【文献】
躯体の断熱性の向上/外壁の断熱性の向上・内断熱工法(置換工法),国土交通省・持続可能社会における既存共同住宅ストックの再生に向けた研究会・別紙7個別技術シート集,日本,国土交通省,2012年10月24日,第108−110頁,検索日:2019年5月22日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の断熱壁構造では、繊維系断熱材と合成樹脂発泡体系断熱材とを二重にしているため、断熱性能に優れるという利点がある一方で、特許文献1に記載の断熱壁構造の場合、外装材と合成樹脂発泡体系断熱材との間には通気胴縁が設けられ、合成樹脂発泡体系断熱材と繊維系断熱材の間にも下地板が設けられているため、外装材、合成樹脂発泡体系断熱材及び繊維系断熱材を含む外周壁の厚みが厚くなり、その分、室内空間が狭くなるという問題がある。
【0005】
そこで本発明の目的は、上記問題に鑑み、所定の断熱性能を保持しつつ、外周壁の厚みを薄肉化することが可能な構成を有する建物の外周壁構造、及びこの外周壁構造を実現可能な建物の外周壁の改修方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様としての建物の外周壁構造は、外装材により構成された外皮層と、パネル状の断熱材により構成され、前記外皮層の屋内側の面上に積層された第1断熱層と、形状変形自在な繊維系断熱材により構成され、前記第1断熱層の屋内側の面上に積層された第2断熱層と、を備えることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の1つの実施形態として、前記繊維系断熱材は、前記パネル状の断熱材と、前記パネル状の断熱材の屋内側に所定間隔を隔てて対向して配置された枠材と、の間に保持されていることが好ましい。
【0008】
本発明の1つの実施形態としての建物の外周壁構造は、前記パネル状の断熱材の屋内側の面上に配置され、固定具により前記パネル状の断熱材と共に前記外装材に対して位置が固定される桟材を備え、前記枠材は、前記桟材に対して固定されていることが好ましい。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記枠材は、鉛直方向に所定間隔を隔てて配置された複数の横材を備え、前記桟材と前記横材とは、鉛直方向に交互に配置されていることが好ましい。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、前記枠材は、内皮層を構成する内装材を固定する下地材を兼ねることが好ましい。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記外装材は、建物の構造部材に固定されていることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の態様としての建物の外周壁の改修方法は、建物の構造部材に固定され、外周壁の既存外皮層を構成する外装材を残存させ、前記既存外皮層の屋内側に配置された既存断熱層及び既存内皮層を取り除く工程と、前記既存外皮層の屋内側の面に沿って、パネル状の断熱材により構成された第1断熱層を形成する工程と、前記第1断熱層の屋内側の面に沿って、形状変形自在な繊維系断熱材により構成された第2断熱層を形成する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の1つの実施形態として、前記第2断熱層は、前記繊維系断熱材を、前記パネル状の断熱材と前記パネル状の断熱材の屋内側に所定間隔を隔てて対向して配置された枠材と、の間に充填することにより形成されることが好ましい。
【0014】
本発明の1つの実施形態としての建物の外周壁の改修方法は、桟材を前記パネル状の断熱材の屋内側の面上に配置し、固定具を前記桟材及び前記パネル状の断熱材に挿通し、前記パネル状の断熱材を前記外装材に当接させた状態で、前記桟材及び前記パネル状の断熱材を前記外装材に対して固定する工程と、前記枠材を、前記パネル状の断熱材の屋内側に所定間隔を隔てて対向して配置した状態で、前記桟材に対して固定する工程と、を更に含むことが好ましい。
【0015】
本発明の1つの実施形態としての建物の外周壁の改修方法は、前記第2断熱層を形成した工程の後に、既存窓部材の屋内側に新規内窓部材を嵌め込む工程を更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、所定の断熱性能を保持しつつ、外周壁の厚みを薄肉化することが可能な構成を有する建物の外周壁構造、及びこの外周壁構造を実現可能な建物の外周壁の改修方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る建物の外周壁構造及び建物の外周壁の改修方法について、
