(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
繰り返し単位(A)が、側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖末端が水素原子または炭素数1〜4のアルキル基で構成される繰り返し単位(A−1)、側鎖末端にアンモニオアルキルホスフェート基を有する繰り返し単位(A−2)、側鎖にアミド基を有する繰り返し単位(A−3)、側鎖末端に窒素および酸素を含むヘテロ環を有する繰り返し単位(A−4)、側鎖にラクタムを有する繰り返し単位(A−5)、側鎖末端にベタイン性基を有する繰り返し単位(A−6)、アニオン性繰り返し単位(A−7)、ならびに、カチオン性繰り返し単位(A−8)から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のマイクロ流路を有するシリコーン基材処理用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0066】
≪重合体組成物≫
本発明に係る重合体組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、下記繰り返し単位(A)と下記繰り返し単位(B)とを有する重合体を含む、メディカルデバイス用組成物、細胞接着防止剤およびシリコーン基材処理用組成物からなる群より選ばれる1種の組成物である。
なお、本発明では、前記重合体のみからなる場合も組成物という。
【0067】
本発明(I)は、メディカルデバイス用組成物に関し、該組成物は、メディカルデバイスに潤滑性を付与し、かつ、優れた耐久性を付与する。
このような効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、繰り返し単位(B)、さらには、繰り返し単位(B)および繰り返し単位(C)によって、重合体が、メディカルデバイスの壁面に吸着し、その一方で、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)によって、前記壁面が親水化され、厚い親水性の層が形成されることで、潤滑性を発現することができるものと推察される。
更に、本発明(I)によれば、潤滑性のみならずタンパク質、脂質、核酸等生体物質の吸着の抑制もできる。
【0068】
メディカルデバイス用組成物は、特定の重合体によって前述のような効果を奏すると考えられる。従って、前記重合体は、メディカルデバイス用組成物としてそのまま用いることができ、また、メディカルデバイス用組成物を製造するための素材として使用することができる。
【0069】
本発明(II)は、細胞接着防止剤に関し、このような細胞接着防止剤は、細胞毒性が低く、かつ、優れた細胞接着防止効果を示す。
また、前記重合体は、細胞培養器材表面に存在していても、細胞毒性が低く、また、器材表面に設けられた前記重合体は、容易に該器材から剥離するものではないが、たとえ剥離したとしても、細胞毒性が低い。このため、前記細胞接着防止剤は、細胞培養に用いる器材に好適に用いることができる。
【0070】
このような効果を発揮できる理由は必ずしも明らかではないが、繰り返し単位(B)、さらには、繰り返し単位(B)および繰り返し単位(C)によって、重合体が、器具や装置等の壁面に吸着し、その一方で、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とによって、前記壁面が親水化され、更にタンパク質、脂質等の吸着が防止され、細胞の接着を抑制することができるものと推察される。
従って、前記重合体は、細胞接着防止剤としてそのまま用いることができ、また、細胞接着防止剤を製造するための素材として使用することができる。更に、斯かる細胞接着防止剤によれば、細胞接着のみならずタンパク質、脂質、核酸等生体物質の吸着も抑制できる。
【0071】
なお、本発明(II)において、細胞接着防止とは、足場依存性細胞のような接着細胞と、斯かる細胞が接触する種々の(器材)表面等との接着を防止することをいう。
【0072】
前記細胞としては、足場依存性細胞、浮遊細胞(例えば、白血球、赤血球、血小板等の血液細胞)が挙げられる。足場依存性細胞としては、HeLa細胞、F9細胞等のガン細胞;3T3細胞等の線維芽細胞;ES細胞、iPS細胞、間葉系幹細胞等の幹細胞;HEK293細胞等の腎細胞;NT2細胞等の神経細胞;UV♀2細胞、HMEC−1細胞等の内皮細胞;H9c2細胞等の心筋細胞;Caco−2細胞等の上皮細胞等が挙げられる。
【0073】
本発明(III)は、シリコーン基材処理用組成物に関する。
【0074】
<重合体>
前記重合体は、下記繰り返し単位(A)と、下記繰り返し単位(B)とを有する。
(A)親水性繰り返し単位
(B)側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖末端が炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基または炭素数6〜30のアリール基で構成される繰り返し単位
【0075】
〔繰り返し単位(A)〕
繰り返し単位(A)は、親水性繰り返し単位であり、前記繰り返し単位(B)以外の繰り返し単位であれば特に制限されないが、側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖末端が水素原子または炭素数1〜4のアルキル基で構成される繰り返し単位(A−1)、側鎖末端にアンモニオアルキルホスフェート基を有する繰り返し単位(A−2)、側鎖にアミド基を有する繰り返し単位(A−3)、側鎖末端に窒素および酸素を含むヘテロ環を有する繰り返し単位(A−4)、側鎖にラクタムを有する繰り返し単位(A−5)、側鎖末端にベタイン性基を有する繰り返し単位(A−6)、アニオン性繰り返し単位(A−7)、ならびに、カチオン性繰り返し単位(A−8)から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0076】
前記重合体が、このような繰り返し単位(A)を含有することで、
潤滑性に優れるメディカルデバイスを容易に得ることができ、
親水性表面を有する器具や装置を容易に得ることができるため、細胞の接着防止性に優れる器具や装置を容易に得ることができ、
表面親水性および試料成分、特に生体試料付着防止性に優れるシリコーン基材を容易に得ることができる。
【0077】
なお、本明細書において、親水性繰り返し単位とは、水との親和力が強い性質を有する繰り返し単位のことを意味する。具体的には、重合体を構成するある繰り返し単位と同じ繰り返し単位1種のみからなるホモポリマー(実施例の測定法による数平均分子量が1万程度のもの)の、常温(25℃)における純水100gに対する溶解度が1g以上である場合、その繰り返し単位は親水性であるという。
【0078】
(繰り返し単位(A−1))
繰り返し単位(A−1)は、側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖末端が水素原子または炭素数1〜4のアルキル基で構成されるものである。
繰り返し単位(A−1)としては、下記式(1')で表される構造を側鎖末端に有する繰り返し単位が好ましい。式(1')で表される構造を側鎖末端に有する繰り返し単位としては公知の繰り返し単位が挙げられ、中でも、(メタ)アクリレート系の繰り返し単位、(メタ)アクリルアミド系の繰り返し単位、スチレン系の繰り返し単位等が好ましい。これらの中でも、下記式(1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0079】
【化11】
〔式(1')中、R
1は、炭素数2〜4のアルキレン基を示し、R
2は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは、平均値で2〜100を示す。〕
【0080】
【化12】
〔式(1)中、R
1、R
2およびnは、式(1')と同義であり、R
3は、水素原子またはメチル基を示し、R
4は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR
5−、*−NR
5−(C=O)−(R
5は、水素原子または炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(1)中のR
3が結合している炭素原子と結合する位置を示す)またはフェニレン基を示す。〕
【0081】
n個のR
1は同一でも異なっていてもよく、繰り返し単位中に含まれる複数のR
1は同一でも異なっていてもよい。以下、各構造単位中の他の符号も同様に、繰り返し単位中に含まれる複数の同一符号の基は同一でも異なっていてもよい。つまり、例えば、繰り返し単位中に含まれる複数のR
2は同一でも異なっていてもよい。
【0082】
R
1で示されるアルキレン基の炭素数は、好ましくは2または3であり、より好ましくは2である。
また、R
1で示されるアルキレン基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性、潤滑性付与性能、親水化性能に優れる等の観点から、エタン−1,2−ジイル基が好ましい。
【0083】
R
2におけるアルキル基の炭素数は、入手容易性、潤滑性付与性能、親水化性能に優れる等の観点から、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1または2であり、更に好ましくは1である。また、R
2で示されるアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
斯様なR
2の中でも、入手容易性、潤滑性付与性能、親水化性能に優れる等の観点から、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、水素原子または炭素数1もしくは2のアルキル基がより好ましく、水素原子またはメチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0084】
R
4におけるフェニレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が挙げられる。
【0085】
R
5における有機基の炭素数は、好ましくは1〜6である。該有機基としては、炭化水素基が挙げられる。斯かる炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基を包含する概念である。
【0086】
R
5における脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基が挙げられる。
【0087】
脂環式炭化水素基は、単環の脂環式炭化水素基と橋かけ環炭化水素基に大別される。前記単環の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。また、橋かけ環炭化水素基としては、イソボルニル基等が挙げられる。
【0088】
芳香族炭化水素基としては、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0089】
R
4の中では、潤滑性付与性能、親水化性能に優れる等の観点から、*−(C=O)−O−またはフェニレン基が好ましく、*−(C=O)−O−が特に好ましい。
【0090】
nは、好ましくは平均値で4〜90であり、より好ましくは平均値で8〜90であり、更に好ましくは平均値で8〜60であり、更に好ましくは平均値で8〜40であり、特に好ましくは平均値で9〜25である。
【0091】
なお、本明細書における各「平均値」はNMRで測定できる。例えば、前記式(1)の構造について、
1H−NMRを測定し、R
1の炭素数2〜4のアルキレン基と、R
2の炭素数1〜4のアルキル基の末端のメチル基との、それぞれのプロトンピークの積分値を比較することで、nの平均値を算出可能である。
【0092】
斯様な繰り返し単位(A−1)を誘導するモノマーとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの中でも、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。
繰り返し単位(A−1)としては、これらを単独でまたは2種以上を用いて得られた繰り返し単位が挙げられる。
【0093】
(繰り返し単位(A−2))
繰り返し単位(A−2)は、側鎖末端にアンモニオアルキルホスフェート基を有する繰り返し単位である。繰り返し単位(A−2)としては、下記式(2)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0094】
【化13】
〔式(2)中、R
6は、水素原子またはメチル基を示し、R
7は、炭素数2〜4のアルキレン基を示し、R
8は、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、R
9、R
10およびR
11はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、qは、平均値で1〜10を示す。〕
【0095】
R
7におけるアルキレン基の炭素数は、好ましくは2または3であり、より好ましくは2である。
R
7におけるアルキレン基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、R
1で例示した基と同様の基等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性、潤滑性付与性能、親水化性能に優れる等の観点から、エタン−1,2−ジイル基が好ましい。
なお、R
7が複数ある場合、R
7は同一でも異なっていてもよい。
【0096】
R
8におけるアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4であり、更に好ましくは2または3であり、特に好ましくは2である。
R
8におけるアルキレン基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好適な具体例としては、R
7におけるアルキレン基と同様の基が挙げられる。
【0097】
R
9、R
10およびR
11はそれぞれ独立して、炭素数1〜8の炭化水素基が好ましい。斯かる炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。
該炭化水素基としては、アルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましい。
このアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0098】
qは、好ましくは平均値で1〜7であり、より好ましくは平均値で1〜4であり、特に好ましくは1である。
【0099】
なお、繰り返し単位(A−2)は、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、水素イオン、水酸化物イオン等の対イオンを有していてもよい。
【0100】
斯様な繰り返し単位(A−2)を誘導するモノマーとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート等が挙げられる。
繰り返し単位(A−2)としては、これらを単独でまたは2種以上を用いて得られた繰り返し単位が挙げられる。
【0101】
(繰り返し単位(A−3))
繰り返し単位(A−3)は、側鎖にアミド基を有する繰り返し単位である。繰り返し単位(A−3)としては、下記式(3)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0102】
【化14】
〔式(3)中、R
12は、水素原子またはメチル基を示し、R
13およびR
14はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を示す。〕
【0103】
R
13およびR
14におけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜3である。
また、該アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
【0104】
R
13およびR
14におけるヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜3である。ヒドロキシアルキル基に含まれるアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、ヒドロキシアルキル基の好適な具体例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシイソプロピル基が挙げられる。なお、ヒドロキシアルキル基におけるヒドロキシ基の置換位置は任意である。
【0105】
斯様な繰り返し単位(A−3)を誘導するモノマーとしては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
繰り返し単位(A−3)としては、これらを単独でまたは2種以上を用いて得られた繰り返し単位が挙げられる。
【0106】
(繰り返し単位(A−4))
繰り返し単位(A−4)は、側鎖末端に窒素および酸素を含むヘテロ環を有する繰り返し単位である。繰り返し単位(A−4)としては、下記式(4)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0107】
【化15】
〔式(4)中、R
15は、水素原子またはメチル基を示し、R
16およびR
17はそれぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキレン基を示す。〕
【0108】
R
16およびR
17におけるアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜2である。
また、該アルキレン基は直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、直鎖状が好ましい。好適な具体例としては、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基が挙げられる。
【0109】
斯様な繰り返し単位(A−4)を誘導するモノマーとしては、4−(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
繰り返し単位(A−4)としては、前記モノマーを単独でまたは2種以上を用いて得られた繰り返し単位が挙げられる。
【0110】
(繰り返し単位(A−5))
繰り返し単位(A−5)は、側鎖にラクタムを有する繰り返し単位である。繰り返し単位(A−5)としては、下記式(5)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0111】
【化16】
〔式(5)中、R
18は、炭素数1〜5のアルキレン基を示す。〕
【0112】
R
18におけるアルキレン基の炭素数は、好ましくは3〜5である。
また、該アルキレン基は直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、直鎖状が好ましい。好適な具体例としては、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基が挙げられる。
【0113】
斯様な繰り返し単位(A−5)を誘導するモノマーとしては、1−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム等が挙げられる。
繰り返し単位(A−5)としては、これらを単独でまたは2種以上を用いて得られた繰り返し単位が挙げられる。
【0114】
(繰り返し単位(A−6))
繰り返し単位(A−6)は、側鎖末端にベタイン性基を有する繰り返し単位である。繰り返し単位(A−6)としては、下記式(6)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0115】
【化17】
〔式(6)中、Yは、−(C=O)O
-、−(O=S=O)O
-、−O(O=S=O)O
-、−(S=O)O
-、−O(S=O)O
-、−OP(=O)(OR
24)O
-、−OP(=O)(R
24)O
-、−P(=O)(OR
24)O
-または−P(=O)(R
24)O
-を示し(R
24は、炭素数1〜3のアルキル基を示す)、R
19は、水素原子またはメチル基を示し、R
20は、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、R
21およびR
22はそれぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示し、R
23は、炭素数1〜10の2価の有機基を示す。〕
【0116】
Yとしては、−(C=O)O
-が好ましい。なお、R
24におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
【0117】
R
20およびR
23における2価の有機基の炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6である。
また、2価の有機基としては、2価の炭化水素基が好ましく、2価の脂肪族炭化水素基がより好ましい。当該2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、2価の脂肪族炭化水素基としては、アルカンジイル基が好ましい。例えば、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基が挙げられる。
【0118】
R
21およびR
22における炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。
R
21およびR
22における炭化水素基としては、アルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましい。当該アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0119】
なお、繰り返し単位(A−6)は、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、水素イオン、水酸化物イオン等の対イオンを有していてもよい。
【0120】
斯様な繰り返し単位(A−6)を誘導するモノマーとしては、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−プロピルスルホベタイン等の(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。
繰り返し単位(A−6)としては、これらを単独でまたは2種以上用いて得られた繰り返し単位が挙げられる。
【0121】
(繰り返し単位(A−7))
繰り返し単位(A−7)は、アニオン性繰り返し単位である。
繰り返し単位(A−7)としては、酸性基を有する繰り返し単位が挙げられる。
また、繰り返し単位(A−7)としては、導入の容易さ、安全性に優れる等の観点から、エチレン性不飽和結合を含有するモノマーに由来する単位が好ましい。
【0122】
前記酸性基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基またはこれらの塩の基などが挙げられ、これらを1個有していてもよく、2個以上有していてもよい。なお、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;有機アンモニウム塩等が挙げられる。
【0123】
繰り返し単位(A−7)を誘導するモノマーとしては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸またはその塩;(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸またはその塩;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホ基含有重合性不飽和モノマーまたはその塩;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基含有重合性不飽和モノマーまたはその塩が挙げられる。また、繰り返し単位(A−7)は、アクリル酸エステルの加水分解物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸の酸無水物の加水分解物;グリシジルメタクリレートや(4−ビニルベンジル)グリシジルエーテル等のエポキシ基への酸性基含有チオールの付加物などを用いて得ることもできる。
これらの中でも、導入の容易さ、反応性に優れる等の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
繰り返し単位(A−7)は、これらを単独でまたは2種以上用いて得られた繰り返し単位が挙げられる。
【0124】
(繰り返し単位(A−8))
繰り返し単位(A−8)は、カチオン性繰り返し単位である。繰り返し単位(A−8)としては、下記式(8)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0125】
【化18】
〔式(8)中、R
25は、水素原子またはメチル基を示し、R
26は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR
31−、*−NR
31−(C=O)−(R
31は、水素原子または炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(8)中のR
25が結合している炭素原子と結合する位置を示す)またはフェニレン基を示し、R
27は、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、R
28、R
29およびR
30はそれぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
【0126】
R
26におけるフェニレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が挙げられる。
【0127】
また、R
31における有機基の炭素数は、好ましくは1〜6である。該有機基としては、炭化水素基が挙げられる。斯かる炭化水素基としては、R
5で例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0128】
R
27における2価の有機基の炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6である。
該2価の有機基としては、2価の炭化水素基が好ましく、2価の脂肪族炭化水素基がより好ましい。当該2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。2価の脂肪族炭化水素基としては、R
20およびR
23で例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0129】
R
28、R
29およびR
30における炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。
R
28、R
29及びR
30における炭化水素基としては、R
9、R
10およびR
11における炭化水素基として例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0130】
なお、繰り返し単位(A−8)は対イオンを有していてもよい。対イオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン;硫酸水素イオン;メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン等のアルキル硫酸イオン;アルキルスルホン酸イオン;ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン等のアリールスルホン酸イオン;2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸ナトリウム等のアルケニルスルホン酸イオン;酢酸イオン等のカルボン酸イオンなどが挙げられる。
【0131】
繰り返し単位(A−8)を誘導するモノマーの好適な具体例としては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
(メタ)アクリレート類のモノマー種としては、((メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド等の((メタ)アクリロイルオキシC
1-10アルキル)トリC
1-10アルキルアンモニウムクロライド、((メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の((メタ)アクリロイルオキシC
