(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0010】
[実施例1]
図1は、実施例1によるシフト装置100の外観斜視図である。
図1には、一例として、3つの傾倒方向(D1方向〜D3方向)が示される。また、
図1には、直交する3軸X,Y,Zが定義されている。Z軸は、高さ方向に対応する。尚、シフト装置100の設置状態において、Z軸は、必ずしも重力方向に平行である必要はない。
【0011】
シフト装置100は、車両に設けられるのが好適である。但し、シフト装置100は、航空機や鉄道等に設けられてもよいし、ゲーム機に適用されてもよい。
【0012】
シフト装置100は、操作レバー2と、操作レバー2を傾倒可能に支持する支持体3(
図4参照)と、ケース本体110と、ケース本体110の上側の開放部分を覆うカバー111とを有する。ケース本体110内には、後述の吸引力発生機構1やダンパ機構300等が収容されている。尚、ケース本体110は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の樹脂材を射出成形することによって形成されている。尚、ケース本体110及びカバー111は、シフト装置100の筐体を形成する。
【0013】
カバー111はケース本体110と同じように、PBT等の樹脂により成形されている。カバー111の中央部分には円形の貫通孔111aが形成されており、この貫通孔111aには操作レバー2が挿通され、操作レバー2は、操作レバー2の先端部がカバー111の上面側に突出され、操作レバー2の先端には操作レバー2を傾倒操作するためのシフトノブ112が取付けられている。
【0014】
シフトノブ112はABS(acrylonitrile butadiene styrene)樹脂等の樹脂により成形されている。
【0015】
シフト装置100は、シフトノブ112が変速機に直接接続されている機械制御方式ではなく、シフトバイワイヤ方式である。シフトバイワイヤ方式のシフト装置100は、リンク機構等の機械的な構成が不要になるため、小型化が図れる。したがって、車両内におけるシフト装置100のレイアウトに自由度を持たせることができる。また、操作レバー2を比較的小さな力で操作できるので、シフトチェンジの操作が簡単になる。
【0016】
図2は、シフト装置100のシフト操作の一例の説明図である。
【0017】
操作レバー2がホームポジションH(操作基準位置の一例)から第1傾倒方向(D1方向)(第1方向の一例)に傾倒操作されると、操作レバー2はポジションF1に移動される。ポジションF1は第1傾倒方向(D1方向)側の第1段ポジションF1となる。操作レバー2が第1段ポジションF1から第1傾倒方向(D1方向)へさらに傾倒操作されると、操作レバー2はポジションF2に移動される。ポジションF2は第1傾倒方向(D1方向)側の第2段ポジションF2となる。
【0018】
第1傾倒方向(D1方向)側の第1段ポジションF1または第2段ポジションF2に位置する操作レバー2の傾倒操作が解除されると、操作レバー2は第2傾倒方向(D2方向)(第1方向の他の一例)に自動的に傾倒操作され、操作レバー2はホームポジションHに戻される。その際に車両のシフト状態は、F1またはF2の状態のまま維持される。
【0019】
操作レバー2がホームポジションHから第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒操作されると、操作レバー2はポジションR1に移動される。ポジションR1は第2傾倒方向(D2方向)側の第1段ポジションR1となる。操作レバー2が第1段ポジションR1から第2傾倒方向(D2方向)へさらに傾倒操作されると、操作レバー2はポジションR2に移動される。ポジションR2は第2傾倒方向(D2方向)側の第2段ポジションR2となる。
【0020】
第2傾倒方向(D2方向)側の第1段ポジションR1または第2段ポジションR2に位置する操作レバー2の傾倒操作が解除されると、操作レバー2は第1傾倒方向(D1方向)へ自動的に傾倒され、操作レバー2はホームポジションHに戻される。その際に車両のシフト状態は、R1またはR2の状態のまま維持される。
【0021】
操作レバー2がホームポジションHから第3傾倒方向(D3方向)(第2方向の一例)へ傾倒操作されると、操作レバー2はポジションM(操作基準位置の他の一例)に移動される。ポジションMに位置する操作レバー2の傾倒操作が解除されても操作レバー2はポジションMの位置へ傾倒した状態で維持される。ポジションMへ傾倒操作された操作レバー2が第1傾倒方向(D1方向)へ傾倒操作されると、操作レバー2はM+に移動させられる。ポジションMに位置する操作レバー2が第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒操作されると、操作レバー2はM−に移動される。M+またはM−に位置する操作レバー2の傾倒操作が解除されると、事前の傾倒操作とは逆方向に自動的に傾倒され、操作レバー2はポジションMに戻される。その際に車両のシフト状態は、M+またはM−の状態のまま維持される。
【0022】
図3は、
図1のシフト装置100のカバー111を外した状態を示す斜視図である。
図3以降の図では、見やすくするためにシフトノブ112及び操作レバー2の一部の図示が省略されている。
【0023】
シフト装置100は、吸引力発生機構1と、ダンパ機構300とを含む。
【0024】
以下、吸引力発生機構1について、
