(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1原料が単独で存在した場合に前記第1原料が熱分解しない第1温度下で、基板に対して、前記第1原料と第1酸化剤とを供給することにより、前記基板の表面の下地上に、第1酸化膜を堆積させる工程と、
前記第1温度よりも高い第2温度下で、前記基板に対して、第2原料と第2酸化剤とを供給することにより、前記第1酸化膜上に、前記第1酸化膜よりも厚い第2酸化膜を堆積させる工程と、
を有し、
前記第1酸化膜を堆積させる工程では、
前記基板に対して前記第1原料および触媒を供給することで、第1層を形成する工程と、
前記基板に対して前記第1酸化剤および触媒を供給することで、前記第1層を酸化させて第1酸化層を形成する工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行い、
前記第2酸化膜を堆積させる工程では、
前記基板に対して前記第2原料を供給することで、第2層を形成する工程と、
前記基板に対して前記第2酸化剤として、酸素含有ガスおよび水素含有ガスを供給することで、前記第2層を酸化させて第2酸化層を形成する工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行い、
前記第2酸化層を形成する工程では、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとを反応させて原子状酸素を含む酸化種を生じさせ、前記酸化種により前記第2層を酸化させるとともに前記第1酸化膜を改質させる半導体装置の製造方法。
前記第1酸化膜を堆積させる工程における前記第1酸化剤による酸化力は、前記第2酸化膜を堆積させる工程における前記第2酸化剤による酸化力よりも小さい請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
前記第2酸化膜を堆積させる工程では、前記酸化種により前記第1酸化膜を改質させることで、前記酸化種を前記第1酸化膜中で消費させ、前記酸化種の前記下地への到達をブロックする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
前記第2酸化層を形成する工程では、プラズマ励起させた酸素含有ガスに含まれる酸素活性種を含む酸化種により前記第2層を酸化させるとともに前記第1酸化膜を改質させる請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
前記第2酸化層を形成する工程では、前記酸化種により前記第1酸化膜を改質させることで、前記酸化種を前記第1酸化膜中で消費させ、前記酸化種の前記下地への到達をブロックする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図5を用いて説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱機構(温度調整部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO
2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。
【0011】
処理室201内には、ノズル249a〜249cが、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a〜249cには、ガス供給管232a〜232cが、それぞれ接続されている。
【0012】
ガス供給管232a〜232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a〜241cおよび開閉弁であるバルブ243a〜243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a〜232cのバルブ243a〜243cよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232d〜232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232d〜232fには、ガス流の上流側から順に、MFC241d〜241fおよびバルブ243d〜243fがそれぞれ設けられている。
【0013】
ノズル249a〜249cは、
図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a〜249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。ノズル249a〜249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a〜250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a〜250cは、反応管203の中心を向くようにそれぞれ開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a〜250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0014】
ガス供給管232aからは、第1原料(第1原料ガス)、第2原料(第2原料ガス)として、堆積させようとする膜を構成する主元素としてのシリコン(Si)およびハロゲン元素を含むハロシラン系ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。原料ガスとは、気体状態の原料、例えば、常温常圧下で液体状態である原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態である原料等のことである。ハロゲン元素には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。ハロシラン系ガスとしては、例えば、Clを含むクロロシラン系ガスを用いることができる。クロロシラン系ガスとしては、例えば、ヘキサクロロジシラン(Si
2Cl
6、略称:HCDS)ガスを用いることができる。
【0015】
ガス供給管232bからは、第1酸化剤(第1酸化ガス)としての酸素(O)含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。第1酸化剤としては、例えば、O−H結合を有する水蒸気(H
2Oガス)を用いることができる。
【0016】
