特許第6754539号(P6754539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6754539-インク供給用チューブ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754539
(24)【登録日】2020年8月26日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】インク供給用チューブ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20200907BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   B41J2/175 503
   F16L11/04
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-519371(P2017-519371)
(86)(22)【出願日】2016年5月17日
(86)【国際出願番号】JP2016064612
(87)【国際公開番号】WO2016186111
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2019年3月1日
(31)【優先権主張番号】特願2015-103051(P2015-103051)
(32)【優先日】2015年5月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391004746
【氏名又は名称】株式会社八興
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】中野 貞明
【審査官】 金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/047455(WO,A1)
【文献】 特許第5199971(JP,B2)
【文献】 特開2004−216797(JP,A)
【文献】 特開2008−105401(JP,A)
【文献】 特開2010−221578(JP,A)
【文献】 特開2007−260955(JP,A)
【文献】 特開2004−142406(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0248633(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
F16L 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクと接する内層と、少なくとも三層から成る中間層と、外層から構成されるインク供給チューブであって、前記中間層が第1中間層、第2中間層及び第3中間層を含み、
前記内層が、耐溶剤性、酸素バリア性及び低透湿性を有するエチレン・テトラフルオロエチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシアルカン共重合樹脂又は変性パーフルオロアルコキシ系樹脂のいずれかで構成され、
前記第1中間層が、前記内層と前記第2中間層に対して融着性を有するとともに、屈曲性を有するポリアミド樹脂で構成され、
前記第2中間層が、前記第1中間層と前記第3中間層に対して融着性を有するとともに、屈曲性及び酸素バリア性を有するエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂で構成され、
前記第3中間層が、前記第2中間層と前記外層に対して融着性を有するとともに、屈曲性及び低透湿性を有する接着性ポリオレフィン樹脂で構成され、
前記外層が、屈曲性を有するとともに、低透湿性を有する熱可塑性樹脂又はエラストマーで構成され、
前記インク供給用チューブに封入した脱気されたインクを温度20℃、湿度60%の環境下で3日間放置した後の前記インクの溶存酸素の変化量が3.0mg/L未満であることを特徴とするインク供給用チューブ。
【請求項2】
前記第2中間層が、改質剤として、少なくともポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂のいずれかを含有することを特徴とする請求項1に記載のインク供給用チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ用のインク供給用チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、インクジェットプリンタによる印刷では、予めインクカートリッジ内に封入された専用のインクが、インク供給用チューブを介してプリンタヘッドへ供給され、紙などのメディアに噴射されて印刷される。
【0003】
ここで用いられるインク供給用チューブは、インクカートリッジからプリンタヘッドにインクを安定的に供給するために欠かすことのできない重要な構成部品である。
【0004】
一方、このインク供給用チューブは、近年のインクジェットプリンタの機能向上によるインクの多品種化に伴い、要求される特性も多様化してきている。
【0005】
このようなインクジェットプリンタ用のインク供給用チューブに対する要求特性としては、
1.耐溶剤性:様々なインクで用いられる溶剤成分に対するインク接触部位における耐久性の維持。
2.酸素バリア性:外部からの酸素透過によるインク成分の変質防止。
