(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タービンの回転軸線に対して直交する断面において、前記第1のスクロール通路の径方向の内側の路壁が接続される第1舌部と、前記第2のスクロール通路の径方向の内側の路壁が接続される第2舌部と、前記回転軸線と、を通る直線を境界線とした場合に、
前記ノズル流路の前記第1範囲は前記境界線を挟んだ一方の側に形成され、
前記ノズル流路の前記第2範囲は、前記境界線を挟んだ他方の側に形成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の2ステージターボシステム。
前記流量制御バルブは、前記流量制御バルブが全閉状態にあるときには、前記第1のスクロール通路に流入する前記排ガスの全量が前記内周側スクロール通路を流れ、且つ、前記流量制御バルブが開弁状態にあるときには、前記第1のスクロール通路に流入する前記排ガスが前記内周側スクロール通路と前記外周側スクロール通路の両方に流れるように構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の2ステージターボシステム。
前記制御装置は、前記エンジンの回転数が極低回転領域にある場合においては、前記高圧段導入通路、前記第1低圧段導入通路および内周側スクロール通路の各々を前記排ガスが通過するのを可能とし、前記外周側スクロール通路、前記第2低圧段導入通路、前記高圧段バイパス通路および前記低圧段バイパス通路の各々を前記排ガスが通過するのを不可とするように、前記バルブ装置を制御することを特徴とする請求項9に記載の2ステージターボシステム。
前記制御装置は、前記エンジンの回転数が低回転領域にある場合においては、前記高圧段導入通路、前記第1低圧段導入通路、前記内周側スクロール通路および前記外周側スクロール通路の各々を前記排ガスが通過するのを可能とし、前記第2低圧段導入通路、前記高圧段バイパス通路および前記低圧段バイパス通路の各々を前記排ガスが通過するのを不可とするように、前記バルブ装置を制御することを特徴とする請求項9または10に記載の2ステージターボシステム。
前記制御装置は、前記エンジンの回転数が中回転領域にある場合においては、前記高圧段導入通路、前記第1低圧段導入通路、前記内周側スクロール通路、前記外周側スクロール通路および第2低圧段導入通路の各々を前記排ガスが通過するのを可能とし、前記高圧段バイパス通路および前記低圧段バイパス通路の各々を前記排ガスが通過するのを不可とするように、前記バルブ装置を制御することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の2ステージターボシステム。
前記制御装置は、前記エンジンの回転数が高回転領域にある場合においては、前記高圧段バイパス通路、前記第1低圧段導入通路、前記内周側スクロール通路、前記外周側スクロール通路および第2低圧段導入通路の各々を前記排ガスが通過するのを可能とし、前記高圧段導入通路および前記低圧段バイパス通路の各々を前記排ガスが通過するのを不可とするように、前記バルブ装置を制御することを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の2ステージターボシステム。
前記制御装置は、前記エンジンの回転数が前記高回転領域における所定の回転数以上にある場合には、前記高圧段バイパス通路、前記第1低圧段導入通路、前記内周側スクロール通路、前記外周側スクロール通路、前記第2低圧段導入通路、および、前記低圧段バイパス通路の各々を前記排ガスが通過するのを可能とし、前記高圧段導入通路を前記排ガスが通過するのを不可とするように、前記バルブ装置を制御することを特徴とする請求項13に記載の2ステージターボシステム。
エンジンの排気通路に設置される高圧段タービンを有する高圧段過給機と、前記排気通路において前記高圧段タービンの下流側に設置される低圧段タービンを有する、前記高圧段過給機より大型の低圧段過給機と、を備える請求項10に記載の2ステージターボシステムの制御方法であって、
前記エンジンの回転数を取得する回転数取得ステップと、
前記エンジンの回転数の回転数領域を判定する領域判定ステップと、
前記エンジンの回転数が極低回転領域あるいは低回転領域にある場合においては、前記低圧段過給機の第1のスクロール通路を前記高圧段タービンを経由した排ガスが通過するのを可能とし、前記低圧段過給機の第2のスクロール通路を前記排ガスが通過するのを不可とするように、前記バルブ装置を制御する低回転域制御ステップと、を備えることを特徴とする2ステージターボシステムの制御方法。
前記エンジンの回転数が前記極低回転領域にある場合においては、前記低圧段過給機の前記第1のスクロール通路の内周側スクロール通路を前記高圧段タービンを経由した排ガスが通過するのを可能とし、前記低圧段過給機の前記第1のスクロール通路の外周側スクロール通路を前記排ガスが通過するのを不可とするように、前記バルブ装置を制御する極低回転時制御ステップを、さらに備えることを特徴とする請求項15に記載の2ステージターボシステムの制御方法。
前記エンジンの回転数が前記低回転領域にある場合においては、前記低圧段過給機の第1のスクロール通路の前記内周側スクロール通路および前記外周側スクロール通路の両方を前記高圧段タービンを経由した排ガスが通過するのを可能とし、前記第2のスクロール通路を前記排ガスが通過するのを不可とするように、前記バルブ装置を制御する低回転時制御ステップを、さらに備えることを特徴とする請求項15または16に記載の2ステージターボシステムの制御方法。
前記エンジンの回転数が前記中回転領域にある場合においては、前記低圧段過給機の前記第1のスクロール通路の内周側スクロール通路と外周側スクロール通路を前記高圧段タービンを経由した排ガスが通過するのを可能とすると共に、前記第2のスクロール通路を排ガスが通過するのを可能とするように、前記バルブ装置を制御する中回転時制御ステップを、さらに備えることを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載の2ステージターボシステムの制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のVGターボでは、ノズルベーンを開閉するための複雑なリンク機構が必要であり、構造が複雑となる課題がある。また、特許文献2のツインスクロールを採用した過給機のU/C0特性(後述の
図4参照)はシングルスクロールを採用した過給機の特性と同様であり、エンジンの低速時におけるレスポンスの大幅な改善は見込みにくい。U/C0特性とは、タービン作動速度比(U/C0)とタービン効率との関係を表す特性であり、UはタービンTの周速度、C0は、タービンの入口、出口の圧力比と、入口温度から定義される理論速度となる。また、特許文献3のVFTタービンを2ステージターボシステムへ適用することを検討しても、VFTタービンのU/C0特性はタービン作動速度比(U/C0)の小さい領域(低速度比側)でのタービン効率が高くないため、ツインスクロールと同様にレスポンスの大幅な改善は見込めない。
【0008】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、エンジンの広範な作動範囲にわたって必要な過給圧を発生させつつ、過給のレスポンスが向上された過給機、該過給機を備えた2ステージターボシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る過給機は、
エンジンの排気通路に設置されるタービンのノズル流路に排ガスを導入するためのスクロール部を備えた過給機であって、
前記スクロール部は、第1のスクロール通路および第2のスクロール通路の少なくとも2つスクロール通路を有し、前記第1のスクロール通路を流れる前記排ガスが導入される前記ノズル流路の第1範囲と、前記第2のスクロール通路を流れる前記排ガスが導入される前記ノズル流路の第2範囲とが、前記ノズル流路の周方向において重複しないように構成されており、
前記第1のスクロール通路は、
前記第1のスクロール通路における所定範囲において前記排ガスの流れ方向に沿って設けられる区画壁であって、前記第1のスクロール通路を、外周側スクロール通路と、前記外周側スクロール通路よりも内周側に位置する内周側スクロール通路とに区画するとともに、前記外周側スクロール通路と前記内周側スクロール通路とを連通する連通孔を有する区画壁と、
前記区画壁よりも上流側に設けられ、前記外周側スクロール通路および前記内周側スクロール通路を流れる前記排ガスの流量を調整するための流量制御バルブと、を備える。
【0010】
上記(1)の構成によれば、過給機のタービンのスクロール部は、少なくとも第1のスクロール通路および第2のスクロール通路を備える。また、第1のスクロール通路には外周側スクロール通路および内周側スクロール通路が区画(形成)されると共に、この2つの通路の流量が調整可能に構成される。ここで、第1のスクロール通路および第2のスクロール通路の各々は、タービンホイールの周囲に形成されるノズル流路に対して異なる方向から部分的に排ガスを導入するよう構成される。つまり、過給機のタービンのスクロール部は、複数のスクロール通路のうちの一部(例えば第1のスクロール通路)に限定してエンジンから排出された排ガスを流すことで、排ガスを導入するノズル流路の範囲をその一部に限定することが可能に構成される。このため、複数のスクロール通路のうちの一部に限定することによりノズル流路の一部の範囲に排ガスを導入する場合には、ノズル流路の全範囲に対して排ガスを導入する場合よりも、タービンホイールを通過する際の排ガスの流速や圧力を高めることができ、タービンをより迅速に駆動することができる。さらに、第1のスクロール通路の内周側スクロール通路にのみ排ガスを流すことにより、排ガスの流速や圧力を高め、タービンをより迅速に駆動することができる。