図4等を参照して説明し、ダンパ機構300については、
図10以降を参照して後述する。
【0025】
図4は、吸引力発生機構1を含む内部構造の斜視図である。
図5は、枠体15を取り除いた状態の内部構造の側面図である。
図6は、第1可動部材4の斜視図である。
図7は、第2可動部材8の斜視図である。
図8は、枠体15及び永久磁石6の断面図である。
図9は、永久磁石6が形成する磁束の説明図である。
【0026】
吸引力発生機構1は、操作基準位置から第1傾倒方向(D1方向)への操作レバー2の傾倒に連動して第1傾倒方向(D1方向)へ傾倒操作される第1可動部材4を有している。第1可動部材4は、鉄等の磁性材料により形成されている。
【0027】
吸引力発生機構1は、操作レバー2が操作基準位置にある状態において第1可動部材4と対向するように支持体3に支持された永久磁石6を有している。永久磁石6は、後述する磁石保持部30に保持されている。
【0028】
支持体3は、亜鉛ダイキャスト等の非磁性体により成形された矩形状の枠体15を有している。枠体15は、互いに対向する第1枠部15Aと第2枠部15Bと、第1枠部15A及び第2枠部15Bと直交する方向で互いに対向する第3枠部15Cと第4枠部15Dを有し、枠体15の上下面は開放されている。第1枠部15Aと第2枠部15Bには対向するように軸受け部15aが形成されており、軸受け部15aには支持体3を構成する磁性材料により形成された第1傾倒軸16の両端部が回転可能に嵌合されている。
【0029】
操作レバー2の基端は、第1傾倒軸16に一体的に取付けられている。第1傾倒軸16の両端が軸受け部15a、15aに回転可能に支持されることによって、操作レバー2は第1傾倒方向(D1方向)または第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒操作が可能に支持されている。
【0030】
また、支持体3の第3枠部15Cと第4枠部15Dには、一対の軸部17A、17Bが外方に同軸状に突出するように形成されている。軸部17A、17Bはケース本体110内で回転可能に支持されている。軸部17A、17Bの組み合わせによって第2傾倒軸が構成され、操作レバー2は第3傾倒方向(D3方向)へ傾倒操作が可能に支持されている。このような構成により、操作レバー2は、第1傾倒方向(D1方向)、第2傾倒方向(D2方向)、及び第3傾倒方向(D3方向)のそれぞれへの傾倒操作が可能とされる。即ち、操作レバー2は、筐体に傾倒可能に支持され、この際、複数の方向に傾倒可能に支持される。
【0031】
吸引力発生機構1は、第1可動部材4を永久磁石6に近づく方向へ付勢する一対の第1板ばね7と、第1可動部材4と永久磁石6の間に配置され操作レバー2に連動して第1傾倒方向(D1方向)へ傾倒操作される第2可動部材8と、第2可動部材8に備えられた一対の第2磁性体9とを有する。
【0032】
操作レバー2が操作基準位置にある場合には、第1可動部材4と第2磁性体9は互いに近づけられて永久磁石6の第1傾倒方向(D1方向)側に配置されるとともに、第1可動部材4及び第2磁性体9がそれぞれ永久磁石6によって吸引される。
【0033】
また、吸引力発生機構1は、第3可動部材10を有する。第3可動部材10は、永久磁石6を間に置き第1可動部材4と反対側に配置される。第3可動部材10は、操作基準位置から第2傾倒方向(D2方向)への操作レバー2の傾倒に連動して第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒操作される。第3可動部材10は、鉄等の磁性材料により形成されている。
【0034】
また、吸引力発生機構1は、第3可動部材10を永久磁石6に近づく方向へ付勢する一対の第2板バネ12と、第3可動部材10と永久磁石6の間に配置され操作レバー2に連動して第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒動作される第4可動部材13と、第4可動部材13に備えられた一対の第4磁性体14とを有する。
【0035】
操作レバー2が操作基準位置にある場合には、第3可動部材10と第4磁性体14が互いに近づけられて永久磁石6の第2傾倒方向(D2方向)側に配置されるともに、第3可動部材10及び第4磁性体14がそれぞれ永久磁石6によって吸引される。
【0036】
なお、第3可動部材10は第2傾倒方向(D2)側に配設され、第1傾倒方向(D1)側に配設された第1可動部材4と構成が同一である。また、第4可動部材13は第2傾倒方向(D2)側に配設され、第1傾倒方向(D1)側に配設された第2可動部材8と構成が同一である。また、第4磁性体14は第2傾倒方向(D2)側に配設され、第1傾倒方向(D1)側に配設された第2磁性体9と構成が同一である。また、第1板バネ7と第2板バネ12の構成は同一である。
【0037】
第1可動部材4が第1傾倒軸16を中心に傾倒操作されるので、操作レバー2のスムーズな傾倒操作が可能となる。
【0038】
第1可動部材4は鉄等の磁性材料によって板状に形成されている。第1可動部材4自体が第1磁性体を兼ねている。第1可動部材4の両側部の基端側には、
図6に示すように、一対の取り付け片部4Aが屈曲形成されている。取り付け片部4Aには軸受け部4aが対向して形成されている。軸受け部4aには第1傾倒軸16の両端が嵌合され、第1可動部材4は枠体15内で第1傾倒軸16を中心に回転可能に支持されている。
【0039】
