(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754662
(24)【登録日】2020年8月26日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】動的荷重試験装置、及びこれを用いた場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力確認方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/02 20060101AFI20200907BHJP
【FI】
E02D1/02
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-199933(P2016-199933)
(22)【出願日】2016年10月11日
(65)【公開番号】特開2018-62738(P2018-62738A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】599165968
【氏名又は名称】多摩火薬機工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516304562
【氏名又は名称】株式会社シーズエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】児島 郁男
(72)【発明者】
【氏名】児島 辰彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 真二
【審査官】
田島 拳士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5972494(JP,B1)
【文献】
特開平10−078333(JP,A)
【文献】
特開2006−342579(JP,A)
【文献】
特開2005−180137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00−1/08
E02D 33/00
G01L 5/00−5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削孔の掘削先端地盤の支持力を試験する動的荷重試験装置であって、
剛性を有する金属材により形成され、上部に外周方向にフランジ状に張り出す受板を有する下パイプと、剛性を有する金属材により形成され、上部に連結部及び外周方向にフランジ状に張り出し、前記受板に衝接可能な衝接板を有し、前記下パイプ内に嵌挿されて摺動可能な上パイプとからなり、前記掘削孔の掘削先端地盤に設置される計測治具と、
前記計測治具の前記上パイプの連結部に連結し、前記掘削孔内で前記上パイプを前記下パイプに対して所定の高さまで引き上げて自由落下させることにより、動的荷重を前記下パイプに加え前記掘削孔の掘削先端地盤に付与する動的荷重付与設備と、
前記計測治具の前記下パイプの周面に取り付けられ、前記動的荷重が前記下パイプに加えられたときの前記下パイプに発生する加速度、歪みを測定する加速度センサー、歪みセンサー、及びこれらのセンサーにケーブルを介して電気的に接続され、前記各センサーにより測定された測定値に基づいて前記掘削孔の掘削先端の静的地盤抵抗を求める情報処理装置を有する計測機器と、
を備える、
ことを特徴とする動的荷重試験装置。
【請求項2】
計測治具の上パイプは、周面の下部で相互に対向する位置に外方に向けて突出するガイドピンを有し、下パイプは、周面の上部で相互に対向する位置からそれぞれ、前記ガイドピンが挿通し摺動可能に、鉛直下方に向けて延びる、前記上パイプを前記下パイプに対して上方に引き上げる所定の高さよりも少し長い寸法を設定されたガイドスリットを有し、前記上パイプが前記下パイプ内に嵌挿されて、前記ガイドピンが前記ガイドスリットに係合される請求項1に記載の動的荷重試験装置。
【請求項3】
動的荷重付与設備は、掘削孔の掘削に用いるウィンチ、ワイヤーロープ及びケリーバーが代用される請求項1又は2に記載の動的荷重試験装置。
【請求項4】
