特許第6754751号(P6754751)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6754751膜STIM1を用いた化合物のスクリーニング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754751
(24)【登録日】2020年8月26日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】膜STIM1を用いた化合物のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20200907BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20200907BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20200907BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20200907BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   G01N33/50 ZZNA
   G01N33/53 D
   G01N33/543 501A
   G01N33/543 595
   G01N33/15 Z
   C07K14/705
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-504093(P2017-504093)
(86)(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公表番号】特表2017-531164(P2017-531164A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】EP2015067615
(87)【国際公開番号】WO2016020274
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2018年5月14日
(31)【優先権主張番号】14290232.9
(32)【優先日】2014年8月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514173755
【氏名又は名称】ユニベルシテ ド ブルターニュ オキシダンタル(ウ・ベ・オ)
(73)【特許権者】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(73)【特許権者】
【識別番号】517020632
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・レジオナル・エ・ユニベルシテール・ドゥ・ブレスト
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER REGIONAL ET UNIVERSITAIRE DE BREST
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルノディノー,イブ
(72)【発明者】
【氏名】ミニャン,オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】ブルゴス,ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】ペル,ジャック・オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】ファリ,ティンヒナン
【審査官】 西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−507351(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/020235(WO,A1)
【文献】 特表2008−545958(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0165265(US,A1)
【文献】 馬場 義裕,黒崎 知博,STIM1によるカルシウム応答の制御機構,生化学,日本,2008年12月,Vol.80/No.12,pp.1123-1128
【文献】 MIGNEN, O. et al.,STIM1 regulates Ca2+ entry via arachidonate-regulated Ca2+-selective (ARC) channels without store depletion or translocation to the plasma membrane,JOURNAL OF PHYSIOLOGY,The Physiological Society,2007年 3月14日,Vol.579/No.3,pp.703-715
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性リンパ性白血病および/または全身性エリテマトーデスを治療するための候補分子をインビトロでスクリーニングする方法における、細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分の使用。
【請求項2】