第1可動部材4の両側部には第1板バネ7の先端が当接する板バネ受け部4Bが水平に張りだすように形成されている。
【0040】
第1可動部材4の基端の背面は、操作レバー2の基端に一体に突設された支持ブロック部18(
図4参照)によって受け止められる。なお、第1可動部材4が操作基準位置にあるとき、操作レバー2は第1可動部材4と永久磁石6との間の吸引力によっても保持される。
【0041】
第2可動部材8は樹脂によって板状に成形されている。第2可動部材8の両側部の基端側には、
図7に示すように、一対の取り付け片部8Aが対向するように形成されている。取り付け片部8Aには軸受け部8aが対向して形成されている。軸受け部8aには第1可動部材4と同じように第1傾倒軸16の両端が嵌合され、第2可動部材8は枠体15内で第1傾倒軸16を中心に回転可能に支持されている。
【0042】
このように、第1可動部材4及び第2可動部材8が第1傾倒軸16を中心として傾倒操作されるので、操作レバー2のスムーズな傾倒操作が可能となる。また、第1傾倒軸16が第1可動部材4及び第2可動部材8の兼用の傾倒軸となるので、部品点数の削減が図られるとともに、ケース本体110内の収納スペースの使用効率が高くなり、小型化が図られる。
【0043】
第2可動部材8の先端側には、
図7に示すように、鉄等の磁性材料により板状に形成された一対の第2磁性体9が隙間をおいて並列に配置されている。第2磁性体9は第2可動部材8にインサート成形されている。
【0044】
第2磁性体9の先端にはストッパー片部9Aが水平に突出形成されている。ストッパー片部9Aが第3枠部15Cの上面に当接されるときが、操作レバー2が操作基準位置にあるときに対応する。なお、操作レバー2が操作基準位置にあるとき、操作レバー2は第1板バネ7および第1可動部材4を介して第2磁性体9と永久磁石6との間の吸引力によっても保持される。
【0045】
第2磁性体9の先端側には脚片部9Bが対向するように立ち上がり形成されている。脚片部9Bの先端は前方に突出する横長なリング状の取付け枠部9Cによって連結されている。
【0046】
取付け枠部9Cには第1板バネ7が第2可動部材8の両側方向に突出するように設けられる。第1板バネ7の先端は第2可動部材8の表面側に垂下するように形成されている。なお、
図5には、第2磁性体9の脚片部9Bに対応する第4磁性体14の脚片部14Bの一つ、及び、取付け枠部9Cに対応する取付け枠部14Cが示されている。
【0047】
第2可動部材8は、取付け枠部9Cが第1可動部材4の先端側に形成された切り欠き部4C(
図6参照)に挿入され第1可動部材4の表面より上方に突出するように配置されている。第1板バネ7の先端は第1可動部材4の板バネ受け部4Bに当接され受止められている。
【0048】
枠体15の第3枠部15Cとケース本体110との間には操作レバー2を第3傾倒方向(D3方向)に間欠的に傾倒操作するための間欠駆動機構20が設けられている。
【0049】
間欠駆動機構20は、ケース本体110に一体的に取付けられた軸受け板21と、第2可動部材8に一体形成された第1カム部8Dとを有している。第4可動部材13にも第1カム部8Dに対応する第2カム部が形成されている。
【0050】
軸受け板21の上端部には第1カム部8Dと嵌合する第1カム案内部22が形成されている。軸受け板21の下端部にも第2カム部と嵌合する第2カム案内部(
図4では可視でない)が形成されている。
【0051】
第1カム部8Dは第2磁性体9と永久磁石6との間の吸引力によって第1カム案内部22に押し付けられている。また、第2カム部も第4磁性体14と永久磁石6との間の吸引力によって第2カム案内部に押し付けられている。
【0052】
軸受け板21の中央部分には第3枠部15Cに突出形成された第2傾倒軸を構成する軸部17Aが嵌合される軸受け部21Aが形成されている。
【0053】
永久磁石6は、
図8に示すように、ネオジウムやサマリウムコバルト磁石等により平板状に成形された第1永久磁石6Aと、ネオジウムやサマリウムコバルト磁石等により平板状に成形された第2永久磁石6Bからなる。第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bは支持体3の第1枠部15Aと第2枠部15Bの間の位置に設けられた磁石保持部30に保持されている。磁石保持部30は仕切り用壁部31によって第1永久磁石6Aを保持する第1磁石保持部30Aと第2永久磁石6Bを保持する第2磁石保持部30Bに分離されている。第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bは第1磁石保持部30Aと第2磁石保持部30Bにそれぞれ保持されることによって、幅方向に並列となるように配置されている。第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bは第2磁性体9と第4磁性体14との間に配置された状態になっている。
【0054】
第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bはそれぞれ第1可動部材4(第1磁性体)と対向する厚さ方向にN極とS極が直列に着磁された、一つの面に一つの極がある同一の永久磁石である。第2永久磁石6BはN極とS極の位置が第1永久磁石6AのN極とS極と逆になるように第2磁石保持部30Bに保持されている。
【0055】
