(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
帯状シート材からなる台紙と、上記台紙の一端側に取り付けられ上面に物品収納用の凹部を有する本体部と、同じく上記台紙の、所定幅だけ間をあけた他端側に取り付けられ上記本体部の上面を蓋しうる蓋部とを備え、上記台紙の、本体部と蓋部との間の所定幅領域が、本体部との境界および蓋部との境界において折り目を有し、上記本体部に対し蓋部を自在に開閉しうるヒンジ部になっている物品収納ケースであって、
上記本体部は、台紙上面に取り付けられる枠状の平面部と、この平面部から枠状に立ち上がる周壁部と、物品収納用の凹部を有する上面部とを備えた薄肉成形品からなり、
上記蓋部は、台紙上面に取り付けられる枠状の平面部と、この平面部から枠状に立ち上がる中空の枠壁とを備え、上記枠壁は、枠状の外周壁部と、この外周壁部の上端から、所定幅の枠面部を介して内側に折り返されて下向きに延びる内周壁部とを有し、上記枠壁の内周壁部が、上記本体部の周壁部と着脱自在に嵌合するよう構成された薄肉成形品からなり、
上記本体部の周壁部において、ヒンジ部側の周壁の一部がヒンジ部側に向かって膨出し、その膨出部のヒンジ部に対峙する部分が、上にいくほど周壁部内側に向かって傾斜した第1のテーパ部になっているとともに、ヒンジ部側と反対側に、蓋部係止用の係合部が設けられており、
上記蓋部の枠壁のうち、ヒンジ部側に延びる枠壁部分の左右両側が途切れており、その途切れて独立した枠壁部分の内周壁部が、上記本体部の周壁部との嵌合時に本体部側の第1のテーパ部に沿う第2のテーパ部になっているとともに、ヒンジ部側と反対側に、上記本体部の周壁部に設けられた蓋部係止用の係合部と係合しうる被係合部が設けられており、
上記ヒンジ部が奥側となる配置で蓋部と本体部とが閉じた状態において、蓋部を取り付けた側の台紙の端縁が、本体部を取り付けた側の台紙の端縁よりも手前側にくるように、上記ヒンジ部が上記本体部を取り付けた側の台紙に対して鋭角に傾斜して、上記蓋部を取り付けた側の台紙が手前側にずれることにより、上記本体部の周壁部に設けられた係合部と上記蓋部の内周壁部に設けられた被係合部との係合が外れ、上記本体部側の第1のテーパ部に沿って、蓋部側の第2のテーパ部が斜め上に滑って蓋部が開くよう構成されていることを特徴とする物品収納ケース。
上記蓋部と本体部とが、互いの平面部から延設される延設部によってつながった一続きの薄肉成形品からなり、上記延設部が、台紙上面の、ヒンジ部である所定幅領域に取り付けられている請求項1記載の物品収納ケース。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような物品収納ケースは、軽量で携帯にも便利であるが、蓋部4を開くとき、台紙1の本体部3が取り付けられている側と、蓋部4が取り付けられている側とを、それぞれ左右の手で持って開かなければならない。この動作は、例えば、容器の手前に設けられたフックを押すだけで蓋が簡単に開く化粧品のコンパクトケースに比べると、若干の煩わしさがある。また、本を開く要領で、この物品収納ケースを垂直に立てて蓋部4と本体部3を左右に開くと、中身を下に落としてしまうことがあり、問題となっている。
【0006】
そこで、このようなブックタイプの物品収納ケースにおいても、化粧品のコンパクトケースのように、ケースを片手で水平に持ち、手前を押す等の簡単な動作で開くようにすることが検討されている。
【0007】
