(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
<1.第1の実施の形態>
[構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る給電システム1の概略構成の一例を表したものである。給電システム1は、磁気結合の一例である磁界共振(Magnetic Resonance)方式を用いて、給電側装置10から受電側装置20に電力を非接触で伝送するシステムである。磁界共振方式とは、給電側共振器12と受電側共振器21を高Qにして電磁的に同じ周波数でLC共振させ、空間に蓄積される磁気エネルギーを通して電力伝送をする技術である。磁界共振とは、給電側共振器12に電流が流れることにより発生した磁場の振動が、同じ周波数で共振する受電側装置20の共振回路(受電側共振器21)に伝わる現象である。磁界共振では、利用する周波数の波長に比べて、十分に小さな距離に受電側共振器21がある時に、磁場の振動が給電側共振器12から受電側共振器21に伝わり、受電側共振器21に電流が流れる。
【0018】
給電システム1は、給電側装置10および受電側装置20を備えている。受電側装置20には、負荷24が接続される。なお、
図1には、受電側装置20に負荷24が接続されている様子が例示されている。負荷24は、例えば、バッテリまたはモータなどである。
【0019】
(給電側装置10)
給電側装置10は、例えば、電源部11、給電側共振器12、制御部13および通信部14を有している。電源部11は、所定の周波数(例えば、数MHz〜数百MHzの範囲内の周波数)の高周波電力を発生し、給電側共振器12に出力する。電源部11は、例えば、AC電源部11a、AC−DCコンバータ11b、DC−DCコンバータ11cおよびDC−ACインバータ11dを有している。AC電源部11aは、高周波信号(電圧信号)を生成する。AC−DCコンバータ11bは、AC電源部11aで生成された高周波信号を直流信号に変換する。DC−DCコンバータ11cは、AC−DCコンバータ11bで生成された直流信号の電圧値を所定の電圧値に変える。DC−ACインバータ11dは、DC−DCコンバータ11cで生成された直流信号を高周波信号(電圧信号)に変換する。DC−ACインバータ11dは、DC−DCコンバータ11cの出力側に接続されている。DC−ACインバータ11dは、例えば、PWM制御インバータであり、複数個のスイッチング素子によって構成されたブリッジ回路と、ブリッジ回路に制御信号を入力するドライブ回路とを有している。
【0020】
給電側共振器12は、電源部11から出力される高周波信号(電圧信号)を受電側装置の受電側共振器21にワイヤレスで伝送する。給電側共振器12は、例えば、複数ターンのソレノイドコイルからなるインダクタと、そのインダクタに直列に接続されたキャパシタとの直列共振回路によって構成されている。給電側共振器12は、例えば、直列共振回路の直列共振周波数fo(=1/[2π・√(L・C)])(L:インダクタの自己インダクタンス、C:キャパシタのキャパシタンス)が電源部11から出力される高周波電力の周波数fg(以下、「電源周波数fg」という。)[MHz]に調整されている。
【0021】
制御部13は、ROM、RAM、CPUなどを備えるマイクロコンピュータやFPGA(field-programmable gate array)などで構成される。制御部24は、電源部11に対してDC−ACインバータ11dの出力電圧を制御する出力制御信号を出力し、電源部11から出力される高周波信号(高周波電力)を制御する。
【0022】
図2は、制御部13の機能ブロックの一例を表したものである。制御部13は、例えば、減算器13aおよびPWM信号生成部13bを有している。減算器13aは、PWM信号生成部13bに偏差ΔI(=Iload*−Iload)を出力する。PWM信号生成部13bは、DC−ACインバータ11dを制御するためのPWM信号を生成し、DC−ACインバータ11dに出力する。Iload*は、目標電流値である。Iloadは、受電側装置20で検出された電流値である。
【0023】
PWM信号生成部13bは、例えば、負荷24の電圧値Vloadおよび電流値Iloadに関する負荷情報に基づいて、電源部11から給電側共振器12に出力する高周波信号を制御する。PWM信号生成部13bは、負荷24の電圧値Vloadと、目標電流値Iload*と負荷24の電流値Iloadとの偏差ΔIとに基づいて、PWM信号を生成し、DC−ACインバータ11dに出力することにより、DC−ACインバータ11d(DC−ACインバータ11dで生成される高周波信号)を制御する。