したがって、永久磁石6は、第1可動部材4(第1磁性体)と対向する厚さ方向にN極とS極が直列に着磁され、かつ当該厚さ方向に対して交差する幅方向に上記N極と並列してS極が着磁されるとともに上記厚さ方向に着磁されたS極と並列してN極が着磁された状態になる。
【0056】
第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bが一つの面に一つの極がある永久磁石であることによって、永久磁石をコイル着磁で着磁形成することができ、着磁工程が容易となる。
【0057】
また、第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bとして一つの面に一つの極がある同一の永久磁石を使用するので部品コストの削減が図られる。
【0058】
枠体15の第1枠部15Aには第1永久磁石6Aを第1磁石保持部30Aに挿入するための第1磁石挿入口30aが形成されている。枠体15の第2枠部15Bには第2永久磁石6Bを第2磁石保持部30Bに挿入するための第2磁石挿入口30bが形成されている。
【0059】
第1磁石保持部30Aに保持された第1永久磁石6Aと第2磁石保持部30Bに保持された第2永久磁石6Bは仕切り用壁部31を介して前記厚さ方向に対して交差する幅方向に吸引し合い、第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bは仕切り用壁部31に押し付けられ、第1磁石保持部30Aと第2磁石保持部30Bにそれぞれ保持される。
【0060】
磁性材料により形成された第1可動部材4と、第2磁性体9と、第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bと、磁性材料により形成された第3可動部材10と、第4磁性体14が重ねて配置されるとともに、第1可動部材4及び第3可動部材10の一端側が磁性材料により形成された第1傾倒軸16に係合されることによって、第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bから発生した磁束が、第1可動部材4と、第1傾倒軸16と、第3可動部材10とを経て第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bへと戻る磁束の流路と、第1永久磁石6Aから発生した磁束が、第4磁性体14を通り第2永久磁石6Bへ入り、さらに第2磁性体9を通って第1永久磁石6Aへと戻る流路が形成される。
【0061】
第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bが第1磁石保持部30Aと第2磁石保持部30Bにそれぞれ近づいて保持されることによって、第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bとの間には、
図9中破線で示すような磁束が発生する。第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bとが近づいた中央部分の磁束密度が高くなる。
【0062】
したがって、第1可動部材4が第2磁性体9を間に挟み第1永久磁石6Aおよび第2永久磁石6Bと対向していても、第1可動部材4に対しても磁束が効率よく作用し、第1永久磁石6Aおよび第2永久磁石6Bと、第1可動部材4または第2磁性体9との間の吸引力が強くなる。
【0063】
また、第3可動部材10が第4磁性体14を間に挟み第1永久磁石6Aおよび第2永久磁石6Bと対向していても、第3可動部材10に対しても磁束が効率よく作用し、第1永久磁石6Aおよび第2永久磁石6Bと、第3可動部材10または第4磁性体14との間の吸引力が強くなる。
【0064】
また、第1永久磁石6Aと第2永久磁石6Bは吸引し合い、仕切り用壁部31に押し付けられ、第1磁石保持部30Aと第2磁石保持部30Bにそれぞれ保持されるので、特別な抜け止め手段を用いなくても第1永久磁石6Aの第1磁石挿入口30aからの抜け落ちを防ぐことができる。また、第2永久磁石6Bの第2磁石挿入口30bからの抜け落ちも防ぐことができる。また、第1永久磁石6Aおよび第2永久磁石6Bの組立も簡単となる。
【0065】
次に、操作レバー2の第1傾倒方向(D1方向)の傾倒操作時の吸引力発生機構1の機能について説明する。第2傾倒方向(D2方向)の傾倒操作については省略するが、第1傾倒方向(D1方向)の傾倒操作と実質的に同一である。
【0066】
先ず、操作レバー2の第1傾倒方向(D1方向)への傾倒操作について説明する。
【0067】
前出の
図5は、操作レバー2が操作基準位置(ホームポジションH又はポジションM)に保持されている状態を示す。操作レバー2を
図5に示す状態から第1傾倒方向(D1方向)へ傾倒操作する。そうすると、操作レバー2は第1傾倒軸16を中心に回転させられる。操作レバー2の回転によって、支持ブロック部18は第1可動部材4と永久磁石6との間の吸引力及び第1板バネ7の付勢力に抗して第1可動部材4を押上げる。第1可動部材4が押上げられ、第1可動部材4が永久磁石6から引き剥がされる力でクリック感が発生する。そうすると、操作レバー2はクリック感を伴って第1段ポジションF1へ傾倒操作される。
【0068】
なお、操作レバー2が第1段ポジションF1へ傾倒操作されるとき、第1可動部材4と永久磁石6との間の吸引力は弱くなり、強い吸引状態から弱い吸引状態へ変化して、操作レバー2の操作荷重が急激に軽くなるが、その軽くなった荷重を第1板バネ7の付勢力によって補うことができる。したがって、操作レバー2は操作感触の良い荷重によって傾倒操作される。また、操作レバー2が第1段ポジションF1へ傾倒操作されるとき、操作レバー2の操作荷重が急激に変化することがないので、操作レバー2の傾倒操作時の衝撃音の発生も防げる。
