(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
50%未満のデューティー比を有する正極送信パルスと、50%未満のデューティー比を有し、前記正極送信パルスよりも遅れた位相を有する負極送信パルスと、を受信して、位相制御信号に基づいて前記正極送信パルスに対する前記負極送信パルスの位相差量を補正する位相差調整回路と、
前記位相差調整回路が出力した前記正極送信パルスと前記負極送信パルスとを入力し、前記正極送信パルスと前記負極送信パルスとに基づき送信信号を生成して、前記送信信号によりアンテナを駆動するパワーアンプと、
前記パワーアンプに入力される前記正極送信パルスと前記負極送信パルスとの位相差に応じて前記位相制御信号を生成して、前記位相制御信号を前記位相差調整回路に与える位相差設定回路と、を有し、
前記位相差設定回路は、
前記パワーアンプに入力される前記正極送信パルスの立ち上がりエッジに応じた立ち上がりエッジと、前記パワーアンプに入力される前記負極送信パルスの立ち上がりエッジに応じた立ち下がりエッジと、を有する矩形波を位相差検出信号として出力する位相差検出器と、
前記位相差検出信号を平滑して前記位相差検出信号のデューティー比に応じた信号レベルを有する直流電圧信号を位相差対応電圧として出力する平滑回路と、
予め電圧値が設定された位相差参照電圧と、前記位相差対応電圧との大小関係に応じて論理レベルが決定される計測結果信号を出力する比較回路と、
前記計測結果信号に応じて前記位相制御信号を増減させる送信パルス制御回路と、
を有する半導体装置。
前記正極送信パルス及び前記負極送信パルスのデューティー比をデューティー制御値に応じて補正して、補正後の前記正極送信パルス及び前記負極送信パルスを前記位相差調整回路に与えるデューティー比調整回路を更に有し、
前記送信パルス制御回路は、
前記正極送信パルスを前記平滑回路で平滑した第1の平滑電圧と、予め電圧値が設定されたデューティー比参照電圧と、を前記比較回路で比較した結果に応じて前記デューティー制御値を増減させて、前記正極送信パルスのデューティー比を予め設定した規定デューティー比に補正する第1のデューティー比補正処理と、
前記負極送信パルスを前記平滑回路で平滑した第2の平滑電圧と、前記デューティー比参照電圧と、を前記比較回路で比較した結果に応じて前記デューティー制御値を増減させて、前記負極送信パルスのデューティー比を予め設定した規定デューティー比に補正する第2のデューティー比補正処理と、
を行う請求項1に記載の半導体装置。
前記パワーアンプは、前記正極送信パルス及び前記負極送信パルスが入力される差動対と、前記差動対により駆動される共振回路と、を含むE級アンプである請求項1に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0013】
実施の形態1
まず、実施の形態1にかかる半導体装置は、通信装置においてアンテナから入力される受信信号から受信データを生成すると共に、アンテナを駆動する送信信号を送信データに基づき生成する無線チップである。なお、実施の形態1にかかる半導体装置は、無線チップにおける受信信号から受信データを生成する受信機能と送信データから送信信号を生成する送信機能とのいずれか一方、或いはその機能の一部を担うものであっても良い。
【0014】
そこで、実施の形態1にかかる半導体装置を含む無線装置について説明する。
図1に実施の形態1にかかる無線装置1のブロック図を示す。なお、
図1に示す無線装置の構成は、無線装置の構成を示す一例であり、無線装置を実現する回路は
図1に示す例に限らない。
図1に示すように、実施の形態1にかかる無線装置1は、アンテナ、RFスイッチ11、整合回路13、アプリケーションプロセッサ14、コンデンサCrx、Ctxを有する。
【0015】
RFスイッチ11は、アンテナを介して受信される受信信号を無線チップ12内の受信処理系ブロックに送信すると共に、無線チップ12内の送信処理系ブロックから出力される送信信号をアンテナに伝達する。そして、実施の形態1にかかる無線装置1では、コンデンサCrxを介してRFスイッチ11から無線チップ12に送信信号が伝達される。また、実施の形態1にかかる無線装置1では、無線チップ12から出力された送信信号は、整合回路13及びコンデンサCtxを介してRFスイッチ11に伝達される。整合回路13は、アンテナのインピーダンスと無線チップ12の出力インピーダンスとのマッチングをとるために設けられるものであり、
図1では、無線チップ12の外付け部品として設けたが、整合回路13は無線チップ12に内蔵されていても良い。
【0016】
無線チップ12は、アプリケーションプロセッサ14で扱うデータ信号とアンテナを介して送受信される送受信信号との間の変換処理を行う。アプリケーションプロセッサ14は、無線装置1で実現される各種機能に関する信号処理を行う。アプリケーションプロセッサ14は、例えば、プログラムを実行可能な演算部を備えるCPU(Central Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)等である。実施の形態1にかかる無線装置1は、アプリケーションプロセッサ14における処理に置いて生じた送信データを無線チップ12及びアンテナを介して相手方装置に送信する。また、実施の形態1にかかる無線装置1では、相手方装置から無線信号として送信される送信データを無線チップ12により受信データに変換し、受信データに基づく処理をアプリケーションプロセッサ14で行う。
【0017】
ここで、無線チップ12は、整合回路21、ローノイズアンプ22、ミキサー23、IFアンプ24、ローパスフィルタ25、アナログデジタル変換回路26、モデム31、送受信制御回路32、PLL回路41、電圧制御発振回路42、パワーアンプユニット43を有する。
【0018】
整合回路21は、アンテナのインピーダンスと無線チップ12の入力インピーダンスとのマッチングをとるための回路である。ローノイズアンプ22は、可変ゲインアンプであって、整合回路21を介して受信した受信信号を増幅してミキサー23に出力する。ミキサー23は、ローノイズアンプ22から出力される無線周波数帯の送信信号を、ベースバンド周波数帯のベースバンド信号に復調する。ミキサー23では、電圧制御発振回路42が出力する局部発振信号を用いて送信信号からベースバンド信号への復調処理を行う。IFアンプ24は、可変ゲインアンプであって、ミキサー23が出力したベースバンド信号を増幅する。ローパスフィルタ25は、IFアンプ24が出力するベースバンド信号においてベースバンド周波数帯域に近い領域にあるノイズを除去する。アナログデジタル変換回路26は、ローパスフィルタ25が出力するベースバンド信号をデジタル値に変換する。つまり、無線チップ12では、整合回路21、ローノイズアンプ22、ミキサー23、IFアンプ24、ローパスフィルタ25、アナログデジタル変換回路26、PLL回路41、電圧制御発振回路42により受信処理系回路を構成する。
【0019】
モデム31は、アナログデジタル変換回路26が出力したデジタル信号に変換された受信信号に対して復号処理等を施して受信データを生成する。モデム31で生成された受信データは、送受信制御回路32を介してアプリケーションプロセッサ14に与えられる。また、モデム31は、アプリケーションプロセッサ14から送受信制御回路32を介して与えられた送信データに対して符号化処理等を施して、処理後の送信データをPLL回路41に出力する。
【0020】
送受信制御回路32は、無線チップ12の送信処理及び受信処理の動作モードを設定する。例えば、無線通信では、通信方式により、搬送波の周波数、変調方式等が異なる。そのため、送受信制御回路32では、利用する通信方式に合わせて各ブロックの設定を変更する。
【0021】