1-10アルキル)ジC
1-10アルキルC
6-10アラルキルアンモニウムクロライドが挙げられる。(メタ)アクリルアミド類のモノマー種としては、(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド等の(3−(メタ)アクリルアミドC
1-10アルキル)トリC
1-10アルキルアンモニウムクロリド、(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド等の(3−(メタ)アクリルアミドC
1-10アルキル)ジC
1-10アルキルC
6-10アラルキルアンモニウムクロリド等が挙げられる。これらの中でも、導入の容易さ、反応性に優れる等の観点から、(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
繰り返し単位(A−8)としては、これらを単独でまたは2種以上を用いて得られた繰り返し単位が挙げられる。
【0132】
前記繰り返し単位(A−1)〜(A−8)の中でも、潤滑性付与性能、親水化性能、細胞接着防止性能および生体試料付着防止性能に優れる等の観点から、繰り返し単位(A−1)、繰り返し単位(A−2)、繰り返し単位(A−3)、繰り返し単位(A−4)、繰り返し単位(A−6)が好ましく、繰り返し単位(A−1)、繰り返し単位(A−2)、繰り返し単位(A−3)、繰り返し単位(A−6)がより好ましい。中でも、繰り返し単位(A)としては、潤滑性付与性能、親水化性能、細胞接着防止性能および生体試料付着防止性能により優れる観点からは、以下の(i)〜(ii)が好ましく、(ii)が特に好ましい。
【0133】
(i)繰り返し単位(A−1)および(A−3)から選ばれる1種以上、好ましくは繰り返し単位(A−3)
(ii)繰り返し単位(A−1)および(A−3)から選ばれる1種以上と、繰り返し単位(A−2)および(A−6)から選ばれる1種以上との組み合わせ、好ましくは繰り返し単位(A−3)と、繰り返し単位(A−2)および(A−6)から選ばれる1種以上との組み合わせ
【0134】
繰り返し単位(A)の合計含有量は、前記重合体の全繰り返し単位に対して、好ましくは2.5〜95質量%であり、5〜95質量%がより好ましく、20〜95質量%が更に好ましく、30〜95質量%が更に好ましく、40〜90質量%が特に好ましい。
繰り返し単位(A)の合計含有量が前記範囲にあると、メディカルデバイスへの潤滑性付与性能により優れ、器材への親水化性能および細胞接着防止性能により優れ、シリコーン基材への親水化性能および生体試料付着防止性能により優れる。
なお、繰り返し単位(A)の含有量は
1H−NMR、
13C−NMR等により測定可能である。
【0135】
〔繰り返し単位(B)〕
繰り返し単位(B)は、側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖末端が炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基または炭素数6〜30のアリール基で構成される繰り返し単位であり、重合体は、繰り返し単位(B)に該当する繰り返し単位を1種または2種以上有していてよい。
【0136】
前記重合体が、このような繰り返し単位(B)を含有することで、重合体の、メディカルデバイス、器具、装置およびシリコーン基材への付着力が高くなり、繰り返し単位(A)との相互作用により、
潤滑性に優れるメディカルデバイス、耐久性(潤滑性の持続性)に優れるメディカルデバイス、特に、メディカルデバイスの使用時に生じ得る摩擦下でも潤滑性の持続性に優れるメディカルデバイスを容易に得ることができ、
表面親水性および細胞接着防止効果に優れる器具および装置、さらにこの効果の持続性に優れる細胞培養器材を容易に得ることができ、
表面親水性および試料成分、特に生体試料付着防止性に優れるシリコーン基材、さらにこの効果の持続性に優れるシリコーン基材を容易に得ることができる。従って、本組成物を、マイクロ流路表面の処理に用いた場合であっても、該流路を通過するガスや液体等により、重合体の剥落が起こりにくく、所望の効果が長期にわたって発揮されるマイクロ流路を有するシリコーン基材を得ることができる。
【0137】
斯様な繰り返し単位(B)としては、合成容易性などの点から、エチレン性不飽和結合を有するモノマーに由来する繰り返し単位であることが好ましく、下記式(b1)で表される構造を側鎖末端に有する繰り返し単位が好ましい。式(b1)で表される構造を側鎖末端に有する繰り返し単位としては公知の繰り返し単位が挙げられ、中でも、(メタ)アクリレート系の繰り返し単位、(メタ)アクリルアミド系の繰り返し単位、スチレン系の繰り返し単位等が好ましい。これらの中でも、下記式(b2)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0138】
【化19】
〔式(b1)中、R
32は、炭素数2〜4のアルキレン基を示し、R
33は、炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基または炭素数6〜30のアリール基を示し、mは、平均値で2〜100を示す。〕
【0139】
【化20】
〔式(b2)中、R
32、R
33およびmは、式(b1)と同義であり、R
34は、水素原子またはメチル基を示し、R
35は、−O−、**−(C=O)−O−、**−(C=O)−NR
36−、**−NR
36−(C=O)−(R
36は、水素原子または炭素数1〜10の有機基を示し、**は、式(b2)中のR
34が結合している炭素原子と結合する位置を示す)またはフェニレン基を示す。〕
【0140】
R
32におけるアルキレン基の炭素数は、好ましくは2または3であり、より好ましくは2である。
R
32で示されるアルキレン基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性等の観点から、エタン−1,2−ジイル基が好ましい。
なお、m個のR
32は同一でも異なっていてもよい。
【0141】
R
33におけるアルキル基、アルカノイル基の炭素数は、入手容易性等の観点から、好ましくは6〜25であり、より好ましくは7〜20であり、更に好ましくは8〜18であり、更に好ましくは9〜18であり、特に好ましくは10〜18である。
R
33におけるアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、パルミチル基、ステアリル基等が挙げられる。これらの中でも、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基が好ましく、ラウリル基、ステアリル基がより好ましい。
また、R
33におけるアルカノイル基としては、2−エチルヘキサノイル基、ラウロイル基、ステアロイル基が挙げられる。
【0142】
また、R
33におけるアリール基の炭素数は、好ましくは6〜12である。具体的には、フェニル基が挙げられる。
また、該アリール基は、炭素数1〜24のアルキル基を置換基として有していてもよい。斯かるアルキル基の炭素数としては、3〜24が好ましく、5〜16がより好ましい。なお、斯かる置換アルキル基の置換位置および置換個数は任意であるが、好適な置換個数は1または2個である。
また、斯様な炭素数1〜24のアルキル基を置換基として有するアリール基としては、ノニルフェニル基が挙げられる。
【0143】
前述のR
33の中でも、入手容易性等の観点から、炭素数5〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、炭素数5〜30のアルキル基がより好ましい。
【0144】
R
35におけるフェニレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が挙げられる。
また、R
36における有機基の炭素数は、好ましくは1〜6である。該有機基としては、炭化水素基が挙げられる。斯かる炭化水素基としては、R
5で例示した炭化水素基と同様の基等が挙げられる。
R
35の中では、**−(C=O)−O−またはフェニレン基が好ましく、**−(C=O)−O−が特に好ましい。
【0145】
mは、好ましくは平均値で2〜90であり、より好ましくは平均値で4〜90であり、更に好ましくは平均値で9〜60であり、特に好ましくは平均値で10〜40である。
【0146】
斯様な繰り返し単位(B)を誘導するモノマーとしては、2−エチルヘキシルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエチレングリコールポリプロピレンレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールポリプロピレンレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの中でも、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。
繰り返し単位(B)としては、これらを単独でまたは2種以上を用いて得られた繰り返し単位が挙げられる。
【0147】
繰り返し単位(B)の合計含有量は、前記重合体の全繰り返し単位に対して、好ましくは2.5〜95質量%であり、2.5〜80質量%がより好ましく、5〜70質量%が更に好ましく、5〜60質量%が特に好ましい。
繰り返し単位(B)の合計含有量が前記範囲にあると、潤滑性付与性能およびメディカルデバイスに対する耐剥離性により優れなどの観点から、親水化性能および細胞接着防止性能により優れ、親水化性能および生体試料付着防止性能により優れる。
なお、繰り返し単位(B)の含有量は、繰り返し単位(A)の含有量と同様にして測定すればよい。
【0148】
〔繰り返し単位(C)〕
前記重合体としては、下記式(c1)で表される繰り返し単位(C−1)および下記式(c2)で表される基を側鎖末端に有する繰り返し単位(C−2)から選ばれる1種以上の繰り返し単位(C)を含有することが好ましい。
前記重合体が、斯様な繰り返し単位(C)を備えることにより、
重合体のメディカルデバイスに対する耐剥離性が更に強くなり、潤滑性付与効果がより向上し、
重合体の器材への吸着力が更に強くなり、親水化性能および細胞接着防止性能がより向上し、
重合体のシリコーン基材への吸着力が更に強くなり、親水化性能および生体試料付着防止性能がより向上する。
【0149】
(繰り返し単位(C−1))
繰り返し単位(C−1)は、下記式(c1)で表される繰り返し単位である。
【0150】
【化21】
〔式(c1)中、R
37は、水素原子またはメチル基を示し、R
38は、−O−、***−(C=O)−O−、***−(C=O)−NR
40−、***−NR
40−(C=O)−(R
40は、水素原子または炭素数1〜10の有機基を示し、***は、式(c1)中のR
37が結合している炭素原子と結合する位置を示す)またはフェニレン基を示し、R
39は、炭素数4〜30の炭化水素基を示す。〕
【0151】
R
38におけるフェニレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が挙げられる。
【0152】
また、R
40における有機基の炭素数は、好ましくは1〜6である。該有機基としては、炭化水素基が挙げられる。斯かる炭化水素基としては、R
5で例示した炭化水素基と同様の基等が挙げられる。
【0153】
R
38の中では、潤滑性付与性能、親水化性能、防汚性付与効果、細胞接着防止性能および生体試料付着防止性能に優れる等の観点から、***−(C=O)−O−、***−(C=O)−NR
40−またはフェニレン基が好ましく、***−(C=O)−O−、***−(C=O)−NR
40−がより好ましく、***−(C=O)−O−、***−(C=O)−NH−が更に好ましく、***−(C=O)−NH−が特に好ましい。
【0154】
R
39における炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、環構造を含んでいてもよいが、好ましくはアルキル基である。
R
39における炭化水素基の炭素数は、潤滑性付与性能、メディカルデバイスに対する耐剥離性、親水化性能、細胞接着防止性能および生体試料付着防止性能に優れる等の観点から、好ましくは6〜24であり、より好ましくは8〜18であり、更に好ましくは8〜14であり、特に好ましくは10〜14である。
前記アルキル基としては、例えば、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、パルミチル基、ステアリル基等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性、防汚性付与効果等の観点から、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基が好ましく、2−エチルヘキシル基、ラウリル基がより好ましい。
【0155】
斯様な繰り返し単位(C−1)を誘導するモノマーとしては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、N−ドデシル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
繰り返し単位(C−1)としては、これらを単独でまたは2種以上を用いて得られた繰り返し単位が挙げられる。
【0156】
(繰り返し単位(C−2))
繰り返し単位(C−2)は、下記式(c2)で表される基を側鎖末端に有する繰り返し単位である。式(c2)で表される基を側鎖末端に有する繰り返し単位としては公知の繰り返し単位が挙げられ、中でも、(メタ)アクリレート系の繰り返し単位、(メタ)アクリルアミド系の繰り返し単位、スチレン系の繰り返し単位等が好ましい。これらの中でも、下記式(c3)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0157】
【化22】
〔式(c2)中、R
41は、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、R
42およびR
43はそれぞれ独立して、炭素数1〜10の有機基を示し、R
44、R
45およびR
46はそれぞれ独立して、−OSi(R
49)
3(R
49はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜8の有機基を示す)または炭素数1〜10の有機基を示し、rは、平均値で0〜200を示す。〕
【0158】
【化23】
〔式(c3)中、R
47は、水素原子またはメチル基を示し、R
