(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754663
(24)【登録日】2020年8月26日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】熱交換器、及びそれを備えた燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20200907BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20200907BHJP
F24H 9/00 20060101ALI20200907BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20200907BHJP
B23K 1/14 20060101ALI20200907BHJP
B23K 101/14 20060101ALN20200907BHJP
B23K 103/04 20060101ALN20200907BHJP
【FI】
F28F1/32 B
F28F1/32 D
F28D7/16 D
F24H9/00 A
B23K1/00 330K
B23K1/14 A
B23K101:14
B23K103:04
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-202458(P2016-202458)
(22)【出願日】2016年10月14日
(65)【公開番号】特開2018-63089(P2018-63089A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】西野 晃史
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 英克
【審査官】
河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−151482(JP,A)
【文献】
実開昭48−000856(JP,U)
【文献】
特開平05−141889(JP,A)
【文献】
特開2013−011410(JP,A)
【文献】
実開平7−12773(JP,U)
【文献】
実開昭55−145283(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/32
B23K 1/00
B23K 1/14
F24H 9/00
F28D 7/16
B23K 101/14
B23K 103/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排ガスが上下に流れるケース体の対向する二つの側壁間に、前記側壁に平行に複数枚並設される伝熱フィンを備えた熱交換器であって、
前記伝熱フィンは、
複数の伝熱管を貫挿させる複数の管貫挿孔と、
前記管貫挿孔の上方にロウ材を保持させるロウ材保持部と、を有し、
前記伝熱管を管貫挿孔に挿通させたとき、前記管貫挿孔の上側周縁には、前記伝熱管の外周面に接触しない切欠状の非接触部が、最上縁を挟んで左右に形成され、
前記左右の非接触部の間に、前記伝熱管の外周面に向かって延設されるロウ材導流部が形成されている熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器において、
前記管貫挿孔の周縁には、前記伝熱フィンの片面側に向かって突出するフランジと、前記フランジが欠落したフランジ欠落部とが形成され、
前記フランジ欠落部は、前記ロウ材保持部の下方に設けられ、
前記非接触部は、前記フランジと前記フランジ欠落部との境界にそれぞれ形成されている熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱交換器において、
前記伝熱管の断面及び前記管貫挿孔はそれぞれ、長軸が上下方向に沿って設けられる略楕円形状を有し、
前記非接触部は、前記長軸に対して略線対称な位置に形成されている熱交換器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器において、