ガス供給管232bからは、第2酸化剤(第2酸化ガス)としてのO含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。第2酸化剤としては、例えば、酸素(O
2)ガスを用いることができる。
【0017】
ガス供給管232aからは、水素(H)含有ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。H含有ガスは、それ単体では酸化作用は得られないが、後述する成膜処理において、第2酸化剤としてのO含有ガスと特定の条件下で反応することにより原子状酸素(atomic oxygen、O)等の酸化種を生成し、酸化処理の効率を向上させるように作用する。そのため、H含有ガスは、第2酸化剤に含めて考えることができる。H含有ガスとしては、例えば、水素(H
2)ガスを用いることができる。
【0018】
ガス供給管232cからは、後述する成膜処理を促進させる触媒(触媒ガス)として、炭素(C)、窒素(N)およびHを含むアミン系ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。アミン系ガスとしては、酸解離定数(pKa)が5〜11程度である物質、例えば、ピリジン(C
5H
5N、pKa=5.67)ガスを用いることができる。なお、アミン系ガスは、後述する成膜処理において分子構造の一部が分解する場合もあり、厳密な意味では「触媒」とは言えない場合もある。しかしながら、本明細書では、化学反応の過程でその一部が分解する場合であっても、大部分は分解せず、また、反応の速度を変化させ、実質的に触媒として作用する物質を、「触媒」と称する。
【0019】
ガス供給管232d〜232fからは、不活性ガスとして、例えば、窒素(N
2)ガスが、それぞれMFC241d〜241f、バルブ243d〜243f、ガス供給管232a〜232c、ノズル249a〜249cを介して処理室201内へ供給される。
【0020】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、原料供給系が構成される。主に、ガス供給管232a,232b、MFC241a,241b、バルブ243a,243bにより、酸化剤供給系が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、触媒供給系が構成される。主に、ガス供給管232d〜232f、MFC241d〜241f、バルブ243d〜243fにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0021】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a〜243fやMFC241a〜241f等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a〜232fのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a〜232f内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a〜243fの開閉動作やMFC241a〜241fによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a〜232f等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0022】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0023】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。また、マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0024】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0025】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0026】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0027】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する成膜処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する成膜処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0028】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a〜241f、バルブ243a〜243f、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0029】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a〜241fによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a〜243fの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御するように構成されている。
【0030】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0031】
(2)成膜処理
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200の下地上にシリコン酸化膜(SiO膜)を堆積させるシーケンス例について、
図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0032】
図4に示す成膜シーケンスでは、
第1原料としてのHCDSガスが単独で存在した場合にHCDSガスが熱分解しない第1温度下で、ウエハ200に対して、HCDSガスと第1酸化剤としてのH
2Oガスとを供給することにより、ウエハ200の表面の下地上に、第1酸化膜として、第1SiO膜を堆積させる第1成膜ステップと、
第1温度よりも高い第2温度下で、ウエハ200に対して、第2原料としてのHCDSガスと第2酸化剤としてのO
2ガスおよびH
2ガスとを供給することにより、第1SiO膜上に、第2酸化膜として、第1SiO膜よりも厚い第2SiO膜を堆積させる第2成膜ステップと、
を行う。
【0033】
なお、第1成膜ステップでは、
