(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754397
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】アウトソール構造、その製造方法、およびアウトソール構造を用いたクリーツシューズ
(51)【国際特許分類】
A43B 13/22 20060101AFI20200831BHJP
A43B 5/02 20060101ALI20200831BHJP
A43C 13/04 20060101ALI20200831BHJP
A43C 15/16 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
A43B13/22 A
A43B5/02
A43C13/04
A43C15/16
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-132097(P2018-132097)
(22)【出願日】2018年7月12日
(65)【公開番号】特開2020-6068(P2020-6068A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄一
(72)【発明者】
【氏名】家田 敢
【審査官】
粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−046113(JP,A)
【文献】
実開平03−045707(JP,U)
【文献】
特開昭48−079058(JP,A)
【文献】
特開2005−087639(JP,A)
【文献】
特開2003−052404(JP,A)
【文献】
特開平3−165702(JP,A)
【文献】
実開平5−23908(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 5/02
A43B 13/14−13/26
A43C 13/04
A43C 15/00−15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューズ用のアウトソール構造であって、
着用者の足裏を支持するための足裏支持面および該足裏支持面の反対側に形成された芯部を有するアウトソール本体と、
前記アウトソール本体と一体形成されていて、上下方向に延びるスタッドと、を備え、
前記スタッドは、
下端部が地面と接地するように形成された接地面と、
前記接地面から上方に向かって貫通形成された貫通孔と、を有し、
前記貫通孔は、
前記接地面の近傍に位置する第1壁部と、
前記第1壁部よりも上方に位置しかつ互いに対向する壁面同士の間隔が前記第1壁部における壁面同士の間隔よりも小さくなるように形成された第2壁部と、を含み、
前記芯部は、
前記アウトソール本体から下方に向かって突出した柱部と、
前記柱部の下部と連続しかつ前記柱部の外径よりも大きい外径を有する先端部と、を含み、
前記スタッドは、前記第1壁部が前記先端部と一体形成されかつ前記第2壁部が前記柱部と一体形成されるように構成されており、
前記第1壁部と前記先端部との間には、前記接地面から上方に向かって凹陥形成されかつ前記第1壁部の周方向に沿って延びる溝部が設けられている、アウトソール構造。
【請求項2】
請求項1に記載のアウトソール構造において、
前記貫通孔および前記芯部の各々は、互いに接する界面が断面視で曲線状となるように構成されている、アウトソール構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアウトソール構造において、
前記スタッドは、その外周寄りの上端部が前記アウトソール本体の下面と上下方向に対向した状態で面接合されている、アウトソール構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアウトソール構造を製造するための製造方法であって、
前記アウトソール本体および前記スタッドは、インジェクション成形により一体成形される、アウトソール構造の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアウトソール構造を備えた、クリーツシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトソール構造、その製造方法、およびアウトソール構造を用いたクリーツシューズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1のように、複数のスタッドを備えたシューズ用のアウトソール構造が知られている。
【0003】
