特許第6754464号(P6754464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754464
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】波長可変光フィルタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/00 20060101AFI20200831BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   G02B26/00
   B81B3/00
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-81816(P2019-81816)
(22)【出願日】2019年4月23日
(62)【分割の表示】特願2014-193779(P2014-193779)の分割
【原出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2019-124967(P2019-124967A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2019年4月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】北澤 正吾
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−008644(JP,A)
【文献】 特開2012−103604(JP,A)
【文献】 特開2012−108170(JP,A)
【文献】 特開2007−248809(JP,A)
【文献】 特開2010−204457(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0274323(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00 − 26/08
B81B 1/00 − 7/04
B81C 1/00 − 99/00
G02B 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板に対向する第2基板と、
前記第1基板に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と反射膜間ギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板及び前記第2基板を接合する接合部と
を備え、
前記第1基板は、前記第1反射膜が設けられる面とは反対側の第1荷重面において、前記接合部と重なる部分のうちの一部が、前記第1荷重面における前記第1基板の端部よりも前記第1荷重面に交わる方向に突出した第1の突出部として形成され、
前記第1の突出部は、前記第1荷重面に交わる方向で平面的に見て、前記第1反射膜を囲むように前記第1基板に形成され
前記第2基板は、前記第2反射膜が設けられる面とは反対側の第2荷重面において、前記接合部と重なる部分のうちの一部が、前記第2荷重面における前記第2基板の端部よりも前記第2荷重面に交わる方向に突出した第2の突出部として形成されている
ことを特徴とする波長可変光フィルタ。
【請求項2】
前記第1の突出部及び前記第2の突出部は、前記第1荷重面に交わる方向で平面的に見て、互いに同一の形状であることを特徴とする請求項に記載の波長可変光フィルタ。
【請求項3】
前記第1の突出部は、前記第1荷重面に交わる方向で平面的に見て、円形又は円環状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の波長可変光フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の干渉効果を利用した波長可変光フィルタ及び波長可変光フィルタの製造方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の光フィルタとして、ファブリ・ペロー干渉計の原理を利用したものが知られている。ファブリ・ペロー干渉計は、多重反射光の干渉効果を用いたシンプルな干渉計であり、対向する2枚の反射膜の間で入射光が多重反射を繰り返すことで、その光路長に応じた波長帯の光を選択的に取り出すことができる。
【0003】
特許文献1では、光学膜を有する2枚の基板を接合して構成される光フィルタが提案されている。このような構成の光フィルタでは、波長分解能を高めるために、光学膜間のギャップを高精度に制御することが要求される。具体的には、例えば2枚の基板を接合する際に、各基板を傾斜させず、平行度を確保することが重要であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−145675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている技術では、2枚の基板を貼り合わせた状態での荷重印加により、基板の接合が実現される。しかしながら、平坦基板に荷重印加しようとする場合、不要な圧力分布が生ずるおそれがある。不要な圧力分布は、例えば基板にたわみや傾きを生じさせる原因となり、結果として光フィルタの性能を低下させてしまうという技術的問題点が生ずる。
【0006】
