)が入力されるまで、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を所定の値(第1の上限値)に設定する。また、スイッチング周波数上限値調整回路32は、起動信号(RUN)が入力されると、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)に達するまでの間、リファレンス電圧(Vref)と出力電圧(Vo)との差分(ΔV)に基づいてスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を所定の値(第2の上限値)まで順次低下させるようにしてもよい。また、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)以上のとき、スイッチング周波数上限値調整回路32は、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を所定の値(第2の上限値)に固定してもよい。
【0040】
第1の上限値は、共振素子13の共振周波数F0の2倍(2×F0)以下の値に設定されることが好ましい。このとき、第2の上限値は、例えば、共振周波数F0と第1の上限値(2×F0)との間の所定の値に設定されることが好ましい。
【0041】
スイッチング周波数上限値調整回路32は、設定したスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)をシフト量演算回路33へ出力する。
【0042】
シフト量演算回路33は、制御量演算回路31で算出された制御量(Fsw_shift)、及びスイッチング周波数上限値調整回路32で設定されたスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)に基づいて新たなスイッチング周波数(Fsw)及び時比率調整量(Shift)を算出する。
【0043】
例えば、シフト量演算回路33は、制御量(Fsw_shift)がスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)に相当する制御量以下であるとき、算出された制御量(Fsw_shift)に相当する周波数を新たなスイッチング周波数(Fsw)に設定する。このとき、シフト量演算回路33は、制御量(Fsw_shift)に基づいて新たなスイッチング周波数(Fsw)のみを算出する。なお、制御量(Fsw_shift)が周波数の単位で算出されている場合、新たなスイッチング周波数(Fsw)は、制御量(Fsw_shift)と同じ値となる。
【0044】
また、シフト量演算回路33は、制御量(Fsw_shift)がスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)に相当する制御量より大きいとき、スイッチング周波数上限値以下の所定の値を新たなスイッチング周波数(Fsw)に設定し、算出した制御量(Fsw_shift)と新たなスイッチング周波数(Fsw)に相当する制御量との差分の制御量に相当する時比率調整量(Shift)を算出する。
【0045】
このとき、シフト量演算回路33は、例えば、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を新たなスイッチング周波数(Fsw)に設定し、算出した制御量(Fsw_shift)とスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)に相当する制御量との差分の制御量に相当する時比率調整量(Shift)を算出する。
【0046】
シフト量演算回路33は、新たに設定したスイッチング周波数(Fsw)、及び算出した時比率調整量(Shift)をスイッチング制御信号生成回路34へ出力する。
【0047】
スイッチング制御信号生成回路34は、シフト量演算回路33から出力されたスイッチング周波数(Fsw)及び時比率調整量(Shift)に基づいて、スイッチング素子12a〜12dごとのスイッチング制御信号Vg1〜Vg4を生成する。
【0048】
例えば、制御量(Fsw_shift)がスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)に相当する制御量以下のとき、スイッチング制御信号生成回路34は、新たに設定したスイッチング周波数(Fsw)に基づいて、スイッチング素子12a〜12dごとのスイッチング制御信号Vg1〜Vg4を生成する。このように、スイッチング周波数(Fsw)のみで出力電圧(Vo)の調整を行う制御を、周波数制御とよぶ場合がある。
【0049】
一方、制御量(Fsw_shift)がスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)に相当する制御量より大きいとき、スイッチング制御信号生成回路34は、スイッチング周波数(Fsw)及び時比率調整量(Shift)に基づいて、スイッチング素子12a〜12dごとのスイッチング制御信号Vg1〜Vg4を生成する。例えば、スイッチング制御信号生成回路34は、新たに設定されたスイッチング周波数(Fsw)でスイッチング動作をさせつつ、スイッチング素子12a〜12dのオン・オフの切り替えのタイミングを時比率調整量(Shift)に応じて調整したスイッチング制御信号Vg1〜Vg4を生成する。このように、スイッチング周波数(Fsw)及び時比率調整量(Shift)により出力電圧(Vo)の調整を行う制御を、位相シフト制御とよぶ場合がある。
【0050】
<出力電圧の調整>
次に、出力電圧の調整方法の例について説明する。図2は、共振形電源装置の周波数特性の例を示す図である。図2(a)は、周波数制御が行われたときの周波数特性の例を示す図である。図2(b)〜(c)は、位相シフト制御が行われたときの周波数特性の例を示す図である。
【0051】
図2(a)〜(c)には、共振形電源装置1の出力側に定格負荷が接続されたときの周波数特性、及び定格より軽い軽負荷が接続されたときの周波数特性が示されている。また、図2(a)〜(c)では、縦軸がゲインM、横軸が周波数となっている。ここで、ゲインMは、入力電圧(Vin)、出力電圧(Vo)、トランス14の一次側及び二次側の巻数N1、N2に基づいて次に示す式で規定される。
【0052】
Vo=M・(N2/N1)・Vin
図3及び図4は、スイッチング素子のゲートに印加される電圧及び共振素子に流れる電流の例を示す図である。図3は、周波数制御が行われたときの、スイッチング制御信号Vg1〜Vg4、及び共振インダクタ13aに流れる電流ILrを示している。図4は、位相シフト制御が行われたときの、スイッチング制御信号Vg1〜Vg4、及び共振インダクタ13aに流れる電流ILrを示している。また、図4は、トランス14における励磁電流ILmも合わせて示している。
【0053】
