(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
毛髪の濡れ具合は、毛髪に対するヘアケア剤の効能や、ブローやヘアセットなどによる仕上げの整髪に影響することから、所望の濡れ具合とするために、毛髪をどの程度乾燥させるかが重要である。すなわち、毛髪を完全に乾燥させず、適度な湿り気を保たせた状態に乾燥させることが望ましい。
【0005】
上記したヘアドライヤは、毛髪の乾燥の程度を考慮した機能がないため、熱風によって毛髪が完全に乾く。また、毛髪の乾燥の程度や、毛髪へのダメージを抑えた熱の与え方は、ヘアドライヤを操作する者の手腕によって異なるため、毛髪を適切な状態に、かつ、ダメージ抑えて乾燥させることは困難である。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、処理剤による効果を発揮させやすくし、また、毛髪を乾燥させる際のダメージを抑え、さらに、ブローによる仕上げの整髪をしやすくするうえで、適切な毛髪の状態を実現することができる毛髪処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る毛髪処理方法は、濡れた毛髪から水分を直接吸水する一次乾燥手順と、赤外線で毛髪の表面の水分を気化させると共に熱風ではない風を毛髪に当てることで、毛髪の内部に水分を残して毛髪の表面を乾かす二次乾燥手順と、を経る、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る毛髪処理方法は、前記二次乾燥手順の後に、熱風で毛髪を乾かす三次乾燥手順を経る、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る毛髪処理方法は、前記一次乾燥手順では、繊維製部材を毛髪に接触させる、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る毛髪処理方法は、前記一次乾燥手順の後、前記二次乾燥手順の前に処理剤を毛髪に塗布し、前記二次乾燥手順において処理剤を毛髪に浸透させる、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る毛髪処理方法では、前記赤外線は、波長が2.5から3.5μmのとき、分光放射発散度が10000/m
2・μm以上である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る毛髪処理方法は、濡れた毛髪から水分を直接吸水する一次乾燥手順と、赤外線で毛髪の表面の水分を気化させると共に熱風ではない風を毛髪に当てることで、毛髪の内部に水分を残して毛髪の表面を乾かす二次乾燥手順とを経る、この構成により、一次乾燥手順において、毛髪から水分が適度に取り除かれる。二次乾燥手順において、赤外線が毛髪の表面の水分に吸収され、毛髪は、内部に水分が残って潤ったまま、表面の水分のみが気化する。同時に、毛髪は、風が当たることで、内部の潤いが残ったまま表面のキューティクルが引き締められる。風は、頭髪の表面だけでなく、密集した頭髪をかき分けて、内部の毛髪に届くため、頭髪全体に渡って各毛髪が同様に処理される。すなわち、毛髪は、内部に水分を残しつつ、表面が乾燥することで、処理するうえで適切な状態となり、かつ、毛髪を乾燥させる際のダメージが抑えられる。例えば、オイルやトリートメント剤が毛髪に浸透しやすくなり、また、仕上げの整髪がしやすくなる。
【0013】
本発明に係る毛髪処理方法は、二次乾燥手順の後に、熱風で毛髪を乾かす三次乾燥手順を経る。したがって、毛髪が適切な状態において、適切なブローやヘアセットをすることができる。
【0014】
本発明に係る毛髪処理方法は、一次乾燥手順では、繊維製部材を毛髪に接触させる。したがって、簡便な手段で、毛髪から水分を適度に取り除くことができる。
【0015】
本発明に係る毛髪処理方法は、一次乾燥手順の後、二次乾燥手順の前に処理剤を毛髪に塗布し、二次乾燥手順において処理剤を毛髪に浸透させる。したがって、処理剤が浸透しやすくなる。
