(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも体液排出部位に対応する領域であって、前記開孔と重ならない位置に、前記上層吸収体の肌面側からの圧搾により前記下層吸収体に至るエンボスが付与されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の吸収性物品では、前記溝を通じて上層吸収体と下層吸収体との間で平面方向への空気の流れは生じるものの、厚み方向の空気の放出がなく、内部が蒸れやすい状況は必ずしも十分に改善できていない。また、空気の流路として前記溝による空間を設けているため、使用時に圧力がかかって吸収体が押し潰された場合には、前記溝が変形しやすく、溝を流れる空気流量が低下し、内部の蒸れが改善できないおそれがあった。
【0008】
また、上記特許文献2記載の吸収性物品では、吸収体に設けられた貫通孔を通じて吸収体の厚み方向に空気が流通できるが、平面方向への空気の流れについては一切考慮されていない。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、吸収体の平面方向及び厚み方向に空気の流れを生じさせることにより、内部の湿気が放出でき、通気性が高く蒸れにくい吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記吸収体は、
綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成され肌側に配置される上層吸収体と、
綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成され非肌側に配置される下層吸収体とを有し、
前記上層吸収体と下層吸収体との間に、
合成繊維素材であって熱捲縮性を有する熱可塑性繊維の不織布からなる中間積層体が介在されるとともに、該中間積層体は前記上層吸収体及び下層吸収体と同一の平面形状であり、前記中間積層体の周縁が前記上層吸収体及び下層吸収体によって覆われておらず、かつ前記上層吸収体、中間積層体及び下層吸収体を厚み方向に貫通する複数の開孔が設けられていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、吸収体を
綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成された肌側に配置され上層吸収体と、
綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成され非肌側に配置された下層吸収体とを有する多層構造とし、これらの上層吸収体と下層吸収体との間に、
合成繊維素材であって熱捲縮性を有する熱可塑性繊維の不織布からなる中間積層体を介在しているため、この中間積層体の繊維間を空気が流通して、上層吸収体と下層吸収体との間を平面方向に空気の流れが生じるようになる。また、前記中間積層体は前記上層吸収体及び下層吸収体と同一の平面形状であり、前記中間積層体の周縁が前記上層吸収体及び下層吸収体によって覆われていないため、中間積層体の周縁から吸収体の外部へ空気の放出が可能となっている。
【0012】
更に、本発明に係る吸収性物品では、前記上層吸収体、中間積層体及び下層吸収体を厚み方向に貫通する複数の開孔を設けているため、この開孔を通じて、厚み方向に空気の流れが生じるようになる。
【0013】
このように、本吸収性物品では、吸収体の平面方向及び厚み方向に空気の流れが生じるため、確実に内部の湿気を放出することができ、通気性が高く蒸れにくいものとなる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記中間積層体は、前記上層吸収体及び下層吸収体より密度が低い請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項2記載の発明では、前記中間積層体として前記上層吸収体及び下層吸収体より密度が低いものを用いることにより、中間積層体の繊維間を空気が流通し、平面方向に空気の流れが確実に生じるようにしている。
【0016】
請求項
3に係る本発明として、前記開孔の面積は、吸収体面積に対して4%〜45%の割合で形成されている請求項1
、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項
3記載の発明では、前記開孔を通じた空気流量を確保するため、前記開孔の面積を吸収体面積に対して所定の割合で形成している。
【0018】
請求項
4に係る本発明として、少なくとも体液排出部位に対応する領域であって、前記開孔と重ならない位置に、前記上層吸収体の肌面側からの圧搾により前記下層吸収体に至るエンボスが付与されている請求項1〜
