特許第6754512号(P6754512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6754512水質管理方法、イオン吸着装置、情報処理装置および情報処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6754512
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】水質管理方法、イオン吸着装置、情報処理装置および情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/18 20060101AFI20200831BHJP
   G01N 30/00 20060101ALI20200831BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20200831BHJP
   C02F 1/00 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   G01N33/18 C
   G01N30/00 C
   C02F1/28 Z
   C02F1/00 V
【請求項の数】14
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2020-522081(P2020-522081)
(86)(22)【出願日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】JP2019040870
【審査請求日】2020年4月17日
(31)【優先権主張番号】特願2018-195690(P2018-195690)
(32)【優先日】2018年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山下 幸福
(72)【発明者】
【氏名】矢野 大作
(72)【発明者】
【氏名】蔦野 恭平
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0334311(US,A1)
【文献】 特開2012−093217(JP,A)
【文献】 特開2016−221427(JP,A)
【文献】 特開2017−227577(JP,A)
【文献】 特開2005−000748(JP,A)
【文献】 特開2003−136052(JP,A)
【文献】 特開2015−182063(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0123737(KR,A)
【文献】 特開2012−205996(JP,A)
【文献】 特開2001−153854(JP,A)
【文献】 特開平9−271769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/18
C02F 1/00
B01J 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象水に含まれる不純物イオンの濃度を管理する水質管理方法において、
イオン吸着体と積算流量計とが設けられたイオン吸着装置を前記分析対象水が流れる流通管に接続する工程と、
前記イオン吸着装置に対して所定の期間にわたって前記流通管から前記イオン吸着体に前記分析対象水を通水し、前記分析対象水に含まれるイオンを吸着させてイオン吸着体試料とする工程と、
を有し、
前記イオン吸着装置において前記積算流量計は、前記イオン吸着体の前記分析対象水の流れ方向の下流側に設けられており、
前記所定の期間の終了後、前記イオン吸着体試料の両端を閉じた状態として前記イオン吸着装置を前記流通管から取り外し、
前記イオン吸着体試料の分析を行うまで、前記イオン吸着体試料の両端を閉じたままとすることを特徴とする水質管理方法。
【請求項2】
前記イオン吸着装置を前記流通管から取り外すとともに新たなイオン吸着装置を前記流通管に接続して当該新たなイオン吸着装置に分析対象水を通水することを繰り返すことにより、複数の期間にわたって連続して前記イオン吸着体試料を得る、請求項1に記載の水質管理方法。
【請求項3】
複数の前記イオン吸着体試料の各々について、当該イオン吸着体試料に対する通水期間を記録する請求項に記載の水質管理方法。
【請求項4】
前記分析対象水を製品の製造過程で使用した後、分析が必要となった場合、前記製品が前記分析対象水を使用した時期に対応する通水期間の前記イオン吸着体試料の定量分析を行う、請求項に記載の水質管理方法。
【請求項5】
前記イオン吸着体試料固有に付与された吸着体識別情報を前記通水期間と対応付けて記録し、前記分析が必要となった場合、前記製品が前記分析対象水を使用した時期に対応する前記通水期間と対応付けて記録された前記イオン吸着体試料の定量分析を行う、請求項に記載の水質管理方法。
【請求項6】
前記流通管は、超純水製造装置から分岐して超純水をユースポイントに供給する配管または該配管から分岐する配管である、請求項1乃至のいずれか1項に記載の水質管理方法。
【請求項7】
分析対象水が流れる流通管に取り外し可能に接続されるイオン吸着装置であって、
取り外し可能に設けられ、前記分析対象水が通水されて前記分析対象水のイオンを吸着するイオン吸着体と、
前記イオン吸着体の前記分析対象水の流れ方向の下流側に設けられて、前記イオン吸着体の通水量の積算値を計測する積算流量計と、
を有することを特徴とするイオン吸着装置。
【請求項8】
前記イオン吸着体と前記積算流量計との間に配置され、前記分析対象水の導通および遮断を行い、かつ前記分析対象水の流量の調整が可能な第1の弁体を備える、請求項に記載のイオン吸着装置。
【請求項9】
前記イオン吸着体の前記分析対象水の流れ方向の上流側に、前記分析対象水の導通および遮断を行う第2の弁体を備える、請求項またはに記載のイオン吸着装置。
【請求項10】
外部から受け付けた操作に基づいて入力情報を入力する入力部と、
分析対象水が通水されて前記分析対象水のイオンを吸着するイオン吸着体が、前記分析対象水が流れる流通管に取り付けられていた時期を示す期間情報と、該イオン吸着体固有に付与された吸着体識別情報とを対応付けて記憶するデータベースと、
前記入力部が入力した入力情報に含まれる日時情報に基づいて、前記吸着体識別情報を前記データベースから検索する検索部と、
前記検索部が検索した吸着体識別情報を出力する出力部とを有する情報処理装置。
【請求項11】
前記入力部は、前記分析対象水を製品の製造過程で使用した後、分析が必要となった場合に、所定の情報を入力する、請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
イオン吸着装置と、定量装置と、情報処理装置とを有し、
前記イオン吸着装置は、
分析対象水が流れる流通管に取り外し可能に設けられ、前記分析対象水が通水されて前記分析対象水のイオンを吸着するイオン吸着体と、
前記イオン吸着体の前記分析対象水の流れ方向の下流側に設けられて、前記イオン吸着体の通水量の積算値を計測する積算流量計とを有し、
前記情報処理装置は、
外部から受け付けた操作に基づいて入力情報を入力する入力部と、
前記イオン吸着体が前記流通管に取り付けられていた時期を示す期間情報と、該イオン吸着体固有に付与された吸着体識別情報とを対応付けて記憶するデータベースと、
前記入力部が入力した入力情報に含まれる日時情報に基づいて、前記吸着体識別情報を前記データベースから検索する検索部と、
前記検索部が検索した吸着体識別情報を出力する出力部とを有し、
前記定量装置は、前記出力部が出力した吸着体識別情報が付与されたイオン吸着体について定量分析を行い、
前記出力部は、前記定量装置が行った定量分析の結果に基づいた提供情報を出力する情報処理システム。
【請求項13】
前記検索部が検索した吸着体識別情報が付与された前記イオン吸着体に対して前記定量装置が行った定量分析の結果から、前記入力情報に応じた情報である提供情報を抽出する抽出部を有し、
前記出力部は、前記抽出部が抽出した提供情報を出力する、請求項12に記載の情報処理システム。
【請求項14】
前記イオン吸着体が前記流通管に取り付けられてから所定の期間が経過した際、または前記イオン吸着体が前記流通管に取り付けられてから前記積算流量計が計測した積算値が所定の値になった際に、所定の通知を行う通知部を有する、請求項12または請求項13に記載の情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水における不純物濃度を管理する水質管理方法に関し、特に、超純水中の極微量金属不純物を定量する水質管理方法と、この水質管理方法に用いられるイオン吸着装置及び情報処理装置と、これらを用いた情報処理システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
超純水は、一般に、河川水、地下水及び工業用水などの被処理水を前処理工程で処理して被処理水中の懸濁物及び有機物の大半を除去することにより前処理水とし、次いで、この前処理水を1次系純水製造装置及び2次系純水製造装置(サブシステム)で順次処理することよって製造される。製造された超純水は、例えば半導体デバイス製造工場においては、ウエハ洗浄などを行うユースポイントに供給される。超純水は医薬品製造工程などにおいても広く使用されている。「純水」と「超純水」の用語は一般には明確には定義分けされていないが、本明細書では、一般に「純水」、「超純水」などの用語で説明される高純度水を総称して「超純水」と呼ぶことにする。
【0003】
超純水は、そこに含まれる不純物の定量も困難であるほどの高い純度を有するが、全く不純物を含有しないわけではない。そして超純水に含まれる超微量成分が半導体デバイスなどの製品に与える影響は、デバイスにおける集積度が高くなるほど無視できなくなる。このため、従来の超純水よりもさらに高い純度を有する超純水の必要性も検討されている。
【0004】
