特許第6754472号(P6754472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754472
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】車両の情報表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/14 20200101AFI20200831BHJP
   B60R 1/00 20060101ALI20200831BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20200831BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20200831BHJP
【FI】
   B60W50/14
   B60R1/00 A
   B60R11/02 C
   B60W30/08
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-111341(P2019-111341)
(22)【出願日】2019年6月14日
(62)【分割の表示】特願2017-188792(P2017-188792)の分割
【原出願日】2017年9月28日
(65)【公開番号】特開2019-194079(P2019-194079A)
(43)【公開日】2019年11月7日
【審査請求日】2019年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真壁 俊介
【審査官】 平井 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−167758(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/061183(WO,A1)
【文献】 特開平11−257992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−10/30
B60W 30/00−60/00
B60K 35/00−37/06
B60R 1/00− 1/04
B60R 1/08− 1/12
B60R 9/00−11/06
G08G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺状況の情報を取得する周辺情報取得装置と、
周辺状況およびそれに応じた前記車両の進路または走行の内容を表示可能な表示装置と、
前記車両を自動運転により制御する自動運転制御部と、
を有し、
前記自動運転制御部は、
周辺状況に応じて前記車両の自動運転の進路および走行制御のシナリオを生成し、生成したシナリオに基づいて前記車両の進路および走行を制御し、
前記表示装置は、
前記自動運転制御部により生成された前記走行制御のシナリオに対して、前記車両の自動運転による進路または走行制御の内容およびその原因の周辺状況を統合的に表す複数のアイコンを、乗員の視界に対して進行順に並べて選択可能に表示し、
前記アイコンが選択された場合、前記車両の自動運転による進路または走行制御の内容およびその原因の周辺状況についての詳細情報を表示し、
前記乗員の視界に対して進行順に並べて表示している状態において、表示されている前記アイコンの間に、新たなアイコンを表示可能である、
車両の情報表示装置。
【請求項2】
車両の周辺状況の情報を取得する周辺情報取得装置と、
周辺状況およびそれに応じた前記車両の進路または走行の内容を表示可能な表示装置と、
前記車両を自動運転により制御する自動運転制御部と、
前記車両の現在位置から前記車両の自動運転による進路または走行制御の内容およびその原因の周辺状況を統合的に表すアイコンに対応付けられた周辺状況が生じている地点または区間までの距離的な間隔または時間的な間隔を取得する間隔取得部と、
を有し、
前記自動運転制御部は、
周辺状況に応じて前記車両の自動運転の進路および走行制御のシナリオを生成し、生成したシナリオに基づいて前記車両の進路および走行を制御し、
前記表示装置は、
前記自動運転制御部により生成された前記走行制御のシナリオに対して、複数の前記アイコンを、乗員の視界に対して進行順に並べて選択可能に表示し、
前記アイコンが選択された場合、前記車両の自動運転による進路または走行制御の内容およびその原因の周辺状況についての詳細情報を表示し、
取得された前記間隔が閾値以上である場合のみ、前記アイコンの選択操作に応じて詳細情報を表示する、