計測機器は、加速度センサー、歪みセンサー、ケーブル、及び加速度計アンプ、歪み計アンプ、A/D変換機、パソコンからなるPDA本体により構成されるPDA(Pile Driving Analyzer)が採用される請求項1乃至3のいずれかに記載の動的荷重試験装置。
【請求項5】
ウィンチ、ワイヤーロープにより昇降されるケリーバー及び前記ケリーバーの先端に取り付けられるドリリングバケットを含む掘削機構を有する掘削機を使用して地盤に掘削した掘削孔の掘削先端地盤の支持力を、請求項1に記載の動的荷重試験装置を用いて確認する場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力確認方法であって、
前記掘削孔の掘削後、前記ケリーバーに前記ドリリングバケットに代えて前記動的荷重試験装置の計測治具を連結し、前記計測治具の前記下パイプの周面に加速度センサー、歪みセンサーを取り付けて、
前記計測治具を前記掘削孔内に下ろし、前記掘削先端地盤に設置して、
前記ウィンチで前記ワイヤーロープを巻き上げることにより、前記掘削孔内で前記上パイプを前記下パイプに対して所定の高さまで引き上げてから、前記上パイプを自由落下させて、動的荷重を前記下パイプに加え前記掘削孔の掘削先端地盤に付与し、
前記下パイプに前記動的荷重を加えたときの前記下パイプに発生する加速度、歪みを前記加速度センサー、前記歪みセンサーにより測定し、これらセンサーにより測定した測定値に基づいて情報処理装置により前記掘削孔の掘削先端地盤の静的地盤抵抗を求め、当該掘削先端地盤の支持力を確認する、
ことを特徴とする請求項1に記載の動的荷重試験装置を用いた場所打ちコンクリート杭支持力確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力を確認するのに使用する動的荷重試験装置、及びこれを用いた場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
場所打ちコンクリート杭は、地盤を掘削して掘削孔を形成した後、この掘削孔に鉄筋篭を挿入し、コンクリートを打設して構築するため、打ち込み杭などと比較して、掘削先端地盤(孔底)の支持力の確認が難しい。
【0003】
一般に、場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力を確認する方法としては、杭先端に杭とほぼ同型のジャッキを設置し、杭先端を載荷する先端載荷試験や、オールケーシング工法を基本としたSENTANパイル工法が知られている。
【0004】
先端載荷試験は、特許文献1又は非特許文献1などに記載されているように、地盤に掘削孔を形成した段階で、孔底に載荷ジャッキを設置するとともに孔内に鉄筋篭を挿入し、コンクリートの打設を行って、場所打ちコンクリート杭を構築し、載荷ジャッキにより場所打ちコンクリート杭の自重と周面摩擦力で反力を確保しつつ、直接孔底に荷重を載荷し試験を行う方法である。
【0005】
SENTANパイル工法は、特許文献2などに記載されているように、ケーシングを使用して、掘削が完了した孔底に、コンクリート製のリングを設置した後に、専用の貫入機を設置して、ケーシングに反力を取りながら、リングを孔底下の地盤中に押し込み、これにより、緩んだ地盤を圧密化させて、その上部に場所打ち杭を構築し、その支持力を増加させる方法である。この工法では、コンクリートリングの貫入管理により、載荷試験による支持力確認と同様の効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−108491公報(段落0006)
【特許文献2】特開2001−152448公報(段落0006)
【非特許文献1】杭の鉛直載荷試験方法・同解説編集委員会,「杭の鉛直載荷試験方法・同解説−第一回改訂版−」,社団法人地盤工学会,2002年5月28日(5頁−6頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、先端載荷試験では、ジャッキが掘削先端地盤に埋め込まれることになるので、ジャッキは埋め殺しとなり、ジャッキの回収、再利用ができず、このため、コストが増大する、という問題がある。
【0008】