3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項
4記載の発明では、前記中間積層体の繊維密度が疎で、上層吸収体及び下層吸収体の繊維密度が密の関係を有する場合、上層吸収体から下層吸収体に体液が移行しにくく、上層吸収体に体液が溜まりやすいという問題があるため、少なくとも体液排出部位に対応する領域であって、前記開孔と重ならない位置に、前記上層吸収体の肌面側からの圧搾により前記下層吸収体に至るエンボスを付与することによって、前記エンボスにより密となった部分に毛管作用によって体液を引き込みやすくし、上層吸収体から下層吸収体に体液の移行が促進されるようにしている。
【0020】
請求項
5に係る本発明として、前記エンボスの面積は、吸収体面積に対して1%〜30%の割合で形成されている請求項
4記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項
5記載の発明では、前記上層吸収体から下層吸収体への体液の移行量を確保するため、エンボスを所定の割合で形成するようにしている。
【発明の効果】
【0022】
以上詳説のとおり本発明によれば、吸収体の平面方向及び厚み方向に空気の流れが生じることにより、内部の湿気が放出でき、通気性が高く蒸れにくくなる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0025】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
前記生理用ナプキン1は、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液という。)を速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも排血口部Hを含むように前後方向に所定の区間内において表面側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成する立体ギャザー形成用不織布6と、前記立体ギャザーBSの外側にナプキン長手方向(以下、ナプキン前後方向ともいう。)に沿って設けられたサイド不織布7とを含み、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接合手段によって接合され、これら不透液性裏面シート2とサイド不織布7とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されているとともに、これよりも臀部側に位置する部分に第2ウイング状フラップW
B、W
Bが形成されている。
【0026】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非肌側面(外面)にはナプキン長手方向に沿って1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0027】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0028】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0029】
前記吸収体4は、肌側に配置される上層吸収体4Aと、非肌側に配置される下層吸収体4Bとからなる2層構造を有している。また、前記上層吸収体4Aと下層吸収体4Bとの間に不織布からなる中間積層体10が介在されている。この吸収体4及び中間積層体10については後段で詳述する。
【0030】
本生理用ナプキン1では、透液性表面シート3の肌面側から生理用ナプキン1の略長手方向に沿って左右一対の中央圧搾溝16を形成するのが好ましい。前記中央圧搾溝16は、少なくとも長手方向中心線CLの両側にそれぞれナプキンの略長手方向に沿う部分を含むものであればよく、図示例では、この左右の前端部及び後端部がそれぞれ接続され、全体としてナプキン長手方向に細長く、かつ周方向に閉合する形状で形成されている。
【0031】
また、前記中央圧搾溝16より前側に離間して、平面視で略Ω形状の前側圧搾溝16aが形成されるとともに、前記中央圧搾溝16より後側に離間して、平面視で略逆Ω形状の後側圧搾溝16bが形成されている。前記前側圧搾溝16a及び後側圧搾溝16bは、それぞれ生理用ナプキン1の表面を前側及び後側に伝う体液を捕捉し、体液の伝い漏れを確実に防止するためのものである。
【0032】
前記透液性表面シート3の幅寸法は、図示例では、