しかしながら、例えば化粧品のコンパクトケースに倣って、本体部3の周壁部を加工して開閉用のフックピースを組み込む等の構成にすると、全体の構造が複雑になってコストが高くなり、また重量も増えるため、せっかくシンプルで携帯しやすい、というブックタイプケースの良さが失われてしまう。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、構成がシンプルで軽量かつ安価なブックタイプケースの良さを活かしながら、片手で蓋を簡単に開くことのできる、使い勝手のよい物品収納ケースの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、帯状シート材からなる台紙と、上記台紙の一端側に取り付けられ上面に物品収納用の凹部を有する本体部と、同じく上記台紙の、所定幅だけ間をあけた他端側に取り付けられ上記本体部の上面を蓋しうる蓋部とを備え、上記台紙の、本体部と蓋部との間の所定幅領域が、本体部との境界および蓋部との境界において折り目を有し、上記本体部に対し蓋部を自在に開閉しうるヒンジ部になっている物品収納ケースであって、上記本体部は、台紙上面に取り付けられる枠状の平面部と、この平面部から枠状に立ち上がる周壁部と、物品収納用の凹部を有する上面部とを備えた薄肉成形品からなり、上記蓋部は、台紙上面に取り付けられる枠状の平面部と、この平面部から枠状に立ち上がる
中空の枠壁とを備え、
上記枠壁は、枠状の外周壁部と、この外周壁部の上端から、所定幅の枠面部を介して内側に折り返されて下向きに延びる内周壁部とを有し、上記
枠壁の内周壁部が、上記本体部の周壁部と着脱自在に嵌合するよう構成された薄肉成形品からなり、上記本体部の周壁部において、ヒンジ部側の
周壁の一部が
ヒンジ部側に向かって膨出し、
その膨出部のヒンジ部に対峙する部分が、上にいくほど周壁部内側に向かって傾斜した第1のテーパ部になっているとともに、ヒンジ部側と反対側に、蓋部係止用の係合部が設けられており、上記蓋部の
枠壁のうち、ヒンジ部側
に延びる枠壁部分の左右両側が途切れており、その途切れて独立した枠壁部分の内周壁部が、上記本体部の周壁部との嵌合時に本体部側の第1のテーパ部に沿う第2のテーパ部になっているとともに、ヒンジ部側と反対側に、上記本体部の周壁部に設けられた蓋部係止用の係合部と係合しうる被係合部が設けられており、上記ヒンジ部が奥側となる配置で蓋部と本体部とが閉じた状態において、蓋部を取り付けた側の台紙の端縁が、本体部を取り付けた側の台紙の端縁よりも手前側にくるように、上記ヒンジ部が上記本体部を取り付けた側の台紙に対して鋭角に傾斜して、上記蓋部を取り付けた側の台紙が手前側にずれることにより、上記本体部の周壁部に設けられた係合部と上記蓋部の内周壁部に設けられた被係合部との係合が外れ
、上記本体部側の第1のテーパ部に沿って、蓋部側の第2のテーパ部が斜め上に滑って蓋部が開くよう構成されている物品収納ケースを第1の要旨とする。
【0010】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記蓋部の平面部から延びる延設部が、台紙上面の、ヒンジ部である所定幅領域に取り付けられている物品収納ケースを第2の要旨とし、上記本体部の平面部から延びる延設部が、台紙上面の、ヒンジ部である所定幅領域に取り付けられている物品収納ケースを第3の要旨とし、上記蓋部と本体部とが、互いの平面部から延設される延設部によってつながった一続きの薄肉成形品からなり、上記延設部が、台紙上面の、ヒンジ部である所定幅領域に取り付けられている物品収納ケースを第4の要旨とする。
【0011】
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、上記第1のテーパ部および第2のテーパ部の傾斜角θが、垂直方向に対し2〜45°に設定されている物品収納ケースを第5の要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
すなわち、本発明の物品収納ケースは、物品を保持する本体部と蓋部とが、それぞれ薄肉成形品からなり、これらが、帯状シート材からなる台紙の、ヒンジ部となる部分の両端に取り付けられた簡単な構成であるため、軽量で携帯に便利である。しかも、本体部と蓋部の係合部のうち、ヒンジ部側の所定部分が、互いに傾斜したテーパ部になっているため、
上記ヒンジ部の、蓋部が取り付けられた部分との境界となる折り目を押し出し、上記ヒンジ部が上記本体部を取り付けた台紙に対して鋭角に傾斜するようにして本体部と蓋部とをずらすと、