図3では、時刻T0〜T6がスイッチング周期(Tsw)であり、スイッチング周波数(Fsw)と対応している。図4では、時刻T10〜T16がスイッチング周期(Tsw)であり、スイッチング周波数(Fsw)と対応している。なお、スイッチング素子12a〜12dは、NMOSで構成されているものとする。このため、スイッチング制御信号Vg1〜Vg4がハイレベルのとき、対応するスイッチング素子12a〜12dはオン状態となる。一方、スイッチング制御信号Vg1〜Vg4がローレベルのとき、対応するスイッチング素子12a〜12dはオフ状態となる。
【0054】
<<周波数制御>>
共振形電源装置1では、接続される負荷に応じて、所望のゲインMが得られるときのスイッチング周波数(以下では動作点ともよぶ)が異なる。このため、負荷を入れ替えても同一のゲインMが得られるよう、共振形電源装置1は、出力電圧(Vo)の調整を行う。図2(a)に示すように、例えば、設計値としてのゲインM0、及びゲインM0より高いゲインM1を得ようとする場合には、いずれも動作点が存在する。すなわち、共振形電源装置1は、定格負荷又は軽負荷が接続されても、周波数制御によりゲインM0、M1に対応する所定の出力電圧(Vo)を出力することが可能である。
【0055】
例えば、図3に示すように、時刻T1になると、スイッチング素子12a、12dのゲートにはハイレベルのスイッチング制御信号Vg1、Vg4が入力される。これにより、スイッチング素子12a、12dのみがオン状態となる。そうすると、共振素子13には、共振周波数F0の正弦波状の電流ILrが流れる。そして、時刻T2では、電流ILrは、励磁電流ILmと交差し、共振現象が停止するため、電流ILrは励磁電流ILmとほぼ同じになる。
【0056】
そして、時刻T3になると、スイッチング素子12a、12dのゲートにはローレベルのスイッチング制御信号Vg1、Vg4が入力され、スイッチング素子12a、12dがオフ状態となる。これにより、共振素子13には、再び共振周波数F0の正弦波状の電流ILrが流れ、電流ILrは励磁電流ILmより小さくなる。
【0057】
時刻T4になると、スイッチング素子12b、12cのゲートにはハイレベルのスイッチング制御信号Vg2、Vg3が入力される。これにより、スイッチング素子12b、12cのみがオン状態となる。この間も、共振素子13には、再び共振周波数F0の正弦波状の電流ILrが流れる。そして、時刻T5では、電流ILrは、励磁電流ILmと再び交差し、共振現象が停止するため、電流ILrは励磁電流ILmとほぼ同じになる。
【0058】
そして、時刻T6になると、スイッチング素子12b、12cのゲートにはローレベルのスイッチング制御信号Vg2、Vg3が入力され、スイッチング素子12b、12cがオフ状態となる。これにより、共振素子13には、再び共振周波数F0の正弦波状の電流ILrが流れ、電流ILrは励磁電流ILmより大きくなる。
【0059】
<<位相シフト制御>>
次に、ゲインM0より低いゲインM2を得ようとする場合について説明する。図2(a)に示すように、定格負荷が接続されたときの動作点は存在する。なお、図2(a)に示す例では、定格負荷が接続されたときの共振形電源装置1は、周波数制御により、ゲインM2よりさらに低いゲインに対応する動作点も存在する。
【0060】
しかし、軽負荷が接続されたとき、図2(a)に示すように、ゲインM2に対応する動作点は存在しない。すなわち、軽負荷が接続された共振形電源装置1は、周波数制御ではゲインM2に対応する低電圧を出力することができない。言い換えれば、このときの共振形電源装置1は、過大な電流が流れなければ動作しない。したがって、共振形電源装置1は、位相シフト制御を行う。
【0061】
位相シフト制御では、例えば、図2(b)に示すようなスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit_a)が設定される。制御量(Fsw_shift)に相当する周波数がスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit_a)より大きいとき、共振形電源装置1は、例えば、スイッチング周波数(Fsw)をスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit_a)に設定する。そして、共振形電源装置1は、時比率調整量(Shift)に基づいて、例えば、スイッチング周期(Tsw)内におけるスイッチング素子12c、12dのオン・オフの切り替えのタイミングを調整する。
【0062】
例えば、図4に示すように、時刻T10では、スイッチング素子12dのゲートには、すでにハイレベルのスイッチング制御信号Vg4が入力されており、スイッチング素子12dはオン状態となっている。このとき、共振素子13には、共振周波数F0の正弦波状の電流ILrが流れる。
【0063】
そして、時刻T11になると、スイッチング素子12aのゲートにもハイレベルスイッチング制御信号Vg1が入力される。これにより、スイッチング素子12a、12dはともにオン状態となる。このときも、共振素子13には、共振周波数F0の正弦波状の電流ILrが流れる。
【0064】
そして、時刻T12になると、スイッチング素子12dのゲートにはローレベルのスイッチング制御信号Vg4が入力される。周波数制御であれば、時刻T13になると、スイッチング制御信号Vg4の電位がハイレベルからローレベルに切り替わる。しかし、位相シフト制御では、スイッチング制御信号Vg4の電位が切り替わるタイミングが、時比率調整量(Shift)に基づいた所定の時間(T13−T12)早くなっている。
【0065】
スイッチング制御信号Vg4の電位がハイレベルからローレベルに切り替わると、スイッチング素子12dはオフ状態となる。これにより、図4に示すように、共振素子13に流れる電流ILrは急激に小さくなる。そして、時刻T17付近では、電流ILrは、励磁電流ILmと交差し励磁電流ILmとほぼ同じになる。
【0066】
時刻T17になると、スイッチング素子12cのゲートにはハイレベルのスイッチング制御信号Vg3が入力される。位相シフト制御では、スイッチング制御信号Vg4の電位が切り替わるタイミングが、時比率調整量(Shift)に基づいた所定の時間(T14−T17)早くなっている。スイッチング制御信号Vg3の電位がローレベルからハイレベルに切り替わると、スイッチング素子12cはオン状態となる。この間も、電流ILrは、励磁電流ILmとほぼ同じである。
【0067】
そして、時刻T13になると、スイッチング素子12aのゲートにはローレベルのスイッチング制御信号Vg1が入力され、スイッチング素子12aがオフ状態となる。これにより、共振素子13には、再び共振周波数F0の正弦波状の電流ILrが流れ、電流ILrは励磁電流ILmより小さくなる。
【0068】
時刻T14になると、スイッチング素子12bのゲートにはハイレベルのスイッチング制御信号Vg2が入力される。これにより、スイッチング素子12bがオン状態となる。この間も、共振素子13には、共振周波数F0の正弦波状の電流ILrが流れる。