前記STIM1タンパク質のペプチド配列は、配列番号1の配列である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記スクリーニングする方法は、生物学的スクリーニングおよび生物物理学的スクリーニングからなる群から選択された技術を使用する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
スクリーニングは、免疫蛍光法、ウェスタンブロット、免疫沈降法、表面プラズモン共鳴(SPR)、フローサイトメトリ、ビデオ顕微鏡法、カルシウム流動の調査、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)および共焦点顕微鏡法からなる群から選択された技術を使用する、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記細胞は、分離された完全細胞である、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
慢性リンパ性白血病および/または全身性エリテマトーデスの治療に有用な物質をイン
ビトロで特定する方法であって、
(a)分離された完全細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分を前記細胞の表面で発現させる前記細胞を含む試料を提供するステップと、
(b)前記細胞を候補分子と相互作用させることによって候補分子をスクリーニングするステップと、
(c)前記細胞に貫入することなく、前記細胞の前記細胞膜に局在化された前記STIM1タンパク質の前記画分を結合する候補分子を選択するステップとを備え、
それによって、慢性リンパ性白血病および/または全身性エリテマトーデスの治療に有用な物質を特定する、方法。
【請求項7】
候補分子をスクリーニングするステップb)は、生物学的スクリーニングおよび生物物理学的スクリーニングからなる群から選択された技術を使用する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
候補分子をスクリーニングするステップb)は、免疫蛍光法、ウェスタンブロット、免疫沈降法、表面プラズモン共鳴(SPR)、フローサイトメトリ、ビデオ顕微鏡法、カルシウム流動の調査、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)および共焦点顕微鏡法からなる群から選択された技術を使用する、請求項6に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーニング方法におけるSTIM1(間質相互作用分子1またはGOK)タンパク質の膜画分の使用、ならびに、細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分と相互作用する治療用途の物質およびこの物質を少なくとも含む医薬組成物に関する。
【0002】
以下の説明において、角括弧([])内の参照符は、本文の最後に記載されている参照文献の一覧を参照する。
【背景技術】
【0003】
先行技術
全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)および慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukaemia:CLL)は、依然として治療不能である。
【0004】
SLEは、自己反応性リンパ球および抗核自己抗体(antinuclear auto-antibodies:ANA)の存在によって特徴付けられる自己免疫由来の異質性疾患である。SLEは、臨床症状が非常に異なる多全身性疾患である。有病率は、民族によって異なるが、10000人に約1人であると推定され、男性/女性の比率は10:1である。この疾患の臨床的異質性は、その疾病原因の複雑さを反映し、遺伝的要因も環境的要因も含む。SLEは、全ての器官に影響を及ぼし得る。最も一般的な症状は、発疹、関節炎および疲労である。最も深刻な症状は、腎炎、神経障害、貧血症および血小板減少症を含む。患者のうちの90%以上は、1/160を超えて陽性であると考えられるANAを有する。SLEは、突発性の進化を有する疾患である。現在の治療法の目的は、生命予後を脅かす可能性がある急性発作を治療し、比較的安定した期間中の突然の再発のリスクを最小限にし、生命予後を危険にさらすことはないが毎日の生活の質に影響を及ぼす症状をモニタリングすることである。
【0005】
ヒドロキシクロロキンおよび非ステロイド性抗炎症薬は、中程度のSLEで必要とされ、コルチコイドおよび免疫抑制剤は、最も深刻な程度のSLEにのみ用いられ、Bリンパ球(B細胞)を標的とした抗CD20モノクローナル抗体(リツキシマブ、マブセラ(登録商標))は、現在のところ、より重傷であって通常の治療に反応しなかった患者で必要とされている([1])。コルチコイドおよび免疫抑制剤の導入後の予後の改善にもかかわらず、SLEは、患者の罹病率および死亡率に大きな影響を及ぼし続ける。
【0006】