ウエハ200に対して第1原料としてのHCDSガスおよび触媒としてのピリジンガスを供給することで、第1層を形成するステップ1と、
ウエハ200に対して第1酸化剤としてのH
2Oガスおよび触媒としてのピリジンガスを供給することで、第1層を酸化させて第1酸化層を形成するステップ2と、
を非同時に行うサイクルを所定回数(m回、mは1以上の整数)行う。
【0034】
また、第2成膜ステップでは、
ウエハ200に対して第2原料としてのHCDSガスを供給することで、第2層を形成するステップ3と、
ウエハ200に対して第2酸化剤として、O含有ガスとしてのO
2ガスおよびH含有ガスとしてのH
2ガスを供給することで、第2層を酸化させて第2酸化層を形成するステップ4と、
を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行う。
【0035】
本明細書では、
図4に示す成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例等の説明においても、同様の表記を用いることとする。
【0036】
(HCDS+ピリジン→H
2O+ピリジン)×m→(HCDS→O
2+H
2)×n⇒SiO
【0037】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0038】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0039】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって処理室201内が真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度(第1温度)となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。真空ポンプ246の稼働、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0040】
(第1成膜ステップ)
その後、次のステップ1,2を順次実行する。
【0041】
[ステップ1]
このステップでは、処理室201内のウエハ200に対してHCDSガスおよびピリジンガスを一緒に(同時に)供給する。
【0042】
具体的には、バルブ243a,243cを開き、ガス供給管232a,232c内へHCDSガス、ピリジンガスをそれぞれ流す。HCDSガス、ピリジンガスは、それぞれ、MFC241a,241cにより流量調整され、ノズル249a,249cを介して処理室201内へ供給されて、処理室201内で混合され、排気管231より排気される。このとき、ウエハ200に対してHCDSガスおよびピリジンガスが一緒に(同時に)供給される。このときバルブ243d〜243fを開き、ガス供給管232d〜232f内へN
2ガスを流すようにしてもよい。N
2ガスは、MFC241d〜241fにより流量調整され、ノズル249a〜249cを介して処理室201内へ供給される。
【0043】
本ステップにおける処理条件としては、
HCDSガス供給流量:1〜2000sccm、好ましくは10〜1000sccm
ピリジンガス供給流量:1〜2000sccm、好ましくは10〜1000sccm
N
2ガス供給流量(ガス供給管毎):0〜10000sccm
各ガス供給時間:1〜120秒、好ましくは1〜60秒
処理温度(第1温度):室温(20〜30℃)〜100℃、好ましくは50〜100℃
処理圧力:1〜2666Pa、好ましくは67〜1333Pa
が例示される。
【0044】
上述の条件下でウエハ200に対してHCDSガスおよびピリジンガスを一緒に供給することにより、ウエハ200の表面の下地上に、第1層として、Clを含むSi含有層(第1Si含有層)が形成される。第1Si含有層は、ウエハ200の表面の下地上に、HCDSが物理吸着したり、HCDSの一部が分解した物質(以下、Si
xCl
y(1≦x≦2,1≦y<6))が化学吸着したりすること等により形成される。第1Si含有層は、HCDSやSi
xCl
yの吸着層(物理吸着層や化学吸着層)であってもよく、Clを含むSi層であってもよい。
【0045】
なお、上述の第1温度は、HCDSガスが処理室201内に単独で存在した場合に、HCDSガスが熱分解しない温度である。このような低温条件下で第1Si含有層を形成することが可能となるのは、HCDSガスと一緒に供給するピリジンガスが、触媒として作用するためである。ピリジンガスは、ウエハ200の表面に存在するO−H結合の結合力を弱め、HCDSガスの分解を促し、Si
xCl
yの化学吸着による第1Si含有層の形成を促進させるように作用する。なお、ピリジンガスのような触媒を用いて低温条件下で形成した第1Si含有層中には、不純物として、HCDSガスに含まれるClや、ピリジンガスに含まれるCやN等が取り込まれやすくなる。第1Si含有層中に含まれるCl、C、N等の不純物の量は、処理温度を低温化させるほど、また、第1原料におけるClの含有量が多量であるほど、また、触媒におけるCやNの含有量が多量であるほど、また、触媒の供給量を増やすほど、増加する傾向がある。なお、本明細書では、Cl、C、N等の不純物を含むSi含有層を、単にSi含有層とも称する。
【0046】
ウエハ200の表面の下地上に第1Si含有層を形成した後、バルブ243a,243cを閉じ、処理室201内へのHCDSガス、ピリジンガスの供給をそれぞれ停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243d〜243fを開き、処理室201内へN
2ガスを供給する。N
2ガスはパージガスとして作用する。
【0047】
[ステップ2]
ステップ1が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200の表面の下地上に形成した第1Si含有層に対してH
2Oガスおよびピリジンガスを一緒に(同時に)供給する。
【0048】
具体的には、バルブ243b,243c,243d〜243fの開閉制御を、ステップ1におけるバルブ243a,243c,243d〜243fの開閉制御と同様の手順で行う。H
2Oガス、ピリジンガスは、それぞれ、MFC241b,241cにより流量調整され、ノズル249b,249cを介して処理室201内へ供給されて、処理室201内で混合され、排気管231より排気される。このとき、ウエハ200に対してH
2Oガスおよびピリジンガスが一緒に(同時に)供給される。
【0049】
本ステップにおける処理条件としては、
H
2Oガス供給流量:10〜10000sccm、好ましくは100〜1000sccm