【0011】
また、複数のスクロール通路の各々がノズル流路の周方向において重複しないように構成されることで、ツインスクロールやVFTタービンよりも、U/C0特性におけるタービン効率の最高点を低速度比側にシフトすることができる。つまり、低速度比側でのタービン効率を高めることができる。このため、エンジンの低速時などの排ガスの流量が少ない場合(低速度比側)において、より効率よく過給機を回転駆動させることができる。したがって、このような特徴を備えるスクロール部をタービンに採用することで、タービンをより迅速に効率良く駆動することができ、過給(過給効果)のレスポンスを向上することができる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記流量制御バルブは、前記流量制御バルブが全閉状態にあるときには、前記第1のスクロール通路に流入する前記排ガスの全量が前記内周側スクロール通路を流れ、且つ、前記流量制御バルブが開弁状態にあるときには、前記第1のスクロール通路に流入する前記排ガスが前記内周側スクロール通路と前記外周側スクロール通路の両方に流れるように構成される。
【0013】
上記(2)の構成によれば、流量制御バルブの状態によって排ガスの流路を、内周側スクロール通路のみか、あるいは、両方のスクロール通路かに切り替えることができる。これによって、タービンの回転トルクを調整することができる。
【0014】
(3)本発明の少なくとも一実施形態に係る2ステージターボシステムは、
エンジンの排気通路に設置される高圧段タービンを有する高圧段過給機と、
上記(1)または(2)に記載の過給機であって、前記排気通路において前記高圧段タービンの下流側に設置される低圧段タービンを有する、前記高圧段過給機より大型の低圧段過給機と、を備える。
【0015】
上記(3)の構成によれば、上記(1)または(2)の過給機は、2ステージターボシステムの低圧段過給機に用いられる。これによって、2ステージターボシステムの大型の低圧段タービンをより迅速に効率良く駆動することができ、過給のレスポンスを向上することができる。
【0016】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記排気通路は、
前記エンジンと前記高圧段タービンの入口とを接続する高圧段導入通路と、
前記高圧段タービンの出口側と前記低圧段タービンの前記第1のスクロール通路とを接続する第1低圧段導入通路と、
前記高圧段タービンを迂回して、前記エンジンと前記低圧段タービンの前記第2のスクロール通路とを接続する第2低圧段導入通路と、を含む。
【0017】
上記(4)の構成によれば、2ステージターボシステムは、低圧段タービンの第1のスクロール通路には高圧段タービンを通過した排ガスを導入し、第2のスクロール通路には高圧段タービンを通過することなく、低圧段タービンに排ガスを直接導入することが可能に構成される。通常、2ステージターボシステムは、エンジンの回転数が中回転領域以下にある場合には過給のレスポンスの向上のために高圧段過給機を使用して過給を実行する。このような場合など、第1のスクロール通路からノズル流路に排ガスを導入することによって、高圧段タービンを駆動した後の排ガスの流速等をノズル流路に導入する際に高めることができ、2ステージターボシステムの大型の低圧段タービンをより迅速に効率良く回転させることができる。また、エンジンの回転数が低回転領域の低回転側(極低回転領域)にある場合など排ガスの流量が少ない時には、流量制御バルブにより内周側スクロール通路のみに排ガスを流入させることによって、過給のレスポンスをさらに向上させることができる。
【0018】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記排気通路は、
前記高圧段タービンを迂回して、前記エンジンと前記低圧段タービンの前記第1のスクロール通路とを接続する高圧段バイパス通路と、
前記低圧段タービンを迂回して前記低圧段タービンの上流側と下流側とを接続する低圧段バイパス通路と、をさらに含み、
前記高圧段導入通路、前記第1低圧段導入通路、前記内周側スクロール通路、前記外周側スクロール通路、前記第2低圧段導入通路、前記高圧段バイパス通路、および、前記低圧段バイパス通路の各々を流れる前記排ガスの流量の割合を調整可能なバルブ装置と、をさらに含む。
上記(5)の構成によれば、排気通路を形成する各通路(高圧段導入通路、第1低圧段導入通路、内周側スクロール通路、外周側スクロール通路、第2低圧段導入通路、高圧段バイパス通路、低圧段バイパス流路)を流れる排ガスの流量の割合をバルブ装置によって調整することができる。これによって、高圧段過給機や低圧段過給機の切り替えや、低圧段過給機の低圧段タービンのスクロール部におけるスクロール通路(第1のスクロール通路、第2のスクロール通路、内周側スクロール通路、外周側スクロール通路)の切り替えを行うことができ、エンジンの広範な作動範囲にわたって必要な過給圧を発生させつつ、過給のレスポンスに優れた2ステージターボシステムを提供することができる。
【0019】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記バルブ装置は、
前記流量制御バルブと、
前記高圧段導入通路に設置される第1バルブと、
前記第2低圧段導入通路に設置される第2バルブと、
前記高圧段バイパス通路に設置される第3バルブと、
前記低圧段バイパス通路に設置される第4バルブと、を有する。
上記(6)の構成によれば、排気通路を形成する各通路の各々を流れる排ガスの流量の割合を、各通路に設けられる複数のバルブによって調整することができる。また、第4バルブによって、低圧段過給機の低圧段コンプレッサの出口側の圧力(ブースト圧)を調整することができ、サージングなどの低圧段過給機の異常運転を防止することができる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記バルブ装置は、
前記流量制御バルブと、
前記高圧段導入通路、前記第2低圧段導入通路、前記高圧段バイパス通路および前記低圧段バイパス通路の各々を流れる排ガスの流量を調整可能な第5バルブと、を有する。
上記(7)の構成によれば、排気通路を形成する各通路を流れる排ガスの割合を2つのバルブによって調整することができると共に、低圧段過給機の低圧段コンプレッサの出口側の圧力(ブースト圧)を調整することができ、サージングなどの低圧段過給機の異常運転を防止することができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(5)〜(7)の構成において、
前記エンジンの回転数に応じて前記バルブ装置を制御する制御装置をさらに備える。
上記(8)の構成によれば、制御装置がバルブ装置を制御することにより、排気通路を形成する各通路の各々を流れる排ガスの流量の割合を、エンジンの回転数に応じて適切に調整することができ、2ステージターボシステムの作動モードを実現することができる。
【0022】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記制御装置は、前記エンジンの回転数が極低回転領域にある場合においては、前記高圧段導入通路、前記第1低圧段導入通路および内周側スクロール通路の各々を前記排ガスが通過するのを可能とし、前記外周側スクロール通路、前記第2低圧段導入通路、前記高圧段バイパス通路および前記低圧段バイパス通路の各々を前記排ガスが通過するのを不可とするように、前記バルブ装置を制御する。
上記(9)の構成によれば、エンジンの回転数が極低回転数領域にある場合には、第1のスクロール通路の内周側スクロール通路のみに高圧段タービンを経由した排ガスを流し、低圧段タービンの第1のスクロール通路の外周側スクロール通路および第2のスクロール通路には排ガスを流さないように構成することで、低圧段過給機のレスポンスを向上することができる。
【0023】
(10)幾つかの実施形態では、上記(8)〜(9)の構成において、
前記制御装置は、前記エンジンの回転数が低回転領域にある場合においては、前記高圧段導入通路、前記第1低圧段導入通路、前記内周側スクロール通路および前記外周側スクロール通路の各々を前記排ガスが通過するのを可能とし、前記第2低圧段導入通路、前記高圧段バイパス通路および前記低圧段バイパス通路の各々を前記排ガスが通過するのを不可とするように、前記バルブ装置を制御する。
上記(10)の構成によれば、エンジンの回転数が低回転数領域にある場合には、低圧段タービンの第2のスクロール通路には排ガスを流さず、内周側スクロール通路および外周側スクロール通路を備える第1のスクロール通路の全体に高圧段タービンを経由した排ガスを流すよう構成される。これによって、低圧段過給機において、低回転領域における排ガスの流量に応じた適切な容量を確保しつつ、過給のレスポンスを向上することができる。
【0024】
(11)幾つかの実施形態では、上記(8)〜(10)の構成において、