3.低透湿性:外部からの水蒸気等の湿気透過によるインク成分の変質防止。
4.屈曲性:U字に曲げた状態によるチューブ性能の維持。
等が挙げられる。
【0006】
これらの中でも、近年、酸素バリア性及び低透湿性に優れたインク供給用チューブの需要が増加している。
【0007】
インク供給用チューブにおいて酸素バリア性や低透湿性に問題がある場合、インク供給用チューブを透過した酸素や水蒸気がインクに混入してインク成分が変質し、これがプリンタヘッドでのノズル詰まりやインク内での気泡発生による吐出不良等の原因となり、印刷品質に悪影響を及ぼすといった問題があった。
【0008】
このような問題を解決するために、耐溶剤性に優れると共に酸素バリア性、低透湿性を有し、多層構造として良好な耐剥離性及び屈撓性を有するインクジェットプリンタ用インク供給チューブが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この提案では、内層として耐溶剤性、酸素バリア性、低透湿性に優れるエチレン・テトラフルオロエチレン共重合樹脂(ETFE樹脂)を用い、中間層としてETFE樹脂との融着性及び酸素バリア性に優れるエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH樹脂)から成る層を設け、外層として中間層との融着性及び屈撓性を有する樹脂又はエラストマーから成る層を設けた3層構造のインク供給チューブが例示されている。
【0009】
また、他の構成として、内層としてエチレン・テトラフルオロエチレン共重合樹脂(ETFE樹脂)を用い、第1中間層としてETFE樹脂との融着性及び屈撓性に優れる樹脂から成る層を設け、第2中間層として第1中間層との融着性及び酸素バリア性に優れる樹脂であるエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH樹脂)から成る層を設け、外層として第2中間層との融着性及び屈撓性を有する樹脂又はエラストマーから成る層を設けた4層構造のインク供給チューブも例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5199971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、従来より酸素バリア性の向上を目的としてEVOH樹脂から成る層を設ける構成は公知であるが、EVOH樹脂の欠点として湿度の上昇に伴う酸素バリア性の低下が挙げられる。
【0012】
そのため、優れた酸素バリア性を維持するためには、EVOH樹脂層の内側及び外側を低透湿性に優れた樹脂でカバーし、EVOH樹脂の保護ならびにチューブの低透湿性能向上を行うことが必要となる。
【0013】
この点に関して特許文献1では、低透湿層としての役割を担う材質として内層のETFE樹脂や外層のポリエチレン樹脂等が例示されている。しかしながら、内層及び外層をEVOH樹脂との融着性に優れ且つ低透湿性に優れる特定の樹脂に限定しているために、種々の内層及び外層を設けた場合であっても、より酸素バリア性及び低透湿性を向上させることについて改良の余地があった。
【0014】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、優れた耐溶剤性及び屈曲性を有するとともに、より酸素バリア性及び低透湿性に優れたインクジェットプリンタ用のインク供給用チューブを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
即ち、本発明のインク供給用チューブは以下のことを特徴としている。
【0016】
本発明のインク供給用チューブは、インクと接する内層と、少なくとも三層から成る中間層と、外層から構成されるインク供給チューブであって、前記中間層が第1中間層、第2中間層及び第3中間層を含み、前記内層が、耐溶剤性、酸素バリア性及び低透湿性を有するエチレン・テトラフルオロエチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシアルカン共重合樹脂又は変性パーフルオロアルコキシ系樹脂のいずれかで構成され、前記第1中間層が、前記内層と前記第2中間層に対して融着性を有するとともに、屈曲性を有するポリアミド樹脂で構成され、前記第2中間層が、前記第1中間層と前記第3中間層に対して融着性を有するとともに、屈曲性及び酸素バリア性を有するエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂で構成され、前記第3中間層が、前記第2中間層と前記外層に対して融着性を有するとともに、屈曲性及び低透湿性を有する接着性ポリオレフィン樹脂で構成され、前記外層が、屈曲性を有するとともに、低透湿性を有する熱可塑性樹脂又はエラストマーで構成され、前記インク供給用チューブに封入した脱気されたインクを温度20℃、湿度60%の環境下で3日間放置した後の前記インクの溶存酸素の変化量が3.0mg/L未満であることを特徴としている。
【0018】
また、このインク供給用チューブにおいては、前記第2中間層が、改質剤として、少なくともポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂のいずれかを含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のインク供給用チューブによれば、優れた耐溶剤性及び屈曲性を有するとともに、より酸素バリア性及び低透湿性に優れたインクジェットプリンタ用のインク供給用チューブを提供することができる。