半導体デバイス製造工場などではサブシステムで製造された超純水は配管を経てユースポイントに供給されるが、サブシステムとユースポイントとの間の配管長は長いときには数百メートルに及ぶ場合がある。そのため、配管から微粒子(パーティクル)や金属イオン成分などの不純物がわずかではあるが超純水に混入し、製造される半導体デバイスの特性に悪影響を及ぼす場合がある。一例として、超純水中の金属不純物はデバイスの電気的特性を悪化させることがあり、パーティクルはパターン欠陥や断線、絶縁耐圧低下などの不良を起こすことがある。さらに、超純水製造装置において除去されなかった成分や、超純水製造装置から何らかの理由で瞬間的にまたはある期間にわたって不純物のリークが起こった場合も、同様に、製造されるデバイスの特性に悪影響が及ぶことがある。したがって、ユースポイントに供給される超純水の水質を管理することが極めて重要である。
【0005】
超純水の水質分析項目としては、抵抗率(あるいはその逆数の導電率)、微粒子数、生菌数、さらに、TOC(Total Organic Carbon;全有機炭素)、溶存酸素(DO)、過酸化水素、シリカ、カチオンイオン、アニオンイオン、重金属などの各項目についての濃度が挙げられる。抵抗率、微粒子数、TOC及び溶存酸素などについては、オンラインで測定する機器が用いられている。イオン性不純物についても測定器によるオンライン測定が行われているが、その濃度がオンライン測定器の検出下限以下の場合には、何らかの方法によって当該不純物の濃縮を行った上で定量を行う必要がある。金属イオンについては例えば0.01pptのオーダーでの定量を行うことが求められているが、超純水における不純物の濃縮を行わない限り、現行の分析方法では定量を行うことができない。不純物を濃縮して定量する方法の1つは、クリーンルーム内において特殊な装置により分析対象水を蒸留して濃縮し、その後、通常の定量を行う方法(蒸留法)である。しかしながら蒸留法では、イオン性不純物濃度が低くなればなるほど、蒸発させるべき分析対象水の量が増え、操作も煩雑になることから、コンタミネーションを起こす可能性が高くなる。また、揮発性を有する元素の場合には、正しい定量結果を得られない場合がある。
【0006】
不純物を濃縮して定量する別の方法として、イオン交換機能を有する多孔性膜やイオン交換樹脂などのイオン交換体に分析対象水を通水し、その後、イオン交換体を回収して捕捉されたイオン性不純物を溶離液により溶離し、溶離液に移行したイオン性不純物を定量する方法(濃縮法)がある。特許文献1は、イオン交換機能を有する多孔性膜を用いる濃縮法の分析方法を開示している。また特許文献2は、超純水中の極微量のイオン性不純物の濃度を連続して監視するために、イオン交換機能を有する多孔質膜に所定期間ごとにその期間にわたって分析対象水を通水することを繰り返し、期間ごとに多孔質膜に捕捉されたイオン性不純物を定量することによって、その期間における分析対象水中のイオン性不純物濃度を求める不純物濃度モニター方法を開示している。
【0007】
超純水中のイオン性不純物を濃縮するさらに別の方法として特許文献3は、分析対象水のpHを酸性に調整したのち分析対象水を逆浸透(RO)膜へ供給し、逆浸透膜の濃縮水すなわち逆浸透膜を透過しなかった水に含まれる金属イオンを連続してモニタリングする方法を提案している。しかしながら特許文献3に開示される方法では、逆浸透膜を用いることによるイオン性不純物の濃縮率がそれほど高くないので、分析対象水における0.01pptのオーダーでの不純物金属の定量を実現することができず、超純水の水質管理のために現在求められている要請を満たすことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−45351号公報
【特許文献2】特開2001−153854号公報
【特許文献3】特開2009−156692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
超純水中の極微量のイオン性不純物を定量する方法として濃縮法は、複雑な操作を要さずにコンタミネーションのおそれも小さく、揮散しやすい元素の定量も可能である。このような分析技術は、超純水中に含まれる極微量の不純物の定量を目的として改善され、超純水製造装置の竣工直後やメンテナンス後に超純水の水質がその仕様を満たすものであるかを判断するために重要な役割を担っている。しかしながら特許文献2に記載された不純物濃度モニター方法では、分析対象水を送水する配管系における圧力変動などによって多孔質膜を流れる分析対象水の流量が変化した場合に、その変化を考慮して分析対象水の不純物濃度を計算するようにはなっていないので、結果として定量精度が低下する。
【0010】
ところで、超純水を使用する工程を経て製造される製品に不良などが生じたことが発見された場合には、その不良解析の一環として、超純水の水質の低下があった可能性を考え、使用している超純水から試料採取を行って分析を実行する。この場合、仮に超純水中に含まれていた汚染物質が不良の原因であったとしても、不良の原因となる事象が発生してから試料採取までに相当の時間が経過していることが一般的であるので、調査段階ではその汚染物質が既に超純水中には存在せず、調査に多くの時間と労力をかけたにもかかわらず原因不明のままになることがあった。
【0011】
本発明の目的は、分析対象水中の極微量のイオン性不純物の正確な定量を事後に実行可能であって不良解析の実行を容易なものとする水質管理方法と、この水質管理方法において用いられるイオン吸着装置及び情報処理装置と、これらを用いた情報処理システムとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の水質管理方法は、分析対象水に含まれる不純物イオンの濃度を管理する水質管理方法において、イオン吸着体と積算流量計とが設けられたイオン吸着装置を分析対象水が流れる流通管に接続する工程と、イオン吸着装置に対して所定の期間にわたって流通管からイオン吸着体に分析対象水を通水して分析対象水に含まれるイオンを吸着させてイオン吸着体試料とする工程と、を有し、イオン吸着装置において積算流量計は、イオン吸着体の分析対象水の流れ方向の下流側に設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明のイオン吸着装置は、分析対象水が流れる流通管に取り外し可能に接続されるイオン吸着装置において、取り外し可能に設けられ、分析対象水が通水されて分析対象水のイオンを吸着するイオン吸着体と、イオン吸着体の分析対象水の流れ方向の下流側に設けられて、イオン吸着体の通水量の積算値を計測する積算流量計と、イオン吸着体の分析対象水の流れ方向の下流側に設けられて、分析対象水の導通および遮断を行い、かつ分析対象水の流量の調整が可能な第1の弁体と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の情報処理装置は、
外部から受け付けた操作に基づいて入力情報を入力する入力部と、
分析対象水が通水されて前記分析対象水のイオンを吸着するイオン吸着体が、前記分析対象水が流れる流通管に取り付けられていた時期を示す期間情報と、該イオン吸着体固有に付与された吸着体識別情報とを対応付けて記憶するデータベースと、
前記入力部が入力した入力情報に含まれる日時情報に基づいて、前記吸着体識別情報を前記データベースから検索する検索部と、
前記検索部が検索した吸着体識別情報を出力する出力部とを有する。
【0015】
本発明の情報処理システムは、
イオン吸着装置と、定量装置と、情報処理装置とを有し、
前記イオン吸着装置は、
分析対象水が流れる流通管に取り外し可能に設けられ、前記分析対象水が通水されて前記分析対象水のイオンを吸着するイオン吸着体と、
前記イオン吸着体の前記分析対象水の流れ方向の下流側に設けられて、前記イオン吸着体の通水量の積算値を計測する積算流量計とを有し、
前記定量装置は、前記積算流量計が計測した積算値を用いて、前記イオンが吸着されたイオン吸着体の定量分析を行い、
前記情報処理装置は、
外部から受け付けた操作に基づいて入力情報を入力する入力部と、
前記イオン吸着体が前記流通管に取り付けられていた期間を示す期間情報と、該イオン吸着体固有に付与された吸着体識別情報とを対応付けて記憶するデータベースと、
前記入力部が入力した入力情報に含まれる日時情報に基づいて、前記吸着体識別情報を前記データベースから検索する検索部と、
前記検索部が検索した吸着体識別情報が付与された前記イオン吸着体に対して前記定量装置が行った定量分析の結果に基づいた提供情報を出力する出力部とを有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、分析対象水中の極微量のイオン性不純物の正確な定量を事後に実行可能であって不良解析の実行を容易なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の一形態のイオン吸着装置を示す図である。
図2】水質管理方法を説明するフローチャートである。
図3】本発明の別の実施形態のイオン吸着装置を示す図である。
図4】超純水を使用する工程を有する工場におけるイオン吸着装置の接続場所の例を説明する図である。
図5図1に示したイオン吸着装置を利用した情報処理システムの第1の例を示す図である。
図6図5に示した情報処理装置の内部構成の一例を示す図である。
図7図6に示したデータベースに記憶された、期間情報と吸着体識別情報との対応付けの一例を示す図である。
図8図6に示したデータベースに記憶された、設置情報と吸着体識別情報との対応付けの一例を示す図である。
図9図5に示した情報処理システムにおける情報処理方法のうち、イオン吸着装置における処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図10図5に示した情報処理システムにおける情報処理方法のうち、情報処理装置における検索処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図11図1に示したイオン吸着装置を利用した情報処理システムの第2の例を示す図である。
図12図11に示した情報処理装置の内部構成の一例を示す図である。
図13図11に示した情報処理システムにおける情報処理方法の一例を説明するためのシーケンス図である。