CLLは、やはりB細胞に影響を及ぼす慢性の悪性血液病である。これらの細胞は、免疫系レベルで重要な役割を果たす。CLLの過程で、CLLのB細胞は、成熟に達するとライフサイクルが阻止され、それらの生成が継続する。その結果、これらのB細胞は、最終的に血液、神経節、脾臓、肝臓および骨髄の中に蓄積し、二次リンパ器官の体積の増加につながる。CLLに対して現在利用可能な治療法は、ほとんどの場合、疾患が進行期にあるときに使用される。CLLの集中治療において使用される化学療法生成物は、単独で使用されるクロラムブシル、単独で使用されるフルダラビン、CHOPタイプ(4つの薬剤:シクロホスファミド−(H)アドリアマイシン−オンコビン(ビンクリスチン)−プレドニゾンの組み合わせ)の月1回の化学療法である。標的療法に関して、白血病B細胞はCD20+であるので、この標的を特異的に認識するモノクローナル抗体が治療に用いられ得る(リツキシマブ、マブセラ(登録商標))。別の標的は、発現が白血病細胞内で増加するB細胞に特異的なブルートンのチロシンキナーゼである。この酵素の阻害剤であるイブルチニブは、難治性または再発性の態様でさえ、長期的な寛解を前提とした白血病細胞のアポトーシス(死)を招く。しかし、これらの治療により、望ましくない影響にさらされる恐れがある。
【0007】
SLEおよびCLLの病変では、B細胞抗原受容体(BCR)のシミュレーション後に、SLEおよびCLLにおけるB細胞のカルシウムシグナリングの妨害が示される([2,3])。
【0008】
カルシウムシグナリングのこれらの欠陥に加えて、SLEのB細胞は、インターロイキン10(IL−10)の生成不足によって特徴付けられ、制御性Bリンパ球(Breg)の活性に影響を及ぼす([4,5])。このSLEにおけるBregの活性不足により、Tリンパ球(T細胞)増殖の制御が少なくなり、これもやはり自己免疫プロセスの増幅に寄与する可能性がある([5])。
【0009】
CLLおよびSLEの診断および予後は、不完全な臨床基準および生物学的基準の集大成に基づいており、したがって、新たなより効果的な基準を開発する必要がある。
【0010】
これら両方の疾患において、B細胞は、主な治療標的に相当する。しかし、患者の中には既存の治療法に反応しない者もいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、先行技術のこれらの欠陥、欠点および障害を克服し、治療されるべき疾患の病的細胞にとって容易にアクセス可能であり、特異的であり、選択的である治療標的を特に含む新たな治療ソリューションを提供することが真に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の説明
本発明は、カルシウムチャンネルの活性化および調整に関与するタンパク質であるSTIM1タンパク質の、細胞膜に局在化された画分をSLEおよびCLLの治療標的として使用することによってこれらのニーズに応えることを可能にする。
【0013】
また、出願人は、細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の活性の直接的または間接的制御のための任意の手段が、B細胞の細胞応答の調節に使用され、そのためSLEおよびCLLにおける新たな治療ソリューションを提供できることを、驚くべきことに実証した。したがって、本発明は、この文脈において、(i)細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の発現、(ii)このタンパク質の膜アドレッシング、または(iii)リンパ球細胞膜におけるこのタンパク質の生物活性を調節する任意のツールを用いることを提案する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ウェスタンブロット(A/B)およびフローサイトメトリ(C/D)による全身性エリテマトーデス(SLE)のBリンパ球(B細胞)および慢性リンパ性白血病(CLL)のB細胞における膜STIM1の実証を示す。図1Aは、健常対照群の対照B細胞に対するSLEのB細胞におけるSTIM1のグリコシル化画分についての90kDaのバンドの、ウェスタンブロットによる実証を示す。このSTIM1タンパク質のグリコシル化は、細胞膜へのその挿入に不可欠である。図1Bは、膜STIM1を発現しない対照CLL B細胞(mSTIM1−)に対する膜STIM1を発現するCLLのB細胞(mSTIM1+)における、膜に局在化されたSTIM1の画分についての90kDaのバンドの、ウェスタンブロットによる実証を示す。図1Cは、膜STIM1を発現しない健常対照群の対照B細胞(mSTIM1−)に対する膜STIM1を発現するSLEのB細胞(mSTIM1+)における、膜に局在化されたSTIM1の画分についての、フローサイトメトリによる実証を示す。図1Dは、膜STIM1を発現しない対照CLL B細胞(mSTIM1−)に対する膜STIM1を発現するCLLのB細胞(mSTIM1+)における、膜に局在化されたSTIM1の画分についての、フローサイトメトリによる実証を示す。
図2】ヒト株JOK PLP([6])のB細胞、株JOK CD5([6])のB細胞、および慢性リンパ性白血病(CLL)のBリンパ球の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の細胞外エピトープに対して向けられる抗STIM1抗体(クローンGok44、BDバイオサイエンス社)による構成的カルシウム流入の抑制の実証を示す。図2Aおよび図2Bは、構成的流入およびこの構成的流入に対する抗STIM1抗体の効果の測定を示し(dF/Fo a.u.(任意単位)で表わされる)、これらは、対照抗体(CTRL、IgG2aアイソタイプ、ベックマン・コールター社)または抗STIM1/GOK抗体で事前処理された細胞(5μg/mlの抗体を60分間にわたって)について、プレートリーダを用いてマルチウェルプレート内のヒト株JOK PLP(A)およびJOK CD5(B)のBリンパ球において測定される。図2Cは、対照抗体(CTRL、IgG2aアイソタイプ)または抗STIM1/GOK抗体で事前処理された細胞(5μg/mlの抗体を60分間にわたって)に対する単細胞画像化におけるCLLのB細胞についての構成的流入およびこの流入に対する抗STIM1抗体の効果の測定を(dF/Fo a.u.として)示す。図2Dは、タプシガルギン(1μM、シグマ・アルドリッチ社)によって誘発され、CLLのB細胞において測定される、蓄えの放出に依存するカルシウム流入(容量依存的なカルシウム流入)に対する抗STIM1抗体の効果の欠如を示す。