前記ケース体内にて、前記非接触部は、前記燃焼排ガスの上流側に位置するように形成されている熱交換器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱交換器を備えた燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器、及びその熱交換器を備えた燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器や暖房用熱源機などの燃焼装置に組み込まれる従来の熱交換器において、上下に開放しているケース体内に、複数枚の薄板状の伝熱フィンを所定の間隙をおいて直立状態で並設させると共に、各伝熱フィンに設けた管貫挿孔に伝熱管を各伝熱フィンに対して直交するように貫挿させたものがある(例えば、特許文献1および2参照)。
これらの伝熱フィンや伝熱管は、熱伝導性の高いステンレス系金属で形成したものが知られており、従来、伝熱フィンと伝熱管とは、前記ステンレスよりも低融点の金属系のロウ材(例えば、ニッケルロウ材)を加熱溶融させることによって接合されている。
【0003】
図6 (A)は、従来の熱交換器が備える伝熱フィン(2)の一例を示す正面図である。図に示すように、伝熱フィン(2)には、複数の管貫挿孔(20)が形成されていると共に、最上段に位置する各管貫挿孔(20)の上方域に、伝熱フィン(2)の端縁を切欠いたロウ材保持部(21)が形成されている。ロウ付け工程では、ケース体内で並設させた伝熱フィン(2)の管貫挿孔(20)に伝熱管(30)を貫挿させて仮組み体を製作した後、
図6(B)に示すように、ロウ材保持部(21)に、棒状又はペースト状のロウ材(3)を載置又は塗布し、仮組み体をロウ付け用の炉内にて加熱する。すると、加熱により溶融されて流動体となったロウ材(3)は、ロウ材保持部(21)から最上段の管貫挿孔(20)に貫挿されている伝熱管(30)の外面頂部に垂れた後、毛細管現象によって、伝熱フィン(2)の管貫挿孔(20)と伝熱管(30)の外周面との間を流れ落ちて行く。そして、冷却工程にてロウ材(3)を固化させることにより、伝熱管(30)が伝熱フィン(2)の管貫挿孔(20)の周縁にロウ材(3)でロウ付け固定される。
【0004】
上記ロウ付け工程において、理想的には、
図6の(B)に示すように、管貫挿孔(20)とロウ材保持部(21)の中心がケース体の上下方向の垂直線と一致するように、伝熱フィン(2)の水平姿勢を保ったまま炉内に収容される。このような理想的な状態であれば、ロウ材保持部(21)から流下するロウ材(3)は、同図の実線の矢印に示すように、ロウ材保持部(21)から伝熱管(30)の外面頂部(31)に流れ落ちると共に、外面頂部(31)から伝熱管(30)の外周面の左右両側へ均等に流れ落ちていく。これにより、伝熱管(30)の外周面の略全面にロウ材が行き渡り、伝熱管(30)を伝熱フィン(2)の管貫挿孔(20)にロウ付け固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−231993号公報
【特許文献2】特開2001−153468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際のロウ付け工程では、
図6の(C)に示すように、伝熱フィン(2)がケース体内において若干傾いた姿勢で炉内に収容されることがある。このような傾斜状態では、ロウ材保持部(21)から流下したロウ材(3)は、同図の点線で示す矢印のように、伝熱管(20)の外周面の左右いずれか一方のみに流れて行く。この傾斜状態でロウ材を冷却させて固化させると、伝熱管(30)は、伝熱フィン(2)の管貫挿孔(20)内にて、ロウ材(3)が流れる片側の所定部分のみがロウ付けされ、ロウ付け不良が発生するといった問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、炉内における伝熱フィンの姿勢に関わらず、ロウ材保持部から流下するロウ材を、伝熱管の外周面の略全体に均等に行き渡らせるようにして、伝熱管を管貫挿孔に確実にロウ付け固定し、生産性に優れた熱交換器並びに熱効率の高い燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面によれば、燃焼排ガスが上下に流れるケース体の対向する二つの側壁間に、前記側壁に平行に複数枚並設される伝熱フィンを備えた熱交換器であって、