この特許文献1には、アウトソール本体(アウトソール要素)と、アウトソール本体と一体形成されたスタッドと、を備えたアウトソール構造が開示されている。スタッドは、下端部が地面と接地するように形成された接地面と、接地面から上方に向かって貫通形成された開口部と、を有している。アウトソール本体は、その下面から下方に向かって突出しかつ開口部に挿通される突出部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−168843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のアウトソール構造において、開口部は、断面視で互いに対向する壁面同士の間隔がスタッドの上端部から接地面に向かって連続的に小さくなるように形成されている。一方、突出部は、その断面形状が開口部の内壁面に沿ってアウトソール本体の下面から下方に向かって先細るように形成されていて、開口部内に嵌入された状態となっている(特許文献1の
図2を参照)。このため、例えば接地時にスタッドが地面に対して深く突き刺さった場合には、スタッドが開口部から容易に抜け出てしまうおそれがあった。すなわち、特許文献1のアウトソール構造では、アウトソール本体に対するスタッドの剥離を十分に抑制することができなかった。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、アウトソール本体に対するスタッドの剥離を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の形態はシューズ用のアウトソール構造に係るものであり、このアウトソール構造は、着用者の足裏を支持するための足裏支持面および足裏支持面の反対側に形成された芯部を有するアウトソール本体と、アウトソール本体と一体形成されていて、上下方向に延びるスタッドと、を備えている。スタッドは、下端部が地面と接地するように形成された接地面と、接地面から上方に向かって貫通形成された貫通孔と、を有している。貫通孔は、接地面の近傍に位置する第1壁部と、第1壁部よりも上方に位置しかつ互いに対向する壁面同士の間隔が第1壁部における壁面同士の間隔よりも小さくなるように形成された第2壁部と、を含む。芯部は、アウトソール本体から下方に向かって突出した柱部と、柱部の下部と連続しかつ柱部の外径よりも大きい外径を有する先端部と、を含む。そして、スタッドは、第1壁部が先端部と一体形成されかつ第2壁部が柱部と一体形成されるように構成されている
。さらに、第1壁部と芯部の先端部との間には、接地面から上方に向かって凹陥形成されかつ第1壁部の周方向に沿って延びる溝部が設けられている。
【0008】
この第1の形態では、芯部の先端部および柱部が第1および第2壁部に保持された状態となり、かつ芯部の先端部が第2壁部から容易に抜け出ないようになる。特に、芯部の先端部は、スタッドに対する抜け止めとして機能する。このため、例えば接地時にスタッドが地面に対して深く突き刺さった場合であっても、スタッドがアウトソール本体から外れにくくなる。したがって、第1の形態では、アウトソール本体に対するスタッドの剥離を抑制することができる。
さらに、第1の形態では、たとえば、スタッドが水に濡れている地面に当接する場合であっても、スタッドと当該地面との間の水が溝部に入り込んで水の膜が発生することを抑制することが可能となる。その結果、グリップ力の低下を抑制することができる。
【0009】
第
2の形態は、第
1の形態において、貫通孔および芯部の各々は、互いに接する界面が断面視で曲線状となるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
この第
2の形態では、貫通孔と芯部との界面において応力が局所的に集中しないように構成されている。このため、例えば接地時にスタッドに対して大きな外力が作用した場合であっても、貫通孔と芯部との界面を起点とする破壊が生じにくくなる。その結果、アウトソール構造の耐久性を高めることができる。
【0011】
第
3の形態は、第1または第2の形態において、スタッドは、その外周寄りの上端部がアウトソール本体の下面と上下方向に対向した状態で面接合されていることを特徴とする。
【0012】
この第
3の形態では、スタッドの外周寄りの位置においてもスタッドがアウトソール本体2から剥離しないようにすることができる。
【0013】
第
4の形態は、第1〜
3の形態のいずれか1つのアウトソール構造を製造するための製造方法であって、アウトソール本体およびスタッドは、インジェクション成形により一体成形されることを特徴とする。
【0014】
この第