車両の情報表示装置。
【請求項3】
車両の周辺状況の情報を取得する周辺情報取得装置と、
周辺状況およびそれに応じた前記車両の進路または走行の内容を表示可能な表示装置と、
前記車両を自動運転により制御する自動運転制御部と、
を有し、
前記自動運転制御部は、
周辺状況に応じて前記車両の自動運転の進路および走行制御のシナリオを生成し、生成したシナリオに基づいて前記車両の進路および走行を制御し、
前記表示装置は、
前記自動運転制御部により生成された前記走行制御のシナリオに対して、前記車両の自動運転による進路または走行制御の内容およびその原因の周辺状況を統合的に表す複数のアイコンを、乗員の視界に対して進行順に並べて選択可能に表示し、
前記アイコンが選択された場合、前記車両の自動運転による進路または走行制御の内容およびその原因の周辺状況についての詳細情報を表示し、
前記自動運転制御部により生成された複数の自動運転の進路を、各々を表す複数の前記アイコンにより、乗員の視界に対して進行順に並べて配置し、
前記車両の現在位置までの距離的な間隔または時間的な間隔が閾値以上である前記アイコンについてのみ、前記アイコンの選択操作に応じて詳細情報を表示する、
車両の情報表示装置。
【請求項4】
車両の周辺状況の情報を取得する周辺情報取得装置と、
周辺状況およびそれに応じた前記車両の進路または走行の内容を表示可能な表示装置と、
前記車両を自動運転により制御する自動運転制御部と、
を有し、
前記自動運転制御部は、
周辺状況に応じて前記車両の自動運転の進路および走行制御のシナリオを生成し、生成したシナリオに基づいて前記車両の進路および走行を制御し、
前記表示装置は、
前記自動運転制御部により生成された前記走行制御のシナリオに対して、前記車両の自動運転による進路または走行制御の内容およびその原因の周辺状況を統合的に表す複数のアイコンを、乗員の視界に対して進行順に並べて選択可能に表示し、
前記アイコンが選択された場合、前記車両の自動運転による進路または走行制御の内容およびその原因の周辺状況についての詳細情報を表示し、
今後の自動運転の進路とともに、過去の自動運転の進路についての、各々を表す複数の前記アイコンにより、乗員の視界に対して進行順に並べて配置し、
過去の自動運転の進路の前記アイコンについては、前記アイコンの選択操作に応じて詳細情報を表示する、
車両の情報表示装置。
【請求項5】
前記周辺状況には、前記車両の進路または走行の内容の原因となった障害物または回避対象物が含まれる、
請求項1からのいずれか一項記載の車両の情報表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において情報を表示する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、近年、表示装置を有する。そして、特許文献1では、遠方の視認が容易でない障害物を、表示装置に拡大表示する。
この他にも、表示装置には、自動車の案内経路、その他の情報を表示することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−071790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように情報の種類や数が増えた場合、表示装置には、それらの情報をすべて表示し切れない可能性がある。
特に、自動車が自動運転により走行するようになった場合、自動運転による進路、走行制御の内容、進路の周辺に存在する障害物や移動体などの阻害要因などについても表示して、自動車に乗車した乗員に対して示す必要が生じてくるものと考えられる。これにより、乗員は、自動運転による自動車の動きを把握し、その理由を理解することができる。
【0005】
このように、車両では、乗員に示す情報を整理して表示することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の情報表示装置は、車両の周辺状況の情報を取得する周辺情報取得装置と、周辺状況およびそれに応じた前記車両の進路または走行の内容を表示可能な表示装置と、前記車両を自動運転により制御する自動運転制御部と、を有し、前記自動運転制御部は、周辺状況に応じて前記車両の自動運転の進路および走行制御のシナリオを生成し、生成したシナリオに基づいて前記車両の進路および走行を制御し、前記表示装置は、前記自動運転制御部により生成された前記走行制御のシナリオに対して、前記車両の自動運転による進路または走行制御の内容およびその原因の周辺状況を統合的に表す複数のアイコンを、乗員の視界に対して進行順に並べて選択可能に表示し、前記アイコンが選択された場合、前記車両の自動運転による進路または走行制御の内容およびその原因の周辺状況についての詳細情報を表示し、前記乗員の視界に対して進行順に並べて表示している状態において、表示されている前記アイコンの間に、新たなアイコンを表示可能である。