また、SENTANパイル工法では、特許文献2においても指摘されているように、コンクリートリングを孔底下の地盤中に押し込む際に貫入機の反力をケーシングに取っていて、杭全長に相当する長さのケーシングを使用する、いわゆるオールケーシング工法にしか適用することができないため、オールケーシング工法が、他の工法に比べて施工費が割高となり、また、専用の貫入機を必要とし、そのセットなどに時間がかかって、施工が長引き、施工費が嵩む、という問題がある。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力を簡単かつ低コストに計測することのできる動的荷重試験装置、及びこれを用いた場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力確認方法を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、
掘削孔の掘削先端地盤の支持力を試験する動的荷重試験装置であって、
剛性を有する金属材により形成され、上部に外周方向にフランジ状に張り出す受板を有する下パイプと、剛性を有する金属材により形成され、上部に連結部及び外周方向にフランジ状に張り出し、前記受板に衝接可能な衝接板を有し、前記下パイプ内に嵌挿されて摺動可能な上パイプとからなり、前記掘削孔の掘削先端地盤に設置される計測治具と、
前記計測治具の前記上パイプの連結部に連結し、前記掘削孔内で前記上パイプを前記下パイプに対して所定の高さまで引き上げて自由落下させることにより、動的荷重を前記下パイプに加え、前記掘削孔の掘削先端地盤に付与する動的荷重付与設備と、
前記計測治具の前記下パイプの周面に取り付けられ、前記動的荷重が前記下パイプに加えられたときの前記下パイプに発生する加速度、歪みを測定する加速度センサー、歪みセンサー、及びこれらのセンサーにケーブルを介して電気的に接続され、前記各センサーにより測定された測定値に基づいて前記掘削孔の掘削先端の静的地盤抵抗を求める情報処理装置を有する計測機器と、
を備える、
ことを要旨とする。
【0011】
また、この動的荷重試験装置は、各部が次のような構成を備えることが好ましい。
(1)計測治具の上パイプは、周面の下部で相互に対向する位置に外方に向けて突出するガイドピンを有し、下パイプは、周面の上部で相互に対向する位置からそれぞれ、前記ガイドピンが挿通し摺動可能に、鉛直下方に向けて延びる、前記上パイプを前記下パイプに対して上方に引き上げる所定の高さよりも少し長い寸法を設定されたガイドスリットを有し、前記上パイプが前記下パイプ内に嵌挿されて、前記ガイドピンが前記ガイドスリットに係合される。
(2)動的荷重付与設備は、掘削孔の掘削に用いるウィンチ、ワイヤーロープ及びケリーバーが代用される。
(3)計測機器は、加速度センサー、歪みセンサー、ケーブル、及び加速度計アンプ、歪み計アンプ、A/D変換機、パソコンからなるPDA本体により構成されるPDA(Pile Driving Analyzer)が採用される。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明は、
ウィンチ、ワイヤーロープにより昇降されるケリーバー及び前記ケリーバーの先端に取り付けられるドリリングバケットを含む掘削機構を有する掘削機を使用して地盤に掘削した掘削孔の掘削先端地盤の支持力を、請求項1に記載の動的荷重試験装置を用いて確認する場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力確認方法であって、
前記掘削孔の掘削後、前記ケリーバーに前記ドリリングバケットに代えて前記動的荷重試験装置の計測治具を連結し、前記計測治具の前記下パイプの周面に加速度センサー、歪みセンサーを取り付けて、
前記計測治具を前記掘削孔内に下ろし、前記掘削先端地盤に設置して、
前記ウィンチで前記ワイヤーロープを巻き上げることにより、前記掘削孔内で前記上パイプを前記下パイプに対して所定の高さまで引き上げてから、前記上パイプを自由落下させて、動的荷重を前記下パイプに加え前記掘削孔の掘削先端地盤に付与し、
前記下パイプに前記動的荷重を加えたときの前記下パイプに発生する加速度、歪みを前記加速度センサー、前記歪みセンサーにより測定し、これらセンサーにより測定した測定値に基づいて情報処理装置により前記掘削孔の掘削先端地盤の静的地盤抵抗を求め、当該掘削先端地盤の支持力を確認する、
ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の動的荷重試験装置では、上記の構成により、動的荷重付与設備に動的荷重試験装置の計測治具を連結し、計測治具の下パイプの周面に加速度センサー、歪みセンサーを取り付けて、この計測治具を掘削孔内に下ろし掘削先端地盤に設置して、動的荷重付与設備により掘削孔内で上パイプを下パイプに対して所定の高さまで引き上げてから、上パイプを自由落下させて、動的荷重を下パイプに加え掘削先端地盤に付与し、このときの下パイプに発生する加速度、歪みを加速度センサー、歪みセンサーにより測定し、この測定値に基づいて、情報処理装置により掘削先端地盤の静的地盤抵抗を求め、掘削先端地盤の支持力を確認する方式を採り、場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力を簡単かつ低コストに確認することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【0014】
また、本発明の動的荷重試験装置を用いた場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力確認方法によれば、上記のとおり、掘削孔の掘削後、ケリーバーにドリリングバケットに代えて計測治具を連結し、下パイプの周面に加速度センサー、歪みセンサーを取り付けて、この計測治具を掘削孔内に下ろし掘削先端地盤に設置して、ウィンチでワイヤーロープを巻き上げることにより、掘削孔内で上パイプを下パイプに対して所定の高さまで引き上げてから、上パイプを自由落下させて、動的荷重を下パイプに加え掘削先端地盤に付与し、このときの下パイプに発生する加速度、歪みを加速度センサー、歪みセンサーにより測定し、これらセンサーにより測定した測定値に基づいて情報処理装置により掘削孔の掘削先端地盤の静的地盤抵抗を求め、支持力を確認するようにしたので、場所打ちコンクリート杭の施工中に、場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力を簡単かつ低コストに確認することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態における動的荷重試験装置の構成を示す図
【
図2】アースドリル工法により場所打ちコンクリート杭を構築する施工手順の一部を示す図
【
図3】アースドリル工法において同装置を用いた場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力確認方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1に動的荷重試験装置を示している。
図1に示すように、動的荷重試験装置Eは、掘削孔の掘削先端地盤の支持力を試験するためのもので、計測治具1と、動的荷重付与設備2(
図2、
図3参照)と、計測機器3とを備えて構成される。
【0017】
計測治具1は、剛性を有する金属材により形成され、上部に外周方向にフランジ状に張り出す受板11を有する下パイプ10と、剛性を有する金属材により形成され、上部に連結部22及び外周方向にフランジ状に張り出し、下パイプ10の受板11に衝接可能な衝接板21を有し、下パイプ10内に嵌挿されて摺動可能な上パイプ20とからなる。この計測治具1は、場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力の確認に際して、掘削孔の掘削先端地盤に設置される。
この場合、下パイプ10は上下2段の円筒状のパイプ10U、10Dにより構成される。
ここで、上段の下パイプ10Uは外径280mm、内径250mm、高さ700mmの円筒状のパイプで、上部に受板11として外径400mm、内径250mm、厚さ36mmの中央に円形の孔を有する円形の板が接合され、下部に載置板12として外径400mm、内径200mm、厚さ36mmの中央に円形の孔を有する円形の板が接合されてなる。なお、受板11は、この板11の下部とパイプ10Uの(外)周面上部との間に複数のリブ13が固着されて補強され、載置板12は、この板12の上部とパイプ10Uの(外)周面下部との間に複数のリブ14が固着されて補強される。また、受板11上には、必要に応じて、クッション材111が設置される。
