(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記転写後調節エレメントが、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)、最小ガンマエレメントおよび部分的アルファ−ベータエレメントを含有するWPRE2、または最小ガンマおよびアルファエレメントを含有するWPRE3、またはB型肝炎ウイルス転写後調節エレメント(HPRE)の群から選択される、請求項4に記載のベクター。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、例証的なAAV9 hCLN3構築物を描写する。各構築物は、同一の最小SV40イントロン(「イントロン」と標識)、ヒトCLN3 cDNA、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(「PA」)および自己相補的(sc)ウイルスをパッケージするためのウイルス末端逆位反復配列を含有する。第1の構築物は、高発現ニワトリβ−アクチンプロモーターを含有する一方、第2の構築物は、マウスMeCP2遺伝子由来の最小必須プロモーターを含有する。対照構築物は、ヒトCLN3 cDNAを、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするポリヌクレオチドに置き換える。
【0035】
【
図2A】
図2A〜
図2Fは、scAAV9/MeCP2−hCLN3を使用したCLN3補充(replacement)が、CLN3
Δex7/8マウスにおける運動行為を改善することを示す。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(8匹/群)に、2×10
12ウイルスゲノム(vg)のscAAV9/MeCP2−hCLN3、scAAV9/β−アクチン−hCLN3または対照としてのGFP発現ウイルスの1回のi.v.注射を与え、その上で、1ヶ月(
図2A)、2ヶ月(
図2B)、3ヶ月(
図2C)、4ヶ月(
図2D)および5ヶ月(
図2E)目に、加速ロータロッドおよびポール降下(pole descent)検査を行った。*、p<0.05。
図2Fは、
図2A〜
図2Eに描写されているデータを要約し、scAAV9/MeCP2−hCLN3を与えたCLN3
Δex7/8マウスにおける運動行為改善を示す。
【
図2B】
図2A〜
図2Fは、scAAV9/MeCP2−hCLN3を使用したCLN3補充(replacement)が、CLN3
Δex7/8マウスにおける運動行為を改善することを示す。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(8匹/群)に、2×10
12ウイルスゲノム(vg)のscAAV9/MeCP2−hCLN3、scAAV9/β−アクチン−hCLN3または対照としてのGFP発現ウイルスの1回のi.v.注射を与え、その上で、1ヶ月(
図2A)、2ヶ月(
図2B)、3ヶ月(
図2C)、4ヶ月(
図2D)および5ヶ月(
図2E)目に、加速ロータロッドおよびポール降下(pole descent)検査を行った。*、p<0.05。
図2Fは、
図2A〜
図2Eに描写されているデータを要約し、scAAV9/MeCP2−hCLN3を与えたCLN3
Δex7/8マウスにおける運動行為改善を示す。
【
図2C】
図2A〜
図2Fは、scAAV9/MeCP2−hCLN3を使用したCLN3補充(replacement)が、CLN3
Δex7/8マウスにおける運動行為を改善することを示す。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(8匹/群)に、2×10
12ウイルスゲノム(vg)のscAAV9/MeCP2−hCLN3、scAAV9/β−アクチン−hCLN3または対照としてのGFP発現ウイルスの1回のi.v.注射を与え、その上で、1ヶ月(
図2A)、2ヶ月(
図2B)、3ヶ月(
図2C)、4ヶ月(
図2D)および5ヶ月(
図2E)目に、加速ロータロッドおよびポール降下(pole descent)検査を行った。*、p<0.05。
図2Fは、
図2A〜
図2Eに描写されているデータを要約し、scAAV9/MeCP2−hCLN3を与えたCLN3
Δex7/8マウスにおける運動行為改善を示す。
【
図2D】
図2A〜
図2Fは、scAAV9/MeCP2−hCLN3を使用したCLN3補充(replacement)が、CLN3
Δex7/8マウスにおける運動行為を改善することを示す。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(8匹/群)に、2×10
12ウイルスゲノム(vg)のscAAV9/MeCP2−hCLN3、scAAV9/β−アクチン−hCLN3または対照としてのGFP発現ウイルスの1回のi.v.注射を与え、その上で、1ヶ月(
図2A)、2ヶ月(
図2B)、3ヶ月(
図2C)、4ヶ月(
図2D)および5ヶ月(
図2E)目に、加速ロータロッドおよびポール降下(pole descent)検査を行った。*、p<0.05。
図2Fは、
図2A〜
図2Eに描写されているデータを要約し、scAAV9/MeCP2−hCLN3を与えたCLN3
Δex7/8マウスにおける運動行為改善を示す。
【
図2E】
図2A〜
図2Fは、scAAV9/MeCP2−hCLN3を使用したCLN3補充(replacement)が、CLN3
Δex7/8マウスにおける運動行為を改善することを示す。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(8匹/群)に、2×10
12ウイルスゲノム(vg)のscAAV9/MeCP2−hCLN3、scAAV9/β−アクチン−hCLN3または対照としてのGFP発現ウイルスの1回のi.v.注射を与え、その上で、1ヶ月(
図2A)、2ヶ月(
図2B)、3ヶ月(
図2C)、4ヶ月(
図2D)および5ヶ月(
図2E)目に、加速ロータロッドおよびポール降下(pole descent)検査を行った。*、p<0.05。
図2Fは、
図2A〜
図2Eに描写されているデータを要約し、scAAV9/MeCP2−hCLN3を与えたCLN3
Δex7/8マウスにおける運動行為改善を示す。
【
図2F】
図2A〜
図2Fは、scAAV9/MeCP2−hCLN3を使用したCLN3補充(replacement)が、CLN3
Δex7/8マウスにおける運動行為を改善することを示す。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(8匹/群)に、2×10
12ウイルスゲノム(vg)のscAAV9/MeCP2−hCLN3、scAAV9/β−アクチン−hCLN3または対照としてのGFP発現ウイルスの1回のi.v.注射を与え、その上で、1ヶ月(
図2A)、2ヶ月(
図2B)、3ヶ月(
図2C)、4ヶ月(
図2D)および5ヶ月(
図2E)目に、加速ロータロッドおよびポール降下(pole descent)検査を行った。*、p<0.05。
図2Fは、
図2A〜
図2Eに描写されているデータを要約し、scAAV9/MeCP2−hCLN3を与えたCLN3
Δex7/8マウスにおける運動行為改善を示す。
【0036】
【
図3】
図3は、scAAV9形質導入後の脳における用量依存性hCLN3発現を例示する。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(4匹/群)に、2×10
12vgのscAAV9/β−アクチン−hCLN3またはscAAV9/MeCP2−hCLN3の1回のi.v.注射を与え、その上で、5ヶ月後に、qRT−PCRにより表示の脳領域(CB、小脳;TH、視床;HPC、海馬;STR、線条体;およびVC、視覚皮質)におけるhCLN3 mRNA発現を定量化した。結果は、scAAV9/MeCP2−hCLN3と比較した、scAAV9/β−アクチン−hCLN3を与えたマウスにおけるhCLN3発現の倍数増加として表現する。
【0037】
【
図4】
図4は、scAAV9形質導入後の脳における用量依存性GFP発現を例示する。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(3匹/群)に、2×10
12vgのscAAV9/β−アクチン−GFPまたはscAAV9/MeCP2−GFPの1回のi.v.注射を与え、その上で、5ヶ月後に、ローディング対照としてβ−アクチンを用いたウエスタンブロットにより、表示の脳領域(CB、小脳;TH、視床;HPC、海馬;STR、線条体;VC、視覚皮質;S1BF、体性感覚野バレル皮質(somatosensory barrel field cortex))におけるGFP発現を定量化した。
【0038】
【
図5】
図5A〜
図5Bは、それぞれ形質導入5ヶ月および13ヶ月後の、共焦点顕微鏡により可視化された、脳領域および網膜におけるscAAV9/β−アクチン−GFPまたはscAAV9/MeCP2−GFPの体内分布を示す。
【0039】
【
図6】
図6A〜
図6Bは、GFP
+細胞の数によって描写される、投与5ヶ月後のCLN3
Δex7/8マウスの脳におけるscAAV9/β−アクチン−GFPまたはscAAV9/MeCP2−GFPの比較体内分布を示す。
【0040】
【
図7A】
図7A〜
図7Gは、CLN3補充が、リソソーム封入体を低下させることを示す。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(4匹/群)に、2×10
12vgのscAAV9/β−アクチン−hCLN3またはscAAV9/MeCP2−hCLN3の1回のi.v.注射を与え、その上で、5ヶ月後に、定量的共焦点顕微鏡により、体性感覚野バレル皮質(S1BF)(
図7A)、線条体(STR)(
図7B)、視覚皮質(VC)(
図7C)、視床(TH)(
図7D)、海馬(HP)(
図7E)、小脳(CB)(
図7F)におけるリソソーム封入体を定量化した。*、p<0.05。S1BF、VCおよびTHにおける媒体およびMeCP2−hCLN3の比較の概要を
図7Gに示す。
【
図7B】
図7A〜
図7Gは、CLN3補充が、リソソーム封入体を低下させることを示す。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(4匹/群)に、2×10
12vgのscAAV9/β−アクチン−hCLN3またはscAAV9/MeCP2−hCLN3の1回のi.v.注射を与え、その上で、5ヶ月後に、定量的共焦点顕微鏡により、体性感覚野バレル皮質(S1BF)(
図7A)、線条体(STR)(
図7B)、視覚皮質(VC)(
図7C)、視床(TH)(
図7D)、海馬(HP)(
図7E)、小脳(CB)(
図7F)におけるリソソーム封入体を定量化した。*、p<0.05。S1BF、VCおよびTHにおける媒体およびMeCP2−hCLN3の比較の概要を
図7Gに示す。
【
図7CD】
図7A〜
図7Gは、CLN3補充が、リソソーム封入体を低下させることを示す。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(4匹/群)に、2×10
12vgのscAAV9/β−アクチン−hCLN3またはscAAV9/MeCP2−hCLN3の1回のi.v.注射を与え、その上で、5ヶ月後に、定量的共焦点顕微鏡により、体性感覚野バレル皮質(S1BF)(
図7A)、線条体(STR)(
図7B)、視覚皮質(VC)(
図7C)、視床(TH)(
図7D)、海馬(HP)(
図7E)、小脳(CB)(
図7F)におけるリソソーム封入体を定量化した。*、p<0.05。S1BF、VCおよびTHにおける媒体およびMeCP2−hCLN3の比較の概要を
図7Gに示す。
【
図7EF】
図7A〜
図7Gは、CLN3補充が、リソソーム封入体を低下させることを示す。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(4匹/群)に、2×10
12vgのscAAV9/β−アクチン−hCLN3またはscAAV9/MeCP2−hCLN3の1回のi.v.注射を与え、その上で、5ヶ月後に、定量的共焦点顕微鏡により、体性感覚野バレル皮質(S1BF)(
図7A)、線条体(STR)(
図7B)、視覚皮質(VC)(
図7C)、視床(TH)(
図7D)、海馬(HP)(
図7E)、小脳(CB)(
図7F)におけるリソソーム封入体を定量化した。*、p<0.05。S1BF、VCおよびTHにおける媒体およびMeCP2−hCLN3の比較の概要を
図7Gに示す。
【
図7G】
図7A〜
図7Gは、CLN3補充が、リソソーム封入体を低下させることを示す。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(4匹/群)に、2×10
12vgのscAAV9/β−アクチン−hCLN3またはscAAV9/MeCP2−hCLN3の1回のi.v.注射を与え、その上で、5ヶ月後に、定量的共焦点顕微鏡により、体性感覚野バレル皮質(S1BF)(
図7A)、線条体(STR)(
図7B)、視覚皮質(VC)(
図7C)、視床(TH)(
図7D)、海馬(HP)(
図7E)、小脳(CB)(
図7F)におけるリソソーム封入体を定量化した。*、p<0.05。S1BF、VCおよびTHにおける媒体およびMeCP2−hCLN3の比較の概要を
図7Gに示す。
【0041】
【
図8A】
図8A〜
図8Cは、脳組織の形質導入におけるscAAV9の全身性投与の効果を示す。
図8Aは、scAAV9の全身性投与が、CLN3
Δex7/8脳におけるニューロンに形質導入することを示す。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(4匹/群)に、2×10
12vgのscAAV9/MeCP2−GFP、i.v.の1回の注射を与え、その上で、5ヶ月後に脳組織を収集し、共焦点顕微鏡で表示の脳領域におけるNeuN、GFPおよび核(DAPI)を染色した。挿入図は、より大きい拡大率で表示される領域を描写する。
図8Bは、scAAV9の全身性投与が、CLN3
Δex7/8脳におけるアストロサイトに形質導入することを示す。
図8Cは、scAAV9の全身性投与が、CLN3
Δex7/8脳におけるマイクログリアに形質導入しないことを示す。
【
図8B】
図8A〜
図8Cは、脳組織の形質導入におけるscAAV9の全身性投与の効果を示す。
図8Aは、scAAV9の全身性投与が、CLN3
Δex7/8脳におけるニューロンに形質導入することを示す。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(4匹/群)に、2×10
12vgのscAAV9/MeCP2−GFP、i.v.の1回の注射を与え、その上で、5ヶ月後に脳組織を収集し、共焦点顕微鏡で表示の脳領域におけるNeuN、GFPおよび核(DAPI)を染色した。挿入図は、より大きい拡大率で表示される領域を描写する。
図8Bは、scAAV9の全身性投与が、CLN3
Δex7/8脳におけるアストロサイトに形質導入することを示す。
図8Cは、scAAV9の全身性投与が、CLN3
Δex7/8脳におけるマイクログリアに形質導入しないことを示す。
【
図8C】
図8A〜
図8Cは、脳組織の形質導入におけるscAAV9の全身性投与の効果を示す。
図8Aは、scAAV9の全身性投与が、CLN3
Δex7/8脳におけるニューロンに形質導入することを示す。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(4匹/群)に、2×10
12vgのscAAV9/MeCP2−GFP、i.v.の1回の注射を与え、その上で、5ヶ月後に脳組織を収集し、共焦点顕微鏡で表示の脳領域におけるNeuN、GFPおよび核(DAPI)を染色した。挿入図は、より大きい拡大率で表示される領域を描写する。
図8Bは、scAAV9の全身性投与が、CLN3
Δex7/8脳におけるアストロサイトに形質導入することを示す。
図8Cは、scAAV9の全身性投与が、CLN3
Δex7/8脳におけるマイクログリアに形質導入しないことを示す。
【0042】
【
図9】
図9は、ヒト若年型バッテン病の特徴であり、CLN3
Δex7/8脳にも観察されるGFAP