不要な圧力分布に対しては、例えば治具等により接合装置側で対策を講じることも考えられるが、治具等に高い加工精度が求められるだけでなく、荷重印加時の治具と基板との位置合わせも容易ではない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題には上記のようなものが一例として挙げられる。本発明は、基板接合時の不要な圧力分布を低減することが可能な波長可変光フィルタ及び波長可変光フィルタの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する波長可変光フィルタは、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と反射膜間ギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板及び前記第2基板を接合する接合部とを備え、前記第1基板は、前記第1反射膜が設けられる面とは反対側の第1荷重面において、前記接合部と重なる部分のうちの一部が、前記第1荷重面における前記第1基板の端部よりも前記第1荷重面に交わる方向に突出した第1の突出部として形成され、前記第1の突出部は、前記第1荷重面に交わる方向で平面的に見て、前記第1反射膜を囲むように前記第1基板に形成され、前記第2基板は、前記第2反射膜が設けられる面とは反対側の第2荷重面において、前記接合部と重なる部分のうちの一部が、前記第2荷重面における前記第2基板の端部よりも前記第2荷重面に交わる方向に突出した第2の突出部として形成されている
【0009】
上記課題を解決する波長可変光フィルタの製造方法は、第1基板に第1反射膜を形成する第1反射膜形成工程と、第2基板に第2反射膜を形成する第2反射膜形成工程と、前記第1基板の前記第1反射膜が設けられる面とは反対側の荷重面において、前記第2基板との接合部と重なる部分の全部又は一部を、前記荷重面における他の部分よりも基板面に交わる方向に突出した突出部として形成する突出部形成工程と、前記第1基板及び前記第2基板を、前記第1反射膜と前記第2反射膜とが反射膜間ギャップを介して対向するように接合する接合工程とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例に係る波長可変光フィルタの構成を示す断面図である。
図2】実施例に係る波長可変光フィルタの上面部及び下面部の構成を示す平面図である。
図3】比較例に係る波長可変光フィルタの構成を示す断面図である。
図4】比較例に係る波長可変光フィルタの上面部及び下面部の構成を示す平面図である。
図5】比較例に係る波長可変光フィルタの接合方法を示す断面図である。
図6】比較例に係る波長可変光フィルタの接合時の圧力分布を示す平面図である。
図7】実施例に係る波長可変光フィルタの接合方法を示す断面図である。
図8】実施例に係る波長可変光フィルタのサイズ上のメリットを示す比較図である。
図9】第1変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す断面図である。
図10】第2変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す上面図及び断面図である。
図11】第3変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す上面図及び断面図である。
図12】第4変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す上面図及び断面図である。
図13】第5変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す上面図及び断面図である。
図14】第6変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す上面図及び断面図である。
図15】第7変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す断面図(その1)である。
図16】第7変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す断面図(その2)である。
図17】第7変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す断面図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1>
本実施形態に係る波長可変光フィルタは、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と反射膜間ギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板及び前記第2基板を接合する接合部とを備え、前記第1基板は、前記第1反射膜が設けられる面とは反対側の荷重面において、前記接合部と重なる部分の全部又は一部が、前記荷重面における他の部分よりも基板面に交わる方向に突出した突出部として形成されている。
【0012】
本実施形態に係る波長可変光フィルタは、第1反射膜が設けられた第1基板と、第2反射膜が設けられた第2基板とを備えて構成されている。第1反射膜及び第2反射膜は、所望の周波数帯の光に対して高い反射率を有する材料(例えば、Ag等)を含んで構成されており、スパッタリング等の手法を用いて形成される。第1基板及び第2基板は、接合部において、例えば樹脂による接着や活性化接合等により接合される。第1基板及び第2基板は、第1反射膜と第2反射膜とが、反射膜間ギャップを介して対向して配置されるように接合される。反射膜間ギャップは、取り出そうとする光の波長帯に応じて適宜設定すればよい。
【0013】