図1〜
図5を参照して説明する。なお、各図において共通する部材、部位については共通の符号を付している。
【0019】
図1、
図2は、本実施形態としての建物の外周壁構造を示す図である。具体的に、
図1は、本実施形態としての外周壁構造を有する建物100の外周壁1の縦断面図であり、
図2は、外周壁1の横断面図である。
図3は、
図1の階間部分を拡大した拡大断面図である。
【0020】
まず、建物100の全体構成について説明する。建物100は、鉄骨造の軸組みを有する2階建ての工業化住宅であり、地盤に固定された鉄筋コンクリート造の基礎構造体101と、柱や梁などの軸組部材で構成された軸組架構を有し、基礎構造体101に固定された上部構造体102と、で構成されている。なお、軸組架構を構成する軸組部材は、予め規格化(標準化)されたものであり、予め工場にて製造されたのち建築現場に搬入されて組み立てられる。
【0021】
基礎構造体101は、軸組架構の下方に位置し、軸組架構を支持している。具体的に、基礎構造体101は、鉄筋コンクリート造の断面T字状の布基礎であり、フーチング部60と、基礎梁としての立ち上がり部61とを備える。また、基礎構造体101の立ち上がり部61の上端部には、露出型固定柱脚工法により軸組架構の柱の柱脚を固定するための柱脚固定部が設けられ、アンカーボルトが立ち上がり部61の上面から突出している。なお、
図1に示すように、基礎構造体101の外周部を構成する立ち上がり部61の内面には、発泡ポリスチレンフォームのパネル状の基礎断熱材62が配置されている。
【0022】
基礎構造体101は、上部構造体102の軸組架構からの鉛直荷重を地盤に分散して伝達する機能に加えて、上部構造体102における後述する外周壁1の外装材2aや1階床を構成する床部材70を支持する機能を有している。
【0023】
上部構造体102は、複数の柱及び柱間に架設された複数の梁から構成される軸組架構と、この軸組架構の外周部に配置される外周壁1と、軸組架構の梁上に固定される床部材70と、を備えており、外周壁1が、本実施形態の外周壁構造を備えている。なお、本実施形態の各階の床部材70は、軽量発泡コンクリート(以下、「ALC」と記載する。「ALC」とは「autoclaved light weight concrete」の略である。)のパネルにより構成されている。
【0024】
図1〜
図3に示すように、本実施形態の外周壁構造は、外装材2aにより構成された外皮層2と、パネル状の断熱材3aにより構成され、外皮層2の屋内側の面上に積層された第1断熱層3と、形状変形自在な繊維系断熱材4aにより構成され、第1断熱層3の屋内側の面上に積層された第2断熱層4と、内装材5aにより構成され、第2断熱層4の屋内側に配置される内皮層5と、を備えている。換言すれば、建物100の外周壁1は、屋外側から、外装材2a、パネル状の断熱材3a、繊維系断熱材4a、内装材5aが順に配置されることにより構成されている。
【0025】
外皮層2を構成する外装材2aとしては、例えば、ALCなどの耐火性を有するコンクリートで形成されたものが挙げられる。また、外装材2aとしては、ALCパネル等の予め工場にて製造されたパネル材であってもよく、建設現場で打設されたものであってもよい。本実施形態では、外装材2aとして、屋外側の表面上に防水性を有する塗膜が施された、厚み75mmのALCパネルを用いている。
【0026】
外層材2aとしてのALCパネルは、建物100の各階の階高に相当する高さに形成されており、各階部分において、軸組架構の外周部を取り囲むように連接されている。外装材2aとしての各ALCパネルは、L型金物等の連結金物50(
図3参照)を介して、建物100の構造部材としての各階の上下梁に対して、ボルト等の締結部材により固定されている。より具体的に、建物100の1階部分に配置された外装材2aとしてのALCパネルは、その上端部が2階の床梁31(1階の上梁)に対して固定され、下端部が基礎梁としての立ち上がり部61(1階の下梁)に対して固定されている。また、建物100の2階部分に配置された外装材2aとしてのALCパネルは、その上端部が屋上階の床梁32(2階の上梁)に対して固定され、下端部が2階の床梁31(2階の下梁)に対して固定されている。
【0027】