図2の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、前記立体ギャザーBSは前記透液性表面シート3とは別の立体ギャザー形成用不織布6によって形成され、立体ギャザーBSの外側には、前記不透液性裏面シート2の表面側にサイド不織布7が積層される構造とするのが好ましい。これら立体ギャザー形成用不織布6及びサイド不織布7は、体液が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されている。かかる不織布6,7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、蒸れを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13〜23g/m
2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0033】
前記サイド不織布7は、
図2および
図3に示されるように、不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と不透液性裏面シート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイングフラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側位置に第2ウイング状フラップW
B、W
Bを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよび第2ウイング状フラップW
B、W
Bの外面側にはそれぞれ図示しない粘着剤層を備え、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを折返し線RL、RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するようになっている。
【0034】
前記立体ギャザー形成用不織布6は、二重に折り返されたシートが用いられ、この二重シート内部の所定位置に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された複数条の糸状弾性伸縮部材21…、22…が配設され、
図2に示されるように、排血口部Hを含む所定の長手範囲に亘って起立状態となり、内側に開口を向けたポケットP、Pが形成されるようになっている。
〔吸収体4及び中間積層体10について〕
前述の通り、前記吸収体4は、肌側に配置される上層吸収体4Aと、非肌側に配置される下層吸収体4Bとからなる2層構造を有している。前記上層吸収体4Aと下層吸収体4Bとは、ほぼ同一の平面形状からなり、これらを積層した状態で、
図1及び
図2に示されるように、上層吸収体4Aの周縁と下層吸収体4Bの周縁とがほぼ一致するように配置されている。
【0035】
前記上層吸収体4Aの厚みと、下層吸収体4Bの厚みとは、同等でもよいし、違ってもよい。しかし、後段で詳述するように、前記上層吸収体4Aと下層吸収体4Bとの間に前記中間積層体10を介在することにより、この中間積層体10を通じて平面方向に空気が流れ、ナプキン内部の湿気を放出しているため、上層吸収体4Aを下層吸収体4Bより厚くして肌面から離れた位置で平面方向に空気の流れを生じさせるより、上層吸収体4Aと下層吸収体4Bとを同等の厚みとするか、上層吸収体4Aを下層吸収体4Bより薄くして、肌面に近い位置で平面方向に空気の流れを生じさせる方が、内部の蒸れを防止するという点から好ましい。
【0036】
前記上層吸収体4A及び下層吸収体4Bは、上述の通り、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されたものを用いることができる。前記上層吸収体4A及び下層吸収体4Bの原料やその構成割合は、同じにしてもよいし、違ってもよい。たとえば、上層吸収体4Aより下層吸収体4Bの方が配合する吸水性ポリマーの量を多くすることにより、肌面から離れた下層吸収体4Bにより多くの体液が保持されるようにし、吸収体に吸収された体液によって内部が蒸れるのを抑えるようにしてもよい。
【0037】
本生理用ナプキン1では、
図4〜
図6に示されるように、前記上層吸収体4Aと下層吸収体4Bとの間に、不織布からなる中間積層体10が介在されている。これら上層吸収体4A、中間積層体10及び下層吸収体4Bの積層体が前記被包シート5で囲繞されている。
【0038】
前記中間積層体10は、前記上層吸収体4A及び下層吸収体4Bとほぼ同一の平面形状からなり、前記中間積層体10を上層吸収体4Aと下層吸収体4Bとの間に積層した状態で、中間積層体10の周縁が上層吸収体4A及び下層吸収体4Bの周縁とほぼ一致するように配置されている。すなわち、中間積層体10の周縁が上層吸収体4Aの周縁と下層吸収体4Bの周縁の間に配置され、中間積層体10の周縁が上層吸収体4A又は下層吸収体4Bによって覆われていない。これにより、中間積層体10の周縁から吸収体4の外部へ空気の放出が可能となっている。
【0039】