【0020】
すなわち、酸素バリア性及び低透湿性を向上させることによりインクの劣化を低減させ、例えば、長期連休など長期間インクジェットプリンタを稼働させない場合に発生するチューブ及びヘッド内のインク固化などによる吐出不良を未然に防止することができ、メンテナンス頻度を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のインク供給用チューブの一実施形態の層構成を示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態をあげて、本発明のインク供給用チューブを詳細に説明する。
【0023】
本発明のインク供給用チューブは、内層と、少なくとも三層から成る中間層と、外層から構成される酸素バリア性及び低透湿性を有するインク供給用チューブである。図1に本発明のインク供給用チューブの一実施形態の層構成を示す。
【0024】
内層1は、各種の溶剤に対して耐性を有するとともに、優れた酸素バリア性及び低透湿性を有する層であり、具体的には、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合樹脂(以下、単にETFE系樹脂と略称する)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシアルカン共重合樹脂(以下、単にPFA樹脂と略称する)又は変性パーフルオロアルコキシ系樹脂(以下、単にCPT樹脂と略称する)のいずれかから成る層である。
【0025】
内層1の厚みは、耐溶剤性、酸素バリア性及び低透湿性が発現可能な厚みであれば特に制限はないが、通常、0.01〜0.5mm、好ましくは0.03〜0.1mmの範囲が考慮される。
【0026】
中間層は、第1中間層2−1、第2中間層2−2及び第3中間層2−3から構成されている。
【0027】
第1中間層2−1は、内層1を構成するETFE系樹脂、PFA樹脂又はCPT樹脂と第2中間層2−2との融着性及び屈曲性に優れる樹脂であり、具体的には、ポリアミド樹脂、ポリアミド系エラストマー、接着性ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、フッ素系樹脂との優れた融着性の観点からポリアミド樹脂を好適に用いることができる。
【0028】
第1中間層の厚みは、内層1と第2中間層2−2に対して強固に融着できれば特に制限はないが、通常、0.01〜0.5mm、好ましくは0.01〜0.05mmの範囲が考慮される。
【0029】
第2中間層2−2は、第1中間層2−1と第3中間層2−3との優れた融着性を有するとともに、優れた酸素バリア性を有する樹脂であり、具体的には、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(以下、単にEVOH樹脂と略称する)が用いられる。なおEVOH樹脂のエチレン含有比率は28mol以上、好ましくは44mol以上である。エチレン含有比率がこの範囲であると、優れた酸素バリア性及び屈曲性を有する層とすることができる。
【0030】
第2中間層2−2の厚みは、酸素バリア性を有すれば特に制限はないが、通常0.01〜0.3mm、好ましくは0.01〜0.05mmの範囲が考慮される。
【0031】
また、第2中間層2−2には、耐ストレスクラック性を考慮した改質剤を添加することができる。
【0032】
このような改質剤としては、例えば、EVOH樹脂との相溶性に優れたポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等を用いることができる。また、これらは1種単独で用いてもよいし2種以上を併用して用いてもよい。
【0033】
第3中間層2−3は、第2中間層2−2及び外層3との融着性及び屈曲性に優れるとともに、優れた低透湿性を有する樹脂であり、具体的には、接着性ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等を用いることができる。
【0034】
これらの中でも、外層3との優れた融着性や低透湿性の観点から接着性ポリオレフィン樹脂を好適に用いることができる。
【0035】
第3中間層2−3の厚みは、第2中間層2−2と外層3に対して強固に融着できれば特に制限はないが、通常、0.01〜0.5mm、好ましくは0.01〜0.05mmの範囲が考慮される。
【0036】
外層3は、屈曲性に優れるとともに、低透湿性を有する熱可塑性樹脂又はエラストマーから成る樹脂であり、具体的には、エチレン系ポリマー、ポリオレフィン系エラストマーを用いることができる。
【0037】
なお、本発明において、酸素バリア性及び低透湿性の用語は、インク中に含まれる酸素(溶存酸素)について、脱気されたインクからの変化量を最低限に抑えられることを意味している。具体的には、例えば、インク供給用チューブ内に脱気したインクを封入後、温度20℃、湿度60%の環境下で3日間放置した後のインクの溶存酸素の変化量が3.0mg/L未満であることとして定義することができる。
【0038】
