【文献】
WANG, S.M., et al.,A novel semiconductor compatible path for nano-graphene synthesis using CBr4 precursor and Ga cataly,Scientific Reports,2014年 4月11日,Vol.4, Article number:4653,pp.1-7,特にAbstract, Methods, 第1頁第1段落、第4頁右欄、第6頁左欄
【文献】
WANG, Jiao, et al.,High-mobility graphene on liquid p-block elements by ultra-low-loss CVD growth,Scientific reports,2013年 9月16日,Vol.3, Article number:2670,pp.1-7,特にAbstract, Methods, The domain shape of graphene grown on a liquid Ga surface.,第6頁左欄
【文献】
檜山卓希 ほか,CVD法を用いた液体ガリウム触媒界面におけるグラフェン合成,第62回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集,日本,2015年 2月26日,12P-D7-9
【文献】
DING, Guqiao, et al.,Chemical vapor deposition of graphene on liquid metal catalysts,Carbon,2012年11月17日,Vol.53,pp.321-326,特にABSTRACT, 2.1, 第323頁右欄
【文献】
CHAN, Shih-hao, et al.,Low-temperature synthesis of graphene on Cu using plasma-assisted thermal chemical vapor deposition,Nanoscale Research Letters,2013年 7月12日,Vol.8:285,pp.1-5,特にAbstract, Methods
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板の主面にガリウムの液滴を接触させた状態で炭化水素を含有するガスを供給し、前記基板の主面と前記ガリウムとの接触面に炭素六員環の生成核を形成する第1の工程と、
前記生成核が形成された基板の主面領域にガリウムを接触させた状態で炭化水素を含有するガスを供給し、前記生成核の周りで2次元的に炭素六員環を形成してグラフェン膜とする第2の工程を備え、
前記第2の工程における炭素六員環の形成を300℃以下、かつ100℃以上の温度で実行する、グラフェンの製造方法。
基板主面に形成されたレジストパターンに、ガリウムを接触させ、該ガリウムを融点を超える温度に保持した状態で炭化水素を含有するガスを供給し、前記基板主面のガリウムとの接触界面にグラフェンを300℃以下、かつ100℃以上の温度にて成長させ、前記レジストパターンをグラフェン化して回路を形成する工程を含むことを特徴とする電子素子の製造方法。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、その理想的な2次元構造に起因して様々な特異的性質を有しており、例えば、良伝導性、高い電子・正孔移動度を有している。これに加えて、非弾性的な電子伝導性やスピン伝導性、力学的強度、光吸収および発光、熱伝導等の特性も注目されており、各種分野への工業的応用が期待されている物質である。
【0003】
グラフェンの製造方法としては、現在、熱分解黒鉛結晶からの剥離方法、固相反応法、化学気相成長法等が知られている。
【0004】
グラフェンの最初の発見はNovoselov等によるものであり、このグラフェンは、熱分解黒鉛結晶をスコッチテープで剥離し、Si基板へ転写させたものである。グラフェン結晶のサイズは数ミクロン程度のものであるが、比較的再現性良く容易にグラフェン膜が得られることが特徴である(非特許文献1、2)。
【0005】
固相反応法では、炭化ケイ素結晶を2000℃度程度で真空熱処理することで表面のSi元素を蒸発(シリコンサブリメーション)させ、炭化ケイ素表面にグラフェン結晶層を形成する(非特許文献3〜7)。
【0006】
気相成長法では、ニッケルや鉄等の金属結晶表面に炭化水素ガスを原料として熱CVD法により成長させることでグラフェン膜を形成する(非特許文献8、9)。
【0007】
また、銅箔を触媒とするプラズマCVD法によれば、300〜400℃の低い基板温度でグラフェンの合成が可能とされるが(非特許文献10)、得られるグラフェンは単層ではなく多層である。
【0008】
さらに、プラズマアシスト法によれば、600℃程度の比較的低い基板温度でも単層のグラフェンが得られるとされるが(非特許文献11)、得られたグラフェンのラマン散乱スペクトルには、1300cm
−1近傍に現れる欠陥起因の非常に強いDピークが観察される。加えて、基板温度の低温化に伴い微小なグラフェン核が多量に生成し、その結果、合成されたグラフェン膜をミクロに見ると粒界が高密度で存在し、これが電子移動度を顕著に低下させてしまう。また、プラズマイオンによる衝撃により膜の表面や内部に欠陥が形成され、電気特性を劣化させるという問題もある。
【0009】