48は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR
50−、*−NR
50−(C=O)−(R
50は、水素原子または炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(c3)中のR
47が結合している炭素原子と結合する位置を示す)またはフェニレン基を示し、その他の符号は式(c2)中の符号と同義である。〕
【0159】
R
41における2価の有機基の炭素数は、好ましくは2〜8であり、より好ましくは2〜6であり、更に好ましくは2〜4である。
該2価の有機基としては、2価の炭化水素基が挙げられる。2価の炭化水素基は、好ましくは2価の脂肪族炭化水素基であり、直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、より好ましくはアルカンジイル基である。斯かるアルカンジイル基の好適な具体例としては、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基が挙げられる。
【0160】
また、R
42およびR
43における有機基の炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4であり、更に好ましくは1または2である。
該有機基としては、炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、好ましくはアルキル基である。斯かるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
なお、R
42およびR
43が複数ある場合、R
42は同一でも異なっていてもよく、R
43も同一でも異なっていてもよい。
【0161】
R
44、R
45およびR
46における有機基の炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4であり、更に好ましくは1または2である。また、R
44、R
45、R
46およびR
49における有機基としては、R
42およびR
43における有機基と同様の基が挙げられる。
【0162】
R
44、R
45およびR
46は、潤滑性付与性能、メディカルデバイスに対する耐剥離性および親水化性能に優れるなどの観点から、−OSi(R
49)
3が好ましい。また、R
49の中では、潤滑性付与性能、メディカルデバイスに対する耐剥離性および親水化性能に優れるなどの観点から、炭素数1〜8の有機基が好ましく、該炭素数は、より好ましくは1〜6であり、さらに好ましくは1〜4であり、特に好ましくは1または2である。
【0163】
rは、潤滑性付与性能、メディカルデバイスに対する耐剥離性および親水化性能に優れるなどの観点から、平均値で0〜100が好ましく、平均値で0〜50がより好ましく、平均値で0〜25が更に好ましく、平均値で0〜10が特に好ましい。
【0164】
なお、R
48は前記R
38と、R
50は前記R
40と、それぞれ同様の基が挙げられる。
【0165】
斯様な繰り返し単位(C−2)を誘導するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル、(メタ)アクリル酸3−[ビス(トリメチルシロキシ)(メチル)シリル]プロピル、シリコーン(メタ)アクリレート(X−22−2475(信越シリコーン社製)、FM−0711(JNC社製)など)等が挙げられる。
繰り返し単位(C−2)としては、これらを単独でまたは2種以上を用いて得られた繰り返し単位が挙げられる。
【0166】
これら繰り返し単位(C−1)〜(C−2)の中でも、潤滑性付与性能、メディカルデバイスに対する耐剥離性、親水化性能、細胞接着防止性能および生体試料付着防止性能に優れるなどの観点から、繰り返し単位(C−1)のうちR
38が***−(C=O)−NH−である繰り返し単位、および、式(c3)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0167】
繰り返し単位(C)の合計含有量は、潤滑性付与性能、メディカルデバイスに対する耐剥離性、親水化性能、細胞接着防止性能および生体試料付着防止性能に優れるなどの観点から、重合体の全繰り返し単位に対して、40質量%以下が好ましく、0.1〜30質量%がより好ましく、0.5〜20質量%が更に好ましく、1.0〜10質量%が特に好ましい。
なお、繰り返し単位(C)の含有量は、繰り返し単位(A)の含有量と同様にして測定すればよい。
【0168】
〔架橋用繰り返し単位(D)〕
本発明(I)で用いる重合体は、架橋剤を用いて架橋させてもよい。前記繰り返し単位(A)〜(C)に架橋剤と反応する反応性官能基がない場合、または、反応性が弱く架橋反応が十分に進まない場合には、本発明(I)で用いる重合体は、本発明(I)の効果を損なわない範囲で、前記繰り返し単位(A)〜(C)以外の他の繰り返し単位として、側鎖に反応性官能基を有する繰り返し単位(D)を含有してもよい。
前記重合体が、繰り返し単位(D)を備え、かつ、メディカルデバイス上で前記重合体を架橋させることで、重合体(架橋体)のメディカルデバイスに対する耐剥離性が更に強くなり、優れた潤滑性付与効果がより長期間持続する。
【0169】
前記反応性官能基としては、特に制限されないが、繰り返し単位(D)に含まれる反応性官能基を架橋させる際に、前記繰り返し単位(A)〜(C)に含まれ得るカルボキシ基やヒドロキシ基等の官能基が同時に反応しない選択性の高い反応性官能基を選択することが好ましい。好ましい反応性官能基としては、前記繰り返し単位(A)〜(C)として何を選択するかに依るが、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、ケトン基、アルデヒド基、イソシアネート基、エチレン性不飽和基などが挙げられる。これらの中でも、反応性官能基としては、導入の容易さ、反応性の観点から、エポキシ基、ケトン基、エチレン性不飽和基が好ましい。
【0170】
前記繰り返し単位(D)は、前記反応性官能基を有するモノマーを用いて導入することができる。これら反応性官能基は、該モノマーの中に1種単独で存在してもよいし、また、2種以上存在してもよい。
【0171】
繰り返し単位(D)を誘導するモノマーとしては、具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を分子内に有する単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの酸無水物基を分子内に有する単量体;ジアセトンアクリルアミド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートなどのケトン基を分子内に有する単量体;(メタ)アクリルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、メタクロレインなどのアルデヒド基を分子内に有する単量体;(メタ)アクリロイルオキシメチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネートなどのイソシアネート基を分子内に有する単量体;(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸アリルなどのエチレン性不飽和基を分子内に有する単量体;などが挙げられる。繰り返し単位(D)は、これらを単独でまたは2種以上を用いることで導入することができる。
これらの中でも、導入の容易さ、反応性の観点から、グリシジル(メタ)アクリレート、ジアセトンアクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0172】
〔重合体の構成等〕
前記重合体に含まれる繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)との質量比〔(A):(B)〕としては、潤滑性付与性能、メディカルデバイスに対する耐剥離性、親水化性能、細胞接着防止性能および生体試料付着防止性能に優れる等の観点から、20:80〜95:5が好ましく、30:70〜95:5がより好ましく、40:60〜95:5が更に好ましく、50:50〜95:5が更に好ましく、55:45〜95:5が特に好ましい。
【0173】
前記重合体が繰り返し単位(C)を有する場合、質量比〔((A)+(B)):(C)〕としては、潤滑性付与性能、メディカルデバイスに対する耐剥離性、親水化性能、細胞接着防止性能および生体試料付着防止性能に優れ、透明性に優れる細胞培養器材やシリコーン基材などが得られる等の観点から、60:40〜99:1が好ましく、70:30〜99:1がより好ましく、75:25〜99:1が更に好ましく、80:20〜99:1が更に好ましく、85:15〜99:1が特に好ましい。
また、質量比〔(A):(B)〕が前記質量比〔(A):(B)〕の範囲であり、かつ、質量比〔((A)+(B)):(C)〕が前記質量比〔((A)+(B)):(C)〕の範囲であることが特に好ましい。
【0174】
前記重合体が繰り返し単位(D)を有する場合、繰り返し単位(A)、繰り返し単位(B)および繰り返し単位(C)と、繰り返し単位(D)との比率は特に制限されないが、潤滑性付与性能、メディカルデバイスに対する耐剥離性向上および架橋強度の観点から、質量比((A)+(B)+(C)):(D)は、好ましくは50:50〜99:1、より好ましくは80:20〜99:1、さらに好ましくは90:10〜98:2である。
【0175】
前記重合体は共重合体であればよく、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
【0176】
前記重合体の重量平均分子量(Mw)としては、その下限は、好ましくは3千、より好ましくは5千、更に好ましくは8千、特に好ましくは1万であり、その上限は、好ましくは1000万、より好ましくは500万、更に好ましくは300万、特に好ましくは200万である。重量平均分子量が斯様な範囲にあると、潤滑性付与効果、細胞接着防止性能、生体試料付着防止性能、メディカルデバイスに対する耐剥離性、器材への吸着性、シリコーン基材への吸着性およびハンドリング性が向上する。
【0177】
前記重合体の数平均分子量(Mn)としては、その下限は、好ましくは2千、より好ましくは3千、更に好ましくは5千、より好ましくは8千、特に好ましくは1万であり、その上限は、好ましくは1000万、より好ましくは500万、更に好ましくは300万、より好ましくは200万、特に好ましくは50万である。
また、分子量分布(Mw/Mn)としては、1〜10が好ましく、1〜7がより好ましく、1〜5が特に好ましい。
なお、前記重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布は、後述する実施例に記載の方法に従い測定すればよい。
【0178】
前記重合体は、水溶性であることが好ましい。重合体が水溶性であることで、
メディカルデバイスの特性を損なうことなく、潤滑性に優れるメディカルデバイスを容易に製造することができ、
器材の特性を損なうことなく、表面親水性および細胞接着防止性に優れる細胞培養器材等を容易に製造することができ、
シリコーン基材の特性を損なうことなく、表面親水性および生体試料付着防止性に優れるシリコーン基材を容易に製造することができる。
なお、本明細書において、水溶性の重合体とは、重合体濃度が0.5質量%となるように重合体を水(25℃)に添加、混合したときに、目視で透明な溶液が得られることをいう。
【0179】
前記重合体は、例えば、各繰り返し単位を誘導するモノマーを混合し、この混合物を、必要に応じて、水、アセトニトリル、t−ブチルアルコール等の溶媒に溶解させ、重合開始剤を加えてラジカル重合することにより得ることができる。
【0180】
前記ラジカル重合を行う際に用いられる重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤であれば特に限定されないが、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソジメチルバレロニトリル、過硫酸塩、過硫酸塩−亜硫酸水素塩系等が挙げられる。
【0181】
前記重合開始剤の仕込み量は、モノマー成分100質量部に対して0.001〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。また、重合温度は20〜100℃が好ましく、重合時間は0.5〜48時間が好ましい。
【0182】
<本組成物>
前記メディカルデバイス用組成物およびシリコーン基材処理用組成物は、前記重合体を含有すれば特に制限されないが、通常、溶剤等の前記重合体以外の他の成分を含む。また、前記細胞接着防止剤は、前記重合体を含有すれば特に制限されず、溶剤等の前記重合体以外の他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
これらの本組成物は、常法に従い製造することができる。
【0183】
本組成物中の前記重合体の含有量は、0.001〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.01〜5質量%が更に好ましい。
重合体の含有量が前記範囲にあると、
潤滑性に優れ、さらにその効果が持続するメディカルデバイスを容易に得ることができ、
親水化性能および細胞接着防止性能に優れ、さらに、細胞毒性が低い細胞培養器材を容易に得ることができ、
親水化性能および生体試料付着防止性に優れ、さらに、シリコーン基材、特に、マイクロ流路を有するシリコーン基材を容易に処理できる。
【0184】
前記他の成分としては、溶剤、界面活性剤、等張化剤、キレート化剤、pH調整剤、緩衝剤、増粘剤、安定化剤、タンパク質分解酵素、薬理活性成分、生理活性成分や、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物等を本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。これらは、1種を単独で含んでいてもよく、また2種以上を含んでいてもよい。
【0185】
前記溶剤としては、水;リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、グッド緩衝液、トリス緩衝液、アンモニア緩衝液等の各種緩衝水溶液などが挙げられる。
【0186】