前記制御装置は、前記エンジンの回転数が中回転領域にある場合においては、前記高圧段導入通路、前記第1低圧段導入通路、前記内周側スクロール通路、前記外周側スクロール通路および第2低圧段導入通路の各々を前記排ガスが通過するのを可能とし、前記高圧段バイパス通路および前記低圧段バイパス通路の各々を前記排ガスが通過するのを不可とするように、前記バルブ装置を制御する。
上記(11)の構成によれば、エンジンの回転数が中回転数領域にある場合には、低圧段タービンの内周側スクロール通路および外周側スクロール通路を備える第1のスクロール通路の全体に高圧段タービンを経由した排ガスを流すと共に、第1のスクロール通路および第2のスクロール通路の両方に排ガスを流すよう構成される。これによって、中回転領域における排ガスの流量に応じた適切な容量を確保しつつ、高圧段過給機および低圧段過給機による過給のレスポンスを向上することができる。
【0025】
(12)幾つかの実施形態では、上記(8)〜(11)の構成において、
前記制御装置は、前記エンジンの回転数が高回転領域にある場合においては、前記高圧段バイパス通路、前記第1低圧段導入通路、前記内周側スクロール通路、前記外周側スクロール通路および第2低圧段導入通路の各々を前記排ガスが通過するのを可能とし、前記高圧段導入通路および前記低圧段バイパス通路の各々を前記排ガスが通過するのを不可とするように、前記バルブ装置を制御する。
上記(12)の構成によれば、エンジンの回転数が高回転数領域にある場合には、高圧段タービンに排ガスを流すことなく、低圧段タービンの内周側スクロール通路および外周側スクロール通路を備える第1のスクロール通路の全体および第2のスクロール通路の両方に排ガスを流すよう構成される。つまり、高回転領域における排ガスの流量に対して効率の優れた低圧段過給機のみを利用して過給を行う。これによって、低圧段過給機によって大流量の排ガスに応じた適切な過給を行うことができる。
【0026】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)の構成において、
前記制御装置は、前記エンジンの回転数が前記高回転領域における所定の回転数以上にある場合には、前記高圧段バイパス通路、前記第1低圧段導入通路、前記内周側スクロール通路、前記外周側スクロール通路、前記第2低圧段導入通路、および、前記低圧段バイパス通路の各々を前記排ガスが通過するのを可能とし、前記高圧段導入通路を前記排ガスが通過するのを不可とするように、前記バルブ装置を制御する。
上記(13)の構成によれば、高回転数領域の高回転側にエンジンの回転数がある場合においてブースト圧を適切に調整することができる。
【0027】
(14)本発明の少なくとも一実施形態に係る2ステージターボシステムの制御方法は、
エンジンの排気通路に設置される高圧段タービンを有する高圧段過給機と、前記排気通路において前記高圧段タービンの下流側に設置される低圧段タービンを有する、前記高圧段過給機より大型の低圧段過給機と、を備える上記(8)に記載の2ステージターボシステムの制御方法であって、
前記エンジンの回転数を取得する回転数取得ステップと、
前記エンジンの回転数の回転数領域を判定する領域判定ステップと、
前記エンジンの回転数が極低回転領域あるいは低回転領域にある場合においては、前記低圧段過給機の第1のスクロール通路を前記高圧段タービンを経由した排ガスが通過するのを可能とし、前記低圧段過給機の第2のスクロール通路を前記排ガスが通過するのを不可とするように、前記バルブ装置を制御する低回転域制御ステップと、を備える。
【0028】
上記(14)の構成によれば、上記(8)と同様に、2ステージターボシステムの過給のレスポンスを向上しつつ、エンジンの回転数に適した2ステージターボシステムの作動モードを実現することができる。
【0029】
(15)幾つかの実施形態では、上記(14)の構成において、
前記エンジンの回転数が前記極低回転領域にある場合においては、前記低圧段過給機の前記第1のスクロール通路の内周側スクロール通路を前記高圧段タービンを経由した排ガスが通過するのを可能とし、前記低圧段過給機の前記第1のスクロール通路の外周側スクロール通路を前記排ガスが通過するのを不可とするように、前記バルブ装置を制御する極低回転時制御ステップを、さらに備える。
上記(15)の構成によれば、上記(9)と同様に、極低回転領域における低圧段過給機のレスポンスを向上することができる。
【0030】
(16)幾つかの実施形態では、上記(14)〜(15)の構成において、
前記エンジンの回転数が前記低回転領域にある場合においては、前記低圧段過給機の第1のスクロール通路の前記内周側スクロール通路および前記外周側スクロール通路の両方を前記高圧段タービンを経由した排ガスが通過するのを可能とし、前記第2のスクロール通路を前記排ガスが通過するのを不可とするように、前記バルブ装置を制御する低回転時制御ステップを、さらに備える。
上記(16)の構成によれば、上記(10)と同様に、低圧段過給機において、エンジンの回転数が低回転領域にある場合における排ガスの流量に応じた適切な容量を確保しつつ、過給のレスポンスを向上することができる。
【0031】
(17)幾つかの実施形態では、上記(14)〜(16)の構成において、
前記エンジンの回転数が前記中回転領域にある場合においては、前記低圧段過給機の前記第1のスクロール通路の内周側スクロール通路と外周側スクロール通路を前記高圧段タービンを経由した排ガスが通過するのを可能とすると共に、前記第2のスクロール通路を排ガスが通過するのを可能とするように、前記バルブ装置を制御する中回転時制御ステップを、さらに備える。
上記(17)の構成によれば、上記(11)と同様に、エンジンの回転数が中回転領域にある場合における排ガスの流量に応じた適切な容量を確保しつつ、高圧段過給機および低圧段過給機による過給のレスポンスを向上することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、エンジンの広範な作動範囲にわたって必要な過給圧を発生させつつ、過給のレスポンスが向上された過給機、該過給機を備えた2ステージターボシステムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態に係るエンジン7に適用された2ステージターボシステム1を示す模式図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る低圧段過給機3の低圧段タービン3Tのスクロール部3Sの模式図であり、スクロール部3Sは2つのスクロール通路Pを備えるダブルスクロール構造を有する。
図3は、本発明の一実施形態に係る低圧段過給機3の低圧段タービン3Tのスクロール部3Sを周方向に沿って切断した断面図であり、
図2のスクロール部3Sの一部をA方向から見た図である。
図4は、本発明の一実施形態に係るダブルスクロール構造を有するスクロール部3Sを有する低圧段過給機のU/C0特性を説明するための図である。
図5A〜
図5Bは、本発明の一実施形態に係る2ステージターボシステム1の排気通路9側を簡略化して示した模式図である。
図6B〜
図6Eは、
図5Aに対応した2ステージターボシステム1の作動モードを説明するための模式図である。また、
図7B〜
図7Eは、
図5Bに対応した2ステージターボシステム1の作動モードを説明するための模式図である。
【0036】
図1〜
図7Eに示されるように、2ステージターボシステム1はエンジン7に適用される過給システムである。エンジン7は1以上の気筒(
図1では4気筒)を備えたディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどである。また、2ステージターボシステム1は、自動車、トラック、バス、船舶、産業用エンジン等の様々な分野のエンジン7に適用可能である。
【0037】
以下の実施形態では、本発明の一実施形態にかかる過給機を2ステージターボシステム1における低圧段過給機3に適用した場合を例にして説明する。
【0038】
図1〜
図7Eに示されるように、2ステージターボシステム1は、高圧段過給機2と低圧段過給機3の2つの過給機(ターボ)を備える。これらの過給機(高圧段過給機2や低圧段過給機3)は、いずれも、エンジン7の吸気通路8に設置されるコンプレッサC(2C、3C)と、エンジン7の排気通路9に設置されるタービンT(2T、3T)とを備える。タービンTはタービンハウジングとタービンホイール(
図3の符号31)とで構成され、コンプレッサCはコンプレッサハウジングとコンプレッサホイールとで構成される。また、コンプレッサCのコンプレッサホイールとタービンTのタービンホイール31とがシャフトm(2m、3m)で結合される。そして、エンジン7の燃焼室(不図示)から排出される排ガスは、排気通路9を通って外部に向けて流れる際にタービンホイールを回転駆動する。これにより、タービンホイール31にシャフトmに同軸で結合されたコンプレッサホイールが回転駆動され、吸気通路8を流れる吸気が圧縮される。より詳細には、タービンTの回転駆動は、過給機のスクロール部Sを通過した排ガスがノズル流路Eからタービンホイールに吹き付けられること行われる(
図3参照)。
【0039】
これらの高圧段過給機2と低圧段過給機3とは、2ステージターボシステム1において直列に接続される。具体的には、
図1、
図5A〜