+反応性アストロサイトが、scAAV9/MeCP2−hCLN3の全身性投与後のマウスにおいて有意に低下されることを示す。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(4匹/群)に、scAAV9/MeCP2−hCLN3の1回のi.v.注射を与え、その上で、5ヶ月後に、定量的共焦点顕微鏡により、体性感覚野バレル皮質における反応性アストロサイト(GFAP
+)を定量化した。***、p<0.001。
【0043】
【
図10】
図10は、scAAV9/MeCP2−hCLN3を使用したCLN3補充が、CLN3
Δex7/8マウスにおける運動行為を改善することを示す。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウス(8匹/群)に、2×10
12vgのscAAV9/MeCP2−hCLN3、scAAV9/β−アクチン−hCLN3または対照としてのGFP発現ウイルスの1回のi.v.注射を与え、その上で、形質導入11ヶ月後に粘着テープ除去検査を行ったところ、scAAV9/MeCP2−hCLN3を与えたCLN3
Δex7/8マウスにおいて、タッチするまでの時間の低下(左パネル)および除去するまでの時間の低下(右パネル)を示した。
【0044】
【
図11】
図11は、AAV9/β−アクチン−hCLN3、scAAV9/MeCP2−hCLN3、AAV9/β−アクチン−GFP、scAAV9/MeCP2−GFPの、CLN3
Δex7/8マウスへの全身性(system)AAV9導入遺伝子送達の効果を例示する。結果は、毎週決定される体重のグラム数として表現する。
【0045】
【
図12-1】
図12は、感染1ヶ月後の、AAV9/β−アクチン−hCLN3、scAAV9/MeCP2−hCLN3、AAV9/β−アクチン−GFPまたはscAAV9/MeCP2−GFPを投与したCLN3
Δex7/8マウスの正常血清化学プロファイルを実証する。
【
図12-2】
図12は、感染1ヶ月後の、AAV9/β−アクチン−hCLN3、scAAV9/MeCP2−hCLN3、AAV9/β−アクチン−GFPまたはscAAV9/MeCP2−GFPを投与したCLN3
Δex7/8マウスの正常血清化学プロファイルを実証する。
【
図12-3】
図12は、感染1ヶ月後の、AAV9/β−アクチン−hCLN3、scAAV9/MeCP2−hCLN3、AAV9/β−アクチン−GFPまたはscAAV9/MeCP2−GFPを投与したCLN3
Δex7/8マウスの正常血清化学プロファイルを実証する。
【
図12-4】
図12は、感染1ヶ月後の、AAV9/β−アクチン−hCLN3、scAAV9/MeCP2−hCLN3、AAV9/β−アクチン−GFPまたはscAAV9/MeCP2−GFPを投与したCLN3
Δex7/8マウスの正常血清化学プロファイルを実証する。
【
図12-5】
図12は、感染1ヶ月後の、AAV9/β−アクチン−hCLN3、scAAV9/MeCP2−hCLN3、AAV9/β−アクチン−GFPまたはscAAV9/MeCP2−GFPを投与したCLN3
Δex7/8マウスの正常血清化学プロファイルを実証する。
【0046】
【
図13-1】
図13は、感染10ヶ月後の、AAV9/β−アクチン−hCLN3、scAAV9/MeCP2−hCLN3、AAV9/β−アクチン−GFPまたはscAAV9/MeCP2−GFPを投与したCLN3
Δex7/8マウスの正常血清化学プロファイルを実証する。
【
図13-2】
図13は、感染10ヶ月後の、AAV9/β−アクチン−hCLN3、scAAV9/MeCP2−hCLN3、AAV9/β−アクチン−GFPまたはscAAV9/MeCP2−GFPを投与したCLN3
Δex7/8マウスの正常血清化学プロファイルを実証する。
【
図13-3】
図13は、感染10ヶ月後の、AAV9/β−アクチン−hCLN3、scAAV9/MeCP2−hCLN3、AAV9/β−アクチン−GFPまたはscAAV9/MeCP2−GFPを投与したCLN3
Δex7/8マウスの正常血清化学プロファイルを実証する。
【
図13-4】
図13は、感染10ヶ月後の、AAV9/β−アクチン−hCLN3、scAAV9/MeCP2−hCLN3、AAV9/β−アクチン−GFPまたはscAAV9/MeCP2−GFPを投与したCLN3
Δex7/8マウスの正常血清化学プロファイルを実証する。
【
図13-5】
図13は、感染10ヶ月後の、AAV9/β−アクチン−hCLN3、scAAV9/MeCP2−hCLN3、AAV9/β−アクチン−GFPまたはscAAV9/MeCP2−GFPを投与したCLN3
Δex7/8マウスの正常血清化学プロファイルを実証する。
【0047】
【
図14A-C】
図14A〜
図14Fは、AAV9/β−アクチン−hCLN3、scAAV9/MeCP2−hCLN3、AAV9/β−アクチン−GFPまたはscAAV9/MeCP2−GFPを投与したCLN3
Δex7/8マウスが、全身性炎症性変化の証拠を示さないことを実証する。
【
図14D-F】
図14A〜
図14Fは、AAV9/β−アクチン−hCLN3、scAAV9/MeCP2−hCLN3、AAV9/β−アクチン−GFPまたはscAAV9/MeCP2−GFPを投与したCLN3
Δex7/8マウスが、全身性炎症性変化の証拠を示さないことを実証する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(詳細な説明)
記載されている特定の実施形態は当然ながら変動し得るため、本発明が、記載されている特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書に使用されている用語法が、単に特定の実施形態を記載することを目的としており、限定することを目的としないことも理解されたい。
【0049】
本発明の詳細な説明は、単に読者に便宜を図るために様々なセクションに分割されており、いずれかのセクションに見出される開示は、別のセクションにおける開示と組み合わせることができる。他に規定がなければ、本明細書に使用されているあらゆる技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意義を有する。本発明の実施または検査において、本明細書に記載されているものと同様または均等ないかなる方法および材料を使用してもよいが、好まれる方法および材料をここに記載する。本明細書に言及されているあらゆる刊行物は、刊行物が引用されているものに関連して方法および/または材料を開示および記載するために、参照により本明細書に組み込まれている。
【0050】
あらゆる数値指定、例えば、範囲を含むpH、温度、時間、濃度および分子量は、必要に応じて増分0.1または1.0で(+)または(−)に変動する近似である。必ずしも明確に記述されているとは限らないが、あらゆる数値指定には、用語「約」が先行していることを理解されたい。必ずしも明確に記述されているとは限らないが、本明細書に記載されている試薬が、単に例証的なものであり、そのようなものの均等物が本技術分野で公知であることも理解されたい。
【0051】
本明細書において使用される場合、また、添付の特許請求の範囲において、文脈が明らかにそれ以外を指示しない限り、単数形「a」、「an」および「the」が、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。よって、例えば、「1個の細胞(a cell)」の参照は、複数の細胞を含む。
【0052】
I.定義
本明細書において使用される場合、次の用語は、次の意義を有する。
用語「約」は、数値指定、例えば、範囲を含む温度、時間、量、濃度およびその他の前に使用される場合、(+)または(−)10%、5%または1%変動し得る近似を示す。
【0053】
「を含んでいる(comprising)」または「を含む(comprises)」は、組成物、例えば、培地および方法が、列挙されている要素を含む(include)が、それ以外を除外しないことを意味することを目的とする。「から本質的になる」は、組成物および方法の定義に使用される場合、記述されている目的のために、組合せにとって少しでも本質的に重要な他の要素を除外することを意味するものである。よって、本明細書に定義されている要素から本質的になる組成物は、請求されている発明の基本および新規の特徴(複数可)に大幅な影響を与えない他の材料またはステップを除外しないであろう。「からなる」は、他の成分および実質的な方法ステップの微量な要素を超えるものを除外することを意味するものである。これらの移行句のそれぞれによって定義される実施形態は、本発明の範囲内にある。
【0054】
本明細書において使用される場合、用語「ベクター」は、宿主細胞への遺伝子材料の伝達に使用されるポリヌクレオチド構築物、典型的にはプラスミドまたはウイルスを指す。ベクターは、例えば、ウイルス、プラスミド、コスミドまたはファージであることができる。本明細書において使用されるベクターは、DNAまたはRNAのどちらかで構成され得る。一部の実施形態では、ベクターは、DNAで構成される。「発現ベクター」は、適切な環境中に存在する場合、ベクターによって運搬される1種または複数の遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を導くことができるベクターである。ベクターは、好ましくは、自律的に複製することができる。典型的には、発現ベクターは、転写プロモーター、遺伝子および転写ターミネーターを含む。遺伝子発現は、通常、プロモーターの制御下に置かれ、遺伝子は、プロモーター「に作動可能に連結された」と言われる。
【0055】
本明細書において使用される場合、用語「作動可能に連結された」は、調節エレメントおよび遺伝子またはそのコード領域の間の接続を記載するために使用されている。典型的には、遺伝子発現は、1種または複数の調節エレメント、例えば、限定することなく、構成的または誘導性プロモーター、組織特異的調節エレメントおよびエンハンサーの制御下に置かれる。遺伝子またはコード領域は、調節エレメント「に作動可能に連結された」または「に操作可能に連結された」または「と作動可能に会合された」と言われ、これは、遺伝子またはコード領域が、調節エレメントによって制御または影響されていることを意味する。例えば、プロモーターが、コード配列の転写または発現をもたらす場合、プロモーターは、コード配列に作動可能に連結されている。
【0056】
用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、本明細書において、互換的に使用されている。一部の実施形態では、核酸は、共有結合により一体に連結された少なくとも2個のヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、本発明の核酸は、一本鎖である。一部の実施形態では、核酸は、二本鎖である。一部の実施形態では、核酸は、三本鎖である。一部の実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合を含む。一部の実施形態では、核酸は、一本鎖もしくは二本鎖のデオキシリボ核酸(DNA)または一本鎖もしくは二本鎖のリボ核酸(RNA)を含む。一部の実施形態では、核酸は、核酸アナログを含む。一部の実施形態では、核酸アナログは、非限定例により、ホスホラミド、ホスホロチオエート、ジチオリン酸またはO−メチルホスホラミダイト(methylphophoroamidite)結合等、ホスホジエステル結合以外のおよび/またはそれに加えた結合を含む骨格を有する。一部の実施形態では、核酸アナログは、正の(positive)骨格;非イオン性骨格および非リボース骨格から選択される骨格を備える核酸アナログから選択される。一部の実施形態では、核酸は、1個または複数の炭素環式糖を含有する。一部の実施形態では、核酸は、そのリボース−リン酸骨格の修飾を含む。一部の実施形態では、そのような修飾は、標識等、追加的な部分の付加を容易にするために行われる。一部の実施形態では、そのような修飾は、生理学的環境における斯かる分子の安定性および半減期を増加させるために行われる。
【0057】
用語「調節エレメント」および「発現制御エレメント」は、互換的に使用されており、特定の宿主生物における作動可能に連結されたコード配列の発現に影響を与えることができる核酸分子を指す。これらの用語は、広く使用されており、転写を促進または調節するあらゆるエレメントを網羅し、プロモーター、RNAポリメラーゼおよび転写因子の基本的な相互作用に必要とされるコアエレメント、上流エレメント、エンハンサーおよび応答エレメントを含む(例えば、Lewin「Genes V」(Oxford University Press、Oxford)847〜873頁を参照)。原核生物における例示的であるが非限定的な調節エレメントは、宿主細胞におけるコード配列の発現および/またはコードされたポリペプチドの産生をもたらし、そして/または調節するプロモーター、オペレーター配列、リボソーム結合部位、プロモーター等の転写および翻訳制御配列、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、タンパク質分解シグナル、配列内リボソーム進入エレメント(IRES)、2A配列等を含む。
【0058】
本明細書において使用される場合、用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼの結合を可能にし、遺伝子の転写を導くヌクレオチド配列である。典型的には、プロモーターは、遺伝子の5’非コード領域中に、遺伝子の転写開始部位に対して近位に位置する。転写の開始において機能するプロモーター内の配列エレメントは多くの場合、コンセンサスヌクレオチド配列によって特徴付けられる。プロモーターの例として、細菌、酵母、植物、ウイルスおよび哺乳動物(ヒトを含む)由来のプロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。プロモーターは、誘導性、抑圧可能および/または構成的であってよい。誘導性プロモーターは、その制御下において、温度変化等、培養条件におけるある変化に応答して、DNAからの増加したレベルの転写を惹起する。
【0059】
本明細書において使用される場合、用語「エンハンサー」は、転写の効率を増加させることができる調節エレメントの種類を指す。ある特定の実施形態では、エンハンサーは、転写の開始部位に対するエンハンサーの距離または配向性に関係なく、転写を増加させるように作用する。
【0060】
本明細書において使用される場合、用語「トランスフェクション」は、「形質導入」と同義であり、宿主細胞への外来性核酸等の核酸の導入を指す。ある特定の実施形態では、この導入は、導入しようとする核酸(例えば、発現カセット)を含む組換えAAVウイルスまたはベクターと細胞との接触によって為される。AAVゲノムは、ヒトおよび他の霊長類に感染するアデノ随伴ウイルスに全体的にまたは部分的に由来するゲノムである。AAVゲノムは、ポジティブまたはネガティブ・センスのいずれかの一本鎖DNA(ssDNA)で構成される。ゲノムは、DNAの両端における末端逆位反復配列(ITR)および2個のオープンリーディングフレームを含む。自己相補的AAV(scAAV)は、野生型AAVから作製されたウイルスベクターである。自己相補的AAVは、AAV派生体の例であり、分子内二本鎖DNA鋳型を形成するように設計された、AAVに由来する遺伝子操作されたウイルスベクターである。
【0061】
本明細書において使用される場合、用語「導入遺伝子」は、標的細胞にトランスフェクトされる、任意のヌクレオチドまたはDNA配列を指す。導入遺伝子を含む構築物は、安定的エピソームとして存在することができるか、または標的細胞の1本もしくは複数の染色体に組み込むことができる。一部の実施形態では、導入遺伝子は、目的のタンパク質(例えば、CLN3)をコードするポリヌクレオチドを含む。所望のタンパク質をコードするポリヌクレオチドは一般に、プロモーター、エンハンサー、転写調節配列等、目的の遺伝子の所望の発現を得るために有用な他の配列に操作可能に連結されている。
【0062】
本明細書において使用される場合、セロイド−リポフスチン沈着症、ニューロナル3遺伝子(または「CLN3遺伝子」)は、リソソーム機能に関与するタンパク質をコードする核酸を意図する。この遺伝子における変異は、神経変性疾患を引き起こす。ヒトタンパク質をコードする核酸およびヒトタンパク質は、本技術分野で公知であり、GenBank受託番号NM_001042432(最終アクセス2015年12月15日)に提供されており、非ヒトCLN3遺伝子の例は、ウェブサイトgenenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:2074、最終アクセス2015年12月15日で入手できるラットおよびマウスホモログである。