図14図13に示したシーケンス図を用いて説明したステップS4の詳細な処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図15図13に示したシーケンス図を用いて説明したステップS8の詳細な処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の一形態のイオン吸着装置を示している。ここでは、分析対象水が半導体デバイス等の製品の製造過程で使用され、製品と接触する超純水であるものとするが、本発明のイオン吸着装置あるいは水質管理方法が適用対象とする分析対象水はこれに限定されるものではない。
【0019】
超純水をユースポイントに供給するための超純水供給配管10から流通管11が分岐しており、流通管11には開閉弁12が設けられている。イオン吸着装置20は、配管コネクタ21を介して流通管11の先端に取り外し可能に取り付けられている。イオン吸着装置20の取り付け及び取り外し時に超純水供給配管10内の超純水が汚染されないように、超純水供給配管10から分岐した配管(流通管11など)に対してイオン吸着装置20が取り付けられるようにすることが好ましい。
【0020】
イオン吸着装置20の内部には、1または複数の内部配管22が配管コネクタ21に接続しており、分析対象水である超純水が流通管11から配管コネクタ21を経て各内部配管22を流れるようになっている。複数の内部配管22を設ける場合には、それらの内部配管22は相互に並列に設けられる。図示したものでは、2つの内部配管22が設けられている。内部配管22ごとに、イオン吸着体24が取り外し可能に設けられている。各内部配管22において、その内部配管22での分析対象水の流れ方向で考えて、イオン吸着体24の入口側には開閉弁23が設けられ、イオン吸着体24の出口側には、流量調整弁25が設けられ、さらにその下流側にはイオン吸着体24を流れた分析対象水の積算流量を計測する積算流量計26が設けられている。各内部配管22の出口は排出配管27に接続している。流量調整弁25は、分析対象水の導通および遮断を行い、かつ分析対象水の流量の調整が可能な第1の弁体であり、開閉弁23は、分析対象水の導通および遮断を行う第2の弁体である。配管コネクタ21を介して供給され各内部配管22を経てイオン吸着体24を流れた分析対象水は、最終的には排出配管27を介して排出水として外部に排出される。
【0021】
本実施形態のイオン吸着装置20は、分析対象水中のイオン性不純物の定量を上述した濃縮法によって実行するためのものであり、流通管11から内部配管22に流れ込んだ分析対象水中の金属イオンなどのイオン性不純物はイオン吸着体24に捕捉される。イオン吸着体24としては、イオン交換機能を有する多孔質膜や、粒状のイオン交換樹脂を充填したカラムなどを用いることができる。しかしながら、高流速で通水しても入口と出口の間の差圧が大きくならないように、かつ、分析対象水がイオン交換体を短絡して流れてしまうというショートパスが起こらないようにするために、イオン吸着体24としては、モノリス状有機多孔質イオン交換体を用いることが好ましい。モノリス状有機多孔質イオン交換体としては、例えば、特開2009−62412号公報に開示された連続気泡構造、特開2009−67982号に開示された共連続構造、特開2009−7550号公報に開示された粒子凝集型構造、特開2009−108294号公報に開示された粒子複合型構造などの構造を有するものを使用することができる。モノリス状有機多孔質イオン交換体を使用してイオン吸着体24における差圧を小さくすることによりイオン吸着体24への分析対象水の流量を大きくでき、これによって分析対象水中のイオン性不純物の濃度が同じであってもイオン吸着体24へのイオン性不純物の吸着量を大きくできるので、イオン性不純物の定量下限をより低濃度側とすることができる。
【0022】
分析対象水に含まれる金属イオンは、その種類によって、カチオン交換体に良好に吸着されるものとアニオン交換体に良好に吸着されるものとがある。イオン性不純物として検出対象となる金属イオンが特定のものに限定されていない場合には、例えば超純水を使用して製造した製品の不良解析などを行う場合であれば、イオン吸着装置20にはカチオン交換体を含むイオン吸着体24とアニオン交換体を含むイオン吸着体24の両方を設けることが好ましい。
【0023】
所定の期間にわたって分析対象水をイオン吸着体24に通水したら、次に、イオン吸着体24に捕捉されたイオン性不純物を溶離液によって溶離させ、溶離液中に移行したイオン性不純物の濃度を定量する。溶離液には分析対象水中のイオン性不純物が濃縮されることとなるが、その濃縮倍率は、イオン吸着体24に対する通水の積算流量を溶離液の体積で除したものとなる。したがって、分析対象水中におけるイオン性不純物の定量精度はイオン吸着体24を流れた積算流量にも依存する。イオン吸着体24に対する通水量は分析対象水の圧力変動に応じても変化するから、通水開始時に流量を調整したとしてその流量に通水時間を乗じたとしても実際の積算流量に一致するとは限らない。そこで本実施形態のイオン吸着装置20では、イオン吸着体24を流れた分析対象水の実際の積算流量を求めるために内部配管22に積算流量計26を設け、正確な積算流量値が得られるようにしている。分析対象水の流れ方向に関してイオン吸着体24の下流側に積算流量計26を設けるのは、積算流量計26からの汚染の影響を避けるためと後述する発泡の影響を避けるためである。また、各イオン吸着体24に分析対象水を通水するときには通水に適した流量が存在するから、各イオン吸着体24への分析対象水の流量の調整時に使用するために、積算流量計26は、瞬時流量も計測可能であることが好ましい。流量の調整時には、瞬時流量の計測値を参照しながら流量調整弁25の開度を調整する。
【0024】
長期間にわたって連続して分析を行うときの信頼性の向上のためにも、イオン吸着装置20には複数のイオン吸着体24を設けてこれらのイオン吸着体24に並列に分析対象水が流れるようにすることが好ましい。この場合、イオン性不純物の定量のためにはイオン吸着体24ごとの積算流量が必要となるので、イオン吸着体24ごとに積算流量計26を設ける必要がある。また、イオン吸着装置20に複数のイオン吸着体24を互いに並列となるように設け、これらの複数のイオン吸着体24に分析対象水を同時に流せるようにしても良い。こうすることで、互いに同じ試料(分析対象水を吸着した吸着体)を同時に複数得ることができるため、得た複数の試料について分析を行えば、その分析結果の信頼性を高めることができる。また、互いに同じ試料を複数得ることができるため、試料として回収したイオン吸着体24の一部の紛失や分析装置不具合による定量失敗などの不測の事態への対応もできる。
【0025】
ところで、半導体デバイス製造に用いられる超純水では溶存酸素(DO)濃度を極限にまで低下させる必要があり、そのため、超純水を循環する経路に設けられるタンクなどでは超純水と酸素とが接しないように窒素ガスを充填しており、循環する超純水には窒素が分圧0.1MPa程度まで溶解していることが多い。超純水は、通常、加圧されて送水されているから、分析対象水である超純水の圧力が低下したときには、溶存している窒素の気泡が生じることになる。本実施形態のイオン吸着装置20を用いて半導体デバイス製造用の超純水におけるイオン性不純物の定量を行う場合、イオン吸着装置20内で気泡が生じてそれがイオン吸着体24内に蓄積するとイオン吸着体24の内部で部分的な閉塞が生じ、イオン性不純物を吸着するための表面積が減少し、その結果、分析対象水中のイオン性不純物を完全には捕捉できなくなる。イオン性不純物を完全には捕捉できない場合には、そこから生じた定量結果も不正確なものとなる。そのため、イオン吸着装置20に内部で大きな圧力降下をもたらす可能性がある部材、すなわち流量調整弁25及び積算流量計26は、分析対象水の流れ方向で見て、イオン吸着体24よりも下流側に設けることが好ましい。また、気泡が発生したとしてもその気泡が系外に排出されやすくするために、イオン吸着装置20の特に内部配管22では、上向流で分析対象水が流れるようにすることが好ましい。
【0026】
本実施形態のイオン吸着装置20は、所定の期間にわたって分析対象水を通水したのち、流通管11から取り外される。後述するようにイオン吸着体24に捕捉されたイオン性不純物の定量は、取り外し後直ちに行ってもよいし、ある程度の時間が経過してから、あるいは事後の要求に応じて行ってもよい。取り外してから定量を行うまでの間にイオン吸着体24が汚染されたり、あるいはイオン吸着体24からイオン性不純物が流出したりしないように、イオン吸着体24の入口側と出口側とを完全に閉じることができるようにすることが好ましい。そのため、本実施形態のイオン吸着装置20では、イオン吸着体24の入口側に上述した開閉弁23を設けている。流量調整弁25は、イオン吸着体24の出口側を完全に閉じるためにも機能する。
【0027】
次に、このイオン吸着装置20を用いた水質管理方法について、図2を用いて説明する。ここでは分析対象水として超純水供給配管10を流れる超純水に不純物として含まれる金属イオンの定量を行って水質管理を行うものとする。まず、イオン吸着装置20が流通管11に接続される前に開閉弁12を開けて流通管11内に残存している滞留水などをブローし、一旦、開閉弁12を閉じて、その後、ステップ101に示すように、配管コネクタ21を介してイオン吸着装置20を流通管11に接続する。そして、開閉弁12を開け、各内部配管22において開閉弁23と流量調整弁25とを開け、ステップ102に示すように、イオン吸着体24への分析対象水の通水を開始する。このとき、積算流路計26の瞬時流量計測機能を用いて瞬時流量を計測して流量調整弁25の開度を調整することにより、イオン吸着体24を流れる分析対象水の流量を規定値に設定する。そして、所定の期間にわたってイオン吸着体24への分析対象水の通水を行ったら、開閉弁23と流量調整弁25とを閉じ、開閉弁12も閉じ、流通管11からイオン吸着装置20を取り外して、ステップ103に示すようにイオン吸着装置20を回収する。分析対象水が通水されることによりイオン性不純物(ここでは金属イオン)を吸着したイオン吸着体24のことをイオン吸着体試料とも呼ぶ。図2は、特定のイオン吸着装置20に着目したフローチャートであり、ステップ103においてイオン吸着装置20を取り外したら、その時点で、交換用のイオン吸着装置20を流通管11に接続することで(ステップ101)、連続した期間にわたって水質の管理を行うことができる。なお、開閉弁12は、イオン吸着装置20が流通管11に接続していないときは、流通管11内の滞留水をブローするときを除いて全閉とされる。また、イオン吸着装置20が流通管11に接続していないときには、流通管11の端部や内部が汚染されないように、流通管11の先端を塞ぐことが好ましい。