本体部と蓋部との係合が外れ、本体部側のテーパ部に沿って蓋部側のテーパ部が斜め上方向に滑って、簡単に
蓋部が開くようになっている。したがって、この物品収納ケースを片手で開けることができ、使い勝手がよい。また、この動作は、物品収納ケースを略水平に持って行うことができるため、蓋部が開いたとき、本体部の物品収納部から物品を、不用意に落とすようなことがない。
【0013】
そして、本発明のなかでも、特に、上記蓋部の平面部から延びる延設部が、台紙上面の、ヒンジ部である所定幅領域に取り付けられているもの、あるいは、上記本体部の平面部から延びる延設部が、台紙上面の、ヒンジ部である所定幅領域に取り付けられているものは、上記延設部が、ヒンジ部との境界部である折り目部分を補強することになるため、この部分を繰り返し屈曲しても、折り目が千切れたりヒンジ部全体の形が崩れたりすることがなく、好適である。
【0014】
また、上記蓋部と本体部とが、互いの平面部から延設される延設部によってつながった一続きの薄肉成形品からなり、上記延設部が、台紙上面の、ヒンジ部である所定幅領域に取り付けられているものは、この延設部が、ヒンジ部両側の折り目部分を補強するため、折り目部分およびヒンジ部が、より一層、千切れたり型崩れしにくくなり、好適である。
【0015】
さらに、本発明のなかでも、特に、上記第1のテーパ部および第2のテーパ部の傾斜角θが、垂直方向に対し2〜45°に設定されているものは、ヒンジ部の蓋部側の折り目部分を押して蓋部を開く動作を、よりスムーズに行うことができ、好適である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明を、化粧料であるファンデーションと化粧用のパフを収容する携帯用のケースに適用した一実施の形態を示す外観斜視図であり、
図2は、上記物品収納ケースの蓋部を開いた状態を示す斜視図である。また、
図3は、この物品収納ケースを平たく開いた状態を示す平面図である。
【0019】
すなわち、この物品収納ケースは、帯状の台紙10と、上記台紙10の一端側に取り付けられる本体部11と、同じく上記台紙10の中央部を所定幅だけ間をあけた他端側に取り付けられる蓋部12とを備えている。そして、上記台紙10の、本体部11と蓋部12の間の部分がヒンジ部13になっており、上記ヒンジ部13と本体部11、蓋部12との境界に設けられた折れ目P、Qによって、本体部11に対して蓋部12を平行に配置して蓋部12で本体部11の上面を蓋したり、これを開いたりすることができるようになっている。
【0020】
上記物品収納ケースをより詳しく説明すると、上記台紙10は、
図3に示すように、平面視長方形状の帯状シート材(この例では、厚み0.7mmの紙材)からなり、その一端側に、真空成形によって凹凸形状が付与された透明な薄肉成形品(この例では、厚み0.5mmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートの成形品)からなる本体部11が取り付けられている。また、台紙10の、上記ヒンジ部13となる部分を隔てた他端側に、同じく真空成形によって凹凸形状が付与された薄肉成形品(本体部11と同様、この例では、厚み0.5mmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートの成形品)からなる蓋部12が取り付けられている。
【0021】
上記本体部11は、
図3および
図3の右側面図である
図4(a)および
図3の正面図である
図4(b)に示すように、台紙10の上面に貼付される、平面視が四角枠状の平面部20と、この平面部20から四角枠状に立ち上がる第1の周壁部21と、この第1の周壁部21から、段差面22を介して一回り小さな四角枠状に立ち上がる第2の周壁部23とを備えている。
【0022】
そして、上記第2の周壁部23のうち、ヒンジ部13側(物品収納ケースを使用する際における奥側)の所定部分に、上にいくほど第2の周壁部23の内側に向かって傾斜する第1のテーパ部24が、段差面22の上に膨出した状態で形成されている。