【0016】
本発明に係る毛髪処理方では、赤外線は、波長が2.5から3.5μmのとき、分光放射発散度が10000/m
2・μm以上である。波長が2.5から3.5μmの赤外線は、水分を吸収しやすく、また、分光放射発散度が10000/m
2・μm以上であれば、水分を効果的に蒸発させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下は、本発明の第一実施形態に係る毛髪処理方法の説明であり、理美容施設において毛髪処理方法が実行される場合についての説明である。なお、例えば、家庭内において毛髪処理方法が実行される場合もある。
【0019】
毛髪処理方法は、毛髪を濡らす洗髪手順と、濡れた毛髪から水分を直接吸水する一次乾燥手順と、赤外線で毛髪の表面の水分を気化させると共に熱風ではない風を毛髪に当てることで、毛髪の内部に水分を残して毛髪の表面を乾かす二次乾燥手順とを経る。
【0020】
洗髪手順では、毛髪処理方法による施術を受ける被施術者が、例えばシャンプー台などにおいて施術者によって洗髪され、毛髪が濡れた状態となる。洗髪は、シャンプーなどの洗剤が用いられてもよく、一方、温水のみによるものであってもよい。
【0021】
一次乾燥手順では、繊維製部材を毛髪に接触させ、毛髪の水分を繊維製部材に吸収させる。繊維製部材は、例えばタオルなどであり、天然繊維や化学繊維である。いわゆるタオルドライは簡便な手段であり、毛髪から水分を適度に取り除くことができる。例えば、施術者は、繊維製部材で頭髪を覆い、または適度に擦ることで、頭髪から水滴が落ちない程度に毛髪から水分を取り除く。なお、毛量、毛髪の太さ、髪質などは、被施術者ごとに個体差があるため、一次乾燥手順による毛髪の乾燥の度合いは、一義的に定量化できるものではない。
【0022】
二次乾燥手順では、例えば、毛髪処理装置が用いられる。以下は、毛髪処理装置の説明である。
図1は、毛髪処理装置1の外観が示されている。以下の説明では、設置面に対して垂直な方向である鉛直方向が、上下方向であり、被施術者(図示省略)に向けられる側が正面方向であり、その反対側が背面方向である。
【0023】
図1に示されているとおり、毛髪処理装置1は、設置面に自立する支持部2と、この支持部2の上端部に連結されて支持された施術本体部15とを有している。
【0024】
支持部2は、上下方向に縦長であり、上方部が鈍角に折れ曲がって傾斜している。支持部2は、複数のキャスター3a〜dが取り付けられた支持脚部4と、この支持脚部4が下端部に接続された支持本体部8と、この支持本体部8の上端部に接続された支持連結部11とを有している。
【0025】
支持脚部4は、ほぼ水平方向に広がった“X”字状の水平脚部5の各先端にキャスター3a〜dが取り付けられ、水平脚部5の中心から垂直脚部6が上方に伸びている。水平脚部5は、中心の下部に、ペダル7が備えられている。
【0026】
支持本体部8は、上下方向に長手の筐体に、電源部(図示省略)、制御部(図示省略)、ピストンシリンダー(図示省略)などが内蔵されている。ピストンシリンダーは、例えばガス式、油圧式などであり、支持脚部4のペダル7と連結されている。筐体は、正面側に電源スイッチ9が備えられ、背面側の上端部に、操作部10が形成されている。
【0027】
支持連結部11は、上下方向に長手の垂直連結部12と、この垂直連結部12の上端部から、斜め上方かつ前方に向けて伸びた傾斜連結部13と、この傾斜連結部13の先端部に取り付けられた連結本体部14とを有している。連結本体部14は、筐体に例えばギアモーター(図示省略)が内蔵されている。支持連結部11は、支持脚部4のペダル7が操作されることによって、支持本体部8のピストンシリンダーが稼働し、支持本体部8に対して上昇する。支持連結部11は、任意の高さで止められる。
【0028】