4の形態では、アウトソール本体に対するスタッドの剥離を抑制したアウトソール構造を安定的に得ることができる。
【0015】
第
5の形態は、第1〜
3の形態のいずれか1つのアウトソール構造を備えたクリーツシューズであることを特徴とする。
【0016】
この第6の形態では、アウトソール本体と一体形成されたスタッドにより地面に対するグリップ力を高めかつ接地時の安定性を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によると、アウトソール本体に対するスタッドの剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るアウトソール構造を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、アウトソール構造を示す平面図である。
【
図3】
図3は、アウトソール構造を外甲側から見て示す側面図である。
【
図4】
図4は、アウトソール構造を示す底面図である。
【
図6】
図6は、
図5のアウトソール本体のみの構成を示す部分拡大断面図である。
【
図7】
図7は、
図5のスタッドのみの構成を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
図1〜
図4は、本発明の実施形態に係るアウトソール構造1およびそれを備えたシューズSの全体を示している。このシューズSは、例えばサッカー、ラグビー、アメリカンフットボール、野球などの瞬発的な動作が要求されるスポーツに用いられるクリーツシューズである。
【0021】
ここで、シューズSは、左足用シューズのみを例示している。右足用シューズは、左足用シューズと左右対称になるように構成されている。以下の説明では、左足用シューズのみについて説明し、右足用シューズの説明は省略する。
【0022】
また、以下の説明において、上方(上側)および下方(下側)とはシューズSの上下方向の位置関係を表し、前方(前側)および後方(後側)とはシューズSの前後方向の位置関係を表し、内甲側および外甲側とはシューズSの足幅方向の位置関係を表すものとする。さらに、
図5〜
図7において、後述するスタッド10の接地面11の面方向に沿う方向をX方向とし、X方向に直交する方向(すなわち上下方向)をY方向として定めるものとする。
【0023】
(アウトソール本体)
図1および
図2に示すように、アウトソール構造1は、アウトソール本体2を備えている。アウトソール本体2は、例えばナイロン系エラストマーなどの比較的硬質な樹脂材からなり、薄肉のプレート状に形成されている。すなわち、アウトソール本体2は、薄肉に形成されているため、外力を受けることによって適度に変形可能に構成されている。なお、アウトソール本体2の周縁部には、図示しないアッパーが固着される。
【0024】
アウトソール本体2の上面には、着用者の足裏を支持するための足裏支持面3が形成されている。足裏支持面3には、Y方向において下方に向かって凹陥した有底状の丸穴部4が形成されている。丸穴部4は、平面視で略円形状に形成されている。丸穴部4は、Y方向において後述するベース部5および芯部6と重なる位置に配置されている。
【0025】
図3〜
図6に示すように、アウトソール本体2は、ベース部5,5,…を有している。ベース部5,5,…は、後述する少なくとも1つの芯部6を支持するためのものである。ベース部5は、アウトソール本体2と同様に、ナイロン系エラストマーなどの樹脂材からなる。ベース部5は、Y方向においてアウトソール本体2から下方に向かって突出している。ベース部5は、底面視で後述するスタッド10およびその周囲を含めた所定の領域に広がるように形成されている。
【0026】
次に、
図5および
図6に示すように、アウトソール本体2は、足裏支持面3の反対側に位置する芯部6,6,…を有している。芯部6,6,…は、アウトソール本体2と同様に、ナイロン系エラストマーなどの樹脂材からなる。芯部6は、Y方向においてベース部5から下方に向かって突出している。芯部6は、後述するスタッド10の貫通孔12に保持されている。
【0027】
芯部6は、台座部7を含む。台座部7は、Y方向においてベース部5の下部から下方に向かって突出している。台座部7は、底面視で略円形状または略楕円形状に形成されている(
図4参照)。台座部7は、その外径となるX方向の幅寸法A2がベース部5の幅寸法A1よりも小さくなるように形成されている(
図6参照)。
【0028】
芯部6は、柱部8を含む。柱部8は、Y方向において、台座部7を介してアウトソール本体2から下方に向かって略円柱状に突出している。柱部8は、その外径となるX方向の幅寸法A4が台座部7の幅寸法A2よりも小さくなるように形成されている(