【0023】
また、上記第1の周壁部21と第2の周壁部23の間の段差面22のうち、ヒンジ部13側とは反対側(物品収納ケースを使用する際における正面側)の部分が、
図2に示すように、その中央部が低く凹む円弧状の曲面22aになっている。そして、その曲面22aが設けられた、第2の周壁部23の正面側中央に、蓋部12を係止するための係合部となる小凹部25が設けられている。
【0024】
そして、上記第2の周壁部23の内側には、平面部20と平行に延びる上面部26が設けられており、この上面部26に、物品収納用の凹部27、28が、左右に並んで設けられている。向かって左側の凹部27にはファンデーションが充填されるようになっており、向かって右側の凹部28には、ファンデーションを付けて化粧するためのパフが収納されるようになっている。なお、上記凹部28の底面28aは、平面部20と同一面となる深さで、台紙10に当接しており、上記凹部27の底面27aは、凹部28よりやや浅く、台紙10との間に隙間を有している。そして、上記凹部27、28の境目となる帯状部分26aは、凹部28内からパフが取り出しやすいように、下に向かって円弧状に凹んでいる。
【0025】
一方、台紙10の、上記本体部11と反対側に設けられる蓋部12は、
図3および
図3の右側面図である
図4(a)および
図3の正面図である
図4(b)に示すように、台紙10の上面に貼付される、平面視が略四角枠状の平面部30と、この平面部30から四角枠状に立ち上がる外周壁部31と、この外周壁部31の上端から、所定幅の枠面部32を介して、内側に折り返されて下向きに延びる内周壁部33とを備えている。上記外周壁部31と枠面部32と内周壁部33とで、中空状の枠壁34が構成されている。
【0026】
なお、上記平面部30には、ヒンジ部13側に延びる延設部30aが設けられており、この延設部30aが、ヒンジ部13を構成する台紙10の上に重なって貼付されている。そして、台紙10の折り目Qに沿う部分に、折り目Qを挟むようにして、2本のミシン目50が形成されており、この部分が、台紙10の折り目Qとともに容易に折り返すことができるようになっている。
【0027】
また、上記蓋部12の枠壁34の内側には、台紙10との間に隙間を有する枠状の底枠部35が設けられており、この底枠部35の内側に、台紙10に当接する底面部36が設けられている。
【0028】
上記枠壁34は、ヒンジ部13側で、その左右両側が途切れており、その途切れて独立した枠壁部分34aの内周壁部33に、上記本体部11との嵌合時に本体部11側の第1のテーパ部24の傾斜に沿う傾斜面を有する第2のテーパ部37が形成されている。
【0029】
また、上記枠壁34の、ヒンジ部13とは反対側(物品収納ケースを使用する際における正面側)の枠面部32は、本体部11との嵌合時において、本体部11側の湾曲した曲面22aと隙間なく嵌合するよう、円弧状に湾曲した曲面32aになっている(
図2参照)。そして、この曲面32aから内側に延びる内周壁部33に、上記本体部11の第2の周壁部23に設けられた小凹部25と係合しうる被係合部として、小凸部38が設けられている。
【0030】
上記の構成によれば、台紙10のヒンジ部13におけるP、Qを谷折りして蓋部12側の台紙10と本体部11側の台紙10とを平行にすることにより、蓋部12の枠壁34を、本体部11の第2の周壁部23に外嵌させて、本体部11の上面を蓋することができる。この状態を、
図1のY−Y′断面図である
図4(c)に示す。また、
図4(c)において一点鎖線で囲われた楕円部Rの拡大図を
図5(a)に示し、同じく楕円部Sの拡大図を
図5(b)に示す。なお、
図5(a)において、本体部11の第2の周壁部23と蓋部12の枠壁部分34aとは、互いに圧接してやや弾性変形していることから、図では両者が一部重なった状態で表示している(以下の図も同じ)。
【0031】