【0069】
操作レバー2の傾倒操作を解除すると、操作レバー2は自動的に第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒操作され、第1段ポジションF1からホームポジションHへ戻る。つまり、第1可動部材4は第1可動部材4に対する永久磁石6の吸引力及び第1板バネ7の付勢力によって第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒されるので、支持ブロック部18が第1可動部材4により押下げられ、操作レバー2は第1傾倒軸16を中心に回転させられてホームポジションHへ傾倒操作される。
【0070】
次に、操作レバー2を第1段ポジションF1から第1傾倒方向(D1方向)側の第2段ポジションF2へ傾倒操作するためには、操作レバー2を第1傾倒方向(D1方向)にさらに傾倒操作する。操作レバー2の第1傾倒方向(D1方向)への傾倒操作によって、操作レバー2は第1傾倒軸16を中心に回転させられる。操作レバー2の回転により、第1可動部材4が第1傾倒軸16を中心に回転させられると、第1可動部材4の板バネ受け部4Bは第1板バネ7を介して第2磁性体9の取付け枠部9Cを第2磁性体9と永久磁石6との間の吸引力に抗して押上げる。取付け枠部9Cが押上げられると、取付け枠部9Cと一体な第2可動部材8が押上られる。第2可動部材8が押上げられ、第2可動部材が永久磁石6から引き剥がされる力でクリック感が発生する。そうすると、操作レバー2はクリック感を伴って第2段ポジションF2へ傾倒操作される。
【0071】
なお、操作レバー2の第2段ポジションF2への傾倒操作を解除すると、操作レバー2は第1段ポジションF1の状態を経てホームポジションHに戻る。このときは、操作レバー2は第2傾倒方向(D2方向)へ自動的に傾倒操作される。つまり、第2磁性体9が永久磁石6に吸引され第2可動部材8が第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒し、第1可動部材4が永久磁石6の吸引力及び第1板バネ7の付勢力によって傾倒することで、操作レバー2はホームポジションHへ戻される。
【0072】
このようにして実施例1によれば、カム面に圧接して操作レバーの保持力を発生するアクチュエータに代えて、磁石の吸引力でのみで操作レバーの保持力を発生させる吸引力発生機構1を設けることで、シフト装置100の薄型化を図ることができる。
【0073】
次に、
図10以降を参照して、ダンパ機構300について説明する。
【0074】
図10は、ダンパ機構300の斜視図である。
図11は、保持部材301の蓋部310を取り外した状態のダンパ機構300を示す斜視図である。
図12は、保持部材301の本体部320の斜視図であり、
図13は、スライド部材340の斜視図である。
【0075】
ダンパ機構300は、操作レバー2の操作基準位置を中心とした所定の傾倒に対して粘性抵抗を発生する。後述のように、ダンパ機構300は、所定の傾倒に対して粘性抵抗を発生することで、操作レバー2の操作基準位置への復帰の際の振動を低減する。以下、このようなダンパ機構300の機能を、「振動低減機能」と称する。実施例1では、一例として、所定の傾倒は、第1傾倒方向(D1方向)及び第2傾倒方向(D2方向)の傾倒を含み、第3傾倒方向(D3方向)の傾倒は含まない。
【0076】
ダンパ機構300は、
図3に示すように、カバー111と吸引力発生機構1との間に設けられ、具体的には、カバー111の直下に隣接する態様で、吸引力発生機構1よりも上側に設けられる。
【0077】
ダンパ機構300は、略板状の形態であり、保持部材301と、スライド部材340(連動部材の一例)とを含む。
【0078】
保持部材301は、スライド部材340を変位可能に支持する。実施例1では、一例として、保持部材301は、スライド部材340をX方向(X軸正側及び負側)にスライド可能に支持する。保持部材301は、カバー111に固定される。実施例1では、一例として、保持部材301は、取り付け部302を備え、ボルト(図示せず)によりカバー111に締結される。
【0079】
保持部材301は、蓋部310と、箱状の形態の本体部320とを含む。蓋部310は、本体部320の上部をカバーする。尚、本体部320には、取り付け部302が形成されてよい。保持部材301は、内部に粘性流体の一例としてグリースG(
図14乃至
図16参照)が充填される。即ち、保持部材301は、内部に粘性流体の一例としてグリースGを保持する。グリースGの粘性は、振動低減機能が有効に機能するように調整されてよい。
【0080】
蓋部310及び本体部320は、中央部に開口部311,321をそれぞれ有する。開口部311,321のサイズは略同じである。尚、本体部320は、
図12に示すように、開口部321まわりに、開口部311,321を介したグリースGの漏れを低減するために、上側に凸状の周壁322を有する。同様に、蓋部310は、下側に凸状の周壁312を有する(
図14及び
図15参照)。また、開口部311,321の周囲には、開口部311,321を介したグリースGの漏れを低減するために、シール部材が設けられてもよい。開口部311,321のサイズは、傾倒する際の操作レバー2の可動範囲に応じて決まる。開口部311,321は、傾倒する際の操作レバー2と保持部材301が干渉しないようなサイズに形成される。
