(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る床構造を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る床スラブに生じる第1固有モードを示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る床スラブに生じる第2固有モードを示す平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る第1固有モードの腹領域と、第2固有モードの腹領域との重複領域を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る第1固有モードの第1腹領域の中央部におけるアクセレランスを示す線図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る第2固有モードの第2腹領域の中央部におけるアクセレランスを示す線図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るTMDを示す平面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るTMDの振動系モデルを示す正面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る床構造を評価するためのケース1〜5において、床スラブ上に設置するTMDの配置を示す表である。
【
図11】本発明の実施形態に係る第1固有モードの第1腹領域の中央部におけるアクセレランスを示す線図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る第2固有モードの第2腹領域の中央部におけるアクセレランスを示す線図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る第1固有モードの第1腹領域の中央部におけるアクセレランスを示す線図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る第2固有モードの第2腹領域の中央部におけるアクセレランスを示す線図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る床スラブに生じる固有モードを示す平面図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る第1固有モードの腹領域と、固有モードの腹領域との重複領域を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る床構造について説明する。
【0016】
図1の平面図に示すように、本実施形態の床構造10は、集合住宅としての建物12を構成する鉄筋コンクリート製の床スラブ14と、TMD(Tuned Mass Damper)16とを有して構成されている。
【0017】
床スラブ14は、平面形状が略長方形となっており、床スラブ14の四隅に配置された鉄筋コンクリート製の柱18により支持されている。
【0018】
TMD16は、集合住宅を構成する床スラブの下階に発生する重量床衝撃音の一般的な決定帯域とされている63Hz帯域(45Hz以上90Hz以下)で床スラブ14に生じる固有モードである、第1固有モード20の第1腹領域22(
図2の平面図を参照のこと)と、第2固有モード24の第2腹領域26(
図3の平面図を参照のこと)との重なる重複領域28(
図4の平面図を参照のこと)に配置されるように床スラブ14上に設置されている。本例では、
図4の設置点P
3の位置に1つのTMD16が設置されている。
【0019】
パラメトリックスタディでは、
図1に示すように、床スラブ14の短辺方向Yの長さを6.5m、厚さを250mmに固定した状態で、床スラブ14の長辺方向Xの長さを、板状集合住宅における一般的な長さである10.5m〜13.5mの範囲で推移させた場合、床スラブ14の長辺方向Xに対して3つに割れる固有モードの振動数は、45Hz〜60Hzとなり、床スラブ14の長辺方向Xに対して4つに割れる固有モードの振動数は、59Hz〜77Hzとなる。
【0020】
図2及び