処理圧力:50〜5000Pa、好ましくは100〜4000Pa
が例示される。他の処理条件は、ステップ1における処理条件と同様とする。
【0050】
上述の条件下でウエハ200に対してH
2Oガスおよびピリジンガスを一緒に供給することにより、ステップ1でウエハ200の表面の下地上に形成された第1Si含有層の少なくとも一部が酸化される。第1Si含有層が酸化されることで、ウエハ200の表面の下地上に、第1酸化層として、SiおよびOを含むシリコン酸化層(第1SiO層)が形成される。ステップ2は、ステップ1と同様に低温の第1温度下で行われるが、このような温度条件下で上述の酸化反応を進行させることが可能となるのは、H
2Oガスと一緒に供給するピリジンガスが、触媒として作用するためである。ピリジンガスは、H
2Oガスが有するO−H結合の結合力を弱め、H
2Oガスの分解を促し、H
2Oガスと第1Si含有層との反応による第1SiO層の形成を促進させるように作用する。
【0051】
第1SiO層を形成する際、第1Si含有層に含まれていたCl、C、N等の不純物は、H
2Oガスによる酸化反応の過程において、第1Si含有層中から引き抜かれたり、脱離したりすることで、第1Si含有層から分離する場合もある。但し、ステップ2で供給するH
2Oガスによる酸化力は、後述するように比較的小さいことから、ステップ2では、第1Si含有層に含まれていた不純物のうち少なくとも一部を、第1Si含有層中から脱離させることなく残留させることが可能となる。このようにして、第1SiO層は、Cl、C、N等の不純物を所定の濃度で含む層となる。第1SiO層中に残留するCl、C、N等の不純物の量は、ステップ2における処理温度を低温化させるほど、増加する傾向がある。
【0052】
なお、ピリジンガスによる触媒作用が得られる状況(条件)下であっても、ステップ2で供給するH
2Oガスによる酸化力は、後述するステップ4で供給するO
2ガスおよびH
2ガスによる酸化力よりも遙かに小さい。ステップ2で供給するH
2Oガスの有する酸化力は、第1Si含有層を酸化させることが可能な大きさであるものの、成膜処理の下地の酸化を抑制するような小さなもの、すなわち、ウエハ200の表面の下地を酸化させることが困難である小さなものとなる。従って、ステップ2を実施しても、ウエハ200の表面の下地は、殆ど、或いは、全く酸化されずに維持される。
【0053】
ウエハ200の表面の下地上に第1SiO層を形成した後、バルブ243b,243cを閉じ、処理室201内へのH
2Oガス、ピリジンガスの供給をそれぞれ停止する。そして、ステップ1と同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0054】
[所定回数実施]
ステップ1,2を非同時に行うサイクルを1回以上(m回)行うことにより、ウエハ200の表面の下地上に、所定組成および所定膜厚の第1SiO膜を堆積させることができる。このサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成する第1SiO層の厚さを所望の膜厚よりも小さくし、第1SiO層を積層することで形成される第1SiO膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すのが好ましい。
【0055】
この段階で形成される第1SiO膜は、上述の理由から、Cl、C、N等の不純物を所定の濃度で含む膜となる。後述するステップ4における酸化種のブロック効果を得るには、この段階で形成される第1SiO膜を、不純物を殆ど、或いは、全く含まない高純度なSiO膜とするよりも、本実施形態のように、不純物を所定の濃度で含むSiO膜とするのが好ましい。例えば、この段階で形成される第1SiO膜を、後述する第2成膜ステップで形成する第2SiO膜における不純物濃度よりも高い不純物濃度を有するSiO膜とするのが好ましい。
【0056】
第1SiO膜の膜厚は、例えば、0.35〜30nm、好ましくは0.5〜20nm、より好ましくは1〜10nmの範囲内の厚さとするのが望ましい。
【0057】
第1SiO膜の膜厚が0.35nm未満となると、後述するステップ4における酸化種のブロック効果が得られなくなり、ウエハ200の表面の下地の酸化量が増加してしまう場合がある。第1SiO膜の膜厚を0.35nm以上とすることで、ステップ4における酸化種のブロック効果が得られるようになり、ウエハ200の表面の下地の酸化を抑制することが可能となる。第1SiO膜の膜厚を0.5nm以上とすることで、上述の効果が確実に得られるようになる。第1SiO膜の膜厚を1nm以上とすることで、上述の効果がより確実に得られるようになる。
【0058】
第1SiO膜の膜厚が30nmを超えると、後述するステップ4における改質の作用を第1SiO膜の全体に行き渡らせることが難しくなり、ステップ4において、第1SiO膜からの不純物の除去が困難となる場合がある。第1SiO膜の膜厚を30nm以下とすることで、ステップ4における改質の作用を第1SiO膜の全体に行き渡らせることができ、ステップ4において、第1SiO膜全体を不純物が少ない高純度なSiO膜へと変化させることが可能となる。第1SiO膜の膜厚を20nm以下とすることで、上述の効果が確実に得られるようになる。第1SiO膜の膜厚を10nm以下とすることで、上述の効果がより確実に得られるようになる。
【0059】
第1原料としては、HCDSガスの他、モノクロロシラン(SiH
3Cl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2、略称:DCS)、トリクロロシラン(SiHCl
3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl
4、略称:STC)ガス、オクタクロロトリシラン(Si
3Cl
8、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン系ガスを用いることができる。また、第1原料としては、テトラフルオロシラン(SiF
4)ガス、テトラブロモシラン(SiBr
4)ガス、テトラヨードシラン(SiI
4)ガス等を用いることができる。すなわち、第1原料としては、クロロシラン系ガス、フルオロシラン系ガス、ブロモシラン系ガス、ヨードシラン系ガス等の各種ハロシラン系ガスを用いることができる。また、第1原料としては、ビス(ジエチルアミノ)シラン(SiH
2[N(C
2H
5)
2]
2、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリブチルアミノ)シラン(SiH