図6参照)。
【0029】
芯部6は、先端部9を含む。先端部9は、柱部8の下部と連続している。先端部9は、Y方向において後述するスタッド10の接地面11の近傍に位置している。具体的に、先端部9は、その下面がスタッド10の接地面11と面一となるように形成されている(
図5参照)。
【0030】
先端部9は、その最大径に相当するX方向の幅寸法A3が台座部7の幅寸法A2よりも小さくかつ柱部8の幅寸法A4よりも大きくなるように形成されている(
図6参照)。すなわち、先端部9は、その最大径が柱部8よりも太くなるように構成されている。
【0031】
(スタッド)
次に、
図1に示すように、アウトソール構造1は、スタッド10,10,…を備えている。スタッド10は、接地時において地面に対するシューズSのグリップ力を高めるためのものである。スタッド10は、例えば熱可塑性ポリウレタンなどの耐摩耗性の高い樹脂材からなる。スタッド10,10,…は、インジェクション成形によりアウトソール本体2と一体成形される。
【0032】
図4に示すように、スタッド10は、アウトソール本体2の下面に分散して配置されている。各スタッド10は、Y方向においてアウトソール本体2の各丸穴部4と重なる位置に配置されている(
図1および
図5参照)。また、内甲側および外甲側の各々に位置するスタッド10,10,…は、前後方向に間隔をあけて配置されている。
【0033】
図3および
図4に示すように、スタッド10は、上下方向に延びる円筒状または楕円筒状に形成されている。そして、
図5および
図7に示すように、スタッド10は、接地面11および貫通孔12を有している。接地面11は、スタッド10の下端部が地面と接地するように形成されている。貫通孔12は、接地面11から上方に向かって貫通形成されている。貫通孔12は、第1および第2壁部13,14を含んでいる。
【0034】
図5および
図7に示すように、第1壁部13は、Y方向において接地面11の近傍に位置している。また、第1壁部13は、X方向において互いに対向する壁面同士の間隔B1が接地面11から上方に向かって徐々に狭まるように形成されている。
【0035】
第2壁部14は、Y方向において第1壁部13よりも上方に位置しかつ第1壁部13の上部と連続している。そして、第2壁部14は、X方向において互いに対向する壁面同士の間隔B2が第1壁部13における壁面同士の間隔B1よりも小さくなるように形成されている。
【0036】
また、スタッド10には、外周寄りの上端部10aから下方に向かって凹陥形成された上側凹部15が設けられている。上側凹部15は、平面視で例えば略円形状に形成されている。上側凹部15は、X方向において互いに対向する内壁面同士の間隔が第1壁部13における壁面同士の間隔B1よりも大きくなるように形成されている。そして、
図5に示すように、スタッド10は、外周寄りの上端部10aがアウトソール本体2(ベース部5)と上下方向に対向した状態で面接合されている。
【0037】
本発明の特徴として、
図5に示すように、スタッド10は、芯部6が貫通孔12に保持された状態でアウトソール本体2と一体形成されている。具体的に、スタッド10は、第1壁部13が芯部6の先端部9と一体形成されかつ第2壁部14が芯部6の柱部8と一体形成されるように構成されている。
【0038】
図4および
図5に示すように、第1壁部13と芯部6の先端部9との間には溝部16が設けられている。溝部16は、Y方向において接地面11から上方に向かって凹陥形成されている。また、溝部16は、底面視で第1壁部13の周方向に沿って延びている。
【0039】
図5に示すように、貫通孔12および芯部6は、断面視で互いに接する界面が芯部6の先端部9から台座部7に亘って緩やかな曲線状となるように構成されている。
【0040】
(アウトソール構造の製造方法)
次に、アウトソール構造1の製造方法を説明する。この製造方法は、主にインサート工程および成形工程を有している。
【0041】
まず、上記インサート工程として、スタッド10,10,…を図示しない金型装置内における所定の位置に設置する。
【0042】
上記インサート工程を経た後、上記成形工程として、図示しない射出成形機により加熱溶融した樹脂材(すなわち、アウトソール本体2を構成する樹脂材)を上記金型装置に充填する。このとき、上記樹脂材は、上記金型装置のゲート(図示せず)を介して上記金型装置内に設置した各スタッド10の上側凹部15から貫通孔12に向かって射出される。具体的に、上記樹脂材は、貫通孔12の第2壁部14から第1壁部13に向かって射出される。
【0043】