【0081】
スライド部材340は、操作レバー2の操作基準位置を中心とした所定の傾倒に連動して変位する。実施例1では、一例として、スライド部材340は、操作レバー2の操作基準位置を中心とした所定の傾倒に連動してX方向にスライドする。
【0082】
スライド部材340は、
図13に示すように、操作レバー2が通る開口部341を有する板状の形態である。開口部341は、開口部311,321よりも小さい。即ち、開口部341まわりの縁部は、所定の傾倒の際に操作レバー2とスライド部材340が干渉するように形成される。尚、開口部341まわりの縁部とは、スライド部材340における開口部341を画成する板厚部分を指す。これにより、スライド部材340は、操作レバーの所定の傾倒の際に、開口部341まわりの縁部が操作レバー2と係合することでスライドできる。実施例1では、一例として、開口部341のX方向の寸法は、操作レバー2のX方向の寸法(Z方向で開口部341の位置での寸法)に対応する。即ち、開口部341には操作レバー2が実質的にガタなく挿通される(
図15参照)。従って、スライド部材340は、操作レバー2の第1傾倒方向(D1方向)及び第2傾倒方向(D2方向)の各傾倒に対してそれぞれ全ストロークにわたり連動する。
【0083】
具体的には、ユーザの操作に伴い操作レバー2が操作基準位置から第1傾倒方向(D1方向)に傾倒し始めると同時に、操作レバー2が開口部341まわりの縁部の第1傾倒方向(D1方向)側の部位3211に力を付与し、スライド部材340が第1傾倒方向(D1方向)に対応するX方向負側にスライドし始める。ユーザが操作レバー2を第1傾倒方向(D1方向)に傾倒させた後に操作を解除すると(即ち操作レバー2から実質的に手を離すと)、操作レバー2は、上述の吸引力発生機構1の機能によって、操作基準位置へと復帰し始める。この際、操作レバー2が開口部341まわりの縁部の第2傾倒方向(D2方向)側の部位3212に力を付与し、スライド部材340が第2傾倒方向(D2方向)に対応するX方向正側にスライドする。
【0084】
また、ユーザの操作に伴い操作レバー2が操作基準位置から第2傾倒方向(D2方向)に傾倒し始めると同時に、操作レバー2が開口部341まわりの縁部の第2傾倒方向(D2方向)側の部位3212に力を付与し、スライド部材340が傾倒方向D2に対応するX方向正側にスライドし始める。ユーザが操作レバー2を第2傾倒方向(D2方向)に傾倒させた後に操作を解除すると(即ち操作レバー2から実質的に手を離すと)、操作レバー2は、上述の吸引力発生機構1の機能によって、操作基準位置へと復帰し始める。この際、操作レバー2が開口部341まわりの縁部の第1傾倒方向(D1方向)側の部位3211に力を付与し、スライド部材340が第1傾倒方向(D1方向)に対応するX方向負側にスライドする。
【0085】
他方、スライド部材340は、第3傾倒方向(D3方向)の傾倒の際に操作レバー2と開口部341まわりの縁部が干渉しないように、操作基準位置にある操作レバー2と開口部341まわりの縁部との間には、操作レバー2の第3傾倒方向(D3方向)への全ストローク量以上の隙間Δ(
図14参照)が第3傾倒方向(D3方向)に形成される。実施例1では、一例として、開口部341の位置(Z方向の位置)で操作レバー2が回転軸に対称の正方形の形態であり、開口部341は、X方向よりも少なくとも前記隙間Δの分だけY方向(Y軸正側及び負側)に長い長穴の形態である。これにより、操作レバー2の第3傾倒方向(D3方向)の傾倒操作の操作性に実質的に影響しない態様でダンパ機構300を構成できる。
【0086】
図14乃至
図16は、ダンパ機構300の断面図であり、
図14は、Y方向に沿ったダンパ機構300の中央部の断面図であり、
図15及び
図16は、X方向に沿ったダンパ機構300の中央部の断面図である。
図15は、操作レバー2が操作基準位置にあるときの状態を示し、
図16は、操作レバー2が第1傾倒方向(D1方向)に傾倒しているときの状態を示す。
【0087】
スライド部材340は、
図14に示すように、外周部における上側表面に上側に凸状の突起342を有するとともに、外周部における下側表面に下側に凸状の突起343を有する。Y方向で突起342と周壁312との間には、X方向に延在するオリフィスC1が形成される。また、Y方向で突起343と周壁322との間には、X方向に延在するオリフィスC2が形成される。
【0088】
スライド部材340は、
図15に示すように、X方向の長さが保持部材301内の空間(グリースGが充填される空間)よりも短い。従って、操作レバー2が操作基準位置にあるときは、保持部材301内において、スライド部材340のX方向の両側には、オリフィスC1等に比べて大きい容量の室90,91が形成される。
【0089】
操作レバー2が操作基準位置から第1傾倒方向(D1方向)に傾倒すると、第1傾倒方向側の室91の容積が減少し、かつ、第2傾倒方向側の室90の容積が増加する。これに伴い、室91内のグリースGの一部がオリフィスC1、C2を通って室90へと流れる。このときのグリースによる粘性抵抗に起因して、スライド部材340のスライド(操作レバー2の傾倒)に減衰力が作用する。この結果、操作レバー2が操作基準位置から第1傾倒方向(D1方向)に傾倒する際、ダンパ機構300の振動低減機能が働く。また、ユーザが操作レバー2を第1傾倒方向に傾倒させた後に操作を解除すると(即ち操作レバー2から実質的に手を離すと)、操作レバー2は、上述の吸引力発生機構1の機能によって、操作基準位置へと復帰し始める。この際、第1傾倒方向側の室91の容積が増加し、かつ、第2傾倒方向側の室90の容積が減少する。これに伴い、室90内のグリースGの一部がオリフィスC1、C2を通って室91へと流れる。このときのグリースGによる粘性抵抗に起因して、スライド部材340のスライド(操作レバー2の傾倒)に減衰力が作用する。この結果、操作レバー2が操作基準位置へ戻る際、ダンパ機構300の振動低減機能が働く。