2[NH(C
4H
9)]
2、略称:BTBAS)ガス、トリス(ジエチルアミノ)シラン(SiH[N(C
2H
5)
2]
3、略称:3DEAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(SiH[N(CH
3)
2]
3、略称:3DMAS)ガス、テトラキス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C
2H
5)
2]
4、略称:4DEAS)ガス、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH
3)
2]
4、略称:4DMAS)ガス等の各種アミノシラン系ガスを用いることができる。
【0060】
第1酸化剤としては、H
2Oガスの他、過酸化水素(H
2O
2)ガス等のO−H結合を含むO含有ガスを用いることができる。また、第1酸化剤としては、オゾン(O
3)ガス等のO含有ガスを用いることもできる。
【0061】
触媒としては、ピリジンガスの他、アミノピリジン(C
5H
6N
2、pKa=6.89)ガス、ピコリン(C
6H
7N、pKa=6.07)ガス、ルチジン(C
7H
9N、pKa=6.96)ガス、ピペラジン(C
4H
10N
2、pKa=9.80)ガス、ピペリジン(C
5H
11N、pKa=11.12)ガス等の環状アミン系ガスや、トリエチルアミン((C
2H
5)
3N、略称:TEA、pKa=10.7)ガス、ジエチルアミン((C
2H
5)
2NH、略称:DEA、pKa=10.9)ガス、モノエチルアミン((C
2H
5)NH
2、略称:MEA、pKa=10.6)ガス、トリメチルアミン((CH
3)
3N、略称:TMA、pKa=9.8)ガス、ジメチルアミン((CH
3)
2NH、略称:DMA、pKa=10.8)ガス、モノメチルアミン((CH
3)NH
2、略称:MMA、pKa=10.6)ガス等の鎖状アミン系ガスや、NH
3ガス等の非アミン系ガスを用いることができる。ステップ1,2では、互いに種類の異なる触媒ガスを用いることもできる。
【0062】
不活性ガスとしては、N
2ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
【0063】
(昇温処理)
ウエハ200の表面の下地上への第1SiO膜の堆積が完了したら、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガスや反応副生成物を処理室201内から除去する。その後、ヒータ207の出力を調整し、ウエハ200の温度を、第1温度よりも高い第2温度へと昇温させる。このとき、ノズル249a〜249cのそれぞれから、熱伝達媒体としてのN
2ガスを処理室201内へ供給することで、ウエハ200を効率的に加熱させることが可能となる。このとき、処理室201内の排気は継続して行われることから、N
2ガスはパージガスとしても作用する。ウエハ200の温度が第2温度へ到達して安定したら、処理室201内へのN
2ガスの供給を停止する。なお、N
2ガスの供給を停止することなく継続するようにしてもよい。
【0064】
(第2成膜ステップ)
その後、次のステップ3,4を順次実行する。
【0065】
[ステップ3]
このステップでは、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200の表面の下地上に堆積させた第1SiO膜に対してHCDSガスを供給する。
【0066】
具体的には、バルブ243a,243d〜243fの開閉制御を、ステップ1におけるバルブ243a,243d〜243fの開閉制御と同様の手順で行う。HCDSガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。このとき、ウエハ200に対してHCDSガスが供給される。
【0067】
本ステップにおける処理条件としては、
HCDSガス供給流量:1〜2000sccm、好ましくは10〜1000sccm
N
2ガス供給流量(ガス供給管毎):0〜10000sccm
各ガス供給時間:1〜120秒、好ましくは1〜60秒
処理温度(第2温度):350〜800℃、好ましくは450〜800℃
処理圧力:1〜2666Pa、好ましくは67〜1333Pa
が例示される。
【0068】
上述の条件下でウエハ200に対してHCDSガスを供給することにより、第1SiO膜上に、第2層として、Clを含むSi含有層(第2Si含有層)が形成される。第2Si含有層は、第1SiO膜の表面に、HCDSが物理吸着したり、Si
xCl
yが化学吸着したり、HCDSが熱分解したりすること等により形成される。第2Si含有層は、HCDSやSi
xCl
yの吸着層(物理吸着層や化学吸着層)であってもよく、Clを含むSi層であってもよい。なお、ステップ3における処理温度は、第1温度よりも高い第2温度であり、この温度は、HCDSガスが処理室201内に単独で存在した場合に、HCDSガスが熱分解し得る温度である。また、ステップ3では、触媒としてのピリジンガスを非供給としている。そのため、第2Si含有層は、Clの含有量が第1Si含有層におけるClの含有量よりも少なく、また、CやN等の不純物を含まない層となる。本明細書では、Clを含むSi含有層を、単にSi含有層とも称する。
【0069】
第1SiO膜上に第2Si含有層を形成した後、バルブ243aを閉じ、処理室201内へのHCDSガスの供給を停止する。そして、ステップ1と同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0070】
[ステップ4]
ステップ3が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、第1SiO膜上に形成した第2Si含有層に対してO
2ガスおよびH
2ガスを一緒に(同時に)供給する。
【0071】
具体的には、バルブ243b,243aを開き、ガス供給管232b,232a内へO
2ガス、H
2ガスをそれぞれ流す。O
2ガス、H
2ガスは、それぞれ、MFC241b,241aにより流量調整され、ノズル249b,249aを介して処理室201内へ供給されて、処理室201内で混合されて反応し、排気管231より排気される。このとき、ウエハ200に対してO
2ガスおよびH
2ガスが一緒に(同時に)供給される。バルブ243d〜243fの開閉制御は、ステップ1におけるバルブ243d〜243fの開閉制御と同様とする。
【0072】
本ステップにおける処理条件としては、
O
2ガス供給流量:100〜10000sccm
H