また、肌側から上層吸収体4A、中間積層体10及び下層吸収体4Bの順に積層された積層体には、これらを厚み方向に貫通する複数の開孔11、11…が設けられている。前記開孔11は、上層吸収体4A、中間積層体10及び下層吸収体4Bを一体的に貫通する部分であって、上層吸収体4Aの肌側面から下層吸収体4Bの非肌側面まで各部材が存在しない貫通部である。
【0040】
このように、本生理用ナプキン1では、前記上層吸収体4Aと下層吸収体4Bとの間に中間積層体10を介在しているため、
図5に示されるように、この中間積層体10の繊維間を空気が流通して、上層吸収体4Aと下層吸収体4Bとの間に平面方向に空気の流れが生じるようになる。この中間積層体10の内部を平面方向に流れた空気(湿気)は、中間積層体10の周縁から吸収体4の外部へ放出されるとともに、不透液性裏面シート2を通ってナプキン外部に排出される。
【0041】
更に、本生理用ナプキン1では、前記上層吸収体4A、中間積層体10及び下層吸収体4Bを厚み方向に貫通する複数の開孔11、11…を設けているため、この開孔11を通じて厚み方向に空気の流れが生じるようになる。この開孔11を厚み方向に流れた空気(湿気)は、不透液性裏面シート2を通ってナプキン外部に排出される。また、この開孔11は、中間積層体10にも連通しているため、この開孔11を厚み方向に流れる空気が前記中間積層体10に流入し平面方向にも流れるとともに、前記中間積層体10を平面方向に流れる空気が前記開孔11に流入し厚み方向にも流れるようになる。
【0042】
このように、本生理用ナプキン1では、吸収体4の平面方向及び厚み方向に空気の流れを生じさせることができるため、確実に内部の湿気を外部に放出することができ、通気性が高く蒸れにくいものとなる。
【0043】
前記中間積層体10としては、不織布が用いられる。前記不織布を構成する素材としては、合成繊維を用いるのが好ましい。前記合成繊維としては、前述の前記吸収体4に混合する合成繊維を用いることができ、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。また、熱融着性繊維を混入することにより、湿潤時強度を向上させるとともに、熱捲縮性を有する熱可塑性繊維により、湿潤時強度の付与とともに、不織布が嵩高となり空気流通性に優れたものを用いてもよい。
【0044】
前記中間積層体10は、前記上層吸収体4A及び下層吸収体4Bより密度を低くするのが好ましい。具体的には、前記中間積層体10の密度は、1.5〜20kg/m
3、好ましくは5〜15kg/m
3とするのが好ましい。この密度は、KES−G5 ハンディー圧縮試験機を用いて測定した加圧面間圧力0.1kPa時の厚みに平面寸法を掛けて算出した体積で重量を割った値である。前記中間積層体10の密度をこの範囲内とすることにより、中間積層体10内部の空気流通性が良好となり、空気が中間積層体10を通じて平面方向に流通するのが容易となる。
【0045】
ところで、前記中間積層体10を通じて平面方向に空気の流れを生じさせるためには、中間積層体10の設置位置を上層吸収体4Aと下層吸収体4Bとの間とする他に、上層吸収体4Aの肌側や下層吸収体4Bの非肌側に配置する形態も考えられる。しかしながら、中間積層体10を上層吸収体4Aの肌側に配置した場合には、平面方向への空気の流れを最も確保しやすくなるものの、吸収体4(上層吸収体4A及び下層吸収体4B)の厚みを厚くすると、吸収体4に湿気がこもりやすくなり、吸収体外部への通気性が低下しやすい。また、下層吸収体4Bの非肌側に中間積層体10を配置した場合にも同様に、吸収体4の厚みを厚くすると、吸収体4に湿気がこもりやすくなり、吸収体外部への通気性が低下しやすい問題がある。従って、前記中間積層体10は、本生理用ナプキン1のように、上層吸収体4Aと下層吸収体4Bとの間に介在させるのが、通気性を高め蒸れを防止するという点から最も望ましい形態である。
【0046】
前記開孔11の平面形状は、
図4に示される円形の他、多角形や楕円形などとすることも可能である。多角形の場合には、角の数が多すぎると使用中に角が崩れ開孔11が潰れる可能性があるため、三角形〜六角形程度の多角形とするのが好ましい。前記開孔11の大きさ(直径、一辺の長さ又は長手寸法)は、1mm〜10mm、好ましくは4mm〜8mmとするのがよい。1mmより小さいと空気が流通できる効果が小さいとともに、外部からの圧力によって開孔が潰れて空気が流通できなくなる。また、10mmより大きいと、吸収性能が低下するとともに、吸収体のヨレが発生しやすくなる。
【0047】
前記複数の開孔11、11…の面積を総和した総面積は、前記積層体の肌側面の面積(前記開孔11及び後段で詳述するエンボス12が無いとした場合における積層体の面積)に対して、4%〜45%、好ましくは8%〜20%の割合で形成するのがよい。開孔率が4%より小さいと、厚み方向に対する通気性が十分に確保できない。また、開孔率が45%より大きいと、吸収性能が低下するとともに、吸収体のヨレが発生しやすくなる。