このように、従来の方法では、単層のグラフェンを比較的低温で得ることは非常に困難であり、例えば熱CVDによる気相成長法では数十層が積層したグラファイト膜に近いものとなっている。
【0010】
しかも、合成されたグラフェンを母材から単離し、Si等の電子素子基板上に転写等することも非常に困難であるため、電子素子への応用という観点からの問題もある。
【0011】
電子デバイスやセンサ、配線等の部品の一部としてグラフェンを利用する場合、所望の位置に所望の方向でグラフェンを配置することが重要な技術的課題となるが、上記した従来の方法ではこのような技術的課題に有効に対処できないという問題点がある。
【0012】
これらの問題点の主要因は、既存のグラフェン素子報告例にあるように熱分解黒鉛結晶をスコッチテープで剥離し、偶然に再転写されたグラフェン膜を見つけ出して素子形成に利用されているという事実が示すように、大面積のグラフェン膜を得ることが非常に困難であるという事情に由来する。剥離されたグラフェン自体のサイズや均一性には大きなばらつきがあり、その転写位置を任意に制御できないこと等も大きな要因である。さらにグラフェンは本来、炭素六員環で構成される1原子層の究極的な厚さの膜であるため、大面積での取り扱いには根本的・原理的な困難が伴う。
【0013】
加えて、グラフェンの特長を生かした電子素子等への応用の観点からは、大面積かつ高品位の単層のグラフェンの合成温度の更なる低温化を可能とする技術が望まれる。
【0014】
低温でのグラフェンの合成という課題につき、本発明者らは、大面積のグラフェンを、高温を必要とすることなく製造することができるグラフェン膜の製造方法を提案した(特許文献1)。
【0015】
特許文献1において本発明者らが報告した手法では、まず目的のグラフェン膜の原料として、例えば直径数ミリから数センチの径を有し、厚さが数ナノメートルのアモルファスカーボン膜を合成する。
【0016】
具体的には、アモルファスカーボン膜の原料として、コロジオン膜やフォルンバール膜等の有機膜を形成し、この有機膜をアルミナ等のセラミックスリングですくい取り、セラミックスリングの上に有機膜を張る。
【0017】
次いで、この有機膜を真空熱処理することによりアモルファス状に炭化させてアモルファスカーボン膜を合成する。例えば、有機膜を張ったセラミックスリングを500℃で30分真空熱処理すると有機膜が分解し、炭素に変性する。
【0018】
さらに、このようにして得られたアモルファスカーボン膜を液体ガリウムの表面に接触させて転写し、真空中で熱処理を行う。液体ガリウムの非常に強い表面張力のために液面は凸状に盛り上がり、この液体ガリウムの凸状液面にアモルファスカーボン膜が転写される。
【0019】
そして、このアモルファスカーボン膜を、例えば、真空中1000℃で10〜30分程度熱処理を行うことで、液体ガリウムとアモルファスカーボン膜との接触界面にグラフェンが形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
特許文献1の手法は低温でのグラフェンの合成を課題とするものであるが、本発明者らの、「ガリウムと炭素との反応過程の研究から液体ガリウムとアモルファス炭素との界面でグラファイト化反応が約1000℃程度の比較的低温で誘起され、大面積のグラフェンの形成が可能である」との知見に基づくものであるため、その低温化は充分とは言えない。
【0023】
上述のとおり、グラフェンの特長を生かした電子素子等への応用の観点からは、大面積かつ高品質の単層グラフェンの低温合成技術が望まれるところであり、特に、既存のシリコンデバイスとのハイブリッド化を想定した場合には、400℃程度での低温でも上記グラフェンを製造可能とする技術が望まれる。
【0024】
本発明は、このような従来法の抱える問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、大面積かつ高品位のグラフェンを、従来法では到底成し得なかったほどの低温で製造する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題に鑑みてなされた本発明に係る第1の態様のグラフェンの製造方法は、基板の主面に炭素六員環の生成核を形成する第1の工程と、前記生成核の周りで2次元的に炭素六員環を形成してグラフェン膜とする第2の工程を備え、前記第2の工程における炭素六員環の形成を300℃以下の温度で実行する、ことを特徴とする。
【0026】
ある態様では、前記第1の工程において、前記基板の主面に融点が400℃以下の金属の液滴を接触させた状態で炭化水素を含有するガスを供給し、前記基板の主面と前記金属との接触面に前記生成核を形成する。
【0027】
例えば、前記融点が400℃以下の金属は、ガリウム、インジウム、ガリウム−インジウム合金の群から選択される少なくとも1種である。
【0028】
また、他の態様では、前記第1の工程における生成核の形成を、フォトリソグラフィ法により予め前記基板の主面に配列されたアモルファス炭素の核を形成しておき、該基板の主面に液体ガリウムを接触させた状態で熱処理して実行する。
【0029】
さらに、他の態様では、前記第1の工程で形成される生成核は、剥離法により形成された炭素六員環である。
【0030】
好ましくは、前記第2の工程において、前記生成核が形成された基板の主面領域にグラフェン合成の触媒作用を有する金属であって融点が400℃以下の金属を接触させた状態で炭化水素を含有するガスを供給し、前記基板の主面と前記金属との接触界面から前記炭素六員環を形成させてグラフェン膜とする。