2ガス供給流量:100〜10000sccm
各ガス供給時間:1〜120秒、好ましくは1〜60秒
処理圧力:13.3〜1333Pa、好ましくは13.3〜399Pa
が例示される。他の処理条件は、ステップ3における処理条件と同様とする。
【0073】
処理室201内へO
2ガスおよびH
2ガスを一緒に供給することにより、これらのガスは、加熱された減圧雰囲気下においてノンプラズマで熱的に活性化(励起)されて反応し、それにより、原子状酸素(O)等の酸素を含む水分(H
2O)非含有の酸化種が生成される。そして、主にこの酸化種により、ステップ3を行うことで第1SiO膜上に形成した第2Si含有層を酸化させるとともに、第1成膜ステップを行うことでウエハ200の表面の下地上に堆積させた第1SiO膜を改質させることが可能となる。
【0074】
というのも、上述の酸化種の持つエネルギーは、第2Si含有層中に含まれるSi−Cl結合等の結合エネルギーよりも高い。このため、この酸化種を第2Si含有層へ供給し、この酸化種のエネルギーを第2Si含有層に与えることで、第2Si含有層中に含まれるSi−Cl結合等は切り離される。Siとの結合が切り離されたCl等は層中から除去され、Clを含むガス状物質となって処理室201内から排出される。また、Cl等との結合が切られることで余ったSiの結合手は、酸化種に含まれるOと結びつき、Si−O結合が形成される。このようにして第2Si含有層は酸化され、第1SiO膜上には、第2酸化層として、SiおよびOを含み、Cl等の不純物の含有量が極めて少ない層、すなわち、極めて高純度なSiO層(第2SiO層)が形成される。
【0075】
また、上述の酸化種の持つエネルギーは、第2Si含有層の下層である第1SiO膜中に含まれるSi−Cl結合、Si−C結合、Si−N結合等の結合エネルギーよりも高い。このため、この酸化種を第2Si含有層を介して第1SiO膜へと到達(拡散)させ、この酸化種のエネルギーを第1SiO膜に与えることで、第1SiO膜中に含まれるSi−Cl結合、Si−C結合、Si−N結合等は切り離される。Siとの結合が切り離されたCl、C、N等は膜中から除去され、Cl、C、N等を含むガス状物質となって処理室201内から排出される。また、Cl、C、N等との結合が切られることで余ったSiの結合手は、酸化種に含まれるOと結びつき、Si−O結合が形成される。このようにして第1SiO膜は改質され、Cl、C、N等の不純物の含有量が極めて少ないSiO膜、すなわち、極めて高純度なSiO膜に変化する。
【0076】
このように、ステップ4では、O
2ガスおよびH
2ガスに由来する原子状酸素等を含む酸化種を用いることにより、酸化剤としてO
2ガスやH
2Oガスをそれぞれ単独で供給する場合に比べ、酸化力を大幅に向上させることができる。すなわち、減圧雰囲気下においてO
2ガスにH
2ガスを添加することにより、O
2ガス単独供給の場合やH
2Oガス単独供給の場合に比べ、大幅な酸化力向上効果が得られるようになる。これにより、第2Si含有層の酸化や、第1SiO膜の改質を、実用的なレートで確実に進行させることが可能となる。
【0077】
なお、ステップ4では、第2Si含有層を酸化させる際に第1SiO膜を改質させることで、ウエハ200に対して供給された酸化種、すなわち、O
2ガスおよびH
2ガスに由来する原子状酸素等を含む酸化種のうち第2Si含有層を通過したものを、第1SiO膜中で消費させることが可能となる。これにより、この酸化種のウエハ200の表面の下地への到達(拡散)をブロックすることが可能となる。この酸化種のブロック効果により、ウエハ200の表面の下地の酸化を抑制することが可能となる。
【0078】
第2Si含有層の酸化、および、第1SiO膜の改質をそれぞれ行った後、バルブ243b,243aを閉じ、処理室201内へのO
2ガスおよびH
2ガスの供給をそれぞれ停止する。そして、ステップ1と同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0079】
[所定回数実施]
ステップ3,4を非同時に行うサイクルを1回以上(n回)行うことにより、第1SiO膜を改質させつつ、この第1SiO膜上に、所定組成および所定膜厚の第2SiO膜を堆積させることができる。このサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成する第2SiO層の厚さを所望の膜厚よりも小さくし、第2SiO層を積層することで形成される第2SiO膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すのが好ましい。サイクルを複数回繰り返す場合、サイクルを繰り返す度に第1SiO膜に対する改質が行われることになり、第1SiO膜を高純度なSiO膜へと変化させることがより確実に行えるようになる。なお、ステップ4では、第1SiO膜による酸化種のブロック効果が得られることから、サイクルの繰り返し回数を増やし、第2SiO膜の膜厚を第1SiO膜の膜厚より厚くする等しても、ウエハ200の表面の下地の酸化を確実に抑制することが可能となる。
【0080】
第2原料としては、HCDSガスの他、上述の各種ハロシラン系ガスや各種アミノシラン系ガスを用いることができる。本実施形態では、第1原料と第2原料とを同一の原料(HCDSガス)とする例について説明したが、第1原料と第2原料とを異なる原料とすることもできる。すなわち、ステップ1,3では、互いに種類の異なる原料を用いることもできる。例えば、第1原料としてHCDSガスを用い、第2原料としてDCSガスを用いることもできる。
【0081】
第2酸化剤としては、O
2+H
2ガスの他、O
3ガス、プラズマ励起させたO
2ガス(O
2*)、酸素ラジカル(O
*)、水酸基ラジカル(OH
*)等を用いることができる。なお、酸化剤としてO
2+H
2ガスを用いる場合、H
2ガスの代わりに重水素(D
2)ガス等を用いることができる。
【0082】
不活性ガスとしては、N
2ガスの他、上述の各種希ガスを用いることができる。
【0083】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ウエハ200の表面の下地上に、所望組成、所望膜厚のSiO膜、すなわち、第1SiO膜と第2SiO膜との積層膜が形成された後、ノズル249a〜249cのそれぞれからパージガスとしてのN
2ガスを処理室201内へ供給し、排気管231より排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0084】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0085】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0086】