前記伝熱フィンは、
複数の伝熱管を貫挿させる複数の管貫挿孔と、
前記管貫挿孔の上方にロウ材を保持させるロウ材保持部と、を有し、
前記伝熱管を管貫挿孔に挿通させたとき、前記管貫挿孔の上側周縁には、前記伝熱管の外周面に接触しない切欠状の非接触部が、最上縁を挟んで左右に形成され、
前記左右の非接触部の間に、前記伝熱管の外周面に向かって延設されるロウ材導流部が形成されている熱交換器が提供される。
【0009】
このものでは、ロウ材導流部の左右両側に、管貫挿孔の周縁が伝熱管の外周面に接触しない非接触部が形成された構成となっている。
よって、伝熱フィンの水平姿勢が保たれた理想的な状態であれば、ロウ材保持部から流れてくるロウ材は、まず、前記ロウ材導流部に流下し、その流下位置から、伝熱管の外周面に沿って左右両側に均等に流れる。
これに対して、伝熱フィンが上下方向に傾斜している傾斜状態でケース体内に収容されている場合、ロウ材はその流下位置から伝熱管の外周面を左右いずれか一方に偏って流れて行く。上記伝熱フィンによれば、ロウ材保持部の下方に位置する管貫挿孔の周縁であって且つロウ材導流部の左右に形成される非接触部によって、管貫挿孔の周縁と伝熱管の外周面との間に一定の空間が形成されるから、ロウ材保持部から流れてきたロウ材は、即座に毛細管現象で管挿通孔の周縁と伝熱管の外周面との間を流れることなく、左右いずれか一方の非接触部で一旦、ロウ材の流れが堰き止められ、前記空間内にロウ材が貯留される。この貯留されたロウ材は、ロウ材保持部からロウ材導流部を伝って新たに流下してくるロウ材に押されることにより、一部は、管貫挿孔の周縁と伝熱管の外周面との間を流れて落ちて行くが、他の一部は前記流下位置側へ逆流する。そして、逆流したロウ材は、流下位置を越えて他方側の伝熱管の外周面に沿って流れて行く。このように、伝熱フィンが上下方向に傾いた状態で炉内に収容されている場合でも、ロウ材は伝熱管の片側にのみ流れる不都合を回避でき、ロウ材を伝熱管の外周面の略全体に均等に行き渡らせることができる。
また、左右の非接触部の間は、ロウ材導流部が外周面に向かって延設されているから、前記ロウ材導流部の延設端が伝熱管の外周面に略接触するようにしておけば、熱効率の低下も抑えることができる。
【0010】
上記熱交換器において、好ましくは、前記管貫挿孔の周縁には、前記伝熱フィンの片面側に向かって突出するフランジと、前記フランジが欠落したフランジ欠落部とが形成され、
前記フランジ欠落部は、前記ロウ材保持部の下方に設けられ、
前記非接触部は、前記フランジと前記フランジ欠落部との境界にそれぞれ形成されている。
【0011】
管貫挿孔の周縁に、伝熱フィンの片面側に向かって突出するフランジを形成することにより、管貫挿孔の周縁に伝熱管をより強固にロウ付け固定することができる。また、管貫挿孔の周縁には、フランジが形成されているが、ロウ材保持部の下方にはフランジが欠落したフランジ欠落部が形成されているから、ロウ材保持部から流れてくるロウ材を、ロウ材導流部から、伝熱管の外周面に直接流下させることができる。そして、非接触部は、フランジとフランジ欠落部との境界に形成されているから、フランジ欠落部から伝熱管の外周面に沿って流れてきたロウ材はフランジによって確実に堰き止められ、非接触部と伝熱管の外周面との間の空間に確実に貯留される。このように、非接触部にロウ材を多く且つ確実に貯留させることができるから、伝熱フィンが上下方向に傾斜した状態で炉内に設置されていても、ロウ材を伝熱管の外周面の略全体により均等に行き渡らせることができる。
【0012】
上記熱交換器において、好ましくは、前記伝熱管の断面及び前記管貫挿孔はそれぞれ、長軸が上下方向に沿って設けられる略楕円形状を有し、
前記非接触部は、前記長軸に対して略線対称な位置に形成される。
このものでは、伝熱管の断面及び管貫挿孔が縦長楕円形状を有するから、伝熱管の外周面の形状が円形のものに比べて上下方向に尖った形状となる。よって、伝熱管の外周面へ流下したロウ材が、その左右両側へ流れ易くなり、ロウ材を伝熱管の外周面により均等に行き渡らせることができる。これにより、少量のロウ材で伝熱管を管貫挿孔に確実にロウ付け固定することができる。