PLL回路41は、モデム31が出力する送信データに応じた周波数のパルス信号を出力する。電圧制御発振回路42は、PLL回路41により出力されたパルス信号に搬送波となる局部発振信号を重畳して出力する。つまり、PLL回路41及び電圧制御発振回路42は、送信データの周波数をベースバンド周波数帯から無線周波数帯の周波数へと変調する。電圧制御発振回路42から出力される信号は、波形が矩形となるパルス信号であり、位相差が理想的には180°となる2つの信号である。パワーアンプユニット43は、電圧制御発振回路42が出力するパルス信号により駆動され、送信データに対応する送信信号RF_OUTを出力する。この送信信号RF_OUTは、整合回路13及びコンデンサCrxを介してアンテナに伝達される。
【0022】
なお、以下の説明では、電圧制御発振回路42が出力する2つのパルス信号を、正極送信パルス及び負極送信パルスと称す。
【0023】
ここで、実施の形態1にかかる無線装置1では、パワーアンプユニット43に特徴の1つを有する。そこで、以下では、パワーアンプユニット43についてより詳細に説明する。
図2に実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43のブロック図を示す。
【0024】
図2に示すように、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43は、デューティー比調整回路51、位相差調整回路52、プリバッファ53、パワーアンプ54、位相差設定回路55を有する。
【0025】
デューティー比調整回路51は、第1の送信パルス(例えば、正極送信パルスINa_P)及び第2の送信パルス(例えば、負極送信パルスINa_N)のデューティー比をデューティー制御値に応じて補正して、補正後の正極送信パルスINb_P及び負極送信パルスINb_Nを位相差調整回路52に与える。デューティー制御値は、位相差設定回路55により生成され、デューティー制御信号DT_CONTにより与えられる値である。
【0026】
位相差調整回路52は、デューティー比調整回路51が出力した正極送信パルスINb_P及び負極送信パルスINb_Nを受信して、正極送信パルスINb_Pに対する第2の送信パルスINb_Nの位相差量を補正する。そして、位相差調整回路52は、補正後の位相差量を有する正極送信パルスINc_P及び負極送信パルスINc_Nを出力する。正極送信パルスINb_P及び負極送信パルスINb_Nは、共にデューティー比調整回路51によりデューティー比が50%未満となるように調整されている。また、負極送信パルスINb_Nは、正極送信パルスINb_Pよりも遅れた位相を有する。位相差調整回路52は、位相制御値にもとづき正極送信パルスINb_Pと負極送信パルスINb_Nとの間の位相差量を調整する。この位相制御値は、位相差設定回路55により生成され、位相制御信号PH_CONTにより与えられる値である。
【0027】
プリバッファ53は、位相差調整回路52が出力した正極送信パルスINc_P及び負極送信パルスINc_Nを増幅した正極送信パルスINd_P及び負極送信パルスINd_Nを生成する。そして、正極送信パルスINd_P及び負極送信パルスINd_Nに基づきパワーアンプ54は送信信号RF_OUTを出力する。ここで、パワーアンプ54は、例えば、正極送信パルスINd_P及び負極送信パルスINd_Nが入力される差動対と、差動対により駆動される共振回路と、を含むE級アンプである。
【0028】
位相差設定回路55は、正極送信パルスINd_Pと負極送信パルスINd_Nとの位相差に応じた位相制御値を生成して、位相制御値を位相差調整回路52に与えることにより正極送信パルスINc_Pと負極送信パルスINc_Nとの間に与える位相差量を制御する。実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43では、位相差設定回路55は、正極送信パルスINc_Pと負極送信パルスINc_Nとの位相差が180度となるように、位相制御値を決定する。このように、正極送信パルスINc_Pと負極送信パルスINc_Nとの位相差を180度とすることで、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43では、送信信号RF_OUTの二次歪みを効果的に抑制する。
【0029】
また、位相差設定回路55は、正極送信パルスINd_Pのデューティー比と負極送信パルスINd_Nのデューティー比が予め設定したデューティー比とするデューティー制御値を生成する。実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43では、位相差設定回路55は、正極送信パルスINc_Pと負極送信パルスINc_Nとのデューティー比が50%未満となるように、デューティー制御値を決定する。このように、正極送信パルスINc_Pと負極送信パルスINc_Nとのデューティー比を50%未満とすることで、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43では、送信信号RF_OUTの最大振幅を抑制して二次歪みを効果的に抑制する。
【0030】
位相差設定回路55は、送信パルス制御回路60、位相差検出器61、平滑回路(例えば、ローパスフィルタ62、63)、コンパレータ64を有する。また、位相差設定回路55は、第1のスイッチ(例えば、スイッチSWPHP)、第2のスイッチ(例えば、スイッチSWPHBP)、第3のスイッチ(例えば、スイッチSWPHN)、第4のスイッチ(例えば、スイッチSWPHBN)、第5のスイッチ(スイッチSWDTP)、第6のスイッチ(スイッチSWDTN)、第7のスイッチ(例えば、スイッチSWDTB)を有する。なお、第1のスイッチから第7のスイッチは、いずれも送信パルス制御回路60によりオン状態とオフ状態が切り替えられるものとする。
【0031】
位相差検出器61は、パワーアンプ54に入力される正極送信パルスINd_Pの立ち上がりエッジに応じた立ち上がりエッジと、パワーアンプ54に入力される負極送信パルスINd_Nの立ち上がりエッジに応じた立ち下がりエッジと、を有する矩形波を位相差検出信号として出力する。
【0032】
スイッチSWDTPは、一端に正極送信パルスINd_Pが入力され、他端がローパスフィルタ62に接続される。スイッチSWDTNは、一端に負極送信パルスINd_Nが入力され、他端がローパスフィルタ62に接続される。スイッチSWDTBは、一端にデューティー比参照電圧が入力され、他端がローパスフィルタ63に接続される。スイッチSWPHPは、一端に位相差検出信号が入力され、他端がローパスフィルタ62に接続される。スイッチSWPHNは、一端に位相差検出信号が入力され、他端がローパスフィルタ63に接続される。スイッチSWPHBPは、一端に位相差参照電圧VREF_PHが入力され、他端がローパスフィルタ63に接続される。スイッチSWPHBNは、一端に位相差参照電圧VREF_PHが入力される。
【0033】
ローパスフィルタ62、63は、例えば、信号伝達配線に挿入された抵抗と、抵抗とコンパレータ64の入力端子とを接続する配線と接地配線との間に設けられたコンデンサと、を有し、入力される信号を平滑化して直流電圧信号(例えば、直流電圧信号LPFO_P、LPFO_N)を生成して、生成した直流電圧信号を後段に配置されるコンパレータ64に出力する。このローパスフィルタ62にはスイッチSWPHP、SWPHBN、SWDTP、SWDTNの他端が接続され、ローパスフィルタ63にはスイッチSWPHN、SWPHBP、SWDTBの他端が接続される。そして、ローパスフィルタ62、63は、オン状態(閉状態とも称す)に制御されるスイッチを介して入力される信号を平滑した直流電圧信号を出力する。
【0034】