図3】(A)細胞生存性のみに対する抗STIM1抗体(クローンGok/44)の効果、または(B)抗CD20抗体(リツキシマブ)との相乗作用での抗STIM1抗体(クローンGok/44)の効果、(C)細胞膜におけるSTIM1タンパク質の発現がある(mSTIM1+)かない(mSTIM1−)かに応じて2つのグループに分類される患者における慢性リンパ性白血病(CLL)のB細胞における構成的カルシウム侵入(Ca2+)に対する抗STIM1抗体(クローンGok/44)の効果、および(D)全身性エリテマトーデス(SLE)のB細胞によるTリンパ球の増殖(Breg活性)の抑制に対する抗STIM1抗体(クローンGok/44)の効果の実証を示す。図3Aは、10μg/mlのアイソタイプ対照抗体(isoAb、IgG2aアイソタイプ、ベックマン・コールター社)の存在下または10μg/mlの抗STIM1/GOK抗体の存在下での2つのグループmSTIM1+またはmSTIM1−におけるCLLのB細胞についての48時間の培養後の生細胞のパーセンテージを示す。図3Bは、10μg/mlのアイソタイプ対照抗体(isoAb、IgG2aアイソタイプ、ベックマン・コールター社)の存在下、10μg/mlのリツキシマブ(抗CD20)の存在下、またはリツキシマブ(10μg/ml)と抗STIM1/GOK(10μg/ml)との組み合わせの存在下での2つのグループmSTIM1+またはmSTIM1−におけるCLLのB細胞についての48時間の培養後のCLLの生細胞のパーセンテージを示す。図3Cは、5μg/mlの抗STIM1/GOK抗体での細胞の事前処理をした後または事前処理をしない状態(添加なしの対照群)の、細胞膜においてSTIM1を発現させるグループ(mSTIM1+)のCLLのB細胞におけるCa2+の構成的侵入の減少を示す(割合dF/Fo a.u.(任意単位)として表わされる)。図3Dは、抗STIM1/GOK抗体の存在下または添加なしの対照群の存在下での4日後の自己共培養1:1のモデルにおけるSLEのB細胞によってパーセンテージで表わされる細胞の増殖の抑制を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の文脈において、驚くべきことに、ループスを患う患者のB細胞において以下のことが観察される:
(1)STIM1タンパク質の発現全体の増加および細胞膜に局在化されたSTIM1の画分の誘発。これらは、対照群のB細胞では低いままであるか、またはゼロのままでありさえする
(2)安静時に細胞膜に局在化されたSTIM1の画分を有するSLEのB細胞、特に未成熟/遷移段階におけるSLEのB細胞における、Erk1/2キナーゼ(細胞外シグナル制御キナーゼ)のリン酸化を伴うMAPK経路(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ)の活性化
(3)細胞外Ca2+の構成的侵入の増加
(4)細胞の一般的活性化、自己反応性B細胞の生存、およびしたがって自己免疫プロセスを説明し得るSTIM1の発現の増加と細胞外Ca2+の構成的侵入とMAPK ERK1/2経路の活性化の妨害との間の相関関係。
【0016】
SLEのBregの活性に関して、本発明の文脈において、驚くべきことに、以下のことが初めて観察される:
(x1)Bregの不十分な制御活性は、SLEのB細胞におけるSTIM1分子の発現の増加に関係している
(x2)阻止抗体によって特異的に引き起こされるか、またはSLEのB細胞におけるsiRNAを標的とするSTIM1によって非特異的に引き起こされる、細胞膜に局在化されたSTIM1分子の阻止は、(i)SLEのBregによるIL−10の生成、(ii)T細胞の増殖の抑制、および(iii)制御性T細胞の誘発を回復させる。細胞膜に局在化されたSTIM1の阻止は、健常対照群には影響を及ぼさない。
【0017】
CLLのB細胞について、出願人は、驚くべきことに以下のことも観察した:
(a)細胞質内カルシウムのベースラインレベルの増加は、CLLのB細胞の生存の増加、MAPK Erk1/2経路の活性化、転写因子NFAT2(活性化T細胞の核因子)およびSTAT3(シグナル伝達性転写因子3)の核転座、ならびにIL−10の合成に関連付けられた([5])
(b)細胞外Ca2+の構成的侵入の増加は、細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の増加によって調整された
(c)膜にSTIM1タンパク質が存在すること(グループI)またはそれが欠如していること(グループII)は、2つの患者群を区別することを可能にした
(d)細胞膜に存在するSTIM1分子に対して向けられる抗STIM1抗体は、グループIのCLLのB細胞への細胞外Ca2+の構成的侵入を大幅に減少させることができ、グループIIのCLLのB細胞への細胞外Ca2+の構成的侵入をより弱く減少させることができた