【0007】
好適には、前記表示装置は、前記乗員の視界に対して進行順に並べて表示している状態において、表示されている前記アイコンの間に、新たなアイコンを表示可能である、とよい。
【0008】
好適には、前記車両の現在位置から前記アイコンに対応付けられた周辺状況が生じている地点または区間までの距離的な間隔または時間的な間隔を取得する間隔取得部、を有し、前記表示装置は、取得された前記間隔が閾値以上である場合のみ、前記アイコンの選択操作に応じて詳細情報を表示する、とよい。
【0009】
好適には、前記表示装置は、前記自動運転制御部により生成された複数の自動運転の進路を、各々を表す複数の前記アイコンにより、乗員の視界に対して進行順に並べて配置し、前記車両の現在位置までの距離的な間隔または時間的な間隔が閾値以上である前記アイコンについてのみ、前記アイコンの選択操作に応じて詳細情報を表示する、とよい。
【0010】
好適には、前記表示装置は、今後の自動運転の進路とともに、過去の自動運転の進路についての、各々を表す複数の前記アイコンにより、乗員の視界に対して進行順に並べて配置し、過去の自動運転の進路の前記アイコンについては、前記アイコンの選択操作に応じて詳細情報を表示する、とよい。
【0011】
好適には、前記周辺状況には、前記車両の進路または走行の内容の原因となった障害物または回避対象物が含まれる、とよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明において、表示装置は、車両の進路または走行の内容およびその原因の周辺状況を統合的に表すアイコンを選択可能に表示し、アイコンが選択された場合、車両の進路または走行の内容およびその原因の周辺状況についての詳細情報を表示する。周辺状況には、たとえば車両の進路または走行の内容の原因となった障害物または回避対象物が含まれてよい。
よって、乗員は、状況を総合的に示すアイコンにより車両の動きを全体的に把握することができる。
しかも、アイコンを選択操作することにより、選択された車両の進路または走行の内容およびその原因の周辺状況についての詳細情報が表示されるので、車両の動きの内容およびその原因についても必要に応じて把握することができる。
このように車両の動きなどの複数の情報をグループ化して1つのアイコンで表示することにより、乗員に周辺状況および車両の動きを正確に理解させることができる。
乗員は、たとえば自動運転による車両の動きについて瞬時的に理解して把握することができる。
【0013】
特に、車両の現在位置からアイコンに対応付けられた周辺状況が生じている地点または区間までの距離的な間隔または時間的な間隔が閾値以上である場合のみ、アイコンの選択操作に応じて詳細情報を表示する。
たとえば、表示装置は、自動運転制御部により生成された複数の自動運転の進路を、各々を表す複数のアイコンにより、乗員の視界に対して進行順に並べて配置し、車両の現在位置までの距離的な間隔または時間的な間隔が閾値以上であるアイコンについてのみ、アイコンの選択操作に応じて詳細情報を表示する。
これにより、車両の近くの周辺状況などについては、直視により直接的に確認ができるものであり、そのように仕向けることができる。詳細情報が表示されるまでの遅れ時間が、乗員の理解と把握に対して影響を与えないようにできる。
しかも、乗員は、直視により近くの周辺状況を確認して把握するので、近くの周辺状況を誤って理解して認識してしまうこともなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る自動車および走行する道路の一例の模式的な説明図である。
図2図2は、図1の自動車に搭載される情報表示装置の構成の説明図である。
図3図3は、図2の自動運転制御部による処理の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、図2の表示制御部による処理の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、図1の周辺状況における情報表示の遷移状態の説明図である。
図6図6は、図5の情報表示の遷移状態の第1変形例を示す説明図である。