【0048】
前記開孔11は、前記上層吸収体4A、中間積層体10及び下層吸収体4Bの積層体の平面に対し、所定のパターンで配列されている。
図4に示される例では、生理用ナプキン1の長手方向及び幅方向に整列した格子状に配列してあるが、一列置きに互い違いにした千鳥状に配列してもよい。隣り合う開孔11、11同士の離間距離は、一定の通気量を確保するとともに、積層体の強度を確保するため、概ね5mm〜60mm、好ましくは10mm〜30mmとするのがよい。また、図示例のように、積層体の全面に亘ってほぼ均等な開孔率としてもよいし、例えば排血口部Hを含む領域など所定の領域に多く配置するなどのように、場所によって開孔率を違ってもよい。
【0049】
前記上層吸収体4A、中間積層体10及び下層吸収体4Bの積層体に開孔11を施すには、前記開孔11に対応する凸部が備えられた凸ロールと、これに対向配置されるとともに前記凸ロールの凸部に対応する凹部が備えられた凹ロールとの間に前記積層体を通過させ、前記凸ロールの凸部が前記積層体を貫通して前記凹ロールの凹部に入り込むことにより、前記積層体を貫通する開孔11を形成することができる。前記凸部を加熱することにより各部材に含有される熱可塑性繊維を溶融し開孔処理をしやすくしてもよい。
【0050】
ところで、前記上層吸収体4Aと下層吸収体4Bとの間に中間積層体10を配置した状態では、各部材の繊維密度が肌側から密−疎−密の関係となるため、密の上層吸収体4Aから疎の中間積層体10に体液が浸透しにくく、上層吸収体4Aに体液が溜まりやすいという問題が生じる。そこで、少なくとも排血口部Hに対応する領域であって、前記開孔11と重ならない位置に、前記上層吸収体4Aの肌面側からの圧搾により下層吸収体4Bに至る複数のエンボス12、12…を付与するのが望ましい。これにより、
図6に示されるように、前記エンボス12により密となった繊維の圧搾部分に毛管作用によって体液が引き込まれやすくなり、上層吸収体4Aから下層吸収体4Bへの体液の移行が促進されるようになる。また、同
図6に示されるように、上層吸収体4Aの表面を伝う体液は、開孔11に入り込み、この開孔11を厚み方向に流れることにより下層吸収体4Bに吸収されるものもある。
【0051】
前記エンボス12の平面形状は、
図4に示される例では円形としているが、多角形や楕円形などで形成することも可能である。なお、エンボス12の平面形状とは、エンボス底面の平面形状のことである。前記エンボス12の大きさ(エンボス底面の直径、一辺の長さ又は長手寸法)は、0.5mm〜8mm、好ましくは1mm〜5mmとするのがよい。
【0052】
前記複数のエンボス12、12…の面積を総和した総面積は、前記積層体の肌側面の面積(前記開孔11及びエンボス12が無いとした場合における積層体の面積)に対して、1%〜30%、好ましくは1.5%〜5%の割合で形成するのがよい。エンボス付与率を30%より高くすると、中間積層体10を平面方向に流れる空気の流れを阻害する可能性があるため好ましくない。
【0053】
前記エンボス12は、少なくとも排血口部Hに対応する領域に、前記開孔11と重ならない位置に設けられている。
図4に示される例では、排血口部H及びその周辺に、格子状に配列された開孔11、11…の中間位置に付与されることにより、格子状に配列されている。前記エンボス12は、等間隔で配置したり、所定の領域に偏在させたりするなど、使用状況に合わせて適宜配置することが可能である。
【0054】
前記上層吸収体4A、中間積層体10及び下層吸収体4Bの積層体にエンボス12を付与するには、前記エンボス12に対応する凸部が設けられたエンボスロールと、これに対向配置された平坦ロールとの間に前記積層体を通過させることにより設けることができる。
【0055】
前記エンボス12を設ける場合の製造手順について説明すると、上層吸収体4Aと下層吸収体4Bとの間に中間積層体10を介在させた積層体に、エンボス12を付与した後、開孔11を施すか、エンボス12及び開孔11を同時に施すのが好ましい。仮に、開孔11を施した後、エンボス12を付与すると、エンボス12を付与する際の圧搾の影響により開孔11が押し潰される場合があるため好ましくない。
【0056】
ところで、透液性表面シートの肌面側からの圧搾により形成された前記中央圧搾溝16、前側圧搾溝16a及び後側圧搾溝16bは、
図2に示されるように、透液性表面シート3の肌面側から下層吸収体4Bに至るように圧搾するのが好ましい。これにより、これらの圧搾溝16、16a、16bに流れ込んだ体液が下層吸収体4Bに吸収されやすくなり、ナプキン内部の蒸れが抑えられるようになる。
【0057】
また、前記エンボス12の付与領域は、
