【実施例】
【0042】
以下では、図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。
【0043】
<装置構成>
初めに、実施例に係る波長可変光フィルタの装置構成について、
図1から
図4を参照して説明する。ここに
図1は、実施例に係る波長可変光フィルタの構成を示す断面図であり、
図2は、実施例に係る波長可変光フィルタの上面部及び下面部の構成を示す平面図である。また
図3は、比較例に係る波長可変光フィルタの構成を示す断面図であり、
図4は、比較例に係る波長可変光フィルタの上面部及び下面部の構成を示す平面図である。
【0044】
図1及び
図2において、本実施例に係る波長可変光フィルタ10は、第1基板100と、第2基板200とを備えて構成されている。
【0045】
第1基板100は、可動部110を有している。可動部110は、その周辺に位置するメンブレン部120によって支持されている。可動部110の第2基板200側には、第1反射膜130及び第1駆動電極140が設けられている。また、本実施例では特に、第1基板100の荷重面におけるメンブレン部120の周囲に、第1基板の突出部150が設けられている。
【0046】
第2基板200は、接合部400において第1基板100と接合されている。第2基板200の可動部100と対向する位置には、第2反射膜210及び第2駆動電極220が設けられている。また、第1基板100と同様に、第2基板200の荷重面には第2基板の突出部230が設けられている。
【0047】
第1反射膜130及び第2反射膜210は、例えばAg(銀)等の反射率の高い材料を含んで構成されており、例えばスパッタリング等の手法を用いて第1基板100及び第2基板200上に形成される。第1反射膜130及び第2反射膜210は、所定のギャップGを隔てて互いに対向するように配置されている。なお、ギャップGは、波長可変光フィルタの対象となる光の波長帯に応じて適宜設定すればよい。
【0048】
第1駆動電極140及び下側電極220は、電圧を印加することにより静電アクチュエータとして機能する。よって、第1駆動電極140及び下側電極220に印加する電力を変化させることで、第1反射膜130及び第2反射膜210間のギャップGを微調整することができる。
【0049】
第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230は、荷重面の他の部分(具体的には、基板の4角周辺部分)よりも突出した構造となっている。以下では、第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230を有しない比較例を用いて、第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230の構成をより詳細に説明する。
【0050】
図3及び
図4において、比較例に係る波長可変光フィルタ20では、第1基板100及び第2基板200の荷重面は、メンブレン部120を除き平面とされている。即ち、第1基板100の高さは、メンブレン部120以外はどこも同じである。また、第2基板200にはメンブレン部120が存在しないため、第2基板200の高さはどこも同じである。
【0051】
図1及び
図2に戻り、本実施例に係る波長可変光フィルタ10は、上述した比較例と比べると、基板の4角周辺の高さが低くなるように構成されている。言い換えれば、基板の中心付近の高さが、基板の4角周辺の高さよりも高くなるように構成されている。このように、本実施例に係る波長可変光フィルタ10は、第1基板100及び第2基板200に、第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230を設けることで、荷重面の一部が、他部と比べて突出するように構成されている。
【0052】
なお、第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230は、例えば第1基板100及び第2基板200の表面をエッチング等により加工することで形成することができる。或いは、感光性樹脂材料を第1基板100及び第2基板200と一体的に成型することで形成してもよい。
【0053】
<接合時の問題点>
次に、比較例に係る波長可変光フィルタの接合方法及び接合時に発生し得る問題点について、
図5及び
図6を参照して説明する。ここに
図5は、比較例に係る波長可変光フィルタの接合方法を示す断面図である。また
図6は、比較例に係る波長可変光フィルタの接合時の圧力分布を示す平面図である。
【0054】
図5において、一般的な波長可変光フィルタの製造時には、第1基板100と第2基板200とが、接合部400において重ね合わされた状態で、接合機500による荷重印加が行われる。この際、第1基板100及び第2基板200には、第1反射膜130及び第2反射膜210の平行度を維持するためにも均等に圧力がかかることが望ましい。しかしながら、比較例に係る波長可変光フィルタ20のような基板形状では、圧力を均等にかけることは極めて難しく、圧力が集中してかかる部分(図中の破線で囲んだ部分)が多少なりとも生じてしまう。不要な圧力分布は、基板にたわみや傾きを生じさせる原因となり、結果として光フィルタとしての性能を低下させてしまう。
【0055】
図6に示すように、本願発明者の研究するところによれば、荷重印加時の圧力は基板の4角周辺に集中してかかる傾向があることが判明している。本実施例では、このような不要な圧力分布を低減するために、第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230を設けている。
【0056】
<本実施例の効果>
次に、実施例に係る波長可変光フィルタにより発揮される効果について、
図7及び
図8を参照して説明する。ここに
図7は、実施例に係る波長可変光フィルタの接合方法を示す断面図である。また
図8は、実施例に係る波長可変光フィルタのサイズ上のメリットを示す比較図である。
【0057】
図7において、本実施例に係る波長可変光フィルタ10によれば、荷重印加時には主に第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230に対応する部分(即ち、図中の破線で囲んだ部分に)圧力がかかる。即ち、本実施例は、基板の4角周辺に圧力がかかり易い比較例と比べて、基板の4角周辺に圧力がかかり難い構造となっている。これにより、荷重印加時の不要な圧力分布を低減できる。よって、基板のたわみや傾きに起因して、第1反射膜130及び第2反射膜210の平行度が維持できなくなる状況を回避できる。