前記界面活性剤としては、アルキルジアミノエチルグリシンまたはその塩(例えば、塩酸塩)等の両性界面活性剤;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の陽イオン性界面活性剤;アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、脂肪族α−スルホメチルエステル、α−オレフィンスルホン酸等の陰イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0187】
前記等張化剤としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0188】
前記キレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム(EDTA・2Na)、エチレンジアミン四酢酸・3ナトリウム(EDTA・3Na)等のエチレンジアミン四酢酸の塩、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、これらの塩(例えば、ナトリウム塩)等が挙げられる。
【0189】
前記pH調整剤としては、塩酸、ホウ酸、イプシロン−アミノカプロン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、硫酸、リン酸、ポリリン酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム等が挙げられる。
pH調整剤は、前記溶液のpH値が、4.0〜9.0程度、好ましくは6.0〜8.0程度、より好ましくは7.0付近になるように調整して用いればよい。
【0190】
前記緩衝剤としては、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、アスコルビン酸、マレイン酸、グルコン酸、リン酸、ホウ酸、オキシカルボン酸、グリシン、グルタミン酸等のアミノ酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)等の酸やその塩(例えば、ナトリウム塩)、タウリンやその誘導体を含むグッド緩衝液、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−tris)等のヒドロキシアルキルアミンなどが挙げられる。
【0191】
前記増粘剤、安定化剤としては、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド等の合成有機高分子化合物、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシエチルスターチ等のスターチ誘導体、コンドロイチン硫酸塩、ヒアルロン酸塩等が挙げられる。
【0192】
前記タンパク質分解酵素としては、パパイン、ブロメライン、フィシン、トリプシン、キモトリプシン、パンクレアチン等の生体由来のプロテアーゼが挙げられる。
【0193】
メディカルデバイス用組成物は、前記重合体を架橋させる場合、前記繰り返し単位(A)〜(C)に含まれる官能基や繰り返し単位(D)の反応性官能基等と反応しうる多官能化合物等の架橋剤や、重合開始剤を含んでいてもよい。
該多官能化合物としては、例えば、ポリオール、多官能アミン、多官能チオール、多官能イソシアネート、ヒドラジド化合物、多官能エチレン性不飽和化合物が挙げられる。これらのうち1種を単独で使用してもよく、また2種以上を使用してもよい。
【0194】
前記ポリオールとしては、例えば、炭素数2〜20の2価アルコール(脂肪族ジオール〔例:エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−または1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール〕、脂環式ジオール〔例:シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のシクロアルキレングリコール〕);炭素数3〜20の3価アルコール(脂肪族トリオール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール等のアルカントリオール);炭素数5〜20の4〜8価またはそれ以上の多価アルコール(脂肪族ポリオール〔例:ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等のアルカンポリオール〕、アルカントリオールまたはアルカンポリオールの分子内もしくは分子間脱水物、糖類およびその誘導体〔例:ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド〕);が挙げられる。
【0195】
前記多官能アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアルキレントリアミン、トリアルキレンテトラミン、テトラアルキレンペンタミン、ペンタアルキレンヘキサミン、ヘキサアルキレンヘプタミンが挙げられる。
【0196】
前記多官能チオールとしては、例えば、エチレンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオールが挙げられる。
【0197】
前記多官能イソシアネートとしては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,3−または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0198】
前記ヒドラジド化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,2−ジヒドラジン、ブチレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン、ブチレン−2,3−ジヒドラジンが挙げられる。
【0199】
前記多官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシ・エトキシ)フェニル]プロパン、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが挙げられる。
【0200】
メディカルデバイス用組成物中にエチレン性不飽和基を有する化合物が含まれる場合、重合開始剤を使用してもよく、該重合開始剤としては、公知の光重合開始剤、熱重合開始剤を使用することができる。
重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を使用してもよい。
【0201】
光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン化合物、アセトフェノン化合物、ベンジル化合物、ビイミダゾール化合物、トリアジン化合物、O−アシルオキシム化合物、オニウム塩化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、α−ジケトン化合物、多核キノン化合物、ジアゾ化合物、イミドスルホナート化合物等を挙げることができる。
具体的には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4'−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、p−ジメチルアミノアセトン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラーズケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0202】
熱重合開始剤としては前記重合体を合成する際に用いてもよいラジカル重合開始剤と同様の開始剤が挙げられる。
【0203】
<メディカルデバイス>
前記メディカルデバイスは、医療用器材であれば特に制限されず、具体例としては、例えば、血液バッグ、採尿バッグ、輸血セット、縫合糸、ドレーンチューブ、各種カテーテル、ブラッドアクセス、血液回路、人工血管、人工腎臓、人工心肺、人工弁、血漿交換膜、各種吸着体、CAPD、IABP、ペースメーカー、人工関節、人工骨頭、歯科材料、各種シャントが挙げられる。
【0204】
メディカルデバイスの材質や形状は特に限定されず、材質としては、ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニルやそれらの共重合体などの各種高分子材料、金属、セラミック、カーボン、およびこれらの複合材料等が挙げられる。また、形状は特に限定されず、平滑、多孔質などいずれであってもよい。
【0205】
<シリコーン基材>
前記シリコーン基材処理用組成物で処理されるシリコーン基材としては、シリコーン系樹脂を含む基材であれば特に制限されない。このようなシリコーン基材としては、具体的には、例えば、シリコーン含有医療用デバイス、マイクロ流路を有するシリコーン基材、好ましくはシリコーン含有マイクロ流路デバイスが挙げられる。
【0206】
前記医療用デバイスとは、生体内で使用される医療用の構造体のことをいい、斯様な構造体は、体内へ埋め込んで使用するものと、体内で(埋め込まずに)使用するものとに大別される。なお、医療用デバイスの大きさや長さは特に限定されるものではなく、微細な回路を有するものや、微量の試料を検出するものも包含される。
体内へ埋め込んで使用する構造体としては、例えば、心臓ペースメーカー等の疾患が生じている生体の機能を補うための機能補助装置;埋入型バイオチップ等の生体の異常を検出するための装置;インプラント、骨固定材、縫合糸、人工血管等の医療用器具が挙げられる。
また、体内で(埋め込まずに)使用する構造体としては、カテーテル、胃カメラ等が挙げられる。
【0207】
前記マイクロ流路デバイスとしては、例えば、微小反応デバイス(具体的にはマイクロリアクターやマイクロプラント等)、集積型核酸分析デバイス、微小電気泳動デバイス、微小クロマトグラフィーデバイス等の微小分析デバイス;質量スペクトルや液体クロマトグラフィー等の分析試料調製用微小デバイス;抽出、膜分離、透析などに用いる物理化学的処理デバイス;環境分析チップ、臨床分析チップ、遺伝子分析チップ(DNAチップ)、タンパク質分析チップ(プロテオームチップ)、糖鎖チップ、クロマトグラフチップ、細胞解析チップ、製薬スクリーニングチップ等のマイクロ流路チップが挙げられる。これらの中でも、マイクロ流路チップが好ましい。
【0208】
なお、前記マイクロ流路は、微量の試料(好ましくは液体試料)が流れる部位であり、その流路幅および深さは特に限定されないが、いずれも、通常、0.1μm〜1mm程度であり、好ましくは10μm〜800μmである。
なお、マイクロ流路の流路幅や深さは、流路全長にわたって同じであってもよく、部分的に異なる大きさや形状であってもよい。
【0209】
前記シリコーン基材は、プラズマ処理、UVオゾン処理、内部浸潤剤処理等がされていてもよい。これらの処理がなされたシリコーン基材は表面が親水化されているため、重合体が吸着しにくくなる場合があるが、本発明で用いる重合体はこのようなプラズマ処理等がされたシリコーン基材にも吸着し、優れた親水性および生体試料吸着抑制効果が付与される。
【0210】
≪物品≫
本発明における物品は、メディカルデバイス、細胞培養器材およびシリコーン基材からなる群より選ばれ、下記繰り返し単位(A)と下記繰り返し単位(B)とを有する重合体を表面の少なくとも一部に有する。
(A)親水性繰り返し単位
(B)側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖末端が炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基または炭素数6〜30のアリール基で構成される繰り返し単位
【0211】
≪表面に重合体または重合体の架橋物を有するメディカルデバイス≫
本発明における、表面に重合体または重合体の架橋物を有するメディカルデバイス(以下「被処理物1」ともいう。)は、前記重合体またはその架橋物をメディカルデバイス表面の少なくとも一部に有する。
前記被処理物1は、その表面に前記重合体またはその架橋物を有するため、優れた潤滑性を有する。
【0212】
前記被処理物1は、前記重合体を、メディカルデバイス表面の少なくとも一部に設ける工程を含むこと、具体的には、コーティングする工程を含むことにより製造することができる。
【0213】
また、前記被処理物1は、前記重合体の架橋物を、メディカルデバイス表面の少なくとも一部に設ける工程を含むこと、具体的には、コーティングする工程を含むことにより製造してもよいが、メディカルデバイス表面の少なくとも一部に前記重合体を設ける(例:コーティング)工程を行い、次いで、該重合体を架橋させる工程を含むことにより製造することが、重合体(架橋体)のメディカルデバイスに対する耐剥離性が更に強くなり、優れた潤滑性付与効果がより長期間持続する等の点から好ましい。
【0214】
前記コーティングは、前記メディカルデバイス用組成物を用いてもよいし、前記重合体のみを用いてもよいが、容易に被処理物1を得ることができることから、前記メディカルデバイス用組成物を用いることが好ましい。
【0215】
なお、被処理前のメディカルデバイスには、予め、プラズマ処理、UVオゾン処理等で表面処理しておいてもよい。
【0216】
前記コーティングは、公知の方法で行えばよいが、具体的には、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が挙げられる。加えて、前記メディカルデバイス用組成物などにメディカルデバイスを浸漬させ、重合体またはその架橋物とこれらメディカルデバイスとを接触させるだけでコーティングすることもできる。
【0217】
前記コーティングの際には、前記メディカルデバイス用組成物とメディカルデバイスとを接触させた状態で加熱することが、潤滑性に優れる、特にこれらの効果が長期にわたって発揮される被処理物1を簡便かつ低コストに製造することができることから好ましい。
【0218】
前記加熱条件としては、温度は、好ましくは30〜150℃、より好ましくは30〜135℃、さらに好ましくは35〜135℃であり、時間は、好ましくは20分〜72時間、より好ましくは20分〜24時間である。加熱条件は、用いるメディカルデバイスや重合体に応じて決めればよく、さらに、温度が低い場合には、時間を長くするなど、加熱温度に応じて加熱時間を選択すればよく、または、加熱時間に応じて加熱温度を選択すればよい。
【0219】
前記加熱条件は、より具体的には、下記常圧下条件および滅菌条件のどちらか、あるいは組み合わせて実施してもよい。
【0220】
前記常圧下条件としては、常圧下30〜80℃で30分〜72時間が好ましく、常圧下35〜70℃で1時間〜24時間がより好ましく、常圧下35℃〜60℃で1時間〜24時間が更に好ましい。