第1断熱層3を構成するパネル状の断熱材3aとしては、例えば、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡樹脂系の材料で形成することができるが、一定の形状を保持することが可能な定形性を有するものであればよく、例えば、ロックウール、グラスウール、セルロースファイバー等の繊維系の断熱材を圧縮等して高密度化することにより定形性を有するパネル体に形成し、これを第1断熱層3を構成するパネル状の断熱材3aとして用いることも可能である。本実施形態では、パネル状の断熱材3aとして、パネル状に成形された発泡樹脂系の断熱材、より具体的には厚み45mmのフェノールフォームを用いている。
【0028】
パネル状の断熱材3aとしての発泡樹脂系の断熱材は、外皮層2を構成する外装材2aの屋内側で、外装材2aの屋内側の面に当接した状態で、外装材2aに対して位置が固定されている。具体的に、パネル状の断熱材3aの屋内側の面上には、略水平方向に延在する合板等で形成された桟材6が配置されており、ボルト及びナットやビス等の固定具を、屋内側から桟材6及びパネル状の断熱材3aに挿通し外装材2aに固定する。これにより、桟材6及びパネル状の断熱材3aは、パネル状の断熱材3aの屋外側の面のほぼ全域が外装材2aの屋内側の面に当接した状態で、外装材2aに対して位置が固定される。なお、桟材6を用いることにより、固定具と外装材2aとの間でパネル状の断熱材3aに負荷される圧縮力を、桟材6を介してパネル状の断熱材3aの面内方向に分散することができる。そのため、パネル状の断熱材3aの局所的な変形による圧潰を抑制することができる。本実施形態では、鉛直方向に所定間隔を隔てて複数の桟材6が配置されている。
【0029】
ここで、
図2に示すように、パネル状の断熱材3aは、軸組架構の外周部を構成する外周軸組架構のうち隣接する柱33及び34間では、外装材2aの屋内側の面に沿って配置され、柱33及び34が存在する位置では、柱33及び34の屋内側を覆うように、柱33及び34の周囲に配置されている。なお、柱33及び34の周囲に配置されるパネル状の断熱材3aは、柱33及び34の外形に沿って配置可能なように、コの字型に加工されたものを使用することができる。例えば、パネル状の断熱材3aの厚み方向の一方から、厚み方向の他方の面に貼着されている不織布を残すように、切り込み角45度の断面V字状の縦溝を2つ形成し、パネル状の断熱材3aをこの2つの縦溝の位置で折り曲げることにより、コの字型に加工することができる。上述した桟材6は、外周軸組架構のうち隣接する柱33及び34間の位置に配置されたパネル状断熱材3a、すなわち、外装材2aの屋内側の面に沿って配置されているパネル状の断熱材3aの、屋内側の面に取り付けられている。
【0030】
更に、
図4に示すように、外周軸組架構のうち隣接する柱33及び34の間には、補強材としてのブレース35が配置されている箇所がある。パネル状の断熱材3aは、このようなブレース35が配置されている箇所においては、外装材2aとブレース35との間に配置される外側部3a1と、ブレース35を避けてブレース35の周囲に配置される内側部3a2と、に分割される。更に、外側部3a1は、ブレース35の隙間の大きさに合わせて複数の板片(本実施形態では矩形形状の3つの板片)に分割されており、これら複数の板片は、屋内側からブレース35の隙間を通じて、外装材2aとブレース35との間に挿入される。また更に、内側部3a2は、ブレース35を避けて外側部3a1の屋内側の面に当接させて配置することができるように、複数の板片(本実施形態では三角形状の4つの板片)に分割されている。そして、内側部3a2の屋内側の面に、ブレース35の位置を避けて、上述した桟材6(
図2等参照)を複数配置し、固定具を桟材6、内側部3a2及び外側部3a1に挿通して外装材2aに固定することにより、桟材6、内側部3a2及び外側部3a1を外装材2aに対して固定する。このように、パネル状の断熱材3aを分割することにより、柱33及び34間にブレース35が配置されている箇所であっても、パネル状の断熱材3aを配置することができる。
【0031】
また更に、
図1、
図3に示すように、第1断熱層3を構成するパネル状の断熱材3aは、1階と2階の階間に位置する、外周軸組架構の梁(
図1、
図3では2階の床梁31)の周囲で、梁の下側及び屋内側を覆うように配設されている。なお、
図1、
図3では、H型鋼の梁のウェブとパネル状の断熱材3aとの間に形成された間隙に、ロックウール等の繊維系の断熱材が充填されている。
【0032】
以上のように、外皮層2の屋内側に、パネル状の断熱材3aで構成される第1断熱層3を形成することができる。なお、第1断熱層3は、上述した外装材2a及び外周軸組架構の柱梁に沿って配設された複数のパネル状の断熱材3aにより構成されているが、隣接するパネル状の断熱材3aの継ぎ目部分には、屋内側から気密テープ等が貼着されている。そのため、第1断熱層3は、外周壁1の気密層としても機能するものである。
【0033】