【0028】
イオン吸着装置20を回収したら、ステップ104において、そのイオン吸着装置20に通水した期間(例えば、何月何日の何時から何月何日の何時まで)の記録を行う。この記録は、例えば、物理的なタグ(例えば手書きのラベル、印字されたラベルあるいはIC(集積回路)チップ)に通水期間を記入または記録してイオン吸着装置20に取り付けるものであってもよいし、イオン吸着装置20にシリアル番号などが付与されている場合には、シリアル番号と通水期間とをデータベース上で管理するものであってもよい。積算流量計26でのデータ消失に備え、その時点での積算流量も記録することが好ましい。その後、ステップ105において、現時点で金属イオンの定量を行う必要があるかどうかを判断する。ルーチンの分析業務を行っているのであれば定量が必要であるとしてステップ107に進む。現時点では定量の必要はないが不良解析のために後日、定量を行う可能性がある、という場合には、ステップ106においてそのイオン吸着装置20を保管し、ステップ105に戻る。なお、ステップ106においてイオン吸着装置20を保管する場合を説明したが、イオン吸着装置20からイオン吸着体24を取り出して、イオン吸着体24を保管するようにしても良い。
【0029】
ステップ107では、例えばクリーンルームの中などにおいてイオン吸着装置20からイオン吸着体24を取り外し、取り外したイオン吸着体24に対して強酸あるいは強塩基などの溶離液を通液して吸着金属の溶離を行い、続いてステップ108において溶離された金属を含む溶離液を試料として金属の定量を行う。定量方法としては、一般的な定量分析法を用いることができ、例えば、プラズマ質量分析(ICP−MS)法、プラズマ発光分光分析(ICP)法、原子吸光法、イオンクロマトグラフィ法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
ステップ108での金属の定量を行うことで、ある1つのイオン吸着装置20に対する一連の処理は終了するが、イオン吸着装置20及びイオン吸着体24自体は再利用することができる。再利用するためには、ステップ111に示すように定量後のイオン吸着体24を洗浄し、ステップ112に示すように洗浄後のイオン吸着体24をイオン吸着装置20に装着して交換用のイオン吸着装置20とする。この新たな交換用のイオン吸着装置20により、再びステップ101からの処理を実行することができる。
【0031】
分析対象水である超純水を使用して製造した製品などに不良が発生し、その不良の原因が超純水の水質にあると疑われることがある。例えば、半導体デバイス製造において、半導体洗浄工程で超純水を用いてウェハを洗浄した後、数種の工程を経てからウェハの検査が行われた結果、ウェハの不良が検出された場合、その不良の原因として、ウェハ洗浄時の超純水に含まれるイオンが疑われることがある。つまり、製品に問題が生じたときに、製品が水を使用した時期に対応する通水期間のイオン吸着体試料の定量分析が必要であると判断し、定量分析を行う。そのような超純水に起因すると疑われる事象が発生した場合には、ステップ106において保管していたイオン吸着装置20のうち少なくともその事象に対応する期間を通水期間とするイオン吸着装置20について、ステップ105において定量が必要であると判断し、そのイオン吸着装置20のイオン吸着体試料に対し、ステップ107での吸着金属の溶離及びステップ108の金属の定量を実施する。その結果、その不良などの事象の原因が、該当する期間における超純水中の金属イオンであるかどうかの判断を行うことができる。さらに、定量を行ったイオン吸着体試料の吸着体情報(後述する)から、製品などに発生した不良などの事象の原因が、どの箇所であるかを特定することができる。例えば、図4(詳細は後述する)に示すように、超純水製造装置30の限外ろ過装置37の出口、超純水製造装置30と供給配管47との接続位置、製造棟50の主配管51,52、主配管51,52から超純水使用装置55に接続する枝配管56等にイオン吸着装置20を設ければ、定量結果と吸着体情報とから、製品などに発生した不良などの事象の原因がどの装置、どの部材にあるのかを特定することができる。また、例えば、図4の供給配管46又は供給配管47のように長い配管に対して複数のイオン吸着装置20を所定間隔で設ければ、同様に、製品などに発生した不良などの事象の原因が、供給配管46又は供給配管47のどの箇所であるかを特定することもできる。事象に対応する期間を通水期間とするイオン吸着装置20とは、事象が生じた製品の製造工程において過去のいずれかの時点で分析対象水に接触しているときに、その接触している期間を含む通水期間のイオン吸着装置20のことである。また、ここでの通水期間は、通水していた日時を特定できる時期を示す情報である(以下の説明について、同じ)。例えば、通水期間は、イオン吸着装置20に通水を開始した日時と、通水を終了した日時との少なくとも一方が含まれる情報である。
【0032】
本実施形態では、イオン吸着装置20ごとに通水期間を記録しているので、事後に不良の発生が判明した場合であっても、保管中のイオン吸着装置20から不良に該当する通水期間のイオン吸着装置20を容易に探し出して分析することが可能になる。より精密に不良解析を行うためには、不良が発生した期間に対応する通水期間のイオン吸着装置20に対して定量を行うだけでなく、不良が発生した期間の前後の期間に対応する通水期間のイオン吸着装置20についても定量を行うことが好ましい。
【0033】
本実施形態によれば、超純水中の極微量金属イオンを所定の期間ごとの連続した定量値として管理することができ、製造品の歩留まり低下などが発生した際には、その製品の製造工程履歴とイオン吸着体への通水期間及び金属イオンの定量結果との照合により、歩留まり低下原因が超純水由来であったか否かを速やかに判断できるようになる。
【0034】
次に、本発明の別の実施形態のイオン吸着装置について、図3を用いて説明する。図1及び図2に示した例では、開閉弁12を開けて流通管11内に残存している滞留水などをブローしてからイオン吸着装置を流通管11に取り付けている。しかしながら現場によっては流通管11のブローを直接行うことが困難な場合もある。図3に示すイオン吸着装置は、図1に示したイオン吸着装置20における開閉弁23を三方弁28で置き換えることにより、イオン吸着装置自体を介して流通管11のブローを実行できるようにしたものである。三方弁28の一方の出口はイオン吸着体24の入口に接続し、他方の出口は排出配管27に直接接続しており、配管コネクタ21を介して供給された分析対象水の送水先をイオン吸着体24側と排出配管27側との間で切り替えることができるようになっている。図3に示すイオン吸着装置20を使用する場合は、開閉弁12を閉じた状態でイオン吸着装置20を流通管11に接続し、三方弁28を排出配管27側に切り替え、そののち開閉弁12を開けて滞留水が排出配管27を介して排出されるようにする。滞留水のブローが終了したら、三方弁28を一旦閉じ、次に、三方弁28をイオン吸着体24側に切り替えて、イオン吸着体24への分析対象水の通水を開始する。これ以降は、図2を用いて説明した手順を実行すればよい。
【0035】
次に、上述した水質管理方法を半導体デバイス製造工場に適用した例を説明する。図4は、半導体デバイス製造工場における超純水の製造及び消費する部分を示したフローシートであり、半導体デバイス製造工場におけるイオン吸着装置20の接続場所の例を示している。
【0036】
図示する半導体デバイス製造工場では、一次純水が供給されて超純水を製造する超純水製造装置(2次系純水製造装置)30すなわちサブシステムと、実際に超純水を使用する場所である製造棟50とが分離して設けられている。超純水製造装置30は、一次純水を受け入れて一時的に貯蔵するタンク31と、タンク31の出口に設けられたポンプ(P)32と、ポンプ32の出口に設けられた熱交換器(HE)33と、超純水製造のための工程をそれぞれ実施する紫外線酸化装置(UV)34、膜脱気装置(DG)35、非再生型イオン交換装置(CP)37及び限外ろ過装置(UF)38と、を備えている。紫外線酸化装置34、膜脱気装置35、非再生型イオン交換装置37及び限外ろ過装置38はこの順で熱交換器33の出口に直列に接続している。膜脱気装置35には真空ポンプ(VP)36が接続している。限外ろ過装置38の出口水が超純水であり、その一部は、供給配管46,47を介して製造棟50に供給され、製造棟50に供給されなかった残りの超純水は循環配管39を介してタンク31に戻される。循環配管39には、例えば超純水が循環する経路における水圧を一定に制御するなどのために、弁40が設けられている。超純水中の溶存酸素を極限まで少なくするため、タンク31には酸素をパージするために窒素(N2)ガスが供給されている。酸素の除去とともに窒素スイープを行うため、膜脱気装置35にも窒素ガスが供給されている。超純水製造装置30の構成やその配置は図示するものに限定されるものではない。
【0037】
製造棟50への供給配管46,47のうち供給配管46の超純水製造装置30側の位置には、超純水中の極微量のイオン性不純物を捕捉するためにイオン吸着体41が設けられている。このイオン吸着体41は設けなくてもよい。
【0038】
製造棟50においては、供給配管46,47にそれぞれ接続する主配管51,52が設けられ、主配管51,52に対して複数の超純水使用装置55がそれぞれ枝配管56を介して接続している。超純水使用装置55は、例えば洗浄装置、エッチング装置、露光装置などである。主配管51,52の入口側には、供給配管46,47からそれぞれ供給されてくる超純水に含まれる極微量のイオン性不純物を捕捉するイオン吸着体53が設けられている。このイオン吸着体53は必ずしも設けなくてもよい。
【0039】