【0024】
PWM信号生成部13bは、負荷24の電圧値Vloadに応じたゲインKを導出し、導出したゲインKと、偏差ΔIとに基づいてPWM信号を生成する。ここで、PWM信号生成部13bが、PI制御(比例積分制御)によりPWM信号を生成する場合には、ゲインKは、比例要素のフィードバックゲインKpと、積分要素のフィードバックゲインKiとにより構成される。
【0025】
なお、PWM信号生成部13bが、PID制御(比例積分微分制御)によりPWM信号を生成する場合には、ゲインKは、比例要素のフィードバックゲインKpと、積分要素のフィードバックゲインKiと、微分要素のフィードバックゲインKdとにより構成される。また、PWM信号生成部13bが、I制御(積分制御)によりPWM信号を生成する場合には、ゲインKは、積分要素のフィードバックゲインKiにより構成される。また、PWM信号生成部13bが、P制御(比例制御)によりPWM信号を生成する場合には、ゲインKは、比例要素のフィードバックゲインKpにより構成される。
【0026】
PWM信号生成部13bは、例えば、負荷24の電圧値Vloadと、ゲインとが関連付けられたゲインテーブルもしくはゲイン関数を有しており、ゲインテーブルもしくはゲイン関数を用いて、ゲインを導出する。PWM信号生成部13bが、PI制御(比例積分制御)によりPWM信号を生成するとする。この場合、PWM信号生成部13bは、例えば、負荷24の電圧値Vloadと、ゲイン(Kp,Ki)とが関連付けられたゲインテーブル13A(
図3参照)もしくはゲイン関数を有しており、ゲインテーブル13Aもしくはゲイン関数を用いて、ゲイン(Kp,Ki)を導出する。
【0027】
図3は、ゲインテーブル13Aの一例を表したものである。
図3に記載のゲインテーブル13Aでは、負荷24の電圧値Vloadの範囲として6区画が用意されており、区画ごとにゲイン(Kp,Ki)が規定されている。従って、例えば、負荷24の電圧値VloadがV3とV4との間の値となっていた場合、PWM信号生成部13bは、ゲインテーブル13Aから、ゲイン(Kp,Ki)として、Kp(3),Ki(3)を抽出する。なお、ゲインテーブル13Aの区画の数は、6に限定されるものではない。
【0028】
通信部14は、例えば、受電側装置20の通信部25(後述)とワイヤレスで通信を行う。通信部14および通信部25は、例えば、ブルートゥース(登録商標)等の近接無線通信などを用いて互いに通信を行う。なお、通信部14および通信部25は、例えば、有線で通信を行ってもよい。通信部14は、例えば、検出器での検出結果(電圧値Vloadおよび電流値Iload)を給電側装置10からワイヤレスで受信する。
【0029】
(受電側装置20)
次に、受電側装置20について説明する。受電側装置20は、例えば、受電側共振器21、整流平滑回路22、電圧電流検出器23および通信部25を有している。受電側装置20には、負荷24が接続されている。
【0030】
受電側共振器21は、給電側装置10の給電側共振器12との間で磁界結合をして当該給電側共振器12から高周波電力を受電する。受電側共振器21は、給電側共振器12と同一の構成を有し、複数ターンのソレノイドコイルからなるインダクタと、そのインダクタに直列に接続されたキャパシタとの直列共振回路によって構成されている。受電側共振器21も、直列共振回路の直列共振周波数fo(=1/[2π・√(L・C)])(L:インダクタの自己インダクタンス、C:キャパシタのキャパシタンス)が電源周波数fg[MHz]に調整されている。
【0031】
図4は、整流平滑回路22の回路構成の一例を表したものである。整流平滑回路22は、受電側共振器21から出力される高周波信号を整流する整流回路22aと、整流回路22aで整流された信号を平滑化する平滑回路22bとを有している。整流回路22aは、例えば、4個の整流素子をブリッジ接続したブリッジ回路で構成されている。4個の整流素子にはショットキーバリアーダイオードが用いられる。なお、整流素子には素子内部に並列にキャパシタが形成され、HF帯では、このキャパシタを通して進相の高周波電流が流れるので、この進相の高周波電流をキャンセルするために整流回路22aの入力端にインダクタが並列に接続されていることが好ましい。