下段の下パイプ10Dは外径318.5mm、高さ500mmの円筒状のパイプで、下部に設置板15として外径400mm、厚さ36mmの円形の板が接合されてなる。また、この下段の下パイプ10Dの上下部、この場合、この下パイプ10Dの周面で載置板12の直下及び設置板15の直上にそれぞれ、水抜き用の孔16、17が併せて設けられる。このようにして上段の下パイプ10Uは下段の下パイプ10Dより少し小径で高さが高くなっており、下段の下パイプ10Dの上に同心的に接合されて連接される。
上パイプ20は外径244.5mm、高さ500mmで、上部に衝接板21として外径400mm、内径100mm、厚さ36mmの中央に円形の孔を有する円形の板が接合され、さらに、この板21の上に連結部22として、後述するアースドリル掘削機などに搭載されるケリーバーの下端を嵌挿可能な内径を有し、周面の上下方向中間部で相互に対向する位置にそれぞれケリーバー下端のピン挿通部に対応するピン挿通部220を有し、上部から下部に向けて漸次拡径されるテーパー状のパイプが上パイプ20と同心的に接合されてなる。また、この連結部22の下部、この場合、この連結部22の周面で衝接板21の直上に、水抜き用の孔23が併せて設けられる。
また、この場合、上パイプ20は、(外)周面の下部で相互に対向する位置に外方に向けて突出するガイドピン24を有する。この場合、ガイドピン24に2本のボルトが用いられ、2本のボルトがそれぞれ、上パイプ20の(外)周面の下部で相互に対向する位置に固着され、上パイプ20の(外)周面の各位置から上パイプ20の直径ラインの延長上に突出される。
下パイプ10、この場合、上段の下パイプ10Uは、周面の上部で相互に対向する位置からそれぞれ、ガイドピン24が挿通し摺動可能に、鉛直下方に向けて延びる所定の長さを設定されたガイドスリット18を有する。この場合、ガイドスリット18は上段の下パイプ10Uの周面の上部で相互に対向する位置から鉛直下方に向けて、上パイプ20の各ガイドピン24が挿通し摺動可能な幅で、後述する動的荷重付与設備2により上パイプ20を下パイプ10に対して上方に引き上げる所定の高さよりも少し長い寸法に切り込まれる。
このようにして上パイプ20が下パイプ10の上段の下パイプ10U内に嵌挿されて組み込まれ、ガイドピン24とガイドスリット18が係合される。
【0018】
動的荷重付与設備2は、計測治具1の上パイプ20の連結部22に連結し、掘削孔内で上パイプ20を下パイプ10に対して所定の高さまで引き上げてから、上パイプ20を自由落下させて、動的荷重を下パイプ10に加え掘削先端地盤に付与するための機器、設備である。
この場合、動的荷重付与設備2は専用の設備として構成されてもよいが、ここでは、後述するアースドリル掘削機などに掘削機構として搭載されるウィンチ、ワイヤーロープ及びケリーバーが代用される。
【0019】
計測機器3は、計測治具1の下パイプ10、この場合、下段の下パイプ10Dの(外)周面に取り付けられ、下パイプ10に動的荷重が加えられたときの下パイプ10に発生する加速度、歪みを測定する加速度センサー31、歪みセンサー32、及びこれらのセンサー31、32にケーブル33を介して電気的に接続され、各センサー31、32により測定された測定値に基づいて掘削孔の掘削先端地盤の静的地盤抵抗を求める情報処理装置34を有する。
この場合、計測機器3には、一般に知られているPDA(Pile Driving Analyzer)が採用される。PDAは米国 Pile Dynamics,Inc.により開発された衝撃載荷試験システムで、2種類のセンサー(歪み計、加速度計)31、32、ケーブル33、及び加速度計アンプ、歪み計アンプ、A/D変換機、パソコンからなるPDA本体34により構成され、各種の杭の支持力を計測するのに使用される。このPDA3では、歪みセンサー31、加速度センサー32を杭頭付近に取り付けて、モンケンや油圧ハンマーなどのハンマーで杭を打撃したときに発生する杭の歪みと加速度を測定し、これらの測定値から、PDA本体34により一次元波動理論や除荷点法に基づいて、杭の支持力を解析するようになっている。
【0020】