図7Eに示されるように、排気通路9においては、高圧段過給機2のタービンT(高圧段タービン2T)は、排ガスの流れ方向において相対的にエンジン7に近い側となる排気通路9の上流側に設置され、低圧段過給機3のタービンT(低圧段タービン3T)は、この高圧段タービン2Tよりも排ガスの流れ方向において相対的にエンジン7から遠い側となる排気通路9の下流側に設置される。他方、吸気通路8においては、低圧段過給機3のコンプレッサC(低圧段コンプレッサ3C)は吸気通路8の上流側に設置され、高圧段過給機2のコンプレッサC(高圧段コンプレッサ2C)は、この低圧段コンプレッサ3Cの下流側の吸気通路8に設置される(
図1参照)。このように、上記の2つの過給機は吸気通路8および排気通路9において直列に設置される。
【0040】
また、低圧段過給機3は高圧段過給機2よりも大型である。通常、過給機は大型になるほど重量が増し、重量の増加に伴って慣性力が大きくなる。このため、過給機が大型になるほど、エンジン7の低速時におけるタービンTの回転数は上昇しにくく、レスポンス性能が劣る。その一方で、大型の過給機は、小型の過給機よりも排ガスの流量が大きい領域でのタービン効率に優れる。逆に、小型の過給機は、大型の過給機に比べて、排ガスの流量が少ない領域におけるタービン効率が優れており、少ない排ガスの流量でタービンTが効率よく回転駆動される。このような過給機の特性を利用して、2ステージターボシステム1は、相対的に小型の高圧段過給機2で小流量側の流量レンジをカバーし、相対的に大型の低圧段過給機3で大流量側の流量レンジをカバーするよう構成される。
【0041】
そして、2ステージターボシステム1は、後述するように、例えば制御装置6により排気通路9に設置されるバルブ装置5を制御することにより、エンジン7の作動条件に応じて排気通路9の流路(後述する排ガス流路I〜V)を切り替えることで、1ステージ過給と2ステージ過給とで作動モード(使用する過給機)を切り替えるよう構成される。これによって、エンジン7の広範な作動範囲にわたって必要な過給圧を発生させつつ、エンジン7の低速時のレスポンスの向上を図っている。なお、上記の1ステージ過給は、低圧段過給機3のみを用いてエンジン7への過給を行う作動モードを意味し、2ステージ過給は、高圧段過給機2および低圧段過給機3の両方を用いて過給を行う作動モードを意味する。
【0042】
ここで、本発明の一実施形態にかかる過給機(低圧段過給機3)の低圧段タービン3Tのスクロール部3Sについて、
図2〜
図3を用いて説明する。なお、スクロール部3Sはタービンハウジングの一部を構成する。
図2〜
図3に示されるように、本実施形態の低圧段タービン3Tのスクロール部3Sは、第1のスクロール通路Paおよび第2のスクロール通路Pbの少なくとも2つスクロール通路Pを有する。そして、
図3に示されるように、第1のスクロール通路Paを流れる排ガスが導入されるノズル流路Eの第1範囲Raと、第2のスクロール通路Pbを流れる排ガスが導入されるノズル流路Eの第2範囲Rbとが、ノズル流路Eの周方向において重複しないように構成される。上記のノズル流路Eは、タービンホイール31が収容されるホイール収容室31rと、スクロール部3Sとが接続される境界に位置し、タービンハウジングの内壁によって、低圧段タービン3Tのタービンホイール31の周囲に形成された空間(流路)である(
図3参照)。
図1〜
図7Eに示される実施形態では、
図3に示されるように、スクロール部S(低圧段タービン3T)の入口32(
図2参照)から流入し、第1のスクロール通路Paを通過した排ガスはノズル流路Eの第1範囲Raを経てタービンホイール31に吹きつけられ、第2のスクロール通路Paを通過した排ガスはノズル流路Eの第2範囲Rbを経てタービンホイール31に吹きつけられよう構成されている。また、排ガスは、ノズル流路Eからタービンホイール31に吹きつけられ後、シャフトmの回転軸線Lの軸方向に沿って設けられた低圧段タービン3Tの出口33から低圧段下流通路97を流れる。
【0043】
また、
図1〜
図7Eに示される実施形態では、
図2〜
図3に示されるように、低圧段タービン3Tのスクロール部3Sは、上記の第1のスクロール通路Paおよび上記の第2のスクロール通路Pbの2つスクロール通路Pから構成されたダブルスクロール構造となっている。より詳細には、ダブルスクロール構造においては、第1のスクロール通路Paおよび第2のスクロール通路Pbは周方向に並んで配置されている。
【0044】
また、
図1〜
図7Eに示される実施形態では、
図3に示されるように、ノズル流路Eは、円形状で示されるタービンホイール31の外周の全周に環状に形成されている。ここで、タービンハウジングには、第1のスクロール通路Paの径方向の内側の路壁が接続される側の舌部(第1舌部34a)と、第1のスクロール通路Paの径方向の外側の路壁が接続される側の舌部(第2舌部34b)の2つの舌部34が形成されている。換言すれば、第2のスクロール通路Paの周方向の外側の路壁が接続される側の舌部が第1舌部34aであり、第2のスクロール通路Paの内側の路壁が接続される側の舌部が第2舌部34bとなる。そして、タービンホイール31の回転軸線Lの周方向に沿って切断した示される断面(
図3)において、第1舌部34aと、第2舌部34bと、タービンホイール31の回転軸線Lを通る線を境界線RLとした場合、ノズル流路Eの第1範囲Raは境界線RLを挟んだ一方の側(半周部分)に形成されており、ノズル流路Eの第2範囲Rbは境界線RLを挟んだ他方の側(半周部分)に形成されている。このように、第1範囲Raと第2範囲Rbとは互いに重なる範囲(部分)を有しないようにスクロール部3Sは形成されている。換言すれば、第1のスクロール通路Paの路壁および第2のスクロール通路Pbの路壁は、ノズル流路Eを形成するタービンハウジングの異なる部分に接続される(
図2参照)。
【0045】
そして、後述するように、第1のスクロール通路Paおよび第2のスクロール通路Pbの2のスクロール通路Pの一方にのみエンジン7から排出された排ガスの全流量を流すように構成した場合には、この排ガスの全流量が導入される際のノズル流路Eのサイズは、2のスクロール通路P(Pa、Pb)の両方に分けて導入するよりも小さくなる。
図1〜
図7Eに示される実施形態では、第1範囲Raと第2範囲Rbとは同じ角度範囲(同じ大きさ)を有しており、一方のスクロール通路から排ガスを導入可能なノズル流路Eの範囲はノズル流路Eの全周の半分程度になる。このため、ノズル流路Eに導入される際の排ガスの圧力がノズル流路Eの全範囲に分散されることなく(なまされることなく)、低圧段タービン3Tに排ガスを導入することが可能とり、エンジン7の低速時において低圧段タービン3Tをより迅速に駆動することができる。
【0046】
これに対して、例えば、低圧段タービン3Tのスクロール部3Sにツインスクロールを採用した場合にも、ツインスクロールによる2つの通路がスクロール部3Sに形成されるが、ツインスクロールの2つの通路の各々は、タービンホイール31の全周に亘って均一に排ガスを導入するように構成される。つまり、ツインスクロールの2つの通路の各々を流れる排ガスがそれぞれ導入されるノズル流路Eの範囲は互いに一致しており、2つのスクロール通路の各々が連通するノズル流路Eの範囲はノズル流路Eの周方向において互いに重複する部分を有する。そして、2つのスクロール通路の一方にのみ排ガスの全流量を導入すると、タービンホイール31の全周にわたって排ガスは導入されることになる。このため、例えば、排ガスの流量に対してタービンTのサイズ(重量)が大きい場合には、排ガスの圧力がノズル流路Eの全範囲に対して分散される結果、特にエンジン7の低速時などの排ガスの流量が少ない作動点では十分な圧力比(各々のブレードおける圧力面と負圧面の圧力差)を得ることができず、大型の低圧段タービン3Tを迅速に回転駆動するのが困難になってしまう。
【0047】
また、低圧段タービン3Tのスクロール部3Sを上述したダブルスクロール構造とすることにより、
図4に示されるように、タービンTの周速度と理論速度との速度比(U/C0)に対するタービン効率であるU/C0特性において、低圧段タービン3Tのタービン効率の最高点を、ツインスクロールを備える場合のタービン効率の最高点よりも、低速度比側にシフトすることができる。U/C0特性は、タービンTの周速度(U)と理論速度(C0)との速度比となるタービン作動速度比(U/C0)とタービン効率の関係を示すものであり、タービン作動速度比(U/C0)を横軸に、タービン効率を縦軸として表される。ここで、タービンTの周速度(U)はタービンTの回転数から得られる回転速度であり、タービンTの理論速度(C0)は、タービンTの入口と出口との圧力比および入口温度から定義される速度である。そして、U/C0特性におけるタービン効率の最高点が低速度比側にシフトすることは、理論速度(C0)に対してタービンTの周速度(U)が小さい状況となるタービンTの回転し始めなどのエンジンの低速時における効率が良いことを意味する。このため、エンジン7の低速時などの排ガスの流量が少ない場合において、効率よく低圧段タービン3Tを回転させることが可能となる。
【0048】