イオン吸着装置20を設けることが可能な場所の例は、図4において符号Mにより示されている。すなわち、超純水製造装置30においては、限外ろ過装置37の出口に設けてもよいし、供給配管47との接続位置に設けてもよい。製造棟50においては、各主配管51,52に設けてもよいし、それぞれの超純水使用装置55に接続する枝配管56に設けてもよい。イオン吸着装置20の設置場所や設置数は図示したものに限定されるものではなく、任意の箇所にイオン吸着装置20を設置することができる。各イオン吸着装置20は、図1に示したものと同様に開閉弁12を介して超純水が流れる配管に接続しており、イオン吸着装置20を取り付ける際や取り外す際には開閉弁12を全閉とし、イオン吸着装置20を取り付けてから開閉弁12を開弁する。イオン吸着装置20を取り付ける前に開閉弁21を開けて滞留水をブローすることが好ましい。イオン吸着装置20からの排出水は、半導体デバイス工場に回収水の系統が設けられているのであれば、回収水の系統に戻すことが好ましい。
【0040】
表1は、本実施形態のイオン吸着装置20を使用して実行した水質管理の結果の例を示している。半導体デバイスの洗浄に使用される超純水の配管にイオン吸着装置20を設置するものとし、5日間の通水ごとにイオン吸着装置20を交換・回収し、金属イオンの定量を行った。5日間である各期間ごとの積算流量はそれぞれ1000Lであり、各期間ごとに表において「洗浄処理品ロット番号」で示されるロットの中間加工品に対する洗浄処理を行った。そして、各ロットの中間加工品から得られる製品の良品率を求めた。また、洗浄処理に使用する超純水に対しては、オンラインでTOC、抵抗率、溶存酸素濃度、及び微粒子個数の測定を行っている。ここで示した例では、5月16日から5月20日までの5日間に洗浄処理を行った中間加工品から得た製品の良品率が他の期間のものに比べて悪い。このような良品率の低下は、製造工程の中間検査で判明することもあるが、場合によっては最終製品が得られてから、あるいは製品を出荷してから判明することもあるので、例えば、洗浄処理から数週間後である。オンラインで測定した結果からは不良発生の原因となる徴候は見出せないが、イオン吸着体試料に吸着した金属の定量結果からは、不良が多く発生した期間において超純水中のカルシウムと鉄の濃度が高いことが分かるので、不良の原因がカルシウム及び鉄であると推測できる。本実施形態のイオン吸着装置20を用いれば、不良の発生が判明してから過去のイオン吸着体試料の定量を行うことができるので、不良解析を容易に行えるようになる。
【0041】
【表1】
【0042】
以下に、上述したイオン吸着装置の利用方法について、例を挙げて説明する。
(第1のシステム例)
【0043】
図5は、図1に示したイオン吸着装置20を利用した情報処理システムの第1の例を示す図である。
【0044】
図5に示した情報処理システムは、イオン吸着装置100と、定量装置200と、情報処理装置300とを有する。イオン吸着装置100は、図1または図3に示したイオン吸着装置20に相当する。さらに、イオン吸着装置100には、通知部110が接続されている。通知部110は、イオン吸着装置100に具備されたイオン吸着体(図1または図3に示したイオン吸着体24。以下、同じ。)が、流通管(図1または図3に示した流通管11。以下、同じ。)に取り付けられてから所定の期間が経過した際に、例えば、その旨を示す通知等、所定の通知を行う。または、通知部110は、イオン吸着装置100に具備されたイオン吸着体が流通管に取り付けられてから、イオン吸着装置100に具備された積算流量計(図1または図3に示した積算流量計26。以下、同じ。)が計測した積算値が所定の値になった際に、例えば、その旨を示す通知等、所定の通知を行う。このとき、通知部110は、イオン吸着体を流通管から取り外すことを促す通知を行う。また、通知部110は、イオン吸着装置100内部に具備されているものであっても良いし、情報表示機能を具備する他の端末装置等の装置に表示させるものであっても良い。なお、必ずしも通知部110を備えている必要はない。例えば、イオン吸着装置20に複数のイオン吸着体24を互いに並列となるように設け、イオン吸着装置が流通管に取り付けられてから(具体的には、1つのイオン吸着体に分析対象水が流れてから)所定の期間が経過した際に、または、イオン吸着装置が流通管に取り付けられてから積算流量計が計測した積算値が所定の値になった際に、自動または手動で開閉弁23が切り替えられて、他のイオン吸着体に分析対象水が流れるように構成し、所定の時期にイオン吸着体を流通管から取り外すようにしても良い。
【0045】
定量装置200は、イオンが吸着されたイオン吸着体の定量分析を行う。定量分析の具体的な方法は、上述した通りである。定量分析の対象となるイオン吸着体の特定方法については、後述する。
【0046】
図6は、図5に示した情報処理装置300の内部構成の一例を示す図である。図5に示した情報処理装置300は図6に示すように、入力部310と、データベース320と、検索部330と、出力部350とを有する。なお、図6には、図5に示した情報処理装置300が具備する構成要素のうち、本形態に関わる主要な要素のみを示した。
【0047】
入力部310は、外部から受け付けた操作に基づいて入力情報を情報処理装置300に入力する。具体的には、入力部310は、外部からの所定の操作を受け付け、受け付けた操作に基づいて情報を入力する。入力部310が入力する情報としては、例えば、半導体デバイス製造プロセスにおいてウェハの不良が検出され、ウェハ洗浄水を使用した時期に対応する通水期間のイオン吸着体試料の定量分析を行う必要があると判断した場合に、イオン吸着体試料の検索を指示する情報が挙げられる。入力部310は、例えば、キーボートやマウス、タッチパネル等が挙げられる。また、入力部310は、所定の情報の入力を促すGUI(Graphical User Interface)を表示し、その表示に従って行われた操作に基づいて情報を入力するものであっても良い。また、イオン吸着装置100で記録された情報や通知部110が通知した情報が、情報処理装置300へ送信され、入力部310は、送信されてきた情報を受信することで入力されるものであっても良い。
【0048】
データベース320は、イオン吸着体が流通管に取り付けられていた期間(イオン吸着体に通水された期間)を示す期間情報(イオン吸着体に通水を開始した日時や通水を終了した日時等の情報を含む)と、イオン吸着体固有に付与された吸着体識別情報とを対応付けて吸着体情報として記憶する。また、データベース320は、イオン吸着体が取り付けられた(取り付けられていた)イオン吸着装置100の設置情報と、吸着体情報とを対応付けて記憶する。なお、データベース320への情報の登録方法は、特に限定されない。例えば、期間情報を登録する場合、開閉弁23を開閉した時点でその日時を含む情報がデータベース320へ送信され、期間情報として記憶(登録)されるようにしても良い。また、期間情報を登録する場合、積算流量計26に分析対象水が流れ始めた時点と流れ終わった時点とでその日時を含む情報がデータベース320へ送信され、期間情報として記憶(登録)されるようにしても良い。また、吸着体識別情報を登録する場合、イオン吸着体24にバーコードや二次元コード等の識別用タブを付して、付された識別用タブをコードリーダ(読み取り装置)が読み取り、読み取られた情報がデータベース320へ送信され、吸着体情報として記憶(登録)されるようにしても良い。
【0049】
図7は、図6に示したデータベース320に記憶された、設置情報と吸着体情報との対応付けの一例を示す図である。図6に示したデータベース320には図7に示すように、イオン吸着体が取り付けられたイオン吸着装置100が設置された位置を識別可能な「顧客No.」、「系統No.」および「装置No.」と、「吸着体情報」とが対応付けられて記憶されている。「顧客No.」、「系統No.」および「装置No.」は、これらを合わせて設置情報とする。「顧客No.」は、イオン吸着体が取り付けられたイオン吸着装置100が設置された顧客固有に付与された顧客識別情報である。「系統No.」は、顧客の施設に構築された系統固有に付与された系統識別情報である。「装置No.」は、イオン吸着装置100がその系統内のどの装置に設置されているかを示すものであり、設置された装置固有に付与された装置識別情報である。このように、「顧客No.」、「系統No.」および「装置No.」を用いることで、イオン吸着体が取り付けられたイオン吸着装置100の設置位置を特定することができる。「吸着体情報」の詳細については、後述する。
【0050】
例えば、図7に示すように、顧客No.「A001」と、系統No.「1」と、装置No.「1」と、吸着体情報「A001−1−1」とが対応付けられて記憶されている。これは、顧客識別情報「A001」が付与された顧客の施設に構築された系統識別情報「1」が付与された系統に設置された装置識別情報「1」が付与された装置には、吸着体情報「A001−1−1」が示すイオン吸着体が取り付けられている(取り付けられていた)ことを示している。また、顧客No.「A001」と、系統No.「1」と、装置No.「2」と、吸着体情報「A001−1−2」とが対応付けられて記憶されている。これは、顧客識別情報「A001」が付与された顧客の施設に構築された系統識別情報「1」が付与された系統に設置された装置識別情報「2」が付与された装置には、吸着体情報「A001−1−2」が示すイオン吸着体が取り付けられている(取り付けられていた)ことを示している。また、顧客No.「A001」と、系統No.「2」と、装置No.「1」と、吸着体情報「A001−2−1」とが対応付けられて記憶されている。これは、顧客識別情報「A001」が付与された顧客の施設に構築された系統識別情報「2」が付与された系統に設置された装置識別情報「1」が付与された装置には、吸着体情報「A001−2−1」が示すイオン吸着体が取り付けられている(取り付けられていた)ことを示している。また、顧客No.「A001」と、系統No.「2」と、装置No.「2」と、吸着体情報「A001−2−2」とが対応付けられて記憶されている。これは、顧客識別情報「A001」が付与された顧客の施設に構築された系統識別情報「2」が付与された系統に設置された装置識別情報「2」が付与された装置には、吸着体情報「A001−2−2」が示すイオン吸着体が取り付けられている(取り付けられていた)ことを示している。