コンパレータ64は、ローパスフィルタ62が出力する直流電圧信号LPFO_Pが正転入力端子に入力され、ローパスフィルタ63が出力する直流電圧信号LPFO_Nが反転入力端子に入力される。そして、コンパレータ64は、入力される2つの信号の大小関係に応じて論理レベルが決定される計測結果信号を出力する。
【0035】
バイアス電圧生成回路60は、コンパレータ64が出力する測定結果信号に基づき位相制御信号PH_CONTにより位相差調整回路52に与える位相制御値及びデューティー制御信号DT_CONTによりデューティー比調整回路51に与えるデューティー制御値を決定する。以下では、送信パルス制御回路60が位相制御値を決定する処理を位相差補正処理と称し、送信パルス制御回路60がデューティー制御値を決定する処理をデューティー比補正処理と称す。
【0036】
位相補正処理では、スイッチSWDTP、SWDTN、SWDTBをオフ状態に維持した状態で、位相差設定回路55が、以下のような処理を行う。まず、位相差検出器61が、パワーアンプ54に入力される正極送信パルスINd_Pの立ち上がりエッジに応じた立ち上がりエッジと、パワーアンプ54に入力される負極送信パルスINd_Nの立ち上がりエッジに応じた立ち下がりエッジと、を有する矩形波を位相差検出信号として出力する。そして、ローパスフィルタ62、63の一方を用いて位相差検出信号を平滑して前記位相差検出信号のデューティー比に応じた信号レベルを有する直流電圧信号を位相差対応電圧として出力する。また、ローパスフィルタ62、63の他方を用いて、予め電圧値が設定された位相差参照電圧VREF_PHをコンパレータ64に与える。そして、コンパレータ64は、位相差参照電圧VREF_PHと、位相差対応電圧との大小関係に応じて論理レベルが決定される計測結果信号を出力する。そして、送信パルス制御回路60は、計測結果信号に応じて前記位相制御値を増減させる。ここで、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43では、位相補正処理として、第1の位相補正処理と第2の位相補正処理との2つの位相補正処理を行う。
【0037】
第1の位相補正処理では、スイッチSWPHP及びスイッチSWPHBPにより構成される第1のスイッチ群をオン状態、スイッチSWPHN及びスイッチスイッチSWPHBNにより構成される第2のスイッチ群をオフ状態とする。これにより、位相差設定回路55は、ローパスフィルタ62を介してコンパレータ64の正転入力端子に位相差検出信号を与え、ローパスフィルタ63を介して位相差参照電圧VREF_PHをコンパレータ64の反転入力端子に与える。そして、コンパレータ64により、位相差検出信号と位相差参照電圧VREF_PHとを比較することとで得られる計測結果信号に応じて、送信パルス制御回路60が位相制御値を増減させる。
【0038】
第2の位相補正処理では、スイッチSWPHP及びスイッチSWPHBPにより構成される第1のスイッチ群をオフ状態、スイッチSWPHN及びスイッチスイッチSWPHBNにより構成される第2のスイッチ群をオン状態とする。これにより、位相差設定回路55は、ローパスフィルタ62を介してコンパレータ64の正転入力端子に位相差参照電圧VREF_PHを与え、ローパスフィルタ63を介して位相差検出信号をコンパレータ64の反転入力端子に与える。そして、コンパレータ64により、位相差検出信号と位相差参照電圧VREF_PHとを比較することとで得られる計測結果信号に応じて、送信パルス制御回路60が位相制御値を増減させる。
【0039】
デューティー比補正処理では、スイッチSWDTP、SWDTBをオン状態に維持した状態で第1のデューティー比補正処理を行い、スイッチSWDTN、SWDTBをオン状態に維持した状態で第2のデューティー比補正処理を行う。
【0040】
第1のデューティー比補正処理では、位相差設定回路55が、ローパスフィルタ62を用いてスイッチSWDTPを介して入力される正極送信パルスINd_Pを平滑して第1の平滑電圧(例えば、第1のデューティー比補正処理中の直流電圧信号LPFO_P)を生成して、直流電圧信号LPFO_Pをコンパレータ64の正転入力端子に与える。また、ローパスフィルタ63を介してデューティー比参照電圧VREF_DTをコンパレータ64の反転入力端子に与える。そして、コンパレータ64は、デューティー比参照電圧VREF_DTと直流電圧信号LPFO_Pとの大小関係に応じて論理レベルが決定される計測結果信号を出力する。そして、送信パルス制御回路60は、計測結果信号に応じてデューティー制御値を増減させる。この第1のデューティー比補正処理で生成されるデューティー制御値により、デューティー比調整回路51は正極送信パルスINa_Pのデューティー比を調整する。
【0041】
第2のデューティー比補正処理では、位相差設定回路55が、ローパスフィルタ62を用いてスイッチSWDTNを介して入力される負極送信パルスINd_Nを平滑して第2の平滑電圧(例えば、第2のデューティー比補正処理中の直流電圧信号LPFO_P)を生成して、直流電圧信号LPFO_Pをコンパレータ64の正転入力端子に与える。また、ローパスフィルタ63を介してデューティー比参照電圧VREF_DTをコンパレータ64の反転入力端子に与える。そして、コンパレータ64は、デューティー比参照電圧VREF_DTと直流電圧信号LPFO_Pとの大小関係に応じて論理レベルが決定される計測結果信号を出力する。そして、送信パルス制御回路60は、計測結果信号に応じてデューティー制御値を増減させる。この第2のデューティー比補正処理で生成されるデューティー制御値により、デューティー比調整回路51は負極送信パルスINa_Nのデューティー比を調整する。
【0042】
ここで、上記で説明した、デューティー比調整回路51、位相差調整回路52、位相差検出器61、パワーアンプ54についてより詳細に説明を行う。
【0043】
まず、
図3に実施の形態1にかかるデューティー比調整回路51のブロック図を示す。
図3に示すように、実施の形態1にかかるデューティー比調整回路51は、デューティー比調整回路51pと、デューティー比調整回路51nを有する。このデューティー比調整回路51p、51nは、回路構成は同じ回路であるが、入力される制御信号が異なる。
【0044】
デューティー比調整回路51pには、正極送信パルスINa_Pと、デューティー制御信号DT_CONTに含まれる信号のうち第1のデューティー比補正処理で生成されたデューティー制御値を含む正極デューティー制御信号DTP_CONTと、が入力される。そして、デューティー比調整回路51pは、正極デューティー制御信号DTP_CONTで示されるデューティー制御値に基づき正極送信パルスINa_Pのデューティー比を調節した正極送信パルスINb_Pを出力する。
【0045】
デューティー比調整回路51nには、負極送信パルスINb_Nと、デューティー制御信号DT_CONTに含まれる信号のうち第2のデューティー比補正処理で生成されたデューティー制御値を含む負極デューティー制御信号DTN_CONTと、が入力される。そして、デューティー比調整回路51nは、負極デューティー制御信号DTN_CONTで示されるデューティー制御値に基づき負極送信パルスINa_Nのデューティー比を調節した負極送信パルスINb_Nを出力する。
【0046】
続いて、
図4にデューティー比調整回路51pの回路図を示す。デューティー比調整回路51pは、デューティー比調整回路51nと回路構成は同じである。
図4に示すように、デューティー比調整回路51pは、抵抗R1〜R3、コンデンサC1〜C3、PMOSトランジスタM1、M3、NMOSトランジスタM2、M4、バイアス電圧生成回路65を有する。
【0047】
抵抗R1の一端には、正極送信パルスINa_Pが入力される。コンデンサC1は、抵抗R1の他端と接地配線GNDとの間に接続される。コンデンサC2は、抵抗R1とPMOSトランジスタM1のゲートとの間に接続される。コンデンサC3は、抵抗R1とNMOSトランジスタM2のゲートとの間に接続される。