このようにして、この動的荷重試験装置Eでは、動的荷重付与設備2に計測治具1を連結し、計測治具1の下パイプ10の(外)周面に加速度センサー31、歪みセンサー32を取り付けて、この計測治具1を掘削孔内に下ろし、掘削先端(孔底)に設置して、動的荷重付与設備2により掘削孔内で上パイプ20を下パイプ10に対して所定の高さまで引き上げてから、上パイプ20を自由落下させて、動的荷重を下パイプ10に加え掘削先端に付与し、このときに下パイプ10に発生する加速度、歪みを加速度センサー31、歪みセンサー32により測定し、この測定値に基づいて、情報処理装置(PDA本体)34により掘削孔の掘削先端地盤の静的地盤抵抗を求め、掘削先端地盤の支持力を確認する方式を採用する。
【0021】
図2にアースドリル工法により場所打ちコンクリート杭を構築する施工手順の一部を示し、
図3に動的荷重試験装置を用いた場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力確認方法を例示している。
図2に示すように、アースドリル工法では、地盤をアースドリル掘削機Dで掘削する。この場合、アースドリル掘削機Dは、クローラクレーン等のベースマシン41に掘削機構が装着されて構成される。掘削機構は、クラッチ付きのウィンチ42、このウィンチ42に巻き取られるワイヤーロープ43、ワイヤーロープ43に吊られるケリーバー44、ケリーバー44を回転駆動するケリーバー駆動装置45、及びケリーバー44の下端に取り付けられるドリリングバケット46などから構成される。また、ケリーバー44はドリリングバケット46の上端中央部にピン47を用いて連結する。この場合、ドリリングバケット46の胴体部の上面に固定された上面板の中央部にピン挿通部を有する連結部が設けられているので、この連結部のピン挿通部とケリーバー44の下端部に設けられたピン挿通部にピン47を通して連結する。この工法で掘削孔を掘削する場合、ケリーバー44をケリーバー駆動装置45により回転させ、その下端に取り付けられたドリリングバケット46を回転する。ワイヤーロープ43をウィンチ42から繰り出して、ケリーバー44をドリリングバケット46とともに下降させる。このようにしてドリリングバケット46に地面に対して掘削押し付け力を発生させ、ドリリングバケット46の歯を地面に食い込ませて地面に掘削孔を掘削する。このようにして円形の掘削孔を形成する。
【0022】
この掘削孔の掘削後、
図3に示すように、動的荷重試験装置を用いた場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力確認方法により、掘削孔の掘削先端地盤の支持力を確認する。
この方法では、まず、ケリーバー44にドリリングバケット46に代えて動的荷重試験装置Eの計測治具1を連結し、計測治具1の下パイプ10(下段の下パイプ10D)の(外)周面に加速度センサー31、歪みセンサー32を取り付ける。この場合、ケリーバー44の下端に連結されたドリリングバケット46を両者のピン挿通部間に挿通されたピン47を抜いて、ケリーバー44からドリリングバケット46を取り外した後、ケリーバー44の下端を計測治具1の連結部22に上から差し込み、両者間のピン挿通部440、220間にピン47を挿通して、ケリーバー44の下端に計測治具1を取り付ける。続いて、加速度センサー31、歪みセンサー32をそれぞれ、計測治具1の下段の下パイプ10Dの(外)周面にボルトで取り付ける。そして、ウィンチ42でワイヤーロープ43をいったん巻き上げて計測治具1を吊り上げ、掘削孔上に移動させた後、
図3(1)に示すように、ウィンチ42でワイヤーロープ43を徐々に繰り出して計測治具1を掘削孔内にゆっくり下ろし、掘削先端地盤に設置する。このとき、加速度センサー31、歪みセンサー32とPDA本体34とを接続するケーブル33が絡まないようにする。
次いで、ウィンチ42でワイヤーロープ43を巻き上げることにより、掘削孔内で上パイプ20を下パイプ10に対して所定の高さ(この場合、500mm以下の範囲)まで引き上げる。なお、この上パイプ20の引き上げの際、上パイプ20が下パイプ10の上段の下パイプ10U内に嵌挿されて組み込まれ、ガイドピン24とガイドスリット18が係合されているので、上パイプ20が下パイプ10から抜け外れることがない。この上パイプ20を所定の高さまで引き上げたら、ウィンチ42のクラッチを切ってウィンチ42の回転をフリーにすることにより、上パイプ20を自由落下(自然落下)させる。このとき、上パイプ20が下パイプ10の上段の下パイプ10U内に嵌挿されて組み込まれ、ガイドピン24とガイドスリット18が係合されているので、ガイドピン24とガイドスリット18との係合案内により、上パイプ20は上段の下パイプ10U内を鉛直下方に向けて落下する。これにより、