図3の例では、床スラブ14に主に生じる2つの固有モードの腹領域の内、振幅が最も大きい腹領域を第2腹領域26とするとともにこの第2腹領域26を有する一方の固有モードを第2固有モード24としている。そして、他方の固有モードを第1固有モード20とするとともに、第2腹領域26の最も近くに位置する第1固有モード20の腹領域を第1腹領域22としている。このとき、第1固有モード20の振動数f
1は50Hz、第2固有モード24の振動数f
2は68Hzとなっている。すなわち、第1固有モード20及び第2固有モード24の振動数は、45Hz以上90Hz以下となっている。
【0021】
図2及び
図3の例は、TMDを設置していない状態の1スパンの床スラブ14を解析モデルにして行われた解析結果を示したものである。解析モデルでは、床スラブ14の短辺方向Yの長さを6.5m、長辺方向Xの長さを11.5m、厚さを250mmとしている。
【0022】
図2及び
図3の例に示されているように、63Hz帯域において、床スラブ14には、長辺方向Xに対して3つに割れる第1固有モード20と、長辺方向Xに対して4つに割れる第2固有モード24とが生じる。そして、第1固有モード20と第2固有モード24とは、振幅が大きくなる腹領域(第1腹領域22、第2腹領域26)の位置が近接している。
【0023】
図5のグラフの値30は、第1固有モード20の第1腹領域22の中央部P
1(
図2を参照のこと)をハンマー等で打撃したときの、第1腹領域22の中央部P
1に発生する振動の振動数(横軸)に対するアクセレランス(縦軸)を示したものである。
図6のグラフの値32は、第2固有モード24の第2腹領域26の中央部P
2(
図3を参照のこと)をハンマー等で打撃したときの、中央部P
2に発生する振動の振動数(横軸)に対するアクセレランス(縦軸)を示したものである。アクセレランスは、中央部P
1、P
2をハンマー等で打撃したときに中央部P
1、P
2に発生する振動の加速度を、この打撃の打撃力で割った値である。
【0024】
図5のグラフの値30に示すように、
図2に示す第1固有モード20の第1腹領域22の中央部P
1におけるアクセレランスは、50Hz(f
1)でピーク値となっている。さらに、
図6のグラフの値32に示すように、
図3に示す第2固有モード24の第2腹領域26の中央部P
2におけるアクセレランスは、68Hz(f
2)でピーク値となっている。
【0025】
TMD16は、
図7の平面図、及び
図7のA−A断面図である
図8に示すように、板状の粘弾性ゴム部材34と、粘弾性ゴム部材34上に設けられた質量体36と、質量体36の上面に形成された溝部38の底面上に設けられた板状の粘弾性ゴム部材40と、粘弾性ゴム部材40上に設けられた質量体42とを有して構成されている。すなわち、TMD16は、2質点系のTMDを構成している。TMD16は、床スラブ14上に構築される二重床の懐に納めるために、質量体36に溝部38を設けるとともに溝部38内に粘弾性ゴム部材40及び質量体42を収容して、2質点系のTMDの高さを抑える構成としている。
【0026】
TMD16をモデル化した
図9に示すように、粘弾性ゴム部材40のバネ定数をk
1、減衰係数をC
1、質量体42の質量をm
1、粘弾性ゴム部材34のバネ定数をk
2、減衰係数をC
2、質量体36の質量をm
2としたときに、第1固有モード20の振動数f
1(50Hz)と第2固有モード24の振動数f
2(68Hz)に同調するように、k
1、k
2、m
1、m
2を設定する。
【0027】
例えば、パラメトリックスタディでは、床スラブ14の短辺方向Yの長さを6.5m、厚さを250mmに固定した状態で、床スラブ14の長辺方向Xの長さを、板状集合住宅における一般的な長さである10.5m〜13.5mの範囲で推移させたときに、f
2/f
1が1.25〜1.40範囲で推移するので、これに基づいて、m
1/m
2が0.05〜0.15となるように、質量体42、36の質量m
1、m
2を設定する。
【0028】
次に、本発明の実施形態に係る床構造の作用と効果について説明する。
【0029】
本実施形態の床構造10では、
図2、
図3、及び
図4に示すように、第1固有モード20の第1腹領域22と第2固有モード24の第2腹領域26との重なる重複領域28に、第1固有モード20と第2固有モード24の振動数に同調させた2質点系のTMD16を配置することによって、床スラブ14に生じる第1固有モード20と第2固有モード24の振動をTMD16により低減し、床スラブ14の下階で発生する重量床衝撃音を低減することができる。
【0030】