施術本体部15は、上下方向に長手のほぼ直方体であり、一方の端部である上端部に連結腕部16を有している。連結腕部16は、連結本体部14に連結され、支持連結部11のギアモーターに接続されている。すなわち、施術本体部15は、ギアモーターを介して、連結本体部14に対して回転する。施術本体部15の回転軸Xは、垂直方向に対して傾斜し、垂直方向の軸と回転軸Xとは鈍角である。なお、施術本体部15の長さは、任意である。例えば、施術本体部15は、上端部が被施術者の頭頂部の近傍に配置され、回転軸X上に頭部が配置された場合に、施術本体部15の他方の端部である下端部が、後頭部、首、肩、背中の近傍に配置される程度の長さである。
【0029】
以下は、施術本体部15についての詳細な説明である。
図2は、施術本体部15の外観が示され、
図3は、施術本体部15の断面が示されている。
【0030】
図2および
図3に示されているとおり、施術本体部15は、正面側に開口部18が形成された本体カバー部17と、この本体カバー部17の内側に収容された送風部20と、開口部18に取り付けられた赤外線放射部21、反射部22および吹出し口26と、この吹出し口26の近傍に配置されて風向きを制御する風向板27と、開口部18を覆う格子状のガードカバー28とを有している。
【0031】
本体カバー部17は、上下方向に長手のほぼ直方体であり、側面に吸気孔19が形成されている。開口部18も、本体カバー部17の長手方向に沿って上下方向に長手である。ガードカバー28は、開口部18の長さに対応して上下方向に長手である。
【0032】
反射部22および吹出し口26は、開口部18におけるガードカバー28よりも内側において、互いに隣接して取り付けられている。反射部22は、開口部18の長さに対応して上下方向に長手であり、断面が、弧状に湾曲した形状である。反射部22の凹面23は、施術本体部15の外側に向けられ、凸面24は、施術本体部15の内側に向けられている。反射部22は、施術本体部15の上端部側であって、反射部22において中心よりも吹出し口26に近い側の近傍に、通風孔25が形成されている。なお、通風孔25の形状および数は任意である。吹出し口26は、開口部18の長さに対応して上下方向に長手であり、例えば、ハニカム構造などによる整流器を有している。風向板27は、開口部18の長さに対応して上下方向に長手であり、吹出し口26に対して反射部22と反対側に取り付けられている。
【0033】
赤外線放射部21は、開口部18の長さに対応して上下方向に長手のカーボンヒーターであり、例えば、石英ガラスなどで棒状に形成された容器30に、フィラメント状のカーボンが編み込まれて扁平な薄板状に形成された線源部31が封入されている。赤外線放射部21は、反射部22の凹面23側における中心に配置され、両放射面が、いずれも反射部22の凹面23と対面している。赤外線照射部21と凹面23との距離は、反射部23が過剰に加熱されない程度である。赤外線は、例えば、波長が2.5から3.5μm付近において、分光放射発散度が10000/m
2・μm以上であることが好ましい。また、波長が2.0から2.5μmであり、分光放射発散度が40000/m
2・μm以上であることが好ましい(
図4参照。)。
【0034】
送風部20は、例えばクロスフローファンであり、開口部18の長さに対応して上下方向に長手である。送風部20は、反射部22の凸面24側において、本体カバー部17の内側に配置されている。なお、羽の形状や数は任意である。
【0035】
以上のとおり、毛髪処理装置1が構成されている。以下は、毛髪処理方法の二次乾燥手順における毛髪処理装置1の動作の説明である。
【0036】
例えば、
図1において、毛髪処理装置1は、被施術者の背面に設置され、連結腕部16が被施術者の頭部の近傍に配置される。回転軸X上に頭部が配置され、施術本体部15が被施術者の後頭部の近傍に配置される。その際、施術本体部15は、支持脚部4のペダル7が操作されることによって、支持本体部8のピストンシリンダーが稼働し、支持本体部8に対して支持連結部11と共に昇降する。反射部22における被施術者の頭部側の端部と被施術者の頭部との間隔は、約50から300mmである。電源スイッチ9が入れられると、