【0051】
図8は、図6に示したデータベース320に記憶された、期間情報と吸着体識別情報との対応付けの一例を示す図である。この対応付けが、上述した吸着体情報である。図8に示した吸着体情報は、図7に示した吸着体情報の1つ(吸着体情報「A001−1−1」)であり、図7に示すように、データベース320に吸着体情報が9つ記憶されている場合は、図8に示すような対応付けである吸着体情報がデータベース320に9つ記憶される。したがって、例えば、図8に示した吸着体情報は、図7に示した吸着体情報の1つ「A001−1−1」に相当する。
【0052】
図6に示したデータベース320には図8に示すように、イオン吸着体がイオン吸着装置100に取り付けられていた期間を示す期間情報である「期間」と、その期間における通水の積算量である「流量[L]」と、そのイオン吸着体固有に付与された吸着体識別情報である「吸着体No.」とが対応付けられて、1つの吸着体情報として記憶されている。なお、流量は、その期間において積算流量計が計測した積算値である。
【0053】
例えば、図8に示すように、期間「2019/5/1〜2019/5/5」と、流量「1000[L]」と、吸着体No.「A00010001」とが対応付けられて記憶されている。これは、吸着体識別情報「A00010001」が付与されたイオン吸着体が、2019年5月1日から2019年5月5日までの5日間、イオン吸着装置100に取り付けられており、その期間において、このイオン吸着体に流れた分析対象水の通水量が1000[L]であることを示している。また、期間「2019/5/6〜2019/5/10」と、流量「980[L]」と、吸着体No.「A00020001」とが対応付けられて記憶されている。これは、吸着体識別情報「A00020001」が付与されたイオン吸着体が、2019年5月6日から2019年5月10日までの5日間、イオン吸着装置100に取り付けられており、その期間において、このイオン吸着体に流れた分析対象水の通水量が980[L]であることを示している。また、期間「2019/5/11〜2019/5/15」と、流量「1000[L]」と、吸着体No.「A00030001」とが対応付けられて記憶されている。これは、吸着体識別情報「A00030001」が付与されたイオン吸着体が、2019年5月11日から2019年5月15日までの5日間、イオン吸着装置100に取り付けられており、その期間において、このイオン吸着体に流れた分析対象水の通水量が1000[L]であることを示している。また、期間「2019/5/16〜2019/5/20」と、流量「990[L]」と、吸着体No.「A00040001」とが対応付けられて記憶されている。これは、吸着体識別情報「A00040001」が付与されたイオン吸着体が、2019年5月16日から2019年5月20日までの5日間、イオン吸着装置100に取り付けられており、その期間において、このイオン吸着体に流れた分析対象水の通水量が990[L]であることを示している。これらの対応付けは、それぞれのイオン吸着体がイオン吸着装置100から取り外された後に登録されて記憶される。この登録方法は、イオン吸着装置100から情報処理装置300へこれらの情報が送信されて登録するものであっても良いし、他の媒体を介して登録するものであっても良い。なお、図6に示した例では、期間情報である「期間」は日にちを示す情報のみを示しているが、時刻(時間)を含む日時を示す情報も含まれる。つまり、期間情報には、イオン吸着体がイオン吸着装置100に取り付けられた日時を示す情報と、イオン吸着体がイオン吸着装置100から取り外された日時を示す情報とが含まれる。
【0054】
検索部330は、入力部310が入力した入力情報に含まれる日時情報(製品に問題が生じたときに、製品が水を使用した時期に関する情報)に基づいて、吸着体識別情報をデータベース320から検索する。具体的には、検索部330は、入力部310が入力した入力情報に含まれる日時情報が示す日時が含まれる期間をデータベース320から検索し、検索した期間と対応付けられた吸着体識別情報をデータベース320から検索する。このとき、検索部330は、入力部310が入力した入力情報に含まれる、イオン吸着装置の設置情報に基づいて、吸着体情報をデータベース320から検索し、検索した吸着体情報と日時情報とに基づいて、吸着体識別情報をデータベース320から検索する。例えば、入力情報に含まれる設置情報の顧客No.が「A001」であり、系統No.が「1」であり、装置No.が「1」であり、日時情報が「2019年5月3日」である場合、検索部330は、顧客No.が「A001」であり、系統No.が「1」であり、装置No.が「1」である吸着体情報をデータベース320から検索し、検索した吸着体情報「A001−1−1」の対応付けから、日時情報「2019年5月3日」を含む期間である期間「2019/5/1〜2019/5/5」と対応付けられた吸着体No.「A00010001」を検索する。
【0055】
なお、データベース320に顧客の施設におけるシステムの構成をあらかじめ登録しておき、検索部330が、そのシステムの構成に基づいて、検索を行うものであっても良い。つまり、例えば、顧客No.「A001」、系統No.「1」および装置No.「1」の装置と、顧客No.「A001」、系統No.「1」および装置No.「2」の装置とが、そのシステムの構成から互いに影響がある可能性があると考えられるのであれば、入力情報に含まれる設置情報の顧客No.が「A001」であり、系統No.が「1」であり、装置No.が「1」であっても、検索部330が、顧客No.「A001」、系統No.「1」および装置No.「2」の装置についての吸着体情報も検索するものであっても良い。ここで、互いに影響があるかどうかを判定するには、システムの構成と過去の判定結果とに基づいて、機械学習を用いて判定モデルを生成しておき、その判定モデルを用いて判定するものであっても良い。例えば、顧客No.「A001」、系統No.「1」および装置No.「1」の装置と、顧客No.「A001」、系統No.「1」および装置No.「2」の装置とが、直列に並べて設置されている場合や、過去の分析結果から、互いの分析結果に関連性が認められた場合等に、互いに影響があるかと判定するものであっても良い。このように、互いに影響がある装置について分析を行うことにより、製品不良の原因が超純水中に含まれていた汚染物質であった場合に、システムの系統に設けられた複数の装置のうちいずれの装置が汚染物質を発生させているのか、つまり汚染物質を発生させている装置を特定することができる。
【0056】
出力部350は、検索部330が検索した吸着体識別情報を出力する。出力部350が行う吸着体識別情報の出力方法は、例えば、他の装置への送信であっても良いし、画面表示、音声出力、印刷であっても良い。
【0057】
以下に、図5に示した情報処理システムにおける情報処理方法について説明する。図9は、図5に示した情報処理システムにおける情報処理方法のうち、イオン吸着装置100における処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0058】
まず、イオン吸着体が取り付けられたイオン吸着装置100が流通管11に取り付けられる(ステップS11)。続いて、流通管11に通水が開始される(ステップS12)。このとき、イオン吸着装置100が流通管11に取り付けられた後に、図1または図3に示した開閉弁23、流量調整弁25、三方弁28および開閉弁12が開放されて、イオン吸着体への通水が開始される。
【0059】
その後、通水終了のタイミングになったかどうかが判定される(ステップS13)。ここで、通水の開始から所定の期間が経過した場合、または通水量の積算値が所定の値に到達した場合に、通水終了のタイミングになったと判定する。所定の期間の経過はタイマを用いて行うものであっても良い。また、通水量の積算値の測定は、積算流量計を用いて行うものであっても良い。これらのタイミングになった場合、そのタイミングを検知した旨を通知部110が表示等でシステムの管理者や運用者、保守者(以下、管理者等と称する)に対して通知するものであっても良い。その後、流通管11への通水が終了される(ステップ14)。このとき、図1または図3に示した開閉弁23、流量調整弁25、三方弁28および開閉弁12が閉じられる。また、通知を受けた者が弁を閉じる。そして、イオン吸着装置100が流通管11から取り外される(ステップS15)。このとき、新たなイオン吸着装置100が流通管11に取り付けられる。また、タイマや積算流量計は、イオン吸着装置100が流通管11に取り付けられる(交換される)度に、リセットされる。なお、イオン吸着装置100の取り外しのタイミングと、新たなイオン吸着装置100の取り付けのタイミングとは、イオン吸着体に対する通水期間の連続性を確保できるように極力短くなるようにする。
【0060】
取り外されたイオン吸着装置に備えられたイオン吸着体の通水期間等の情報が情報処理装置300のデータベース320に記憶される。記憶される情報は、図8に示したような情報であって、1つのイオン吸着体ごとに複数の情報それぞれが互いに対応付けられて記憶される。この記憶は、情報処理装置300の入力部310を介して行われる。また、取り外されたイオン吸着装置に備えられたイオン吸着体は、吸着体識別情報が付与されて所定の保管場所に保管される。
【0061】
その後、定量分析が必要となると、情報処理装置300に対して検索要求が行われる。ここで、分析対象水である超純水を使用して製造した製品などに不良が発生し、その不良の原因が超純水の水質にあるかどうかを確認する場合に、定量分析を行う必要がある。それには、対象となるイオン吸着体試料(つまり、製品に問題が生じたときに製品が水を使用した時期に対応する通水期間に通水されていたイオン吸着体試料)を検索して取り出す必要がある。
【0062】
図10は、図5に示した情報処理システムにおける情報処理方法のうち、情報処理装置300における検索処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0063】