【0090】
同様に、操作レバー2が操作基準位置から第2傾倒方向(D2方向)に傾倒すると、第2傾倒方向側の室90の容積が減少し、かつ、第1傾倒方向側の室91の容積が増加する。これに伴い、室90内のグリースGの一部がオリフィスC1、C2を通って室91へと流れる。このときのグリースGによる粘性抵抗に起因して、スライド部材340のスライド(操作レバー2の傾倒)に減衰力が作用する。この結果、操作レバー2が操作基準位置から第2傾倒方向(D2方向)に傾倒する際、ダンパ機構300の振動低減機能が働く。また、ユーザが操作レバー2を第2傾倒方向に傾倒させた後に操作を解除すると(即ち操作レバー2から実質的に手を離すと)、操作レバー2は、上述の吸引力発生機構1の機能によって、操作基準位置へと復帰し始める。この際、第2傾倒方向側の室90の容積が増加し、かつ、第1傾倒方向側の室91の容積が減少する。これに伴い、室91内のグリースGの一部がオリフィスC1、C2を通って室90へと流れる。このときのグリースGによる粘性抵抗に起因して、スライド部材340のスライド(操作レバー2の傾倒)に減衰力が作用する。この結果、操作レバー2が操作基準位置へ戻る際、ダンパ機構300の振動低減機能が働く。
【0091】
このように、実施例1のダンパ機構300によれば、操作レバー2が操作基準位置へ戻る際、振動低減機能が働くので、操作レバー2の操作基準位置への復帰の際の振動を低減できる。
【0092】
ここで、ユーザが操作レバー2を第1傾倒方向又は第2傾倒方向に傾倒させた後に操作を解除すると、上述の吸引力発生機構1の機能に起因して、操作レバー2が操作基準位置へ戻る。この際、操作レバー2の慣性に起因して、操作レバー2が操作基準位置を超えて反対側へ(第1傾倒方向からの復帰時には第2傾倒方向へ、第2傾倒方向からの復帰時には第1傾倒方向へ)と僅かに傾倒しうる。特に上述の吸引力発生機構1の機能によれば、操作基準位置に向かうにつれて強い吸引力が作用するので、操作レバー2の加速度が増加し易い(それに伴い慣性力が増加し易い)。このため、吸引力発生機構1を備える構成では、カム面に圧接して操作レバーの保持力を発生するアクチュエータを備える構成に比べて、操作基準位置を中心とした操作レバーの振動が発生し易く、また、かかる振動の持続時間が長くなり易い。
【0093】
この点、実施例1によれば、上述のように、ダンパ機構300が設けられるので、操作基準位置へ戻る際の操作レバー2の慣性を低減できる。また、操作レバー2の慣性に起因して、操作レバー2が操作基準位置を超えて反対側へと僅かに傾倒した場合でも、更なる操作基準位置への復帰に際して減衰力を作用させることができる。この結果、実施例1によれば、操作基準位置を中心とした操作レバーの振動の発生を抑制でき、また、かかる振動が発生した場合でも持続時間を低減できる。
【0094】
また、実施例1によれば、上述のように、ダンパ機構300は、粘性流体を利用するので、エアや磁気を利用したダンパ機構に比べて簡易な構成で実現でき、シフト装置100を薄型化(Z方向の寸法の低減)を図ることができる。
【0095】
また、実施例1によれば、上述のように、ダンパ機構300は、操作レバー2のまわりかつカバー111の下方に設けられるので、スペース効率良く筐体内に配置でき、シフト装置100全体を薄型化できる。
【0096】
また、実施例1によれば、ダンパ機構300は、上述のように略板状の形態であり、かつ開口部341で操作レバー2と連結(係合)されるので、操作レバー2の動きにダンパ機構300を直接的に連動させることができる。この結果、操作レバー2とダンパ機構300との間に余計な連結部品が不要となり、シフト装置100全体を薄型化できる。
【0097】
また、実施例1によれば、スライド部材340の開口部341と操作レバー2との関係に起因して、操作レバー2が操作基準位置から第3傾倒方向(D3方向)に傾倒してもダンパ機構300の振動低減機能が働かない。即ち、操作レバー2が操作基準位置から第3傾倒方向(D3方向)に傾倒しても、操作レバー2とスライド部材340の開口部341まわりの縁部に係合しない。これにより、ダンパ機構300の振動低減機能が働かせる傾倒方向を所望の方向に限定できる。この結果、第3傾倒方向(D3方向)の傾倒操作の操作性を損なうことがなく、操作感触が良好となる。
【0098】
図17A乃至
図17Dは、シフトパターンのバリエーションを示す図である。
図17A乃至
図17Dでは、ホームポジションH(操作基準位置)とともに、ステーショナリとなるポジションSと、モーメンタリとなるポジションMtが示される。例えば、
図17Aに示す例では、ホームポジションHから第4傾倒方向(D4)のポジションと、第3傾倒方向(D3方向)のポジションとがステーショナリであり、他のポジションはモーメンタリである。
【0099】