図3において、赤外線放射部21から赤外線が放射される。赤外線は、反射部22の凹面23に向けられているため、凹面23で毛髪に向けて反射する。同時に、送風部20が稼働すると、吸気孔19から吸気され(流路29a)、風が反射部22の凸面24に送られる(流路29b)。凸面24に当たった風は、反射部22の熱で極僅かに加温され、熱風ではない状態で、風向板27に当たって吹出し口26から放出される(流路29c、29d)。風量は、例えば1m
3/minである。
【0037】
反射部22で反射した赤外線は、毛髪の表面の水分に吸収され、毛髪は、内部に水分が残って潤ったまま、表面の水分のみが気化する。同時に、毛髪は、送風部20からの風が当たることで、内部の潤いが残ったまま表面のキューティクルが引き締められる。風は、頭髪の表面だけでなく、密集した頭髪をかき分けて、内部の毛髪に届くため、頭髪全体に渡って各毛髪が同様に処理される。すなわち、毛髪は、内部に水分を残しつつ、表面が乾燥することで、三次乾燥手順を処理するうえで適切な状態となる。
【0038】
また、施術本体部15は、支持本体部8の操作部10で選択された動作モードに従って、支持部2に対して被施術者の頭部の周囲を回転する。例えば、施術本体部15のうち、回転中心から最も離れた下端部が、鉛直方向における下端に配置された状態(
図1参照。)の回転角を0度とした場合、施術本体部15は360度回転することができる。なお、動作モードを決定するプログラムは任意であるため、施術本体部15は、任意の回転角において往復運動することもでき、また、回転運動や往復運動をせずに、任意の回転角の位置で停止することもできる。
【0039】
上記のとおり、第一実施形態に係る毛髪処理方法が行われる。この毛髪処理方法によれば、毛髪は、内部に水分を残しつつ、表面が乾燥することで、毛髪を乾燥させる際のダメージが抑えられ、さらに、例えば、後述の三次乾燥手順などを経るうえで適切な状態となる。
【0040】
以下は、三次乾燥手順を含む第二実施形態に係る毛髪処理方法の説明である。
【0041】
第二実施形態に係る毛髪処理方法は、第一実施形態に係る毛髪処理方法の後に、熱風で毛髪を乾かす三次乾燥手順を経る。すなわち、第二実施形態に係る毛髪処理方法は、洗髪手順と、一次乾燥手順と、二次乾燥手順と、三次乾燥手順とを経る。なお、洗髪手順、一次乾燥手順および二次乾燥手順は、第一実施形態に係る毛髪処理方法と同じである。
【0042】
三次乾燥手順では、例えば、ハンドドライヤーなどが用いられ、セットやブローなどによる仕上げの整髪が行われる。この毛髪処理方法によれば、毛髪が適切な状態において、適切なブローやヘアセットをすることができる。毛髪の内部に水分が残っているため、例えば、ハンドドライヤーなどで毛髪のうねりを伸ばしながら乾燥させることができる。
【0043】
以下は、第三実施形態に係る毛髪処理方法の説明である。
【0044】
第三実施形態に係る毛髪処理方法は、一次乾燥手順の後、二次乾燥手順の前に、処理剤を毛髪に塗布する塗布手順を経る。すなわち、第三実施形態に係る毛髪処理方法は、洗髪手順と、一次乾燥手順と、塗布手順と、赤外線で毛髪の表面の水分を気化させると共に熱風ではない風を毛髪に当てることで、毛髪の内部に水分を残して毛髪の表面を乾かし、かつ、処理剤を浸透させる二次乾燥手順とを経る。なお、仕上げの整髪として、三次乾燥手順を経てもよい。洗髪手順、一次乾燥手順および二次乾燥手順は、第一実施形態に係る毛髪処理方法と同じであり、三次乾燥手順は、第二実施形態に係る毛髪処理方法と同じである。
【0045】
処理剤は、例えば、オイルやトリートメント剤などであり、素手、櫛、刷毛、スプレーなどの手段で毛髪に直接塗布される。処理剤が毛髪に塗布された状態で、二次乾燥手順を経ることで、処理剤が毛髪に浸透しやすくなる。詳説すれば、波長が3μm付近の遠赤外線であれば、共鳴吸収により、処理剤と毛髪の内部における水分の分子運動が活性化する。また、三次乾燥手順において、ブローによる仕上げの整髪がしやすくなる。
【0046】