入力部310は、イオン吸着体の検索の要求があったかどうかを判定する(ステップS21)。この要求は、入力部310に対して、システムの管理者等がイオン吸着体の検索を要求するための所定の操作を行い、入力部310が受け付けた操作に基づくもので良い。この所定の操作には、対象となる装置(不良発生の装置)の設置情報と日時情報とが含まれる。入力部310は入力した情報のうち、設置情報と日時情報とを検索部330へ出力する。検索部330は、入力部310から出力されてきた設置情報と日時情報とに基づいて、データベース320から吸着体識別情報を検索する(ステップS22)。具体的には、例えば、検索部330は、入力部310から出力されてきた設置情報に基づいて、データベース320から吸着体情報を検索し、検索した吸着体情報のうち、入力部310から出力されてきた日時情報が含まれる期間と対応付けられた吸着体識別情報をデータベース320から検索する。すると、検索部330が検索した吸着体識別情報を出力部350が出力する(ステップS23)。
【0064】
その後、出力部350から出力された吸着体識別情報が付与されたイオン吸着体を管理者等が保管場所から確保し、定量装置200を用いて定量を行う。そして、定量分析の結果と積算流量計が計測した積算値とを用いて、分析対象水中の不純物イオン濃度を算出する。定量の結果や分析対象水中の不純物イオン濃度は、管理者等から所望の提供先へ提供される。
【0065】
このように、水質管理を行うシステムにおいて、イオン吸着体が具備されたイオン吸着装置を所定のタイミングで交換し、取り外したイオン吸着装置に具備されたイオン吸着体を保管しておき、保管されたイオン吸着体の中から、指定された設置場所および期間に取り付けられていたイオン吸着装置のイオン吸着体を検索し、検索したイオン吸着体の定量分析を行って、その結果を提供する。そのため、指定された場所および日時における分析対象水の処理状態を認識することができる。
(第2のシステム例)
【0066】
図11は、図1に示したイオン吸着装置20を利用した情報処理システムの第2の例を示す図である。
【0067】
図11に示した情報処理システムは、イオン吸着装置101と、定量装置201と、情報処理装置301とを有する。イオン吸着装置101は、図1または図3に示したイオン吸着装置20に相当する。また、イオン吸着装置101は、イオン吸着体の流通管への取り付けの日時情報や流通管からの取り外しの日時情報、イオン吸着体の識別情報を情報処理装置301へ送信する。さらに、イオン吸着装置101には、通知部110が接続されている。通知部110は、イオン吸着装置101に具備されたイオン吸着体が、流通管に取り付けられてから所定の期間が経過した際に、例えば、その旨を示す通知等、所定の通知を行う。または、通知部110は、イオン吸着装置101に具備されたイオン吸着体が流通管に取り付けられてから、イオン吸着装置101に具備された積算流量計が計測した積算値が所定の値になった際に、例えば、その旨を示す通知等、所定の通知を行う。このとき、通知部110は、イオン吸着体を流通管から取り外すことを促す通知を行う。また、通知部110は、イオン吸着装置101内部に具備されているものであっても良いし、情報表示機能を具備する他の端末装置等の装置に表示させるものであっても良い。
【0068】
定量装置201は、イオン吸着体に吸着されたイオンの定量分析を行う。定量分析の具体的な方法は、上述した通りである。定量分析の対象となるイオン吸着体の特定方法については、後述する。定量装置201は、定量分析を行った結果を情報処理装置301へ提供する。この提供方法は、定量装置201から情報処理装置301へ分析結果を示す情報を送信するものであっても良いし、他の媒体を介して提供するものであっても良い。
【0069】
図12は、図11に示した情報処理装置301の内部構成の一例を示す図である。図11に示した情報処理装置301は図12に示すように、入力部311と、データベース321と、検索部331と、抽出部341と、出力部351とを有する。なお、図12には、図11に示した情報処理装置301が具備する構成要素のうち、本形態に関わる主要な要素のみを示した。
【0070】
入力部311は、外部から受け付けた操作に基づいて入力情報を情報処理装置301に入力する。具体的には、入力部311は、外部からの所定の操作を受け付け、受け付けた操作に基づいて情報を入力する。入力部311が入力する情報としては、例えば、半導体デバイス製造プロセスにおいてウェハの不良が検出され、ウェハ洗浄水を使用した時期に対応する通水期間のイオン吸着体試料の定量分析を行う必要があると判断した場合に、イオン吸着体試料の検索を指示する情報が挙げられる。入力部311は、例えば、キーボートやマウス、タッチパネル等が挙げられる。また、入力部311は、所定の情報の入力を促すGUIを表示し、その表示に従って行われた操作に基づいて情報を入力するものであっても良い。また、イオン吸着装置101で記録された情報や通知部110が通知した情報が、情報処理装置301へ送信され、入力部311は、送信されてきた情報を受信することで入力されるものであっても良い。
【0071】
データベース321は、通水期間(イオン吸着体に通水を開始した日時や通水を終了した日時等を含む)を示す期間情報と、イオン吸着体固有に付与された吸着体識別情報とを対応付けて吸着体情報として記憶する。また、データベース321は、イオン吸着体が取り付けられた(取り付けられていた)イオン吸着装置101の設置情報と、吸着体情報とを対応付けて記憶する。これらの情報の記憶態様は、図7および図8に示したものと同じである。また、データベース321は、例えば、製品に問題が生じたときに製品が水を使用した時期に対応する通水期間のイオン吸着体試料の定量分析が必要であると判断して定量分析を行った場合に、定量装置201から送信されてきた分析結果を記憶するものであっても良い。このとき、定量装置201から送信されてきた分析結果は、入力部311を介してデータベース321に記憶される。
【0072】
検索部331は、入力部311が入力した入力情報に含まれる日時情報に基づいて、吸着体識別情報をデータベース321から検索する。具体的には、検索部331は、入力部311が入力した入力情報に含まれる日時情報が示す日時が含まれる期間をデータベース321から検索し、検索した期間と対応付けられた吸着体識別情報をデータベース321から検索する。このとき、検索部331は、入力部311が入力した入力情報に含まれる、イオン吸着装置の設置情報に基づいて、吸着体情報をデータベース321から検索し、検索した吸着体情報と日時情報とに基づいて、吸着体識別情報をデータベース321から検索する。例えば、入力情報に含まれる設置情報の顧客No.が「A001」であり、系統No.が「1」であり、装置No.が「1」であり、日時情報が「2019年5月3日」である場合、検索部331は、顧客No.が「A001」であり、系統No.が「1」であり、装置No.が「1」である吸着体情報をデータベース321から検索し、検索した吸着体情報「A001−1−1」の対応付けから、日時情報「2019年5月3日」を含む期間である期間「2019/5/1〜2019/5/5」と対応付けられた吸着体No.「A00010001」を検索する。
【0073】
なお、データベース321に顧客の施設におけるシステムの構成をあらかじめ登録しておき、検索部331が、そのシステムの構成に基づいて、検索を行うものであっても良い。つまり、例えば、顧客No.「A001」、系統No.「1」および装置No.「1」の装置と、顧客No.「A001」、系統No.「1」および装置No.「2」の装置とが、そのシステムの構成から互いに影響がある可能性があると考えられるのであれば、入力情報に含まれる設置情報の顧客No.が「A001」であり、系統No.が「1」であり、装置No.が「1」であっても、検索部331が、顧客No.「A001」、系統No.「1」および装置No.「2」の装置についての吸着体情報も検索するものであっても良い。ここで、互いに影響があるかどうかを判定するには、システムの構成と過去の判定結果とに基づいて、機械学習を用いて判定モデルを生成しておき、その判定モデルを用いて判定するものであっても良い。例えば、顧客No.「A001」、系統No.「1」および装置No.「1」の装置と、顧客No.「A001」、系統No.「1」および装置No.「2」の装置とが、直列に並べて設置されている場合や、過去の分析結果から、互いの分析結果に関連性が認められた場合等に、互いに影響があるかと判定するものであっても良い。このように、互いに影響がある装置について分析を行うことにより、製品不良の原因が超純水中に含まれていた汚染物質であった場合に、システムの系統に設けられた複数の装置のうちいずれの装置が汚染物質を発生させているのか、つまり汚染物質を発生させている装置を特定することができる。
【0074】
抽出部341は、検索部331が検索した吸着体識別情報が付与されたイオン吸着体に対して、定量装置201から提供(送信)されてきた定量分析の結果から、入力情報に応じた情報である提供情報を抽出する。ここで、入力情報には、例えば、具体的な分析内容が含まれても良い。その場合、抽出部341は、入力情報に含まれている分析内容に応じた結果を定量装置201が行った定量分析の結果から抽出する。定量装置201から提供(送信)されてきた定量分析がデータベース321に記憶されている場合は、抽出部341は、入力情報に応じた情報である提供情報をデータベース321に記憶されている定量分析の結果から抽出する。
【0075】
出力部351は、検索部331が検索した吸着体識別情報を出力する。出力部351は、検索部331が検索した吸着体識別情報が付与されたイオン吸着体に対して、定量装置201が行った定量分析の結果を提供情報として出力する。また、出力部351は、抽出部341が定量装置201が行った定量分析の結果から、入力情報に応じた情報である提供情報を抽出した場合、抽出部341が抽出した提供情報を出力する。出力部351が行う提供情報の出力方法は、例えば、他の装置への送信であっても良いし、画面表示、音声出力、印刷、所定のランプ点灯や点滅であっても良い。
【0076】
図13は、図11に示した情報処理システムにおける情報処理方法の一例を説明するためのシーケンス図である。
【0077】