【0069】
そして、時刻T15になると、スイッチング素子12cのゲートにはローレベルのスイッチング制御信号Vg3が入力される。位相シフト制御では、スイッチング制御信号Vg3の電位が切り替わるタイミングが、時比率調整量(Shift)に基づいた所定の時間(T10−T15)早くなっている。スイッチング制御信号Vg3の電位がハイレベルからローレベルに切り替わると、スイッチング素子12cがオフ状態となる。これにより、図4に示すように、共振素子13に流れる電流ILrは急激に大きくなる。そして、時刻T18付近では、電流ILrは、励磁電流ILmと交差し励磁電流ILmとほぼ同じになる。
【0070】
時刻T18になると、スイッチング素子12dのゲートにはハイレベルのスイッチング制御信号Vg4が入力される。位相シフト制御では、スイッチング制御信号Vg4の電位が切り替わるタイミングが、時比率調整量(Shift)に基づいた所定の時間(T11−T18)早くなっている。スイッチング制御信号Vg4の電位がローレベルからハイレベルに切り替わると、スイッチング素子12dはオン状態となる。この間も、電流ILrは、励磁電流ILmとほぼ同じである。
【0071】
そして、時刻T16になると、スイッチング素子12bのゲートにはローレベルのスイッチング制御信号Vg2が入力され、スイッチング素子12bがオフ状態となる。これにより、共振素子13には、再び共振周波数F0の正弦波状の電流ILrが流れ、電流ILrは励磁電流ILmより大きくなる。
【0072】
このような位相シフト制御が行われると、図2(b)に示すように、軽負荷が接続されても、共振形電源装置1は、ゲインM2や、ゲインM2よりもさらに小さいゲインに対応する低電圧を出力することが可能となる。
【0073】
図2(c)は、図2(b)に示す場合よりも高いスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit_b)が設定されたときの周波数特性の例を示している。図2(c)に示すように、定格負荷が接続された場合、最も小さいゲインMの動作点は、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit_b)以下である。したがって、定格負荷が接続された共振形電源装置1は、周波数制御のみで出力電圧(Vo)を調整することが可能である。
【0074】
これに対し、軽負荷が接続された場合、制御量(Fsw_shift)がスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit_b)よりも大きくなると、共振形電源装置1は、例えば、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit_b)をスイッチング周波数(Fsw)に設定し、位相シフト制御を行う。このように、共振形電源装置1は、低いゲインMに対応する低電圧の出力電圧(Vo)を調整する。
【0075】
<<スイッチング周波数上限値の調整>>
次に、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を調整しながら出力電圧(Vo)の調整を行う場合について説明する。ここでは、主に、共振形電源装置1の起動時における動作について説明する。
【0076】
図5及び図6は、起動時におけるスイッチング素子のゲートに入力される信号の波形、及びスイッチング素子に流れる電流の波形の例を示す図である。例えば、図5図6は、それぞれのスイッチング素子12a〜12dのゲートに入力されるスイッチング制御信号Vg1〜Vg4の波形、及びスイッチング素子12aのソース−ドレイン電流Iaの波形を示している。図5(a)は、周波数制御時における、スイッチング制御信号Vg1〜Vg4の波形、及びスイッチング素子12aのソース−ドレイン電流Iaの波形を示している。図5(b)、及び図6(a)〜(b)は、位相シフト制御時における、スイッチング制御信号Vg1〜Vg4の波形、及びスイッチング素子12aのソース−ドレイン電流Iaの波形を示している。
【0077】
起動時には出力電圧(Vo)がゼロに近い状態であるので、入力電圧(Vin)と出力電圧(Vo)との電位差が大きい。このため、共振素子13には、過大な電圧が印加され、過大な電流が流れる。このとき、周波数制御が行われると、図5(a)に示すように、スイッチング素子12aにも大きな電流が流れてしまう。なお、図示は省略しているが、これ以外のスイッチング素子12b〜12dにも大きなソース−ドレイン電流が流れる期間が存在する。
【0078】
図5(a)に示すように、時刻T20〜T21、T22〜T25、T26〜T28の期間では、スイッチング素子12aのゲートにはローレベルのスイッチング制御信号Vg1が入力されている。このため、これらの期間では、スイッチング素子12aはオフ状態となっており、スイッチング素子12aには、正方向のソース−ドレイン電流Iaは流れない。ただし、時刻T20〜T21、T24〜T25の期間では、スイッチング素子12aのボディダイオードに負方向の電流が流れる。このため、これらの期間では、スイッチング素子12aにおけるソース−ドレイン電流Iaの電流値は大きくなっている。
【0079】
時刻T21〜T22及び時刻T25〜T26の期間では、スイッチング素子12a、12dのゲートにはハイレベルのスイッチング制御信号Vg1、Vg4が入力されている。これらの期間では、スイッチング素子12a、12dはオン状態となっている。このとき、スイッチング素子12aには、図5(a)に示す大きなソース−ドレイン電流Iaが流れる。
【0080】
そこで、起動時に位相シフト制御を行うと、スイッチング素子12aのソース−ドレイン電流Iaは、例えば、図5(b)に示すような波形となる。図5(b)に示す位相シフト制御では、図5(a)と比較すると、スイッチング素子12d(12c)のゲートに入力されるスイッチング制御信号Vg4(Vg3)の立ち上がり、立ち下りのタイミングが、例えば、時刻T22−T30(T23−T31)の分だけ早くなっている。時比率調整量(Shift)により、このようなタイミングの違いが生じている。この場合、時刻T20〜T21、T24〜T25の期間において、スイッチング素子12aのボディダイオードに流れる負方向の電流は、図5(a)の場合よりも低減されている。
【0081】
時刻T21〜T30、T25〜T34の期間では、スイッチング素子12a、12dのゲートにはハイレベルのスイッチング制御信号Vg1、Vg4がそれぞれ入力されている。このため、これらの期間では、スイッチング素子12a、12dはオン状態となっており、スイッチング素子12aには、急激に変化するソース−ドレイン電流Iaが流れる。
【0082】