図4の例示では、ツインスクロールあるいはダブルスクロール構造といったスクロール部の構造のみが異なる2つの過給機のU/C0特性が示されている。具体的には、ツインスクロールを備える過給機のタービン効率の最高点(ηt)のタービン作動速度比はVtであり、ダブルスクロール構造を備える過給機のタービン効率の最高点(ηd)のタービン作動速度比はVdとなっている。また、両者のU/C0特性は、それぞれの最高点(ηt、ηd)に対応する速度比を境に横軸に対して山なりの形状となっている。そして、ηdはηtよりも小さく、タービン効率は小さくなるものの、VdはVtよりも小さくなっており、ツインスクロールを備える過給機の山なり形状のU/C0特性に対して、ダブルスクロール構造を備える過給機の山なり形状のU/C0特性は、全体的に、低速度比側にシフトしたようになっている。このため、両者のU/C0特性を低速度比側における同一の速度比で比べると、例えば速度比がVdでは、タービン効率はダブルスクロール構造を備える過給機の方がツインスクロールを備える過給機よりも大きく、エンジン7の低速側での効率が良いことが分かる。
【0049】
また、
図3に示されるように、本発明の一実施形態にかかる過給機(低圧段過給機3)において、第1低圧段導入通路93に接続される第1のスクロール通路Paは、第1のスクロール通路Paにおける所定範囲において排ガスの流れ方向に沿って設けられ区画壁35と、区画壁35よりも上流側に設けられる流量制御バルブ37とを備える。区画壁35は、第1のスクロール通路Paを、外周側スクロール通路Poと、外周側スクロール通路Poよりも内周側に位置する内周側スクロール通路Piとに区画するとともに、外周側スクロール通路Poと内周側スクロール通路Piとを連通する連通孔36を有する。流量制御バルブ37は、区画壁35よりも上流側に設けられ、外周側スクロール通路Poおよび内周側スクロール通路Piを流れる排ガスの流量を調整するためバルブである。
【0050】
便宜的に、内周側スクロール通路Piを、シャフトmの中心と上述した第1舌部34aの先端とを結ぶ線(つまり、
図3の境界線RL)よりも第1のスクロール通路Paのノズル流路E側となる部分であって、ノズル流路Eの第1範囲Raに面する部分(下流部分Pad)と、下流部分Padよりも上流側の部分(上流部分Pau)と呼ぶとする。この場合、流量制御バルブ37は上流部分Pauに位置する。そして、
図1〜
図7Eに示される実施形態では、
図3に示されるように、区画壁35は、下流部分Padおよび上流部分Pauに跨って形成されている共に、区画壁35の上流側の端部35sは流量制御バルブ37よりも下流側に位置している。また、上流部分Pauに位置する区画壁35の部分は、上記の連通孔36が複数形成されている。
【0051】
また、
図1〜
図7Eに示される実施形態では、
図3に示されるように、流量制御バルブ37は、流量制御バルブ37が全閉状態にあるときには、第1のスクロール通路Paに流入する排ガスの全量が内周側スクロール通路Piを流れ、且つ、流量制御バルブ37が開弁状態にあるときには、第1のスクロール通路Paに流入する排ガスが内周側スクロール通路Piと外周側スクロール通路Poの両方に流れるように構成される。より詳細には、流量制御バルブ37は、第1のスクロール通路Paの外周の壁面側に設けられた流量制御バルブ37の回転軸37oから、区画壁35の上流側の端部35sまで届く長さを有している。そして、上記の区画壁35の上流側の端部35sを弁シートとして、流量制御バルブ37が回転軸37oを中心に回転することで、流量制御バルブ37の先端部分が弁シートに着座している状態となる全閉状態に流量制御バルブ37があるときには、第1のスクロール通路Paに流入する排ガスの全量が内周側スクロール通路Piを流れる。この全閉状態においては、排ガスが流れる第1のスクロール通路Paの流路面積は、外周側スクロール通路Poの流路面積の分だけ小さくなることになり、内周側スクロール通路Piを通過することにより排ガスの流速を高められ、タービンTの回転トルクを増大することができる。また、全閉状態でない状態となる開弁状態に流量制御バルブ37があるときには、第1のスクロール通路Paに流入する排ガスが内周側スクロール通路Piと外周側スクロール通路Poの両方に流れるように構成されている。この開弁状態では、外周側スクロール通路Poを流れた排ガスは、第1のスクロール通路Paの上流部分Pauを区画壁35に沿って流れた後、下流部分Padに形成された連通孔36から、内周側スクロール通路Piを経て、ノズル流路Eの第1範囲に導入される。また、流量制御バルブ37が閉弁状態にある場合よりも、ガスの流速が下げられることにより、タービンTの回転トルクを必要以上に増大するのを回避することができる。
【0052】
上述した実施形態では、第1のスクロール通路Paに区画壁35と流量制御バルブ37が設けられているが、第2のスクロール通路Pbにも同様に設けられても良い。また、上述した実施形態では、ダブルスクロール構造を備えると共に、区画壁35と流量制御バルブ37とを備えるスクロール部3Sは低圧段タービン3Tに適用されているが、この実施形態には限定されず、他の幾つかの実施形態では、実施形態のスクロール部3Sは高圧段タービン2Tに適用されても良いし、2ステージターボシステム1を構成するか否かにかかわらず、過給機のスクロール部に適用されても良い。
【0053】
上記の構成によれば、低圧段過給機3(過給機)の低圧段タービン3Tのスクロール部3Sは、少なくとも第1のスクロール通路Paおよび第2のスクロール通路Pbを備える。また、第1のスクロール通路Paには外周側スクロール通路Poおよび内周側スクロール通路Piが区画(形成)されると共に、この2つの通路の流量が調整可能に構成される。ここで、第1のスクロール通路Paおよび第2のスクロール通路Pbの各々は、タービンホイール31の周囲に形成されるノズル流路Eに対して異なる方向から部分的に排ガスを導入するよう構成される。つまり、低圧段タービン3Tのスクロール部3Sは、複数のスクロール通路Pのうちの一部(
図1〜
図4では、第1のスクロール通路Pa)に限定してエンジン7から排出された排ガスを流すことで、排ガスを導入するノズル流路Eの範囲をその一部に限定することが可能に構成される。このため、複数のスクロール通路Pのうちの一部に限定することによりノズル流路Eの一部の範囲に排ガスを導入する場合には、ノズル流路Eの全範囲に対して排ガスを導入する場合よりも、タービンホイール31を通過する際の排ガスの流速や圧力を高めることができ、低圧段タービン3Tをより迅速に駆動することができる。また、低圧段タービン3Tは、第1のスクロール通路Paに流入した排ガスを内周側スクロール通路Piにのみ流すことが可能に構成されており、内周側スクロール通路Piにのみ排ガスを流すことにより、排ガスの流速や圧力を高めることで低圧段タービン3Tをより迅速に駆動することができる。
【0054】
また、複数のスクロール通路Pの各々がノズル流路Eの周方向において重複しないように構成されることで、ツインスクロールといった各々のスクロール通路Pに対応するノズル流路Eの範囲がその周方向において重複するよう構成される場合よりも、U/C0特性におけるタービン効率の最高点を低速度比側にシフトすることができる。つまり、低速度比側でのタービン効率を高めることができる。このため、エンジン7の低速時などの排ガスの流量が少ない場合(低速度比側)において、より効率よく低圧段タービン3Tを回転駆動させることができる。したがって、このような特徴を備えるスクロール部3Sを低圧段タービン3Tに採用することで、2ステージターボシステム1の大型の低圧段タービン3Tをより迅速に効率良く駆動することができ、過給のレスポンスを向上することができる。この点、従来の低圧段過給機のレスポンス性能は上述したようにエンジンの低速時で劣ることから、エンジン7の低速時において要求される過給圧は主に高圧段過給機によってまかなわれていたが、本実施形態では低圧段過給機3による寄与分を増大することができ、レスポンスが向上される。
【0055】
なお、
図1〜
図7Eに示される実施形態では、境界線RLを挟んで互いに重複していない第1範囲Raと第2範囲Rbとでノズル流路Eの全周を二分しているが、この実施形態には限定されず、上記の第1範囲Raおよび第2範囲Rbからなる全範囲は、ノズル流路Eの全周にならなくても良い。換言すれば、環状のノズル流路Eの一部の範囲には、スクロール通路Pを通過した排ガスが直接導入されないようになっていても良い。また、
図1〜
図7Eに示される実施形態では、第1範囲Raの角度範囲と第2範囲Rbの角度範囲は同じとなっているが、他の幾つかの実施形態では、第1範囲Raの角度範囲と第2範囲Rbの角度範囲が異なっていても良い。第1低圧段導入通路93が接続される第1範囲Raの角度範囲に応じた排ガスによるタービンホイールの回転トルクの向上が図れる。また、
図1〜
図7Eに示される実施形態では、低圧段タービン3Tのスクロール部3Sは上述したようにダブルスクロール構造となっているが、他の実施形態では、低圧段タービン3Tのスクロール部3Sは2以上のスクロール通路Pを備えても良い。この場合、少なくとも2つスクロール通路P(第1のスクロール通路Paおよび第2のスクロール通路Pb)の各々に対応するノズル流路Eの範囲は重複しないようにスクロール部3Sが形成される。
【0056】
次に、2ステージターボシステム1が適用されたエンジン7の全体構成を、
図1、
図5A〜
図7Eを用いて説明する。なお、
図5A〜
図7Eではエンジン7の吸気通路8が省略されているが、
図1に示される吸気通路8がエンジン7に接続されているものとする。
【0057】
図1〜
図7Eに示される実施形態では、