第2断熱層4を構成する形状変形自在な繊維系断熱材4aとしては、例えば、ロックウールやグラスウールを用いることができる。ここで、「形状変形自在」とは、外力の大きさ及び向きに追従して容易に外形形状を変形可能なものを意味し、例えば、低密度の繊維系の断熱材を袋体内に収容したもの等が挙げられる。本実施形態では、形状変形自在な繊維系断熱材4aとして、ロックウールが袋体内に収容されたもの(厚み100mm)を用いている。第2断熱層4を形状変形自在な繊維系断熱材4aで構成することにより、建物100の設備配管や配線などを、第2断熱層4が位置する空間に配設し易くなる。
【0034】
形状変形自在な繊維系断熱材4aは、第1断熱層3を構成するパネル状の断熱材3aの屋内側の面上に配置される。具体的には、
図1〜
図3に示すように、本実施形態の形状変形自在な繊維系断熱材4aは、第1断熱層3を構成するパネル状の断熱材3aと、パネル状の断熱材3aの屋内側に所定間隔を隔てて対向して配置された枠材7と、の間で保持されている。より具体的に、本実施形態の形状変形自在な繊維系断熱材4aは、第1断熱層3を構成するパネル状の断熱材3aのうち、外周軸組架構の柱梁により囲まれた空間内で外装材2aの屋内側の面に沿って配置されている部分と、この部分の屋内側に所定間隔を隔てて対向して配置された枠材7と、の間で保持されている。
【0035】
図2に示すように、枠材7は、上述した桟材6に対して固定されている。具体的に、枠材7は、水平方向に所定間隔を隔てて配置された複数の縦材7aと、鉛直方向に所定間隔を隔てて配置された複数の横材7bと、を備える格子状のものであり、横材7bは、隣接する縦材7a間に架け渡して配置され、縦材7aに対してビス等の固定具により固定されている。また、桟材6にはL型金物51の一方の平板部51aがビス等の固定具により固定されており、L型金物51の他方の平板部51bは、桟材6から屋内側へと突出した状態となっている。そして、上述した枠材7の縦材7aは、パネル状の断熱材3aの屋内側の面と離間した位置で、L型金物51の他方の平板部51bにビス等の固定具により固定されている。このように、枠材7は、L型金物51を介して桟材6に対して固定されている。そして、第2断熱層4を構成する繊維系断熱材4aは、枠材7とパネル状の断熱材3aとの間に形成された間隙に充填され、枠材7及びパネル状の断熱材3aにより挟まれて保持されている。繊維系断熱材4aは、上述したように形状変形自在な構成を有するため、パネル状の断熱材3aと枠材7とに挟まれると、その一部が枠材7の縦材7a及び横材7bで形成される内部開口に嵌り込んだ状態になる。そのため、繊維系断熱材4aは、水平方向及び鉛直方向に位置ずれし難くなる。
【0036】
ここで、桟材6と枠材7の横材7bとは、鉛直方向に交互に配置されている。そのため、
図1、
図3に示すように、鉛直方向において桟材6が位置する部分では、桟材6が繊維系断熱材4aに埋まった状態となり、鉛直方向において横材7bが位置する部分では、横材7bが繊維系断熱材4aに埋まった状態となる。そのため、繊維系断熱材4aは、鉛直方向において交互に配置された桟材6及び横材7bにより、鉛直方向に波状に延在した状態で保持され、繊維系断熱材4aの鉛直方向への位置ずれが一層抑制される。
【0037】
なお、枠材7は、木材により形成することができ、内皮層5を構成する石膏ボード等の内装材5aを固定する下地材を兼ねる。つまり、内装材5aは、枠材7の縦材7a及び横材7bの屋内側の面に、ビス等の固定具により固定されている。
【0038】
このように、外周壁1は、外皮層2を構成する外装材2aと、第1断熱層3を構成するパネル状の断熱材3aと、第2断熱層4を構成する繊維系断熱材4aとが、隙間なく当接するように積層された構成となっている。そのため、2重の断熱層を設けて所定の断熱性能を有しつつ、厚みを薄肉化した外周壁1を実現することができる。
【0039】
なお、本実施形態で示す建物100の屋上階の床部材70と、2階の天井内装材36との間には、外周壁1の第2断熱層4を構成する繊維系断熱材4aと同様の構成を有する床下断熱材37が配置されている。
【0040】
次に、本発明に係る建物の外周壁の改修方法の実施形態について説明する。本実施形態の建物の外周壁の改修方法は、既存建物の外周壁の断熱性能を向上させる改修方法であり、既存建物の外周壁を、上述の実施形態で説明した外周壁構造を有する外周壁1に改修するものである。具体的には、既存建物の外周壁の既存外皮層を残し、既存外皮層の屋内側に位置する老朽化した既存断熱層を、上述した第1断熱層3及び第2断熱層4に置き換える改修方法である。なお、本実施形態の既存建物の外周壁の既存外皮層は、上述した外周壁構造の実施形態における外皮層2と同様の構成を有するものであり、ここでは同一の符号「2」を付して説明する。