図7図7は、図5の情報表示の遷移状態の第2変形例を示す説明図である。
図8図8は、過去の進路に対応するアイコンを併せて表示する変形例に係る情報表示の遷移状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車1および走行する道路の一例の模式的な説明図である。
図1では、自動車1が進行している道路沿いに、他の自動車51が停車している。
この場合、自動車1は、自動運転による制御などにより、図1に破断矢線で示すように、他の自動車51をよけるように操舵されて少し道路の中央へ寄って進行し、その後元の車線内へ戻るように操舵されてさらに進行するように、進路が制御される。
また、図1では、停車している他の自動車51の奥側に、歩行者52が存在する。歩行者52は、車道へ進行する可能性がある。また、反対車線では、対向車53が逆向きに走行している。
【0017】
ところで、最近の自動車1は後述するように表示装置14を有し、この表示装置14にたとえば自動車1の案内経路といった各種の情報を表示している。
そして、自動車1が自動運転により走行するようになった場合、表示装置14には、自動運転による進路、走行制御の内容、進路の周辺に存在する障害物や移動体といった阻害要因などについて、表示させることが考えられる。これにより、乗員は、自動運転による自動車1の動きを把握し、その理由を理解することができる。
しかしながら、このように表示装置14に表示する情報の種類や数が増えた場合、それらの情報のすべてを表示装置14に表示させることができない可能性がある。仮に多数の情報を表示装置14に表示し得たとしても、乗員が表示された内容のすべてを即座に把握して正しく理解できるとは限らない。乗員の理解力は、年齢や体調などによっても変わる。
このように、自動車1では、乗員に示す情報を整理して表示することが求められている。乗員が情報を理解することを助けることが求められている。
【0018】
図2は、図1の自動車1に搭載される情報表示装置10の構成の説明図である。
図2の情報表示装置10は、車外カメラ11、通信装置12、タイマ13、表示装置14、およびこれらが接続されるマイクロコンピュータ15、を有する。
また、図2には、自動制御のためにマイクロコンピュータ15に接続された操舵装置16、制動装置17、および駆動装置18が併せて図示されている。
マイクロコンピュータ15は、たとえばECU(Electric Control Unit)として自動車1に設けられるものでよい。マイクロコンピュータ15は、たとえば図示外の記憶部に記憶されたプログラムを読み込んで実行する。これにより、マイクロコンピュータ15には、自動運転制御部21、表示制御部22、が実現される。
【0019】
車外カメラ11は、自動車1の前方などの周囲を撮像するカメラである。車外の撮像画像には、自動車1が走行する道路などの周辺状況の情報を画像により取得し得る。撮像画像には、たとえば進路上の障害物などの回避対象物が、周辺状況として捉えられ得る。
【0020】
通信装置12は、自動車1の外の通信機器と通信するものである。このような通信機器としては、他の自動車51、対向車53などに設けられた通信機器がある。この場合、自動車1と自動車1との間で通信することになる。この他にもたとえば、通信装置12は、商用無線通信網の基地局などと通信してもよい。これにより、通信装置12は、自動車1の周辺状況の情報を取得し得る。
【0021】
タイマ13は、時間を計測する。タイマ13は、制御に使用するタイミングなどを計測できる。
【0022】
操舵装置16は、乗員によるハンドル操作などに基づいて、自動車1のタイヤの向きを制御し、自動車1の進行方向を制御する。
【0023】
制動装置17は、乗員によるブレーキ操作などに基づいて、自動車1を減速または停止させる。
【0024】
駆動装置18は、乗員によるアクセル操作などに基づいて、自動車1を加速させる。
【0025】
自動運転制御部21は、自動車1の走行を自動運転により制御する。たとえば周辺状況に応じて前記自動車1の自動運転の進路および走行制御のシナリオを生成し、生成したシナリオに基づいて自動車1の進路および走行を制御する。自動運転制御部21は、操舵装置16、制動装置17および駆動装置18を制御して、自動車1を目的地まで走行させる。
【0026】
表示装置14は、乗員に対して画像を表示するものである。本実施形態では、乗員の視野に対して画像を表示する。このような表示装置14としては、たとえば、乗員に装着するヘッドマウントディスプレイ装置、フロントガラスに映像を投影するプロジェクタ装置、がある。