【0058】
なお、不要な圧力分布を低減するための方法としては、接合機500側の構成を変更することも考えられる。具体的には、例えば接合機500の荷重印加面を凸型にするような例が考えられる。しかしながら、接合機500側の構成を変更する場合、接合機500に高い加工精度が求められるだけでなく、接合機500と基板との位置合わせが非常に難しくなるという技術的問題点が生ずる。本実施例は、このような不都合を回避しつつ、好適に不要な圧力分布を回避できるという効果を有している。
【0059】
図8において、不要な圧力分布を低減するための他の方法として、例えば基板全体の形状を円形にする方法(図中の第2比較例参照)も考えられる。しかしながら、基板全体を円形にしようとすると、図を見ても分かるように、基板のサイズが大型化してしまう。このように本実施例は、基板(ひいては接合後の素子)の小型化においても有利であるという効果を有している。
【0060】
<変形例>
次に、実施例に係る波長可変光フィルタの変形例について、
図9から
図17を参照して説明する。ここに
図9は、第1変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す断面図であり、
図10は、第2変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す上面図及び断面図である。また
図11は、第3変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す上面図及び断面図であり、
図12は、第4変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す上面図及び断面図である。更に
図13は、第5変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す上面図及び断面図であり、
図14は、第6変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す上面図及び断面図である。
図15から
図17は夫々、第7変形例に係る波長可変光フィルタの構成を示す断面図である。
【0061】
図9において、第1変形例に係る波長可変光フィルタでは、第1基板100における可動部110の高さが、第1基板の突出部150よりも低くなるように構成されている。このように構成すれば、可動部110上に異物が存在しているような場合であっても、荷重印加によって可動部110がダメージを受けてしまうことを防止できる。
【0062】
図10において、第2変形例に係る波長可変光フィルタでは、同一の形状である第1基板100及び第2基板200が所定角度(例えば45度)回転された状態で接合される。接合する際に第1基板100及び第2基板200が重なり合わず、他の部位に比べて相対的に荷重変形しやすい部位(即ち、図中の丸で囲んだ部分)が生じるが、本構成によれば、相対的に荷重変形しやすい部位に印加される荷重を低減し、不要な圧力分布を低減できる。
図11において、第3変形例に係る波長可変光フィルタでは、互いに異なる形状である第1基板100及び第2基板200が接合される。接合する際に第1基板100及び第2基板200が重なり合わず、他の部位に比べて相対的に荷重変形しやすい部位(即ち、図中の丸で囲んだ部分)が生じるが、本構成によれば、第2変形例と同様に、相対的に荷重変形しやすい部位に印加される荷重を低減し、不要な圧力分布を低減できる。
【0063】
図12において、第4変形例に係る波長可変光フィルタでは、内部構造に応じて第1基板の突出部150の形状が決定されている。内部構造によって、予め圧力がかかり易い或いはかかり難い場所が分かっている場合には、最適な荷重印加パターンを実現できるように第1基板の突出部150の形状を決定し、より好適に不要な圧力分布を低減させることができる。
【0064】
図13において、第5変形例に係る波長可変光フィルタでは、第2基板200に第2基板の突出部230が設けられているのみで、第1基板100には第1基板の突出部150は設けられていない。このように、いずれか一方の基板にのみ突出部を設ける場合であっても、上述した本実施例の効果は相応に発揮される。
【0065】
図14において、第6変形例に係る波長可変光フィルタでは、第1基板100と第2基板200との間に第3の基板300が配置されている。このように、3枚以上の基板を荷重印加によって接合する場合であっても、第1基板100及び第2基板200の荷重面に第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230を設ければ、上述した本実施例の効果は相応に発揮される。
【0066】
図15から
図17において、第7変形例に係る波長可変光フィルタでは、第1基板の突出部150の形状と、第2基板の突出部230の形状が同一とされている。即ち、第1基板100及び第2基板200の同一部分(即ち、重なり合う領域)が突出するように構成されている。このように構成すれば、荷重印加時において、より好適に圧力をかけることができる。
【0067】
なお、
図15に示す例では、第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230の大きさと、接合部400の大きさとがイコールになっている。また、
図16に示す例では、第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230の大きさが、接合部400の大きさより小さくなっている。
図17に示す例では、第1基板の突出部150及び第2基板の突出部230の大きさが、接合部400の大きさより大きくなっている。これらいずれの場合であっても、上述した本実施例の効果は相応に発揮される。
【0068】
以上説明したように、実施例に係る波長可変光フィルタによれば、荷重面の一部を突出させることにより、荷重印加時の不要な圧力分布を低減することができる。従って、基板のたわみや傾きに起因する品質の低下を好適に防止できる。
【0069】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う波長可変光フィルタ及び波長可変光フィルタの製造方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。