【0032】
電圧電流検出器23は、直流電圧計と直流電流計を含んで構成されている。直流電圧計は、整流平滑回路22から負荷24に印加される直流電圧(電圧値Vload)を計測する。直流電流計は、整流平滑回路22から負荷24に供給される直流電流(電流値Iload)を計測する。電圧電流検出器23は、検出した電圧値Vloadおよび電流値Iloadを、通信部25,14を介して、給電側装置10内の制御部13に出力する。通信部25は、例えば、検出器での検出結果(電圧値Vloadおよび電流値Iload)を給電側装置10にワイヤレスで送信する。
【0033】
次に、給電システム1におけるフィードバック制御について説明する。例として、負荷24としてバッテリが選択され、制御方式がPI制御となっているものとする。受電側装置20に接続された負荷24をキャパシタと捉えると、標準的な構成は
図4のようになる。ここで、
図4中のRは、受電側装置20の抵抗成分を集約した仮想抵抗である。
【0034】
負荷24の電圧値をVloadとし、仮想抵抗の抵抗値をRとし、仮想抵抗や負荷24を流れる電流値をIloadとする。このとき、Vloadは、以下の式(1)で表される。ここで、Voは、整流平滑回路22の出力電圧である。τは、RCで表される。式(1)から、時間の経過とともに負荷24(バッテリ)の電圧は増加する事が分かる。
Vload(t)=Vo×[1−exp(−t/τ)]…式(1)
【0035】
一方、負荷24(バッテリ)の電圧および電荷の関係式から、以下の式(2)が導かれる。
Q=C×Vload(t)…式(2)
【0036】
従って、
i(t)=dQ/dt=CdVload(t)/dt
=CVo/(RC)×exp(−t/τ)
=Vo/R×exp(−t/τ)…式(3)
【0037】
以上より、直流における負荷24(バッテリ)のインピーダンスをZ(t)と置くと、
Z(t)=Vload(t)/i(t)
=R×[exp(t/τ)−1] …式(4)
【0038】
式(4)は、t=0のとき、Z(0)=0、t→∞のとき、Z(0)→∞となり、定性的な解析結果と一致する。
【0039】
以上から、時間の経過とともにバッテリ電圧(Vload(t))が上昇し、同時にインピーダンス(Z(t))が増大する事が分かる。換言すると、負荷24(バッテリ)の電圧(Vload(t))を参照値とすることでインピーダンス情報を入手することができる。
【0040】
一方、離散的書式において、一般的なPI制御式を書くと、以下の式(5),式(6)のようになる。また、離散的書式において、一般的なPID制御式を書くと、以下の式(5),式(7)のようになる。ここで、u(k)およびu(k−1)は制御信号、e(k)は目標値との偏差を示す。また、KpはP制御におけるゲイン値、KiはI制御におけるゲイン値、KdはD制御におけるゲイン値である。
u(k)=u(k−1)+Δu(k)…式(5)
Δu(k)=Kp×e(k)+Ki×e(k)…式(6)
Δu(k)=Kp×e(k)+Ki×e(k)
+Kd×(e(k)−e(k−1))…式(7)
【0041】
以上の方法により、ワイヤレス給電方式においてバッテリ電圧(Vload(t))をモニタすることでインピーダンスが推定でき、その推定結果に応じた適切な電流波形生成を行うようなゲイン値を設定することができる。なお、これは電流フィードバックおよび電圧フィードバックどちらでも同じ効果が得られる。
【0042】
[給電手順]
次に、給電システム1における給電手順について説明する。
図5は、給電システム1における給電手順の一例を表したものである。以下では、受電側装置20が台車や自動車などの移動体に載せられて、移動体とともに移動するものとする。一方の給電側装置10は、受電側装置20が載せられた移動体が通る通路に隣接して配置されているものとする。
【0043】
まず、受電側装置20が載せられた移動体が停止する。すると、移動体から停止信号が受電側装置20に入力される。受電側装置20は、停止信号の入力を受け付けると、受け付けた停止信号を給電側装置10に送信する(ステップS101)。給電側装置10の制御部13は、停止信号を受電側装置20から受信すると(ステップS102)、高周波信号の出力開始を電源部11に指示する。すると、電源部11から給電側共振器12への高周波信号の出力が開始される(ステップS103)。給電側共振器12に高周波信号が流れると、給電側共振器12から磁場が発生し、発生した磁場の振動が、同じ周波数で共振する受電側装置20の共振回路(受電側共振器21)に伝わる。その結果、受電側共振器21に高周波信号が発生する。受電側共振器21で発生した高周波信号は、整流平滑回路22によって整流され、平滑化される。その結果、直流電圧が負荷24にかかるとともに、直流電流が負荷24に流れる。
