(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
飲料製造、高分子化学等、様々な分野において、撹拌翼を有する撹拌装置が広く用いられている。
撹拌翼を有する撹拌装置を使用する場合には、撹拌するべき液体を撹拌槽に注入し、撹拌槽に設けられた撹拌翼を回転させることにより、撹拌するべき液体が撹拌される。撹拌翼としては、パドル型撹拌翼や、スクリュー型の撹拌翼が一般的である。
例えば飲料製造の分野で用いられる撹拌装置は、パドル型やスクリュー型の撹拌翼を回転軸に1つ或いは複数配置し、当該回転軸を円筒状の撹拌槽の中心或いは中心から偏奇した位置に配置している。
【0003】
ここで、撹拌翼を回転して液体を撹拌する場合に、液体表面に泡が発生する場合がある(所謂「泡立ち」)。そして、その様な泡の発生量が多いと(泡立ちが激しいと)、撹拌が終了しても発生した泡は消失せず、泡に包含された空気が断熱剤として作用するため、撹拌後に撹拌された液体を加熱消毒しても熱が十分に伝達されず、殺菌が不十分になる恐れがある。また、撹拌した液体を充填する場合には、残存する泡が充填品に入り容量不足の原因にもなり得る。
そのため、撹拌装置においては、撹拌時における泡の発生を抑制することが求められている。
【0004】
パドル型撹拌翼を有する従来の撹拌装置では、撹拌するべき液体の液面が、例えば撹拌翼の垂直方向位置と概略等しい場合(パドル型撹拌翼が液面に掛かっているような場合)には、泡立ちが激しくなることが確認されている。そのため、パドル型撹拌翼では、泡立ちを抑制するべく、撹拌翼が撹拌するべき液体の液面に掛からないようにするため、撹拌するべき液体に撹拌翼を完全に浸漬させているが、この場合撹拌する液体を必要量よりも多く入れなければならない場合が存在する。また、スクリュー型撹拌翼を有する従来の撹拌装置でも同様の問題があった。
しかし、必要量を超えた分の液体は撹拌後に廃棄されるため、液体の損失量が多くなってしまうという問題がある。係る問題を解消するために、撹拌槽内に注入される液体量に拘らず、泡立ちを抑制することができて、しかも、必要な撹拌力を保持することが求められていた。
しかしながら、撹拌槽内に充填されている液体量に拘らず、撹拌時における泡の発生を抑制しつつ、しかも必要な撹拌力を保持することが出来る撹拌装置は、未だに提案されていない。
【0005】
その他の従来技術としては、開口部を有する板状の(所謂「くし型」の)撹拌翼を有する従来技術が存在するが(特許文献1)、撹拌槽との相対的な位置や撹拌槽の形状等により、必要な撹拌性能が発揮できない場合や、大量の泡を発生して調合品の溶存酸素量が許容限度を越えてしまう場合がある。従って、撹拌槽内に充填されている液体量に拘らず、撹拌時における泡の発生を抑制しつつ、しかも必要な撹拌力を保持することは出来ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、撹拌槽内の液体の容積に拘らず撹拌時における液体の泡立ちを抑制して溶存酸素量が少ない調合品等を製造することが出来て、しかも異なる容量の液体について必要な撹拌性能を発揮することが出来る撹拌装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の撹拌装置(100)は、撹拌槽(1)と、撹拌翼(2)を有する撹拌装置において、
撹拌翼(2)の回転軸(20)は撹拌槽(1)の中心軸(Lo)に延在しており、
撹拌翼(2)は全体が平板状であり、
垂直方向に延在する開口部(22)を有しており、撹拌翼(2)の半径方向外方縁部は垂直方向に延在しており、
撹拌翼(2)の直径方向寸法(幅寸法D2)は撹拌槽内径(D1)の60%以下であり、
撹拌槽(1)の底面(12)は円錐形状であり、
撹拌翼(2)の回転軸(20)を一定の周期で低速と高速を繰り返す不等速回転する回転機構(3)を有していることを特徴としている。
本発明において、撹拌翼(2)の低速時と高速時の回転速度の比は、1:1.5〜1:4とするのが好ましい。
【0009】
本発明において、撹拌槽(1)の底面(12)は円錐形状であり、円錐形状の中心軸(Lc)が撹拌槽(1)の中心軸(Lo)に対して傾斜している(所謂「傾斜コニカル」形状である)のが好ましい。
【0010】
本発明において、撹拌翼(2)の直径方向寸法(幅寸法D2)は撹拌槽内径(D1)の40〜60%であるのが好ましい。