【0221】
また、前記滅菌条件下での加熱は、メディカルデバイスをオートクレーブ滅菌等する際に行ってもよく、この場合の好ましい滅菌条件は、115℃で30分間から135℃で20分間の範囲である。より好ましい滅菌条件は、120℃で30分間から135℃で20分間の範囲である。
なお、本明細書におけるオートクレーブ滅菌とは、第十六改正日本薬局方に記載の高圧蒸気法を指し、同方に記載の通例と同様、またはさらに長時間の条件で行うことができる。
【0222】
前記重合体を架橋させる工程は、公知の方法で行うことができる。例えば、前記重合体と前記多官能化合物とを含有する組成物をコーティングした後に、熱処理や、光処理することでコーティング層の強度および耐久性が大きく向上され得る。なお、架橋剤を使用して硬化することもできる。
【0223】
例えば、前記重合体がケトン基を有する繰り返し単位(D)を含有する場合、該重合体と前記多官能化合物としてアジピン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物とを含む組成物を調製し、メディカルデバイスをその組成物に浸漬して、取り出した後、加熱乾燥することで、ケトン基とヒドラジド基との間に共有結合を形成させて、前記重合体がもたらす物性を損なうことなく、前記重合体を強固にメディカルデバイス表面に固定化することが可能である。前記多官能化合物が有するヒドラジド基によって、前記組成物中のケトン基の全量の10〜100%の範囲でヒドラゾン化反応させることが好ましい。また、前記重合体がエポキシ基を有する繰り返し単位(D)を含有する場合、該重合体と、前記多官能化合物として3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール等のジチオール化合物またはエチレンジアミン等のジアミン化合物とを含む組成物を調製し、メディカルデバイスをその組成物に浸漬して、取り出した後、加熱することで、エポキシ基と、チオール基またはアミノ基との間に共有結合を形成させることが可能であり、前記と同様の効果の発揮が可能である。
【0224】
前記被処理物1は、前記工程以外は通常の表面処理の方法と同様にして製造すればよく、例えば、前記工程を行った後、必要に応じて洗浄や乾燥工程を行ってもよい。
【0225】
≪細胞培養器材≫
本発明の細胞培養器材は、前記重合体を表面の少なくとも一部に有するものである。具体的には、上記重合体が少なくとも一部に塗布されたものである。
また、器材表面に親水層が形成されることによって、表面が親水的に改質され、細胞接着防止効果を有する器材であることが好ましい。
【0226】
≪細胞培養器材の製造方法≫
前記細胞培養器材は、前記重合体を、器材表面の少なくとも一部に設ける工程を含む方法、具体的には、器材表面の少なくとも一部にコーティングする工程を含む方法により製造できる。該コーティング以外は通常の細胞培養器材の製法と同様にして製造すればよい。該コーティングは、前記細胞接着防止剤を用いてもよいし、前記重合体のみを用いてもよいが、容易に細胞培養器材を得ることができることから、前記細胞接着防止剤を用いることが好ましい。
【0227】
前記器材としては、例えば、フラスコ、組織培養用フラスコ、ディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マイクロポア、マルチプレート、マルチウェルプレート、チャンバースライド、シャーレ、チューブ、トレイ、培養バック、ローラーボトルが挙げられる。
【0228】
前記コーティングは、公知の方法で行えばよいが、具体的には、メディカルデバイスの欄に記載の方法と同様の方法等が挙げられる。加えて、前記細胞接着防止剤などに器材を浸漬させ、重合体とこれら器材とを接触させることでコーティングすることもできる。
【0229】
前記コーティングの際には、前記細胞接着防止剤と器材とを接触させた状態で加熱することが、親水性および細胞接着防止性に優れる、特にこれらの効果が長期にわたって発揮される細胞培養器材を簡便かつ低コストに製造することができることから好ましい。
【0230】
前記加熱の条件としては、メディカルデバイスの欄に記載の条件と同様の条件が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0231】
前記細胞培養器材は、前記重合体を設ける工程以外は通常の表面処理の方法と同様にして製造すればよく、例えば、前記工程を行った後、必要に応じて洗浄や乾燥工程を行ってもよいし、前記重合体を設ける工程の前に、プラズマ処理、UVオゾン処理等がなされていてもよい。
また、架橋剤や架橋モノマーを使用して硬化する工程を経てもよい。
【0232】
≪細胞塊の作成方法≫
本発明における細胞塊の作成方法は、前記細胞培養器材で細胞を培養することを特徴とする。
前記細胞培養器材の表面には重合体が設けられているため、器材への細胞接着が抑制される。そして、この器材中で細胞を培養することにより、細胞間のみで接着が生じ、細胞塊を得ることができる。特に、前記細胞培養器材は、細胞毒性が低いため、細胞塊の作成が阻害され難く、容易に細胞塊を得ることができる。細胞塊を得るまでの時間は、好ましくは24時間以内、より好ましくは12時間以内が望ましい。
【0233】
なお、この際の細胞を培養する条件としては、用いる細胞に適した培養条件を適宜採用すればよい。
【0234】
≪表面に重合体を有するシリコーン基材およびマイクロ流路を有するシリコーン基材≫
本発明における、表面に重合体を有するシリコーン基材およびマイクロ流路を有するシリコーン基材(以下これらをまとめて「被処理物2」ともいう。)は、それぞれ、前記重合体を基材、つまり、シリコーン基材およびマイクロ流路を有するシリコーン基材表面の少なくとも一部に有する。
前記被処理物2は、その表面に前記重合体を有するため、優れた親水性および試料成分、特に生体試料吸着抑制効果を有する。
【0235】
なお、基材表面とは、マイクロ流路を有するシリコーン基材の場合、該基材の表面およびマイクロ流路内表面等が挙げられる。つまり、表面に重合体を有するマイクロ流路を有するシリコーン基材は、該基材の表面に前記重合体を有していてもよく、マイクロ流路の表面に前記重合体を有していてもよいが、本発明の効果がより発揮されることから、少なくともマイクロ流路の表面に前記重合体を有していることが好ましい。
【0236】
前記被処理物2は、前記重合体を、シリコーン基材またはマイクロ流路を有するシリコーン基材表面の少なくとも一部に設ける工程を含むこと、具体的には、コーティングする工程を含むことにより製造することができる。該コーティングの際には、前記シリコーン基材処理用組成物を用いてもよいし、前記重合体のみを用いてもよいが、容易に被処理物2を得ることができることから、前記シリコーン基材処理用組成物を用いることが好ましい。
【0237】
前記コーティングは、公知の方法で行えばよいが、具体的には、メディカルデバイスの欄に記載の方法と同様の方法等が挙げられる。加えて、前記シリコーン基材処理用組成物などにシリコーン基材、マイクロ流路を有するシリコーン基材を浸漬させ、重合体とこれら基材とを接触させるだけでコーティングすることもできる。特に、マイクロ流路内表面をコーティングすることは、通常その径の大きさなどから容易ではないが、特定の重合体を含む前記シリコーン基材処理用組成物によれば、重合体と基材とを接触させるだけでコーティングすることができ、容易に、安価に所望の被処理物2を得ることができる。
なお、マイクロ流路のコーティングは、流路の略全面(全面を含む)に行うことが好ましい。
【0238】
前記コーティングの際には、前記シリコーン基材処理用組成物と基材とを接触させた状態で加熱することが、親水性および試料成分、特に生体試料付着防止性に優れる、特にこれらの効果が長期にわたって発揮される被処理物2を簡便かつ低コストに製造することができることから好ましい。
【0239】
前記加熱の条件としては、メディカルデバイスの欄に記載の条件と同様の条件が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0240】
前記被処理物2は、前記工程以外は通常の表面処理の方法と同様にして製造すればよく、例えば、前記工程を行った後、必要に応じて洗浄や乾燥工程を行ってもよい。
また、架橋剤や架橋モノマーを使用して硬化する工程を経てもよい。
【実施例】
【0241】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0242】
各分析条件は以下に示すとおりである。
【0243】
<分子量測定>
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、東ソー社製 TSKgel α−Mカラムを用い、流量:0.5ミリリットル/分、溶出溶媒:N−メチル−2−ピロリドン溶媒(H
3PO
4:0.016M、LiBr:0.030M)、カラム温度:40℃の分析条件で、ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0244】
<NMRスペクトル>
以下で得られた共重合体の構造(繰り返し単位の含有量)は、
1H−NMRスペクトルに基づいて測定した。
1H−NMRスペクトルは、溶媒および内部標準物質としてd
6−DMSOを用いて、BRUKER製モデルAVANCE500(500MHz)により測定した。
【0245】
[合成例1] 共重合体(N−1)の合成
メトキシポリエチレングリコール(23)モノメタクリレート(M−230G(新中村化学社製)、以下「MPEGM」と称する。なお、「ポリエチレングリコール(23)」は、「(OC
2H
4)
23」を意味する。以下同様の表現は同様の意味を有する。)8.5gと、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン(GLBT(大阪有機化学工業社製)、以下「GLBT」と称する。)0.25gと、ラウロキシポリエチレングリコール(30)モノメタクリレート(PLE−1300(日油社製)、以下「LPEGM」と称する。)1.25gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)((和光純薬工業社製)、以下「AIBN」と称する。)0.1gと、溶媒として純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−1)の水溶液を得た。
【0246】
得られた共重合体(N−1)において、MPEGM由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は12.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−1)の重量平均分子量は235000であり、数平均分子量は58000であり、分子量分布は4.1であった。
【0247】
[合成例2] 共重合体(N−2)の合成
アクリロイルモルホリン(ACMO(KJケミカルズ社製)、以下「ACM」と称する。)8.5gと、GLBT0.25gと、LPEGM1.25gと、AIBN0.1gと、純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−2)の水溶液を得た。
【0248】
得られた共重合体(N−2)において、ACM由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は12.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−2)の重量平均分子量は455000であり、数平均分子量は137000であり、分子量分布は3.3であった。
【0249】
[合成例3] 共重合体(N−3)の合成
ジメチルアクリルアミド(DMAA(KJケミカルズ社製)、以下「DMA」と称する。)8.5gと、GLBT0.25gと、LPEGM1.25gと、AIBN0.1gと、純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−3)の水溶液を得た。
【0250】
得られた共重合体(N−3)において、DMA由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は12.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−3)の重量平均分子量は499000であり、数平均分子量は125000であり、分子量分布は4.0であった。
【0251】
[合成例4] 共重合体(N−4)の合成
N−ビニルピロリドン((和光純薬工業社製)、以下「NVP」と称する。)8.5gと、GLBT0.25gと、LPEGM1.25gと、AIBN0.1gと、純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−4)の水溶液を得た。
【0252】
得られた共重合体(N−4)において、NVP由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は12.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−4)の重量平均分子量は208000であり、数平均分子量は43000であり、分子量分布は4.8であった。
【0253】
[合成例5] 共重合体(N−5)の合成
DMA8.5gと、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン((東京化成工業社製)、以下「MPC」と称す)0.25gと、LPEGM1.25gと、AIBN0.1gと、純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−5)の水溶液を得た。
【0254】
得られた共重合体(N−5)において、DMA由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、MPC由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は12.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−5)の重量平均分子量は494000であり、数平均分子量は153000であり、分子量分布は3.2であった。
【0255】
[合成例6] 共重合体(N−6)の合成