そして、本実施形態では、表示装置14は、周辺状況、それに応じた自動車1の自動運転の進路および走行制御の内容を、乗員の視界内に外景と重ねて表示する。
【0027】
表示制御部22は、表示装置14の表示を制御する。表示装置14に各種の情報を表示させる。
【0028】
図3は、図2の自動運転制御部21による処理の一例を示すフローチャートである。
自動運転制御部21は、自動車1の走行中に図3の処理を繰り返し実行する。
【0029】
図3の自動運転制御において、自動運転制御部21は、まず、自動運転の要否を判断する(ステップST1)。自動運転が不要である場合、図3の処理を終了する。
自動運転が必要である場合、自動運転制御部21は、自動車1の走行環境の情報を得るために、周辺情報を取得する(ステップST2)。
たとえば自動運転制御部21は、車外カメラ11から撮像画像を取得する。また、通信装置12を用いて対向車53などから周辺情報を取得する。
【0030】
周辺情報を取得した後、自動運転制御部21は、周辺状況に応じて、自動車1の自動運転の進路および走行制御の区間シナリオを生成する(ステップST3)。
なお、自動運転の変更を必要とするような周辺状況の変化がない場合、自動運転制御部21は、前回生成した区間シナリオをそのまま用いてよい。
そして、たとえば自動車1が進行する道路上に障害物が新たに検出された場合、それを迂回して走行する走行制御の区間シナリオを生成する。区間シナリオには、迂回のための操舵制御、必要な減速制御、元の進路へ戻るための操舵制御が含まれる。
また、歩行者52の飛び出しなどの可能性が新たに予想された場合、飛び出し予想位置の手前で停車する区間シナリオを生成する。区間シナリオには、適切に停車する減速制御、必要な操舵制御が含まれる。
これにより、自動運転の区間シナリオは、最新の自動車1の周辺状況に応じて生成され、適宜更新される。
なお、区間シナリオとは、たとえば目的地へ向けて自動運転している場合においてその全体の経路ではなく、たとえば数十から数百メートルの短い区間での走行制御のシーケンスおよび内容を意味する。たとえば走行状態を変化させる制御内容と、その制御の開始タイミングとにより1つのシーケンスステップが構成され、一般的に複数のシーケンスステップで区間シナリオは構成される。
また、自動運転制御部21は、一度に複数の区間シナリオを生成してよい。これにより、障害物などの外乱的な状況に対応する区間シナリオと、目的地までの案内経路に基づく区間シナリオとを別々に生成して更新することができる。
また、生成するシナリオを短い距離の移動に対応するものとすることにより、シナリオを区間毎に更新できるので、トータルの処理負荷を減らすことができる。
【0031】
区間シナリオを最新の周辺状況に応じたものへ生成または更新した後、自動運転制御部21は、その区間シナリオに基づく自動運転制御を実施する(ステップST4)。
これにより、自動車1の進路および走行状態が制御される。
【0032】
図4は、図2の表示制御部22による処理の一例を示すフローチャートである。
表示制御部22は、自動車1の走行中に図4の処理を繰り返し実行する。
【0033】
図4の情報の表示制御において、表示制御部22は、まず、自動運転中であるか否かを判断する(ステップST11)。自動運転中でない場合、図4の処理を終了する。
自動運転中である場合、表示制御部22は、さらに周辺情報を取得して、周辺状況が変化したか否かを判断する(ステップST12)。
また、表示制御部22は、自動運転の区間シナリオを取得して、自動運転の区間シナリオが追加または変更されたか否かを判断する(ステップST13)。
そして、周辺状況が変化していない場合、または自動運転の区間シナリオが追加または変更されていない場合、図4の処理を終了する。
【0034】
これに対して、周辺状況が変化して更に自動運転の区間シナリオが追加または変更されている場合、表示制御部22は、表示装置14に表示するアイコンの更新処理を実行する(ステップST14)。
表示情報の更新処理において、表示制御部22は、まず、新たな周辺状況および区間シナリオに対応するアイコンを選択し、表示装置14に表示させる。これにより、乗員の視野には、新たなアイコンが表示される。なお、複数の区間シナリオがある場合、表示制御部22は、それぞれについてアイコンを選択し、表示装置14に表示させればよい。
なお、アイコンは、それに対応する周辺状況および区間シナリオと対応付けて、マイクロコンピュータ15内のメモリに記憶されていればよい。
【0035】