そして、撹拌翼(2)の垂直方向寸法(H2)は、直径方向寸法(幅寸法D2)の100〜300%であるのが好ましい。
さらに本発明の撹拌装置は、撹拌翼(2)を1枚だけ有しているのが好ましい。
【0011】
本発明において、撹拌翼(2)(撹拌翼2の全面積:ここでは、開口部22が開口されていないと仮定した場合の撹拌翼2の面積)に対して前記開口部(22)の面積は20〜50%であるのが好ましい。
また、撹拌翼(2)における前記開口部(22)以外の領域であって、垂直方向に連続して延在する領域(くし型撹拌翼における「くしの歯」に相当する部分:所謂「くし」(24))は4〜6本設けられているのが好ましい。
【0012】
本発明において、撹拌翼(2)の下端部は、撹拌槽(1)の底面(12)における水平面に対する傾斜角度が最も大きい領域と平行に延在しているのが好ましい。
【0013】
本発明の実施に際して、撹拌翼(2)の回転軸(20)を不等速回転する回転機構(3)は、電子制御による回転制御機構を有するものであっても、機械式の回転機構であってもよい。機械式の回転機構であれば、例えば、楕円形歯車や非円形歯車(例えば、卵型の歯車)を用いた機構を採用することが出来る。
【発明の効果】
【0014】
上述の構成を具備する本発明によれば、撹拌翼(2)の回転軸(20)は撹拌槽(1)の中心軸(Lo)に延在しているので、回転軸(20)が撹拌槽(1)の中心軸(Lo)に対して偏奇している場合と比較して、泡立ちを抑制することが出来る。
そして、本発明の撹拌翼(2)は全体が平板状であるが、縦方向に延在する開口部(22)を有しているので、撹拌するために液中で撹拌翼(2)を回転する際の抵抗が大きくなり過ぎてしまうことはなく、撹拌槽(1)内の液体が撹拌翼(2)と共回りをしてしまうことも抑制され、撹拌性能低下が防止出来る。
本発明によれば、撹拌翼(2)の半径方向外方縁部は垂直方向に延在しているため、撹拌翼(2)が回転軸(20)に対して傾斜している場合と比較して、泡立ちを抑制することが出来る。
また、撹拌翼(2)の直径方向寸法(幅寸法D2)は撹拌槽内径(D1)の60%以下であり、撹拌性能を低下させてしまうことなく、泡の発生(泡立ち)が抑制されるため、撹拌後の液体における溶存酸素量が抑制される。
【0015】
本発明の撹拌槽(1)の底面(12)は円錐形状であり、撹拌時の泡の発生を抑制することが出来る。
さらに、回転機構により撹拌翼(2)の回転軸(20)を不等速回転することにより、共回り等が抑制され、十分な撹拌性能を得ることが出来る。
その結果、本発明によれば、バッフル、じゃま板を使用すること無く、撹拌性能が高く、撹拌時における液体の泡立ちを抑制して、溶存酸素量が少ない調合品等を製造することが出来て、しかも異なる容量の液体について必要な撹拌性能を発揮することが出来る。
【0016】
本発明において、撹拌槽(1)の底面(12)は円錐形状であり、円錐形状の中心軸(Lc)が撹拌槽(1)の中心軸(Lo)に対して傾斜している(所謂「傾斜コニカル」形状となっている)ので、撹拌時の泡立ちを抑制する効果を維持しながら、注入排出口の位置を撹拌槽の真下に設置する必要がなくなるため、液送時の作業性を向上することが出来る。
あるいは本発明において、撹拌翼(2)の直径方向寸法(D2)を撹拌槽内径(D1)の40〜60%とすれば、撹拌翼(2)が小さ過ぎて撹拌性能が低下してしまうことが防止されると共に、撹拌槽(1)の側壁部(11)と撹拌翼(2)の半径方向外方端部の間に存在する液体による粘性抵抗を抑制し、十分な撹拌性能を得ることが出来る。
【0017】
そして本発明において、撹拌翼(2)の垂直方向寸法(H2)を、直径方向寸法の100〜300%にすれば、くし型撹拌翼(2)の垂直方向寸法が短くなり過ぎて、撹拌槽(1)の上部領域に存在する液体がくし型撹拌翼(2)により撹拌されないという事態を防止することが出来る。それと共に、撹拌翼(2)の垂直方向寸法(H2)が大きくなり過ぎることが防止されるので、撹拌翼(2)を撹拌槽(1)及び上鏡(13)の内側空間内に収容することが出来る。
また、撹拌翼(2)の垂直方向寸法(H2)が大きくなり過ぎることが防止されるため、液体が存在しない領域に撹拌翼(2)の上方部分が存在することになり、撹拌翼の上部が液体に浸漬せず、空気をかき回すだけになってしまうことを防止出来る。
さらに本発明の撹拌装置は、撹拌翼(2)を1枚だけ有する様に構成すれば、撹拌時における泡の発生量を抑制して、撹拌後の調合品における溶存酸素量が基準値を越えてしまうことを防止することが出来る。