ところが、時刻T30、T34では、スイッチング素子12dのゲートに入力されるスイッチング制御信号Vg4が、ハイレベルからローレベルに切り替わっている。また、時刻T31、T35では、スイッチング素子12cのゲートに入力されるスイッチング制御信号Vg3が、ローレベルからハイレベルに切り替わっている。このため、時刻T30〜T31、T34〜T35の期間では、スイッチング素子12aのみがオン状態となっているが、時刻T31〜T22、T35〜T26の期間では、スイッチング素子12a、12cがオン状態となっている。これにより、図5(b)に示すように、スイッチング素子12aに流れるソース−ドレイン電流Iaの変化が緩やかになり、ソース−ドレイン電流Iaの最大値は、図5(a)よりも小さくなっている。ただし、これでは、起動時におけるスイッチング素子12aのソース−ドレイン電流Iaが十分に低減されているとはいえない。
【0083】
図6(a)は、図5(b)のときよりも時比率調整量(Shift)を増やした場合における、スイッチング制御信号Vg1〜Vg4の波形、及びスイッチング素子12aのソース−ドレイン電流Iaの波形を示している。
【0084】
図6(a)に示す位相シフト制御では、図5(b)と比較すると、スイッチング素子12d(12c)のゲートに入力されるスイッチング制御信号Vg4(Vg3)の立ち上がり、立ち下りのタイミングが、さらに早くなっている。例えば、スイッチング制御信号Vg4の立ち下がりのタイミングは、図6(a)に示すように、スイッチング制御信号Vg1の立ち上がりのタイミングとほぼ同時刻となっている。すなわち、スイッチング制御信号Vg4(Vg3)の立ち上がり、立ち下りのタイミングが、例えば、時刻T22−T21(T23−T40)の分だけ早くなっている。この場合、時刻T20〜T21、T24〜T25の期間では、スイッチング素子12aのボディダイオードには電流が流れない。
【0085】
時刻T21〜T22、T25〜T26の期間では、スイッチング素子12aのゲートにはハイレベルのスイッチング制御信号Vg1が入力され、スイッチング素子12dのゲートにはローレベルのスイッチング制御信号Vg4が入力されている。このため、これらの期間では、スイッチング素子12aがオン状態、スイッチング素子12dがオフ状態となっている。このとき、スイッチング素子12aには、一時的に急激に変化するソース−ドレイン電流Iaが流れる。
【0086】
そして、時刻T40、T42では、スイッチング素子12cのゲートに入力されるスイッチング制御信号Vg3が、ローレベルからハイレベルに切り替わっている。このため、時刻T21〜T40、T25〜T42の期間では、スイッチング素子12aのみがオン状態となっているが、時刻T40〜T22、T42〜T26の期間では、スイッチング素子12a、12cがオン状態となっている。これにより、図6(a)に示すように、スイッチング素子12aに流れるソース−ドレイン電流Iaの変化が、図5(b)より緩やかになり、ソース−ドレイン電流Iaの最大値は、図5(b)よりも小さくなっている。
【0087】
しかし、時比率調整量(Shift)が大きすぎるため、共振素子13の電流(例えば、電流ILr)が逆流し、図6(a)に示すように、時刻T23、T27付近において、ソース−ドレイン電流Iaが逆流している。以下では、このような逆流した電流をリカバリ電流ともよぶ。このような状態でスイッチング素子12bがオン状態に切り替わると、スイッチング素子12aのボディダイオードにリカバリ電流が流れている期間は、入力端P1と接続されたノードと、入力端P2と接続されたノードとが、スイッチング素子12a、12bを介して短絡した状態となる。このとき、スイッチング素子12a、12bには短絡電流が流れるため、リカバリ耐性が低いスイッチング素子12a、12bは破壊されるおそれがある。
【0088】
そこで、図6(b)では、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を図5よりも大きくし、時比率調整量(Shift)を図6(a)よりも小さくした場合における、スイッチング制御信号Vg1〜Vg4の波形、及びスイッチング素子12aのソース−ドレイン電流Iaの波形を示している。
【0089】
すなわち、図6(b)に示すスイッチング周期(Tsw)は、図5(a)〜(b)、図6(a)に示すスイッチング周期(Tsw)よりも短く設定されている。また、図6(b)に示すように、スイッチング制御信号Vg4の立ち下りのタイミングは、スイッチング制御信号Vg1が立ち上がった直後になっていることから、図6(b)における時比率調整量(Shift)は、図6(a)に示す時比率調整量(Shift)よりも小さく設定されている。
【0090】
図6(b)に示すように、時刻T50〜T51、T54〜T55の期間では、スイッチング素子12aのゲートにはローレベルのスイッチング制御信号Vg1が入力されている。このため、これらの期間では、スイッチング素子12aはオフ状態となっている。これらの期間では、スイッチング素子12aのボディダイオードに負方向の電流が流れる。ただし、これらの期間に流れる電流は、図5(b)に示すT20〜T21、T24〜T25の期間に流れる電流よりも低減されている。
【0091】
時刻T51〜T60、T55〜T64の期間では、スイッチング素子12a、12dのゲートにはハイレベルのスイッチング制御信号Vg1、Vg4がそれぞれ入力されている。このため、これらの期間では、スイッチング素子12a、12dはオン状態となっており、スイッチング素子12aには、急激に変化するソース−ドレイン電流Iaが流れる。ただし、時刻T51〜T60、T55〜T64の期間に流れる急激に変化するソース−ドレイン電流Iaは、図6(a)の場合と比べて小さくなっている。
【0092】
時刻T60、T64では、スイッチング素子12dのゲートに入力されるスイッチング制御信号Vg4が、ハイレベルからローレベルに切り替わっている。また、時刻T61、T65では、スイッチング素子12cのゲートに入力されるスイッチング制御信号Vg3が、ローレベルからハイレベルに切り替わっている。このため、時刻T60〜T61、T64〜T65の期間では、スイッチング素子12aのみがオン状態となっているが、時刻T61〜T52、T65〜T56の期間では、スイッチング素子12a、12cがオン状態となっている。
【0093】
これにより、図6(b)に示すように、スイッチング素子12aに流れるソース−ドレイン電流Iaの変化が緩やかになり、ソース−ドレイン電流Iaの最大値は、図6(a)よりも小さくなっている。また、この場合、図6(b)に示すように、リカバリ電流の発生も抑えられている。
【0094】
ここで、起動時から定常時までの間におけるスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)の変化について説明する。図7は、本発明の実施の形態1に係るスイッチング周波数上限値の変化の一例を示す図である。図7(a)は、起動信号の一例を示す図である。図7(b)は、出力電圧(Vo)の変化の一例を示す図である。図7(c)は、スイッチング周波数上限値の変化の一例を示す図である。
【0095】