【0013】
上記熱交換器において、好ましくは、前記ケース体内にて、前記非接触部は、前記燃焼排ガスの上流側に位置するように形成される。
このものでは、ケース体内の高温になる上流側に非接触部が位置するように、伝熱フィンがセットされるから、熱による伝熱フィンの変形を非接触部で吸収することができる。
【0014】
また、本発明の他の一局面によれば、上記熱交換器を備えた燃焼装置が提供される。
このものでは、伝熱フィンと伝熱管との間にロウ付け不良を低減して、確実に伝熱管を伝熱フィンの管貫挿孔にロウ付け固定できるから、生産性に優れる熱交換器を備えた熱効率の高い燃焼装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、伝熱フィンが上下方向に傾いた状態で炉内に収容されたとしても、ロウ材を伝熱管の外周面の略全体に均等に行き渡らせることができるから、伝熱フィンの管貫挿孔と伝熱管の外面とを確実にロウ付け固定することができる。また、伝熱フィンと伝熱管とのロウ付け不良を低減できるから、生産性に優れる熱交換器並びに熱効率の高い燃焼装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る熱交換器の斜視図である。
【
図2】
図1に示した熱交換器を備えた給湯装置の模式図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る熱交換器が備える伝熱フィンの全体説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る熱交換器が備える伝熱フィンの部分拡大図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る熱交換器が備える伝熱フィンが上下方向に傾いた状態を示す部分拡大図である。
【
図6】従来の熱交換器が備える伝熱フィンの説明図であり、(A)は正面図、(B)は伝熱フィンが上下方向に傾いていない状態を示す部分拡大図、(C)は伝熱フィンが上下方向に傾いた状態を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る熱交換器、及びそれを備えた燃焼装置について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
図1に示すものは、本発明の実施の形態に係る熱交換器(51)であり、ケース体(5)の対向する前後の側壁(501)(502)間に、吸熱用の薄肉板状の伝熱フィン(1)を、両側壁(501)(502)に平行に多数並列させている。なお、本明細書では、前側壁(501)の外側面を熱交換器(51)の正面とし、ケース体(5)を正面側から見たときの奥行き方向を前後方向、幅方向を左右方向、高さ方向を上下方向という。
【0018】
この種の熱交換器(51)は、例えば、
図2の模式図に示すような、本発明の燃焼装置に相当する給湯装置に使用される。この給湯装置では、上部域に下向きの燃焼面(33a)を有するバーナ(33)が備えられた器体(53)と、これに連通し且つモータ(M)の駆動により空気と燃料ガスの混合気を器体(53)内のバーナ(33)に送り込むファン(34a)が備えられたファンケース(34)とが、ケーシング(55)内に設けられている。
【0019】
熱交換器(51)は、器体(53)の中間部に設置された顕熱回収型の熱交換器であり、下方の熱交換器(52)は、潜熱回収型の熱交換器である。この給湯装置では、下方の熱交換器(52)の上流側に連なる給水管(38)からの水を熱交換器(52)にて、バーナ(33)からの燃焼排ガスの潜熱で加熱した後、上方の熱交換器(51)にて、燃焼排ガスの顕熱で加熱し、熱交換器(51)の下流側に連なる出湯管(39)から、所定の設定温度に加熱された温水が出湯される構成となっている。
なお、
図1に示すケース体(5)は、器体(53)の一部を構成しており、ケース体(5)の上方に、燃焼面(33a)が下向きのバーナ(33)が設けられていることから、燃焼排ガスは、ケース体(5)の上部開口(503)から下方へ流れる構成となっている。
【0020】