【0018】
ここで本発明において、撹拌翼(2)に対して前記開口部(22)の面積は20〜50%とすれば、すなわち、開口部(22)が開口されていないと仮定した場合の撹拌翼(2)の面積に対して、前記開口部(22)の面積を20〜50%とすれば、撹拌翼(2)に対する開口部(22)の面積が小さ過ぎる(20%未満となる)ことがないので、撹拌翼(2)を回転する際の抵抗が大きくなり過ぎてしまうこともなく、撹拌槽(1)内の液体が撹拌翼(2)と共回りをしてしまうことが抑制され、撹拌性能が低下することが防止される。
一方、撹拌翼(2)に対して、開口部(22)の面積が大き過ぎる(50%よりも大きい)ことがないので、撹拌翼(2)における液体を撹拌する領域(開口部以外の部分)が少なくなり過ぎてしまうこともなく、撹拌翼(2)を回転しても液体が十分に撹拌、混合されないという事態は防止される。
【0019】
これに加えて、撹拌翼(2)における前記開口部(22)以外の領域であって、垂直方向に連続して延在する領域(くし型撹拌翼における「くしの歯」に相当する部分:所謂「くし」24)が4〜6本設けられている様に構成すれば、くし(24)が少なすぎることによる不都合(撹拌翼2を回転する抵抗の増大、撹拌槽1内の液体の共回り、撹拌性能が低下)を防止することが出来る。それと共に、垂直方向に延在している部分(くし(24))の幅寸法が小さくなり過ぎて、撹拌する際の抵抗により折れ曲って変形してしまう、という事態を防止することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、本発明の実施形態に係る撹拌装置は、全体を符号100で示されている。
図1において、撹拌装置100は、撹拌槽1、撹拌翼2、回転翼回転機構3を有しており、回転翼回転機構3は電動モータ31及び不等速回転機構32を備えている。不等速回転機構32は撹拌翼2の回転軸20を不等速回転させる機械式回転機構であり、例えば、楕円形歯車や非円形歯車(例えば、卵型の歯車)を用いた機構を採用することが出来る。
なお、不等速回転機構としては、機械式回転機構のみならず、例えば電子制御による回転制御機構を用いることもできる。
【0022】
撹拌槽1は、円筒状の側壁部11と、当該側壁部11の下端に連なる底面(以下、「底部」と言う)12と、側壁部11の上端に形成された上鏡13を有している。
上鏡13の上方には、符号4、5で示す部材を介して回転翼回転機構3が設けられている。回転翼回転機構3は電動モータ31と不等速回転機構32を備えており、明示してはいないが、電動モータ31の出力軸が不等速回転機構32の入力軸に接続され、不等速回転機構32の出力軸が撹拌翼2の回転軸20に接続されている。
撹拌槽1は外装胴板6に支持されており、外装胴板6の下方には複数の脚7が設けられている。
図1で示す撹拌装置100では、符号16は撹拌するべき流体を撹拌槽1内に注入し、撹拌された流体を撹拌槽1から排出する注入排出口を示している。また、符号15は撹拌するべき流体を撹拌槽1内に注入し、撹拌された流体を撹拌槽1から排出する流路を示しており、注入排出流路15は注入排出口16に連通している。
【0023】
撹拌翼2の回転軸20は、撹拌槽1の中心軸Lo(
図1では一点鎖線で示す)と一致するように配置されている。また、撹拌翼2の回転軸20は撹拌槽1の中心軸Loに対して半径方向外方には偏奇してはいない。
発明者の実験によると、撹拌翼2の回転軸20が撹拌槽1の中心軸Loに対して偏奇している場合には、撹拌翼2の回転軸20が撹拌槽1の中心軸Loと一致している場合に比較して、泡立ちが激しいことが確認されている。
なお
図1において、符号12Iは底部12の冷却水供給口、符号12Eは底部12の冷却水排出口、符号14Iは撹拌槽1の側面における冷却水供給口、符号14Eは撹拌槽1の側面における冷却水排出口をそれぞれ示しており、符号51は冷却水の循環用配管を示している。撹拌する流体の種類によっては、撹拌の際に流体温度が上昇すると、撹拌後の調合品の品質が劣化する場合がある。係る劣化を防止するために冷却水を供給し循環して、撹拌される流体温度の上昇を抑制するべく、冷却水の供給口12I、14I、冷却水の排出口12E、14E、冷却水の循環用配管51が設けられている。また、ここには冷却水の代わりに温水を注入し、調合品を温めることも可能である。
【0024】