【0063】
本明細書において使用される用語「処置、処置する、処置している等」としては、疾患もしくは状態(例えば、若年型神経セロイドリポフスチン症(JNCLまたは若年型バッテン病))の症状の軽減、ならびに/または疾患もしくは状態の進行、重症度および/もしくは範囲の低下、抑制、阻害、和らげる、緩和もしくは影響が挙げられるがこれらに限定されない。「処置」は、治療的処置および予防的または防止的方策の一方または両方を指す。処置を必要とする対象は、疾患または障害または望まれない生理学的状態に既に罹患した対象と共に、疾患または障害または望まれない生理学的状態が防止されるべき対象を含む。
【0064】
用語「有効量」は、本明細書において使用される場合、疾患もしくは状態を処置もしくは緩和することができるか、または他の仕方で意図される治療効果を生じることができる量を指す。ある特定の実施形態では、有効量は、JNCLの1種または複数の症状の発病の低下、防止または遅延に十分な量である。斯かる症状として、視覚障害または失明、発作、パーソナリティおよび/または行動変化、学習の遅さ(slow learning)、不器用、口ごもり(stumbling)、精神的機能障害ならびに運動技能の喪失を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0065】
用語「患者」、「対象」または「哺乳動物対象」は、本明細書において、互換的に使用されており、本明細書に記載されている処置または予防的方法(例えば、JNCLの処置または予防のための方法)を必要とするいずれかの哺乳動物を含む。斯かる哺乳動物は、特にヒト(例えば、胎児期ヒト、ヒト乳児、ヒト十代、ヒト成人等)を含む。斯かる処置または予防を必要とする他の哺乳動物は、イヌ、ネコまたは他の飼い慣らされた動物、ウマ、家畜、実験動物(例えば、ウサギ類、非ヒト霊長類等)等、非ヒト哺乳動物を含むことができる。対象は、雄であっても雌であってもよい。ある特定の実施形態では、対象は、JNCLのリスクがあるが、無症候性である(例えば、臨床徴候が明らかになる前にJNCLの遺伝子診断がある小児(これは滅多に起きない)、または臨床症状が発症する前の年齢(すなわち、出生から4〜5歳前後)のJNCLの遺伝子診断がある小児、例えば、JNCLの確認された診断がある兄または姉によって遺伝子検査が為される場合)。ある特定の実施形態では、対象は、JNCLの症状を発現する。
【0066】
用語、対象にベクターを「投与すること」または対象へのベクターの「投与」は、その意図される機能を行わせるために、ベクターを対象に導入または送達する任意の経路を含む。投与は、経口、鼻腔内、非経口的(静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下)、頭蓋内または局所的を含む任意の適した経路によって行うことができる。投与は、自己投与および他者による投与を含む。
【0067】
用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」および「オリゴヌクレオチド」は、互換的に使用されており、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはそれらのアナログのいずれかの、いずれかの長さのヌクレオチドのポリマー型を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有することができ、公知または未知の任意の機能を行うことができる。次に、ポリヌクレオチドの非限定例を挙げる:遺伝子または遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、ESTまたはSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝状ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログ等、修飾されたヌクレオチドを含むことができる。存在するのであれば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリヌクレオチドのアセンブリの前または後に付与することができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成成分で中断することができる。ポリヌクレオチドは、標識構成成分とのコンジュゲーションによるもののように、重合後にさらに修飾することができる。この用語は、二本および一本鎖分子の両方も指す。他に指定または要求がなければ、ポリヌクレオチドである、本発明のいずれかの実施形態は、二本鎖形態と、二本鎖形態を構成することが公知のまたは予測される2本の相補的一本鎖形態のそれぞれの両方を包含する。
【0068】
ポリヌクレオチドは、4種のヌクレオチド塩基:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);チミン(T);およびポリヌクレオチドがRNAの場合はチミンの代わりにウラシル(U)の特異的な配列で構成される。よって、用語「ポリヌクレオチド配列」は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表示である。このアルファベット表示は、中央処理ユニットを有するコンピュータ内のデータベースに入力し、機能ゲノミクスおよび相同性検索等、バイオインフォマティクス適用に使用することができる。
【0069】
「相同性」または「同一性」または「類似性」は、2個のペプチドの間または2個の核酸分子の間の配列類似性を指す。相同性は、比較目的のために整列され得る各配列におけるポジションを比較することにより決定することができる。比較されている配列中のポジションが、同じ塩基またはアミノ酸によって占められている場合、これらの分子は、該ポジションにおいて相同である。配列間の相同性の程度は、これらの配列によって共有されるマッチするか、または相同なポジションの数の関数である。「無関係」または「非相同」な配列は、本発明の配列のうち1種と40%未満の同一性、あるいは25%未満の同一性を共有する。
【0070】
ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)は、別の配列に対しある特定のパーセンテージ(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%)の「配列同一性」を有するとは、整列された場合、該パーセンテージの塩基(またはアミノ酸)が、2配列の比較において同じであることを意味する。この整列およびパーセント相同性または配列同一性は、本技術分野で公知のソフトウェアプログラム、例えば、Ausubelら編(2007年)Current Protocols in Molecular Biologyに記載されているソフトウェアプログラムを使用して決定することができる。好ましくは、整列のためにデフォルトパラメータが使用される。整列プログラムの一例は、デフォルトパラメータを使用したBLASTである。特に、プログラムは、次のデフォルトパラメータを使用したBLASTNおよびBLASTPである:遺伝暗号=標準;フィルター=なし;ストランド=両方;カットオフ=60;予想=10;マトリックス=BLOSUM62;記載=50配列;選別=HIGH SCOREによる;データベース=非重複性、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+SwissProtein+SPupdate+PIR。これらのプログラムに関する詳細は、次のインターネットアドレスに見出すことができる:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/cgi-bin/BLAST。
【0071】
均等または生物学的に均等な核酸、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドまたはペプチドは、参照核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたはペプチドに対して、少なくとも70%配列同一性、あるいは少なくとも80%配列同一性、あるいは少なくとも85%配列同一性、あるいは少なくとも90%配列同一性、あるいは少なくとも92%配列同一性、あるいは少なくとも95%配列同一性、あるいは少なくとも97%配列同一性、あるいは少なくとも98%配列同一性を有するものである。代替的な均等なポリペプチドは、高ストリンジェンシーの条件下で、参照ポリヌクレオチドまたはその相補体にハイブリダイズする核酸によってコードされるポリペプチドである。代替的な均等なポリヌクレオチドは、高ストリンジェンシーの条件下で、参照ポリヌクレオチドまたはその相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドである。
【0072】
「ハイブリダイゼーション」は、1本または複数のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合により安定化される複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソン・クリック塩基対形成、フーグスティーン(Hoogstein)結合により、または他の何らかの配列特異的様式で起こり得る。複合体は、二重鎖構造を形成する2本の鎖、複数本(multi)の鎖の複合体を形成する3本またはそれ超の鎖、単一の自己ハイブリダイズする鎖、またはこれらのいずれかの組合せを含むことができる。ハイブリダイゼーション反応は、PCR反応の開始またはリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素切断等、より広範なプロセスにおけるステップを構成することができる。
【0073】
ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」の条件下で行うことができる。一般に、低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション反応は、約40℃、10×SSCまたは均等なイオン強度/温度の溶液中で行われる。中等度ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、典型的には、約50℃、6×SSCで行われ、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション反応は、一般に、約60℃、1×SSCで行われる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の追加的な例として、次のものが挙げられる:低ストリンジェンシーのインキュベーション温度、約25℃〜約37℃;ハイブリダイゼーションバッファー濃度、約6×SSC〜約10×SSC;ホルムアミド濃度、約0%〜約25%;および洗浄溶液、約4×SSC〜約8×SSC。中等度ハイブリダイゼーション条件の例として、次のものが挙げられる:インキュベーション温度、約40℃〜約50℃;バッファー濃度、約9×SSC〜約2×SSC;ホルムアミド濃度、約30%〜約50%;および洗浄溶液、約5×SSC〜約2×SSC。高ストリンジェンシー条件の例として、次のものが挙げられる:インキュベーション温度、約55℃〜約68℃;バッファー濃度、約1×SSC〜約0.1×SSC;ホルムアミド濃度、約55%〜約75%;および洗浄溶液、約1×SSC、0.1×SSCまたは脱イオン水。一般に、ハイブリダイゼーションインキュベーション時間は、5分間〜24時間であり、1、2回またはそれ超の洗浄ステップであり、洗浄インキュベーション時間は、約1、2または15分間である。SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸塩のバッファーである。他の緩衝系を使用したSSCの均等物を用いてよいことが理解される。ハイブリダイゼーション反応は、当業者に周知の「生理学的条件」下で行うこともできる。生理学的条件の非限定例は、細胞内で通常に見出される温度、イオン強度、pHおよびMg
2+濃度である。
【0074】
本明細書において使用される場合、用語「低発現」は、ネイティブプロモーターよりも高く遺伝子発現を駆動することが本技術分野で公知であるβ−アクチンまたはCMVプロモーター等、「高発現」プロモーターを使用して発現されるもの未満を意図する。低発現プロモーターの非限定的例は、MeCP2プロモーターである。
【0075】
本開示を実施するためのモード
若年型神経セロイドリポフスチン症(JNCL)または若年型バッテン病は、CLN3における常染色体劣性変異によって引き起こされるリソソーム蓄積障害である。JNCLは、5〜10歳の間に、進行性視力喪失、発作、認知および運動機能減退を呈し、10代後半〜20代前半までに死亡する。JNCLに治癒はなく、このことは、この致命的な疾患を患う小児の寿命およびクオリティ・オブ・ライフを改善するための新規治療法を識別することの意義を強調する。
【0076】
JNCLの現在の治療アプローチは、病的続発症を標的とする。しかし、持続性の保護を提供するために、代替的な戦略が必要とされている。斯かるアプローチの1種は、遺伝子療法である。遺伝子療法は、一部には、隣接する形質導入されていない細胞の相互是正(cross-correction)により、可溶性酵素における変異が関与する一部の形態のバッテン病の是正においては見込みを示した。しかし、CLN3は、膜貫通タンパク質であるため、遺伝子療法アプローチは、JNCLに対して実用性が低いと考えられてきた。このような事実にもかかわらず、近年の証拠は、JNCLのための遺伝子療法が実行可能となり得ることを示唆し、それによると、ヒトCLN3を持つアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの頭蓋内送達は、リソソーム封入体を低下させることができたが、行動的欠損に変化は報告されなかった。
【0077】
本明細書の実施例に例示されている通り、AAV9/hCLN3構築物は、それぞれhCLN3の高い発現対低い発現を駆動するために、β−アクチンまたはMeCP2プロモーターを使用して遺伝子操作された。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウスに、2×10
12ウイルスゲノム(vg)のAAV9/β−アクチン−hCLN3またはAAV9/MeCP2−hCLN3を静脈内注射し、緑色蛍光タンパク質(GFP)発現を駆動するウイルス(AAV9/β−アクチン−GFPおよびAAV9/MeCP2−GFP)を対照とした。
【0078】
重要なことに、海馬(HPC)、線条体(STR)、視床(TH)、視覚皮質(VC)および小脳(CB)を含む、JNCLにおいてニューロンが死ぬように運命付けられたいくつかの脳領域においてhCLN3のプロモーター遺伝子投与量(dosage)効果が確認され、AAV9/MeCP2−hCLN3と比べ、高発現AAV9/β−アクチン−hCLN3を与えたCLN3
Δex7/8マウスにおいて、hCLN3発現が3〜8倍上昇していた。AAV9/GFP構築物を与えた動物では、ウイルスが、NeuN
+ニューロンに主に形質導入し、少量のGFAP
+アストロサイトも観察された一方、マイクログリアにおいてGFP発現が検出されなかったことが明らかになった。体性感覚野バレル皮質(S1BF)、VC、STR、TH、HPC、SCNおよびCBにおけるGFP発現によって明らかな通り、脳におけるウイルス形質導入の程度は広汎であった。
【0079】
重要なことに、低いhCLN3発現を駆動するAAV9構築物(AAV9/MeCP2−hCLN3)のみが、WT動物に典型的な成績レベルまで、CLN3
Δex7/8マウスの運動欠損を回復させることができ(加速ロータロッドおよびポールよじ登り)、脳における高いCLN3発現が、運動協調性の改善に有利ではなかったことを実証する。AAV9/MeCP2−hCLN3を与えた動物のS1BF、VCおよびTHにおいて有意に低下したリソソーム蓄積物質についても、同様の利益が観察された。CLN3