【0048】
バイアス電圧生成回路65は、正極デューティー制御信号DTP_CONTにより示されるデューティー制御値に応じた大きさのバイアス電圧を生成する。このバイアス電圧は、抵抗R2を介してPMOSトランジスタM1のゲートに与えられる。また、バイアス電圧は、抵抗R3を介してNMOSトランジスタM2のゲートに与えられる。PMOSトランジスタM1とNMOSトランジスタM2は、電源配線VCCと接地配線GNDとの間に直列に接続される。また、PMOSトランジスタM1のドレインとNMOSトランジスタM2のドレインとを接続するノードが、PMOSトランジスタM1及びNMOSトランジスタM2とにより構成される第1のインバータ回路の出力端子となる。
【0049】
PMOSトランジスタM3とNMOSトランジスタM4は、電源配線VCCと接地配線GNDとの間に直列に接続される。そして、PMOSトランジスタM3のゲートとNMOSトランジスタM4のゲートは、共にPMOSトランジスタM1のドレインとNMOSトランジスタM2のドレインとを接続するノードに接続される。また、PMOSトランジスタM3のドレインとNMOSトランジスタM4のドレインとを接続するノードが、PMOSトランジスタM3及びNMOSトランジスタM4とにより構成される第2のインバータ回路の出力端子となる。この第2のインバータ回路が出力する信号が正極送信パルスINb_Pとなる。
【0050】
デューティー比調整回路51pでは、抵抗R1とコンデンサC3により時定数回路が構成され、正極送信パルスINa_Pの立ち上がり波形及び立ち下がり波形が時定数回路の時定数に応じて緩やかになる。そして、バイアス電圧が高くなるほど、第1のインバータ回路の出力信号の論理レベルが切り替わる閾値電圧が高くなり、バイアス電圧が低くなるほど第1のインバータ回路の閾値電圧が低くなる。そして、デューティー比調整回路51pでは、第2のインバータ回路が第1のインバータ回路に対するバッファ回路として機能する。つまり、デューティー比調整回路51pでは、バイアス電圧生成回路65が出力するバイアス電圧が変化することで、正極送信パルスINa_Pのエッジの入力タイミングに対する正極送信パルスINb_Pのエッジ発生タイミングをずらすことで、正極送信パルINb_Pのデューティー比を意図したデューティー比とする。
【0051】
続いて、
図5に実施の形態1にかかる位相差調整回路52のブロック図を示す。
図5に示すように、実施の形態1にかかる位相差調整回路52は、位相差調整回路52pと、位相差調整回路52nを有する。この位相差調整回路52p、52nは、回路構成は同じ回路であるが、入力される制御信号が異なる。
【0052】
位相差調整回路52pには、正極送信パルスINb_Pと、位相制御信号PH_CONTに含まれる信号のうち位相差補正処理で生成された正極側位相制御値を含む正極位相制御信号PHP_CONTと、が入力される。そして、位相差調整回路52pは、正極位相制御信号PH_CONTで示される正極側位相制御値に基づき負極送信パルスINb_Nに対する正極送信パルスINb_Pの位相差を補正する。位相差調整回路52pが出力する信号を正極送信パルスINc_Pと称す。
【0053】
位相差調整回路52nには、正極送信パルスINb_Nと、位相制御信号PH_CONTに含まれる信号のうち位相差補正処理で生成された負極側位相制御値を含む負極位相制御信号PHN_CONTと、が入力される。そして、位相差調整回路52nは、負極位相制御信号PH_CONTで示される負極側位相制御値に基づき正極送信パルスINb_Pに対する負極送信パルスINb_Nの位相差を補正する。位相差調整回路52nが出力する信号を負極送信パルスINc_Nと称す。
【0054】
続いて、
図6に位相差調整回路52pの回路図を示す。位相差調整回路52pは、位相差調整回路52nと回路構成は同じである。
図6に示すように、位相差調整回路52pは、インバータ661〜66n(nはインバータの個数を示す整数、以下同じ)、コンデンサC61〜C6n−1を有する。
【0055】
インバータ661〜66nは、直列に接続される。そして、初段に配置されるインバータ661には正極送信パルスINb_Pが入力され、最終段に配置されるインバータ66nが正極送信パルスINc_Pを出力する。また、インバータ661〜66n−1の出力端子と接地配線GNDとの間には、それぞれコンデンサC61〜C6n−1が接続される。コンデンサC61〜C6n−1には、正極位相制御信号PHP_CONTのうち各コンデンサに対応する1ビットの値が与えられる。つまり、正極位相制御信号PHP_CONTで示される位相制御値は、コンデンサの個数に対応するビット数を有する。コンデンサC61〜C6n−1は、入力されるビット値が1である場合は各コンデンサに設定された容量値を有効にし、入力されるビット値が0である場合は容量値を無効(例えば、0F)とする。
【0056】
つまり、位相差調整回路52pでは、直列接続されるインバータ間に設けられるコンデンサの有効数と無効数を位相制御値に応じて変化させることで、位相差調整回路52nを伝搬して出力される負極送信パルスINc_Nに対する負極送信パルスINc_Nの遅延量を調節する。このように、位相差調整回路52では、位相差調整回路52pを伝搬させる正極送信パルスの遅延量と位相差調整回路52nを負極送信パルスの遅延量との差を位相制御値に応じて補正することで、2つの送信パルス間の位相差を調節する。
【0057】
続いて、位相差検出器61について説明する。位相差検出器61は、2つの送信パルスの立ち上がりエッジの入力タイミングの差を検出するものであり、この2つの送信パルスの立ち上がりエッジの入力タイミングの差に応じて立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを有する矩形波を有するパルス信号を位相差検出信号として出力する。この位相差検出器61の動作を実現するための回路は様々な回路が考えられるが、一定の入出力関係を満たす論理回路であればどのような回路であってもよい。
【0058】
そこで、
図7に実施の形態1にかかる位相差検出器61の真理値表を示す。
図7に示すように、実施の形態1にかかる位相差検出器61は、正極送信パルスINc_Pと負極送信パルスINc_Nとが0であれば、それ以前の出力状態を維持する。位相差検出器61は、正極送信パルスINc_Pが0であり、かつ、負極送信パルスINc_Nが1である場合には、出力信号OUTとなる位相差検出信号の論理レベルを0とする。位相差検出器61は、正極送信パルスINc_Pが1であり、かつ、負極送信パルスINc_Nが0である場合には、出力信号OUTとなる位相差検出信号の論理レベルを1とする。位相差検出器61は、正極送信パルスINc_P及び負極送信パルスINc_Nがともに1である場合には、出力信号OUTとなる位相差検出信号の論理レベルを0とする。
【0059】
この
図7に示した真理値表で示される動作を実現する回路の一例を説明する。
図8に実施の形態1にかかる位相差検出器の回路図の一例を示す。
図8に示す例では、位相差検出器61は、インバータ回路INV1〜INV4、NAND回路ND1〜ND3を有する。
【0060】
インバータ回路INV1は、正極送信パルスINd_Pを反転して出力する。インバータ回路INV2は、負極送信パルスINd_Nを反転して出力する。NAND回路ND1は、正極送信パルスINd_Pとインバータ回路INV2で反転された負極送信パルスINd_Nとの反転論理和を演算して出力する。NAND回路ND2は、インバータ回路INV1の出力信号、インバータ回路INV2の出力信号及びNAND回路ND3の出力信号の反転論理和を演算して出力する。NAND回路ND3は、NAND回路ND1の出力信号とNAND回路ND2の出力信号との反転論理和を演算して出力する。このNAND回路ND3の出力信号は、インバータ回路INV3及びインバータ回路INV4をバッファ回路として利用して、インバータ回路INV4から位相差検出信号(図中のOUT)として出力される。