【0031】
また、好ましくは、前記触媒作用を有する金属として前記炭素六員環の形成温度よりも低い融点を有する金属を選択し、該金属の液滴を前記基板の主面領域に接触させた状態で前記炭素六員環を形成させる。
【0032】
例えば、前記融点が400℃以下の金属は、ガリウム、インジウム、ガリウム−インジウム合金の群から選択される少なくとも1種である。
【0033】
好ましくは、前記炭化水素を含有するガスをプラズマ化して供給する。
【0034】
本発明に係る第2の態様のグラフェンの製造方法は、基板の主面に炭素六員環の生成核を形成する第1の工程と、前記生成核を形成した基板の主面に、グラフェン合成の触媒作用を有する金属であって融点が400℃以下の金属を接触させ、該金属を融点を超える温度に保持した状態で炭化水素を含有するガスを供給し、前記基板主面の金属との接触界面にグラフェンを成長させる第2の工程と、を備えている。
【0035】
例えば、前記融点が400℃以下の金属は、ガリウム、インジウム、ガリウム−インジウム合金の群から選択される少なくとも1種である。
【0036】
好ましくは、前記第1の工程は、前記基板を1000℃以上の温度に保持した状態で炭化水素を含有するガスを供給して実行される。
【0037】
また、好ましくは、前記第1の工程は、前記基板の主面に、グラフェン合成の触媒作用を有する金属であって融点が1000℃未満の金属を接触させた状態で前記炭化水素を含有するガスを供給して実行される。
【0038】
例えば、前記融点が1000℃未満の金属は、ガリウム、インジウム、アンチモンおよびそれらの合金の群から選択される少なくとも1種である。
【0039】
ある態様では、前記第1の工程は、剥離法により前記基板の主面にグラファイト若しくはグラフェンを転写して実行される。
【0040】
また、他の態様では、前記第1の工程は、フォトリソグラフ法により前記基板の主面にグラファイト若しくはグラフェンをパターニングして実行される。
【0041】
さらに、他の態様では、前記第2の工程は、プラズマアシスト法により前記炭化水素ガスの分解効率を高めて実行される。
【0042】
好ましくは、前記第2の工程は、融点が400℃以下の金属としてガリウムを選択し、300℃以下の温度で実行される。
【0043】
また、好ましくは、前記第2の工程に続き、前記基板から前記グラフェンを分離する第3の工程を備えている。
【0044】
例えば、前記基板はオフ角の絶対値が30°以内の(0001)面(C面)を主面とするサファイヤである。
【0045】
本発明に係る電子素子の製造方法は、基板主面に形成されたレジストパターンに、グラフェン合成の触媒作用を有する金属であって融点が400℃以下の金属を接触させ、該金属を融点を超える温度に保持した状態で炭化水素を含有するガスを供給し、前記基板主面の金属との接触界面にグラフェンを成長させ、前記レジストパターンをグラフェン化して回路を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0046】
例えば、前記融点が400℃以下の金属は、ガリウム、インジウム、およびそれらの合金の群から選択される少なくとも1種である。
【0047】
本発明に係るグラフェンは、炭素六員環の集合からなる複数のドメインから構成され、前記複数のドメインのそれぞれは、該ドメイン内に前記炭素六員環の生成核を有し、その密度が1×10
6cm
−2以下であることを特徴とする。
【0048】
好ましくは、前記ドメイン内の炭素六員環の方位がグラフェン膜の少なくとも10
−7cm
2の範囲内で実質的に同一であり、1×10
−7cm
2以上の面積を有する連続膜であり、実質的に単層の膜である。
【0049】
また、好ましくは、前記グラフェンから得られるラマン散乱スペクトル中に認められる2700cm
−1近傍の2Dバンドのピークと1590cm
−1近傍のGバンドのピークの強度比(2D/G比=I
2D/I
G)が1以上である。
【0050】
さらに、好ましくは、前記グラフェンから得られるラマン散乱スペクトル中に認められる1590cm
−1近傍のGバンドのピークと1300cm
−1近傍のDバンドのピークの強度比(G/D比=I
G/I
D)が3以上である。
【0051】
本発明に係る電子素子は、上述のグラフェンを備えた電子素子である。
【0052】
好ましい態様では、前記グラフェンから成るチャネル領域を有する。
【発明の効果】
【0053】
本発明では、基板上に予め炭素六員環の生成核を形成し、この生成核の周りで、2次元的な炭素六員環の形成を行うこととした。これにより、大面積かつ高品質の単層グラフェンの低温合成技術が提供される。
【0054】
このようなグラフェンを電子素子に応用することにより、その良伝導性、高い電子・正孔移動度、非弾性的な電子伝導性やスピン伝導性、力学的強度、光吸収および発光、熱伝導等の優位な特性により、高性能の電子素子を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下に、図面を参照して、本発明に係るグラフェンおよびその製造方法ならびに電子素子への応用例につき、説明する。
【0057】
本発明は、ガリウム等の金属を触媒として用い、メタン等の炭化水素ガスを炭素源としてグラフェンを合成させることとすると、予め炭素六員環の生成核を形成させておいた基板上には、従来の手法でグラフェンを合成する温度よりも遥かに低い100℃程度の極めて低い温度でも、実質的に単層のグラフェンが大面積かつ高品質で得られるという、本発明者らの新たな知見に基づくものである。