DMA8.5gと、アクリル酸((日本触媒社製)、以下「AA」と称す。)0.25gと、LPEGM1.25gと、AIBN0.1gと、純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。得られた溶液に炭酸水素ナトリウム0.31gを加えて溶解させた後、純水で透析することで、共重合体(N−6)の水溶液を得た。
【0256】
得られた共重合体(N−6)において、DMA由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、AA由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は12.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−6)の重量平均分子量は436000であり、数平均分子量は103000であり、分子量分布は4.2であった。
【0257】
[合成例7] 共重合体(N−7)の合成
DMA8.5gと、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩(DMAPAA−Q(KJケミカルズ社製)、以下「QA」と称す。)0.25gと、LPEGM1.25gと、AIBN0.1gと、純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−7)の水溶液を得た。
【0258】
得られた共重合体(N−7)において、DMA由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、QA由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は12.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−7)の重量平均分子量は549000であり、数平均分子量は172000であり、分子量分布は3.2であった。
【0259】
[合成例8] 共重合体(N−8)の合成
MPC8.75gと、LPEGM1.25gと、AIBN0.1gと、t−ブタノール((和光純薬工業社製)、以下「TBA」と称す。)90gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−8)の水溶液を得た。
【0260】
得られた共重合体(N−8)において、MPC由来の繰り返し単位の含有量は87.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は12.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−8)の重量平均分子量は153000であり、数平均分子量は39000であり、分子量分布は3.9であった。
【0261】
[合成例9] 共重合体(N−9)の合成
GLBT8.75gと、LPEGM1.25gと、AIBN0.1gと、TBA90gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−9)の水溶液を得た。
【0262】
得られた共重合体(N−9)において、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は87.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は12.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−9)の重量平均分子量は197000であり、数平均分子量は44000であり、分子量分布は4.5であった。
【0263】
[合成例10] 共重合体(N−10)の合成
DMA8.5gと、GLBT0.25gと、ステアロキシポリエチレングリコール(30)モノメタクリレート(PSE−1300(日油社製)、以下「SPEGM」と称する。)1.25gと、AIBN0.1gと、純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−10)の水溶液を得た。
【0264】
得られた共重合体(N−10)において、DMA由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、SPEGM由来の繰り返し単位の含有量は12.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−10)の重量平均分子量は484000であり、数平均分子量は122000であり、分子量分布は4.0であった。
【0265】
[合成例11] 共重合体(N−11)の合成
DMA8.5gと、GLBT0.25gと、LPEGM1.0gと、2−エチルヘキシルアクリレート((東京化成工業社製)、以下「EHA」と称す。)0.25gと、AIBN0.1gと、純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。
【0266】
得られた溶液にメチルイソブチルケトン((和光純薬工業社製)、以下「MIBK」と称す。)12.5gとアセトン(和光純薬工業社製)87.5gとを加えて撹拌した後、室温で1時間静置することで、共重合体(N−11)を含む下層と上層とに分離した。該上層を除去した後、再度同様の操作を行って上層を除去した。残った共重合体(N−11)層にMIBK75gを加え、撹拌して均一化した。さらにジイソプロピルエーテル((東京化成工業社製)、以下「DIPE」と称す。)75gを加えて撹拌し、共重合体(N−11)を析出させた。ろ過と、40℃、8時間の真空乾燥とを実施し、共重合体(N−11)を得た。
【0267】
得られた共重合体(N−11)において、DMA由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は10質量%であり、EHA由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−11)の重量平均分子量は513000であり、数平均分子量は145000であり、分子量分布は3.5であった。
【0268】
[合成例12] 共重合体(N−12)の合成
DMA8.5gと、GLBT0.25gと、LPEGM1.0gと、ラウリルメタクリレート(ライトエステルL(共栄社化学社製)、以下「LMA」と称す。)0.25gと、AIBN0.1gと、TBA90gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。
【0269】
得られた溶液にMIBK100gを加えて撹拌して均一化した。DIPE1100gを入れた容器に、撹拌しながら前記MIBKで希釈した重合液を滴下し、共重合体(N−12)を析出させた。ろ過と、40℃、8時間の真空乾燥とを実施し、共重合体(N−12)を得た。
【0270】
得られた共重合体(N−12)において、DMA由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は10質量%であり、LMA由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−12)の重量平均分子量は465000であり、数平均分子量は119000であり、分子量分布は3.9であった。
【0271】
[合成例13] 共重合体(N−13)の合成
DMA8.5gと、GLBT0.25gと、LPEGM1.0gと、ドデシルアクリルアミド((東京化成工業社製)、以下「DDAA」と称す。)0.25gと、AIBN0.1gと、純水27gとアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。
【0272】
得られた溶液にMIBK12.5gとアセトン87.5gとを加えて撹拌した後、室温で1時間静置することで、共重合体(N−13)を含む下層と上層とに分離した。該上層を除去した後、再度同様の操作を行って上層を除去した。残った共重合体(N−13)層にMIBK75gを加え、撹拌して均一化した。さらにDIPE75gを加えて撹拌し、共重合体(N−13)を析出させた。ろ過と、40℃、8時間の真空乾燥とを実施し、共重合体(N−13)を得た。
【0273】
得られた共重合体(N−13)において、DMA由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は10質量%であり、DDAA由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−13)の重量平均分子量は497000であり、数平均分子量は130000であり、分子量分布は3.8であった。
【0274】
[合成例14] 共重合体(N−14)の合成
DMA8.5gと、GLBT0.25gと、LPEGM1.0gと、下記式(X)で示されるシリコーンメタクリレート((東京化成工業社製)、以下「SiMA」と称す。)0.25gと、AIBN0.1gと、純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。
【0275】
得られた溶液にMIBK12.5gとアセトン87.5gとを加えて撹拌した後、室温で1時間静置することで、共重合体(N−14)を含む下層と上層とに分離した。該上層を除去した後、再度同様の操作を行って上層を除去した。残った共重合体(N−14)層にMIBK75gを加え、撹拌して均一化した。さらにDIPE75gを加えて撹拌し、共重合体(N−14)を析出させた。ろ過と、40℃、8時間の真空乾燥とを実施し、共重合体(N−14)を得た。
【0276】
得られた共重合体(N−14)において、DMA由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は10質量%であり、SiMA由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−14)の重量平均分子量は462000であり、数平均分子量は108000であり、分子量分布は4.3であった。
【0277】
【化24】
【0278】
[合成例15] 共重合体(N−15)の合成
DMA8.5gと、GLBT0.25gと、LPEGM1.0gと、シリコーンメタクリレート(サイラプレーンFM−0711(JNC社製)、以下「DMSMA」と称す。)0.25gと、AIBN0.1gと、純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。
【0279】
得られた溶液にMIBK12.5gとアセトン87.5gとを加えて撹拌した後、室温で1時間静置することで、共重合体(N−15)を含む下層と上層とに分離した。該上層を除去した後、再度同様の操作を行って上層を除去した。残った共重合体(N−15)層にMIBK75gを加え、撹拌して均一化した。さらにDIPE75gを加えて撹拌し、共重合体(N−15)を析出させた。ろ過と、40℃、8時間の真空乾燥とを実施し、共重合体(N−15)を得た。
【0280】
得られた共重合体(N−15)において、DMA由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は10質量%であり、DMSMA由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−15)の重量平均分子量は497000であり、数平均分子量は103000であり、分子量分布は4.8であった。
【0281】
[合成例16] 共重合体(N−16)の合成
DMA7.75gと、GLBT0.5gと、LPEGM1.0gと、DDAA0.25gと、ジアセトンアクリルアミド((日本化成社製)、以下「DAAM」と称す。)0.5gと、AIBN0.1gと、純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。
【0282】
得られた溶液にMIBK12.5gとアセトン87.5gとを加えて撹拌した後、室温で1時間静置することで、共重合体(N−16)を含む下層と上層とに分離した。該上層を除去した後、再度同様の操作を行って上層を除去した。残った共重合体(N−16)層にMIBK75gを加え、撹拌して均一化した。さらにDIPE75gを加えて撹拌し、共重合体(N−16)を析出させた。ろ過と、40℃、8時間の真空乾燥とを実施し、共重合体(N−16)を得た。
【0283】
得られた共重合体(N−16)において、DMA由来の繰り返し単位の含有量は77.5質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は10質量%であり、DDAA由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、DAAM由来の繰り返し単位の含有量は5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−16)の重量平均分子量は408000であり、数平均分子量は106000であり、分子量分布は3.8であった。
【0284】
[参考例1] 共重合体(N−17)の合成
DMA8.5gと、GLBT0.25gと、EHA1.25gと、AIBN0.1gと、純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−17)の水溶液を得た。
【0285】
得られた共重合体(N−17)において、DMA由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、EHA由来の繰り返し単位の含有量は12.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−17)の重量平均分子量は354000であり、数平均分子量は83000であり、分子量分布は4.3であった。
【0286】
[参考例2] 共重合体(N−18)の合成
DMA8.5gと、GLBT0.25gと、LMA1.25gと、AIBN0.1gと、純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。得られた溶液を純水で再沈殿し、乾燥することで、共重合体(N−18)を得た。
【0287】
得られた共重合体(N−18)において、DMA由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LMA由来の繰り返し単位の含有量は12.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−18)の重量平均分子量は438000であり、数平均分子量は101000であり、分子量分布は4.3であった。
【0288】
[参考例3] 共重合体(N−19)の合成