図2、
図3に基づき、
図1も参照して撹拌翼2を説明する。
図2、
図3において、撹拌翼2は、
図2で一点鎖線により示されている中心線Lc2に対して左右対称の形状となっている。ここで中心線Lc2は、撹拌槽1の中心軸Lo(
図1参照)と重なって延在している。
撹拌翼2は、所謂「くし型」の撹拌翼であり、平板状の部材の外殻線が5角形状となる様に形成されており、
図2、
図3では、5角形状の平板状部材の全体を符号21で示している。そして、撹拌翼2には複数の開口部22が形成されており、当該開口部22の各々は矩形状(短冊状)に形成されており、開口部22は、例えばプレス打ち抜き加工や溶断加工で加工される。
ここで、撹拌翼2の形状を示す「平板状」なる文言は、撹拌翼2の裏面に補強材を付加した形状や、撹拌翼2の一部の厚みを他の箇所とは異なるように構成した形状をも包含する趣旨である。例えば
図13では、撹拌翼2に補強材148を付加した状態を示している。
【0025】
図2において、撹拌翼2には、左右方向については3行、上下方向については2列の開口部22(計6つ)が形成されている。なお、開口部22の各々は、上下方向寸法が左右方向寸法よりも遙かに長い。そして撹拌翼2には、上下端部に複数の矩形の切欠き23が形成されている。
図2における左右方向位置については、開口部22と切欠き23は一致している。その結果、
図2において、撹拌翼2には、鉛直方向に延在する4本の縦桟(くし)24と、水平方向に延在する3本の横桟25が、交差して一体に形成されている。
図2で示すように、撹拌翼2は、その外周縁部21s(撹拌翼2の半径方向外方縁部)が垂直方向に延在している。換言すれば、撹拌翼2の外周縁部21s(撹拌翼2の半径方向外方縁部)は回転軸20に対してねじれていない。「ねじれ」とは、
図9に記載されているように、くし(縦桟)241Dの板の幅が延在する方向が、半径方向Lhに対して角度δを為してねじれているものをさす。
図9、10で示した撹拌翼のように外周縁部がねじれていると泡立ちの量が多くなる原因となる。
また
図3で示すように、撹拌翼2の厚さ寸法t21は、回転軸20の外径d20よりも小さく設定されている。ここで、撹拌翼2に補強材148を付加した場合(例えば
図13)には、その部分の厚さ寸法が回転軸20の外径d20以上になることもある。
【0026】
図1で示すように、撹拌翼2の幅寸法D2は、撹拌槽1の内径D1よりも小さく、60%以下に設定されている。
より詳細には、撹拌翼2の幅寸法D2(直径方向寸法)は、撹拌槽1の内径D1の40〜60%に設定されている。
撹拌翼2の幅寸法D2が撹拌槽1の内径D1の40%未満であると、撹拌性能が低下する。一方、撹拌翼2の幅寸法D2は、撹拌槽1の内径D1の60%よりも大きいと、撹拌槽1内の液体が混合、撹拌され難くなり、且つ、泡立ち量が多くなって溶存酸素濃度が高くなってしまう。
【0027】
図1において、撹拌槽1の底部12は、傾斜した円錐形状である。傾斜した円錐形状とは
図4(2)において符号12(撹拌槽1の底部)で示す形状であり、所謂「傾斜コニカル」形状である。
通常の円錐形状であれば、
図4(1)で示すように、回転体図形である円錐形の中心軸(
図4(1)における鉛直方向へ延在する点線で示す軸)が垂直軸と一致している。それに対して、
図4(2)の「傾斜コニカル」形状では、回転体図形としての円錐形の中心軸Lc(
図4(2)の点線で示す軸)が、撹拌槽1の中心軸Loに対して傾斜(傾斜角度θ)している。
図1では、θは6.5°、αは85°である。
なお、
図4(2)のみならず、
図1においても、撹拌槽1の底面12を構成する傾斜した円錐形は、その中心軸Lcが撹拌槽1の中心軸Loとは一致しておらず、底面12の傾斜コニカル形状は中心軸Loに対して非対称な円錐形状となっている。
【0028】
図4(2)において、撹拌槽1の底面12を形成する傾斜した円錐形の円錐面の角度を2αとして、傾斜した円錐形の中心軸Lcと撹拌槽1の中心軸Loとが為す角度を傾斜角度θとすれば、αの数値と傾斜角度θは、各種撹拌の条件により、ケース・バイ・ケースで設定されるが、αは75〜88°が特に好ましい。
図2において、撹拌翼2の下端部と撹拌翼2の中心線Lc2(撹拌槽1の中心軸Loと一致している)とが為す角度をβとすれば、
図1、
図4(2)を参照すれば明らかなように、 β=α−θ である。
図1で示すように、撹拌翼2下端部は、撹拌槽1の底面12における勾配のきつい方の傾斜(