【0058】
上述の特許文献1にも記載があるように、冶金学的にみれば、ガリウムと炭素とは全律非固溶である。しかし、X線吸収端スペクトル(NEXAFS)のデータから、ガリウム原子と炭素原子との結合が形成されることが示されている。本発明者らは更に検討を進めた結果、基板上に予め炭素六員環の生成核を形成させておけば、この生成核の周りで、2次元的な炭素六員環の形成が、100℃程度の極めて低い温度でも進行するという知見を得るに至った。
【0059】
なお、以下の説明では、触媒として作用する金属をガリウムとして説明するが、本発明は、ガリウムと同様の触媒作用を有する金属を排除するものではなく、斯かる金属としては、例えば、インジウムおよびアンチモンを例示することができる。また、このような触媒作用を有するものとして、ガリウム、インジウム、アンチモンの合金を用いてもよい。
【0060】
図1は、本発明に係るグラフェンを合成(製造)するための手法の一例を説明するための図で、
図1(a)は反応系の構成例を示す図であり、
図1(b)はプロセス温度シーケンスの例を示す図である。
【0061】
この図に示した反応系の例では、第1の工程として、高周波加熱が可能な石英管100の内部に、基板10の主面に、グラフェン合成の触媒作用を有する金属であって融点が1000℃未満の金属20を接触させた状態で、炭化水素を含有するガスを供給して、CVD法により基板10の主面に炭素六員環の生成核を形成する。
【0062】
炭素六員環の生成核は、例えば6角形状のグラファイトや多層のグラフェンであり、そのような生成核の源となる炭素は基板10と金属20との接触界面に供給され、当該界面領域に生成核が形成されることになる。
【0063】
上記金属20の融点を1000℃未満とするのは、グラフェン合成の触媒作用を奏するためには金属20が液体の状態にある必要があること、そして、炭素六員環の生成核を効率的に形成するためには1000℃以上の温度が必要となることによる。
【0064】
つまり、
図1(a)に示した例では、第1の工程において、基板10を1000℃以上の温度に保持した状態で炭化水素を含有するガスを供給することにより、CVD法により生成核の形成が実行される。
【0065】
ここで、上述の融点が1000℃未満の金属は、ガリウム(融点29.78℃)はもとより、インジウム(融点156.61℃)、アンチモン(融点630.74℃)などを例示することができ、これらの金属のうちの少なくとも1種が選択される。また、これらの金属に代えて、ガリウム、インジウム、アンチモンの合金を用いてもよい。つまり、上述した「融点が1000℃未満の金属」として、ガリウム、インジウム、アンチモンおよびそれらの合金の群から選択される少なくとも1種を選択するようにして良い。
【0066】
後述のとおり、本発明の方法によれば、300℃以下といった低温でのグラフェンの成膜も可能となるが、その前提となるのが、基板の主面への炭素六員環の生成核の形成である。
【0067】
図1に示した例では、基板の主面に炭素六員環の生成核を形成するに際し、基板の主面にラフェン合成の触媒作用を有する金属であって融点が1000℃未満の金属を接触させた状態で、炭化水素を含有するガスを供給している。しかし、このような方法の他に、以下のようにして、基板の主面に炭素六員環の生成核を形成してもよい。
【0068】
例えば、基板の主面に融点が400℃以下の金属の液滴を接触させた状態で炭化水素を含有するガスを供給し、基板の主面と金属との接触面に炭素六員環の生成核を形成することもできる。
【0069】
この場合、融点が400℃以下の金属としては、ガリウム、インジウム、ガリウム−インジウム合金の群から選択される少なくとも1種を例示することができる。
【0070】
また、フォトリソグラフィ法により予め基板の主面に配列されたアモルファス炭素の核を形成しておき、該基板の主面に液体ガリウムを接触させた状態で熱処理することで、基板の主面と金属との接触面に炭素六員環の生成核を形成することもできる。
【0071】
さらに、剥離法により基板の主面に炭素六員環を形成して、これを生成核としてもよい。
【0072】
このような生成核を予め設けておくことにより、後述のグラフェンの成長工程において、当該生成核の周りで2次元的に炭素六員環が形成されてグラフェン膜となる。
【0073】
この第1の工程に続く第2の工程では、生成核形成後の基板10の主面に、例えば、グラフェン合成の触媒作用を有する金属であって融点が400℃以下の金属25を接触させた状態で、第1の工程と同様に炭化水素を含有するガスを供給してグラフェンを成長させる。
【0074】
つまり、第2の工程において、生成核が形成された基板の主面領域にグラフェン合成の触媒作用を有する金属であって融点が400℃以下の金属を接触させた状態で炭化水素を含有するガスを供給し、基板の主面と金属との接触界面から前記炭素六員環を形成させてグラフェン膜とする。
【0075】
例えば、触媒作用を有する金属として炭素六員環の形成温度よりも低い融点を有する金属を選択し、該金属の液滴を基板の主面領域に接触させた状態で炭素六員環を形成させる。
【0076】
例えば、前記融点が400℃以下の金属は、ガリウム、インジウム、ガリウム−インジウム合金の群から選択される少なくとも1種である。
【0077】