【0061】
ここで、
図9に実施の形態1にかかる位相差検出器61の動作を示すタイミングチャートを示す。この
図9を参照して、実施の形態1にかかる位相差検出器61の動作について説明する。
【0062】
図9に示すように、位相差検出器61が出力する位相差検出信号の周期は、送信パルスと同じ周期(2π)を有する。そして、2つの送信パルス間の位相差が理想値とする180°であった場合、位相差検出信号のハイレベル期間とロウレベル期間は共にπとなる。つまり、位相差検出器61は、入力される2つの送信パルス間の位相差が180°であった場合は出力する位相差検出信号のデューティー比を50%とする
【0063】
一方、入力される2つの送信パルス間の位相差が理想値とする180°からΔPHずれていた場合、位相差検出信号のハイレベル期間はπ+ΔPH/2となり、ロウレベル期間はπ−ΔPH/2は共にπとなる。つまり、位相差検出器61は、入力される2つの送信パルス間の位相差が180°からずれていた場合、位相ズレ量に応じた大きさでデューティー比が50%からズレる。
【0064】
ここで、2つの送信パルスの間の位相のズレ量ΔPHと位相差検出器61が出力する位相差検出信号のデューティー比DToutとの関係は(1)で表すことができる。
【数1】
【0065】
続いて、実施の形態1にかかるパワーアンプ54の回路構成について説明する。実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43では、パワーアンプ54としてE級パワーアンプを用いる。サブGHz帯の信号を扱う無線チップの送信系では、高送信出力、低消費電力及び外付け整合素子の最少化が要求される。ここで、無線通信装置の一例としてスマートメータを考える。
【0066】
広大な土地を持った国では、スマートメータから電力会社へデータを伝送するコンセントレータまでの無線通信距離が非常に長くなる傾向がある。そのため、無線通信装置には、低い電波強度まで受信可能な低受信感度特性と共に、20dBm程度の電波強度で通信を行う高送信出力特性が求められる。しかし、このような高送信出力を実現する送信系では、消費電力が増大してしまう問題が生じる。一般的に、スマートメータ内部で消費できる電力は規格化されており、無線チップの消費電力も抑制する必要がある。また、無線通信装置の態様としてガスメータへの適用を考えると、電気が供給されていないことも考慮する必要がある、無線通信装置を電池駆動することも考える必要がある。そのため、無線チップから高出力送信を実現するハイパワーアンプには、高い電力高効率が求められる。
【0067】
一方、無線チップから放射される送信出力の帯域外スプリアス仕様が、各国の通信規格で規定されている。この規格を遵守するために最も厳しい送信特性は、回路の非線形性により動作周波数の整数倍に生成される高調波特性である。この高調波を抑圧するため、ハイパワーアンプの出力段回路の一部にフィルタを有する整合回路が基板上に構成される。しかし、全ての高調波を外付けフィルタで抑圧してしまうと、外付け素子数が増大してしまい、コスト増大につながる。また、二次高調波は動作周波数に近いため、Q値が低いフィルタで抑圧してしまうと、送信出力パワー及び効率が低下してしまう問題がある。そのため、できる限り無線チップの内部で高調波抑圧することが重要となる。特に、フィルタを用いない二次高調波抑圧手法が外付け素子コスト削減だけでなく、送信性能を向上させる為にも非常に重要となる。
【0068】
高送信出力特性と高電力効率の両立は、E級電力増幅器をパワーアンプとして用いることで実現できる。E級動作とは、電圧と電流が相反的に発生し、かつ、電圧がゼロになる瞬間に電圧の傾きがゼロになる様な波形を有する動作モードである。
【0069】
そこで、
図10に実施の形態1にかかるパワーアンプ54の回路図を示す。
図10に示すように、実施の形態1にかかるパワーアンプ54は、NMOSトランジスタMC1、MC2、MI1、MI2、インダクタL、コンデンサC、バランBLNを有する。
【0070】
NMOSトランジスタMC1、MC2は差動対を構成する。そして、NMOSトランジスタMC1のソース及びNMOSトランジスタMC2のソースは接地配線に接続される。NMOSトランジスタMC1のゲートには、負極送信パルスINd_Nが入力される。NMOSトランジスタMC2のゲートには、正極送信パルスINd_Pが入力される。
【0071】
NMOSトランジスタMC1のドレインには、NMOSトランジスタMI1のソースが接続される。NMOSトランジスタMI1のゲートには、予め設定された電圧値を有するバイアス電圧VBが与えられる。NMOSトランジスタMC2のドレインには、NMOSトランジスタMI2のソースが接続される。NMOSトランジスタMI2のゲートには、バイアス電圧VBが与えられる。
【0072】
NMOSトランジスタMI1のドレインとNMOSトランジスタMI2のドレインとの間には、インダクタLが接続される。また、コンデンサCは、インダクタLと並列接続されるように配置される。バランBLNは、コンデンサCとの並列共振により動作周波数成分しか通過させず、差動信号を単相信号に変換する。バランBLNは、一次側コイルがコンデンサCと並列に接続される。バランBLNの二次側コイルは一端が接地配線に接続され、他端から送信信号RF_OUTを出力する。
【0073】
なお、NMOSトランジスタMC1、MC2は、スイッチとして動作させる必要があるため、駆動能力の高い低耐圧MOSFETを採用した。また、
図10に示した例では、NMOSトランジスタMI1、MI2をNMOSトランジスタMC1、MC2の耐圧不足を補うために設けた。しかし、NMOSトランジスタMC1、MC2の耐圧電圧に応じて、NMOSトランジスタMC1、MC2に対して直列接続する耐圧対策用トランジスタ(例えば、NMOSトランジスタMI1、MI2)は、なくすことも出来るし、2段以上直列接続することもできる。
【0074】
ここで、E級動作を行うパワーアンプ54の動作特性について説明する。
図11に実施の形態1にかかるパワーアンプ54の動作を説明するタイミングチャートを示す。
図11に示すように、パワーアンプ54では、NMOSトランジスタMC1、MC2をスイッチング動作させるために、NMOSトランジスタMC1、MC2のゲートへの入力信号として矩形波形を有する正極送信パルスINd_P及び負極送信パルスINd_Nを入力する。そして、正極送信パルスINd_Pがハイレベルとなるとき、NMOSトランジスタMC1がオン状態となるため、NMOSトランジスタMC1側のバランBLNの一次側コイルのノードDPの電圧V(DP)は0Vとなる。また、NMOSトランジスタMI1のドレイン・ソース間に流れる電流I(MI1)は、バランBLNが動作周波数成分のみしか通過させないため、正弦波信号になる。
【0075】
続いて、正極送信パルスINd_Pがロウレベルとなるとき(例えば、タイミングT1)、NMOSトランジスタMC1がオフ状態となる。このとき、電圧V(DP)は、
図11に示すように、一端上昇し、再度低下するような波形になる。一方、正極送信パルスINd_Pがロウレベルの期間は、電流I(MI1)は、0Aとなる。
【0076】
また、正極送信パルスINd_Pが再びハイレベルとなると(例えば、タイミングT2)、NMOSトランジスタMI1がオン状態に遷移する。このNMOSトランジスタMI1の状態遷移の瞬間において、電力消費を発生させないようにするため、電圧V(DP)が0Vとなり、その傾きもゼロとなる様にパワーアンプ54は設計される。これは、インダクタLと、NMOSトランジスタMI1に内在する寄生容量と、を調節することで実現できる。
【0077】
電力増幅器では、アクティブ素子の出力電圧と電流が同時に存在していることで電力の消費が発生する。しかしながら、