DMA8.5gと、GLBT0.25gと、DDAA1.25gと、AIBN0.1gと、純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。得られた溶液を純水で再沈殿し、乾燥することで、共重合体(N−19)を得た。
【0289】
得られた共重合体(N−19)において、DMA由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、DDAA由来の繰り返し単位の含有量は12.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−19)の重量平均分子量は406000であり、数平均分子量は81000であり、分子量分布は5.0であった。
【0290】
[参考例4] 共重合体(N−20)の合成
DMA8.5gと、GLBT0.25gと、SiMA1.25gと、AIBN0.1gと、純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。得られた溶液を純水で再沈殿し、乾燥することで、共重合体(N−20)を得た。
【0291】
得られた共重合体(N−20)において、DMA由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、SiMA由来の繰り返し単位の含有量は12.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−20)の重量平均分子量は360000であり、数平均分子量は95000であり、分子量分布は3.8であった。
【0292】
[参考例5] 共重合体(N−21)の合成
DMA8.5gと、GLBT0.25gと、DMSMA1.25gと、AIBN0.1gと、純水27gおよびアセトニトリル63gとをフラスコに入れ、混合した。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、4時間重合させ、その後室温まで冷却した。得られた溶液を純水で再沈殿し、乾燥することで、共重合体(N−21)を得た。
【0293】
得られた共重合体(N−21)において、DMA由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、DMSMA由来の繰り返し単位の含有量は12.5質量%であった。
また、得られた共重合体(N−21)の重量平均分子量は325000であり、数平均分子量は77000であり、分子量分布は4.2であった。
【0294】
なお、各合成例および参考例で得た共重合体(N−1)〜(N−21)を精製水と、各共重合体の濃度が0.5質量%となるように25℃で混合した。共重合体(N−1)〜(N−17)、(N−19)および(N−20)は精製水に溶解していた。
【0295】
【表1】
【0296】
【表2】
【0297】
[実施例1−1]
合成例1で得られた共重合体(N−1)の水溶液を用い、0.5質量%の水溶液を調製した。ウレタン製の基材をその水溶液に浸漬して35℃で2時間静置した。その後、基材を純水で3回洗浄し、未吸着ポリマーを除去することで、共重合体(N−1)でコーティングされたウレタン製基材を得た。
【0298】
[実施例1−2〜1−16および比較例1−1〜1−3]
共重合体(N−1)の水溶液の代わりに、合成例2〜16、参考例1、参考例3または参考例4で得られたものを用いた以外は実施例1−1と同様にして、各共重合体でコーティングされたウレタン製基材を得た。
【0299】
[実施例1−17]
合成例16で得られた共重合体(N−16)を用い、0.5質量%の水溶液を調製した。さらに、該水溶液に共重合体の10分の1質量のアジピン酸ジヒドラジドを添加、溶解させた。ウレタン製の基材をその水溶液に浸漬して35℃で2時間静置後、該水溶液から取り出し、60℃に設定したオーブンで4時間以上、加熱乾燥した。その後、基材を純水で3回洗浄し、共重合体(N−16)で架橋コーティングされたウレタン製基材を得た。
【0300】
[実施例1−18〜1−33および比較例1−4〜1−6]
実施例1−1〜1−16および比較例1−1〜1−3において、ウレタン製基材からナイロン製基材に変更した以外は同様にして、各共重合体でコーティングされたナイロン製基材を得た。
【0301】
[実施例1−34]
実施例1−17において、ウレタン製基材をナイロン製基材に変更した以外は同様にして、共重合体(N−16)で架橋コーティングされたナイロン製基材を得た。
【0302】
[試験例1] 親水性試験
実施例1−1〜1−34および比較例1−1〜1−6の各基材について、各基材表面の水分を拭き取った後、接触角計DM−701(協和界面科学社製)を用いて液滴法による接触角を測定した。液滴は2μLの生理食塩水を用いた。試験結果を表3および4に示す。
なお、以下の試験において、コントロールとして、各合成例および参考例で得られた共重合体でコーティングされていない基材を用いた。
【0303】
[試験例2] 表面潤滑性試験
実施例1−1〜1−34および比較例1−1〜1−6の各基材について、自動摩擦摩耗解析装置TS501(協和界面科学社製)を用いて摩擦係数を測定した。
固定した基材の上に200μLの生理食塩水を添加し、点接触子を、100gf荷重、速度8mm/s、20mm幅で動かした。点接触子を動かして1往復目の摩擦係数を測定し、同様にして、2〜5往復目のそれぞれの摩擦係数を測定した。なお、これらの摩擦係数は、基材上の同一箇所で行ったものである。前記1〜5回目往復時のそれぞれの摩擦係数の平均値を初期摩擦係数とし、結果を表3および4の初期摩擦係数に示す。
【0304】
[試験例3] 耐久性試験
実施例1−1〜1−34および比較例1−1〜1−6の各基材について、試験例2と同様の条件で、点接触子を動かした。点接触子を動かして101往復目の摩擦係数を測定し、同様にして、102〜105往復目のそれぞれの摩擦係数を測定した後、これらの平均値(100往復後の摩擦係数)を算出した。なお、これらの摩擦係数は、基材上の同一箇所で行ったものである。試験例2の試験結果と、この100往復後の摩擦係数の結果とを比較し、以下のように耐久性を評価した。試験結果を表3および4に示す。
○ ; 摩擦係数の変化は認められない
△ ; 摩擦係数が上昇した(コーティング前の状態の摩擦係数未満)
× ; 摩擦係数がほぼコーティング前の状態と同等以上まで上昇した
【0305】
【表3】
【0306】
【表4】
【0307】
[実施例2−1〜2−15および比較例2−1〜2−3]
合成例1〜15および参考例1、参考例3または参考例4の各共重合体(水溶液)を用い、表5に記載の通りのポリマー濃度となるよう純水を用いて調製し、実施例2−1〜2−15および比較例2−1〜2−3の組成物を得た。
該組成物を用いて、以下の試験を行った。試験結果を表5または6に示す。なお、表5中のコントロールは、前記組成物の代わりに純水を用いた以外は前記と同様に試験した結果を示す。
【0308】
[試験例1] 細胞接着試験(1)
表面がポリスチレンで構成されている6ウェルプレートのウェルに、以下の表5に示す実施例2−1〜2−15および比較例2−1〜2−3の組成物を2mLずつ加え、35℃に加熱した状態で2時間静置した後、純水で3回洗浄することで未吸着ポリマーを除去した。
【0309】
次いで、6.7×10
4cell/mLに調製したHeLa細胞(ヒト子宮頸ガン細胞)を含むFBS(ウシ胎児血清)含有液体培地を1.5mLずつウェルに添加し、37℃、5%CO
2の条件で4時間培養した。
その後培地交換し、更に44時間培養(37℃、5%CO
2条件)した後、細胞の状態を倒立顕微鏡にて観察し、細胞数を血球計算盤にて計数した。
下記式に従って接着細胞密度の平均値を算出した。なお、評価はn=3で実施し、接着細胞密度は下記評価基準で評価した。
接着細胞密度(%)=〔(接着細胞数)/(コンフルエント時の細胞数)〕×100
【0310】
(評価基準)
ランク 細胞凝集
× 接着細胞密度が40%以上
△ 接着細胞密度が10%以上40%未満
○ 接着細胞密度が10%未満
【0311】
[試験例2] 細胞接着試験(2)
HeLa細胞を3T3細胞(マウス線維芽細胞)に変更した以外は試験例1と同様にして接着細胞密度を評価した。試験結果を表5に示す。
【0312】
[試験例3] 細胞接着試験(3)
HeLa細胞をUV♀2細胞(マウス内皮細胞)に変更した以外は試験例1と同様にして接着細胞密度を評価した。試験結果を表5に示す。
【0313】
[試験例4] 抗体吸着量測定
ポリスチレン製96穴プレートに各実施例または比較例の組成物1mLを加え、35℃に加熱した状態で4時間静置した後、純水で3回洗浄することで未吸着ポリマーを除去した。次いで、西洋ワサビパーオキシダーゼ標識マウスIgG抗体(AP124P:ミリポア社製)水溶液1mLを前記96穴プレートに満たし、室温で1時間インキュベートした後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、TMB(3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン)/過酸化水素水/硫酸を用いて抗体を発色させることで波長450nmの光の吸光度を測定し、この吸光度から検量線法により抗体吸着量を算出した。
【0314】
[試験例5] 細胞毒性試験(1)
細胞培養用に親水化処理された市販の48ウェルプレート(IWAKI社製)のウェルに、2×10
4cell/mLに調製したHeLa細胞を含む液体培地(10体積%FBS)を200μLずつ添加し、37℃、5%CO
2の条件で12時間前培養した。
一方、表6に示す実施例2−16、実施例2−17、比較例2−4、比較例2−5の各共重合体をそれぞれ0.10質量%含み、かつ共重合体水溶液が10質量%となるよう共重合体含有培地を調製した。
次いで、前培養したHeLa細胞の培地を前記共重合体含有培地に交換し、37℃、5%CO
2の条件で24時間培養した。なお、共重合体水溶液を純水に変更した以外は上記と同様にして培養したものをコントロールとした。
【0315】
前記培養したものを用い、各共重合体の細胞毒性をMTTアッセイにて確認した。なお、MTTアッセイにはMTTアッセイキット(MTT Cell Proliferation Assay Kit 10009365:Cayman Chemical Company製)を使用し、使用説明書に従って試験した。試験結果を表6に示す。
なお、表中の数値は、コントロールを100%とした時の相対値を示し、この数値が80%以上では毒性が無いことを示し、この数値が低いほど共重合体の毒性が高いことを示す。
【0316】
[試験例6] 細胞毒性試験(2)
HeLa細胞を3T3細胞に変更した以外は試験例5と同様にして細胞毒性を確認した。試験結果を表6に示す。
【0317】
[試験例7] 細胞毒性試験(3)
HeLa細胞をUV♀2細胞に変更した以外は試験例5と同様にして細胞毒性を確認した。試験結果を表6に示す。
【0318】
[試験例8] 細胞塊の作成
U底の96ウェルプレートに各実施例または比較例の組成物180μLずつを添加し、37℃に加熱した状態で2時間静置した後、PBSで3回洗浄することで未吸着ポリマーを除去した。
次いで、2.5×10
4cell/mLのHT29細胞(ヒト大腸がん細胞)を含む液体培地(10体積%FBS)100μLをウェルに添加した。播種した細胞を37℃、5%CO
2の条件で16時間培養したのち、光学顕微鏡によって細胞の様子を観察した。細胞がウェルの底面に接着している場合、ウェル全体に細胞が散らばっている状態が観察される。一方で、細胞がウェルに接着していない場合は、細胞がU底付近の中心に集まり、細胞塊が形成される。本試験はn=3で実施し、その細胞凝集のランクを平均値で評価した。細胞凝集は下記の評価基準で評価した。
【0319】
(評価基準)
ランク 細胞凝集
1 ウェル全体に細胞が散らばっている
2 ウェルの中心に細胞が集まる傾向が見られる
3 ウェルの中心に細胞が集まり細胞塊となっている
【0320】
【表5】
【0321】
【表6】
【0322】
[実施例3−1〜3−15および比較例3−1〜3−3]
合成例1〜15および参考例1、参考例3または参考例4の各共重合体(水溶液)を用い、表7に記載の通りのポリマー濃度となるよう純水を用いて調製し、実施例3−1〜3−15および比較例3−1〜3−3の処理用組成物を得た。
該処理用組成物を用いて、以下の試験を行った。試験結果を表7に示す。なお、表中のコントロールは、処理用組成物の代わりに純水を用いた以外は前記と同様に試験した結果を示す。
【0323】
[試験例1] 親水性評価
まず、10×5mmに切り出した、厚さ0.5mmのシリコーンゴムシート(SR−50、タイガースポリマー社製)を用意した。
次いで、前記シリコーンゴムシートを、各実施例または比較例の処理用組成物1mL中にそれぞれ浸漬し、35℃に加熱した状態で4時間静置した後、純水で3回洗浄することで未吸着ポリマーを除去した。次いで、各シート表面の水分を拭き取った後、接触角計DM−701(協和界面科学社製)を用いて気泡法による気泡の接触角(25℃)を測定した。気泡法による測定結果は、濡れた状態での表面親水性を示し、親水性が高ければ値は高くなる。
【0324】
[試験例2] 抗体吸着量測定
φ6mmに切り出した、厚さ0.5mmのシリコーンゴムシート(SR−50、タイガースポリマー社製)を用意した。
該シリコーンゴムシートを各実施例または比較例の処理用組成物1mL中にそれぞれ浸漬し、35℃に加熱した状態で4時間静置した後、純水で3回洗浄することで未吸着ポリマーを除去した。次いで、処理済みの各シリコーンゴムシートを西洋ワサビパーオキシダーゼ標識マウスIgG抗体(AP124P:ミリポア社製)水溶液1mL中にそれぞれ浸漬し、室温で1時間静置した後、PBSで3回洗浄した。該洗浄後のシリコーンゴムシートをポリスチレン製96穴プレートのウェルに移し、TMB/過酸化水素水/硫酸を用いて抗体を発色させることで波長450nmの光の吸光度を測定し、この吸光度から検量線法により抗体吸着量を算出した。
【0325】
[試験例3] 血液送液試験
幅200μm、高さ50μmの流路を有するPDMS(ポリジメチルシロキサン)製標準チップ(フルイドウェアテクノロジーズ社製)の流路中に、下記表7に示す実施例3−3、実施例3−13、比較例3−2または比較例3−3の処理用組成物を流し込み、35℃に加熱した状態で4時間静置した後、純水で3回、PBSで3回洗浄し、未吸着ポリマーを除去した。
次いで、血液検体を一定圧力下、2μL/minの入口スピードで6分間送液し、送液直後から1分間の間に流路出口から流出した血液検体量と、送液開始後5分から6分間の間に流路出口から流出した血液検体量とをそれぞれ計測した。
【0326】
【表7】