(e)細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分を特異的に標的とする抗STIM1抗体と抗CD20抗体(リツキシマブ:RTX)との組み合わせは、グループI患者(細胞膜にSTIM1タンパク質が存在する)のB細胞においてRTXによって誘発されるアポトーシス効果を回復させることができた。抗STIM1抗体の添加は、グループII患者(膜にSTIM1タンパク質が欠如している)の抗CD20のアポトーシス効果には影響を及ぼさない。
【0018】
本発明は、細胞膜に局在化されたSTIM1の画分をSLEおよびCLLにおける新たな治療標的として使用することを提案する。
【0019】
また、本発明は、細胞膜に局在化されたSTIM1の画分の調節因子をこれらの疾患において使用することを提案する。
【0020】
本発明は、細胞膜に局在化されたSTIM1の画分を、その存在またはその活性を調節することによってSLEおよびCLLにおける治療標的として使用することに関する。したがって、本発明は、とりわけ、(i)細胞の細胞膜におけるSTIM1分子の発現の抑制、(ii)このタンパク質の膜アドレッシングの抑制、および(iii)細胞膜に存在するSTIM1タンパク質の生物活性の抑制に関する。
【0021】
とりわけRTXによる治療に対して耐性のあるCLL患者において、細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分を特異的に標的とする抗STIM1抗体によって、細胞膜に局在化されたSTIM1の活性を阻止することが提案されている。実際、抗STIM1AcなどのSTIM1の調節因子によって、細胞膜に局在化されたSTIM1の画分に応じてCa2+の流入を調節することは、RTXによって誘発されるアポトーシスに対する細胞の感度を高めるであろう。
【0022】
本発明は、いくつかの点で有利であり、とりわけマーカーは、健康な細胞ではなく病的細胞にのみ存在し、特異性および選択性の向上を可能にする。さらに、細胞膜のレベルにおけるSTIM1タンパク質の免疫細胞による発現は、この標的のアクセス性を促進する。
【0023】
したがって、本発明の第1の目的は、SLEおよび/またはCLLを治療するための候補分子をスクリーニングする方法における、細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分の使用に関する。
【0024】
「細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分」は、本発明の意味において、細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質のグリコシル化画分を意味する。STIM1タンパク質は、2つのグリコシル化部位、すなわち位置131にアスパラギンを有し、位置171にもう一方を有する。STIM1分子のグリコシル化は、細胞の表面でSTIM1分子をアドレッシングするための必要かつ必須のプロセスである([7])。この画分は、約90±2kDaの分子量を有し、この画分と非グリコシル化形態のSTIM1(84±2kDa)とを区別することを可能にする。2つの形態は、ウェスタンブロットによって検出可能である。ヒトSTIM1分子(間質相互作用分子、GOKとも呼ばれる)は、Uniprot配列:Q13586またはNCBI:NP_003147.2に対応する配列番号1を有するタンパク質である。このタンパク質は、NCBI配列:NM_003156.3(mRNA転写物)に対応する配列番号2によってコードされる。好ましくは、画分は、無傷細胞の細胞膜に位置しており、これは、細胞膜が壊れていないおよび/または透過性にされておらず、有利に非浸透性の分子が細胞に貫入することを可能にしないことを意味する。
【0025】
「細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分」は、細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の分離によって生じる任意の生物学的生成物を意味する。分離は、当業者に公知の全ての手段によって実行され得て、例えば分画遠心分離後に洗浄剤(例えばTriton X−100またはTriton NI 01などの非イオン性もしくはイオン性界面活性剤、またはポリオキシエチレンソルビタンエステル)を使用することによって、または、膜タンパク質(抗体、Thermo scientific sulfo-NHS-SS-biotin)を標的とするステップを用いた免疫化学またはタンパク質化学技術によって実行され得るが、このリストは限定的なものではない。
【0026】
「細胞」は、本発明の意味において、細胞膜のレベルにおいてSTIM1を発現させる任意の細胞を意味する。有利に、細胞は免疫細胞である。細胞は、例えばB細胞およびT細胞であってもよい。有利に、細胞は、SLEまたはCLLを患う患者からのB細胞である。代替的に、細胞は、細胞膜上でSTIM1タンパク質を発現させるために配列番号2でトランスフェクトされてもよい。好ましくは、細胞は、完全細胞(entire cells)、言い換えれば無傷細胞および/または壊れていない細胞である。有利に、本発明のスクリーニング方法において使用される細胞は、STIM1の膜発現を調節するおよび/または細胞外Ca2+の構成的侵入を調節する分子を厳密にスクリーニングするために、無傷である。有利に、本発明のスクリーニング方法において使用される細胞は、細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分との特異な相互作用のために細胞に貫入せずに細胞膜にとどまる分子を選択するために、無傷である。言い換えれば、スクリーニング方法は、非浸透性の分子、すなわち細胞膜を横断しない分子の選択を可能にする。細胞は、分離された細胞であり、試料の形態で本発明のスクリーニング方法に提供され得る。