上記の実施形態のインク供給用チューブによれば、耐溶剤性及び低透湿性を有する内層1と酸素バリア性を有する第2中間層2−2との間に、内層1と第2中間層2−2との優れた融着性を有する第1中間層2−1を設け、併せて屈曲性及び低透湿性を有する外層3と酸素バリア性を有する第2中間層2−2との間に、外層3と第2中間層2−2との優れた融着性を有するとともに、優れた低透湿性を有する第1中間層2−3を設けることにより、確実に酸素バリア性及び低透湿性を有するインク供給用チューブとすることができる。
【0039】
上記の実施形態のインク供給用チューブの製造は、5機の押出成型機を用いて熱溶融され、その後金型部分にて樹脂が合流後吐出させ、冷却を経て5層のチューブとして成型することができる。その際、内層1と第1中間層2−1、第1中間層2−1と第2中間層2−2、第2中間層2−2と第3中間層2−3、第3中間層2−3と外層3は熱及び金型部分での圧力により融着(接着)される。
【0040】
なお、このときの各層間の融着(接着)強度は10N/25mm以上、好ましくは25N/25mm以上である。
【0041】
なお、融着(接着)強度が10N/25mm未満のインク供給用チューブをU字に曲げると、インク供給用チューブ全体に曲げ応力が分散されて各層に応力が集中して剥離する場合がある。このような状態において、第2中間層2−2に剛性が高く割れやすいとされるEVOH樹脂層を用いた場合、クラックの発生を助長し、酸素バリア性の低下によるインク成分の変質が発生し印刷品質への悪影響を及ぼす場合がある。
【0042】
しかしながら、各層間の融着強度を10N/25mm以上とすることにより、インク供給用チューブをU字に曲げて使用するのに際し、インク供給用チューブに対して曲げ応力が継続的にかかった場合でも層間が剥離することがなく、第2中間層2−2を確実に保護してクラックの発生を抑制し、インク成分の変質を防止することができる。
【0043】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
【0044】
上記の実施形態のインク供給用チューブは、内層1、三層の中間層及び外層の5層の構成としたが5層以上の構成としてもよい。この場合は、中間層を4層以上とし、各層の融着性や酸素バリア性、低透湿性を有する樹脂により構成することにより、全体として実用に適した酸素バリア性、低透湿性等のバリア性を有する多層構造のインク供給用チューブとすることができる。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
図1における各層を以下の成分構成として実施例1のインク供給用チューブを作製した。
内層1:フッ素樹脂(旭硝子株式会社製 エチレン・テトラフルオロエチレン共重合樹脂(ETFE系樹脂) 層厚:50μm)
第1中間層2−1:ポリアミド樹脂(宇部興産株式会社製 ポリアミド12 層厚:30μm)
第2中間層2−2:エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH樹脂)(株式会社クラレ製 エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂 層厚:30μm)
第3中間層2−3:接着性ポリオレフィン樹脂(三菱化学株式会社製 酸変性ポリエチレン 層厚:30μm)
外層3:エチレン系ポリマー(三井・デュポンポリケミカル株式会社製 エチレン系ポリマー 層厚:260μm)
上記の各成分を共押出成型機によりチューブとして成型して、5層構造の内径:3.0mm、外径:3.8mm、肉厚:400μmのインク供給用チューブを製造した。
[実施例2]
外層3を以下のものとした以外は実施例1と同様にして実施例2のインク供給用チューブを作製した。
外層3:ポリオレフィン系エラストマー(株式会社プライムポリマー製 直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE) 層厚:260μm)である。
[実施例3]
第2中間層2−2を以下のものとした以外は実施例2と同様にして実施例3のインク供給用チューブを作製した。なお、ポリエステル樹脂は、耐ストレスクラック性を考慮した改質剤として配合した。
第2中間層2−2:エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH樹脂)/ポリエステル樹脂=80/20(層厚:30μm)
EVOH樹脂:(株式会社クラレ製 エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂)
ポリエステル樹脂:(三菱化学株式会社製 ポリエステル系熱可塑性エラストマー)
[実施例4]
外層3を以下のものとした以外は実施例2と同様にして実施例4のインク供給用チューブを作製した。
外層3:ポリオレフィン系エラストマー(日本ポリプロ株式会社製 ポリプロピレン樹脂 層厚:260μm)
[実施例5]
内層1を以下のものとした以外は実施例2と同様にして実施例4のインク供給用チューブを作製した。
内層1:フッ素樹脂(旭硝子株式会社製 四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシアルカン共重合樹脂(PFA樹脂) 層厚:50μm)
[実施例6]
内層1及び第1中間層2−1を以下のものとした以外は実施例2と同様にして実施例6のインク供給用チューブを作製した。
内層1:フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製 変性パーフルオロアルコキシ系樹脂(CPT樹脂) 層厚:50μm)