これらの図からわかるように、蓋部12を閉じた状態では、本体部11の第2の周壁部23と蓋部12の枠壁部分34aとが、それぞれの第1のテーパ部24と第2のテーパ部37とを、互いに圧接させた状態で嵌合している。このため、
図5(b)において矢印で示すように、物品収納ケースの正面側に設けられた、蓋部係止用の小凹部25と小凸部38との係合部に、小凸部38を内側に押し付ける力が働き、蓋部12が不用意に開くことがない。したがって、本体部11との嵌合が安定した状態で維持されるのである。
【0032】
一方、蓋部12を開く場合は、
図4(c)において太矢印で示すように、本体部11を取り付けた側の台紙10の端縁に手の親指をかけてその動きを抑え、ヒンジ部13側に回した人指し指と薬指で、ヒンジ部13の折り目Qを手前に押し出すようにする。そして、蓋部12を取り付けた側の台紙10の端縁が、本体部11を取り付けた側の台紙10の端縁よりも手前側にくるようヒンジ部13を傾斜させると、上記本体部11側の小凹部25と蓋部12側の小凸部38との係合が外れて、蓋部12が簡単に開くようになっている。
【0033】
すなわち、ヒンジ部13の折り目Qが手前に押し出されて、上記ヒンジ部13が本体部11を取り付けた側の台紙10に対して鋭角に傾斜して蓋部12を取り付けた側の台紙10が手前にずれると、
図6(
b)に示すように、
蓋部12の正面側に設けられた、蓋部係止用の小凸部38が、本体部11側の小凹部25から手前側にずれる。これに伴い、
図6(
a)に示すように、
本体部11側の第1のテーパ部24に沿って、蓋部12側の第2のテーパ部37が斜め上に滑り、その結果、蓋部12の枠壁部分34aが本体部11の上面部26に乗り上げる。これによって、蓋部12が、本体部11から簡単に開くのである。この一連の動作を、
図7(a)〜(c)に連続的に示す。なお、
図7では、動作がわかりやすいように、主要な符号以外の符号を略している。
【0034】
このように、上記物品収納ケースは、本体部11と蓋部12とが、それぞれ薄肉成形品からなり、これらが、紙材からなる台紙10の、ヒンジ部13となる部分の両側に取り付けられた簡単な構成であるため、軽量で携帯に便利である。しかも、本体部11と蓋部12の嵌合部のうち、ヒンジ部13側の所定部分が、互いに傾斜した第1、第2のテーパ部24、37になっているため、ヒンジ部13の上側(折り目Qの部分)を手前に押し出すようにして本体部11と蓋部12とをずらすだけで、簡単に、本体部11と蓋部12との係合が外れるようになっている。したがって、この物品収納ケースを片手で開けることができ、使い勝手がよい。また、この動作は、物品収納ケースを略水平に持って行うことができるため、蓋部12が開いたとき、本体部11の物品収納部から物品(この例では、化粧用のパフ等)を、不用意に落とすようなことがない。
【0035】
しかも、上記物品収納ケースは、上記蓋部12の平面部30から延びる延設部30aが、台紙10のヒンジ部13に取り付けられているため、上記延設部30aが、折り目Qと、その周囲の部分を補強している。したがって、蓋部12の開閉のために、この部分を繰り返し屈曲しても、折り目Qが千切れたりヒンジ部13の形が崩れたりすることがなく、長期にわたって良好に使用することができる。
【0036】
なお、上記の例において、本体部11側に設けられる第1のテーパ部24と、蓋部12側に設けられる第2のテーパ部37の、それぞれの傾斜角θ[垂直方向に対する傾斜角度、
図5(a)を参照]は、ともに2〜45°であることが望ましく、なかでも、10〜30°であることが特に好ましい。すなわち、傾斜角θが小さすぎると、蓋部12をスムーズに開くことが難しくなるおそれがあり、逆に、傾斜角θが大きすぎると、両者の圧接力が水平方向にかかりにくくなって、蓋部12が不用意に開く可能性が生じ、好ましくない。そして、両者の傾斜角θが互いに異なっていると、ヒンジ部13を傾斜させたときに互いの傾斜面同士がスムーズに滑りにくいため、両者の傾斜角θは同一であることが好ましい。ちなみに、上記の例では、両者とも、傾斜角θは15°である。