図1の左側の領域における傾斜)と平行に延在している。
図2、
図3において、符号26は回転軸20が貫通するインペラーボスであり、回転軸20に対して公知の手段によって支持されている。
【0029】
図2において、撹拌翼2の垂直方向寸法H2は、幅寸法D2に対して100%〜300%の範囲に設定されているのが好ましい。
当該割合が大き過ぎる(例えば、300%を超える)と、撹拌翼2の縦方向寸法(鉛直方向寸法、垂直方向寸法)が大きくなり過ぎるので、撹拌槽1内に撹拌翼2を収容することが不可能となる場合がある。また、撹拌翼2の縦方向寸法を大きくすると、撹拌翼2の上部領域は撹拌するべき液体に浸漬せず、当該領域は空気をかき回すのみとなるので、その分が無駄となる。
一方、撹拌翼2の垂直方向寸法H2が幅寸法D2の100%未満の場合には、撹拌翼2の垂直方向寸法H2が短くなり過ぎてしまい、撹拌槽1の上部領域に存在する液体が撹拌翼2により撹拌されない恐れがある。
また、撹拌翼2の垂直軸における位置は、撹拌可能な対象物の量が少ない場合にも撹拌できるように、底面12により近いほうが好ましい。
【0030】
本発明の撹拌装置は、撹拌翼2を1枚設けることが好ましい。
撹拌翼2を複数設置した場合(例えば、中心軸にくしを4本有する撹拌翼を上下に分けて2枚設置した場合)は、泡の発生量が多くなり、撹拌後の調合品における溶存酸素量が基準値を越える場合がある。そのため、図示の実施形態に係る撹拌装置100では、くし型撹拌翼は1枚のみ備えている。
【0031】
ここで、撹拌翼2全体の面積(撹拌翼2の外殻線で包囲される面積:開口部22を設けないと仮定した場合における撹拌翼2の面積)に対して、開口部22の面積の割合は20%〜50%が好ましい。
くし型撹拌翼において、当該撹拌翼2全体の面積に対して、開口部22の面積が20%未満であると、開口部22が小さ過ぎるので、開口部22を透過する液体の量も少なくなり、撹拌するために液中でくし型撹拌翼2を回転する際の抵抗が大きくなり過ぎてしまう。そして撹拌槽1内の液体が、くし型撹拌翼2と共回りをしてしまうので、撹拌性能が低下する。
一方、撹拌翼2全体の面積に対して、開口部22の面積が50%よりも大きいと、くし型撹拌翼2における開口部22以外の部分の面積(液体を撹拌する部分の面積)が少なくなり過ぎてしまうので、くし型撹拌翼2を回転しても液体が十分に撹拌、混合されない。
【0032】
撹拌翼2の縦桟24の本数は、2本〜6本が好ましく、4本〜6本が特に好ましい。
図2から明らかなように、垂直方向について開口部は2つの領域に分割されている。
開口部以外の領域について、垂直方向に連続して延在している部分24(くし型撹拌翼における「くしの歯」に相当する部分:縦桟)は、2箇所〜6箇所形成されていることが好ましく、4箇所〜6箇所形成されていることが好ましい。
図2においては、垂直方向に延在している部分「縦桟」24は4箇所形成されている。
ここで、くし型撹拌翼2は回転軸20を対称軸として左右対称に形成されるため、垂直方向に延在している部分(くし型撹拌翼における「くしの歯」に相当する部分)24の数は必ず偶数になる。
【0033】
くし型撹拌翼2には必ず開口部22を形成しなければならない。上述した様に、液中で回転する際の抵抗が大きくなり過ぎ、撹拌槽1内の液体がくし型撹拌翼と共回りをしてしまうからである。
上述した様に、垂直方向に延在している部分24(くし型撹拌翼における「くしの歯」に相当する縦桟)の数は必ず偶数になるので、垂直方向に延在している部分24が2箇所よりも少ないということは、開口部22が形成されていないことであり、上述の不都合(撹拌翼2の回転する際の抵抗の増大、撹拌槽1内の液体の共回り)を生じてしまう。
一方、垂直方向に延在している部分24(くし型撹拌翼における「くしの歯」に相当する部分:縦桟)が6箇所よりも多いと、縦桟24の幅寸法が小さくなり過ぎ、撹拌翼2の剛性が不足して、撹拌する際の抵抗により折れ曲って変形してしまう恐れがある。なお、開口部22の数としては2、6または10箇所が好ましい。
図示の実施形態では、撹拌翼2の全体形状(外殻の形状)は5角形であるが、矩形でも台形でもよい。
【0034】
図1において、不等速撹拌
機構32は、撹拌翼2の回転軸20の回転速度が一定速度(均一の回転速度)とならない様に構成されている。
不等速撹拌