伝熱管(40)は、長軸が上下方向に位置する縦長楕円形状を有している。伝熱管(40)は、ケース体(5)内の略下半域の空間に、上下二段で且つ上段側と下段側とで中心相互が左右方向に半ピッチ偏心した位置となるよう所謂千鳥状に並設されている。また、伝熱管(40)は、前後の側壁(501)(502)を貫通しており、外方に突出した伝熱管(40)の端縁を二つずつ囲むように、ケース体(5)の前後の側壁(501)(502)にそれぞれ、カバー部(5a)が固定されている。これにより、伝熱管(40)に通水される流体は、カバー部(5a)を介して、蛇行しながら流れて行く。
【0021】
伝熱フィン(1)は、ステンレス製の金属板からなり、ケース体(5)の前後側壁(501)(502)間に並設されている。伝熱フィン(1)には、
図3に示すように、伝熱管(40)を貫挿させるための複数(ここでは13個)の管貫挿孔(10)が、バーリング加工によって開設されている。管貫挿孔(10)は、伝熱管(40)が略接触状態に貫挿する大きさの縦長楕円形状に形成されている(長軸:25mm、短軸:15mm)。また、管貫挿孔(10)は、伝熱管(40)の配置と同様、上下二段で且つ中心相互が下段側と上段側とで左右方向に半ピッチ偏心した位置となる千鳥状に並設されている。
なお、上下段の管貫挿孔(10)で囲まれる範囲に、ケース体(5)の上部開口(503)から伝熱フィン(1)相互間へ導入される燃焼排ガスの流れを偏向させるための複数(ここでは7個)のバーリング孔(12)が開設されている。
【0022】
伝熱フィン(1)の上端縁には、上段側の管貫挿孔(10)の上縁に沿った略円弧状の山部(13)と、隣接する山部(13)相互間に位置し且つ下段側の管貫挿孔(10)の上縁近傍まで切り欠かれた谷部(14)とが形成されている。他方、伝熱フィン(1)の下端縁には、隣接する二つの下段側の管貫挿孔(10)相互間が上方へ凹の略楕円弧状に切り欠かれた切込部が形成されている(R1.5)。
なお、山部(13)の頂部中央及び谷部(14)の底部中央にはそれぞれ、略半円弧状に凹み部が形成されている。これらの凹み部は、ペースト状のロウ材(4)を塗布するためのロウ材保持部(11)を構成する。
【0023】
上下段の管貫挿孔(10)の周縁には、ロウ材保持部(11)の下方を除いて、伝熱フィン(1)の片面側(ここでは、前方側)に向かって突出するフランジ(17)が突出形成されており、伝熱管(40)を管貫挿孔(10)に貫挿させたとき、伝熱管(40)の外周面がフランジ(17)の内周面に略接触する構成となっている。
なお、フランジ(17)のうち、管貫挿孔(10)の短軸の両端及び下端縁中央に位置する箇所には、外方に折り曲げられてなる折り曲げ片(19)が形成されている。
また、管貫挿孔(10)の周縁のうち、フランジ(17)が形成されていないフランジ欠落部(17a)には、伝熱管(40)を管貫挿孔(10)に貫挿させたとき、管貫挿孔(10)の周縁が伝熱管(40)の外周面に略接触するようにロウ材導流部(100)が延設されており、ロウ材導流部(100)の左右両側に、管貫挿孔(10)の周縁が伝熱管(40)の外周面に接触しない非接触部(15)(16)が連続して形成されている。
【0024】
より詳細には、
図4に示すように、管貫挿孔(10)の周縁のうち、ロウ材保持部(11)の下方で、左右の両側方に位置し且つロウ材保持部(11)の中心と管貫挿孔(10)の中心とを結ぶ仮想線(1a)に対して対称な各位置に、略三角形状に切り欠かれた一対の非接触部(15)(16)が形成されており、非接触部(15)(16)間にロウ材導流部(100)が延設されている。従って、非接触部(15)(16)は、フランジ(17)とフランジ欠落部(17a)との境界に位置する管貫挿孔(10)の周縁に形成されている。なお、本実施の形態では、非接触部(15)(16)の外側端縁間の距離(L1)は4mm、内側端縁間の距離(L2)は2.6mmに設定されている。
【0025】
次に、本実施の形態の伝熱フィン(1)と伝熱管(40)との接合方法について説明する。