第1基板及び第2基板の接合の際には、例えば接合機による荷重印加が行われる。具体的には、重ね合わされた第1基板及び第2基板を挟みこむようにして設置された接合機によって、第1基板及び第2基板の第1反射膜及び第2反射膜が設けられる面とは反対側の荷重面に対して荷重が印加される。この際、ただ荷重を印加するだけでは、荷重面に不要な圧力分布が生ずるおそれがある。不要な圧力分布は、例えば基板にたわみや傾きを生じさせる原因となり、第1反射膜と第2反射膜との平行度が損なわれてしまう結果、光フィルタの性能を低下させてしまう。
【0014】
しかるに本実施形態では、第1基板に不要な圧力分布を低減するための突出部が形成されている。具体的には、荷重面の接合部と重なる部分の全部又は一部が、荷重面における他の部分よりも基板面に交わる方向(即ち、荷重印加方向)に突出するように形成されている。なお、ここでの「接合部と重なる部分」とは、第1基板を平面的に見て、接合部と重なる領域を意味しており、接合部への荷重に大きく寄与する部分である。
【0015】
上述した構成によれば、突出部が他の部分より相対的に荷重印加方向に押し出されている(言い換えれば、他の部分が突出部より相対的に荷重印加方向に押し下げられている)ため、荷重印加による不要な圧力分布を低減することができる。また本実施形態では特に、接合機側の調整を必要としないため、治具加工精度や治具と基板の位置合わせの精度等が要求されず、極めて容易に不要な圧力分布を低減できる。
【0016】
なお、第1基板と第2基板との間に、第3の基板を配置するような場合でも同様の効果を得ることができる。即ち、接合する基板の数が増加した場合であっても、本実施形態に係る効果は相応に得られる。
【0017】
以上説明したように、本実施形態に係る波長可変光フィルタによれば、接合時の荷重印加による基板のたわみや傾きを低減することで、品質の低下を防止することが可能である。
【0018】
<2>
本実施形態に係る波長可変光フィルタの一態様では、前記第2基板は、前記第2反射膜が設けられる面とは反対側の荷重面において、前記接合部と重なる部分の全部又は一部が、前記荷重面における他の部分よりも基板面に交わる方向に突出した突出部として形成されている。
【0019】
この態様によれば、第1基板に加えて、第2基板の荷重面にも突出部が形成されている。よって、第1基板及び第2基板の両側からの荷重印加について、不要な圧力分布を低減できる。従って、より効果的に基板のたわみや傾きを低減できる。
【0020】
<3>
上述した第2基板にも突出部が形成されている態様では、前記第1基板の突出部及び前記第2基板の突出部は、基板面に交わる方向で平面的に見て、互いに同一の形状であってもよい。
【0021】
この態様によれば、第1基板の突出部と第2基板の突出部とが同一の形状(即ち、荷重面の同一の領域が突出されている)ため、不要な圧力分布の低減を図りつつ、効率的な荷重印加を実現できる。なお、本実施形態における「同一の形状」とは、完全に形状が一致する場合だけを意味するのではなく、同一と呼べるまでに近い形状も含むものとする。即ち、第1基板の突出部と第2基板の突出部との形状が完全に同一ではなくとも、近い形状であれば、上述した本実施形態の効果は相応に発揮される。
【0022】
<4>
本実施形態に係る波長可変光フィルタの他の態様では、前記突出部は、基板面に交わる方向で平面的に見て、円形又は円環状である。
【0023】
この態様によれば、突出部が円形又は円環状であるため、基板にかかる圧力を効果的に分散することができる。従って、不要な圧力分布を効果的に低減できる。
【0024】
<5>
本実施形態に係る波長可変光フィルタの他の態様では、前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方は、前記第1反射膜又は前記第2反射膜を可動とする可動部を有しており、前記可動部は、前記突出部よりも、基板面に交わる方向に低くなるように形成されている。
【0025】
この態様によれば、第1反射膜又は第2反射膜は、可動部によって位置調整等が可能とされている。そして、可動部(具体的には、可動機構が設けられた基板部分)は、突出部よりも基板面に交わる方向に低くなるように形成されている。言い換えれば、可動部は突出部のように荷重印加方向に突出しないように形成されている。
【0026】
上述した構成によれば、荷重印加時においても、可動部には圧力は殆ど或いは全くかからない。よって、高い精度での調整等が要求される可動部が、荷重印加時の圧力によって悪影響を受けてしまうことを防止できる。また、可動部上の異物等に起因して、荷重印加時に可動部が予期せぬダメージを受けてしまうことを防止できる。
【0027】
<6>
本実施形態に係る波長可変光フィルタの他の態様では、前記第1基板及び前記第2基板は、基板面に交わる方向で平面的に見て互いに同一の形状であり、所定角度回転された状態で接合されている。
【0028】
この態様によれば、第1基板及び第2基板が同一の形状であるものの、所定角度回転された状態で接合されるため、互いにぴったりと重なるような状態では接合されず、他の部位に比べて相対的に荷重変形しやすい部位が生じる。具体的には、第1基板及び第2基板の端部や角部等であるが、第1基板及び第2基板に突出部を設けることで、前記相対的に荷重変形しやすい部位への荷重の印加を低減し、不要な圧力分布を低減できる。従って、接合時の荷重印加による基板のたわみや傾きを低減することでき、品質の低下を防止することが可能である。
【0029】
<7>
本実施形態に係る波長可変光フィルタの他の態様では、前記第1基板及び前記第2基板は、基板面に交わる方向で平面的に見て互いに異なる形状である。
【0030】