図3(2)に示すように、上パイプ20の衝接板21が上段の下パイプ10Uの受板11に衝接して、動的荷重を下パイプ10に加え、掘削先端地盤(孔底)に付与する。
そして、このときの下パイプ10に発生する加速度、歪みを加速度センサー31、歪みセンサー32により測定し、これらセンサー31、32により測定した測定値に基づいて、PDA本体34により掘削孔の掘削先端地盤の静的地盤抵抗を求め、掘削先端地盤の支持力を確認する。
なお、ここでは図示を省略しているが、この掘削先端地盤の支持力の確認により、この掘削孔の掘削先端地盤に適正な支持力を確認できた段階で、アースドリル工法による施工を引き続き行う。すなわち、まず、掘削孔内にベントナイト液などの安定液を充填して孔壁を安定させる。続いて、掘削孔内に複数本の直線状の主筋と環状のフープ筋とを組合わせて筒状に形成した鉄筋篭を建て込む。そして、鉄筋篭中にトレミー管を挿入し、このトレミー管からコンクリートを掘削孔内に注入して、鉄筋コンクリートの杭(コンクリート杭)を構築する。
【0023】
以上説明したように、この動的荷重試験装置Eでは、既述の構成により、動的荷重付与設備2に計測治具1を連結し、計測治具1の下パイプ10の(外)周面に加速度センサー31、歪みセンサー32を取り付けて、この計測治具1を掘削孔内に下ろし、掘削先端地盤に設置して、動的荷重付与設備2により掘削孔内で上パイプ20を下パイプ10に対して所定の高さまで引き上げてから、上パイプ20を自由落下させて、動的荷重を下パイプ10に加え掘削先端地盤に付与して、このときの下パイプ10に発生する加速度、歪みを加速度センサー31、歪みセンサー32により測定し、この測定値に基づいて、PDA本体34により掘削孔の掘削先端地盤の静的地盤抵抗を求め、掘削先端地盤の支持力を確認する方式を採っているので、場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力を簡単かつ低コストに確認することができる。
【0024】
また、この動的荷重試験装置Eを用いた場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力確認方法によれば、既述のとおり、アースドリル工法による掘削孔の掘削後、ワイヤーロープに吊り下げられたケリーバーにドリリングバケットに代えて計測治具1を連結し、下パイプ10の(外)周面に加速度センサー31、歪みセンサー32を取り付けて、この計測治具1を掘削孔内に下ろし掘削先端地盤(孔底)に設置して、ウィンチでワイヤーロープを巻き上げることにより、掘削孔内で上パイプ20を下パイプ10に対して所定の高さまで引き上げてから、上パイプ20を自由落下させて、動的荷重を下パイプ10に加え掘削孔の掘削先端地盤に付与し、このときの下パイプに発生する加速度、歪みを加速度センサー31、歪みセンサー32により測定し、これらセンサー31、32により測定した測定値に基づいて、PDA本体34により掘削孔の掘削先端地盤の静的地盤抵抗を求め、掘削先端地盤の支持力を確認するようにしたので、アースドリル工法の一連の工程の中で、場所打ちコンクリート杭の掘削先端地盤の支持力を簡単かつ低コストに確認することができる。
【符号の説明】
【0025】
E 動的荷重試験装置
1 計測治具
10 下パイプ
10U 上段の下パイプ
10D 下段の下パイプ
11 受板
111 クッション材
12 載置板
13 リブ
14 リブ
15 設置板
16、17 水抜き用の孔
18 ガイドスリット
2 動的荷重付与設備
20 上パイプ
21 衝接板
22 連結部
220 ピン挿通部
23 水抜き用の孔
24 ガイドピン(ボルト)
3 計測機器(PDA)
31 加速度センサー
32 歪みセンサー
33 ケーブル
34 情報処理装置(PDA本体)
D アースドリル掘削機
41 ベースマシン
42 クラッチ付きのウィンチ
43 ワイヤーロープ
44 ケリーバー
45 ケリーバー駆動装置
46 ドリリングバケット
47 ピン