まず、ケース体(5)内に前後の側壁(501)(502)と平行に複数の伝熱フィン(1)を並設させて収容する。このとき、各伝熱フィン(1)にはフランジ(17)が形成されているため、フランジ(17)の突出分の間隙を保持した状態で、折り曲げ片(19)で隣接する伝熱フィン(1)が当接して積層される。そして、前後の側壁(501)(502)に設けられた管導入孔(図示せず)から伝熱管(40)をケース体(5)内に導入し、各伝熱フィン(1)に設けられた管貫挿孔(10)に伝熱管(40)を貫挿させる。このとき、既述したように、管貫挿孔(10)と伝熱管(40)とは同一の形状及びサイズに形成されているため、管貫挿孔(10)の周縁のうち非接触部(15)(16)の形成域を除いた範囲は、伝熱管(40)の外周面に略接触する。言い換えれば、管貫挿孔(10)の周縁と伝熱管(40)の外周面とは非接触部(15)(16)以外は略接触状態となっているから、熱効率を向上させることができる。
【0026】
上記のようにしてケース体(5)内で管貫挿孔(10)に伝熱管(40)を貫挿させた伝熱フィン(1)の山部(13)の頂部中央及び谷部(14)の底部中央に形成されているロウ材保持部(11)に、ペースト状のロウ材(4)を塗布する。
このとき、ロウ材保持部(11)はいずれも上方に開放するように形成されているから、伝熱フィン(1)、ケース体(5)や、ロウ材の充填機等に妨げられることなく、伝熱フィン(1)の上方から各ロウ材保持部(11)にロウ材(4)を、容易に且つ確実に塗布することができる。また、全てのロウ材保持部(11)に適切にロウ材(4)が塗布されたどうかを目視や検査カメラにより容易に確認することができる。
【0027】
上記のようにしてロウ材が塗布された仮組み体を製作した後、ロウ付け用の炉内でロウ材を加熱溶融させる。
図4に示すように、ケース体(5)内で伝熱フィン(1)が上下方向に傾斜することなく、伝熱フィン(1)の水平姿勢が保たれた理想的な状態である場合、加熱により溶融されたロウ材(4)は、ロウ材保持部(11)から真下に位置し且つ仮想線(1a)上に位置する伝熱管(40)の外面頂部(41)に流下する。そして、ロウ材(4)は、毛細管現象により、伝熱管(40)の外周面とこれに略接触しているロウ材導流部(100)との間へ浸入し、同図の矢印に示すように、その左右両側へ略均等に流れて行き、非接触部(15)(16)を超えて、伝熱管(40)の外周面とフランジ(17)の内周面との略接触域に流れて行く。
【0028】
しかしながら、伝熱フィン(1)、伝熱管(40)や、ケース体(5)等の部品は、製造時の寸法誤差を有している。また、上記した仮組み体の製作において、全ての伝熱フィン(1)及び伝熱管(40)が理想状態を形成するようにケース体(5)内に収容させることは非常に困難を伴う。そのため、実際の仮組み体では、
図5に示すように、前記仮想線(1a)が左右いずれか一方に傾斜するように、伝熱フィン(1)が上下方向に傾いた状態でケース体(5)内に収容されやすい。このような傾斜状態では、加熱によって溶融されたロウ材(4)は、伝熱管(40)の外周面のうち、仮想線(1a)が通過する位置よりも左右いずれか一方にずれた流下位置に流下する。そして、ロウ材保持部(11)の下方には、伝熱管(40)の外表面に接触するロウ材導流部(100)が形成されているから、同図の実線の矢印に示すように、ロウ材(4)は、毛細管現象により、伝熱管(40)の外周面と管貫挿孔(10)の周縁を構成しているロウ材導流部(100)に沿って流れ、左右いずれか一方の伝熱管(40)の外周面に沿って流れていく。
【0029】
このとき、ロウ材導流部(100)の左右には、管貫挿孔(10)の周縁が伝熱管(40)の外周面に接触しない非接触部(15)(16)が形成されているから、ロウ材(4)は、例えば、一方の非接触部(15)に一旦、堰き止められて、非接触部(15)に貯留される。そして、非接触部(15)に貯留されたロウ材(4)は、ロウ材保持部(11)から新たに流下してくるロウ材(4)に押されて、非接触部(15)から溢れることにより、一部は、実線の矢印で示す方向へ、毛細管現象により非接触部(15)を越えた管貫挿孔(10)の周縁に形成されているフランジ(17)と伝熱管(40)の外周面との間を流れて行くが、他の一部は、点線の矢印で示すように、流下位置に向かって逆方向に流れ始める。そして、ロウ材(4)が、前記流下位置を超えて、伝熱管(40)の外周面のうち最も高く位置する外面頂部(41)に達した後は、他方の非接触部(16)側へ流れ落ちていく。そして、非接触部(16)側へ流れ落ちたロウ材(4)は、毛細管現象により、非接触部(16)を越えた他方側の管貫挿孔(10)の周縁に形成されているフランジ(17)と伝熱管(40)の外周面との間を流れて行く。