【0027】
「スクリーニング方法」は、本発明の意味において、STIM1タンパク質の膜画分を相互作用するまたはその膜発現を調節する物質の特定を可能にする任意の方法を意味する。スクリーニング方法は、当業者に公知の任意の方法であってもよく、例えば生物学的スクリーニング、例えば免疫蛍光法、ウェスタンブロット、免疫沈降法、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance:SPR)、フローサイトメトリ、ビデオ顕微鏡法、カルシウム流動の調査、酵素結合免疫吸着測定法(enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA)および共焦点顕微鏡法からなる群から選択された技術であってもよく、例えば蛍光によって細胞内カルシウム濃度の変化を測定することによるものであってもよい。有利に、スクリーニング方法は、細胞に貫入することなく、細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分と選択的に相互作用する物質の特定を可能にする。言い換えれば、スクリーニング方法は、細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分と選択的に相互作用する非透過性物質の特定を可能にする。スクリーニング方法は、細胞膜上でSTIM1タンパク質を発現させる無傷細胞を含む試料でインビトロで実現され得る。
【0028】
「候補分子」は、本発明の意味において、細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分と相互作用する任意の分子を意味する。相互作用は、細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質上に候補分子を固定するタイプのものであってもよい。代替的に、相互作用は、このタンパク質の活性または発現の調節であってもよい。細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分の活性の調節は、細胞膜へのSTIM1の挿入の改良によるものであってもよく、または関連付けられるタンパク質とのその相互作用の改良によるものであってもよい。タンパク質の活性の調節は、細胞内カルシウムの構成的侵入の変化などのカルシウム流入の変化に反映されてもよく、または、蓄えの放出に依存するカルシウム流入(SOCE、容量依存的なカルシウム流入)などの受容体の刺激中に活性化されるカルシウム流入の変化に反映されてもよい。発現の調節は、候補分子の適用前に同一の細胞または同等の細胞で測定されるレベルに対する、細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の発現の増加または減少であってもよい。STIM1タンパク質の発現の調節は、例えば転写修飾、エピジェネティック修飾、またはSTIM1タンパク質の膜アドレッシングに不可欠なグリコシル化プロセスの調節に関係し得る。有利に、選択された候補分子は、細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分と特異的に相互作用する。選択された候補分子は、細胞膜を横断しないので、本発明のスクリーニング方法において小胞体に局在化されたSTIM1タンパク質と相互作用しない。
【0029】
したがって、本発明の目的は、慢性リンパ性白血病および/または全身性エリテマトーデスの治療に有用な候補分子をインビトロでスクリーニングする方法における、細胞膜上でSTIM1タンパク質を発現させる分離された無傷細胞の使用である。
【0030】
本発明の別の目的は、慢性リンパ性白血病および/または全身性エリテマトーデスの治療に有用な物質をインビトロで特定する方法に関し、
(a)分離された完全細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分を細胞の表面で発現させる細胞を含む試料を提供するステップと、
(b)細胞を候補分子と相互作用させることによって候補分子をスクリーニングするステップと、
(c)細胞に貫入することなく、細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分を結合する候補分子を選択するステップとを備え、
それによって、慢性リンパ性白血病および/または全身性エリテマトーデスの治療に有用な物質を特定する。
【0031】
本発明の第2の目的は、SLEおよび/またはCLLの治療の際に医薬品として使用される、細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分と相互作用する物質に関する。
【0032】