時刻T100〜T101の期間では、図7(a)に示す起動信号(RUN)はローレベルである。このとき、共振形電源装置1は起動しておらず、出力電圧(Vo)の調整は行われていない。なお、共振形電源装置1は起動していない場合とは、例えば、電源制御回路30からスイッチング制御信号Vg1〜Vg4が出力されず、あるいはローレベルのスイッチング制御信号のみが出力されており、スイッチング素子12a〜12dの動作が停止している状態である。
【0096】
このため、この期間の出力電圧(Vo)は、図7(b)に示すようにほぼゼロである。このときのスイッチング周波数上限値(F1:Fsw_upper_limit)は、例えば、図7(c)に示すように、共振素子13の共振周波数F0の2倍の値(2×F0)、あるいはそれ以下の所定の値に設定される。
【0097】
そして、図7(a)に示すように、時刻T101において、ハイレベルの起動信号(RUN)が入力されると、共振形電源装置1が起動し、スイッチング周波数上限値調整回路32は、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)の調整を開始する。例えば、スイッチング周波数上限値調整回路32は、リファレンス電圧(Vref)と出力電圧(Vo)との差分(ΔV)に基づいてスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)の減少量を算出する。スイッチング周波数上限値調整回路32は、算出した減少量に基づき、図7(c)に示すように、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を所定の上限値(F2:第2の上限値)まで順次低下させる。
【0098】
そして、図7(a)に示すように、時刻T102において、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)に達すると、スイッチング周波数上限値調整回路32は、図7(c)に示すように、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を所定の値(F2)に設定する。図示は省略しているが、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)より高くなったとき、スイッチング周波数上限値調整回路32は、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を所定の値(F2)に固定してもよい。スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)が変動しないので、共振形電源装置1の動作が安定するからである。このように、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)に達すると、共振形電源装置1は、起動時の動作から定常時の動作に切り替わる。
【0099】
このように、起動時だけでなく、起動時から定常時に切り替わるまで、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)の調整が行われてもよい。例えば、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)よりも小さい場合、共振形電源装置1は、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)の調整を行いつつ、出力電圧(Vo)を調整してもよい。
【0100】
<本実施の形態による効果>
本実施の形態によれば、電源制御回路30は、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)より小さいときのスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)以上であるときのスイッチング周波数上限値よりも高く設定する。
【0101】
この構成によれば、入力電圧(Vin)と出力電圧(Vo)との電位差が大きくても、スイッチング素子12a〜12dにおけるオン状態の期間が短縮されるので、スイッチング素子12a〜12dに流れるソース−ドレイン電流が低減される。これにより、スイッチング素子12a〜12dの破壊による不具合の発生が抑えられる。また、これにより、それぞれのスイッチング素子12a〜12dに、最大定格電流が低い安価なMOSを採用することが可能である。
【0102】
また、本実施の形態によれば、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)より小さいとき、電源制御回路30は、出力電圧(Vo)が上昇するにつれてスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を低下させる。例えば、電源制御回路30は、起動信号(RUN)が入力されるまで、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を第1の上限値である所定の値F1に設定し、起動信号(RUN)が入力されると、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)に達するまでの間、出力電圧(Vo)とリファレンス電圧(Vref)との差分(ΔV)に基づいて、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を第2の上限値である所定の値F2まで順次低下させる。
【0103】
この構成によれば、出力電圧(Vo)とリファレンス電圧(Vref)との差分(ΔV)に基づいて、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)が適切な値に設定されるので、スイッチング素子12a〜12dに流れるソース−ドレイン電流を適切に制御することが可能となる。これにより、スイッチング素子12a〜12dの破壊による不具合の発生が抑えられる。また、これにより、それぞれのスイッチング素子12a〜12dに、最大定格電流が低い安価なMOSを採用することが可能である。
【0104】
また、本実施の形態によれば、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)以上のとき、電源制御回路30は、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を第2の上限値である所定の値F2に固定する。この構成によれば、定常時には、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)が変動しないので、共振形電源装置1の動作を安定させることが可能となる。
【0105】
また、本実施の形態によれば、電源制御回路30は、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を共振素子13の共振周波数F0の2倍以下の値に設定する。この構成によれば、ダイオードリカバリによる短絡電流の発生を抑えつつ、Vg1〜Vg4を生成するスイッチング制御信号生成回路34等の各種回路の負担を低減させることが可能となる。