Δex7/8マウスの運動行為におけるAAV9/MeCP2−hCLN3の有益な効果は、GFP対照構築物により観察されず、これから、hCLN3の作用の特異性が確認される。これらの観察に基づき、理論に制約されることなく、AAV/hCLN3(例えば、AAV9/hCLN3)媒介性遺伝子療法は、十分な数のCNS細胞を標的として、JNCL転帰を有意に改善するであろうと考えられる。これに関して、CLN3変異のヘテロ接合性キャリア(すなわち、1/2遺伝子投与量)は、疾患または病理のいかなる証拠もないことが認められ、このような「低下したレベルのCLN3発現」が、健康な細胞の産生に十分であることを示す。本明細書に記載されているscAAV9/MeCP2−GFPウイルスを使用して、CNSにおける形質導入細胞の頻度を識別した。中程度の頻度にもかかわらず、ウイルス構築物により形質導入された細胞の識別に使用された方法(すなわち、GFP抗体による免疫蛍光染色)は、感度が限られており、形質導入された脳内細胞数が過小評価された可能性があることを示唆する。それにもかかわらず、本明細書に記載されている疾患リードアウトにおける劇的な改善は、本明細書に記載されているAAV遺伝子療法アプローチ(複数可)が有効であることを示す。
【0080】
したがって、様々な実施形態では、hCLN3を発現するrAAVであるAAV/hCLN3構築物、ならびにAAV/hCLN3構築物を利用した処置および/または予防方法が提供される。
【0081】
AAVベクターおよび組成物
ある特定の実施形態では、CLN3タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、その多くが本技術分野で公知かつ利用できるウイルスベクターによって、中枢神経系(CNS)の1種または複数の組織内のまたはこれを構成する細胞へと送達される。その上、様々な実施形態では、CLN3は、全身の組織にも送達され、若年型バッテン病の小児は全身性疾患症状(すなわち、心臓の欠損)も有することから、このような送達が重要である。これに関して、CLN3が、身体のあらゆる細胞型において遍在性に発現されることが認められる。ウイルスベクター(複数可)は、望ましくは無毒、非免疫原性であり、産生が容易であり、DNAの保護および標的細胞への送達において効率的である。例示的であるるが非限定的な一実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターまたはその派生体であり、CLN3ポリペプチドをコードする核酸配列を含むアデノ随伴ウイルスベクターまたはその派生体を含む治療組成物は、適したプロモーターの制御下にある。
【0082】
AAVの30種を超える天然に存在する血清型を利用することができ、本明細書に記載されている構築物および方法において有用である。AAVカプシドにおける多くの天然バリアントが存在し、神経細胞および他の細胞型に特に適する特性を備えるAAVの識別および使用を可能にする。AAVウイルスは、従来の分子生物学技法によって遺伝子操作することができ、所望の核酸配列の細胞特異的送達、免疫原性の最小化、安定性および粒子寿命の調整、効率的分解、核への正確な送達等に関するこのような粒子の最適化を可能にする。
【0083】
AAVの使用は、相対的に無毒であり、効率的な遺伝子移入をもたらし、特異的な目的に容易に最適化することができるため、DNAの外来性送達の共通モードである。ヒトまたは非ヒト霊長類(NHP)から単離され、十分に特徴付けられたAAVの血清型のうち、ヒト血清型2が、遺伝子移入ベクターとして開発された最初のAAVである。この血清型は、異なる標的組織および動物モデルにおける効率的な遺伝子移入実験に広く使用されてきた。本開示のベクターおよび方法において有用な他のAAV血清型として、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、rh.39、rh.43、CSP3等(例えば、様々なAAV血清型の考察に関して、WO2005/033321および米国特許第7,198,951号を参照)が挙げられるがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、血清型は、所望の送達機序を最適化するために選択される。例えば、AAV1、AAV5およびAAV9は、優れたベクター伝播および高効率の形質導入をもたらす。AAV1およびAAV9は、ほぼ排他的にニューロン指向性をもたらす一方、AAV5は、ニューロンおよびグリアの混合型をもたらし、AAV4は、大部分はアストロサイトを標的とする(例えば、Davidsonら(2000年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、97巻:3428〜3432頁;Burgerら(2004年)Mol. Ther.10巻:302〜317頁;CearleyおよびWolfe(2006年)Mol. Ther.13巻:528〜537頁を参照)。AAV1およびAAV6は、末梢注射後に優れた逆行性軸索輸送能力を有する(Hollisら(2008年)Mol. Ther.16巻:296〜301頁)一方、AAV9は、脳内で効率的な軸索輸送を起こす(CearleyおよびWolfe(2006年)上記参照)。AAV6、AAV8およびAAV9は、くも膜下腔内投与後に脊髄および後根神経節への効率的な送達を実証し、特異的な血清型に依存して異なるサブセットの細胞を標的とする(Storekら(2008年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、105巻:1055〜1060頁;Towneら(2009年)Mol. Pain、5巻:52頁;Snyderら(2011年)Hum. Gene Ther.、22巻:1129〜1135頁)。AAV4の脳内脳室(ventricular)注射は、上衣細胞に効率的に形質導入する(Liuら(2005年)Gene Ther.12巻:1503〜1508頁)。本明細書に実証される通り、AAV9は、静脈内投与後に血液脳関門(BBB)を通過して、脳内のニューロンおよびグリアに形質導入することができる。ある特定の実施形態では、rh.10血清型は明確に除外される。よって、異なるAAV血清型の投薬量を同時発生的におよび/または逐次的に患者に投与して標的化送達をもたらし、疾患の症状および進行に基づき治療法を個別化することができることは、本開示の範囲内である。
【0084】
ベクターへのアセンブリのために望ましいAAV断片は、vpl(例えば、配列番号12および13)、vp2(例えば、配列番号14および15)、vp3(例えば、配列番号16および17)および高度可変領域を含む、本技術分野で公知のcapタンパク質、rep78(例えば、配列番号18)、rep68(例えば、配列番号19)、rep52(例えば、配列番号20)およびrep40(例えば、配列番号21)を含むrepタンパク質、ならびにこれらのタンパク質およびその均等物をコードする配列を含む。これらの断片は、種々のベクター系および宿主細胞において容易に利用することができる。斯かる断片は、単独で、他のAAV血清型配列もしくは断片と組み合わせて、または他のAAVもしくは非AAVウイルス配列由来のエレメントと組み合わせて使用することができる。本明細書において使用される場合、人工AAV血清型は、天然に存在しないカプシドタンパク質を有するAAVを限定することなく含む。斯かる人工カプシドは、選択されたAAV配列(例えば、vplカプシドタンパク質の断片)を、異なる選択されたAAV血清型、同じAAV血清型の非連続部分、非AAVウイルス供給源由来または非ウイルス供給源由来から得ることができる異種配列と組み合わせて使用し、いずれかの適した技法によって生成することができる。人工AAV血清型は、限定することなく、シュードタイプ化AAV、キメラAAVカプシド、組換えAAVカプシドまたは「ヒト化」AAVカプシドであることができる。あるAAVのカプシドが異種カプシドタンパク質に置き換えられたシュードタイプ化ベクターも有用である(例えば、Asokan A.(2010年)Discov. Med.9巻(48号):399〜403頁を参照)。
【0085】
例示的であるが非限定的な一実施形態では、本明細書に記載されている組成物および方法において有用なベクターは、最低でも、選択されたAAV血清型カプシド、例えば、AAV9カプシド(例えば、配列番号13)またはその断片もしくは均等物をコードする配列を含有する。別の実施形態では、有用なベクターは、最低でも、選択されたAAV血清型repタンパク質、例えば、AAV9 repタンパク質またはその断片をコードする配列を含有する。任意選択で、斯かるベクターは、AAV capおよびrepタンパク質の両方を含有することができる。AAV repおよびcapの両方を加えたベクターにおいて、AAV repおよびAAV cap配列は両者共に、1種の血清型起源、例えば、全てAAV9起源とすることができる(例えば、Balakrishnanら(2014年)Curr. Gene. Therap.14巻:1〜15頁;米国特許第8,962,330号;米国特許第7,198,951号を参照)。
【0086】
あるいは、cap配列を提供しているAAV血清型とは異なるAAV血清型にrep配列が由来するベクターを使用することができる。一実施形態では、repおよびcap配列は、別々の供給源(例えば、別々のベクター、または宿主細胞およびベクター)から発現される。別の実施形態では、これらのrep配列は、異なるAAV血清型のcap配列にインフレームで融合されて、米国特許第7,282,199号に記載されているAAV2/8等、キメラAAVベクターを形成する。一部の実施形態では、AAV1 repタンパク質は、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、rh.39、rh.43およびCSP3からなる群から選択されるAAV血清型のcap配列にインフレームで融合される。一部の実施形態では、AAV2 repタンパク質は、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、rh.39、rh.43およびCSP3からなる群から選択されるAAV血清型のcap配列にインフレームで融合される。一部の実施形態では、AAV3 repタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、rh.39、rh.43およびCSP3からなる群から選択されるAAV血清型のcap配列にインフレームで融合される。一部の実施形態では、AAV4 repタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、rh.39、rh.43およびCSP3からなる群から選択されるAAV血清型のcap配列にインフレームで融合される。一部の実施形態では、AAV5 repタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、rh.39、rh.43およびCSP3からなる群から選択されるAAV血清型のcap配列にインフレームで融合される。一部の実施形態では、AAV6 repタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、rh.39、rh.43およびCSP3からなる群から選択されるAAV血清型のcap配列にインフレームで融合される。一部の実施形態では、AAV6.2 repタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、rh.39、rh.43およびCSP3からなる群から選択されるAAV血清型のcap配列にインフレームで融合される。一部の実施形態では、AAV7 repタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6.2、AAV6.2、AAV8、AAV9、rh.10、rh.39、rh.43およびCSP3からなる群から選択されるAAV血清型のcap配列にインフレームで融合される。一部の実施形態では、AAV8 repタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6.2、AAV6.2、AAV7、AAV9、rh.10、rh.39、rh.43およびCSP3からなる群から選択されるAAV血清型のcap配列にインフレームで融合される。一部の実施形態では、AAV9 repタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6.2、AAV6.2、AAV7、AAV8、rh.10、rh.39、rh.43およびCSP3からなる群から選択されるAAV血清型のcap配列にインフレームで融合される。一部の実施形態では、AAVrh.10 repタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6.2、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、rh.39、rh.43およびCSP3からなる群から選択されるAAV血清型のcap配列にインフレームで融合される。一部の実施形態では、AAVrh.39 repタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6.2、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、rh.43およびCSP3からなる群から選択されるAAV血清型のcap配列にインフレームで融合される。一部の実施形態では、AAVrh.43 repタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6.2、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、rh.39およびCSP3からなる群から選択されるAAV血清型のcap配列にインフレームで融合される。一部の実施形態では、AAVCSP3 repタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6.2、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、rh.39およびrh.43からなる群から選択されるAAV血清型のcap配列にインフレームで融合される。
【0087】
典型的には、ベクターは、最低でも、導入遺伝子およびその必要な調節配列、ならびに5’および3’AAV末端逆位反復配列(ITR)で構成される。ITRの非限定例として、配列番号2のヌクレオチド662〜767およびヌクレオチド3278〜3418、ならびにこれらそれぞれの均等物が挙げられる。組換えAAVベクターは、カプシドタンパク質にパッケージされ、選択された標的細胞へと送達される。よって、一態様では、カプシドおよび/または標的細胞内に含有されるベクターは、本開示の態様である。本明細書に企図される通り、導入遺伝子は、CLN3遺伝子産物(例えば、CLN3ポリペプチド(例えば、International Batten Disease Consortium(1995年)Cell、82巻:949〜957頁、ならびにGenBank受託番号AAC05337(配列番号1)、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号2のヌクレオチド1683〜2999およびこれらそれぞれの均等物を参照))をコードする導入遺伝子である。CLN3遺伝子産物の核酸コード配列(例えば、配列番号11)およびその均等物は、標的組織の細胞における導入遺伝子の転写、翻訳および発現を可能にする様式で、調節構成成分に操作可能に連結される。
【0088】
ベクターのAAV配列は、典型的には、シス作用性5’および3’末端逆位反復配列を含む(例えば、Carter(1990年)In Handbook of Parvoviruses、P. Tijsser編、CRC Press、155〜168頁を参照)。ITR配列は、典型的には、約145bpの長さである。ある特定の実施形態では、ベクターにおいて、ITRをコードする実質的に配列全体が使用されるが、これらの配列のある程度の修飾が許容できる。このようなITR配列を修飾する能力は、当業者の技能範囲内である(例えば、Sambrookら(1989年)Molecular Cloning. A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、New York;およびFisherら(1996年)J. Virol.、70巻:520〜532頁等を参照)。斯かる分子の一例は、導入遺伝子を含有する「シス作用性」プラスミドであり、このプラスミドでは、選択された導入遺伝子配列および関連する調節エレメントが、5’および3’AAV ITR配列に挟まれている。AAV ITR配列は、現在識別されている哺乳動物AAV型を含むいずれかの公知のAAVから得ることができる。***