また、第1固有モード20の第1腹領域22と、第2固有モード24の第2腹領域26との重なる重複領域28に2質点系のTMD16を配置することによって、第1腹領域22と第2腹領域26にTMDをそれぞれ配置するのと比べて、床スラブ14に設置するTMDの数、種類、及びトータルとしての質量を減らすことができる。
【0031】
ここで、
図10の表に示す、比較例としてのケース1〜4と、本実施形態の床構造10としてのケース5との振動低減効果を評価した例を示す。この評価は、
図2及び
図3に示すような、第1固有モード20と第2固有モード24が生じる床スラブ14に対して行ったものである。
図4に示す中央部P
1と中央部P
2とは約530mm離れており、設置点P
3は、中央部P
1と中央部P
2との中央(中央部P
1から設置点P
3までの距離と、中央部P
2から設置点P
3までの距離とは同じ)に位置している。
図10の表中の丸印は、TMDが設定されていることを意味している。
【0032】
ケース1は、床スラブ14上にTMDを設置していないケースであり、ケース2は、床スラブ14上の中央部P
1に141kgの質量体を有する1質点系のTMD(以下、「1質点系TMD」とする)を1つ設置したケースであり、ケース3は、床スラブ14上の中央部P
2に1質点系TMDを1つ設置したケースであり、ケース4は、床スラブ14上の中央部P
1と中央部P
2とに1質点系TMDをそれぞれ1つ設置したケースである。また、ケース5は、床スラブ14上の設置点P
3に2質点系のTMD16を設置したケースである。TMD16の質量体36と質量体42との合計質量が141kgとなっている。
【0033】
図11のグラフに示す値44、46、48は、ケース1、2、5において、床スラブ14上の第1腹領域22の中央部P
1(
図2を参照のこと)をハンマー等で打撃したときの、中央部P
1に発生する振動の振動数(横軸)に対するアクセレランス(縦軸)を数値解析により求めて示したものである。アクセレランスは、中央部P
1をハンマー等で打撃したときに中央部P
1に発生する振動の加速度を、この打撃の打撃力で割った値である。ケース1の値が値44、ケース2の値が値46、ケース5の値が値48となっている。
【0034】
図11の値46、48より、50Hz付近において、ケース5(値48)はケース2(値46)と同等の振動低減効果が得られることがわかる。
【0035】
図12のグラフに示す値50、52、54は、ケース1、3、5において、床スラブ14上の第2腹領域26の中央部P
2(
図3を参照のこと)をハンマー等で打撃したときの、中央部P
2に発生する振動の振動数(横軸)に対するアクセレランス(縦軸)を数値解析により求めて示したものである。アクセレランスは、中央部P
2をハンマー等で打撃したときに中央部P
2に発生する振動の加速度を、この打撃の打撃力で割った値である。ケース1の値が値50、ケース3の値が値52、ケース5の値が値54となっている。
【0036】
図12の値52、54より、68Hz付近において、ケース5(値54)はケース3(値52)と同等の振動低減効果が得られることがわかる。
【0037】
図13のグラフに示す値56、58、60は、ケース1、4、5において、床スラブ14上の第1腹領域22の中央部P
1(
図2を参照のこと)をハンマー等で打撃したときの、中央部P
1に発生する振動の振動数(横軸)に対するアクセレランス(縦軸)を数値解析により求めて示したものである。アクセレランスは、中央部P
1をハンマー等で打撃したときに中央部P
1に発生する振動の加速度を、この打撃の打撃力で割った値である。ケース1の値が値56、ケース4の値が値58、ケース5の値が値60となっている。
【0038】
図13の値58、60より、50Hz付近において、ケース5(値60)はケース4(値58)と同等の振動低減効果が得られることがわかる。
【0039】
図14のグラフに示す値62、64、66は、ケース1、4、5において、床スラブ14上の第2腹領域26の中央部P
2(
図3を参照のこと)をハンマー等で打撃したときの、中央部P
2に発生する振動の振動数(横軸)に対するアクセレランス(縦軸)を数値解析により求めて示したものである。アクセレランスは、中央部P
2をハンマー等で打撃したときに中央部P
2に発生する振動の加速度を、この打撃の打撃力で割った値である。ケース1の値が値62、ケース4の値が値64、ケース5の値が値66となっている。
【0040】
図14の値64、66より、68Hz付近において、ケース5(値66)はケース4(値64)と同等の振動低減効果が得られることがわかる。
【0041】
また、
図13の値58、60、及び