【0106】
また、本実施の形態によれば、電源制御回路30は、算出した制御量(Fsw_shift)がスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)に相当する制御量より大きいとき、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)以下の所定の値(例えば、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit))を新たなスイッチング周波数(Fsw)に設定し、算出した制御量(Fsw_shift)と新たなスイッチング周波数(Fsw)に相当する制御量との差分に相当する時比率調整量(Shift)を算出する。そして、電源制御回路30は、新たに設定したスイッチング周波数(Fsw)及び時比率調整量(Shift)に基づいてそれぞれのスイッチング素子12a〜12dのスイッチング制御信号Vg1〜Vg4を生成する。
【0107】
この構成によれば、時比率調整量(Shift)により、スイッチング素子12a〜12dのオン・オフの期間を調整することができるので、スイッチング素子12a〜12dに流れるダイオードリカバリによる短絡電流の発生を抑えることが可能となる。これにより、それぞれのスイッチング素子12a〜12dに、リカバリ耐性が低く、オン抵抗が低いMOSを採用することが可能である。また、これにより、入力端P1と接続されたノードと、入力端P2と接続されたノードとの短絡が発生しなくなるので、ダイオードリカバリによる短絡電流に起因する不具合の発生が抑えられる。
【0108】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。なお、以下の各実施の形態においては、前述の実施の形態と重複する箇所について、原則として詳細な説明を省略する。図8は、本発明の実施の形態2に係る共振形電源装置の構成の一例を示す図である。図8に示す共振形電源装置1の構成要素は、図1に示す共振形電源装置1の構成要素と同様である。
【0109】
図8に示す共振形電源装置1では、電源制御回路30のスイッチング周波数上限値調整回路32には、出力電圧(Vo)が起動信号として入力されている。スイッチング周波数上限値調整回路32は、出力電圧(Vo)が入力されると、出力電圧(Vo)とリファレンス電圧(Vref)との差分(ΔV)に基づいて、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)の調整を行う。
【0110】
図9は、本発明の実施の形態2に係るスイッチング周波数上限値の変化の一例を示す図である。図9(a)は、出力電圧(Vo)の変化の一例を示す図である。図9(b)は、スイッチング周波数上限値の変化の一例を示す図である。本実施の形態では、図9(a)に示すように、時刻T100において、出力電圧(Vo)がスイッチング周波数上限値調整回路32に入力されている。このとき、共振形電源装置1は起動しており、出力電圧(Vo)の調整が行われている。
【0111】
スイッチング周波数上限値調整回路32は、図9(b)に示すように、出力電圧(Vo)が入力された時刻T100からスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)の調整を開始する。例えば、スイッチング周波数上限値調整回路32は、時刻T100〜T102までの期間、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を、例えばF1(2×F0)からF2まで徐々に低下させる。そして、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)に達すると、スイッチング周波数上限値調整回路32は、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)をF2に固定する。
【0112】
なお、本実施の形態では、スイッチング周波数上限値調整回路32に、出力電圧(Vo)が起動信号として入力された場合について説明したが、このような場合に限定されるものではない。例えば、起動時のような出力電圧(Vo)が非常に低い場合におけるスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を、定常時のように出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)に近い場合におけるスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)よりも高く設定できるのであれば、スイッチング周波数上限値調整回路32は、どのような信号を基準にして動作しても構わない。
【0113】
本実施の形態によれば、前述の実施の形態における各効果に加え、以下の効果が得られる。本実施の形態によれば、スイッチング周波数上限値調整回路32に出力電圧(Vo)が入力されると、出力電圧(Vo)とリファレンス電圧(Vref)との差分(ΔV)に基づいて、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)の調整を行う。この構成によれば、出力電圧(Vo)が入力されると、直ちにスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)の調整を行うことが可能となる。
【0114】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態では、起動時から所定の期間、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を固定している。
【0115】
図10は、本発明の実施の形態3に係るスイッチング周波数上限値の変化の一例を示す図である。図10(a)は、起動信号の一例を示す図である。図10(b)は、出力電圧(Vo)の変化の一例を示す図である。図10(c)は、スイッチング周波数上限値の変化の一例を示す図である。
【0116】
図7に示す例では、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)より小さいとき、スイッチング周波数上限値調整回路32は、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)をF1からF2まで徐々に低下させていた。これに対し、本実施の形態では、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)より小さいとき、スイッチング周波数上限値調整回路32は、図10(c)に示すように、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)を所定の値(例えば、F1:第3の上限値)に固定する。