表示するアイコンを更新した後、表示制御部22は、表示したアイコンに対する選択操作がなされたか否かを判断する(ステップST15)。選択操作がなされていない場合、図4の処理を終了する。
表示したアイコンに対する選択操作がなされた場合、表示制御部22は、そのアイコンに対応する区間シナリオまでの残り間隔を推定し、閾値と比較する(ステップST16)。
表示制御部22は、たとえば撮像画像を解析することにより、自動車1の現在位置からアイコンに対応付けられた周辺状況が生じている地点または区間までの距離的な間隔または時間的な間隔を取得することができる。残り間隔は、距離的な間隔であっても、時間的な間隔であってもよい。
【0036】
残り間隔が閾値以上である場合、表示制御部22は、選択されたアイコンに対応する周辺状況、自動運転による進路および区間シナリオの内容を詳細に表示させる(ステップST17)。
これにより、乗員は、表示装置14に表示された詳細情報により、自動制御の内容およびその原因について把握して理解することができる。
【0037】
残り間隔が閾値より小さい場合、表示制御部22は、図4の処理を終了する。これにより、間隔が不足する場合には、詳細情報が表示されなくなる。
【0038】
図5は、図1の周辺状況における情報表示の遷移状態の説明図である。
図5(A)では、2つのアイコン31が、乗員の視界に対して進行順に縦に並べて配置して表示されている。
下側のアイコン31は、図1の下半分の直近の自動運転の進路として、路肩に駐車している他の自動車51を避けるように少し迂回して進行することを示すアイコン31である。
上側のアイコン31は、路肩に駐車している他の自動車51を通過した後の図1の上半分の自動運転の進路として、直進的に進行することを示すアイコン31である。
この場合、自動車1は自動運転により、図1に破線で示す進路で進行することになる。
【0039】
その後、たとえば対向車53との車車間通信により取得した周辺情報により歩行者52の横断の可能性が予想されると、自動運転による進路は、図1に実線した進路へ変更される。
この場合、表示装置14は、図5(B)に示すように、下半分の直近の自動運転の進路に対応する下側のアイコン31を、歩行者52を避けるように大きく迂回して進行することを示すアイコン31へ更新する。
【0040】
そして、下側のアイコン31に対応する迂回経路までの残り間隔が閾値以上であるとすると、更新された下側のアイコン31に対する選択操作に基づいて、表示装置14は、図5(C)に示すように、大きく迂回して進行することになった要因である歩行者の像32と、実際に迂回して進行する進路33とを表示する。
【0041】
図6は、図5の情報表示の遷移状態の第1変形例を示す説明図である。
図6(A)では、図5(A)と同じ2つのアイコン31が、乗員の視界に対して進行順に縦に並べて配置して表示されている。
そして、歩行者52の横断の可能性が予想されると、図6(B)に示すように3つ目のアイコン31が、既に表示していた2つのアイコン31の間に追加される。この3つ目のアイコン31は、歩行者52を避けるように大きく迂回して進行することを示すアイコン31である。
この場合でも、追加された真ん中のアイコン31に対する選択操作に基づいて、その迂回経路までの残り間隔が閾値以上であるとすると、表示装置14は、図5(C)と同様に、大きく迂回して進行することになった要因である歩行者52と、実際に迂回して進行する進路とを表示する。
【0042】
図7は、図5の情報表示の遷移状態の第2変形例を示す説明図である。
図7の場合、表示制御部22は、案内経路以外の周辺状況に起因して生成された区間シナリオのみを表示させる。
すなわち、図5(A)に対応する状態では、図5(A)の下側のアイコン31のみを表示する。
また、図5(B)に対応する状態では、図B(A)の下側のアイコン31のみを表示する。
これにより、案内経路に基づいて生成された区間シナリオについては表示されなくなる。進路を変更させるような何らかの周辺環境が生じない限り、アイコン31は表示されなくなる。また、表示がなされる場合においても、変更された進路に対応するアイコン31のみが表示されるので、乗員は周辺環境に応じた特別な進路および自動運転の制御がなされることを、アイコン31の表示の有無により判断して把握することができる。
【0043】