【0037】
また、上記の例では、蓋部12を開く際、蓋部12側の第2のテーパ部37が、本体部11の平坦な上面部26に乗り上げるようになっているが、
図8(a)に示すように、本体部11の、第1のテーパ部24から上面部26につながる部分に、第2のテーパ部37が設けられた枠壁部分34a(
図3参照)の下端部が入り込む凹条40を設けてもよい。この凹条40は、ヒンジ部13側が浅くなっている。
【0038】
そして、蓋部12を開くために、前述と同様、ヒンジ部13の上側(折り目Qの部分、
図7参照)を手前側に押し出す動作を行うと、
図8(b)に示すように、浮き上がった蓋部12の枠壁部分34aが、上記凹条40内に一端入り込むようになっている。そして、さらにヒンジ部13の上側を手前側に押し出すと、蓋部12の枠壁部分34aは上記凹条40から出て平坦な上面部26に乗り上げる。これにより、蓋部12を大きく開くことができる。
【0039】
このように、本体部11の上面部26側に凹条40を設けて、蓋部12の枠壁部分34aを一旦この凹条40内に入り込ませるようにすると、ヒンジ部13を押す力が一気に蓋部12側にかかりすぎて、ケース全体が型崩れしないよう配慮したものである。ただし、上記第1、第2のテーパ部24、37の傾斜角θの角度、台紙10、本体部11、蓋部12の材質や厚み等によって、全体が型崩れしないよう調整することができることから、上記凹条40を設けることは、必ずしも必要ではない。
【0040】
また、上記凹条40を設ける場合と同様の考え方から、例えば
図9に示すように、本体部11の、第1のテーパ部24から上面部26につながる部分に、第2のテーパ部37が設けられた枠壁部分34a(
図3参照)の下端部を一旦乗せることのできる段差部41を設けてもよい。上記段差部41による段差の高さHは、0.1〜1mmの範囲内に設定することが好適である。すなわち、段差の高さHが小さすぎると、この段差部41を設ける効果が得られなくなるおそれがあり、逆に、段差の高さHが大きすぎると、この段差部41から上面部26に乗り上げることが難しくなるおそれがあり、好ましくない。もちろん、
図8に示す例と同様、この段差部41も、必ずしも必要ではない。
【0041】
さらに、上記の例では、台紙10に取り付ける蓋部12の平面部30からヒンジ部13側に延びる延設部30aを設けて、平面部30とともに台紙10の上面に貼付しているが、上記延設部30aは必ずしも必要ではない。例えば、
図10に示すように、ヒンジ部13は、台紙10のみで構成されていても差し支えない。なお、本体部11と蓋部12の、台紙10に貼付される部分を斜線で示す(以下の図も同じ)。
【0042】
また、
図11(a)に示すように、台紙10に取り付ける本体部11の平面部20からヒンジ部13側に延びる延設部20aを設けて平面部20とともに貼付するようにしてもよい。この場合、折り目Pと重なる、上記延設部20aと平面部20との境界部にミシン目50′を設けることが望ましい。
【0043】
あるいは、
図11(b)に示すように、本体部11と蓋部12とが、互いの平面部20、30から延設される延設部45によってつながった一続きの薄肉成形品からなり、上記延設部45と、互いの平面部20、30とが、台紙10の上面に貼付されたものであってもよい。その場合、折り目P、Qと重なるそれぞれの境界部に、ミシン目50、50′を設けることが望ましい。なお、ミシン目50、50′は、前記の例のように2本のミシン目が折り目P、Qを挟むように形成しても、1本のミシン目が折り目P、Qに重なるよう形成してもよい。
【0044】
なお、本発明において、台紙10となる帯状シート材として、上記の例では紙材を用いたが、紙材に限らず、プラスチックシート、複合シート等、各種のものを用いることができる。そして、その厚みも、適宜に設定されるが、例えば0.1〜2mm程度に設定することが好適である。すなわち、台紙10の厚みが薄すぎると、ケースの強度が低下して保形性が悪くなるおそれがあり、逆に、厚みが厚すぎると、開閉動作がスムーズにいかず、ヒンジ部13に無理な力がかかって型崩れしやすくなるおそれがある。