この態様によれば、第1基板及び第2基板が異なる形状であるため、互いにぴったりと重なるような状態では接合されず、他の部位に比べて相対的に荷重変形しやすい部位が生じる。具体的には、第1基板及び第2基板の端部や角部等であるが、第1基板及び第2基板に突出部を設けることで、前記相対的に荷重変形しやすい部位への荷重の印加を低減し、不要な圧力分布を低減できる。従って、接合時の荷重印加による基板のたわみや傾きを低減することでき、品質の低下を防止することが可能である。
【0031】
<8>
本実施形態に係る波長可変光フィルタの他の態様では、前記突出部の位置は、前記第1基板及び前記第2基板間の内部構造に基づいて決定されている。
【0032】
この態様によれば、第1基板及び第2基板間の内部構造に基づいて突出部の位置(言い換えれば、形状)が決定されているため、不要な圧力分布を効果的に低減することができる。具体的には、例えば内部構造を再現した事前のシミュレーション等により、圧力のかかりやすい場所、かかりにくい場所等を判別すれば、内部構造に応じた最適な荷重印加パターンを決定できる。そして、最適な荷重印加パターンを実現できるように突出部の位置を決定すれば、極めて効果的に不要な圧力分布を低減できる。
【0033】
<9>
本実施形態に係る波長可変光フィルタの製造方法は、第1基板に第1反射膜を形成する第1反射膜形成工程と、第2基板に第2反射膜を形成する第2反射膜形成工程と、前記第1基板の前記第1反射膜が設けられる面とは反対側の荷重面において、前記第2基板との接合部と重なる部分の全部又は一部を、前記荷重面における他の部分よりも基板面に交わる方向に突出した突出部として形成する突出部形成工程と、前記第1基板及び前記第2基板を、前記第1反射膜と前記第2反射膜とが反射膜間ギャップを介して対向するように接合する接合工程とを備える。
【0034】
本実施形態に係る波長可変光フィルタの製造方法によれば、上述した波長可変光フィルタと同様に、第1基板に突出部を設けることで、荷重印加時の不要な圧力分布を低減できる。従って、接合時の荷重印加による基板のたわみや傾きが低減され、品質の低下を防止することが可能である。
【0035】
本実施形態の各工程が実行される順序は特に限定されるものではなく、各工程は相前後して或いは並行して実行されてもよい。よって、例えば第1反射膜形成工程及び第2反射膜形成工程が実行される前に、突出部形成工程が実行されても構わない。
【0036】
なお、本実施形態に係る波長可変光フィルタの製造方法においても、上述した本実施形態に係る波長可変光フィルタにおける各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0037】
<10>
本実施形態に係る波長可変光フィルタの製造方法の一態様では、前記突出部形成工程では、前記第1基板がエッチングされることにより前記突出部が形成される。
【0038】
この態様によれば、エッチングにより基板表面を加工することで、所望の形状の突出部を比較的容易に形成できる。
【0039】
<11>
本実施形態に係る波長可変光フィルタの製造方法の他の態様では、前記突出部形成工程では、前記第1基板に感光性樹脂材料を一体成型することで前記突出部が形成される。
【0040】
この態様によれば、感光性樹脂材料の一体成型により、基板表面を直接加工することなく突出部を形成できる。
【0041】
本実施形態に係る波長可変光フィルタ及び波長可変光フィルタの製造方法の作用及び他の利得については、以下に示す実施例において、より詳細に説明する。
【実施例】
【0042】
以下では、図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。
【0043】
<装置構成>
初めに、実施例に係る波長可変光フィルタの装置構成について、図1から図4を参照して説明する。ここに図1は、実施例に係る波長可変光フィルタの構成を示す断面図であり、図2は、実施例に係る波長可変光フィルタの上面部及び下面部の構成を示す平面図である。また図3は、比較例に係る波長可変光フィルタの構成を示す断面図であり、図4は、比較例に係る波長可変光フィルタの上面部及び下面部の構成を示す平面図である。
【0044】
図1及び図2において、本実施例に係る波長可変光フィルタ10は、第1基板100と、第2基板200とを備えて構成されている。
【0045】
第1基板100は、可動部110を有している。可動部110は、その周辺に位置するメンブレン部120によって支持されている。可動部110の第2基板200側には、第1反射膜130及び第1駆動電極140が設けられている。また、本実施例では特に、第1基板100の荷重面におけるメンブレン部120の周囲に、第1基板の突出部150が設けられている。
【0046】
第2基板200は、接合部400において第1基板100と接合されている。第2基板200の可動部100と対向する位置には、第2反射膜210及び第2駆動電極220が設けられている。また、第1基板100と同様に、第2基板200の荷重面には第2基板の突出部230が設けられている。
【0047】
第1反射膜130及び第2反射膜210は、例えばAg(銀)等の反射率の高い材料を含んで構成されており、例えばスパッタリング等の手法を用いて第1基板100及び第2基板200上に形成される。第1反射膜130及び第2反射膜210は、所定のギャップGを隔てて互いに対向するように配置されている。なお、ギャップGは、波長可変光フィルタの対象となる光の波長帯に応じて適宜設定すればよい。
【0048】
第1駆動電極140及び下側電極220は、電圧を印加することにより静電アクチュエータとして機能する。よって、第1駆動電極140及び下側電極220に印加する電力を変化させることで、第1反射膜130及び第2反射膜210間のギャップGを微調整することができる。