図5は、本実施形態としての建物の外周壁の改修方法の手順を示すフローチャートを示す。
【0041】
図5に示すように、本実施形態の建物の外周壁の改修方法は、建物の構造部材に固定され、外周壁の既存外皮層2を構成する外装材2aを残存させ、既存外皮層2の屋内側に配置された既存断熱層及び既存内皮層を取り除く工程S1と、既存外皮層2の屋内側の面に沿って、パネル状の断熱材3aにより構成された第1断熱層3を形成する工程S2と、隣接するパネル状の断熱材3aの継ぎ目部分に屋内側から気密テープを貼着する工程S3と、桟材6をパネル状の断熱材3aの屋内側の面上に配置し、ビス等の固定具を桟材6及びパネル状の断熱材3aに挿通し、パネル状の断熱材3aを外装材2aに当接させた状態で、桟材6及びパネル状の断熱材3aを外装材2aに対して固定する工程S4と、枠材7を、パネル状の断熱材3aの屋内側に所定間隔を隔てて対向して配置した状態で、桟材6に対して固定する工程S5と、形状変形自在な繊維系断熱材4aを、パネル状の断熱材3aと枠材7との間に充填することにより、第1断熱層3の屋内側の面に沿って、形状変形自在な繊維系断熱材4aにより構成された第2断熱層4を形成する工程S6と、枠材7の屋内側の面に内装材5aをビス等の固定具により固定し、内皮層5を形成する工程S7を含むものである。なお、本実施形態の建物の外周壁の改修方法は、窓等の開口部がある位置については、上述の第2断熱層4を形成する上記工程S6の後に、既存窓部材の屋内側に新規内窓部材を嵌め込む工程S6´を更に含み、この工程S6´の後に上述の工程S7を実行する(
図5参照)。
【0042】
建物の既存外皮層2は、上述した実施形態に示す外周壁1のように、建物の構造部材としての各階の上下梁に、連結金物50を介してボルトやビス等の固定具により固定された外装材2aにより構成されており、上記工程S1では、既存外皮層2を構成する外装材2aを残して、既存外皮層2の屋内側に配置された既存断熱層及び既存内皮層を、屋内側から撤去する。取り除かれる既存断熱層は、例えば、既存外皮層2の屋内側に1層のみで構成された、ポリエチレン系の断熱材などが想定される。なお、既存外皮層2の屋内側に、既存断熱層及び既存内皮層に加えて、例えば既存の壁下地材等の別部材がある場合には、この別部材についても取り除き、既存外皮層2を構成する外装材2aの屋内側の面を平担状にする。
【0043】
そして、上記工程S2では、平担状にした既存外皮層2の屋内側の面に沿って、パネル状の断熱材3aを配置し、第1断熱層3を形成する。具体的には、パネル状の断熱材3aを、既存外皮層2を構成する外装材2aの屋内側の面上に当接させ、直接重ね合わせていき、第1断熱層3を形成する。また、上記工程S4では、桟材6を用いて、パネル状の断熱材3aを外装材2aに当接した状態で固定するが、この固定の際に、外装材2aがパネル状の断熱材3aの下地材となるため、別途下地材を設ける必要がなく、施工の手間やコストを低減することができる。
【0044】
また、上記工程S4でパネル状の断熱材3aの屋内側の面上に位置が固定された桟材6にはL型金物51が固定され、上記工程S5において枠材7は、L型金物51を介して、桟材6に対して固定される。これにより、パネル状の断熱材3aと枠材7との間に、上記工程S6において形状変形自在な繊維系断熱材4aが充填される間隙が形成される。そして上記工程S7において、枠材7に対してビス等の固定具により内装材5aを固定し、内皮層5を形成する。これにより、建物の既存の外周壁を、第1断熱層3及び第2断熱層4の二重の断熱層を備える外周壁1に改修することができる。
【0045】
なお、改修後の外周壁1は、建物の既存の外周壁と比較して、厚みが増加することが考えられる。そのため、建物の既存の外周壁のうち窓等の開口部がある部分については、壁の厚みの増加分に対応して、既存窓部材の屋内側に、新規サッシ枠及び新規ガラス板等で構成された新規内窓部材を嵌め込み、二重窓構造とすることができる(
図5における工程S6´)。これにより、外周壁の開口部についても、断熱性能を向上させることができる。なお、新規サッシ枠としては、アルミサッシ、樹脂サッシ、アルミ樹脂複合サッシなどを用いることができ、新規ガラス板としては、単層のガラス板、真空層が間に介在しない複層のガラス板、真空層が間に介在する複層のガラス板などを用いることができる。
【0046】
本発明に係る建物の外周壁構造は、上述した実施形態で示す構成に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した内容を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。