【0044】
このとき、電流電圧検出器23が、負荷24の電圧値Vloadおよび電流値Iloadを検出し(ステップS104)、給電側装置10に送信する(ステップS105)。給電側装置10(制御部13)は、負荷24の電圧値Vloadおよび電流値Iloadを受信すると(ステップS106)、受信した負荷24の電流値Iloadに基づいて偏差ΔIを生成するとともに、受信した負荷24の電圧値Vloadに基づいてゲインK(例えばKp、Ki)を生成する(ステップS107)。続いて、給電側装置10(制御部13)は、生成した偏差ΔIおよびゲインK(例えばKp、Ki)に基づいてPWM信号を生成する(ステップS108)。給電側装置10(制御部13)は、生成したPWM信号を、DC−ACインバータ11dに出力することにより、DC−ACインバータ11(つまり、給電側共振器12に出力する高周波信号)を制御する(ステップS209)。つまり、給電側装置10(制御部13)は、電源部11に対して高周波信号の出力開始の指示をした後に、受電側装置20から受信した負荷24の電圧値Vloadおよび電流値Iloadに基づいて高周波信号を制御する。給電側装置10(制御部13)は、電源部11に対して、高周波信号の出力開始直後から、通信部14で受信した負荷24の電圧値Vloadおよび電流値Iloadに基づいた高周波信号の制御を行う。
【0045】
給電システム1は、受電側装置20が充電完了信号を検知するまでの間、ステップS104〜ステップS109を繰り返し実施する。受電側装置20は、充電完了信号を検知すると、充電完了信号を給電側装置10に送信する(ステップS110)。給電側装置10(制御部13)は、充電完了信号を受電側装置20から受信すると(ステップS111)、電源11に対して高周波信号の出力の停止を指示する。すると、電源部11から給電側共振器12への高周波信号の出力が停止される(ステップS112)。
【0046】
[効果]
次に、給電システム1における効果について説明する。
【0047】
モータに対して始動時に大電流が供給される時、または、バッテリへの充電が開始される時に、モータまたはバッテリには突入電流が流入する(例えば、
図6参照)。この突入電流の発生によってモータやバッテリが加熱され、寿命が劣化することが知られている。また、この突入電流の発生によって、モータやバッテリの周辺の回路にも瞬間的に大電流が流れるので、機器保護の観点から過剰な設計となる。
【0048】
これらの問題を回避するために、突入電流を減少させる方策が従来から提案されている。例えば、上記特許文献1に記載の発明では、突入電流発生時だけ抵抗が回路に接続され、それ以外の時には抵抗が回路から切り離される。また、例えば、上記特許文献2に記載の発明では、突入電流を退避させるためのインダクタが設けられている。インダクタは、高周波成分に対しては高抵抗である一方で、直流成分に対しては理想的には無抵抗である。そのため、突入電流の発生していない時には損失が非常に少ないというメリットがある。しかし、上記特許文献1,2に記載の発明では、電気回路部品の挿入を伴うので、機器の大型化やコストアップを招くという問題があった。
【0049】
一方、本実施の形態では、負荷24の電圧値Vloadおよび電流値Iloadのうち少なくとも電圧値Vloadに関する負荷情報に基づいて電源部11から給電側共振器12に出力する高周波信号が制御される。これにより、インピーダンスの大小に応じた適切な電圧Voが得られる。すなわち、突入電流が生じるような低インピーダンス条件では、Voを適切に低くすることができる。その結果、