(a)第1成膜ステップのステップ2では、酸化力の小さなH
2Oガスを酸化剤として用い、また、比較的低温である第1温度下で酸化処理を行うことから、ウエハ200の表面の下地の酸化を抑制することが可能となる。
【0087】
また、第2成膜ステップのステップ4では、第2Si含有層を酸化させる際に第1SiO膜を改質させることで、O
2ガスおよびH
2ガスに由来する原子状酸素等を含む酸化種のうち第2Si含有層を通過したものを、第1SiO膜中で消費させることが可能となる。第1SiO膜が発揮するこの酸化種のブロック効果により、ウエハ200の表面の下地の酸化を抑制することが可能となる。
【0088】
図5(a)は、第1成膜ステップを行うことなく第2成膜ステップを行うことにより、ウエハ上に第2SiO膜を直接堆積させた場合における下地の断面拡大図である。また、
図5(c)は、金属膜が表面に形成されたウエハに対して
図5(a)で行った成膜処理と同様の成膜処理を行うことにより、金属膜上に第2SiO膜を直接堆積させた場合における下地の断面拡大図である。第1成膜ステップを行うことなく第2成膜ステップを行った場合、O
2ガスおよびH
2ガスに由来する原子状酸素等を含む酸化種が有する強力な酸化力により、
図5(a)に示すように、ウエハの表面の下地が深くまで酸化されて表面酸化層(SiO層)が形成される場合がある。この場合、最終的に形成されるSiO膜のトータルでの厚さ、すなわち、第2SiO膜だけでなく、表面酸化層(SiO層)を含む合計厚さを正確に制御することは困難となる。また、
図5(c)に示すように、ウエハ200の表面の下地である金属膜が異常酸化されて異常酸化層が形成される場合もある。
【0089】
図5(b)は、第1成膜ステップ、昇温処理、第2成膜ステップをこの順に行うことにより、ウエハ上に第1SiO膜および第2SiO膜を積層させた場合における下地の断面拡大図である。
図5(d)は、金属膜が表面に形成されたウエハに対して
図5(b)で行った成膜処理と同様の成膜処理を行うことにより、金属膜上に第1SiO膜および第2SiO膜を積層させた場合における下地の断面拡大図である。第2成膜ステップを行う前に第1成膜ステップを予め実施することにより、第1SiO膜による酸化種のブロック効果が得られ、
図5(b)に示すように、ウエハの表面の下地の酸化を抑制することが可能となる。この場合、表面酸化層(SiO層)の厚さを全く、或いは、殆ど考慮する必要がなく、最終的に形成されるSiO膜のトータルでの厚さを正確に制御することが容易となる。また、
図5(d)に示すように、ウエハの表面の下地である金属膜の異常酸化を抑制することも可能となる。
【0090】
(b)第1成膜ステップでは、比較的低温である第1温度下でステップ1,2を行い、また、ステップ2では、酸化力が比較的小さなH
2Oガスを酸化剤として用いることから、第1SiO膜中に、Cl、C、N等の不純物を所定の濃度で確実に含ませることが可能となる。これにより、第2成膜ステップのステップ4において、第1SiO膜による酸化種のブロック効果をより確実に得ることができ、ウエハ200の表面の下地の酸化をより確実に抑制することが可能となる。
【0091】
(c)第2成膜ステップでは、第1温度よりも高い第2温度下でステップ3,4を行い、また、ステップ4では、酸化力が比較的大きなO
2ガスおよびH
2ガスを酸化剤として用いることから、第1SiO膜上に堆積させる第2SiO膜を、不純物が極めて少ない高純度なSiO膜とすることができる。
【0092】
また、第2成膜ステップのステップ4では、O
2ガスおよびH
2ガスに由来する酸化力が比較的大きな原子状酸素等を含む酸化種を用い、第1成膜ステップで堆積させた第1SiO膜を改質させ、この膜を、不純物が極めて少ない高純度なSiO膜へと変化させることができる。
【0093】
(d)これらの結果として、本実施形態では、ウエハ200の表面の下地の酸化を抑制しつつ、不純物が極めて少ない高純度なSiO膜を、ウエハ200の表面の下地上に形成することが可能となる。すなわち、トレードオフの関係になりやすい「下地の酸化抑制」と「SiO膜の高純度化」とを両立させることが可能となる。
【0094】
(e)上述の効果は、HCDSガス以外の第1原料、第2原料を用いる場合や、H
2Oガス以外の第1酸化剤を用いる場合や、O
2+H
2ガス以外の第2酸化剤を用いる場合や、ピリジンガス以外の触媒を用いる場合や、N
2ガス以外の不活性ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。
【0095】
(4)変形例
本実施形態は、以下の変形例のように変更することができる。また、これらの変形例は任意に組み合わせることができる。
【0096】
(変形例1)
以下に示す成膜シーケンスのように、第2成膜ステップでは、ウエハ200に対して第2原料としてBDEASガス等のアミノシラン系ガスを供給することで第1SiO膜上に第2Si含有層を形成するステップ3pと、ウエハ200に対して第2酸化剤としてプラズマ励起させたO
2ガス(O
2*)を供給することで、第2Si含有層を酸化させて第2SiO層を形成するステップ4pと、を非同時に行うサイクルを所定回数(n回)行うようにしてもよい。O
2ガスのプラズマ励起に用いる電力(RF電力)は、例えば50〜1000Wの範囲内の電力とする。他の処理条件は、上述の実施形態の処理条件と同様とする。
【0097】
(HCDS+ピリジン→H
2O+ピリジン)×m→(BDEAS→O
2*)×n⇒SiO
【0098】
第1温度下におけるH
2Oガス+ピリジンガスによる酸化力は、第2温度下におけるプラズマ励起させたO
2ガスによる酸化力よりも小さく、本変形例においても、
図4に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。すなわち、ステップ4pでは、プラズマ励起させたO
2ガスに含まれる酸素活性種(O
2*、O
*)を含む酸化種により、第2Si含有層を酸化させて高純度な第2SiO層を形成するとともに、第1SiO膜を改質させて高純度な第1SiO膜へと変化させることができる。また、ステップ4pでは、上述の酸化種により第1SiO膜を改質させることで、この酸化種を第1SiO膜中で消費させ、酸化種のウエハ200の表面の下地への到達をブロックし、ウエハ200の表面の下地の酸化を抑制することができる。
【0099】
(変形例2)