上記樹脂材を上記金型装置内に充填した後、上記金型装置に対して所定の冷却処理を行う。この冷却処理により、アウトソール本体2とスタッド10とが一体成形されたアウトソール構造1が得られる。
【0044】
ここで、上記金型装置では、エア抜き機構(図示せず)を、インサート工程で上記金型装置内に設置した各スタッド10における貫通孔12下側の近傍に配置するのが好ましい。これにより、上記金型装置の成形室に滞留する空気が成形工程時に各スタッド10の貫通孔12を介して上記金型装置の外部に排気される。その結果、上記樹脂材を、貫通孔12の第2壁部14から第1壁部13に向かってスムーズに流すことが可能となる。すなわち、アウトソール本体2とスタッド10,10,…とを一体成形させやすくすることができる。
【0045】
[実施形態の作用効果]
以上のように、第2壁部14は、互いに対向する壁面同士の間隔が第1壁部13における壁面同士の間隔よりも小さくなるように形成されている。そして、スタッド10は、第1壁部13が芯部6の先端部9と一体形成されかつ第2壁部14が芯部6の柱部8と一体形成されるように構成されている。これにより、先端部9および柱部8が第1および第2壁部13,14に保持された状態となり、かつ先端部9が第2壁部14から容易に抜け出ないようになる。特に、芯部6の先端部9は、スタッド10に対する抜け止めとして機能する。このため、例えば接地時にスタッド10が地面に対して深く突き刺さった場合であっても、スタッド10がアウトソール本体2から外れにくくなる。したがって、本発明の実施形態に係るアウトソール構造1では、アウトソール本体2に対するスタッド10の剥離を抑制することができる。そして、アウトソール構造1を備えたシューズSでは、アウトソール本体2と一体形成されたスタッド10により地面に対するグリップ力を高めかつ接地時の安定性を高めることができる。
【0046】
また、第1壁部13と芯部6の先端部9との間には、接地面11から上方に向かって凹陥形成されかつ第1壁部13の周方向に沿って延びる溝部16が設けられている。これにより、たとえば、スタッド10が水に濡れている地面に当接する場合であっても、スタッド10と当該地面との間の水が溝部16に入り込んで水の膜が発生することを抑制することが可能となる。その結果、グリップ力の低下を抑制することができる。
【0047】
また、貫通孔12および芯部6の各々は、互いに接する界面が断面視で曲線状となるように構成されている。すなわち、貫通孔12と芯部6との界面において応力が局所的に集中しないように構成されている。このため、例えば接地時にスタッドに対して大きな外力が作用した場合であっても、貫通孔12と芯部6との界面を起点とする破壊が生じにくくなる。その結果、アウトソール構造1の耐久性を高めることができる。
【0048】
さらに、上記界面が断面視で曲線状であることから、インジェクション成形時において、アウトソール本体2を構成する樹脂材を、各スタッド10の貫通孔12に向かってスムーズに流すことが可能となる。すなわち、アウトソール本体2とスタッド10,10,…とを一体成形させやすくすることができる。
【0049】
また、スタッド10は、外周寄りの上端部10aがアウトソール本体2(ベース部5)の下面と上下方向に対向した状態で面接合されている。これにより、スタッド10の外周寄りの位置においてもスタッド10がアウトソール本体2から剥離しないようにすることができる。
【0050】
そして、インジェクション成形によりアウトソール本体2およびスタッド10が一体成形されるため、アウトソール本体2に対するスタッド10の剥離を抑制したアウトソール構造1を安定的に得ることができる。
【0051】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、円柱状に形成された柱部8を示したが、この形態に限られない。例えば、柱部8を三角柱状または四角柱状に形成してもよい
。
【0052】
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、例えばサッカー、ラグビー、アメリカンフットボール、野球などの瞬発的な動作を要するシューズ用のアウトソール構造、それを用いたクリーツシューズ、およびアウトソール構造の製造方法として産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0054】
S:シューズ
1:アウトソール構造
2:アウトソール本体
3:足裏支持面
4:丸穴部
5:ベース部
6:芯部
7:台座部
8:柱部
9:先端部
10:スタッド
11:接地面
12:貫通孔
13:第1壁部
14:第2壁部
15:上側凹部
16:溝部