図7に示したように、突入電流を低減することができる。また、目標値にも速やかに到達することができる。ここで、受電側装置20に電圧電流検出器23が別の目的で設けられている場合、給電側共振器12に出力する高周波信号の制御のために新たに電気回路部品を設ける必要がない。従って、このような場合には、機器の大型化やコストアップを抑えつつ、突入電流を低減することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、負荷24の電圧値Vloadと、目標電流値と電流値Iloadとの偏差ΔIとに基づいてPWM信号が生成され、DC−ACインバータ11dに出力されることにより、高周波信号が制御される。これにより、インピーダンスの大小に応じた適切な電圧Voが得られる。すなわち、突入電流が生じるような低インピーダンス条件では、Voを適切に低くすることができる。その結果、突入電流を低減することができる。
【0051】
また、本実施の形態では、負荷24の電圧値Vloadに応じたゲインKが導出され、導出されゲインKと、偏差ΔIとに基づいてPWM信号が生成される。これにより、インピーダンスの大小に応じた適切な電圧Voが得られる。すなわち、突入電流が生じるような低インピーダンス条件では、Voを適切に低くすることができる。その結果、突入電流を低減することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、負荷24の電圧値Vloadと、ゲインKとが関連付けられたゲインテーブルもしくはゲイン関数が設けられており、ゲインテーブルもしくはゲイン関数を用いて、ゲインKが導出される。これにより、短い演算時間で、インピーダンスの大小に応じた適切な電圧Voが得られる。すなわち、突入電流が生じるような低インピーダンス条件では、Voを適切に低くすることができる。その結果、突入電流を低減することができる。
【0053】
また、本実施の形態では、電源部11に対して高周波信号の出力開始の指示がなされた後に、受電側装置20から受信した負荷情報(負荷24の電圧値Vloadおよび電流値Iload)に基づいて高周波信号が制御される。これにより、突入電流の生じ得るタイミングで、インピーダンスの大小に応じた適切な電圧Voが得られる。すなわち、突入電流が生じるような低インピーダンス条件では、Voを適切に低くすることができる。その結果、突入電流を低減することができる。
【0054】
<2.第2の実施の形態>
[構成]
次に、本発明の第2の実施形態に係る給電システム2について説明する。給電システム2は、給電システム1において、電圧電流検出器23の代わりに電圧検出器41を備えており、さらに、制御部13の代わりに制御部31を備えている。
【0055】
電圧検出器41は、整流平滑回路22から負荷24に印加される直流電圧(電圧値Vload)を計測する直流電圧計を含んで構成されている。電圧検出器41は、検出した電圧値Vloadを、通信部25,14を介して、給電側装置10内の制御部13に出力する。
【0056】
制御部31は、ROM、RAM、CPUなどを備えるマイクロコンピュータやFPGAなどで構成される。制御部24は、電源部11に対してDC−DCコンバータ11cの出力電圧を制御する出力制御信号を出力し、電源部11から出力される高周波信号(高周波電力)を制御する。DC−DCコンバータ11cは、例えば、PWM制御コンバータであり、複数個のスイッチング素子によって構成されたブリッジ回路と、ブリッジ回路に制御信号を入力するドライブ回路とを有している。
【0057】
図9は、制御部31の機能ブロックの一例を表したものである。制御部31は、例えば、PWM信号生成部31aを有している。PWM信号生成部31aは、DC−DCコンバータ11cを制御するためのPWM信号を生成し、DC−DCコンバータ11cに出力する。
【0058】
制御部31は、例えば、負荷24の電圧値Vloadに基づいてPWM信号を生成し、DC−DCコンバータ11cに出力することにより、高周波信号を制御する。制御部31は、DC−DCコンバータの出力電圧が負荷24の電圧値Vloadの変化に追従するようにPWM信号を生成する。
【0059】
次に、給電システム2におけるフィードバック制御について説明する。例として、負荷24としてバッテリが選択され、制御方式がPI制御となっているものとする。受電側装置20に接続された負荷24をキャパシタと捉えると、標準的な構成は
図4のようになる。
【0060】
負荷24の電圧値をVloadとし、仮想抵抗の抵抗値をRとし、仮想抵抗や負荷24を流れる電流値をIloadとする。このとき、Vloadは、以下の式(1)で表される。上述の式(1)から、時間の経過とともに負荷24(バッテリ)の電圧は増加する事が分かる。
Vload(t)=Vo×[1−exp(−t/τ)]…式(1)
【0061】