【0049】
第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230は、荷重面の他の部分(具体的には、基板の4角周辺部分)よりも突出した構造となっている。以下では、第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230を有しない比較例を用いて、第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230の構成をより詳細に説明する。
【0050】
図3及び図4において、比較例に係る波長可変光フィルタ20では、第1基板100及び第2基板200の荷重面は、メンブレン部120を除き平面とされている。即ち、第1基板100の高さは、メンブレン部120以外はどこも同じである。また、第2基板200にはメンブレン部120が存在しないため、第2基板200の高さはどこも同じである。
【0051】
図1及び図2に戻り、本実施例に係る波長可変光フィルタ10は、上述した比較例と比べると、基板の4角周辺の高さが低くなるように構成されている。言い換えれば、基板の中心付近の高さが、基板の4角周辺の高さよりも高くなるように構成されている。このように、本実施例に係る波長可変光フィルタ10は、第1基板100及び第2基板200に、第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230を設けることで、荷重面の一部が、他部と比べて突出するように構成されている。
【0052】
なお、第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230は、例えば第1基板100及び第2基板200の表面をエッチング等により加工することで形成することができる。或いは、感光性樹脂材料を第1基板100及び第2基板200と一体的に成型することで形成してもよい。
【0053】
<接合時の問題点>
次に、比較例に係る波長可変光フィルタの接合方法及び接合時に発生し得る問題点について、図5及び図6を参照して説明する。ここに図5は、比較例に係る波長可変光フィルタの接合方法を示す断面図である。また図6は、比較例に係る波長可変光フィルタの接合時の圧力分布を示す平面図である。
【0054】
図5において、一般的な波長可変光フィルタの製造時には、第1基板100と第2基板200とが、接合部400において重ね合わされた状態で、接合機500による荷重印加が行われる。この際、第1基板100及び第2基板200には、第1反射膜130及び第2反射膜210の平行度を維持するためにも均等に圧力がかかることが望ましい。しかしながら、比較例に係る波長可変光フィルタ20のような基板形状では、圧力を均等にかけることは極めて難しく、圧力が集中してかかる部分(図中の破線で囲んだ部分)が多少なりとも生じてしまう。不要な圧力分布は、基板にたわみや傾きを生じさせる原因となり、結果として光フィルタとしての性能を低下させてしまう。
【0055】
図6に示すように、本願発明者の研究するところによれば、荷重印加時の圧力は基板の4角周辺に集中してかかる傾向があることが判明している。本実施例では、このような不要な圧力分布を低減するために、第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230を設けている。
【0056】
<本実施例の効果>
次に、実施例に係る波長可変光フィルタにより発揮される効果について、図7及び図8を参照して説明する。ここに図7は、実施例に係る波長可変光フィルタの接合方法を示す断面図である。また図8は、実施例に係る波長可変光フィルタのサイズ上のメリットを示す比較図である。
【0057】
図7において、本実施例に係る波長可変光フィルタ10によれば、荷重印加時には主に第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230に対応する部分(即ち、図中の破線で囲んだ部分に)圧力がかかる。即ち、本実施例は、基板の4角周辺に圧力がかかり易い比較例と比べて、基板の4角周辺に圧力がかかり難い構造となっている。これにより、荷重印加時の不要な圧力分布を低減できる。よって、基板のたわみや傾きに起因して、第1反射膜130及び第2反射膜210の平行度が維持できなくなる状況を回避できる。
【0058】
なお、不要な圧力分布を低減するための方法としては、接合機500側の構成を変更することも考えられる。具体的には、例えば接合機500の荷重印加面を凸型にするような例が考えられる。しかしながら、接合機500側の構成を変更する場合、接合機500に高い加工精度が求められるだけでなく、接合機500と基板との位置合わせが非常に難しくなるという技術的問題点が生ずる。本実施例は、このような不都合を回避しつつ、好適に不要な圧力分布を回避できるという効果を有している。
【0059】
図8において、不要な圧力分布を低減するための他の方法として、例えば基板全体の形状を円形にする方法(図中の第2比較例参照)も考えられる。しかしながら、基板全体を円形にしようとすると、図を見ても分かるように、基板のサイズが大型化してしまう。このように本実施例は、基板(ひいては接合後の素子)の小型化においても有利であるという効果を有している。
【0060】
<変形例>