図1に示されるように、エンジン7の吸気通路8には2通りの流路が設けられる。詳述すると、エンジン7の吸気通路8は、不図示の吸気ダクトから取り入れた吸気(空気)をエンジン7に向けて供給するための主吸気通路81と、主吸気通路81を通過して流れてきた吸気をエンジン7の複数気筒の各々に分配する吸気マニホールド82と、高圧段コンプレッサ迂回通路83とを有する。また、高圧段コンプレッサ迂回通路83にはコンプレッサバイパスバルブ85が設置されている。そして、コンプレッサバイパスバルブ85の開度を制御装置6(後述)などが制御することにより、吸気が通過する吸気通路8上の流路が決定されるように構成される。
【0058】
上述した構成を備える吸気通路8において、1つ目の流路は主吸気通路81と吸気マニホールド82とで構成される流路である。主吸気通路81には、上流側から順に、低圧段過給機3の低圧段コンプレッサ3Cと、高圧段過給機2の高圧段コンプレッサ2Cと、冷却により吸気密度を高めるためのインタークーラ84とが設置されている。そして、吸気は、この順番で主吸気通路81を順次通過した後に吸気マニホールド82を通過することで、高圧段コンプレッサ迂回通路83を経由することなく、吸気ダクトからエンジン7に供給される。
【0059】
2つ目の流路は、主吸気通路81と、高圧段コンプレッサ迂回通路83と、吸気マニホールド82とで構成され、コンプレッサバイパスバルブ85の開弁時にのみ吸気が通過可能な流路である。高圧段コンプレッサ迂回通路83の両端は、主吸気通路81における低圧段コンプレッサ3Cの出口付近(下流側)とインタークーラ84の入口付近(上流側)とにそれぞれ接続されている。そして、吸気は、低圧段過給機3の低圧段コンプレッサ3C、高圧段コンプレッサ迂回通路83、インタークーラ84、吸気マニホールド82を順番に通過することで、吸気ダクトからエンジン7に供給される。後述するように、2ステージターボシステム1は、エンジン7の高速時には、低圧段過給機3のみの1ステージ過給を行うように構成されており、コンプレッサバイパスバルブ85を開くことで、高圧段過給機3の高圧段コンプレッサ2Cの通過による圧力損失の低下の防止が可能となっている。
【0060】
他方、エンジン7の排気通路9には、
図1、
図5A〜
図7Eに示されるように、排気通路9に設置された高圧段タービン2Tや低圧段タービン3Tを通るか否かや、低圧段タービン3Tの通過態様が互いに異なる5通りの流路が設けられている。なお、エンジン7の排気通路9は、エンジン7の複数気筒の各々から排出される排ガス(燃焼ガス)をまとめる排気マニホールド91を有しており、上記の5通りの流路の各々は、上記の排気マニホールド91を介してエンジン7に接続される点で共通する。上記の5通りの流路について、それぞれ説明する(
図5A〜
図7E参照)。
【0061】
1つ目の流路(排ガス流路I)は、エンジン7から排出された排ガスを、高圧段タービン2Tを経由して低圧段タービン3Tの第1のスクロール通路Paの内周側スクロール通路Pi(以下、適宜、低圧段タービン3Tの内周側スクロール通路Pi)に供給する流路である。
図1〜
図7Eに示される実施形態では、排気通路9は、エンジン7と高圧段タービン2Tの入口(スクロール部2S)とを接続する高圧段導入通路92と、高圧段タービン2Tの出口側と低圧段タービン3Tの第1のスクロール通路Paとを接続する第1低圧段導入通路93とを有している。そして、上記の排ガス流路Iは、エンジン7から排出された排ガスが、高圧段導入通路92および第1低圧段導入通路93を順に通過した後、第1のスクロール通路Paの内周側スクロール通路Piに供給されるように形成されている。
【0062】
2つ目の流路(排ガス流路II)はエンジン7から排出された排ガスを、高圧段タービン2Tを経由して低圧段タービン3Tの第1のスクロール通路Paの外周側スクロール通路Po(以下、適宜、低圧段タービン3Tの外周側スクロール通路Po)に供給する流路である。
図1〜
図7Eに示される実施形態では、排気通路9は、上述したように、高圧段導入通路92と第1低圧段導入通路93とを有している。そして、上記の排ガス流路IIは、エンジン7から排出された排ガスが、高圧段導入通路92および第1低圧段導入通路93を順に通過した後、第2のスクロール通路Pbの外周側スクロール通路Poに供給されるように形成されている。
【0063】
3つ目の流路(排ガス流路III)は、高圧段タービン2Tを迂回しつつ、エンジン7から排出された排ガスを低圧段タービン3Tの第2のスクロール通路Pbに供給する流路である。
図1〜
図7Eに示される実施形態では、排気通路9は、高圧段タービン2Tを迂回しつつ、エンジン7と低圧段タービン3Tの第2のスクロール通路Pbとを接続する第2低圧段導入通路94を有している。そして、上記の排ガス流路IIIは、エンジン7から排出された排ガスが第2低圧段導入通路94を通過することで、高圧段タービン2Tを迂回しつつ、低圧段タービン3Tの第2のスクロール通路Pbに直接供給されるように形成されている。
【0064】
上記の構成によれば、2ステージターボシステム1は、低圧段タービン3Tの第1のスクロール通路Paには高圧段タービン2Tを通過した排ガスを導入し、第2のスクロール通路Pbには高圧段タービン2Tを通過することなく、低圧段タービン3Tに排ガスを直接導入することが可能に構成される。後述するように、2ステージターボシステム1は、後述するように、エンジン7の回転数が中回転領域以下にある場合には過給のレスポンスの向上のために高圧段過給機3を使用して過給を実行する。このような場合など、第1のスクロール通路Paからノズル流路Eに排ガスを導入することによって、高圧段タービン2Tを駆動した後の排ガスの流速等をノズル流路Eに導入する際に高めることができ、2ステージターボシステム1の大型の低圧段タービン3Tをより迅速に効率良く回転させることができる。また、エンジン7の回転数が低回転領域の低回転側(極低回転領域)にある場合などの排ガスの流量が少ない時には、流量制御バルブ37を作動させて内周側スクロール通路Piのみに排ガスを流入させることによって、過給のレスポンスをさらに向上させることができる。
【0065】
また、4つ目の流路(排ガス流路IV)は、高圧段タービン2Tを経由することなく、エンジン7から排出された排ガスを低圧段タービン3Tの内周側スクロール通路Piおよび外周側スクロール通路Poの少なくとも一方(
図1〜
図7Eでは両方)に供給する流路である。
図1〜
図7E示される実施形態では、排気通路9は、高圧段タービン2Tを迂回して、エンジン7と低圧段タービン3Tの第1のスクロール通路Paとを接続する高圧段バイパス通路95を有している。この高圧段バイパス通路95は、上述した高圧段導入通路92と第1低圧段導入通路93とを接続することで、高圧段タービン2Tを迂回しつつ、エンジン7と低圧段タービン3Tの第1のスクロール通路Paとを接続している。なお、他の幾つかの実施形態では、高圧段バイパス通路95は、排気マニホールド91と第1低圧段導入通路93とを接続しても良い。そして、上記の排ガス流路IVは、エンジン7から排出された排ガスが高圧段バイパス通路95を通過することで、高圧段タービン2Tを迂回しつつ、低圧段タービン3Tの第1のスクロール通路Paに直接供給されるように形成されている。
【0066】
5つ目の流路(排ガス流路V)は、高圧段タービン2Tおよび低圧段タービン3Tの両方を経由することなく、エンジン7から排出された排ガスを低圧段タービン3Tの下流の排気通路9に供給する流路である。
図1〜
図7Eに示される実施形態では、排気通路9は、低圧段タービン3Tを迂回して低圧段タービン3Tの上流側と下流側とを接続する低圧段バイパス通路96を有する。この低圧段バイパス通路96は、排気マニホールド91と、低圧段タービン3Tの出口に接続される低圧段下流通路97とを接続している。これによって、低圧段タービン3Tの第1のスクロール通路Paと第2のスクロール通路Pbを流れる排ガスの流量を同時に減じることができる。なお、他の幾つかの実施形態では、第2低圧段導入通路94と低圧段下流通路97とを接続しても良い。
【0067】
また、エンジン7の排気通路9には、
図1、
図5A〜
図7Eに示されるように、上述した5通りの流路を流れる排ガスの流量を調整可能なバルブ装置5が設置される。
図1〜
図7Eに示される実施形態では、バルブ装置5は、上述した高圧段導入通路92、第1低圧段導入通路93、内周側スクロール通路Pi、外周側スクロール通路Po、第2低圧段導入通路94、高圧段バイパス通路95、および、低圧段バイパス通路96の各々を流れる排ガスの流量の割合を調整可能に構成される。これによって、高圧段過給機2や低圧段過給機3の切り替えや、低圧段過給機3の低圧段タービン3Tのスクロール部3Sにおけるスクロール通路Pの切り替えを行うことができ、エンジン7の広範な作動範囲にわたって必要な過給圧を発生させつつ、過給のレスポンスに優れた2ステージターボシステム1を提供することができる。
【0068】
また、上記のバルブ装置5の構成を説明すると、
図5A、
図6B〜