図11で説明した様な波形を形成することにより、スイッチとして機能するNMOSトランジスタMC1、MC2のオンオフ状態が切り替わる瞬間でも消費電力が発生せず、効率が理論上100%となるため、E級動作を行う電力増幅器では、高い効率を実現できる。
【0078】
一方、E級動作を行うパワーアンプ54では、アクティブ素子の耐圧が大きな課題である。この問題は、入力矩形波信号のデューティー比を小さくすることでトランジスタにかかる電圧を低く抑えることができる。そこで、
図12に、実施の形態1にかかるパワーアンプにおける送信パルスのデューティー比と送信信号の振幅との関係を説明するグラフを示す。
図12に示すグラフは、計算上導き出せる理論値に基づき作成したものである。
図12では、横軸に正極送信パルスINd_P及び負極送信パルスINd_Nのデューティー比を示し、縦軸に電源電圧で規格化した出力信号の振幅のピーク電圧を示す。
【0079】
パワーアンプユニット43に入力される正極送信パルスINa_P及び負極送信パルスINa_Nのデューティー比は50%であるため、デューティー比調整回路51を用いなければパワーアンプ54に入力される正極送信パルスINd_P及び負極送信パルスINd_Nのデューティー比は50%となる。
図12を参照すると、パワーアンプ54の入力信号のデューティー比が50%であった場合、送信信号RF_OUTの振幅は電源電圧の3.56倍の振幅となり、この送信信号RF_OUTの最大振幅に起因する電圧がNMOSトランジスタMI1、MI2のドレイン端に発生する。例えば、電源電圧が3Vのとき、送信信号RF_OUTの最大振幅は10.7Vに達してしまい、たとえNMOSトランジスタMI1、MI2として高耐圧MOSトランジスタを適用しても素子耐圧が大きな問題となる。
【0080】
一方、
図12を参照すると、入力信号のデューティー比を小さくすることで、送信信号RF_OUTの振幅を抑制することができることが分かる。例えば、デューティー比が37.5%であった場合、送信信号RF_OUTの最大振幅は電源電圧の2.84倍となり、電源電圧3Vのときの送信信号RF_OUTの最大振幅は8.5Vまで削減できる。
【0081】
また、実施の形態1にかかる半導体装置1では、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43を用いることで、実装基板上に配置する部品の実装面積及び総コストを削減することができる。これは、パワーアンプユニット43を用いることで送信信号RF_OUTの二次歪みが抑制されるため、外付けの整合回路素子を削減することができるためである。
【0082】
パワーアンプユニット43は、例えば、デューティー比調整回路51、位相差調整回路52等において単相回路構成を2経路設け、位相反転した入力信号でパワーアンプ54を駆動することにより実現できる。パワーアンプユニット43の問題点は、素子ばらつきが発生すると、正極送信パルスINa_P及び負極送信パルスINa_Nをパワーアンプ54に伝達する2つの経路の伝達関数に差が生じ、偶数次高調波抑圧が劣化してしまうことである。例えば、パワーアンプユニット43に矩形波信号を入力すると、この伝達関数差は、デューティー比誤差及び位相誤差として現れる。これらの誤差により、偶数次高調波が劣化する。ここで、デューティー比誤差は差動信号を構成する2つの信号のデューティー比の差であり、位相誤差は、差動信号を構成する2つの信号の位相差が180°からどれだけずれているかを示す値である。
【0083】
ここで、矩形波信号を周波数で表現すると、(2)式で表すことができる。
【数2】
(2)式では、矩形波入力信号のデューティー比をDT、回路の電源電圧をVDD、角周波数をωとする。
【0084】
デューティー比の違いによる偶数次高調波特性を考察すると、デューティー比によって、偶数次高調波に影響する誤差成分が分かる。例えば、矩形波入力信号のデューティー比が50%であるとすると、DTは0.5となる。このとき、(2)式の第3項である二次高調波成分がsin(2π)cos(2ωt)となり、ゼロとなる。同様に、他の偶数次高調波もゼロとなる。従って、デューティー比を50%とする矩形波信号でパワーアンプ54を駆動する場合、偶数次高調波は発生しない。但し、デューティー比調整回路51及び位相差調整回路52等において素子ばらつきが発生してしまうと、デューティー比が50%からずれるため、偶数次高調波が発生してしまう。
【0085】
一方、デューティー比が37.5%の場合を考える。DTが0.375となる。このとき、(2)式の二次高調波成分はsin(0.75π)cos(2ωt)となり、(2)式の第3項が有限値を持つ。1つの矩形波信号のみで見ると、二次高調波は発生する。しかし、一方の入力信号(例えば、正極送信パルスINd_P)と他方の入力信号(負極送信パルスINd_N)のと位相差を180°に設定すると、偶数次高調波成分はキャンセルされる。但し、この差動信号を処理するデューティー比調整回路51、位相差調整回路52等が素子ばらつきを持つと、デューティー比誤差及び位相誤差が発生するため、偶数次高調波が劣化してしまう。従って、デューティー比が50%の場合、デューティー比が50%からずれることにより、偶数次高調波が劣化し、それ以外のデューティー比の場合、デューティー比誤差及び位相誤差が発生するために、偶数次高調波が劣化する。デューティー比が50%以外であるか、偶数次高調波が非常に厳しい仕様では、送信系の出力回路としてパワーアンプ54を用いただけでは抑圧度が不足するため、素子ばらつきが生じた場合の劣化原因を根絶させる必要がある。
【0086】
そこで、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43では、デューティー比調整回路51、位相差調整回路52、位相差設定回路55を用いて、パワーアンプ54に入力される正極送信パルスINa_P及び負極送信パルスINa_Nのデューティー比を50%以下としながら、正極送信パルスINa_Pと負極送信パルスINa_Nとの位相差を180°とする。そこで、
図13に実施の形態1にかかるパワーアンプにおける送信パルスの位相誤差と送信信号の二次高調波歪みとの関係を説明するグラフを示す。
図13は、正極送信パルスINa_P及び負極送信パルスINa_Nのデューティー比を37.5%としたときのパワーアンプ54の二次歪み特性を示すグラフである。また、
図13では、デューティー比を37.5%付近でスイープとしたときにローパスフィルタ62が出力する直流電圧信号LPFO_Pの特性とデューティー比参照電圧VREF_DTとの関係を示した。
【0087】
図13に示すように、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43では、正極送信パルスINd_P及び負極送信パルスINd_Nのデューティー比を37.5%とすると、ローパスフィルタ62が出力する直流電圧信号LPFO_Pの電圧値とデューティー比参照電圧VREF_DTとが一致する。そして、送信信号RF_OUTの二次歪み特性を参照すると、2つの送信パルスのデューティー比の差がゼロとなった時点で最も低くなることが分かる。そこで、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43では、デューティー比調整回路51及び位相差設定回路55を用いて正極送信パルスINd_P及び負極送信パルスINd_Nのデューティー比が一致するように調節する。
【0088】