一方、負荷24(バッテリ)の電圧および電荷の関係式から、以下の式(2)が導かれる。
Q=C×Vload(t)…式(2)
【0062】
従って、
i(t)=dQ/dt=CdVload(t)/dt
=CVo/(RC)×exp(−t/τ)
=Vo/R×exp(−t/τ)…式(3)
【0063】
以上より、直流における負荷24(バッテリ)のインピーダンスをZ(t)と置くと、
Z(t)=Vload(t)/i(t)
=R×[exp(t/τ)−1] …式(4)
【0064】
式(4)は、t=0のとき、Z(0)=0、t→∞のとき、Z(0)→∞となり、定性的な解析結果と一致する。
【0065】
以上から、時間の経過とともにバッテリ電圧(Vload(t))が上昇し、同時にインピーダンス(Z(t))が増大する事が分かる。換言すると、負荷24(バッテリ)の電圧(Vload(t))を参照値とすることでインピーダンス情報を入手することができる。
【0066】
また、式(3)より、
Vo(t)=R×exp(−t/τ)=Vload(t)/Z(t)…式(8)
または、式(4)を含めて、
i(t)=Vo(t)/R×exp(−t/τ)
=Vload(t)/Z(t)…式(9)
と変形できる。従って、上の式より、Vo(t)を常に一定とすれば、負荷24(バッテリ)には定電圧で電流が流れることになる。また、Vo(t)/R×exp(−t/τ)が一定となるように、Vo(t)を変化させれば、負荷24(バッテリ)には定電流で電流を流すことができる。そして、この電流は、Vload(t)/Z(t)の比で表されることから、換言すると単純にVload(t)の変化に追従して、Vo(t)を変化させれば、容易に一定電流制御ができることを表している。この方式では、フィードバック制御を用いることで、Rが未知であっても、Vload(t)の変化に追従して、Vo(t)を変化させることができる。従って、電流センサ省略等のメリットがある。
【0067】
以上の方法により、ワイヤレス給電方式においてバッテリ電圧(Vload(t))をモニタすることでインピーダンスが推定できる。そして、その推定結果を用い、上述した式に基づいてDC−DCコンバータ11cの出力電圧を適切に制御することで、定電圧制御や定電流制御が可能になる。一般的に、DC−DCコンバータ11cの出力電圧制御は高速であるので、突入電流を抑制するような細やかな制御が実現可能である。
【0068】
[給電手順]
次に、給電システム2における給電手順について説明する。
図10は、給電システム2における給電手順の一例を表したものである。以下では、受電側装置20が台車や自動車などの移動体に載せられて、移動体とともに移動するものとする。一方の給電側装置10は、受電側装置20が載せられた移動体が通る通路に隣接して配置されているものとする。
【0069】
まず、受電側装置20が載せられた移動体が停止する。すると、移動体から停止信号が受電側装置20に入力される。受電側装置20は、停止信号の入力を受け付けると、受け付けた停止信号を給電側装置10に送信する(ステップS201)。給電側装置10の制御部13は、停止信号を受電側装置20から受信すると(ステップS202)、高周波信号の出力開始を電源部11に指示する。すると、電源部11から給電側共振器12への高周波信号の出力が開始される(ステップS103)。給電側共振器12に高周波信号が流れると、給電側共振器12から磁場が発生し、発生した磁場の振動が、同じ周波数で共振する受電側装置20の共振回路(受電側共振器21)に伝わる。その結果、受電側共振器21に高周波信号が発生する。受電側共振器21で発生した高周波信号は、整流平滑回路22によって整流され、平滑化される。その結果、直流電圧が負荷24にかかるとともに、直流電流が負荷24に流れる。
【0070】
このとき、電流電圧検出器23が、負荷24の電圧値Vloadを検出し(ステップS204)、給電側装置10に送信する(ステップS205)。給電側装置10(制御部13)は、負荷24の電圧値Vloadを受信すると(ステップS206)、受信した負荷24の電圧値Vloadに基づいてPWM信号を生成する(ステップS207)。給電側装置10(制御部31)は、DC−DCコンバータ11cの出力電圧が負荷24の電圧値Vloadの変化に追従するようにPWM信号を生成する。給電側装置10(制御部31)は、生成したPWM信号を、DC−DCコンバータ11cに出力することにより、DC−DCコンバータ11c(つまり、給電側共振器12に出力する高周波信号)を制御する(ステップS208)。つまり、給電側装置10(制御部31)は、電源部11に対して高周波信号の出力開始の指示をした後に、受電側装置20から受信した負荷24の電圧値Vloadに基づいて高周波信号を制御する。給電側装置10(制御部13)は、電源部11に対して、高周波信号の出力開始直後から、通信部14で受信した負荷24の電圧値Vloadに基づいた高周波信号の制御を行う。