図6Eに示される実施形態では、バルブ装置5は、上記の流量制御バルブ37と、高圧段導入通路92に設置される第1バルブ51と、第1のスクロール通路Paに設置される流量制御バルブ37と、第2低圧段導入通路94に設置される第2バルブ52と、高圧段バイパス通路95に設置される第3バルブ53と、低圧段バイパス通路96に設置される第4バルブ54と、を有する。上記の各バルブ(37、51〜54)の少なくとも1つは、全開位置と全閉位置との間で開度が調整可能(リニア制御可能)なバルブであっても良く、残のバルブは、全開か全閉かを択一的に切り替えることが可能であっても良い。例えば、少なくとも第1バルブ51あるいは第2バルブ52をリニア制御可能なバルブとすることで、低圧段タービン3Tの第1のスクロール通路Paと第2のスクロール通路Pbを流れる排ガスの流量比を調整することが可能となる。これによって、後述するように、高圧段導入通路92、第1低圧段導入通路93、内周側スクロール通路Pi、外周側スクロール通路Po、第2低圧段導入通路94、高圧段バイパス通路95、および、低圧段バイパス通路96の各々を流れる排ガスの流量の割合を、それぞれの通路に設けられる複数のバルブ(37、51〜54)によって調整することができる。また、第4バルブ54によって、低圧段過給機3の低圧段コンプレッサ3Cの出口側の圧力(ブースト圧)を調整することができ、サージングなどの低圧段過給機3の異常運転を防止することができる。
【0069】
他の幾つかの実施形態では、
図5B、
図7B〜
図7Eに示されるように、バルブ装置5は、流量制御バルブ37と、高圧段導入通路92、第2低圧段導入通路94、高圧段バイパス通路95および低圧段バイパス通路96の各々を流れる排ガスの流量を調整可能な第5バルブ55と、を有する。これによって、排気通路9を形成する各通路を流れる排ガスの割合を2つのバルブによって調整することができると共に、低圧段過給機3の低圧段コンプレッサ3Cの出口側の圧力(ブースト圧)を調整することができ、サージングなどの低圧段過給機3の異常運転を防止することができる。
【0070】
また、幾つかの実施形態では、
図1、
図5A〜
図7Eに示されるように、2ステージターボシステム1は、エンジン7の回転数(以下、適宜、エンジン回転数N)に応じて上述したバルブ装置5を制御する制御装置6をさらに備える。制御装置6は、ECU(電子制御装置)などのコンピュータで構成されており、図示しないCPU(プロセッサ)や、ROMやRAMといったメモリ(記憶装置)を備えている。そして、主記憶装置にロードされたプログラムの命令に従ってCPUが動作(データの演算など)することで、バルブ装置5の制御に必要な機能部を実現する。これによって、第1低圧段導入通路93、内周側スクロール通路Pi、外周側スクロール通路Po、第2低圧段導入通路94、高圧段バイパス通路95、および、低圧段バイパス通路96の各々を流れる排ガスの流量の割合を、エンジン7の回転数に応じて適切に調整することができ、下記に説明するような2ステージターボシステム1の作動モードを実現することができる。
【0071】
以下、2ステージターボシステム1の作動モードついて、
図6B〜
図7Eを用いて説明する。2ステージターボシステム1では、エンジン7の回転数が、エンジン回転数Nの小さい方から大きい方に順に並ぶ極低回転領域、低回転領域、中回転領域、高回転領域のいずれの回転数領域にあるかで作動モードを切り替える。ここで、エンジン回転数Nが第1閾値以下となる領域が極低回転領域(N≦第1閾値)であり、第1閾値から第1閾値よりも大きい第2閾値以下の領域が低回転領域(第1閾値<N≦第2閾値)であり、第2閾値から第2閾値よりも大きい第3閾値以下の領域が中回転領域(第2閾値<N≦第3閾値)であり、第3閾値以上の領域が高回転領域(第3閾値<N)である。そして、2ステージターボシステム1では、極低回転領域および低回転領域にある場合には、高圧段過給機2と低圧段過給機3の2つで過給を行う(2ステージ過給)。エンジン7の回転数が中回転領域にある場合には、エンジン7の回転数の上昇に応じて、バルブ装置5の制御を通して排ガスの流路切替や流量調整を行い、高圧段過給機2による過給の割合を減らしていく。そして、エンジン7の回転数が高回転領域にある場合には、低圧段過給機3のみで過給する(1ステージ過給)。このように、2ステージターボシステム1は、エンジン7の回転数に応じて2ステージ過給と1ステージ過給を切り替えて過給を行うような作動原理を有する。
【0072】
このような作動原理は、制御装置6が、エンジン7の回転数領域に応じてバルブ装置5を制御することにより実現される。このため、
図1〜
図7Eに示される実施形態では、エンジン7の回転数を検出可能な回転数センサ(不図示)の出力が制御装置6に入力されるよう構成されており、エンジン7の回転数(以下、適宜、エンジン回転数N)が入力される。他の幾つかの実施形態では、エンジン7から排出される排ガスの流量を検出可能な流量センサ(不図示)の出力が制御装置6に入力されるよう構成されていても良く、流量センサ(不図示)の検出値とエンジン回転数Nとの対応関係からエンジン7の回転数(以下、適宜、エンジン回転数)を得ても良い。そして、
図1〜
図7Eに示される実施形態における2ステージターボシステム1における作動モードは下記の通りとなる。
【0073】
図6A、
図7Aは、エンジン回転数Nが極低回転領域にある場合の第1作動モードM1を示す図である。この場合には、
図6A、
図7Aに示されるように、制御装置6は、高圧段タービン2Tを経由して、エンジン7から排出された排ガスを低圧段タービン3Tの第1のスクロール通路Paの内周側スクロール通路Piに供給する流路(上述した排ガス流路I)にのみ排ガスを流すように、バルブ装置5を制御する。すなわち、
図1〜
図7Eに示される実施形態では、
図6A、
図7Aに示されるように、制御装置6は、エンジン7の回転数が極低回転領域にある場合においては、高圧段導入通路92、第1低圧段導入通路93および内周側スクロール通路Piの各々を前記排ガスが通過するのを可能とし、外周側スクロール通路Po、第2低圧段導入通路94、高圧段バイパス通路95および低圧段バイパス通路96の各々を排ガスが通過するのを不可とするように、バルブ装置5を制御する。このため、排ガスは、第1のスクロール通路Paの内周側スクロール通路Piにのみに供給され、低圧段過給機3の第1のスクロール通路Paの外周側スクロール通路Poおよび第2のスクロール通路Pbに供給されない。これによって、エンジン7の回転数が極低回転領域にある場合における排ガスの流量に応じた適切な容量を確保しつつ、過給のレスポンスを向上することができる。
【0074】
図6B、
図7Bは、エンジン回転数Nが低回転領域にある場合の第2作動モードM2を示す図である。この場合には、
図6B、
図7Bに示されるように、制御装置6は、高圧段タービン2Tを経由して、エンジン7から排出された排ガスを低圧段タービン3Tの第1のスクロール通路Paの内周側スクロール通路Piに供給する流路(上述した排ガス流路I)と、高圧段タービン2Tを経由して、エンジン7から排出された排ガスを低圧段タービン3Tの外周側スクロール通路Poに供給する流路(上述した排ガス流路II)との2つの流路に排ガスを流すように、バルブ装置5を制御する。すなわち、
図1〜
図7Eに示される実施形態では、
図6B、
図7Bに示されるように、制御装置6は、エンジン7の回転数が低回転領域にある場合においては、高圧段導入通路92、第1低圧段導入通路93、内周側スクロール通路Piおよび外周側スクロール通路Poの各々を排ガスが通過するのを可能とし、第2低圧段導入通路94、高圧段バイパス通路95および低圧段バイパス通路96の各々を排ガスが通過するのを不可とするように、バルブ装置5を制御する。このため、排ガスは、第1のスクロール通路Pa(内周側スクロール通路Piおよび外周側スクロール通路Poの両方)にのみ供給され、低圧段過給機3の第2のスクロール通路Pbに供給されない。これによって、低圧段過給機3において、エンジン7の回転数が低回転領域にある場合における排ガスの流量に応じた適切な容量を確保しつつ、エンジン7の回転数が低回転領域にある場合の過給のレスポンスを向上することができる。
【0075】
図6C、
図7Cは、エンジン回転数Nが中回転領域にある場合の第3作動モードM3を示す図である。この場合には、
図6C、
図7Cに示されるように、制御装置6は、高圧段タービン2Tを経由して、エンジン7から排出された排ガスを低圧段タービン3Tの第1のスクロール通路Paの内周側スクロール通路Piに供給する流路(上述した排ガス流路I)と、高圧段タービン2Tを経由して、エンジン7から排出された排ガスを低圧段タービン3Tの外周側スクロール通路Poに供給する流路(上述した排ガス流路II)と、高圧段タービン2Tを迂回しつつ、エンジン7から排出された排ガスを低圧段タービン3Tの第2のスクロール通路Pbに供給する流路(上述した排ガス流路III)との3つの流路に排ガスを流すように、バルブ装置5を制御する。すなわち、
図1〜
図7Eに示される実施形態では、
図6C、
図7Cに示されるように、制御装置6は、エンジン7の回転数が中回転領域にある場合においては、高圧段導入通路92、第1低圧段導入通路93、内周側スクロール通路Pi、外周側スクロール通路Poおよび第2低圧段導入通路94の各々を排ガスが通過するのを可能とし、高圧段バイパス通路95および低圧段バイパス通路96の各々を排ガスが通過するのを不可とするように、バルブ装置5を制御する。このため、排ガスは、低圧段過給機3においては、高圧段タービン2Tを慶友した排ガスが第1のスクロール通路Paに供給されると共に、第1のスクロール通路Paおよび第2のスクロール通路Pbの両方に供給される。これによって、エンジン7の回転数が中回転領域にある場合における排ガスの流量に応じた適切な容量を確保しつつ、高圧段過給機2および低圧段過給機3による過給のレスポンスを向上することができる。