また、正極送信パルスINd_P及び負極送信パルスINd_Nのデューティー比を37.5%とした状態で、2つの送信パルス間の位相差を180°に調節することで、送信信号RF_OUTの二次歪みを−48dBmに抑制することができる。一方、正極送信パルスINd_P及び負極送信パルスINd_Nのデューティー比を37.5%とした状態で、2つの送信パルス間の位相差が190°であった場合、送信信号RF_OUTの二次歪みは−12.1dBm程度までにしか抑制することができない。そこで、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43では、位相差調整回路52及び位相差設定回路55により正極送信パルスINd_P及び負極送信パルスINd_Nの位相差を180°に調整する。
【0089】
続いて、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43において送信信号RF_OUTの歪み特性を最適化する歪み最適化処理(例えば、デューティー比調整処理及び位相差調整処理)について説明する。
図14に実施の形態1にかかるパワーアンプユニットにおける歪み最適化処理の流れを説明するフローチャートを示す。
【0090】
実施の形態1にかかる無線装置1では、起動時、無線装置1の内部温度が予め設定した条件を満たしたとき、無線装置1の動作時間がある一定の時間を経過した毎、など、所定の条件を満たしたときに
図14で示した歪み最適化処理を実行する。
【0091】
図14に示すように、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43の歪み最適化処理では、まず、パワーアンプユニット43内の各値の初期化を実行する(ステップS1)。ステップS1では、例えば、デューティー制御信号DT_CONT、位相制御信号PH_CONTで示す値、デューティー比参照電圧VREF_DT、位相差参照電圧VREF_P等の値を初期値とする。
【0092】
次いで、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43は、第1のデューティー比補正処理を行う(ステップS2、S3)。ステップS2では、位相差設定回路55がスイッチSWDTP、SWDTBをオン状態とし、それ以外のスイッチをオフ状態に切り替える。これにより、位相差設定回路55では、コンパレータ64の正転入力端子に正極送信パルスINd_Pのデューティー比に応じた電圧レベルを有する直流電圧信号LPFO_Pが入力され、反転入力端子にはデューティー比参照電圧VREF_DTが入力される状態となる。ステップS3では、位相差設定回路55がデューティー制御信号DT_CONTにより示すデューティー制御値を予め決められたシーケンスに従って変更しながら、デューティー比調整回路51pを経由してパワーアンプ54に到達する正極送信パルスINd_Pのデューティー比の補正処理を行う。
【0093】
ここで、デューティー制御値の変更方法について説明する。
図15に実施の形態1にかかるパワーアンプユニットにおけるデューティー比補正の制御特性を説明するグラフを示す。実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43では、デューティー制御値の値を大きくすると正極送信パルスINd_Pのデューティー比が大きくなる。そして、正極送信パルスINd_Pのデューティー比の増加に比例して、ローパスフィルタ62が出力する直流電圧信号LPFO_Pの電圧値が上昇する。コンパレータ64が出力する計測結果信号は、直流電圧信号LPFO_Pがデューティー比参照電圧VREF_DTよりも低いときはロウレベルとなり、直流電圧信号LPFO_Pがデューティー比参照電圧VREF_DTよりも高いときはハイレベルとなる。位相差設定回路55は、デューティー制御値を2分探索法に基づき変更、或いは、スイープさせることで変更させることで変化さながら、コンパレータ64が出力する測定結果信号を観測し、正極送信パルスINd_Pのデューティー比がデューティー比参照電圧VREF_DTに対応する比率となるデューティー制御値を決定する。
【0094】
次いで、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43は、第2のデューティー比補正処理を行う(ステップS4、S5)。ステップS4では、位相差設定回路55がスイッチSWDTN、SWDTBをオン状態とし、それ以外のスイッチをオフ状態に切り替える。これにより、位相差設定回路55では、コンパレータ64の正転入力端子に負極送信パルスINd_Nのデューティー比に応じた電圧レベルを有する直流電圧信号LPFO_Pが入力され、反転入力端子にはデューティー比参照電圧VREF_DTが入力される状態となる。ステップS5では、位相差設定回路55がデューティー制御信号DT_CONTにより示すデューティー制御値を予め決められたシーケンスに従って変更しながら、デューティー比調整回路51nを経由してパワーアンプ54に到達する負極送信パルスINd_Nのデューティー比の補正処理を行う。この第2のデューティー比補正処理におけるデューティー制御値の探索方法は、第1のデューティー比補正処理と実質的に同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0095】
このステップS2からステップS5までの処理により、正極送信パルスINd_P及び負極送信パルスINd_Nのデューティー比は、設計において決定された最適値となる。実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43は、上記デューティー比補正処理に続いて位相差補正処理を行う。
図14に示す例では、位相差補正処理として第1の位相差補正処理(ステップS6、S7)と第2の位相差補正処理(ステップS8、S9)を行う。しかしながら、第1の位相差補正処理と第2の位相差補正処理はいずれか一方のみを行う形態とすることもできる。一方、第1の位相差補正処理と第2の位相差補正処理とを共に行うことで位相差補正ステップの分解能を高めることができる効果を得ることができる。
【0096】
ステップS6では、位相差設定回路55がスイッチSWPHN、SWPHBNをオン状態とし、それ以外のスイッチをオフ状態に切り替える。これにより、位相差設定回路55では、コンパレータ64の反転入力端子に位相差検出器61が出力する位相差検出信号のデューティー比に応じた電圧レベルを有する直流電圧信号LPFO_Nが入力され、正転入力端子には位相差参照電圧VREF_PHが入力される状態となる。ステップS7では、位相差設定回路55が位相制御信号PH_CONTにより示す位相制御値のうち位相差調整回路52pに与える正極側位相制御値を予め決められたシーケンスに従って変更しながら、位相差調整回路52p及び位相差調整回路52nを経由してパワーアンプ54に到達する正極送信パルスINd_Pと負極送信パルスINd_Nとの位相差の補正処理を行う。
【0097】
ここで、第1の位相補正処理における位相制御値の変更方法について説明する。
図16に実施の形態1にかかるパワーアンプユニットにおける第1の位相補正の制御特性を説明するグラフを示す。第1の位相補正処理では、位相制御値の値を大きくすると正極送信パルスINd_Pの遅延量が大きくなる。そして、正極送信パルスINd_Pの遅延量が増加するのに比例して正極送信パルスINd_Pと負極送信パルスINd_Nの位相差が小さくなるため、ローパスフィルタ62が出力する直流電圧信号LPFO_Nの電圧値は、位相制御値の上昇に伴い低下する。コンパレータ64が出力する計測結果信号は、直流電圧信号LPFO_Nが位相差参照電圧VREF_PHよりも高いときはロウレベルとなり、直流電圧信号LPFO_Nが位相差参照電圧VREF_PHよりも低いときはハイレベルとなる。位相差設定回路55は、位相制御値を2分探索法に基づき変更、或いは、スイープさせることで変更させることで変化さながら、コンパレータ64が出力する測定結果信号を観測し、正極送信パルスINd_Pと負極送信パルスINd_Nとの位相差が位相差参照電圧VREF_PHに対応する位相差となる位相制御値を決定する。
【0098】