図14の値64、66より、第1固有モード20の第1腹領域22の中央部P
1と、第2固有モード24の第2腹領域26の中央部P
2とに1質点系TMDをそれぞれ1台設置する、すなわち2台の1質点系TMD(2台分の質量282kg)を設置するのと同等の振動低減効果を、床スラブ14上の設置点P
3に1台のTMD16(1台分の質量141kg)を設置することによって得ることができることがわかる。これにより、ケース5は、TMDの質量を削減することができ、コストダウンや省スペース化を図ることがわかる。
【0042】
さらに、本実施形態の床構造10では、
図2及び
図3に示すように、第1固有モード20及び第2固有モード24の腹領域が、床スラブ14の長辺方向Xへ複数並んだ配置となるので、
図4に示すように、重複領域28を形成し易くすることができる。
【0043】
また、本実施形態の床構造10では、第1固有モード20及び第2固有モード24の振動数を、45Hz以上90Hz以下とすることにより、集合住宅等の建物の床スラブの下階で発生する重量床衝撃音を効果的に低減することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0045】
なお、本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、2つの固有モード(第1固有モード20、第2固有モード24)が生じる床スラブ14に床構造10を適用した例を示したが、3つ以上の固有モードが生じる床スラブに本実施形態の床構造10を適用してもよい。この場合には、3つ以上の固有モードの中から、2つの固有モードを適宜選択し、その2つの固有モードを第1固有モードと第2固有モードにすればよい。選択する2つの固有モードは、例えば、最大振幅が大きい腹領域を有する固有モードや、振動低減したい振動数の固有モードとすればよい。
【0046】
また、本実施形態では、
図4に示すように、第1固有モード20の第1腹領域22と、第2固有モード24の第2腹領域26との重なる重複領域28に配置されるように、床スラブ14上にTMD16を設置した例を示したが、固有モードの腹領域(第1固有モード20の第1腹領域22、第2固有モード24の第2腹領域26)は、基準振幅値を適宜決めこの基準振幅値よりも振幅が大きくなる領域を腹領域とすればよい。例えば、基準振幅値を振幅のピーク値の1/2としてもよい。
【0047】
さらに、本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、長辺方向Xに対して3つに割れる第1固有モード20と、長辺方向Xに対して4つに割れる第2固有モード24とが床スラブ14に生じる例を示したが、例えば、63Hz帯域において、
図2に示すような長辺方向Xに対して3つに割れる第1固有モード20と、
図15の平面図に示すような長辺方向Xに対して2つ割れるとともに短辺方向Yに対して2つ割れる固有モード68とが床スラブ14に生じる場合がある。
【0048】
この場合においては、固有モード68を第2固有モードとし、
図16の平面図に示すように、固有モード68の腹領域70を第2腹領域として、第1固有モード20の第1腹領域22(
図2を参照のこと)と、固有モード68の腹領域70との重なる重複領域72に配置されるように、床スラブ14上にTMD16を設置すればよい。
図16では、重複領域72の設置点P
5の位置に配置されるように、床スラブ14上にTMD16を設置する。
図15及び
図16では、腹領域70の中央部を中央部P
4としている。
【0049】
また、本実施形態では、
図1に示すように、第1固有モード20の第1腹領域22と、第2固有モード24の第2腹領域26との重なる重複領域28に配置されるように、床スラブ14上の設置点P
3の位置に1つのTMD16を設置した例を示したが、重複領域28に同じ種類のTMD16を複数配置してもよいし、重複領域28に異なる種類のTMD16を複数配置してもよい。この場合、複数のTMD16からなる領域の代表点が重複領域28に位置するようにすればよい。この代表点は、複数のTMD16が効果的に振動低減できる位置とするのがよい。
【0050】
また、本実施形態では、鉄筋コンクリート製の床スラブ14に床構造10を適用した例を示したが、プレキャストコンクリート製の床スラブ等の他の構成の床スラブに本実施形態の床構造10を適用してもよい。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。