【0089】
組換えAAVベクターのための上で識別された主要なエレメントに加えて、ある特定の実施形態では、ベクターは、典型的には、プラスミドベクターをトランスフェクトされたまたはAAVウイルスに感染した細胞におけるその転写、翻訳および発現を可能にする様式で、導入遺伝子に作動可能に連結された従来の制御エレメントを含むこともできる。発現制御配列は、例えば、適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナル等、効率的RNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;ならびに所望であれば、コードされた産物の分泌を増強する配列を含む。ネイティブ、構成的、誘導性および/または組織特異的なプロモーターを含む多数の発現制御配列は、本技術分野で公知であり、利用することができる。
【0090】
タンパク質をコードする核酸のため、導入遺伝子配列の後かつ3’AAV ITR配列の前に、ポリアデニル化配列が一般に挿入される。適したポリアデニル化配列として、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列(例えば、配列番号2のヌクレオチド(nucelotide)3052〜3198)、SV40後期ポリアデニル化配列、SV40初期ポリアデニル化配列、AATAAA(配列番号3)ポリアデニル化シグナル、CAATAAA(配列番号4)ポリアデニル化シグナル、ATTAAA(配列番号5)ポリアデニル化シグナル、TANA(配列番号6)ポリアデニル化シグナルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0091】
ある特定の実施形態では、AAVベクターは、望ましくは、プロモーター/エンハンサー配列および導入遺伝子の間に位置するイントロンも含有する。例示的だが非限定的な可能なイントロン配列の1種は、SV−40に由来し、SV−40 Tイントロン配列と称される。他のイントロン配列は、当業者に公知であり、とりわけ、CBAおよびCBA−MVMを含む(例えば、Grayら(2011年)Hum. Gene Ther.22巻(9号):1143〜1153頁およびその中に引用されている参考文献を参照)。
【0092】
任意選択で存在し得る別のエレメントは、翻訳後調節エレメントである。例示的な翻訳後調節エレメントとして、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)、最小ガンマエレメントおよび部分的アルファ−ベータエレメントを含有するWPRE2、最小ガンマおよびアルファエレメントを含有するWPRE3(例えば、Choiら(2014年)Molecular Brain 7巻:17〜26頁を参照)が挙げられるがこれらに限定されない。非限定的な例を添付の配列表に提示し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
宿主細胞における遺伝子発現に必要とされる調節配列の正確な性質は、種、組織または細胞型の間で変動し得るが、一般に、必要に応じて、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列、エンハンサーエレメント等、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写および5’非翻訳配列を含む。特に、斯かる5’非転写調節配列は、作動可能に連接された遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含み得る。調節配列は、所望に応じてエンハンサー配列または上流アクチベーター配列を含むこともできる。ベクターは、5’リーダーまたはシグナル配列を任意選択で含むことができる。斯かるシグナルペプチドの例として、アルブミン、β−グルクロニダーゼ、アルカリプロテアーゼまたはフィブロネクチン分泌シグナルペプチドが挙げられる。一態様では、エンハンサーは、ウッドチャック転写後(post)調節エレメント(「WPRE」)である(例えば、Zufferey, R.ら(1999年)J. Virol.73巻(4号):2886〜2992頁を参照)。WPREの非限定的な例として、配列番号37または配列番号38が挙げられる。エンハンサーエレメントは、プロモーターおよびCLN3遺伝子の下流に存在し得る。しかし、エンハンサーは、いかなる位置にあってもよい。非限定例を添付の配列表に提示し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
適したプロモーターの例として、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意選択でRSVエンハンサーと共に)(例えば、配列番号28およびその均等物)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意選択でCMVエンハンサーと共に)(例えば、Boshartら(1985年)Cell、41巻:521〜530頁を参照、例えば、配列番号27およびその均等物)、SV40プロモーター(例えば、配列番号29)、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β−アクチンプロモーター(例えば、ニワトリβ−アクチンプロモーター)(例えば、配列番号22、配列番号23およびそれらの均等物)、ホスホグリセロール(phosphoglycerol)キナーゼ(PGK)プロモーター(例えば、配列番号30およびその均等物)、EF1αプロモーター(例えば、配列番号31およびその均等物)、CBAプロモーター(例えば、配列番号24およびその均等物)、UBCプロモーター(例えば、配列番号34およびその均等物)、GUSBプロモーター、NSEプロモーター(例えば、配列番号33およびその均等物)、シナプシンプロモーター(例えば、配列番号32およびその均等物)、MeCP2(メチル−CPG結合タンパク質2)プロモーター(例えば、配列番号22、配列番号23およびそれらの均等物)、GFAP、CBhプロモーター等が挙げられるがこれらに限定されない。異なるプロモーターを使用して、導入遺伝子(例えば、CLN3)の発現レベルを増大させることができることが企図される。例えば、ニワトリβ−アクチンプロモーター(CBA)は、導入遺伝子の強い遍在性の発現をもたらすことができる一方、MeCP2プロモーターは、別のプロモーターと比較して、導入遺伝子のより低い発現をもたらすことができる。一部の実施形態では、プロモーターは、組織依存性様式で導入遺伝子発現を制御することができる。例えば、プロモーター活性は、グリアと比較してニューロンにおいてより高くなることができる。一部の実施形態では、プロモーターは、発生段階依存性様式で導入遺伝子発現を制御することができる。例えば、プロモーターに駆動される発現は、出生後に上昇し、成人期を通して必須であってもよい。
【0095】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子のためのネイティブプロモーターまたはその断片を使用することができる。導入遺伝子の発現が、ネイティブな発現を模倣することが望まれる場合、ネイティブプロモーターが好まれる場合がある。ある特定の実施形態では、エンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位またはコザックコンセンサス配列等、他のネイティブ発現制御エレメントを使用して、ネイティブな発現を模倣することもできる。
【0096】
一部の実施形態では、調節配列は、組織特異的遺伝子発現能力を付与する。場合によっては、組織特異的調節配列は、組織特異的様式で転写を誘導する組織特異的転写因子と結合する。斯かる組織特異的調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー等)は、本技術分野で周知である。例証的な組織特異的調節配列として、次の組織特異的プロモーターが挙げられるがこれらに限定されない:ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Andersonら(1993年)Cell. Mol. Neurobiol.、13巻:503〜515頁)、ニューロフィラメント軽鎖遺伝子プロモーター(Piccioliら(1991年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻:5611〜5615頁および例えば、GenBank受託番号L04147.1(配列番号25))およびニューロン特異的vgf遺伝子プロモーター(Piccioliら(1995年)Neuron、15巻:373〜384頁およびGenBank受託番号Y09938.1(配列番号26))等の、ニューロンのプロモーター。一部の実施形態では、組織特異的プロモーターは、神経核(NeuN)、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)(Brennerら(1994年)J. Neurosci.14巻(3号):1030〜1037頁)、大腸腺腫症(APC)およびイオン化カルシウム結合アダプター分子1(Iba−1)から選択される遺伝子のプロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、ニワトリベータ−アクチンプロモーター(例えば、配列番号24またはその均等物)またはMeCP2プロモーター(例えば、配列番号2のヌクレオチド775〜1511、配列番号22、配列番号23またはそれらの均等物)である。
【0097】
一部の実施形態では、1種または複数のmiRNAのための1種または複数の結合部位が、AAVベクターの導入遺伝子中に取り込まれて、導入遺伝子を持つ対象の1種または複数の組織、例えば、非CNS組織における導入遺伝子の発現を阻害する。当業者であれば、結合部位を選択して、組織特異的様式で導入遺伝子の発現を制御することができることを認識し得る。例えば、導入遺伝子から発現されるmRNAが、肝臓におけるmiR−122に結合し、これにより阻害されるように、肝臓における導入遺伝子の発現は、miR−122の結合部位を取り込むことにより阻害することができる。導入遺伝子から発現されるmRNAが、心臓においてmiR−133aまたはmiR−1に結合し、これにより阻害されるように、心臓における導入遺伝子の発現は、miR−133aまたはmiR−1の結合部位を取り込むことにより阻害することができる。mRNAにおけるmiRNA標的部位は、5’UTR、3’UTRまたはコード領域に存在することができる。典型的には、標的部位は、mRNAの3’UTRに存在する。さらに、複数のmiRNAが、同じか、または複数の部位を認識することによりmRNAを調節するように、導入遺伝子を設計することができる。複数のmiRNA結合部位の存在は、複数のRISCの協調作用をもたらし、高度に効率的な発現阻害を生じることができる。ある特定の実施形態では、標的部位配列は、合計5〜100、10〜60またはそれ超のヌクレオチドを含むことができる。ある特定の実施形態では、標的部位配列は、少なくとも5ヌクレオチドの標的遺伝子結合部位配列を含むことができる。
【0098】
CLN3導入遺伝子
セロイド−リポフスチン沈着症ニューロナル3(CLN3)は、リソソーム膜を含む複数の細胞構造の細胞膜に見出される疎水性の膜貫通タンパク質であるが、CLN3の分子機能は未知である。CLN3は、エンドサイトーシスおよび細胞内タンパク質輸送、リソソーム恒常性、オートファジー、ミトコンドリア機能、アミノ酸トランスポート、酸化ストレス、神経細胞興奮毒性および細胞周期調節を含むいくつかの細胞過程に関係付けられてきた。CLN3は、有毒物質を正常に分解し、再利用可能な構成成分があればそれを再利用する細胞内の区画であるリソソームの正常機能に重要であることが公知である。
【0099】
CLN3遺伝子における60種を超える変異がバッテン病を有する人々において識別された。若年型バッテン病の最も一般的な変異は、CLN3遺伝子におけるおよそ1kbヌクレオチド欠失である。若年型バッテン病個体の90%超が、斯かる変異を有することが推定される。この疾患を研究するために、CLN3ノックアウト(KO)マウスおよびCLN3
Δex7/8マウス(小児に観察される主要変異を再現)を含むいくつかの動物モデルが派生された。
【0100】
上に記す通り、本明細書に企図されている構築物は、ヒトCLN3(例えば、International Batten Disease Consortium(1995年)Cell、82巻:949〜957頁およびGenBank受託番号AAC05337(配列番号1)を参照)およびその均等物をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、CLN3 cDNAである。しかし、CLN3をコードする核酸配列を改変して、例えば、発現カセットの構築を容易にし、発現を増強すること等ができる(例えば、コード最適化により)が認識され得る。ある特定の実施形態では、コードされたCLN3ペプチドを改変して、例えば、膜挿入を改善、活性および/または安定性を改善、免疫原性を低下させること等ができる。ある特定の実施形態では、特に、処置または研究目的での非ヒト対象へのAAVの適用のために、非ヒトCLN3を利用することができる。CLN3配列が、Canus lupus(例えば、GenBank受託番号AAB05546.1(配列番号7))、Mus musculus(例えば、GenBank受託番号AAB69983(配列番号8))、Ovis aries(例えば、GenBank受託番号XP_011959725(配列番号9))、Felis catus(例えば、GenBank受託番号BAM42890(配列番号10))等が挙げられるがこれらに限定されない、いくつかの哺乳動物で公知であることが注記される。
【0101】
一部の実施形態では、適したCLN3核酸配列は、CLN3ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むか、あるいはこれから本質的になるか、またはなお、さらにはこれからなり、このCLN3ポリペプチドは、配列番号1または均等物ポリペプチドを含み、均等物は、配列番号1に対し、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%または100%アミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。追加的な非限定例を、参照により本明細書に組み込まれている添付の配列表に提示する。
【0102】
CLN3またはその均等物をコードする核酸は、配列番号11またはその生物学的均等物のポリヌクレオチドを含むか、あるいはこれから本質的になるか、またはなお、さらにはこれからなることができる。CLN3核酸の生物学的均等物の一例は、高ストリンジェンシーの条件下で、配列番号11の相補体にハイブリダイズし、CLN3生物学的活性を有するタンパク質をコードする核酸を含む。別の例として、配列番号11またはその相補体に対し少なくとも80%配列同一性を有し、CLN3生物学的活性を有するタンパク質をコードする核酸が挙げられる。ヒトCLN3バリアントが、本技術分野で公知であることが注記される。非限定例として、GenBank受託番号NM_001042432.1(CLN3、転写物バリアント1);GenBank受託番号NM_001286104.1(CLN3、転写物バリアント3);GenBank受託番号NM_001286105.1(CLN3、転写物バリアント4);GenBank受託番号NM_001286109.1(CLN3、転写物バリアント5);GenBank受託番号NM_001286110.1(CLN3、転写物バリアント6)、または上に挙げた例のうちいずれか一例もしくはその相補体に対し少なくとも80%配列同一性を有し、CLN3の生物学的活性を有するタンパク質をコードする核酸が挙げられる。
【0103】