【0030】
このように、ロウ材保持部(11)の下方に位置する管貫挿孔(10)の周縁には、伝熱管(40)の外周面に略接触状態となっているロウ材導流部(100)と、ロウ材導流部(100)の左右に位置する非接触部(15)(16)とが形成されているから、伝熱フィン(1)が上下方向に傾斜した状態でロウ付け工程に供され、ロウ材保持部(11)から流下してくるロウ材(4)が、非接触部(15)(16)の一方側へのみ流れても、それを非接触部(15)又は(16)で一旦、堰き止めて、非接触部(15)又は(16)に貯留させ、他方側に押し戻すことができる。これにより、伝熱フィン(1)が上下方向に傾いた状態で炉内に収容された場合でも、ロウ材(4)が伝熱管(40)の片側にのみ流れてロウ付け不良となる不都合を回避でき、伝熱管(40)の外周面の略全体にロウ材を均等に行き渡らせることができる。従って、いずれの伝熱フィン(1)においても伝熱管(40)を管貫挿孔(10)に確実にロウ付け固定することができ、ロウ付け不良を大幅に低減することができる。また、非接触部(15)(16)の間に設けられているロウ材導流部(100)が伝熱管(40)の外周面に略接触しているから、熱効率の低下も抑えることができる。
【0031】
特に、非接触部(15)(16)は、管貫挿孔(10)の周縁から伝熱フィン(1)の片面側(前方側)に突出するフランジ(17)と、ロウ材保持部(11)の下方のフランジ欠落部(17a)との境界に形成されているから、ロウ材保持部(11)から流下してくるロウ材(4)を確実に非接触部(15)(16)及びフランジ(17)で堰き止めて、非接触部(15)(16)に貯留させることができる。また、非接触部(15)(16)を越えたロウ材(4)はフランジ(17)の内周面と伝熱管(40)の外周面との間に侵入するから、より強固に伝熱管(40)を管貫挿孔(10)にロウ付け固定することができる。
【0032】
さらに、伝熱管(40)の断面は縦長楕円形状を有するから、円形の伝熱管に比べてロウ材(4)が下方に流れ易くなる。このため、少量のロウ材(4)で、伝熱管(40)を管貫挿孔(10)に確実にロウ付け固定することができる。
【0033】
本発明実施の形態の伝熱フィン(1)を、
図2に示す給湯装置の顕熱熱交換器(51)に適用する場合、ケース体(5)内に、上段側の管貫挿孔(10)が上方に位置するように、
図3に示す向きで収容される。この給湯装置では、バーナ(33)からの燃焼排ガスは、ケース体(5)内を上部開口(503)から下方へ向かって流れるから、伝熱フィン(1)の上部開口(503)側がより高温に加熱される。その結果、伝熱フィン(1)の上部域が熱変形し易くなる。しかしながら、非接触部(15)(16)が上部開口(503)側に位置するように伝熱フィン(1)をケース体(5)内に収容させれば、高温の燃焼排ガスとの接触によって伝熱フィン(1)の上部域に熱変形が生じても、熱変形をこれら非接触部(15)(16)で吸収することができるから、熱効率の低下を防止できる。
なお、上記実施の形態では、ロウ材導流部(100)は伝熱管(40)の外周面に略接触するように延設されているが、ロウ材導流部(100)と伝熱管(40)の外周面との間に、僅かな隙間を設ける構成としても良い。
【0034】
なお、熱交換器(51)は、上記したような給湯装置の他、コンデンシング給湯器、貯湯式給湯システムの熱源機、風呂追焚機能を有する給湯器、給湯機能のみ有する給湯器、給湯暖房用熱源機、温水暖房機などの燃焼装置に組み込まれる熱交換器に適用できる。
【符号の説明】
【0035】
(1) ・・・・・・・・伝熱フィン
(100) ・・・・・・・ロウ材導流部
(10)・・・・・・・・管貫挿孔
(11)・・・・・・・・ロウ材保持部
(15)(16)・・・・・・非接触部
(150) ・・・・・・・接触部
(17)・・・・・・フランジ
(17a) ・・・・・・・フランジ欠落部
(4) ・・・・・・・・ロウ材
(40)・・・・・・・・伝熱管
(5) ・・・・・・・・ケース体
(51)・・・・・・・・熱交換器
(501)(502)・・・・・側壁