機構32については、従来、公知の機構を適用することが出来る。例えば、非円形且つ非対称形状の歯車を用いた歯車列により、不等速撹拌装置を構成することが可能である。また、電子制御により撹拌翼2の回転軸20の回転速度を不均一にすることも可能である。
【0035】
ここで、不等速撹拌
機構32において、低速時の回転速度と高速時の回転速度の比は、1:1.5〜1:4の範囲が好ましく、1:1.5〜1:3、特に1:1.5〜1:2.5が好ましい。
不等速撹拌
機構32における回転速度の速度比が1に近いと、殆ど等速となってしまい、不等速にすることによるメリットを享受できない。一方、速度比が大き過ぎる場合には、その様な不等速回転運動を実現する機構の製造が困難である。
ここで、非円形歯車を用いた構造であれば、液体が良好に混合されるので好都合である。
【0036】
図1で示すように、図示の実施形態では、撹拌槽1の底部12を円錐形にし、撹拌翼2の下端を撹拌槽1の底部12に近づけて配置することを可能ならしめている。また、撹拌翼2下端部が、撹拌槽1の底面12における勾配のきつい方の傾斜と平行に延在している。
そのため、撹拌するべき液体の量が少なくて、液体が底部12近傍にのみ存在する場合であっても、くし型撹拌翼2の回転により、そのような少量の液体が確実に撹拌され、混合される。
【0037】
上述した実施形態に基づいて製造された撹拌装置を「実施例」として、実験例1〜4において、各種検証を行った。
[実験例1]
実験例1は、撹拌翼の形状が、泡の発生(所謂「泡立ち」)に与える影響について実験したものである。
下表1で示すように、2種類のパドル型撹拌翼(「45°パドル」、「90°パドル」)と、1種類のくし型撹拌翼(「くし型1」)について、泡立ちについて観察した。
表1
【0038】
表1で「45°パドル」と記載されたパドル型撹拌翼は、
図5、
図6において、符号2Aで示されている。
図5、
図6で示す「45°パドル」は、パドル型撹拌翼2Aの半径方向に延在するパドル240の向きが、
図6で示すように、垂直軸(回転軸)Lvに対して、45°傾斜している。なお、
図6は垂直軸Lvが左右方向になるように記載している。
一方、表1で「90°パドル」と記載されたパドル型撹拌翼は、「45°パドル」のパドル240が垂直軸Lvに対して、水平に配置されたものである。
実験で使用したパドル型撹拌翼を有する撹拌装置は、全て、撹拌翼が撹拌槽の下部と中心付近の2か所に設置されている。
【0039】
表1で「くし型1」と記載されたくし型撹拌翼は、
図7、
図8では符号2Cで示されている。
図7、
図8において、くし型撹拌翼2Cの半径方向(
図7、
図8では左右方向)最外方のくし(縦桟)241Cは(回転軸)Lv方向と平行な方向に延在し、且つ、くし(縦桟)241Cの板の幅方向は半径方向に延在している。また、「くし型1」は、くしを4本有しており、撹拌翼の下端部は撹拌槽の底面における水平面と並行である。撹拌翼の垂直方向寸法は直径方向寸法の200%、撹拌翼に対する開口部の面積は38%であり、また実験例1において「くし型1」の直径方向寸法は撹拌槽内径の50%である。
以下、実験で使用したくし型撹拌翼を有する撹拌装置は、全て撹拌翼は1枚である。
【0040】
また、実施例1で使用する撹拌槽の底面形状は
図12で示された「コニカル」である。
図12において、撹拌槽の底面B1が通常の円錐形状をしている。表1における「コニカル」は、
図12の様に下向きに凸の円錐形状の底部の中央に流出口E1が形成され、撹拌槽内の液体が当該流出口E1から流出する際に、当該液体は360°全ての方向(
図12では矢印A2、矢印A3のみ図示する)から流出口E1に向って流れ、一方向にのみ向って流れる訳ではない。
撹拌パターンは等速撹拌とし、それぞれの回転速度は表1のとおりである。回転速度は撹拌翼を回転させるために必要な撹拌所要動力が一定となるように設定した。また、回転軸は撹拌槽の中心に取り付けている(中心軸位置)。
【0041】
実験例1における評価の基準が下表2に示されている。実験例1では撹拌対象物として水を使用した。
表2
評価点(評価ランク)は、5段階に分けられ(ランク数が上がるに従って撹拌状態は悪化する)、各ランクごとに評価するべき要点が規定されている。
【0042】
実験例1の結果を下表3で示す。なお、ここで言う「満量」、「撹拌翼面水位」は撹拌槽内の水位を示しており、「満量」とは撹拌翼が完全に液体内に浸漬した状態であり、「撹拌翼面水位」とは撹拌翼の上端と液面が概略等しい状態(液面が撹拌翼の上端近傍(上端よりも若干下)にある状態)を意味している。