また、炭化水素を含有するガスを供給してグラフェンを成長させる際に、当該炭化水素を含有するガスをプラズマ化して供給するようにしてもよい。
【0078】
グラフェンを構成することとなる炭素原子は、基板10と金属25との接触界面に供給され、当該界面領域にある生成核の周りにグラフェンがCVD成長することになる。
【0079】
上記金属25の融点を400℃以下とするのは、グラフェン合成の触媒作用を奏するためには金属25が液体の状態にある必要があること、そして、本発明ではグラフェン合成温度の低温化を目的としており、特に、既存のシリコンデバイスとのハイブリッド化を想定して400℃程度での低温でのグラフェンの合成を目的としていることによる。勿論、第2の工程の処理温度を400℃を超える温度としても、本発明に係るグラフェンの製造が可能であることは言うまでもない。
【0080】
ここで、上述のとおり、融点が400℃以下の金属は、ガリウム(融点29.78℃)やインジウム(融点156.61℃)を例示することができ、これらの合金であってもよい。
【0081】
このように、本発明のグラフェンの製造方法の第1の態様は、基板の主面に炭素六員環の生成核を形成する第1の工程と、前記生成核の周りで2次元的に炭素六員環を形成してグラフェン膜とする第2の工程を備え、前記第2の工程における炭素六員環の形成を300℃以下の温度で実行する。この場合、好ましくは、前記第1の工程において、前記基板の主面に融点が400℃以下の金属の液滴を接触させた状態で炭化水素を含有するガスを供給し、前記基板の主面と前記金属との接触面に前記生成核を形成する。
【0082】
また、本発明のグラフェンの製造方法の第2の態様は、基板の主面に炭素六員環の生成核を形成する第1の工程と、前記生成核を形成した基板の主面に、グラフェン合成の触媒作用を有する金属であって融点が400℃以下の金属を接触させ、該金属を融点を超える温度に保持した状態で炭化水素を含有するガスを供給し、前記基板主面の金属との接触界面にグラフェンを成長させる第2の工程と、を備えている。
【0083】
炭素源となる炭化水素ガス種の選定を含め、CVD条件は適宜最適化されるが、例えば、石英管100内に、ソースガスとして、5%のメタン(CH
4)ガスを1sccmと純度6Nのアルゴン(Ar)ガスを250sccm供給し、CVD反応中の圧力を概ね0.5気圧に維持する。この条件では、メタンの分圧は概ね10Paとなる。
【0084】
基板10としては、例えば、オフ角の絶対値が30°以内の(0001)面(C面)を主面とするサファイヤを用いることができる。これは、C面内での原子配列が6回対称性を有しているため、炭素六員環の原子配列の対称性と一致するという利点が期待できるためである。また、オフ角は生成核形成の際のキンクとなるステップの密度(およびテラス幅)を考慮して、適宜選択すればよい。なお、グラフェンの成長のためには、ベンゼン環が2個繋がることのできるテラス幅は必要であると考えられるため、オフ角の絶対値は30°以内であることが好ましい。本発明者らは、主として、オフ角の絶対値が0.2°のC面サファイヤ基板を用いた。
【0085】
触媒として作用する金属20(25)としての液体ガリウムは、サファイヤの基板10の主面との濡れ性が低い。そのため、液体ガリウムは基板上に「液滴状で乗っている」状態に近く、基板主面との接触界面もまた、「表面」としての性質を維持している。その結果、接触角は90°を超えて大きく盛り上がった状態で基板主面に接触している。
【0086】
石英管100内に原料ガスが供給されると、例えば100℃程度の極めて低い温度でも、液体ガリウムの表面でメタンガスが水素(HまたはH
2)と炭素(C)に分解する。上述のとおり、ガリウムと炭素とは全律非固溶であるものの、ガリウム原子と炭素原子との結合が起こり得るため、メタンガスの分解により生じた炭素原子の一部が液体ガリウムの表面にあるガリウム原子と結合する。
【0087】
そしてガリウムは液体状態にあるため、表面(基板主面との接触界面も含む)近傍での原子の拡散が容易に生じる。従って、表面にあるガリウム原子と結合した炭素原子は、このガリウム原子に導かれるかたちで液体ガリウムの表面を容易に拡散し、基板主面との接触界面への炭素の供給が速やかになされる。一方、液体ガリウムの「液滴」内部には炭素原子は殆ど供給されないから、基板主面との接触界面への炭素原子の供給は液体ガリウムの表面(基板主面との接触界面も含む)からのみなされることとなる。つまり、本発明の手法では、基板主面への炭素原子の供給は、実質的に2次元的なものに限られ、3次元的な炭素原子の供給が抑制されるため、単層のグラフェンの合成に極めて有利である。
【0088】
図1(b)に示したシーケンス例では、Ar雰囲気中で1050℃まで昇温し、メタンガスを供給して第1の工程(1st step)を実行している。この第1の工程における生成核形成はメタンガス供給直後から始まり、5分程度の短時間で充分な密度の生成核が形成される。本発明者らが、ガリウムを触媒金属として、オフ角が0.2°のC面サファイヤ基板(1cm
2)の基板上への生成核形成実験を行った例では、1050℃の温度で5分間の反応後、6角形のスパイラル構造を有する生成核が10
5cm
−2オーダーの密度で得られていた。
【0089】
図1(b)に示した例では、上述の第1の工程後、メタンガスの供給を停止して石英管100内で基板10を急冷し、再度、400℃まで昇温し、メタンガスを供給して第2の工程(2nd step)を実行し、第1の工程で形成させたグラフェンの生成核を中心として、炭素六員環を成長させる。