【0045】
また、上記台紙10の表面(蓋部12を閉じた状態で表に出る面)に、文字や模様を印刷する場合は、その表面が平滑で、印刷特性に優れているものが好適である。もちろん、デザイン的な点から、和紙テイストのもの、毛羽立ったもの、凹凸模様が付与されたもの等を用いてもよい。
【0046】
一方、薄肉成形品からなる本体部11、蓋部12の材料は、型成形によって凹凸が賦形できる樹脂製シートであればどのようなものであってもよい。例えば、上記の例で用いたポリエチレンテレフタレート(PET)の他、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)等の熱可塑性樹脂があげられる。なかでも、再生PETを用いることが、コストおよび省資源の点で好適である。また、樹脂製シート材の片面に、異なる材質のシートやフィルムを積層して強度を高くしたり、色や柄のついたシートやフィルムを積層して、より印象的なデザインのケースとしたりすることができる。
【0047】
そして、上記本体部11、蓋部12に用いられる樹脂製シートの厚みも、上記の例に限らず、用いる材料や得られる物品収納ケースの大きさ等によって適宜に設定されるが、通常、0.1〜2mmの範囲に設定することが好適である。すなわち、厚みが薄すぎると型成形が容易でなく、保形性の点でも好ましくない。逆に、厚みが厚すぎると、物品収納ケース全体が重たいものとなり、携帯に不便となり、また省資源の点からも好ましくない。
【0048】
また、上記樹脂製シートから本体部11、蓋部12を得るための成形方法としては、真空成形の他、圧空成形やプレス成形等、樹脂製シートを型成形によって凹凸形状を賦形する各種の成形方法を用いることができる。
【0049】
さらに、上記台紙10と本体部11、蓋部12との貼付は、通常、接着剤を用いてなされるが、用いる材料によっては、超音波接着やヒートシールによるものであってもよい。
【0050】
そして、本発明において、本体部11と蓋部12とを嵌合して係止するための構成は、ヒンジ部13側に第1、第2のテーパ24、37を設けてヒンジ部13の折り目Qを手前に押し出すことができる構成になっていれば、他の構成は、特に限定するものではない。
【0051】
また、上記の例では、本体部11の左右に並ぶ凹部27、28(
図2、
図3参照)のうち、凹部27にファンデーションを充填し、凹部28にパフを収納するようにしたが、凹部27、28の内容物は、これに限るものではない。例えば、凹部27に、ファンデーション等の化粧料を充填した中皿を収容するようにしてもよい。その場合、例えば、凹部27の内側壁の前後に一個所ずつ係合用凸部を設けるとともに、中皿の外側壁に係合用凹部を設け、これらを係合することにより中皿を固定することが好ましい。係合固定された中皿は、凹部27、28の間の帯状部分26aに指を入れることにより、簡単に取り外すことができる。
【0052】
さらに、上記凹部27、28の平面視形状やその数、配置も、上記の例に限るものではない。
【0053】
そして、本発明において、物品収納ケースは、その閉じた状態における平面視形状が、上記の例のように長方形(
図1等を参照)である必要はなく、正方形、菱形、台形等、各種の四角形であってもよい。また、ヒンジ部13を介して開閉することができれば、略丸形、多角形、ハート形等、その形状は自由に選択することができる。したがって、本発明において、台紙10を構成する「帯状シート材」の「帯状」とは、厳密な帯状である必要はなく、本体部11を取り付ける部分と、ヒンジ部13と、蓋部12を取り付ける部分とが、横一列に並んだ形状であれば、これらは全て「帯状」に含む趣旨である。
【0054】
なお、上記の例は、本発明を、化粧料を携帯するためのケースに適用した例であるが、本発明の物品収納ケースの用途は、これに限定するものではなく、文房具やおもちゃ、食品、縫製具等、各種の物品を収納するケースに適用することができる。