【0117】
そして、時刻T102において、出力電圧(Vo)がリファレンス電圧(Vref)に達すると、スイッチング周波数上限値調整回路32は、図10(c)に示すように、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)をF1からF2(第4の上限値)へ低下させる。
【0118】
本実施の形態によれば、前述の実施の形態における各効果に加え、以下の効果が得られる。本実施の形態によれば、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)の調整の回数が大幅に低減されるので、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)の調整に関する制御に係る負荷が低減される。
【0119】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態では、前述の各実施の形態における共振形電源装置1とは異なる構成を備えた共振形電源装置について説明する。
【0120】
図11は、本発明の実施の形態4に係る共振形電源装置の構成の一例を示す図である。共振形電源装置101は、図11に示すように、電源主回路110、電源制御回路30を備えている。電源主回路110は、図11に示すように、トランス114、二次側半導体素子115等を備えている。
【0121】
トランス114は、いわゆるセンタータップ方式で構成されている。詳しくは、トランス114の二次側には、図11に示すように、センタータップ114aが設けられている。また、トランス114の二次側には、図11に示すように、センタータップ114aと接続された出力端P115が設けられている。すなわち、トランス114は、3つの出力端P13、P14、P115を備えている。トランス114のこれら以外の構成は、図1に示すトランス14と同様である。
【0122】
二次側半導体素子115は、トランス114の二次側の電流を整流する素子である。二次側半導体素子115は、図11に示すように、ダイオード115a、115bを備えている。例えば、ダイオード115aのカソード側の端部は、トランス114の出力端P14と接続されている。ダイオード115bのカソード側の端部は、トランス114の出力端P13と接続されている。トランス114の出力端P115は、出力側コンデンサ16の一方の電極、及び電源主回路110の一方の出力端P3と接続されている。ダイオード115aのアノード側の端部、及びダイオード115bのアノード側の端部は、出力側コンデンサ16の他方の電極、及び電源主回路110の他方の出力端P4と接続されている。
【0123】
出力端P115の電圧が出力端P13の電圧より高い場合、トランス114の二次側の電流は、ダイオード115bにより整流される。これに対し、出力端P115の電圧が出力端P14の電圧より高い場合、トランス114の二次側の電流は、ダイオード115aにより整流される。
【0124】
図11に示すようなセンタータップ方式のトランス114を備えた共振形電源装置101においても、前述の実施の形態における各効果が得られる。
【0125】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について説明する。本実施の形態では、電源主回路10に流れる電流に基づいて制御量(Fsw_shift)を算出する場合について説明する。
【0126】
図12は、本発明の実施の形態5に係る共振形電源装置の構成の一例を示す図である。共振形電源装置201は、図12に示すように、電源主回路10、電源制御回路230を備えている。
【0127】
電源主回路10は、電源主回路10に流れる出力電流ILを検出し、検出した出力電流ILの情報を電源制御回路230へ出力する。なお、図12に示す例では、電源主回路10は、二次側半導体素子15に流れる電流を出力電流ILとして検出しているが、例えば、共振素子13や一次側半導体素子12に流れる電流を出力電流ILとして検出してもよい。
【0128】
電源制御回路230は、図12に示すように、制御量演算回路231等を備えている。制御量演算回路231は、電圧制御回路231a、電流制御回路231bを備えている。電圧制御回路231aには、出力電圧(Vo)及びリファレンス電圧(Vref)が入力される。電圧制御回路231aは、入力された出力電圧(Vo)及びリファレンス電圧(Vref)に基づいて、リファレンス電圧(Vref)に対応する電流の目標値であるリファレンス電流Irefを算出する。電圧制御回路231aは、算出したリファレンス電流Irefを電流制御回路231bへ出力する。また、電圧制御回路231aは、出力電圧(Vo)及びリファレンス電圧(Vref)の差分(ΔV)を算出し、算出した電圧の差分(ΔV)をスイッチング周波数上限値調整回路32へ出力する。
【0129】
電流制御回路231bには、図12に示すように、リファレンス電流Iref及び電源主回路10を流れる出力電流ILの情報が入力される。電流制御回路231bは、入力されたリファレンス電流Iref及び電源主回路10を流れる出力電流ILに基づいて、制御量(Fsw_shift)を算出する。例えば、電流制御回路231bは、出力電流ILとリファレンス電流Irefとの電流の差分(ΔI)を算出し、算出した電流の差分(ΔI)に基づいて制御量(Fsw_shift)を算出する。
【0130】
電流制御回路231bは、算出した制御量(Fsw_shift)をシフト量演算回路33へ出力する。このように、本実施の形態の共振形電源装置201は、電源主回路10に流れる出力電流ILに基づいて出力電圧(Vo)の調整を行う。
【0131】
本実施の形態によれば、センタータップ方式のトランス114を備えた共振形電源装置201においても、前述の実施の形態における各効果が得られる。
【0132】
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6について説明する。これまでの実施の形態では、制御量演算回路31、231は、周波数の単位で制御量(Fsw_shift)を算出する場合について説明した。また、スイッチング周波数上限値調整回路32では、電圧の差分(ΔV)に基づいて、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)が設定されていた。また、シフト量演算回路33では、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)及び制御量(Fsw_shift)に基づいてスイッチング周波数(Fsw)等が算出されていた。このように、これまでの実施の形態では、周波数の単位でそれぞれの値が設定、算出されていた。これに対し、本実施の形態では、時間の単位でそれぞれの値が設定、算出される場合について説明する。
【0133】