【0090】
なお、400℃よりも低い温度(例えば100℃)でもグラフェンは成長し、特に、融点が400℃以下の金属としてガリウムを選択した場合には、300℃以下の温度でも、高品質な単層のグラフェンを第面積で得ることができる。但し、温度の低下に伴い、炭素原子が液体ガリウムの表面を拡散する速度は低下し、その結果、生成核への供給速度が低下するから、所定の面積の単層グラフェンを得るための反応時間は長くなる。つまり、第2の工程の反応時間は、反応温度と、最終的に得たいグラフェンの膜面積に応じて、適宜設定されることとなる。
【0091】
なお、グラフェンの成長温度を低くしたために成長速度が低下する問題に対しては、プラズマアシスト法により炭化水素ガスの分解効率を高める手法が効果的である。プラズマアシスト法を応用すれば、成長温度を低くした場合でも、所望の成長速度を確保し得る。
【0092】
図2は、第1の工程(1050℃で5分)後に形成された生成核のSEM像(
図2(a))、第2の工程(400℃で6分)後に成長したグラフェンのSEM像(
図2(b))、同じく第2の工程(400℃で7分)後に成長したグラフェンのSEM像(
図2(c))、サファイヤ基板、生成核、グラフェン、およびグラフェン端部からのμラマン散乱スペクトル(
図2(d))、
図2(a)に示した生成核が6角形のスパイラル構造を有している様子を示すAFM像(
図2(e))、そして、第2の工程後に得られたグラフェンの表面状態を示すAFM像(
図2(f))である。
【0093】
図2(a)に示したSEM像に表れている黒いコントラスト部分が、第1の工程で形成された生成核である。この生成核のそれぞれは、直径が2〜3μm程度の略6角形の輪郭を呈しており、その周りに、弱いコントラストの領域を有している。そして、このような生成核が、数μm間隔で形成されている。
【0094】
図2(b)をみると、第2の工程を開始した6分後には、個々の生成核の周りにグラフェンが成長し、隣接した生成核から成長してきたグラフェンと結合してひとつの膜になってゆく様子が確認できる。そして、
図2(c)に示されているように、第2の工程を開始した7分後には、基板表面のほとんどをグラフェンが覆っている様子を確認することができる。
【0095】
図2(d)に示した4つのμラマン散乱スペクトルは、
図2(a)中に菱形マークで示した測定ポイント(サファイヤ基板部)、
図2(b)中に四角マーク(グラフェン端部)、三角マーク(グラフェン部)、丸マーク(生成核部)で示した測定ポイントから得られたものである。
【0096】
これらのスペクトル中に認められる1550cm
−1近傍のピークと2320cm
−1近傍のピークは何れも、サファイヤ基板に起因のものである。
【0097】
生成核から得られたラマン散乱スペクトルをみると、2700cm
−1近傍の2Dバンドのピークと1590cm
−1近傍のGバンドのピークが明瞭に認められる。また、1300cm
−1近傍のDバンドの弱いピークも認められる。
【0098】
単層カーボンナノチューブの発見当初から、炭素素材のラマン散乱スペクトルについては多くの研究報告がなされてきた。グラフェンから得られるラマン散乱スペクトルには、格子振動に由来する特徴的なピークが現れ、上記Gバンドはグラファイトにおける炭素原子の6員環構造の面内伸縮振動に起因するバンドである。また、上記Dバンドはその欠陥構造による非弾性散乱を伴う二重共鳴効果によって現れるピークであることが知られており、これらのバンドの強度比(G/D比=I
G/I
D)は、グラフェンの結晶性の高さの指標となる。本発明者らは、「結晶性」の高さをこのG/D比で判定することとし、G/D比が3以上のものを、結晶性の高いグラフェンと評価している。
【0099】
また、上記2Dバンドはグラフェンシート層間における相互作用の影響を受けるため、Gバンドとの強度比(2D/G比=I
2D/I
G)はグラフェンの層数(単層性)の評価の指標となる。例えば、2層のグラフェンの2D/G比は1程度であり、4層のグラフェンの2D/G比は0.5程度である。従って、2D/G比が2以上あれば、ほぼ完全な単層と判断してよい。本発明者らは、「単層性」の高さをこの2D/G比で判定することとし、2D/G比が1以上のものを、単層性の高いグラフェンと評価している。
【0100】
生成核から得られたラマン散乱スペクトルの2D/G比は2に近い値を示しているから、第1の工程で形成される生成核は既に、単層性の極めて高いグラフェンとなっている可能性が高い。そして、第2の構成で成長したグラフェンからのラマン散乱スペクトルの2D/G比も2に近い値を維持しているから、上記単層性の極めて高いグラフェンを生成核として、この周りに単層性の極めて高いグラフェンが成長しているものと考えられる。
【0101】
また、生成核とグラフェンの何れのスペクトルにおいても、欠陥構造に起因するDバンドの強度は非常に低く、G/D比は10を超えている。従って、生成核の段階で既に結晶性の高いグラフェンが形成されており、この結晶性の高い生成核の周りにその結晶性を維持しつつグラフェンが成長しているものと考えられる。
【0102】
このように、本発明によれば、2700cm
−1近傍の2Dバンドのピークと1590cm
−1近傍のGバンドのピークの強度比(2D/G比=I
2D/I
G)が1以上である単層性の高いグラフェンを、極めて低温で合成することが可能である。
【0103】
また、本発明によれば、1590cm
−1近傍のGバンドのピークと1300cm