表3
【0043】
表3から、パドル型の撹拌翼(45°パドル、90°パドル)では、撹拌翼が液面と概略同一のレベルに位置している場合(撹拌翼面水位)において、泡立ちのランクが2または3.5となっており、撹拌を続けると泡立ちが起きる可能性がある。
それに対して、くし型撹拌翼(くし型1)は、撹拌翼が完全に液体内に浸漬した場合も、撹拌翼の上端と液面が概略等しい場合も、水面は穏やかな回転流れの波しか観察されなかった。
従って、実験例1により、くし型撹拌翼を使用すれば、撹拌対象の液体の量に拘らず、泡立ちを防止しながら撹拌できることが確認された。
【0044】
[実験例2]
実験例2では、撹拌槽の底面形状が泡立ちに与える影響を検証した。
実験例2の条件は、下表4の通りである。なお、実験例2における実験方法や評価方法については、上述した実験例1と同様である。
表4
【0045】
本実験例で使用した撹拌翼は実験例1の「くし型1」と同様であり、実験例2において直径方向寸法は撹拌槽内径の50%である。
表4において「片流れ」と記載されている底面形状が、
図11に示されている。
図11において、撹拌槽の底面Bの円筒状側壁部S近傍の1箇所に流出口Eが一つ形成されており、流出口Eから撹拌槽内の液体が流出する際に、当該液体が矢印A1で示すように一方向のみに向って流出する様に構成されている。
撹拌パターンは等速撹拌とし、それぞれの回転速度(撹拌所要動力一定)は、表4のとおりである。なお、撹拌翼の回転軸は撹拌槽の中心線に対して偏奇させた状態に取り付けて(偏心軸位置)、泡立ちを生じ易い条件で実験を行った。
【0046】
実験例2の結果を下表5で示す。
表5
【0047】
表5に示された結果によれば、「撹拌翼が液面と概略等しい場合(撹拌翼面水位)において、片流れ底(試験例4)の泡立ちがランク3(表2)であるのに対して、コニカル底(試験例5)では泡立ちがランク2(表2)となっている。このことから、くし型の撹拌翼を使用した場合、「片流れ底」よりも「コニカル底」の方が、泡立ちがより改善されることが確認された。
【0048】
[実験例3]
実験例3では、撹拌翼を等速回転した場合と、不等速回転した場合を比較した。比較例1および実施例1で用いた「くし型撹拌翼」は、実験例1で使用した「くし型1」と同様であり、直径方向寸法は撹拌槽内径の50%である。
下表6で示す条件において、撹拌所要動力を一定にして実験を行った。実験例1では、1対の非円形歯車による回転機構(不等速撹拌)を使用した。撹拌翼の回転は半回転で低速から高速へ、更に半回転で高速から低速と速度が変化し、低速時の回転速度と高速時の回転速度の比は1:1.75である。本装置は1対の卵形の歯車がかみ合った構造をしており、動力(モーター)とつながった歯車が等速回転することで、もう一方の撹拌翼の回転軸とつながった歯車が不等速回転をする。よって、表6には、等速回転している歯車の回転数を記載した。
なお、表6以下において、「コントロール」とあるのは、従来より、一般的に飲料製造時の調合時や培養時に用いられているパドル型撹拌翼を用いたタンクであり、撹拌翼は、45°パドルと同様の構造である。
その他、撹拌槽の底面形状、軸位置については、表6に記載されており、実験例1、2で説明したのと同様である。
表6
【0049】
実験例3においては、撹拌翼が完全に液体内に浸漬した場合(満量)と、撹拌翼の上端と液面が概略等しい場合(撹拌翼面水位)について行った。
実験例3では、下表7で示す4項目(混合不良部の確認、混合状態の確認、溶存酸素の測定、泡立ち量の測定)の実験方法を採用している。
なお、表7の「混合状態の確認」欄において、「(1.5)」、「(1)」、「(0.3)」という数値は混合比を示している。すなわち、シロップとヨーグルトと乳酸カルシウム溶液の混合比は 1.5:1:0.3 (約5:3:1) である。
表7
【0050】
表7の4項目(混合不良部の確認、混合状態の確認、溶存酸素の測定、泡立ち量の測定)についての実験結果が下表8にまとめられている。混合不良部、混合状態とは撹拌性能を示す指標であり、混合不良部が少ないほど、また、調合品の粒子径が小さく、沈殿量が少ないほど撹拌性能がよいことを示す。また、溶存酸素の量は泡立ちにより増加することから、溶存酸素量は泡立ちの度合いを示す指標となる。
表8
【0051】