一部の実施形態では、CLN3導入遺伝子の発現は、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意選択でRSVエンハンサーと共に)によって駆動される。一部の実施形態では、CLN3導入遺伝子の発現は、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意選択でCMVエンハンサーと共に)によって駆動される。一部の実施形態では、CLN3導入遺伝子の発現は、SV40プロモーターによって駆動される。一部の実施形態では、CLN3導入遺伝子の発現は、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーターによって駆動される。一部の実施形態では、CLN3導入遺伝子の発現は、β−アクチンプロモーターによって駆動される。一部の実施形態では、CLN3導入遺伝子の発現は、PGKプロモーターによって駆動される。一部の実施形態では、CLN3導入遺伝子の発現は、EF1αプロモーターによって駆動される。一部の実施形態では、CLN3導入遺伝子の発現は、UBCプロモーターによって駆動される。一部の実施形態では、CLN3導入遺伝子の発現は、GUSBプロモーターによって駆動される。一部の実施形態では、CLN3導入遺伝子の発現は、NSEプロモーターによって駆動される。一部の実施形態では、CLN3導入遺伝子の発現は、シナプシンプロモーターによって駆動される。一部の実施形態では、CLN3導入遺伝子の発現は、MeCP2プロモーターによって駆動される。一部の実施形態では、CLN3導入遺伝子の発現は、GFAPプロモーターによって駆動される。一部の実施形態では、CLN3導入遺伝子の発現は、CBhプロモーターによって駆動される。好ましい実施形態では、CLN3導入遺伝子の発現は、CBAプロモーター(例えば、配列番号24)またはその均等物によって駆動される。より好ましい実施形態では、CLN3導入遺伝子の発現は、MeCP2プロモーター(例えば、配列番号2のヌクレオチド775〜1511、配列番号22または配列番号23)またはこれらそれぞれの均等物によって駆動される。一部の実施形態では、上述のプロモーターのうちいずれか1種は、CLN3導入遺伝子の発現の駆動から明確に除外され得る。
【0104】
組換えAAV(rAAV)の産生
一部の実施形態では、AAVゲノムは、天然由来の血清型または分離株もしくはクレードのAAVに由来する。一部の実施形態では、AAV血清型は、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8またはAAV9の群から選択される。一部の実施形態では、AAV血清型は、AAV9である。他の実施形態では、AAV血清型は、AAV2である。
【0105】
非限定例として、GenBank受託番号AF063497.1(AAV1、全ゲノム)のポリヌクレオチド;GenBank受託番号NC_001401.2(AAV2、全ゲノム)のポリヌクレオチド;GenBank受託番号NC_001829(AAV4、全ゲノム)のポリヌクレオチド;GenBank受託番号AX256321.1(AAV5、合成構築物)のポリヌクレオチド;GenBank受託番号AF028704.1(AAV6、全ゲノム)のポリヌクレオチド;配列番号35のポリペプチド、配列番号36のポリヌクレオチド、またはこれらの生物学的均等物を含むか、あるいはこれから本質的になるか、またはなお、さらにはこれからなることができる組換えAAVが挙げられる。別の例として、上に参照されるポリヌクレオチドに対し少なくとも80%配列同一性を有する核酸が挙げられる。
【0106】
適した組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)は、アデノ随伴ウイルス(AAV)血清型カプシドタンパク質またはその断片、機能的rep遺伝子;最低でもAAV末端逆位反復配列(ITR)およびCLN3ポリペプチド(または本明細書に記載されているそのバリアントもしくは均等物)をコードする核酸配列で構成されたミニ遺伝子、ならびにAAVカプシドタンパク質へのミニ遺伝子のパッケージングを可能にするのに十分なヘルパー機能をコードする核酸配列を含有する宿主細胞を培養することにより生成することができる。
【0107】
AAVカプシドにAAVベクターをパッケージするために宿主細胞において培養するべき構成成分は、宿主細胞にトランスで提供することができる。あるいは、要求される構成成分(例えば、組換えAAVベクター、rep配列、cap配列および/またはヘルパー機能)のうちいずれか1種または複数は、当業者に公知の方法を使用して、要求される構成成分のうち1種または複数を含有するように遺伝子操作された安定的宿主細胞によって提供することができる。最も適切には、斯かる安定的宿主細胞は、誘導性プロモーターの制御下において要求される構成成分(複数可)を含有し得る。しかし、ある特定の実施形態では、要求される構成成分(複数可)は、構成的プロモーターの制御下に置くことができる。
【0108】
さらに別の代替法では、選択された安定的宿主細胞は、構成的プロモーターの制御下における選択された構成成分(複数可)、および1種または複数の誘導性プロモーターの制御下における他の選択された構成成分(複数可)を含有することができる。例えば、293細胞(構成的プロモーターの制御下においてE1ヘルパー機能を含有)に由来するが、誘導性プロモーターの制御下においてrepおよび/またはcapタンパク質を含有する安定的宿主細胞を生成することができる。当業者によって、さらに他の安定的宿主細胞を生成することができる。
【0109】
rAAVの産生に必要とされる組換えAAVベクター、rep配列、cap配列およびヘルパー機能は、いずれか適切な遺伝的エレメント(ベクター)を使用して、パッケージング宿主細胞に送達することができる。選択された遺伝的エレメントは、本明細書に記載されている方法を含むいずれか適した方法によって送達することができる。斯かる方法は、当業者に公知である(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、N.Y.を参照)。同様に、rAAVビリオンを生成する方法も周知である(例えば、Fisherら(1993年)J. Virol.、70巻:520〜532頁;米国特許第5,478,745号;等を参照)。
【0110】
例示的であるが非限定的な一実施形態では、rAAVは、トリプルトランスフェクション方法を使用して産生することができる(例えば、米国特許第6,001,650号に詳細に記載)。典型的には、組換えAAVは、AAV粒子にパッケージしようとする組換えAAVベクター(導入遺伝子を含む)、AAVヘルパー機能ベクターおよびアクセサリー機能ベクターを宿主細胞にトランスフェクトすることにより産生される。AAVヘルパー機能ベクターは、増殖性AAV複製およびカプシド形成のためにトランスで機能する「AAVヘルパー機能」配列(すなわち、repおよびcap)をコードする。典型的には、AAVヘルパー機能ベクターは、いかなる検出可能な野生型AAVビリオン(すなわち、機能的repおよびcap遺伝子を含有するAAVビリオン)も生成することがない効率的なAAVベクター産生を支持する。ベクターの例示的だが非限定的な例として、pHLP19(米国特許第6,001,650号を参照)、pRep6cap6ベクター(例えば、米国特許第6,156,303号を参照)等が挙げられる。アクセサリー機能ベクターは、非AAV由来ウイルスおよび/または細胞機能のためのヌクレオチド配列をコードすることができ、これにより、AAVは複製に依存性となる(すなわち、「アクセサリー機能」)。アクセサリー機能は、AAV遺伝子転写、ステージ特異的AAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、cap発現産物の合成およびAAVカプシドアセンブリの活性化に関与する部分を限定することなく含む、AAV複製に必要とされる機能を含むことができる。ウイルスに基づくアクセサリー機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型以外の)およびワクシニアウイルス等、公知ヘルパーウイルスのいずれかに由来することができる。
【0111】
組換えAAV投与
rAAVは、典型的には、所望の組織の細胞をトランスフェクトし、過度の有害効果を伴うことなく十分なレベルの遺伝子移入および発現をもたらすのに十分な量で投与される。従来の薬学的に許容される投与経路として、選択された組織への直接的送達(例えば、脳内投与、くも膜下腔内投与)、静脈内、経口、エアロゾル投与、吸入による投与(鼻腔内および気管内送達を含む)、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、直腸および他の非経口的投与経路が挙げられるがこれらに限定されない。投与経路は、所望であれば組み合わせることができる。
【0112】
ある特定の実施形態では、対象へのある特定のrAAVの送達は、例えば、対象の血流への投与により行うことができる。血流への投与は、静脈、動脈または他のいずれかの導血管(vascular conduit)への注射により行うことができる。さらに、ある特定の事例において、脳組織、髄膜、神経細胞、グリア細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、脳脊髄液(CSF)、間質内間隙等へとrAAVを送達することが望ましいことがある。一部の実施形態では、組換えAAVは、脳室領域への注射により脊髄または脳へと、また、定位的注射による等の本技術分野で公知の神経外科的技法を使用して、針、カテーテルまたは関連するデバイスにより、線条体(例えば、線条体の尾状核または被殻)および神経筋接合部または小脳小葉へと直接的に送達することができる(例えば、Steinら(1999年)J Virol.73巻:3424〜3429頁;Davidsonら(2000年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA;Davidsonら(1993年)Nat. Genet.3巻:219〜223頁;AliskyおよびDavidson(2000年)Hum. Gene Ther.11巻:2315〜2329頁等を参照)。
【0113】
対象における中枢神経系(CNS)組織へと導入遺伝子を送達するための方法は、本明細書に提供されている。本方法は、典型的には、対象において導入遺伝子(例えば、CLN3)を発現させるための核酸ベクターを含む有効量のrAAVを対象に投与するステップが関与する。有効量は、若年型神経セロイドリポフスチン症(JNCLまたは若年型バッテン病)を処置もしくは緩和する、ならびに/またはこの疾患もしくは状態の進行、重症度および/もしくは範囲を低下、抑制、阻害、和らげる、緩和もしくは影響することができる量を指す。
【0114】
有効量は、例えば、対象の種、年齢、体重、健康および標的とされるCNS組織等、種々の因子に依存するため、対象および組織の間で変動し得る。有効量は、投与機序に依存する場合もある。例えば、血管内注射によるCNS組織の標的化は、場合によっては、くも膜下腔内または脳内注射によるCNS組織の標的化とは異なる(例えば、それよりも高い)用量を必要とすることがある。場合によっては、複数用量のrAAVが投与される一方、他の場合では、本明細書の実施例に例示される通り、単一用量で十分となることがある。有効量は、使用されるrAAVに依存する場合もある。例えば、CNS組織を標的化するための投薬量は、rAAVの血清型(例えば、カプシドタンパク質)に依存し得る。例えば、rAAVは、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、rh.39、rh.43およびCSp3からなる群から選択されるAAV血清型のカプシドタンパク質を有することができる。ある特定の実施形態では、rAAVの有効量は、1kg当たり10
10、10
11、10
12、10
13または10
14または10
15または10
16ゲノムコピーである。ある特定の実施形態では、rAAVの有効量は、対象当たり10
10、10
11、10
12、10
13または10
14または10
15または10
16ゲノムコピーである。複数用量が投与される場合、治療法のために同じまたは異なる血清型を組み合わせることができる。
【0115】
対象におけるCNS組織に導入遺伝子を送達するための方法は、単一の経路または複数の経路によりrAAVを投与するステップを含むことができる。例えば、対象におけるCNS組織への導入遺伝子の送達は、静脈内投与により、血液脳関門を通過する有効量のrAAVを対象に投与するステップを含むことができる。対象におけるCNS組織への導入遺伝子の送達は、くも膜下腔内投与または脳内投与、例えば、脳室内注射により、有効量のrAAVを対象に投与するステップを含むことができる。対象におけるCNS組織に導入遺伝子を送達するための方法は、2種の異なる投与経路、例えば、くも膜下腔内投与および脳内投与により、有効量のrAAVを同時投与するステップを含むことができる。同時投与は、およそ同じ時点でまたは異なる時点で行うことができる。
【0116】
ある特定の実施形態では、標的とされるCNS組織は、例えば、皮質、海馬、視床、視床下部、小脳、脳幹、頸髄、胸髄および腰髄から選択することができる。CNS組織を標的化するための投与経路は、典型的には、上述の通りAAV血清型に依存する。
【0117】
ある特定の実施形態では、対象において導入遺伝子(例えば、CLN3)を発現させるための核酸ベクターを含む有効量のAAVを対象に投与する前に、推定される対象の診断による確認(またはキャリアもしくは出生前検査)を先ず行って、CLN3遺伝子における変異を識別することが望ましいことがある。斯かる検査は、例えば、共通1kb欠失のPCR増幅およびサイズ分類解析により、またはCLN3遺伝子の15エクソンと隣接するイントロン領域を網羅する完全配列決定解析により行うことができる。配列決定は、CLN3遺伝子において全て報告されたいずれかのナンセンス、ミスセンス、スプライシング変異、小型の挿入および欠失変異を明らかにすることができる。
【0118】
ある特定の状況下で、皮下、膵内、鼻腔内、非経口的、静脈内、筋肉内、脳内、くも膜下腔内、脳内、経口、腹腔内または吸入のいずれかにより、本明細書に開示されている適切に製剤化された医薬組成物として、rAAVに基づく治療構築物を送達することが望ましいであろう。一部の実施形態では、米国特許第5,543,158号;同第5,641,515号および同第5,399,363号に記載されている投与モダリティを使用して、rAAVを送達することができる。
【0119】
一部の実施形態では、本明細書に記載されているベクター、組換えアデノ随伴ウイルス、医薬製剤等は、追加的な治療薬と共に投与することができる。追加的な治療薬の非限定例として、ミコフェノール酸モフェチル、カルベノキソロン(carbenoxolene)、グリチルレチン酸、グリチルリジン酸、シャペロン療法、酵素補充療法、幹細胞療法、抗痙攣薬物療法、抗酸化剤補給(例えば、ビタミンC、ビタミンE、メチオニン、B6)、オメガ−3脂肪酸が挙げられる(例えば、Hobertら(2006年)Biochimica et Biophysica Acta 1762巻(10号):945〜953頁を参照)。追加的な治療薬の投薬量、処置プロトコールおよび投与経路は、本技術分野で公知であるおよび/または処置の種類等に基づき決定する熟練した臨床医の技能範囲内である。
【0120】
一実施形態では、本明細書に記載されているベクター、組換えアデノ随伴ウイルス、医薬製剤等と、追加的な治療薬は、逐次に投与される。別の実施形態では、本明細書に記載されているベクター、組換えアデノ随伴ウイルス、医薬製剤等と、追加的な治療薬は、同時に投与される。一実施形態では、本明細書に記載されているベクター、組換えアデノ随伴ウイルス、医薬製剤等は、追加的な治療薬の投与期間の後に投与される。さらなる態様では、rAAV治療法は、他の相補的(complimentary)治療法と同時投与されて、疾患の症状を軽減または処置する。
【0121】
組換えAAV組成物
ある特定の実施形態では、rAAVは、本技術分野で公知のいずれか適切な方法に従って、組成物中において対象へと送達することができる。例えば、生理学的に適合性の担体(例えば、組成物における)に懸濁されたrAAVは、対象、例えば、ヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、モルモット、ハムスター、ニワトリ、シチメンチョウまたは非ヒト霊長類(例えば、マカク)に投与することができる。組成物は、rAAVを単独で、または1種もしくは複数の他のウイルス(例えば、1種または複数の異なる導入遺伝子をコードするか、またはこれを有する第2のrAAV)と組み合わせて含むことができる。一部の実施形態では、組成物は、1種または複数の異なる導入遺伝子をそれぞれ有する、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種またはそれ超の異なるrAAVを含む。