「物質」は、本発明の意味において、上記のように細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質に固定するタイプの相互作用またはSTIM1タンパク質のこの膜画分の活性もしくは発現の調節を示す任意の分子を意味する。物質は、自然由来であってもよく、または人工由来であってもよい。物質は、化学的にまたは精製などのバイオエンジニアリングの任意の方法によって生成されたタンパク質であってもよい。物質は、とりわけ上記のスクリーニング方法を適用することによって特定され得る。有利に、物質は、細胞膜を横断することができず、細胞に貫入することなく、細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の画分と特異的に相互作用する。有利に、物質は、細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の活性を減少または阻止し得る。
【0033】
物質は、例えば配列番号3の配列の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の細胞外断片に対して向けられる抗体であってもよい。この配列は、STIM1のアミノ酸23〜213に対応する。それは、抗GOK/STIM1抗体(クローン:44、BDバイオサイエンス・レファレンス910954)であってもよい。
【0034】
さらに、本発明は、上記の物質を少なくとも1つ含む医薬組成物に関する。このような組成物は、任意の好適な医薬的に許容可能なビヒクルを含み、当該ビヒクルは、例えば医薬的に使用され得る製剤における物質の配合を容易にする賦形剤および添加剤を含み得る。「医薬的に許容可能」という表現は、SLEまたはCLLを治療するための物質の効能とマイナスに干渉せず、投与されるホストに有害でない任意のビヒクルを包含する。特に、本発明に係る組成物のための好適な医薬的に許容可能なビヒクルは、特に全身的な適用に適したビヒクルである。好適な医薬的に許容可能なビヒクルは、先行技術において周知であり、例えばこの分野の標準的な参照文献であるRemington Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company, Easton, USA, 1985)に記載されている。好適な医薬的に許容可能なビヒクルは、例えばクエン酸ナトリウム、ポリソルベート80、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩酸、および注射用水から選択された1つ以上の成分であってもよい。
【0035】
有利に、本発明に係る組成物は、医薬品として適用され得る。特に有利に、本発明の組成物は、SLEまたはCLLなどの癌の治療の際の医薬品として適用され得る。
【0036】
本発明の医薬組成物は、上記の物質の効果を促進する任意の活性成分を含み得る。
さらに、本発明の医薬組成物は、抗CD20抗体、または、タンパク質OraiおよびTRPCなどのSTIM1タンパク質に関連付けられるカルシウムチャンネルを調整するタンパク質複合体に関連付けられるその他の分子であってもよい。この場合、本発明の医薬組成物は、ヒトまたは動物の治療において公知の任意の抗CD20、例えばIDEC−C2B8抗体(ヨーロッパのホフマン・ラ・ロシュ社によって販売されているリツキシマブ)、Drugbank DB00073(BIOD00014、BTD00014)、オファツムマブ(アーゼラ社、グラクソ・スミスクライン社)、トシツモマブ(GSK社、DB00081、BIOD00085、BTD00085)、オビヌツズマブ(Gazyva、ロシュ社、DB08935、GA101)、イブリツモマブ(チウキセタン、IDECファーマシューティカルズ社、DB00078、BIOD00069、BTD00069)、ウブリツキシマブ(LFB)またはAME−133v(リリー社、LY2469298)、であってもよいが、このリストは限定的なものではない。
【0037】
例示の目的で添付の図面によって示される以下の実施例を読むと、他の利点も当業者に明らかになるであろう。
【0038】
実施例
【実施例1】
【0039】
実施例1:膜STIM1を検出する方法
Tリンパ球(ノイラミニダーゼで事前処理されたヒツジの赤血球を用いたロゼット技術)および単球(陰性欠失(negative depletion)技術、CD43なしのB細胞キット、ステム・セル・テクノロジーズ社)を除去した後に、で取得された末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cells:PBMC)から開始して、Bリンパ球を精製した。CD19陽性B細胞の純度をフローサイトメトリによって確認し、95%を上回る純度を示した。
【0040】
A/B:SDS−PAGE上でのウェスタンブロットによるB細胞のタンパク質分析により、STIM1の網状画分(84±2kDa)に加えて、SLE(A)のB細胞についてのSTIM1のグリコシル化膜(90±2kDa)と何人かのCLL患者についてのSTIM1のグリコシル化膜(B、mSTIM1+グループ)とを区別することが可能になった。このタンパク質分析では、最初に抗STIM1クローンGok/44抗体(BDバイオサイエンス社)が使用され、次いでペルオキシダーゼ結合マウス抗IgG抗体(GEヘルスケア社)が使用され、最後に化学発光(ECL advanceキット、GEヘルスケア社)による検出が行われた。
【0041】