スライド部材340の開口部341と操作レバー2との関係は、ステーショナリとなるポジションS(又はホームポジションH)とモーメンタリとなるポジションとの間の傾倒方向(第1方向の一例)に対して、ダンパ機構300の振動低減機能が働くように設定されてよい。即ち、スライド部材340の開口部341まわりの縁部と操作レバー2とは、ステーショナリとなるポジションSとモーメンタリとなるポジションとの間の傾倒の際には係合し、他の傾倒の際には係合しないように形成される。このようにして、操作レバー2の操作基準位置がどこに設定された場合でも、スライド部材340の開口部341と操作レバー2との関係を適切に設定することで、モーメンタリとなるポジションからステーショナリとなるポジションS(又はホームポジションH)への復帰の際の振動を抑制しつつ、他の傾倒方向の傾倒操作の操作性を良好に保つことができる。
【0100】
[実施例2]
実施例2によるシフト装置100Aは、上述した実施例1によるシフト装置100に対して、ダンパ機構300がダンパ機構300Aで置換された点が異なる。以下では、実施例2において上述した実施例1と実質的に同一であってよい構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
【0101】
図18は、実施例2によるシフト装置100Aの斜視図である。
図19は、吸引力発生機構1を含む内部構造の斜視図である。
図20は、ダンパ機構300Aの斜視図である。尚、
図20には、ダンパ機構300Aに併せて、第1傾倒軸16が示されている。
【0102】
ダンパ機構300Aは、ロータリーダンパの形態であり、
図18に示すように、ケース本体110の外側面に取り付けられる。
【0103】
ダンパ機構300Aは、上述した実施例1によるダンパ機構300と同様、操作レバー2の操作基準位置を中心とした所定の傾倒に対して粘性抵抗を発生する。即ち、ダンパ機構300Aは、振動低減機能を有する。実施例2においても、一例として、所定の傾倒は、第1傾倒方向(D1方向)及び第2傾倒方向(D2方向)の傾倒を含み、第3傾倒方向(D3方向)の傾倒は含まない。
【0104】
ダンパ機構300Aは、第1傾倒軸16に対して作用するように設けられる。具体的には、ダンパ機構300Aは、第1傾倒軸16に取り付けられる第1ギア350と、対のカウンタギア360(連動部材の他の一例)と、対の保持部材370とを含む。
【0105】
第1ギア350は、第1傾倒軸16と一体に回転するピニオンギアである。対のカウンタギア360は、第1ギア350と噛み合い、第1ギア350の回転に伴い回転する。対のカウンタギア360は、それぞれ回転軸を形成する軸部362を有し、軸部362の一端に取り付けられる。軸部362の他端は、ロータ(図示せず)を備え、保持部材370内に収容される。
【0106】
保持部材370は、ケース本体110に固定される。保持部材370は、カウンタギア360を変位可能に支持する。各保持部材370は、カウンタギア360の軸部362を回転可能に支持しつつ、軸部362の他端を内部に収容する。各保持部材370は、内部に粘性流体(例えばシリコンオイル)を保持し、軸部362の他端のロータに対して粘性抵抗を付与する。これにより、第1傾倒軸16の回転に伴うカウンタギア360の回転に対して振動低減機能が実現される。
【0107】
操作レバー2が操作基準位置から第1傾倒方向(D1方向)に傾倒すると、第1傾倒軸16が回転し、このときの粘性流体による粘性抵抗に起因して、対のカウンタギア360の回転(操作レバー2の傾倒)に減衰力が作用する。この結果、操作レバー2が操作基準位置から第1傾倒方向(D1方向)に傾倒する際、ダンパ機構300Aの振動低減機能が働く。また、ユーザが操作レバー2を第1傾倒方向に傾倒させた後に操作を解除すると(即ち操作レバー2から実質的に手を離すと)、操作レバー2は、上述の吸引力発生機構1の機能によって、操作基準位置へと復帰し始める。この際、対のカウンタギア360が回転し、このときの粘性流体による粘性抵抗に起因して、スライド部材340のスライド(操作レバー2の傾倒)に減衰力が作用する。この結果、操作レバー2が操作基準位置へ戻る際、ダンパ機構300Aの振動低減機能が働く。操作レバー2が操作基準位置から第2傾倒方向(D2方向)に傾倒する際も同様である。
【0108】
操作レバー2が操作基準位置から第3傾倒方向(D3方向)に傾倒する際には、対のカウンタギア360と第1ギア350との噛み合いが上下方向に外れて、ダンパ機構300Aの振動低減機能が操作レバー2に対して働かない。
【0109】
このようにして、実施例2によっても、実施例2と実質的に同様の効果が得られる。尚、実施例2によるダンパ機構300Aは、上述の実施例1によるダンパ機構300と組み合わせて実現されてもよい。
【0110】
尚、上述した実施例2では、ダンパ機構300Aは、ロータリーダンパの形態であるが、他の形態(例えば粘性流体内のベーンの回転を利用して抵抗を発生する揺動ダンパ)であってもよい。
【0111】
また、上述した実施例2では、ダンパ機構300Aは、対のカウンタギア360を有しているが、カウンタギアの数は1つだけであってもよいし、対のカウンタギア360を省略して第1ギア350にロータを設けることで、第1ギア350に直接的に粘性抵抗を作用させてもよい。
【0112】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0113】
本国際出願は、2017年7月6日に出願した日本国特許出願2017−133108号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。