図1に示されるように、前記中央圧搾溝16の領域内に形成するのが好ましい。これにより、前記中央圧搾溝16で堰き止められた中央部の体液を素早く下層吸収体4Bに拡散させることができるようになり、体液の拡散性が高められるとともに、ナプキン内部の蒸れがより確実に防止できるようになる。更に、前記エンボス12は、前記前側圧搾溝16aで囲まれた領域及び後側圧搾溝16bで囲まれた領域にそれぞれ形成するのが好ましい。これにより、中央部より前側及び後側に拡散して前記前側圧搾溝16a及び後側圧搾溝16bで堰き止められた体液を素早く下層吸収体4Bに拡散させることができるようになる。
【実施例】
【0058】
本生理用ナプキン1の通気性能を検証するため、通常の吸収体に前記エンボス12…のみを施したもの(比較例1)、通常の吸収体に前記開孔11…及びエンボス12…を施したもの(比較例2)、前記上層吸収体4Aと下層吸収体4Bとの間に中間積層体10を介在させるとともに、前記開孔11…及びエンボス12…を施したもの(実施例)を作成し、通気度試験を行った。
【0059】
通気度試験は、JIS P 8117(2009)に準拠するガーレー試験機法により行った。このガーレー試験機法は、油を満たした外筒に内筒を挿入し、内筒の重力により内筒内の空気が圧縮されながら試験片を通過し、内筒が徐々に下降する際の、一定体積(100ml)の空気が試験片を通過した時間(t秒)を測定し、その値から次式(1)によってISO透気度を求めるものである。
ISO透気度=135.3/t ……(1)
上述の試験は、厚み方向の通気性能として、空気が試験片の一方側面から他方側面に向けて通過する厚み方向のISO透気度を測定するとともに、平面方向の通気性能として、試験片の一方側面(空気流入側面)に直径30mmの開口が設けられたプラスチック板を配置するとともに、試験片の他方側面に開口を有しないプラスチック板を配置し、前記開口を通って試験片の周縁に向けて通過する平面方向のISO透気度を測定した。なお、ガーレー試験機の空気通過部の直径は30mmである。測定は、3回ずつ行い、その平均値により評価した。
【0060】
試験片の仕様は以下の通りである。平面寸法は210×90mm、パルプ目付は265g/m
2、ポリマー目付は8.5g/m
2である。実施例について、上層吸収体4Aの厚みは5.5mm、下層吸収体4Bの厚みは5.5mm、中間積層体10としてポリエチレンテレフタレート(PET)とポリプロピレン(PP)とを混合した目付40g/m
2のエアスルー不織布を用い、厚みは3.6mm、密度は11kg/m
3、開孔11の直径は6.0mm、開孔率は8%、エンボス12の直径は2.0mm、エンボス付与率は3.6%である。比較例1について、吸収体の厚みは8.1mm、エンボスの直径は2.0mm、エンボス付与率は3.6%である。比較例2について、吸収体の厚みは7.6mm、開孔の直径は6.0mm、開孔率は8%、エンボスの直径は2.0mm、エンボス付与率は3.6%である。なお、前記厚みは、KES−G5 ハンディー圧縮試験機を用いて測定した加圧面間圧力0.1kPa時の数値である。
【0061】
その結果、表1及び表2に示されるように、実施例と比較例1(エンボスのみ)とを比較すると、実施例の方が厚み方向及び平面方向の各方向について通気性が良い(ISO透気度が高い)結果が得られた。
【0062】
また、実施例と比較例2(開孔+エンボス)とを比較すると、厚み方向に対しては、開孔が設けられた比較例2と同等程度の通気性となる一方で、平面方向に対しては、実施例の方が通気性が良い結果が得られた。
【0063】
これにより、前記開孔11を設けることによって厚み方向の通気性が向上し、前記中間積層体10を配置することによって平面方向の通気性が向上することが確認された。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、吸収体4は上層吸収体4Aと下層吸収体4Bとからなる2層構造としていたが、吸収体を3層以上の多層構造としてもよい。この場合、中間積層体10は、吸収体の各層間に配置してもよいし、任意の層間に1層のみ配置してもよい。
(2)前記開孔11は、前記上層吸収体4A、中間積層体10及び下層吸収体4Bを、厚み方向と平行して貫通するように図示されているが、厚み方向に対して傾斜して貫通するように設けてもよい。具体的には、前記開孔11の中心軸と厚み方向に平行する仮想線との成す角が、0°〜60°、特に0°〜30°とするのが好ましい。
(3)前記開孔11の大きさは、前記上層吸収体4A、中間積層体10及び下層吸収体4Bの全てにおいて同じ大きさに形成せず、それぞれの部材で異なる大きさで形成してもよい。例えば、肌側(上層吸収体4A側)の部材ほど大きくなるようにしてもよいし、非肌側(下層吸収体4B側)の部材ほど大きくなるようにしてもよい。これにより、装着時にナプキン幅方向両側から脚圧が作用して、ナプキンの幅方向中央部が非肌側又は肌側に膨出するように撓んだときでも、開孔11が確実に保持できるようになる。