ステップS8では、位相差設定回路55がスイッチSWPHP、SWPHBPをオン状態とし、それ以外のスイッチをオフ状態に切り替える。これにより、位相差設定回路55では、コンパレータ64の正転入力端子に位相差検出器61が出力する位相差検出信号のデューティー比に応じた電圧レベルを有する直流電圧信号LPFO_Pが入力され、反転入力端子には位相差参照電圧VREF_PHが入力される状態となる。ステップS9では、位相差設定回路55が位相制御信号PH_CONTにより示す位相制御値のうち位相差調整回路52nに与える負極側位相制御値を予め決められたシーケンスに従って変更しながら、位相差調整回路52p及び位相差調整回路52nを経由してパワーアンプ54に到達する正極送信パルスINd_Pと負極送信パルスINd_Nとの位相差の補正処理を行う。
【0099】
ここで、第2の位相補正処理における位相制御値の変更方法について説明する。
図17に実施の形態1にかかるパワーアンプユニットにおける第2の位相補正の制御特性を説明するグラフを示す。第2の位相補正処理では、位相制御値の値を大きくすると負極送信パルスINd_Pの遅延量が大きくなる。そして、負極送信パルスINd_Nの遅延量が増加するのに比例して正極送信パルスINd_Pと負極送信パルスINd_Nの位相差が大きくなるため、ローパスフィルタ62が出力する直流電圧信号LPFO_Pの電圧値は、位相制御値の上昇に伴い上昇する。コンパレータ64が出力する計測結果信号は、直流電圧信号LPFO_Pが位相差参照電圧VREF_PHよりも低いときはロウレベルとなり、直流電圧信号LPFO_Pが位相差参照電圧VREF_PHよりも高いときはハイレベルとなる。位相差設定回路55は、位相制御値を2分探索法に基づき変更、或いは、スイープさせることで変更させることで変化さながら、コンパレータ64が出力する測定結果信号を観測し、正極送信パルスINd_Pと負極送信パルスINd_Nとの位相差が位相差参照電圧VREF_PHに対応する位相差となる位相制御値を決定する。
【0100】
上記ステップS1からステップS9の処理を行うことにより、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43では、パワーアンプ54に与える正極送信パルスINd_P及び負極送信パルスINd_Nのデューティー比を50%未満の所定の値とすると共に、正極送信パルスINd_Pと負極送信パルスINd_Nの位相差を180°に近づける。
【0101】
上記説明より、実施の形態1にかかる無線装置1では、パワーアンプユニット43において、パワーアンプ54に与える2つの送信パルスのデューティー比と位相差を調節することができる。そして、パワーアンプ54に与える2つの送信パルスの間の位相差を180°に近づけることで、実施の形態1にかかる無線装置1では、パワーアンプ54で発生する二次高調波歪みを抑制することができる。
【0102】
また、実施の形態1にかかる無線装置1では、パワーアンプ54に与える2つの送信パルスのデューティー比を50%未満とすることで、送信信号RF_OUTの最大振幅を抑制して、低い耐圧のトランジスタによりパワーアンプ54を構成することが可能になる。
【0103】
また、実施の形態1にかかる無線装置1では、送信信号RF_OUTの二次歪みを抑制できるため、整合回路13を簡易な回路で構成することができるため、無線装置1に関する周辺部品の実装面積を削減することができる。さらに、実施の形態1にかかる無線装置1では、整合回路13等のフィルタ特性により減少する送信出力電力を抑制することができるため、パワーアンプユニット43をより低い電力で動作させることができる。つまり、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43を用いることで、無線装置1の消費電力を低減することができる。
【0104】
また、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43では、パワーアンプ54に入力される正極送信パルスINd_P及び負極送信パルスINd_Nを用いて、正極送信パルスINd_Pと負極送信パルスINd_Nとのデューティ比及び位相差を補正するデューティー制御値及び位相制御値を決定する。これにより、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43では、デューティー比調整回路51、位相差調整回路52、プリバッファ53の素子バラツキに起因して発生するデューティー比のズレ及び位相差のズレをデューティー制御値及び位相制御値により吸収することができる。つまり、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43では、デューティー比調整回路51、位相差調整回路52、プリバッファ53の素子バラツキの影響をデューティー制御値及び位相制御値により打ち消すことができる。
【0105】
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43の別の形態となるパワーアンプユニット43aについて説明する。実施の形態2における説明では、実施の形態1において説明した構成要素と同じ構成要素について実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0106】
図18に実施の形態2にかかる半導体装置のパワーアンプユニット43aのブロック図を示す。
図18に示すように、実施の形態2にかかるパワーアンプユニット43aは、実施の形態1にかかるパワーアンプユニット43からデューティー比調整回路51を削除して、位相差設定回路55及び送信パルス制御回路60を、位相差設定回路75及び送信パルス制御回路80に置き換えたものである。位相差設定回路75は、実施の形態1にかかる位相差設定回路55から、スイッチSWDTP、SWDTN、SWDTBを削除したものである。また、送信パルス制御回路80は、実施の形態1にかかる送信パルス制御回路60からデューティー制御信号DT_CONTの出力機能を削除したものである。
【0107】
つまり、実施の形態2にかかる無線装置では、パワーアンプユニット43aに与える正極送信パルスINa_P及び負極送信パルスINa_Nのデューティー比が同一の値に最適化処理がなされた状態であり、パワーアンプユニット43a内で送信パルスのデューティーの調整を行う必要がないものである。なお、実施の形態2にかかる無線装置においてもパワーアンプユニット43のパワーアンプ54に入力される2つの送信パルスのデューティー比は50%未満であるものとする。
【0108】
このパワーアンプユニット43aにおける歪み最適化処理について説明する。そこで、
図19に実施の形態2にかかるパワーアンプユニットにおける歪み最適化処理の流れを説明するフローチャートを示す。
図19に示すように、実施の形態2にかかるパワーアンプユニット43aでは、
図14で説明した実施の形態1にかかる歪み最適化処理のステップS2〜ステップS4のデューティー比補正処理を省略したものである。
【0109】
例えば、
図12及び
図13で説明したように、送信信号RF_OUTの二次歪みを抑制するだけであれば、デューティー比を50%とする必要はない。そのため、実施の形態2にかかる無線装置のように、パワーアンプユニット43a内でデューティー比の調整を行わなくても、位相差調整回路52を用いてパワーアンプ54に入力される2つの送信パルスの位相差を180°とすることで、送信信号RF_OUTの二次歪み特性は向上させることができる。
【0110】
このように、デューティー比補正処理及びデューティー比調整処理を省略することで、回路面積の削減及び処理時間の短縮を実現することができる。
【0111】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。