【0071】
給電システム2は、受電側装置20が充電完了信号を検知するまでの間、ステップS204〜ステップS208を繰り返し実施する。受電側装置20は、充電完了信号を検知すると、充電完了信号を給電側装置10に送信する(ステップS209)。給電側装置10(制御部31)は、充電完了信号を受電側装置20から受信すると(ステップS210)、電源11に対して高周波信号の出力の停止を指示する。すると、電源部11から給電側共振器12への高周波信号の出力が停止される(ステップS211)。
【0072】
[効果]
次に、給電システム2における効果について説明する。
【0073】
本実施の形態では、負荷24の電圧値Vloadに関する負荷情報に基づいて電源部11から給電側共振器12に出力する高周波信号が制御される。これにより、インピーダンスの大小に応じた適切な電圧Voが得られる。すなわち、突入電流が生じるような低インピーダンス条件では、Voを適切に低くすることができる。その結果、突入電流を低減することができる。ここで、本実施の形態では、受電側装置20に電流検出器が必要無い。そのため、機器の大型化やコストアップを抑えつつ、突入電流を低減することができる。
【0074】
また、本実施の形態では、負荷24の電圧値Vloadに基づいてPWM信号が生成され、DC−DCコンバータ11cに出力されることにより、高周波信号が制御される。これにより、インピーダンスの大小に応じた適切な電圧Voが得られる。すなわち、突入電流が生じるような低インピーダンス条件では、Voを適切に低くすることができる。その結果、突入電流を低減することができる。
【0075】
また、本実施の形態では、DC−DCコンバータ11cの出力電圧が負荷24の電圧値Vloadの変化に追従するようにPWM信号が生成される。これにより、インピーダンスの大小に応じた適切な電圧Voが得られる。すなわち、突入電流が生じるような低インピーダンス条件では、Voを適切に低くすることができる。その結果、突入電流を低減することができる。
【0076】
また、本実施の形態では、電源部11に対して高周波信号の出力開始の指示がなされた後に、受電側装置20から受信した負荷情報(負荷24の電圧値Vload)に基づいて高周波信号が制御される。これにより、突入電流の生じ得るタイミングで、インピーダンスの大小に応じた適切な電圧Voが得られる。すなわち、突入電流が生じるような低インピーダンス条件では、Voを適切に低くすることができる。その結果、突入電流を低減することができる。
【0077】
<3.第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係る給電システム3について説明する。
図11は、給電システム1の概略構成の一例を表したものである。給電システム3は、給電システム1において、電圧電流検出器23の代わりに電流検出器61を備えており、さらに、制御部13の代わりに制御部52を備え、さらに、距離計測部51を備えている。
【0078】
電流検出器61は、整流平滑回路22から負荷24に供給される直流電流(電流値Iload)を計測する直流電流計を含んで構成されている。電流検出器61は、検出した電流値Iloadを、通信部25,14を介して、給電側装置10内の制御部13に出力する。
【0079】
距離計測部51は、給電側装置10と受電側装置20との間の、磁気結合に関係する距離を計測する。距離計測部51は、例えば、ステレオカメラ、TOF方式の距離センサなどによって構成されている。距離計測部51は、計測により得られた距離Dを制御部52に出力する。
【0080】
制御部52は、ROM、RAM、CPUなどを備えるマイクロコンピュータやFPGAなどで構成される。制御部52は、電源部11に対してDC−DCコンバータ11cの出力電圧を制御する出力制御信号を出力し、電源部11から出力される高周波信号(高周波電力)を制御する。
【0081】