−1近傍のDバンドのピークの強度比(G/D比=I
G/I
D)が3以上である高品質なグラフェンを、極めて低温で合成することが可能である。
【0104】
そして、得られるグラフェンの面積は、基板上の生成核の形成領域の面積に依存するから、当該面積を広くすることで、大面積の高品質な単層グラフェンを得ることができる。
【0105】
上述の生成核の殆どは、
図2(e)に示したAFM像に示されているように、6角形のスパイラル構造を有している。そして、第2の工程において、この生成核の周りに炭素六員環が2次元的に成長し、隣接する生成核の周りに成長してきた炭素六員環と合体し、グラフェンの膜が形成される。
図2(f)に示したAFM像中に観察される白い線状のコントラストは、隣接する生成核から成長してきた炭素六員環同士が合体してひとつのグラフェン膜となった痕跡である。
【0106】
この生成核がどのような炭素生成物となるかは第1の工程の処理温度および時間にも依存するが、単層のグラフェンとすることもできるし多層のグラフェンとすることもでき、グラファイトの生成核とすることもできる。
【0107】
図3は、
図2(a)〜(c)にSEM像を示した各試料に対応する、2D/G比のラマン・マッピング(
図3(a)〜(c))およびG/D比のラマン・マッピング(
図3(d)〜(f))である。
【0108】
図3(a)〜(c)で濃く示されている領域は、1.5以上の2D/G比を示した領域である。また、
図3(d)〜(f)で濃く示されている領域は、1.5以上のG/D比を示した領域である。第2の工程において、生成核の周りでグラフェンが2次元的に成長し、やがてひとつのグラフェン膜となる様子が見て取れる。
【0109】
このようにして得られたグラフェンは、炭素六員環の集合からなる複数のドメインから構成され、複数のドメインのそれぞれは、該ドメイン内に炭素六員環の生成核を有する。
【0110】
そして、ドメイン内の炭素六員環の方位は、グラフェン膜の全面に渡り実質的に同一であり、少なくとも10
−7cm
2の範囲内で実質的に同一である。ここで、「実質的に同一」とは、着目する領域内における炭素六員環の方位のズレが15°以下であることを意味している。
【0111】
炭素六員環の生成核の密度は1×10
6個/cm
2以下であることが好ましい。生成核の密度が高すぎると、ドメイン内の炭素六員環の方位を、グラフェン膜の全面に渡り実質的に同一にすることが難しくなる。
【0112】
上述のとおり、連続する1枚のグラフェン膜の面積は、基板上の生成核の形成領域の面積に依存し、例えば1×10
−7cm
2以上(概ね3μm×3μmに相当する)の、実質的に単層の連続膜とすることもできる。
【0113】
図4は、第2の工程終了後のグラフェンから得られたTEM像である。なお、このグラフェンは第2の工程のCVD反応温度を500℃に設定して成長させたものであるが、400℃以下の温度で成長させたグラフェンからも同様のTEM像が得られる。
【0114】
図4(a)は暗視野像、
図4(b)は明視野像であり、
図4(c)および(d)は高倍率像である。
図4(c)および(d)に示した格子像を解析した結果、膜内での炭素六員環の方位の差は5%未満であった。つまり、本発明で得られる単層のグラフェンは、膜の全面に渡り、その方位が実質的に同一方向に揃った炭素六員環の集合からなることが確認できる。
【0115】
なお、第1の工程での生成核は、上述のようなCVD法による必要はなく、例えば、剥離法により、基板の主面にグラファイト若しくはグラフェンを転写して実行してもよい。
【0116】
また、第1の工程は、フォトリソグラフ法により、基板の主面にグラファイト若しくはグラフェンをパターニングして実行してもよい。
【0117】
さらに、第2の工程に続き、基板からグラフェンを分離する工程(第3の工程)を設けるようにしてもよい。
【0118】
グラフェンは、伝導帯と価電子帯が1点(ディラックポイント)で接している滑らかな側面を有する円錐形状の特異なバンド構造を有している。このような特異的なバンド構造を有するため、グラフェン中の電子は一種の自由状態にあり、キャリアの移動度は極めて大きい値を示す。この特性を生かし、ゲート領域にグラフェンを設けてこのグラフェンに印加する電圧を変化させれば、キャリア密度(伝導度)を連続的に制御することができる。
【0119】
このようなグラフェンを電子素子に応用すれば、その良伝導性、高い電子・正孔移動度、非弾性的な電子伝導性やスピン伝導性、力学的強度、光吸収および発光、熱伝導等の優位な特性により、高性能の電子素子を実現できる。そのような電子素子としては、例えば、斯かるグラフェンから成るチャネル領域を有する電界効果トランジスタを例示することができる。
【0120】
上記電子素子は、例えば、基板主面に形成されたレジストパターンに、グラフェン合成の触媒作用を有する金属であって融点が400℃以下の金属(例えば、ガリウムおよびインジウムの少なくとも1種、もしくはガリウム−インジウム合金)を接触させ、該金属を融点を超える温度に保持した状態で炭化水素を含有するガスを供給し、前記基板主面の金属との接触界面にグラフェンを成長させ、前記レジストパターンをグラフェン化して回路を形成する工程を含むプロセスにより製造することができる。
【0121】
図5は、上述のグラフェンを用いて本発明者らが試作したFETの光学顕微鏡写真(
図5(a))、および、そのC−Vカーブ(
図5(b))の一例である。ホール移動度は約600cm