【0076】
図6D、
図7Dは、エンジン回転数Nが高回転領域にある場合の第4作動モードM4を示す図である。この場合には、
図6D、
図7Dに示されるように、制御装置6は、高圧段タービン2Tを迂回しつつ、エンジン7から排出された排ガスを低圧段タービン3Tの第2のスクロール通路Pbに供給する流路(上述した排ガス流路III)と、高圧段タービン2Tを経由することなく、エンジン7から排出された排ガスを低圧段タービン3Tの内周側スクロール通路Piおよび外周側スクロール通路Poの少なくとも一方(
図1〜
図7Eでは両方)に供給する流路(上述した排ガス流路IV)との2つの流路に排ガスを流すように、バルブ装置5を制御する。すなわち、
図1〜
図7Eに示される実施形態では、
図6D、
図7Dに示されるように、制御装置6は、エンジン7の回転数が高回転領域にある場合においては、高圧段バイパス通路95、第1低圧段導入通路93、内周側スクロール通路Pi、外周側スクロール通路Poおよび第2低圧段導入通路94の各々を排ガスが通過するのを可能とし、高圧段導入通路92および低圧段バイパス通路96の各々を排ガスが通過するのを不可とするように、バルブ装置5を制御する。このため、小型の高圧段タービン2Tは、排ガスが供給されないためアイドリング状態等となっており、大型の低圧段過給機3による1ステージ過給が実行される。これによって、エンジン7の回転数が高回転領域にある場合において、低圧段過給機3によって大流量の排ガスに応じた適切な過給を行うことができる。
【0077】
また、
図6E、
図7Eは、エンジン回転数Nが高回転領域における高回転側にある場合の第5作動モードM5を示す図である。この場合には、
図6E、
図7Eに示されるように、制御装置6は、高圧段タービン2Tを迂回しつつ、エンジン7から排出された排ガスを低圧段タービン3Tの第2のスクロール通路Pbに供給する流路(上述した排ガス流路III)と、高圧段タービン2Tを経由することなく、エンジン7から排出された排ガスを低圧段タービン3Tの内周側スクロール通路Piおよび外周側スクロール通路Poの少なくとも一方(
図1〜
図7Eでは両方)に供給する流路(上述した排ガス流路IV)と、高圧段タービン2Tおよび低圧段タービン3Tの両方を経由することなく、エンジン7から排出された排ガスを低圧段下流通路97に供給する流路(上述した排ガス流路V)との3つの流路に排ガスを流すように、バルブ装置5を制御する。すなわち、
図1〜
図7Eに示される実施形態では、
図6E、
図7Eに示されるように、制御装置6は、エンジン7の回転数が高回転領域における所定の回転数以上の高回転側にある場合には、第1低圧段導入通路93、内周側スクロール通路Pi、外周側スクロール通路Po、第2低圧段導入通路94、高圧段バイパス通路95、および、低圧段バイパス通路96の各々を排ガスが通過するのを可能とし、高圧段導入通路92を排ガスが通過するのを不可とするように、バルブ装置5を制御する。エンジン回転数Nが高回転領域にある場合には、高圧段過給機2による過給は行われておらず、この第5作動モードM5では低圧段過給機3によるブースト圧の調整ができない場合に移行するモードとなる。これによって、高回転数領域の高回転側にエンジンの回転数がある場合においてブースト圧(低圧段コンプレッサ3Cの下流の圧力)を適切に調整することができる。
【0078】
上述したように、2ステージターボシステム1の作動モードはエンジン回転数Nに応じて遷移する。この2ステージターボシステム1の制御方法を、
図8を用いて説明する。
図8は、本発明の一実施形態に係る2ステージターボシステム1の制御方法を示すフロー図である。2ステージターボシステム1の制御方法は、
図8に示されるように、エンジン7の回転数を取得する回転数取得ステップ(S1)と、エンジン7の回転数の回転数領域を判定する領域判定ステップ(S2、S4、S6、S8、S9)と、エンジン7の回転数が極低回転領域にある場合に実行される極低回転時制御ステップ(S3)と、を備える。また、本制御方法は、低回転時制御ステップ(S5)や、中回転時制御ステップ(S7)、第1高回転時制御ステップ(S10)、第2高回転時制御ステップ(S11)をさらに備えても良い。
以下、
図1〜
図7Eに示される実施形態において制御装置6がバルブ装置5を制御することにより、
図8の2ステージターボシステム1の制御方法が実行される場合を例に説明する。このため、制御装置6は、上記の各ステップを実行するための機能部を備える。
【0079】
図8のステップS1において、制御装置6はエンジン回転数Nを取得する(回転数取得ステップ)。そして、このステップS1以降では、制御装置6は、取得したエンジン回転数Nと回転数の閾値(上述した第1閾値〜第3閾値)との比較などを通してエンジン7の回転数が位置する回転数領域を判定すると共に、判定結果に基づいて上述した作動モードを実行する。
【0080】
ステップS2において、制御装置6は、エンジン回転数Nは極低回転領域にあるか否かを判定する(領域判定ステップ)。そして、エンジン回転数Nが極低回転領域にある場合には、ステップS3において、制御装置6はバルブ装置5を制御することで上記の第1作動モードM1を実行する(極低回転時制御ステップ)。すなわち、排気通路9には、エンジン7から排出された排ガスを、高圧段タービン2Tを経由して低圧段タービン3Tの第1のスクロール通路Paの内周側スクロール通路Piに供給可能な1つの流路(上述した排ガス流路I)が形成される(
図6A、
図7A参照)。その後、次のステップS4に移る。また、ステップS2において、エンジン回転数Nが極低回転領域にない場合にもステップS4に移る。
【0081】
ステップS4において、制御装置6は、エンジン回転数Nは低回転領域にあるか否かを判定する(領域判定ステップ)。そして、エンジン回転数Nが低回転領域にある場合には、ステップS5において、制御装置6はバルブ装置5を制御することで上記の第2作動モードM2を実行する(低回転時制御ステップ)。すなわち、排気通路9には、エンジン7から排出された排ガスを、高圧段タービン2Tを経由して低圧段タービン3Tの第1のスクロール通路Paの内周側スクロール通路Piに供給可能な流路(上述した排ガス流路I)と、エンジン7から排出された排ガスを、高圧段タービン2Tを経由して低圧段タービン3Tの第1のスクロール通路Paの外周側スクロール通路Poに供給可能な流路(上述した排ガス流路II)との2つの流路が形成される(
図6B、
図7B参照)。その後、次のステップS6に移る。また、ステップS4において、エンジン回転数Nが低回転領域にない場合にもステップS6に移る。
【0082】
ステップS6において、制御装置6は、エンジン回転数Nは中回転領域にあるか否かを判定する(領域判定ステップ)。そして、エンジン回転数Nが中回転領域にある場合には、ステップS7において、制御装置6はバルブ装置5を制御することで上記の第3作動モードM3を実行する(中回転時制御ステップ)。すなわち、排気通路9には、上述した排ガス流路Iと、上述した排ガス流路IIと、高圧段タービン2Tを迂回しつつ、エンジン7から排出された排ガスを低圧段タービン3Tの第2のスクロール通路Pbに供給する流路(上述した排ガス流路III)との3つの流路が形成される(
図6C、
図7C参照)。その後、次のステップS8に移る。また、ステップS6において、エンジン回転数Nが中回転領域にない場合にもステップS8に移る。
【0083】
ステップS8において、制御装置6は、エンジン回転数Nは高回転領域にあるか否かを判定する(領域判定ステップ)。そして、エンジン回転数Nが高回転領域にある場合には、ステップS9において、制御装置6は、エンジン回転数Nは所定の回転数以上であるか否かを判定する(領域判定ステップ)。ステップS9において、エンジン回転数Nが所定の回転数よりも小さい場合には、ステップS10において、制御装置6はバルブ装置5を制御することで上記の第4作動モードM4を実行する(第1高回転時制御ステップ)。すなわち、排気通路9には、上述した排ガス流路IIIと、高圧段タービン2Tを経由することなく、エンジン7から排出された排ガスを低圧段タービン3Tの内周側スクロール通路Piおよび外周側スクロール通路Poの両方に供給する流路(上述した排ガス流路IV)との2つの流路が形成される(
図6D、
図7D参照)。その後、
図8のフローを終了する。
【0084】
逆に、ステップS9において、エンジン回転数Nは所定の回転数以上であるである場合には、ステップS11において、制御装置6はバルブ装置5を制御することで上記の第5作動モードM5を実行する(第2高回転時制御ステップ)。すなわち、排気通路9には、高回転領域と判定された際に形成される流路(排ガス流路IIIおよび排ガス流路IV)に、高圧段タービン2Tおよび低圧段タービン3Tの両方を経由することなく、エンジン7から排出された排ガスを低圧段タービン3Tの低圧段下流通路97に供給可能な流路(上述した排ガス流路V)が追加されることで、合計で4つの流路が形成される(
図6E、
図7E参照)。その後、
図8のフローを終了する。
【0085】
なお、
図8に示される実施形態では、ステップS3、ステップS5およびステップS7の実行後にも以降のステップを実行するよう記載されているが、これには限定されず、これらのステップの実行後には
図8のフローを終了しても良い。
【0086】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。