なお、4つの各項目の内、混合状態に関する結果は表9に示し、溶存酸素濃度の測定で撹拌翼が完全に液体内に浸漬した場合(満量)の結果を表10に示し、撹拌翼の上端と液面が概略等しい場合(撹拌翼面水位)の結果を表11に示す。なお、表9における「沈殿量」は、表7に記載の方法で得られた沈殿量を遠心対象である調合品の全体量で除した数値×100(%)である。
表9
表10
表11
【0052】
表8、9に示された評価結果によれば、比較例1は、混合不良部及び混合状態ともにコントロールよりも大幅に劣っていた。
それに対して、実施例1は、混合不良部や調合品の粒子径、沈殿量がコントロールと同等であった。よって、実施例1はコントロールと同等の撹拌性能を有していることが確認された。
【0053】
それに加えて、溶存酸素濃度の測定では、「満量」の場合(表10)、30分経過時にはコントロールにおける溶存酸素濃度4.59mg/Lに対して、実施例1では2.18mg/Lとなり、実施例1はコントロールと比較して50%以上も溶存酸素濃度が低下した。また、「撹拌翼面水位」の場合(表11)についても、30分経過時のコントロールにおける酸素溶存濃度7.23mg/Lに対して、実施例1は4.08mg/Lと溶存酸素濃度は大幅な改善が見られた。また、表8に記載したとおり、泡立ち量についても「満量」「撹拌翼面水位」共に、実施例1はコントロールと比較して、泡立ち量が非常に少ないことが確認された。
このことから、
図1〜
図4を参照して説明した構成と、不等速回転運動を組み合わせれば、撹拌性能が高く、また泡の発生を抑制する効果についてはコントロール(従来技術に係る撹拌タンク)を上回る結果であることが確認された。
【0054】
[実験例4]
実験例4では、くし型撹拌翼のサイズについて検討するため、撹拌効率(撹拌性能)、泡の発生量(泡立ち)を測定した。
実験例4で用いられる2種類の撹拌翼(実施例2、比較例2)の条件を表12で示す。
表12
【0055】
表12において、「撹拌翼形状」の行における「くし型(50%)」という文言は、くし型撹拌翼の直径方向寸法が撹拌槽内径の50%であることを意味しており、「くし型(90%)」の文言は、くし型撹拌翼の直径方向寸法が撹拌槽内径の90%であることを意味している。
実施例2のくし型撹拌翼は実施例1と同様である。また、比較例2のくし型撹拌翼(「くし型(90%)」)は、くしを4本有しており、撹拌翼の下端部は撹拌槽の底面における水平面と並行である。
表12において、「実施例2」、「比較例2」は、撹拌所要動力が同一であり、不等速撹拌の低速時の回転速度と高速時の回転速度の比は1:1.75であり、不等速撹拌装置は実施例1と同様である。また、表12の撹拌回転数も実施例1と同様に、不等速撹拌装置に使用している歯車のうち、等速回転している歯車の回転数を記載した。
その他については、実験例1〜3で説明したのと同様である。
【0056】
実験例4では、撹拌性能については所謂「ヨード・ハイポ法」(表7参照)を行い、泡立ちの確認については、撹拌槽に水を注入して、撹拌翼が完全に液体内に浸漬した場合(満量)について、30分間連続撹拌して、溶存酸素を測定した。
撹拌性能の比較結果を下表13で示し、泡立ちに関する比較結果を下表14で示す。
表13
表14
【0057】
表13によれば、実施例2は比較例2と比較して、撹拌所要動力を一定にした場合、混合が短時間で完了することを確認した。このことから、くし型撹拌翼の直径方向寸法(幅寸法)は、撹拌効率の点から撹拌槽内径の50%以下が好ましいことが判明した。
溶存酸素濃度(表14の結果)に関しては、サンプル間で大きな差はなかった。
【0058】
表14で示す実験結果は撹拌所要動力を同一にした場合であり、その場合、上述したようにサンプル間で溶存酸素濃度に大きな差は見られなかった。
このため、実施例2、比較例2の回転数を一定(73rpm)にして、再度、溶存酸素濃度を計測した。その結果を表15で示している。
表15
【0059】
回転数を一定(73rpm)にして再計測を行った結果、比較例2の混合性は向上したものの、実施例2と比較して、比較例2は溶存酸素濃度が上昇することが確認された。
以上より、実験例4から、くし型撹拌翼の直径方向寸法(幅寸法)は、撹拌効率および溶存酸素濃度(泡立ち抑制)の点から撹拌槽内径の50%以下が好ましいことが判明した。
【0060】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。