以下に示す成膜シーケンスのように、第1成膜ステップのステップ1では、ピリジンガス等の触媒を用いず、第1原料として3DMASガス等のアミノシラン系ガスを用いてもよく、第1成膜ステップのステップ2では、第1酸化剤としてO
3ガスを用いてもよい。第1温度下におけるO
3ガスによる酸化力は、第2温度下におけるO
2ガス+H
2ガスによる酸化力よりも小さく、本変形例においても、
図4に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。
【0100】
(3DMAS→O
3)×m→(HCDS→O
2+H
2)×n⇒SiO
【0101】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0102】
例えば、上述の実施形態では、第1成膜ステップおよび第2成膜ステップを同一の処理室201内にて(in−situで)行う例について説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。すなわち、第1成膜ステップと第2成膜ステップとをそれぞれ異なる処理室内にて(ex−situで)行うことも可能である。一連の処理をin−situで行えば、途中、ウエハ200が大気曝露されることはなく、ウエハ200を清浄な雰囲気下に置いたまま一貫して処理を行うことができ、安定した成膜処理を行うことができる。それぞれの処理をex−situで行えば、それぞれの処理室内の温度を例えば各ステップでの処理温度又はそれに近い温度に予め設定しておくことができ、処理室内の温度変更に要する時間を削減することができ、生産効率を高めることができる。また、この場合、それぞれの処理室内の温度変更を行わないことから、処理室内に堆積したSiO膜の膜剥がれ等による悪影響を回避することが可能となる。
【0103】
また例えば、本発明は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)、ルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)等の金属元素を主元素として含む酸化膜(金属酸化膜)をウエハ200の表面の下地上に堆積させる場合においても、好適に適用可能である。
【0104】
例えば、第1原料、第2原料として、チタニウムテトラクロライド(TiCl
4)ガス、ハフニウムテトラクロライド(HfCl
4)ガス、タンタルペンタクロライド(TaCl
5)ガス、トリメチルアルミニウム(Al(CH
3)
3、略称:TMAl)ガス等を用い、以下に示す成膜シーケンスにより、ウエハ200の表面の下地上に、チタン酸化膜(TiO膜)、ハフニウム酸化膜(HfO膜)、タンタル酸化膜(TaO膜)、アルミニウム酸化膜(AlO膜)等の金属酸化膜を堆積させる場合においても、本発明は好適に適用可能である。
【0105】
(TiCl
4→H
2O+ピリジン)×m→(TiCl
4→O
2+H
2)×n⇒TiO
(HfCl
4→H
2O+ピリジン)×m→(HfCl
4→O
2+H
2)×n⇒HfO
(TaCl
5→H
2O+ピリジン)×m→(TaCl
5→O
2+H
2)×n⇒TaO
(TMAl→H
2O+ピリジン)×m→(TMAl→O
2+H
2)×n⇒AlO
【0106】
これらの成膜シーケンスを行う場合においても、上述の実施形態や変形例と同様の処理手順、処理条件にて成膜を行うことができ、上述の実施形態や変形例と同様の効果が得られる。すなわち、本発明は、Si等の半金属元素を主元素として含む半金属酸化膜を形成する場合や、上述の各種金属元素を主元素として含む金属酸化膜を形成する場合に、好適に適用することができる。
【0107】
基板処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、処理を迅速に開始できるようになる。
【0108】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0109】
上述の実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0110】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態や変形例と同様な処理手順、処理条件にて成膜を行うことができ、これらと同様の効果が得られる。
【0111】
また、上述の実施形態や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の実施形態の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例】
【0112】
以下、実施例について説明する。
【0113】
実施例として、
図1に示す基板処理装置を用い、
図4に示す成膜シーケンスにより、ウエハの表面の下地上に第1SiO膜、第2SiO膜を順に堆積させて積層膜を形成した。処理条件は、上述の実施形態に記載の処理条件範囲内の所定の条件とした。
【0114】
比較例として、
図1に示す基板処理装置を用い、第1成膜ステップを実施することなく第2成膜ステップを実施することで、ウエハの表面の下地上に第2SiO膜を直接堆積させた。第2成膜ステップの処理条件は、実施例における第2成膜ステップの処理条件と同様とした。
【0115】
そして、ウエハの表面の下地の酸化量を測定した。
図6にその測定結果を示す。
図6の縦軸はウエハ中へ酸素が拡散することで形成された表面酸化層の厚さ(Å)、すなわち、ウエハの表面の下地の酸化量を示しており、横軸は実施例、比較例をそれぞれ示している。
図6によれば、実施例の方が、比較例よりも、ウエハの表面の下地の酸化量が遙かに少ないことが分かる。すなわち、第1成膜ステップを実施してから第2成膜ステップを実施することにより、第1SiO膜による酸化種のブロック効果が得られ、ウエハの表面の下地の酸化を抑制できることが分かる。
【0116】
続いて、ウエハ上に形成されたSiO膜のリーク耐性、すなわち、絶縁特性を測定した。
図7にその測定結果を示す。
図7の縦軸はSiO膜を流れるリーク電流の大きさ(A/cm
2)を示しており、横軸はSiO膜に印可された電界の強度(MV/cm)をそれぞれ示している。
図7によれば、実施例のSiO膜の絶縁特性は、比較例のSiO膜の絶縁特性を上回る良好な特性を示すことが分かる。これは、実施例では、第2成膜ステップを行う際に、ウエハの表面の下地の酸化を抑制しつつ、第1SiO膜上に堆積させる第2SiO膜を高純度なSiO膜とすることができ、また、第1成膜ステップでウエハの表面の下地上に堆積させた第1SiO膜を高純度なSiO膜へと改質させることができたためと考えられる。