【0122】
適した担体は、当業者であれば、rAAVが対象とする適応症を考慮して容易に選択することができる。例えば、適した担体の1つとしては、種々の緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水)と共に製剤化することができる生理食塩水が挙げられる。他の例示的な担体として、滅菌生理食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油および水が挙げられるがこれらに限定されない。
【0123】
任意選択で、本発明の組成物は、rAAVおよび担体(複数可)に加えて、保存剤または化学的安定剤等の他の従来の医薬品成分を含有することができる。適した例示的な保存剤として、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノールおよびパラクロロフェノールが挙げられるがこれらに限定されない。適した化学的安定剤は、ゼラチンおよびアルブミンを含む。
【0124】
一部の実施形態では、rAAV組成物は、特に、高rAAV濃度が存在する場合(例えば、約10
13vg/mlまたはそれ超)、組成物におけるAAV粒子の凝集を低下させるように製剤化される。rAAVの凝集を低下させるための方法は、本技術分野で周知であり、例えば、界面活性物質の添加、pH調整、塩濃度調整等を含む(例えば、Wrightら(2005年)Mol. Ther.12巻:171〜178頁等を参照)。
【0125】
種々の処置レジメンにおいて本明細書に記載されている特定の組成物を使用するために適した投薬および処置レジメンの開発と同様に、薬学的に許容される賦形剤および担体溶液の製剤は、当業者に周知である。典型的には、このような製剤は、少なくとも約0.1%の活性成分またはそれ超を含有することができるが、活性成分(複数可)のパーセンテージは、当然ながら変更することができ、便宜上、例えば、総製剤の重量または容量の約1または2%〜約70%または80%またはそれ超の間とすることができる。当然だが、治療上有用な組成物のそれぞれにおける活性成分の量は、化合物のいずれか所定の単位用量において適した投薬量が得られるような仕方で調製することができる。溶解性、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品有効期間および他の薬理学的考察等の因子が、斯かる医薬製剤を調製する当業者によって考慮され、したがって、種々の投薬量および処置レジメンが望ましいことがある。
【0126】
注射使用に適した医薬品形態は、典型的には、滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌水溶液または分散液および滅菌粉末を含む。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびこれらの混合物ならびに油において調製することもできる。貯蔵および使用の通常条件下で、このような調製物は、微生物が殖えるのを防止するための保存剤を含有する。多くの場合、形態は、滅菌されており、容易な注射器使用能(syringability)が存在する程度まで流動的である。製剤は、典型的には、製造および貯蔵の条件下で安定的であり、細菌および真菌等の微生物の汚染作用から保存される。ある特定の実施形態では、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)、これらの適した混合物および/または植物油を含有する溶媒または分散媒とすることができる。ある特定の実施形態では、適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用により、分散液の場合は要求される粒子径の維持により、また、界面活性物質の使用により維持することができる。様々な実施形態では、微生物の作用の防止は、様々な抗細菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが望ましいであろう。注射用組成物の延長された吸収は、組成物における、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらすことができる。
【0127】
ある特定の実施形態では、注射用水溶液の投与のために、例えば、溶液は、必要であれば、適切に緩衝することができ、十分な生理食塩水またはグルコースにより液体希釈剤を先ず等張性にすることができる。このような特定の水溶液が、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、用いることができる滅菌水性培地は、当業者には公知であろう。例えば、1投薬量を1mlの等張性NaCl溶液に溶解し、1000mlの皮下点滴療法液に添加する、または提案される注入部位に注射することができる(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」第15版、1035〜1038および1570〜1580頁を参照)。宿主の状態に応じて、投薬量にある程度の変動が生じ得る。一部の実施形態では、投与責任者は、いずれにせよ、個々の宿主に適切な用量を決定するであろう。
【0128】
ある特定の実施形態では、滅菌注射用溶液は、必要に応じて本明細書に列挙されている様々な他の成分を有する適切な溶媒において要求される量の活性rAAVを取り込み、続いて濾過滅菌することにより調製することができる。一般に、分散液は、基礎分散媒および上に列挙されたもののうち要求される他の成分を含有する滅菌媒体に様々な滅菌された活性成分を取り込むことにより調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、例示的な調製方法として、以前に滅菌濾過されたその溶液から活性成分プラスいずれか追加的な所望の成分の粉末を生じる真空乾燥およびフリーズドライ技法が挙げられるがこれらに限定されない。
【0129】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示されているrAAV組成物は、中性または塩形態で製剤化することもできる。薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸もしくはリン酸等の無機酸または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等の有機酸により形成される酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基により形成)を含む。遊離カルボキシル基により形成される塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化第二鉄等の無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等の有機塩基に由来してもよい。製剤化により、溶液は、投薬製剤と適合性の様式で、治療上有効となるような量で投与されるであろう。製剤は、注射用溶液、薬物放出カプセル等、種々の剤形で容易に投与される。
【0130】
本明細書において使用される場合、「担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、媒体、コーティング、希釈剤、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、バッファー、担体溶液、懸濁液、コロイド等を含む。医薬品活性物質のための斯かる培地および薬剤の使用は、本技術分野で周知である。補足的活性成分を組成物に取り込むこともできる。語句「薬学的に許容される」は、宿主に投与される際にアレルギー性または同様の有害反応を生じない分子実体および組成物を指す。
【0131】
リポソーム、ナノカプセル、マイクロ粒子、マイクロスフェア、脂質粒子、小胞等、送達媒体を、適した宿主細胞への本発明の組成物の導入のために使用することができる。特に、rAAVベクターにより送達される導入遺伝子は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェアまたはナノ粒子等のいずれかの中に被包して、送達のために製剤化することができる。
【0132】
ある特定の実施形態では、斯かる製剤は、本明細書に開示されている核酸またはrAAV構築物の薬学的に許容される製剤とすることができる。リポソームの形成および使用は一般に、当業者に公知である(例えば、米国特許第5,741,516号;同第5,567,434号;同第5,552,157号;同第5,565,213号;同第5,738,868号;同第5,795,587号等を参照)。
【0133】
リポソームの使用は、他の手順によるトランスフェクションに対して通常であれば抵抗性であるいくつかの細胞型を用いて成功してきた。加えて、リポソームは、ウイルスに基づく送達系には典型的なDNAの長さの制約がない。リポソームは、種々の培養細胞株および動物への遺伝子、薬物、放射線療法剤、ウイルス、転写因子およびアロステリックエフェクターの導入に有効に使用されてきた。加えて、リポソーム媒介性薬物送達の有効性を試験するいくつかの成功した臨床治験が完了した。
【0134】
リポソームは、水性培地中に分散したリン脂質から形成され、多層状同心円状二重層小胞(多層状小胞(MLV)とも呼ばれる)を自発的に形成する。MLVは一般に、25nm〜4μmの直径を有する。MLVの超音波処理は、200〜500オングストロームの範囲内の直径を有し、コアに水溶液を含有する小型の単層小胞(SUV)の形成をもたらす。
【0135】
あるいは、rAAVのナノカプセル製剤を使用することができる。ナノカプセルは一般に、安定的かつ再現性のある仕方で物質を捕捉することができる。細胞内ポリマー過負荷による副作用を回避するために、斯かる超微細粒子(0.1μm前後のサイズ)は、in vivoで分解され得るポリマーを使用して設計することができる。ある特定の実施形態では、このような要件を満たす生分解性ポリアルキル−シアノアクリレートナノ粒子が使用に企図される。
【0136】
上述の送達方法に加えて、宿主にrAAV組成物を送達する代替法として次の技法も企図される。ソノフォレーシス(すなわち、超音波)が、循環器系へのおよびそれを介した薬物浸透の速度および有効性を増強するためのデバイスとして使用され、米国特許第5,656,016号に記載された。企図される他の薬物送達代替法は、骨内注射(米国特許第5,779,708号)、マイクロチップデバイス(米国特許第5,797,898号)、点眼用製剤、経皮マトリックス(米国特許第5,770,219号および同第5,783,208号)およびフィードバック制御送達(米国特許第5,697,899号)である。
【0137】
キットおよび関連する組成物
本明細書に記載されている薬剤は、一部の実施形態では、医薬品または診断もしくは研究用キットへと集合させて、治療、診断または研究適用におけるその使用を容易にすることができる。キットは、本発明の構成成分を収容する1個または複数の容器と、使用説明書とを含むことができる。特に、斯かるキットは、本明細書に記載されている1種または複数の薬剤を、このような薬剤の意図される適用および適切な使用について記載する説明書と共に含むことができる。ある特定の実施形態では、キットにおける薬剤は、薬剤の特定の適用および投与方法に適した医薬製剤および投薬量中に存在することができる。研究目的のキットは、様々な実験を行うのに適切な濃度または含量の構成成分を含有することができる。
【0138】
キットは、本明細書に記載されている方法の使用を容易にするように設計することができ、多くの形態をとることができる。キットの組成物のそれぞれは、適用可能であれば、液体形態(例えば、溶液)または固体形態(例えば、乾燥粉末)で提供することができる。ある特定の事例において、組成物のいくつかは、例えば、キットに備わっていても備わっていなくてもよい適した溶媒または他の化学種(例えば、水または細胞培養培地)の添加により、構成可能(constitutable)または他の仕方で加工可能(例えば、活性形態に)であってもよい。
【0139】
本明細書において使用される場合、「説明書」は、説明および/または促進の構成成分を定義することができ、典型的には、本発明のパッケージング上のまたはそれに添えた書面の説明書が関与する。説明書は、キットに説明書が添えられていることを使用者が明らかに認識できるような、いずれかの様式で提供されたいずれかの口頭または電子の説明書、例えば、視聴覚(例えば、ビデオテープ、DVD等)、インターネットおよび/またはウェブに基づくコミュニケーション等を含むこともできる。書面の説明書は、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する行政機関によって規定された形態とすることができ、この説明書は、動物投与のための製造、使用または販売の機関による承認が反映されたものであってもよい。
【0140】
キットは、1個または複数の容器中に、本明細書に記載されている構成成分のうちいずれか1種または複数を含有することができる。一例として、一実施形態では、キットは、キットの1種もしくは複数の構成成分を混合するため、および/または試料を単離し混合し、対象に適用するための説明書を含むことができる。キットは、本明細書に記載されている薬剤を収容する容器を含むことができる。薬剤は、液体、ゲルまたは固体(粉末)の形態とすることができる。薬剤は、滅菌的に調製し、注射器内にパッケージし、冷蔵して輸送することができる。あるいは、薬剤は、貯蔵のためのバイアルまたは他の容器内に収容することができる。第2の容器は、滅菌的に調製された他の薬剤を有することができる。あるいは、キットは、予め混合された活性薬剤を含み、注射器、バイアル、チューブまたは他の容器内において輸送することができる。キットは、注射器、局所的適用デバイスまたはIV針チューブおよびバッグ等、対象への薬剤の投与に要求される構成成分のうち1種もしくは複数または全種を有することができる。
【0141】
本明細書に記載されている治療法は、適切な診断技法と組み合わせて、この治療法のための患者を識別および選択することができる。例えば、患者から試料を単離し、若年型バッテン病の発症に相関した変異(ホモ接合型またはヘテロ接合型)に関してこの試料を検査する。よって、症状出現に先立ちまたは疾患の前進前に、変異を持つ患者を識別することができる。
【実施例】
【0142】
以下の実施例は、請求されている発明を限定するのではなく例示するために提供されている。
【0143】
(実施例1)
若年型バッテン病の処置のための遺伝子療法
本実施例は、若年型バッテン病の処置のための遺伝子療法の初期試験について記載する。遺伝子療法は、一部には、隣接する形質導入されていない細胞の相互是正に起因して、可溶性酵素における変異が関与するバッテン病の形態の是正においては見込みを示したが(Passiniら(2006年)J. Neurosci.26巻(5号):1334〜1342頁;Sondhiら(2012年)Hum. Gene Ther. Meth.23巻(5号):324〜335頁;Macauleyら(2014年)J. Neurosci.34巻(39号):13077〜13082頁)、CLN3は、膜貫通タンパク質であり(Cotmanら(2012年)Clin. Lipidol.7巻(1号):79〜91頁)、表現型効果を生じるにはより多くの細胞に形質導入する必要があることを意味するため、斯かるアプローチは、JNCLの処置には難しいと考えられた。しかし、本明細書に提供されているデータは、JNCLのマウスモデルにおける運動行為を改善するのに十分な細胞にCLN3を送達することが可能であることを実証する。
【0144】
自閉症スペクトラム症であるレット症候群(Gargら(2013年)J. Neurosci.33巻(34号):13612〜13620頁)の遺伝子投与量依存性モデルにおいて以前に有効であったメチル−CpG結合タンパク質2(MeCP2)のプロモーターにより、低いCLN3発現レベルが駆動され、別個の構築物が、β−アクチンプロモーターにより高レベルのCLN3を駆動した。このアプローチの理論的根拠は、出生後CLN3発現は限定されているため(Eliasonら(2007年)J. Neurosci.27巻(37号):9826〜9834頁)、低CLN3レベルが、正常な細胞機能に要求されるという予測に基づいた。本試験は、in vivoでのCLN3遺伝子投与量効果の最初の実証となり、驚くべきことに、高レベルのCLN3過剰発現が、治療利益を遮蔽することが観察された。