以上のように、本実施形態では、表示装置14は、自動車1の自動運転の進路または走行制御の内容およびその原因の周辺状況もしくは周辺の障害要因を統合的に表すアイコン31を選択可能に表示し、アイコン31が選択された場合、自動車1の自動運転の進路または走行制御の内容およびその原因の周辺状況についての詳細情報を表示する。よって、乗員は、状況を総合的に示すアイコン31により自動車1の動きを全体的に把握することができる。しかも、アイコン31を選択操作することにより、された自動車1の自動運転の進路または走行制御の内容およびその原因の周辺状況についての詳細情報が表示されるので、自動車1の動きの内容およびその原因についても必要に応じて把握することができる。
このように自動車1の動きなどの複数の情報をグループ化して、1つのアイコン31で表示することにより、乗員によるそれらの情報の理解を助けることができる。
乗員は、たとえば自動運転による自動車1の動きについて、瞬時的に把握することができる。
【0044】
本実施形態では、自動車1の現在位置からアイコン31に対応付けられた周辺状況が生じている地点または区間までの距離的な間隔または時間的な間隔が閾値以上である場合のみ、アイコン31の選択操作に応じて詳細情報を表示する。たとえば、表示装置14は、自動運転制御部21により生成された複数の自動運転の進路を、各々を表す複数のアイコン31により、乗員の視界に対して進行順に並べて配置し、自動車1の現在位置までの距離的な間隔または時間的な間隔が閾値以上であるアイコン31についてのみ、アイコン31の選択操作に応じて詳細情報を表示する。これにより、自動車1の近くの周辺状況などについては、直視により直接的に把握させるようにすることができる。表示までの時間遅れなどが、乗員の理解に影響を与えないようにできる。しかも、乗員は、直視によりその周辺状況を確認して把握することができるので、周辺状況を全く理解できなくなってしまうようなことはない。
【0045】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0046】
図8は、過去の進路に対応するアイコン31を併せて表示する変形例に係る情報表示の遷移状態の説明図である。
図8では、表示装置14は、これから進行する自動運転の経路に対応する2つのアイコン31の下に、既に通過した直近の過去の自動運転の進路に対応するアイコン31を併せて表示している。3つのアイコン31は、乗員の視界に対して進行順に縦に並べて配置される。
また、過去の進路に対応するアイコン31に対する選択操作に基づいて、図5(C)と同様に、周辺環境および自動運転の進路ならび運転制御の情報を表示してよい。
このように、表示装置14が今後の自動運転の進路に対応するアイコン31とともに直前の過去の自動運転の進路についてのアイコン31を表示することにより、直近で起きた自動車1の動きについて自動運転により正常になされたものであることを確認することができる。
またさらに、過去の自動運転の進路のアイコン31については、常にアイコン31の選択操作に応じて詳細情報を表示するようにすることで、乗員は、直近で起きた自動車1の動きについて必要に応じて詳細な情報を表示させて、その内容を把握することができる。原因となった周辺状況についても詳しく知ることができる。
【0047】
上記実施形態および変形例では、自動運転中において情報をアイコン31により表示している。
この他にもたとえば、乗員が運転を手動操作している場合においても、情報をアイコン31により表示してもよい。
【0048】
上記実施形態および変形例では、自動車1の自動運転の進路および走行制御の内容と、その原因の周辺状況とを、それらを統合的に表すアイコン31により選択可能に表示している。
この他にもたとえば、原因の周辺状況のみを表すアイコンを選択可能に表示してもよい。このアイコンについても、たとえば自動車1の現在位置までの距離的な間隔または時間的な間隔が閾値以上である場合にのみ、選択操作に応じて詳細情報を表示してもよい。
そして、その選択操作に基づいて、原因の周辺状況とともに、自動車1の自動運転の進路および走行制御の内容を詳細表示してもよい。
また、アイコン31以外の簡易的な表示をするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…自動車(車両)、10…情報表示装置、11…車外カメラ(周辺情報取得装置)、12…通信装置(周辺情報取得装置)、13…タイマ、14…表示装置、15…マイクロコンピュータ、16…操舵装置、17…制動装置、18…駆動装置、21…自動運転制御部、22…表示制御部(間隔取得部)、31…アイコン、32…歩行者の像、33…迂回進路、51…他の自動車、52…歩行者、53…対向車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8