2/V
sと見積もられる。
【実施例】
【0122】
本実施例では、従来技術では成し得なかった程度の低温でのグラフェン合成例について説明する。
【0123】
[単一膜の低温合成]
基板として、0.2°のオフ角を有するサファイヤ基板(1cm×1cm)を用いた。事前に表面の不純物を除去すべく、酸素プラズマアッシングによる清浄化処理を施し、このサファイヤ基板の主面にガリウム金属を載置して、
図1(a)に図示したように、石英管の内部に挿入した。そして、Arガスをキャリアガスとして流しながらRF加熱して基板温度を850℃まで昇温し、この温度で保持してガリウムを融解させた。
【0124】
次いで、Arガスを200sccmとCH
4ガスを1sccmの流量(0.5気圧)で流し、基板を1050℃まで急加熱して5分間保持した。その後、CH
4ガスの供給を停止し、Arガス雰囲気中で室温まで冷却した。この条件では、103個/cm
2の密度で生成核が形成されていた。
【0125】
これに続き、Arガスをキャリアガスとして流しながらRF加熱して基板温度を200℃まで昇温し、Arガスを200sccmとCH
4ガスを1sccmの流量(0.5気圧)で流し、基板温度200℃で10分間保持した。その後、CH
4ガスの供給を停止し、Arガス雰囲気中で室温まで冷却した。
【0126】
図6は、このようにして得られたグラフェンのSEM像である。得られたグラフェンは、炭素六員環の集合からなる複数のドメインから構成されており、複数のドメインのそれぞれは、該ドメイン内に前記炭素六員環の生成核を有しており、これらドメインがきれいに繋がって、単一膜となっている。
【0127】
[200℃で合成されたグラフェンのラマンスペクトル]
基板として、0.2°のオフ角を有するサファイヤ基板(1cm×1cm)を用いた。事前に表面の不純物を除去すべく、酸素プラズマアッシングによる清浄化処理を施し、このサファイヤ基板の主面にガリウム金属を載置して、
図1(a)に図示したように、石英管の内部に挿入した。そして、Arガスをキャリアガスとして流しながらRF加熱して基板温度を850℃まで昇温し、この温度で保持してガリウムを融解させた。
【0128】
次いで、Arガスを200sccmとCH
4ガスを1sccmの流量(0.5気圧)で流し、基板を1050℃まで急加熱して2分間保持した。その後、CH
4ガスの供給を停止し、Arガス雰囲気中で室温まで冷却した。
【0129】
これに続き、Arガスをキャリアガスとして流しながらRF加熱して基板温度を200℃まで昇温し、Arガスを200sccmとCH
4ガスを1sccmの流量(0.5気圧)で流し、基板温度200℃で20分間保持した。その後、CH
4ガスの供給を停止し、Arガス雰囲気中で室温まで冷却した。
【0130】
図7は、このようにして得られたグラフェンからのラマン散乱スペクトルである。生成核からのスペクトル(N)の2700cm
−1近傍の2Dバンドのピークと1590cm
−1近傍のGバンドのピークの強度比(2D/G比=I
2D/I
G)は1を下回っており、多層のグラフェンとなっているものと思われる。一方、生成核の周りに成長したグラフェン領域からのスペクトル(G)の2D/G比は2.5を超えており、極めて高い単層性のグラフェンであることが確認できる。
【0131】
また、生成核の周りに成長したグラフェン領域からのスペクトルの1590cm
−1近傍のGバンドのピークと1300cm
−1近傍のDバンドのピークの強度比(G/D比=I
G/I
D)は3程度であった。
【0132】
なお、膜の全面から、これと同様のラマンスペクトルが得られている。
【0133】
[100℃で合成されたグラフェンのラマンスペクトル]
基板として、0.2°のオフ角を有するサファイヤ基板(1cm×1cm)を用いた。事前に表面の不純物を除去すべく、酸素プラズマアッシングによる清浄化処理を施し、このサファイヤ基板の主面にガリウム金属を載置して、
図1(a)に図示したように、石英管の内部に挿入した。そして、Arガスをキャリアガスとして流しながらRF加熱して基板温度を850℃まで昇温し、この温度で保持してガリウムを融解させた。
【0134】
次いで、Arガスを200sccmとCH
4ガスを1sccmの流量(0.5気圧)で流し、基板を1050℃まで急加熱して5分間保持した。その後、CH
4ガスの供給を停止し、Arガス雰囲気中で室温まで冷却した。
【0135】
これに続き、Arガスをキャリアガスとして流しながらRF加熱して基板温度を100℃まで昇温し、Arガスを200sccmとCH
4ガスを1sccmの流量(0.5気圧)で流し、基板温度100℃で60分間保持した。その後、CH
4ガスの供給を停止し、Arガス雰囲気中で室温まで冷却した。
【0136】
図8は、このようにして得られたグラフェンからのラマン散乱スペクトルである。生成核の周りに成長したグラフェン領域からのスペクトル(G)の2700cm
−1近傍の2Dバンドのピークと1590cm
−1近傍のGバンドのピークの強度比(2D/G比=I
2D/I
G)は1を上回っており、1〜2層のグラフェンが形成されているものと推測される。
【0137】
また、生成核の周りに成長したグラフェン領域からのスペクトルの1590cm
−1近傍のGバンドのピークと1300cm
−1近傍のDバンドのピークの強度比(G/D比=I
G/I
D)は10程度であり、欠陥の少ない膜であると評価してよい。
【0138】
なお、膜の全面から、これと同様のラマンスペクトルが得られている。