第1中間層2−1:ポリアミド樹脂(ダイセル・エボニック株式会社製 ポリアミド12
層厚:30μm)
[比較例1]
各層を以下の成分構成として、3層構造の比較例1のインク供給用チューブを作製した。
内層:フッ素樹脂(旭硝子株式会社製 エチレン・テトラフルオロエチレン樹脂(ETFE系樹脂) 層厚:100μm)
中間層:ポリアミド樹脂(宇部興産株式会社製 ポリアミド12 層厚:50μm)
外層:ポリウレタン系エラストマー(ディーアイシーバイエルポリマー株式会社製 ポリウレタン系エラストマー 層厚:250μm)
上記の各成分を共押出成型機によりチューブとして成型して3層構造の内径:3.0mm、外径:3.8mm、肉厚:400μmのインク供給用チューブを製造した。
[比較例2]
各層を以下の成分構成として、3層構造の比較例2のインク供給用チューブを作製した。
内層:フッ素樹脂(旭硝子株式会社製 エチレン・テトラフルオロエチレン樹脂(ETFE系樹脂) 層厚:100μm)
中間層:エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH樹脂)(株式会社クラレ製 エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂 層厚:50μm)
外層:ポリウレタン系エラストマー(ディーアイシーバイエルポリマー株式会社製 ポリウレタン系エラストマー 層厚:250μm)
上記の各成分を共押出成型機によりチューブとして成型して3層構造の内径:3.0mm、外径:3.8mm、肉厚:400μmのインク供給用チューブを製造した。
[比較例3]
各層を以下の成分構成として、4層構造の比較例1のインク供給用チューブを作製した。
内層:フッ素樹脂(旭硝子株式会社製 エチレン・テトラフルオロエチレン樹脂(ETFE系樹脂) 層厚:100μm)
中間層1:ポリアミド樹脂(宇部興産株式会社製 ポリアミド12 層厚:50μm)中間層2:エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH樹脂)(株式会社クラレ製 エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂 層厚:50μm)
外層:接着性ポリオレフィン(三菱化学株式会社製 酸変性ポリエチレン 層厚:200μm)
上記の各成分を共押出成型機によりチューブとして成型して4層構造の内径:3.0mm、外径:3.8mm、肉厚:400μmのインク供給用チューブを製造した。
[インク供給用チューブの評価]
上記の実施例1〜6及び比較例1〜3のインク供給用チューブについて、酸素バリア性及び低透湿性、並びに屈曲性を判定した。
〔酸素バリア性及び低透湿性の判定〕
各インク供給用チューブについて、それぞれに封入したインクの溶存酸素量を測定してその結果から酸素バリア性及び低透湿性を判定した。
(溶存酸素量の測定)
まず、脱気したインクの初期の溶存酸素量(mg/L)を測定した。次に、そのインクを長さ1mのチューブ内に封入し、両端末に栓をして密封した後、温度20℃、湿度60%の環境下で3日間放置した。そのインクを抜き取り、1週間後の溶存酸素量を測定した。
【0046】
上記の溶存酸素量の測定は、溶存酸素測定器(株式会社東興化学研究所 微量溶存酸素計 TD−51)を用いて行った。
(判定)
初期の脱気したインクの溶存酸素量からの、3日間放置後のインクの溶存酸素量の変化量が3.0mg/L未満のものを○とし、3.0mg/L以上のものを×として、各インク供給用チューブの酸素バリア性及び低透湿性を判定した。これらの結果を表1に示す。
〔屈曲性の判定〕
各インク供給用チューブについて、クラック(割れ)の数を測定して屈曲性を判定した。
(クラック(割れ)の数の測定)
1.5mのチューブにインクを封入した状態で屈曲半径100mmのケーブルベア(登録商標)内にチューブを設置し、速度:700mm/secの速度でケーブルベア(登録商標)を連続して往復600万回スライドさせ、終了後にチューブに入ったクラック(割れ)の数を測定した。
(判定)
上記で測定した600万回終了した時点におけるチューブに入っているクラック(割れ)の数を屈曲性の指標として、下記基準で判定した。
0〜10以下・・・◎
11〜20以下・・・○
21〜30以下・・・△
31以上・・・×
これらの結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示す判定結果から、実施例1〜6のインク供給用チューブは、比較例1〜3に比べて酸素バリア性及び低透湿性に優れていることが確認された。
【0049】
また、屈曲性についても実施例1〜6のインク供給用チューブは、比較例2、3に比べて優れていることが確認された。
【0050】
なお、比較例1については屈曲性に関しては最も優れているものの、中間層にエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH樹脂)を用いていない為、酸素バリア性及び低透湿性は最も劣っていた。
【0051】
更に第2中間層にポリエステル樹脂を配合した実施例3は、他の実施例に比べて溶存酸素変化量は若干大きいものの、他のものに比べて優れた屈曲性を有することが確認された。
【0052】
これらの結果から、本発明のインク供給用チューブは、優れた耐溶剤性及び屈曲性を有するとともに、より酸素バリア性及び低透湿性に優れたインクジェットプリンタ用のインク供給用チューブであることが確認された。
図1