まず、イオン吸着体が取り付けられたイオン吸着装置101が流通管11に取り付けられ、流通管11に通水が開始される(ステップS1)。このとき、イオン吸着装置101が流通管11に取り付けられた後に、図1または図3に示した開閉弁23、流量調整弁25、三方弁28および開閉弁12が開放されて、イオン吸着体への通水が開始される。その後、所定の期間が経過すると、または、図1または図3に示した積算流量計26が測定した積算値が所定の値に達すると、流通管11への通水が終了される。この流通管11への通水の終了は、所定の期間の経過または積算値の所定の値への到達の検知を直接のトリガとして処理が行われるのではなく、これらの検知がその旨の通知処理を起動し、その通知を受けた者が弁を閉じることによって、流通管11への通水が終了するものである。このとき、図1または図3に示した開閉弁23、流量調整弁25、三方弁28および開閉弁12が閉じられる。ここで、イオン吸着装置101は、タイマを有し、イオン吸着体への通水が開始されてからの時間を測定し、あらかじめ設定された時間が経過したときに、通知部110がその旨を通知し、流水管11への通水を終了するものであっても良い。また、積算流量計が測定した積算値があらかじめ設定された値となったときに、通知部110がその旨を通知し、流水管11への通水を終了するものであっても良い。通知部110が行う通知は、システムの管理者等に対するものであり、これらの者が開閉弁23、流量調整弁25、三方弁28および開閉弁12を閉じて通水を終了するものであっても良い。通知部110が行う通知は、開閉弁23、流量調整弁25、三方弁28および開閉弁12に対するものであり、開閉弁23、流量調整弁25、三方弁28および開閉弁12が自動で閉じて通水を終了するものであっても良い。そして、イオン吸着装置101が流通管11から取り外される(ステップS2)。このとき、新たなイオン吸着装置101が流通管11に取り付けられる。また、タイマや積算流量計は、イオン吸着装置101が流通管11に取り付けられる(交換される)度に、リセットされる。
【0078】
その後、取り外されたイオン吸着装置101に取り付けられていたイオン吸着体の情報が情報処理装置301へ提供される(ステップS3)。提供される情報は、イオン吸着装置101に取り付けられていたイオン吸着体の期間情報、積算流量計が測定した積算値、イオン吸着体の吸着体識別情報およびイオン吸着体が取り付けられていたイオン吸着装置101の設置情報である。これらの情報の提供方法は、イオン吸着装置101が情報処理装置301へこれらの情報を送信して提供するものであっても良いし、他の媒体を介して提供するものであっても良い。なお、イオン吸着体の情報が情報処理装置301へ提供されるタイミングは、ステップS1の後であっても良い。この場合に提供される情報は、イオン吸着装置101が流通管11に取り付けられ、流通管11に通水が開始された日時を示す情報である。すると、情報処理装置301にて記憶処理が行われる(ステップS4)。なお、取り外されたイオン吸着体は、その吸着体識別情報を用いて特定ができるように所定の場所に保管される。
【0079】
続いて、情報処理装置301が定量装置201へ定量分析を指示すると(ステップS5)、定量装置201が定量分析を行う(ステップS6)。このとき、情報処理装置301は、吸着体識別情報を指定して定量装置201に対して定量分析を指示し、定量装置201は指示された吸着体識別情報が付与されたイオン吸着体に吸着されたイオンの定量分析を行う。この定量分析の指示方法は、情報処理装置301が定量装置201へ定量分析を要求する旨を示す情報を送信して指示するものであっても良いし、他の媒体を介して提供するものであっても良い。定量装置201は、定量分析が終了すると、その結果を情報処理装置301へ提供する(ステップS7)。この定量分析の結果の提供方法は、定量装置201が情報処理装置300へ定量分析の結果を示す情報を送信して提供するものであっても良いし、他の媒体を介して提供するものであっても良い。すると、情報処理装置301が出力処理を行う(ステップS8)。なお、定量分析が終了したイオン吸着体は、再利用ができるように洗浄されて保管される。
【0080】
図14は、図13に示したシーケンス図を用いて説明したステップS4の詳細な処理の一例を説明するためのフローチャートである。ステップS3にてイオン吸着装置101から情報が提供されると、データベース321は、提供された情報である期間情報(通水期間)、積算値、吸着体識別情報および設置情報を対応付けて記憶する(ステップS41)。この対応付けは、図8および図9に示したような形態で記憶される。
【0081】
その後、入力部311は、定量分析の要求があったかどうかを判定する(ステップS42)。このとき、入力部311は、外部から受け付けた操作に応じた情報や、外部に接続された他の装置から送信されてきた情報に、定量分析を要求する旨、設置情報および日時情報が含まれる場合、定量分析の要求があったと判定するもので良い。定量分析の要求があった場合、入力部311は入力した情報のうち、設置情報と日時情報とを検索部331へ出力する。検索部331は、入力部311から出力されてきた設置情報と日時情報とに基づいて、データベース321から吸着体識別情報を検索する(ステップS43)。具体的には、例えば、検索部331は、入力部311から出力されてきた設置情報に基づいて、データベース321から吸着体情報を検索し、検索した吸着体情報のうち、入力部311から出力されてきた日時情報が含まれる期間と対応付けられた吸着体識別情報をデータベース321から検索する。検索部331は、吸着体識別情報が検索できたら、検索した吸着体識別情報を指定して定量装置201へ定量分析を指示する(ステップS44)。
【0082】
図15は、図13に示したシーケンス図を用いて説明したステップS8の詳細な処理の一例を説明するためのフローチャートである。入力部311が定量装置201からの定量分析の結果を受け付けると(ステップS71)、抽出部341は、入力部311が受け付けた定量分析の結果から、入力情報に応じた情報である提供情報を抽出する(ステップS72)。入力情報には、定量分析の内容(例えば、分析したい金属イオンの種類)が指定されている場合もあり、その場合、抽出部341は、入力情報に含まれている分析内容を定量装置201が行った定量分析の結果から抽出する。続いて、出力部351は、抽出部341が抽出した提供情報を出力する(ステップS73)。なお、定量装置201は、定量分析の結果と積算流量計が計測した積算値とを用いて、分析対象水中の不純物イオン濃度を算出し、入力部311が分析対象水中の不純物イオン濃度を受け付けるようにしても良い。
【0083】
このように、水質管理を行うシステムにおいて、イオン吸着体が具備されたイオン吸着装置を所定のタイミングで交換し、取り外したイオン吸着装置に具備されたイオン吸着体を保管しておき、保管されたイオン吸着体の中から、指定された設置場所および期間に取り付けられていたイオン吸着装置のイオン吸着体を検索し、検索したイオン吸着体の定量分析を行って、その結果を出力する。そのため、指定された場所および日時における分析対象水の処理状態を認識することができる。
【0084】
以上、各構成要素に各機能(処理)それぞれを分担させて説明したが、この割り当ては上述したものに限定しない。また、構成要素の構成についても、上述した形態はあくまでも例であって、これに限定しない。また、本発明は、水処理を行うシステム以外に、液体中の金属の含有量を制御、管理するシステムに適用することができる。
【0085】
上述した情報処理装置300,301が行う処理は、目的に応じてそれぞれ作製された論理回路で行うようにしても良い。また、処理内容を手順として記述したコンピュータプログラム(以下、プログラムと称する)を情報処理装置300,301にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを情報処理装置300,301に読み込ませ、実行するものであっても良い。情報処理装置300,301にて読取可能な記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)、Blu−ray(登録商標) Disc、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの移設可能な記録媒体の他、情報処理装置300,301に内蔵されたROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリやHDD(Hard Disc Drive)等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、情報処理装置300,301に設けられたCPUにて読み込まれ、CPUの制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。ここで、CPUは、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。
【符号の説明】
【0086】
10 超純水供給配管
11 流通管
12,23 開閉弁
20,100,101 イオン吸着装置
21 配管コネクタ
22 内部配管
24 イオン吸着体
25 流量調整弁
26 積算流量計
27 排出配管
28 三方弁
110 通知部
200,201 定量装置
300,301 情報処理装置
310,311 入力部
320,321 データベース
330,331 検索部
341 抽出部
350,351 出力部
【要約】
分析対象水に含まれる不純物イオンの濃度を管理する水質管理方法は、イオン吸着体(24)と積算流量計(26)とが設けられたイオン吸着装置(20)を分析対象水が流れる流通管(11)に接続する工程と、イオン吸着装置(20)に対して所定の期間にわたって流通管(11)からイオン吸着体(24)に分析対象水を通水して分析対象水に含まれるイオンを吸着させてイオン吸着体試料とする工程と、を有する。イオン吸着装置(20)において、イオン吸着体(24)の分析対象水の流れ方向の下流側に積算流量計(26)を設ける。
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