図13は、本発明の実施の形態6に係る共振形電源装置の構成の一例を示す図である。共振形電源装置301は、図13に示すように、電源主回路10、電源制御回路330を備えている。電源制御回路330は、図13に示すように、制御量演算回路331、スイッチング周期下限値調整回路332、シフト量演算回路333、スイッチング制御信号生成回路334を備えている。
【0134】
制御量演算回路331は、入力された出力電圧(Vo)及びリファレンス電圧(Vref)に基づいて、例えば、時間の単位で制御量を算出する。制御量演算回路331は、時間の単位で算出した制御量(Tsw_shift)をシフト量演算回路333へ出力する。
【0135】
スイッチング周期下限値調整回路332は、図1などに示すスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)に対応するスイッチング周期下限値(Tsw_lower_limit)を設定する。スイッチング周期下限値調整回路332は、設定したスイッチング周期下限値(Tsw_lower_limit)をシフト量演算回路333へ出力する。
【0136】
シフト量演算回路333は、制御量演算回路331で算出された制御量(Tsw_shift)、及びスイッチング周期下限値調整回路332で設定されたスイッチング周期下限値(Tsw_lower_limit)に基づいて新たなスイッチング周期(Tsw)を設定し、時比率調整量(Shift)を算出する。シフト量演算回路333は、設定した新たなスイッチング周期(Tsw)、及び算出した時比率調整量(Shift)をスイッチング制御信号生成回路334へ出力する。
【0137】
スイッチング制御信号生成回路334は、シフト量演算回路333から出力されたスイッチング周期(Tsw)及び時比率調整量(Shift)に基づいて、スイッチング素子12a〜12dごとのスイッチング制御信号Vg1〜Vg4を生成する。スイッチング制御信号生成回路334で生成されるスイッチング制御信号Vg1〜Vg4は、図1などに示すスイッチング制御信号生成回路34で生成されるスイッチング制御信号Vg1〜Vg4と同一である。
【0138】
本実施の形態によれば、時間を単位とするスイッチング周期下限値(Tsw_lower_limit)及び制御量(Tsw_shift)に基づいた場合にも、周波数を単位とするスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)及び制御量(Fsw_shift)に基づいた場合と同一のスイッチング制御信号Vg1〜Vg4が生成される。
【0139】
(実施の形態7)
本実施の形態では、時比率調整量(Shift)を一定の値に保持し、スイッチング周波数(Fsw)を変更しながら出力電圧(Vo)を調整する場合について説明する。
【0140】
算出された制御量(Fsw_shift)がスイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)に相当する制御量より大きいとき、例えば、図1などに示すシフト量演算回路33は、時比率調整量(Shift)を所定の値に設定する。そして、シフト量演算回路33は、制御量(Fsw_shift)と、設定した時比率調整量(Shift)に相当する制御量との差分を算出し、算出した制御量の差分に相当する周波数を、新たなスイッチング周波数(Fsw)に設定する。
【0141】
また、出力電圧(Vo)が変動し、例えば、図1などに示す制御量演算回路31から次の制御量(Fsw_shift)が出力されると、シフト量演算回路33は、時比率調整量(Shift)を一定の値に保持したまま、次の制御量(Fsw_shift)と、時比率調整量(Shift)に相当する制御量との差分を算出し、算出した制御量の差分に相当する周波数を、新たなスイッチング周波数(Fsw)に設定する。このように、シフト量演算回路33は、時比率調整量(Shift)を一定の値に保持したまま、スイッチング周波数(Fsw)を調整する。
【0142】
なお、制御量(Fsw_shift)と、時比率調整量(Shift)に相当する制御量との差分が、スイッチング周波数上限値(Fsw_upper_limit)に相当する制御量よりも大きいとき、シフト量演算回路33は、新たな時比率調整量(Shift)を設定し、スイッチング周波数(Fsw)を調整する。
【0143】
本実施の形態によれば、時比率調整量(Shift)を一定の値に保持した場合にも、スイッチング周波数(Fsw)を変更することにより出力電圧(Vo)を調整することが可能である。
【0144】
なお、ここでは、周波数を単位とした場合について説明したが、図13に示すような時間を単位とした場合にも、本実施の形態で説明した内容が適用される。例えば、図13に示すシフト量演算回路333は、時比率調整量(Shift)を一定の値に保持し、時間を単位とする制御量の差分を算出することにより、スイッチング周期(Tsw)を変更することができる。
【0145】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、一次側半導体素子を構成するスイッチング素子、及び二次側半導体素子を構成するダイオードは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の素子で構成されても構わない。また、本発明の共振形電源装置は、単独で構成されたものであってもよいし、その他の構成要素とともに、制御IC等の各種装置に組み込まれてもよい。また、例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0146】
また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。なお、図面に記載した各部材や相対的なサイズは、本発明を分かりやすく説明するため簡素化・理想化しており、実装上はより複雑な形状となる場合がある。
【符号の説明】
【0147】
1…共振形電源装置、10…電源主回路、11…入力側コンデンサ、12…一次側半導体素子、12a〜12d…スイッチング素子、13…共振素子、14…トランス、15…二次側半導体素子、15a〜15d…ダイオード、16…出力側コンデンサ、30…電源制御回路、31…制御量演算回路、32…スイッチング周波数上限値調整回路、33…シフト量演算回路、34…スイッチング制御信号生成回路、101…共振形電源装置、110…電源主回路、114…トランス、115…二次側半導体素子、115a〜115b…ダイオード、201…共振形電源装置、230…電源制御回路、231…制御量演算回路、231a…電圧制御回路、231b…電流制御回路、301…共振形電源装置、330…電源制御回路、331…制御量演算回路、332…スイッチング周期下限値調整回路、333…シフト量演算回路、334…スイッチング制御信号生成回路、Vg1〜Vg4…スイッチング制御信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13