図12は、制御部52の機能ブロックの一例を表したものである。制御部52は、例えば、減算器13aおよびPWM信号生成部13bを有している。減算器13aは、PWM信号生成部13bに偏差ΔI(=Iload*−Iload)を出力する。PWM信号生成部13bは、DC−ACインバータ11dを制御するためのPWM信号を生成し、DC−ACインバータ11dに出力する。Iload*は、目標電流値である。Iloadは、受電側装置20で検出された電流値である。
【0082】
PWM信号生成部13bは、例えば、距離Dおよび電流値Iloadに関する情報に基づいて、電源部11から給電側共振器12に出力する高周波信号を制御する。PWM信号生成部13bは、距離Dと、目標電流値Iload*と負荷24の電流値Iloadとの偏差ΔIとに基づいて、PWM信号を生成し、DC−ACインバータ11dに出力することにより、DC−ACインバータ11d(DC−ACインバータ11dで生成される高周波信号)を制御する。
【0083】
PWM信号生成部13bは、距離Dに応じたゲインKを導出し、導出したゲインKと、偏差ΔIとに基づいてPWM信号を生成する。ここで、PWM信号生成部13bが、PI制御(比例積分制御)によりPWM信号を生成する場合には、ゲインKは、比例要素のフィードバックゲインKpと、積分要素のフィードバックゲインKiとにより構成される。
【0084】
なお、PWM信号生成部13bが、PID制御(比例積分微分制御)によりPWM信号を生成する場合には、ゲインKは、比例要素のフィードバックゲインKpと、積分要素のフィードバックゲインKiと、微分要素のフィードバックゲインKdとにより構成される。また、PWM信号生成部13bが、I制御(積分制御)によりPWM信号を生成する場合には、ゲインKは、積分要素のフィードバックゲインKiにより構成される。また、PWM信号生成部13bが、P制御(比例制御)によりPWM信号を生成する場合には、ゲインKは、比例要素のフィードバックゲインKpにより構成される。
【0085】
PWM信号生成部13bは、例えば、距離Dと、ゲインとが関連付けられたゲインテーブルもしくはゲイン関数を有しており、ゲインテーブルもしくはゲイン関数を用いて、ゲインを導出する。PWM信号生成部13bが、PI制御(比例積分制御)によりPWM信号を生成するとする。この場合、PWM信号生成部13bは、例えば、距離Dと、ゲイン(Kp,Ki)とが関連付けられたゲインテーブル52A(
図13参照)もしくはゲイン関数を有しており、ゲインテーブル52Aもしくはゲイン関数を用いて、ゲイン(Kp,Ki)を導出する。
【0086】
図13は、ゲインテーブル52Aの一例を表したものである。
図13に記載のゲインテーブル52Aでは、距離Dの範囲として6区画が用意されており、区画ごとにゲイン(Kp,Ki)が規定されている。従って、例えば、距離DがD3とD4との間の値となっていた場合、PWM信号生成部13bは、ゲインテーブル52Aから、ゲイン(Kp,Ki)として、Kp(3),Ki(3)を抽出する。なお、ゲインテーブル52Aの区画の数は、6に限定されるものではない。
【0087】
通信部14は、例えば、受電側装置20の通信部25とワイヤレスで通信を行う。通信部14および通信部25は、例えば、ブルートゥース(登録商標)等の近接無線通信などを用いて互いに通信を行う。通信部14は、例えば、検出器での検出結果(距離Dおよび電流値Iload)を給電側装置10からワイヤレスで受信する。
【0088】
なお、給電システム3における給電手順は、
図5において、電圧値Vloadを距離Dと読み替えたものに等しい。給電システム3の効果についても、給電システム1と同様である。
【0089】
<4.各実施の形態に共通の変形例>
上記各実施の形態において、電源部11が、例えば、
図14に示したように、AC電源部11aおよびAC−DCコンバータ11bの代わりに、DC電源部11eを有していてもよい。DC電源部11eは、直流信号を出力する。また、上記各実施の形態において、電源部11が、例えば、
図15に示したように、AC電源部11aおよびAC−DCコンバータ11bの代わりに、DC電源部11eを有し、さらに、DC−DCコンバータ11cを有していなくてもよい。また、上記各実施の形態およびその変形例において、給電システム1は、磁気結合の一例である電磁誘導方式を用いて、給電側装置10から受電側装置20に電力を非接触で伝送するシステムであってもよい。