C/D:精製B細胞を抗STIM1クローンGok/44抗体(BDバイオサイエンス社)を用いて15分間にわたって4℃で培養し、次いで洗浄後に抗STIM1抗体を固定することで構成されるフローサイトメトリによる分析は、フルオレセイン結合F(ab′)2マウス抗IgG抗体(ジャクソン・ラボラトリーズ)を用いて明らかにされた。生細胞におけるSTIM1の膜標識化は、アイソタイプ対照群(IgG2a、ベックマン・コールター社)に対して判断される。
【実施例2】
【0042】
実施例2:抗膜STIM1分子のスクリーニング方法
細胞膜に局在化されたSTIM1画分を調節する分子のスクリーニングは、細胞膜においてSTIM1タンパク質を発現させるヒトB細胞株JOKの第1の近似物(approximation)に対して実行される。2種類の細胞、すなわち空ベクタで安定的にトランスフェクトされたJOK細胞(JOK PLP)またはCD5タンパク質を安定的にトランスフェクトされたJOK細胞、が使用される([6])。これらの細胞は、測定可能な構成的カルシウム侵入を示す。スクリーニングは、細胞外カルシウムの構成的侵入に対する細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1の画分を標的とする分子の効果を測定することで構成される。蓄えの放出に依存するカルシウム侵入SOCE(容量依存的なカルシウム流入)に対するこれらの分子の効果も、構成的カルシウム侵入に対して作用する分子の流入SOCEに対する分子の効果を判断するために評価される。これらの2つのカルシウム流動の振幅は、蛍光プローブ(Calcium6、モレキュラーデバイス社)を用いて細胞内カルシウム濃度の変化をモニタリングすることによって測定される。細胞は、45分間にわたってウェル当たり100000個の細胞の割合でCellTak(BDバイオサイエンス社)で処理された96個のウェルプレートに付着するようにされる。次いで、細胞は、Flexstationタイプのマルチウェルプレートリーダ(モレキュラーデバイス社)を用いて細胞内カルシウム濃度の変化を測定する前に、60分間にわたって蛍光プローブ(Calcium6、モレキュラーデバイス社)の存在下で培養によってこのプローブを搭載する。細胞は、細胞に蛍光プローブを搭載させた時に、および細胞内カルシウム濃度の変化の測定の間中ずっと、テスト化合物と接触させられる。
【0043】
構成的カルシウム侵入の測定は、細胞のいかなる刺激も無い状態で細胞外基質のカルシウムを除去して次いで添加することによって推定される。流入SOCEは、SERCAポンプ阻害剤であるタプシガルギンで細胞を処理することによって活性化される。
【0044】
JOK細胞の対象のカルシウム流動に対して効果があると特定された分子は、次いで、精製B細胞について試験され、当該精製B細胞は、細胞の表面におけるSTIM1分子の発現レベルが既知でありフローサイトメトリによって測定されるCLL患者の対象個体の末梢血単核細胞(PBMC)から取得される。構成的カルシウム流入および流入SOCEに対するテスト分子の効果は、単細胞蛍光画像化によって上記のように測定される。細胞は、45分間にわたってスリップ当たり500000個の細胞の割合でCellTAK(BDバイオサイエンス社)でコーティングされたガラススリップに付着するようにされ、単細胞蛍光画像化システムを用いて細胞内カルシウム濃度の変化を測定する前に、プルロニック酸(シグマ・アルドリッチ社)の存在下で45分間にわたって蛍光プローブを搭載する。細胞は、細胞の搭載の間中ずっとおよび細胞内カルシウム濃度の変化の測定の間中ずっと、テスト化合物と接触させられる。構成的カルシウム侵入の測定は、細胞のいかなる刺激も無い状態で細胞外基質のカルシウムを除去して次いで添加することによって推定される。流入SOCEは、SERCAポンプ阻害剤であるタプシガルギンで細胞を処理することによって活性化される。
【0045】
したがって、細胞の細胞膜に局在化されたSTIM1タンパク質の細胞外エピトープに対して向けられる抗STIM1抗体(クローンGok/44、BDバイオサイエンス社)による構成的カルシウム流入の抑制が実証される。構成的流入およびこの流入に対する抗STIM1抗体の影響は、マルチウェルプレートおよびプレートリーダ内のJOK株について(図2A図2B)、または、単細胞画像化におけるBリンパ球について(図2C図2D)測定される。
【実施例3】
【0046】
実施例3:抗膜STIM1分子の生物活性および抗リンパ球B活性を実証する方法(図3
図3A:10μg/mlで使用される抗STIM1抗体(クローンGok/44、BDバイオサイエンス社)は、CLLのB細胞の生存を減少させることができ、mSTIM1+グループ(細胞膜にSTIM1タンパク質が存在する)のCLLでは増加させた。この実験では、48時間にわたって細胞を培養し、次いで生細胞(アネキシンV/ヨウ化プロピジウム標識化(ベックマン・コールター社)なし)のパーセンテージを判断した。
【0047】
図3B:抗STIM1抗体(クローンGok/44)は、mSTIM1+グループのCLLのB細胞の死に対する抗CD20抗体(リツキシマブ、10μg/ml)の作用を促進する。
【0048】
図3C:抗STIM1抗体(クローンGok/44)の効果は、CLL mSTIM1+のB細胞におけるCa2+の構成的侵入に対する抗体の効果を含む。
【0049】
図3D:抗STIM1抗体(クローンGok/44)は、CpGおよび抗CD3/CD28による刺激の存在下で4日間の自己培養後に細胞の増殖を抑制するためにSLEのB細胞の能力を回復させる。
【0050】
参照文献
【0051】
【表1】
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]