【0145】
後述する通り、原理証明試験のため、1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウスに、自己相補的(sc)AAV9/β−アクチン−hCLN3(高発現)またはscAAV9/MeCP2−hCLN3(低発現)の1用量の2×10
12ウイルスゲノム(vg)を静脈内に与え、緑色蛍光タンパク質(GFP)発現を駆動するウイルス(scAAV9/β−アクチン−GFPおよびscAAV9/MeCP2−GFP)を対照とした(
図1を参照)。重要なことに、海馬(HPC)、線条体(STR)、視床(TH)、視覚皮質(VC)および小脳(CB)を含む、JNCLにおいてニューロンが死ぬように運命付けられたいくつかの脳領域において、hCLN3発現のプロモーター遺伝子投与量効果が確認され、hCLN3レベルは、scAAV9/MeCP2−hCLN3と比べ、scAAV9/β−アクチン−hCLN3を与えたCLN3
Δex7/8マウスにおいて3〜8倍上昇していた。
【0146】
しかし、低いhCLN3発現を駆動するscAAV9構築物(scAAV9/MeCP2−hCLN3)のみが、CLN3
Δex7/8マウスにおける運動欠損を是正することができたため(加速ロータロッドおよびポール降下)、hCLN3レベルと神経保護の間には断絶があり、脳における高いCLN3発現が、運動協調性の改善には有利ではないという驚くべき結果を実証する(
図2A〜
図2Eを参照)。リソソーム蓄積物質についても同様の利益が観察され、この物質は、scAAV9/MeCP2−hCLN3を与えた動物の体性感覚野バレル皮質(S1BF)(
図7Aを参照)、VC(
図7Cを参照)およびTH(
図7Dを参照)において有意に低下した。
【0147】
CLN3
Δex7/8マウスの運動行為におけるscAAV9/MeCP2−hCLN3の有益な効果は、scAAV9/GFP対照構築物では観察されず、これから、hCLN3の作用の特異性が確認される(
図2A〜
図2Eを参照)。S1BF、VC、STR、TH、HPCおよびCBにおけるGFP発現により明らかな通り(
図4を参照)、脳におけるウイルス形質導入の程度は広汎であった。scAAV9/MeCP2−hCLN3は、1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウスにおけるNeuN
+ニューロンおよびGFAP
+アストロサイトに形質導入した一方、マイクログリアにおいては限定的な発現が検出された(
図6A〜
図6Cを参照)。野生型CLN3発現は、ニューロンおよびグリアのサブセットにおいてのみ回復されたが、これは、CLN3
Δex7/8動物における疾患関連の病理の是正に十分であった(運動機能改善およびリソソーム蓄積物質減少として測定される)。理論に制約されることは望まないが、これは、行動回路における細胞の重複性もしくは不十分なニューロン/グリアCLN3によって衰弱した回路に取って代わる他の機構による代償を反映し得る、および/または形質導入された細胞の数の過小評価を反映し得ることが想定される。
【0148】
これらの観察に基づき、scAAV9/MeCP2−hCLN3遺伝子療法が、JNCL転帰を有意に改善するのに十分な数のCNS細胞を標的とするであろうと考えられる。
【0149】
方法および結果
自己相補的AAV9(scAAV9)は、非分裂細胞において安定的エピソームとして存続し、多くの研究は、数年間の安定的導入遺伝子発現を報告している。scAAV9ベクターは、伝統的な一本鎖(ss)AAVベクターよりも10〜100倍効率的である(McCartyら(2003年)Gene Ther.10巻(26号):2112〜2118頁;McCartyら(2001年)Gene Ther.8巻(16号):1248〜1254頁)が、外来性DNA<2.2kbしかパッケージできない。hCLN3 cDNAは僅か1.3kbであるため、このことは、本明細書に記載されているアプローチにとっての制約とならない。scAAV9構築物は、hCLN3を持つように遺伝子操作して、その翻訳潜在力を促進した(例えば、
図1を参照)。ある特定の構築物において、メチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)プロモーターが、hCLN3発現の駆動用に選択された。
【0150】
JNCLの遺伝子療法アプローチの実現可能性は、1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウスへのscAAV9/MeCP2−hCLN3(単一用量)の全身性i.v.送達が、運動行為を有意に改善したが、これは、GFPを持つ対照ウイルスでは観察されなかったことを示すデータによって支持される(
図2A)。運動行為改善は、形質導入2ヶ月後(
図2B)、形質導入3ヶ月後(
図2C)、形質導入4ヶ月後(
図2D)および形質導入5ヶ月後(
図2E)に観察され続けた。1ヶ月および3ヶ月目の血液化学プロファイルの解析は、いずれの処置群における異常も明らかにしなかった(データ図示せず)。
【0151】
scAAV9構築物は、それぞれβ−アクチンおよびMeCP2プロモーターを使用して、形質導入細胞における高対低のhCLN3発現を達成するように遺伝子操作した。1ヶ月齢CLN3
Δex7/8マウスを後眼窩洞経由でウイルスにより形質導入した。形質導入5ヶ月および13ヶ月後にマウスを屠殺し、その際マウスはそれぞれ6ヶ月および14ヶ月齢であった。ビブラトーム切片(300μm厚)から脳領域を解剖した。両方のhCLN3に対してプロモーター遺伝子投与量効果が確認され、発現は、低発現scAAV9/MeCP2−hCLN3(
図3)およびGFPタンパク質(
図4)と比較して、scAAV9/β−アクチン−hCLN3で処置したCLN3
Δex7/8マウスの小脳(CB)、視床(TH)、海馬(HPC)、線条体(STR)、視覚皮質(VC)、体性感覚野バレル皮質(S1BF)および眼においておよそ3〜8倍上昇していた。
【0152】
加えて、形質導入5ヶ月後のマウスから収集された脳横断面から共焦点画像を取得して、分布および発現レベルをさらに可視化および確認した。同じ共焦点設定を使用して画像を取得して、発現の差を強調した。結果は、scAAV9/β−アクチン−hCLN3およびscAAV9/MeCP2−hCLN3で処置したCLN3
Δex7/8マウスの両方における広い体内分布を示し、GFP強度は、scAAV9/β−アクチン−hCLN3処置したマウスにおいてより大きかった。
図5A。結果は、形質導入13ヶ月後のマウスの網膜領域におけるscAAV9/β−アクチン−hCLN3およびscAAV9/MeCP2−hCLN3の両方の分布も示した。
図5B。
【0153】
scAAV9/β−アクチン−hCLN3およびscAAV9/MeCP2−hCLN3の投与5ヶ月後のCLN3
Δex7/8マウスの脳におけるscAAV9/β−アクチン−GFPまたはscAAV9/MeCP2−GFPの比較体内分布は、GFP
+細胞および総細胞数(DAPI
+)を計数することにより決定した。
図6A。
図6Bにおいて要約される通り、scAAV9/MeCP2−hCLN3処置したマウスは、脳のS1BF、VPM/VPLおよびVC領域におけるGFP
+細胞のパーセンテージの有意な増加を呈した。
【0154】
プロモーター遺伝子投与量効果に関する驚くべき知見は、両方のプロモーター構築物によって形質導入されたNeuN
+およびGFAP
+細胞のパーセンテージにおける類似性によってさらに実証された(データ図示せず)。重要なことに、データは、低発現構築物(scAAV9/MeCP2−hCLN3)の単一の注射を与えたCLN3
Δex7/8マウスが、形質導入5ヶ月間後まで(現在までに試験した最新間隔)運動協調性における一貫した改善を呈した一方、高発現構築物(scAAV9/β−アクチン−hCLN3)が、有効ではなかったことを示す(
図2A〜
図2E)。
【0155】
加えて、scAAV9/MeCP2−hCLN3を与えたCLN3
Δex7/8マウスの脳において、リソソーム蓄積物質の有意な低下が観察された(
図7A〜
図7G)。レット症候群および脊髄性筋萎縮症(SMA)のモデルにおけるscAAV9を使用した他の報告と合致して(Gargら(2013年)J. Neurosci.33巻(34号):13612〜13620頁;Foustら(2010年)Nat. Biotechnol.28巻(3号):271〜274頁)、scAAV9の体内分布は広汎であり、NeuN
+ニューロンおよびGFAP
+アストロサイトが、S1BF、VC、HPC、STR、TH、CBおよび視交叉上核(SCN;
図8Aおよびデータ図示せず)において形質導入された。
図8Bに示す通り、scAAV9の全身性投与は、CLN3
Δex7/8脳におけるアストロサイトに形質導入する。
図8Cは、scAAV9の全身性投与が、CLN3
Δex7/8脳におけるマイクログリアに形質導入しないことを示す。
【0156】
ごく一部のCNS細胞が、ウイルスによって形質導入されたと思われるが、CLN3
Δex7/8動物における行動改善は、ニューロンにおけるhCLN3の有益な内因性効果およびおそらくhCLN3形質導入グリアからの非細胞自律的寄与を示唆する。後者は、グルタミン酸塩レベルおよび三者間シナプスでのニューロン活性の調節におけるアストロサイトの十分に認められた役割に基づきニューロン生存を促進することが予想されるであろう(Pereaら(2009年)Trends Neurosci.32巻(8号):421〜431頁)。
【0157】
JNCLに対する別の共通症状は、体重減少である。CLN3
Δex7/8マウスの体重増加におけるscAAV9/MeCP2−hCLN3の有益な効果は、scAAV9/β−アクチン−hCLN3またはscAAV9/GFP対照構築物では観察されず、これから、hCLN3の作用の特異性が確認される(
図11)。
【0158】
本明細書に記載されているアプローチは、全身性送達経路を用いてウイルス体内分布を増強し、予備的データは高CLN3レベルが無効であることを示すことから、特有のプロモーター(MeCP2)を用いて低いCLN3発現を駆動することができるという点において、従来の治療法よりも有利であることが注記される。要約すると、scAAV9/MeCP2−hCLN3のいくつかの性状が、JNCL転帰改善の成功の見込みを支える、すなわち;1)このアプローチは、疾患の根本的原因において遺伝的欠損を是正し得る;2)ウイルスは、若年および成体動物におけるCNS細胞に効率的に形質導入することができ、JNCLは5〜10歳まで診断されないため、これが重大な意味を持つ;3)MeCP2プロモーターは、低レベルhCLN3発現を駆動し、これは、本明細書に提示するデータが示す通り、CLN3
Δex7/8マウスにおける運動機能の改善に必須である;ならびに4)hCLN3を持つウイルスの構築は、その臨床治験への移行を加速し得る。
【0159】
(実施例2)
安全性、毒性および炎症評価
異なる実験マウスコホートにおいて血清化学パネル(Abaxis、Union City、CA、USA)を実施して、AAV処置の安全性および毒性を評価した。測定したメディエータは、アルブミン(ALB)、アルカリホスファターゼ(ALP)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アミラーゼ(AMY)、ビリルビン(TBIL)、血中尿素窒素(BUN)、カルシウム(CA)、リン(PHOS)、グルコース(GLU)、ナトリウム(Na
+)、カリウム(K
+)、総タンパク質(TP)、グロブリン(GLOB)およびクレアチニン(CRE)を含んだ。1ヶ月齢マウスにウイルスを投与し、感染後1ヶ月目(
図12)、3ヶ月目(データ図示せず)、5ヶ月目(データ図示せず)、7ヶ月目(データ図示せず)および10ヶ月目(
図13)に検査を行った。データは、ある特定の分析物レベルの差、例えば、他の実験コホートと比較したAAV9/β−アクチン−hCLN3を与えたマウスにおけるアラニンアミノトランスフェラーゼレベルの増加を明らかにしたが、これらは、分析物毎の正常範囲に関して統計的に有意ではなかった。
【0160】
MILLIPLEX(登録商標)パネル(EMD Millipore、Billerica、MA、USA)を使用して、血清炎症メディエータ解析も行った。測定したメディエータは、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロンガンマ(IFN−γ)、インターロイキン−1アルファ(IL−1α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−9(IL−9)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−12p70(IL−12p70)、インターロイキン−13(IL−13)、インターロイキン−15(IL−15)、インターロイキン−17(IL−17)、ケモカイン(C−C)リガンド2(CCL2)、ケモカイン(C−C)リガンド3(CCL3)、ケモカイン(C−C)リガンド5(CCL5/RANTES)、ケモカイン(C−X−C)リガンド2(CXCL2)、ケモカイン(C−X−C)リガンド9(CXCL9/MIG)、ケモカイン(C−X−C)リガンド10(CXCL10)、腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)および血管内皮増殖因子(VEGF)を含んだ。1ヶ月齢マウスにウイルスを投与した。形質導入2および4ヶ月後に試料を収集して、AAV9が、全身性炎症の証拠を誘発したか評価した。検出されたメディエータのみを
図14A〜
図14Fに示す。先の試験と一貫して、媒体処置したCLN3
Δex7/8マウスにおける全身性炎症の証拠は殆どなかったが、その理由として、このようなマウスは典型的には、およそ1歳まで顕性の全身性またはCNS炎症を呈さないことが挙げられる。加えて、AAV9ウイルスは、全身性炎症性変化の証拠を示さなかった。まとめると、これらのデータは、JNCLの処置のためのAAV9の安全性を示唆する。
【0161】
(実施例3)
AAV製造
293細胞において、アデノウイルスヘルパープラスミドpHelper(Stratagene)と共にRep2Cap9配列をコードするプラスミドを備える二本鎖AAV2−ITRに基づくCB−GFPベクターを使用した一過性トランスフェクション手順により、AAV9を産生した。血清型9配列を配列決定により検証したところ、以前に記載されたものと同一であった(Gaoら(2002年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、99巻:11854〜11859頁)。ウイルスを2回の塩化セシウム密度勾配精製ステップにより精製し、PBSに対して透析し、0.001%Pluronic−F68と共に製剤化してウイルス凝集を防止し、4℃で貯蔵した。Taq−Man技術を使用した定量的PCRにより、全ベクター調製物を力価決定した。
【0162】
AAV構築物は、遺伝子発現カセットを挟んで2個の末端逆位反復配列を含有する。左末端逆位反復配列に対する修飾は、Repニッキングの部位を除去し、これにより、自己相補的AAVゲノムを作製した。発現カセットは、導入遺伝子発現を駆動するために、以前に記載された(Gargら(2013年)J. Neurosci.33巻:13612〜13620頁;Adachiら(2005年)Hum Mol Genet.14巻:3709〜3722頁)マウスMeCP2プロモーターの断片を含有する。発現カセットは、SV40イントロンおよびヒトCLN3バリアント2 cDNA(GenBank受託番号NM_000086.2;配列番号11)と、続くウシ成長ホルモンポリアデニル化配列を含有する。
【0163】
本明細書に記載されている実施例および実施形態が、単に例示を目的としており、それに照らした様々な修正または変更が当業者に示唆され、本願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることが理解される。本明細書に引用されているあらゆる刊行物、特許および特許出願は、その中の配列表を含めて、あらゆる目的のため、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0164】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】