次に、実施例に係る波長可変光フィルタの変形例について、図9から図17を参照して説明する。ここに図9は、第1変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す断面図であり、図10は、第2変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す上面図及び断面図である。また図11は、第3変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す上面図及び断面図であり、図12は、第4変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す上面図及び断面図である。更に図13は、第5変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す上面図及び断面図であり、図14は、第6変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す上面図及び断面図である。図15から図17は夫々、第7変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す断面図である。
【0061】
図9において、第1変形例に係る波長可変光フィルタでは、第1基板100における可動部110の高さが、第1基板の突出部150よりも低くなるように構成されている。このように構成すれば、可動部110上に異物が存在しているような場合であっても、荷重印加によって可動部110がダメージを受けてしまうことを防止できる。
【0062】
図10において、第2変形例に係る波長可変光フィルタでは、同一の形状である第1基板100及び第2基板200が所定角度(例えば45度)回転された状態で接合される。接合する際に第1基板100及び第2基板200が重なり合わず、他の部位に比べて相対的に荷重変形しやすい部位(即ち、図中の丸で囲んだ部分)が生じるが、本構成によれば、相対的に荷重変形しやすい部位に印加される荷重を低減し、不要な圧力分布を低減できる。 図11において、第3変形例に係る波長可変光フィルタでは、互いに異なる形状である第1基板100及び第2基板200が接合される。接合する際に第1基板100及び第2基板200が重なり合わず、他の部位に比べて相対的に荷重変形しやすい部位(即ち、図中の丸で囲んだ部分)が生じるが、本構成によれば、第2変形例と同様に、相対的に荷重変形しやすい部位に印加される荷重を低減し、不要な圧力分布を低減できる。
【0063】
図12において、第4変形例に係る波長可変光フィルタでは、内部構造に応じて第1基板の突出部150の形状が決定されている。内部構造によって、予め圧力がかかり易い或いはかかり難い場所が分かっている場合には、最適な荷重印加パターンを実現できるように第1基板の突出部150の形状を決定し、より好適に不要な圧力分布を低減させることができる。
【0064】
図13において、第5変形例に係る波長可変光フィルタでは、第2基板200に第2基板の突出部230が設けられているのみで、第1基板100には第1基板の突出部150は設けられていない。このように、いずれか一方の基板にのみ突出部を設ける場合であっても、上述した本実施例の効果は相応に発揮される。
【0065】
図14において、第6変形例に係る波長可変光フィルタでは、第1基板100と第2基板200との間に第3の基板300が配置されている。このように、3枚以上の基板を荷重印加によって接合する場合であっても、第1基板100及び第2基板200の荷重面に第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230を設ければ、上述した本実施例の効果は相応に発揮される。
【0066】
図15から図17において、第7変形例に係る波長可変光フィルタでは、第1基板の突出部150の形状と、第2基板の突出部230の形状が同一とされている。即ち、第1基板100及び第2基板200の同一部分(即ち、重なり合う領域)が突出するように構成されている。このように構成すれば、荷重印加時において、より好適に圧力をかけることができる。
【0067】
なお、図15に示す例では、第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230の大きさと、接合部400の大きさとがイコールになっている。また、図16に示す例では、第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230の大きさが、接合部400の大きさより小さくなっている。図17に示す例では、第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230の大きさが、接合部400の大きさより大きくなっている。これらいずれの場合であっても、上述した本実施例の効果は相応に発揮される。
【0068】
以上説明したように、実施例に係る波長可変光フィルタによれば、荷重面の一部を突出させることにより、荷重印加時の不要な圧力分布を低減することができる。従って、基板のたわみや傾きに起因する品質の低下を好適に防止できる。
【0069】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う波長可変光フィルタ及び波長可変光フィルタの製造方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
10 波長可変光フィルタ
100 第1基板
110 可動部
120 メンブレン部
130 第1反射膜
140 第1駆動電極
150 第1基板の突出部
200 第2基板
210 第2反射膜
220 第2駆動電極
230 第2基板の突出部
300 第3の基板
400 接合部
500 接合機
600 異物
G ギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17