さらに、他の実施形態に係る毛髪処理方法として、上記した第一実施形態から第三実施形態において、二次乾燥手順の後に塗布手順を経てもよい。また、三次乾燥手順の途中で、ワックスやクリームなどの整髪剤を毛髪に塗布してもよい。
【0047】
上記した各実施形態に係る毛髪処理方法において、毛髪処理装置1が用いられた場合、施術本体部15が、自立した支持部2によって被施術者の頭部の近傍に配置されるため、施術者に頼らず、自動的に毛髪を処理することができる。
【0048】
施術本体部15の吹出し口26は、ハニカム構造であるため、整流された風が、強く直線的に放出する。そのため、強く直線的な風は、頭髪の表面だけでなく、密集した頭髪をかき分けて、内部の毛髪に届く。そのため、毛髪処理装置1によれば、毛髪をふわりと、かつ、斑なく処理することができる。
【0049】
施術本体部15は、支持連結部11のギアモーターを介して、連結本体部14に対して、被施術者の頭部の周囲を回転する。そのため、毛髪処理装置1によれば、頭髪の全体を斑なく処理することができる。
【0050】
施術本体部15は、上下方向に長手であり、この施術本体部15の上端部の連結腕部16が、支持部2の連結本体部14に連結されている。そのため、毛髪処理装置1によれば、長髪を斑なく処理することができる。
【0051】
なお、上記した各実施形態では、二次乾燥手順において毛髪処理装置1が用いられたが、例えば赤外線照射装置とハンドドライヤーとで二次乾燥手順が実行されてもよい。
【0052】
以下は、本発明の実施例の説明である。実施例は、第一実施形態に係る毛髪処理方法に基づいた二種類の検証である。第一の検証は、各乾燥手順後における毛髪の水分量に関するものであり、第二の検証は、頭髪における櫛どおりなどに関する検証である。
図5および表1から表3は、第一の検証に関するものであり、
図5は、実施例において用いられた毛髪のサンプル、表1から表3は、検証結果である。表4から表10は、第二の検証に関する検証結果である。
【0053】
<第一の検証>
図5に示されているとおり、第一の検証では、ダメージ処理された毛髪を束ねた蓑毛が用いられた(
図5(a))。毛束がウイッグに取り付けられた状態で、洗髪手順、一次乾燥手順、二次乾燥手順を経る(
図5(b))。一次乾燥手順はタオルドライであり、二次乾燥手順では、毛髪処理装置1が用いられた。反射部22と頭部との間隔は、例えば、約50から300mmである(
図5(c))。手順ごとに毛束の重量が測定されることで、各手順において毛髪にどの程度の水分が残されているか(換言すれば毛髪がどの程度乾燥したか)がわかる。なお、髪質に個体差があることから、ダメージ処理の度合いは、定量化できるものではないが、本実施例におけるダメージ処理は、カラーが二回、パーマが一回施術された場合である。
【0054】
下表1に示されているとおり、第一の検証では、乾燥した状態で8.5gの毛束が用いられた。二次乾燥手順は、8分、10分、12分の三回に渡って測定された。洗髪手順後、一次乾燥手順後、二次乾燥手順後のそれぞれの毛髪の重量は、表1のとおりである。
【0056】
各手順後の毛髪の水分量および平均値は、表1から求められ、表2のとおりである。
【0058】
平均値から、毛髪が濡れた状態の水分量を100%としたときの各手順後の水分量の割合は、表2から求められ、表3のとおりである。
【0060】
表3からわかるとおり、毛髪に含まれる水分は、一次乾燥手順後では68%、二次乾燥手順後では、8分後が51%、10分後が48%、12分後が43%である。すなわち、実施例によれば、一次乾燥手順では、毛髪を三割程度(32%)乾燥させ、二次乾燥手順では、毛髪を五割から六割程度(49%から57%)乾燥させることで、適切な毛髪の状態となる。
【0061】
<第二の検証>
第二の検証では、ダメージ処理された幅30cm、長さ220cの蓑毛が3枚重ねて縫い付けられた毛束が用いられた。実施例1から8、比較例1から8の合計16本の毛束が用いられ、それぞれ、洗髪手順、一次乾燥手順、二次乾燥手順を経る。二次乾燥手順では、毛髪処理装置1が用いられ、比較例では、ハンドドライヤーが用いられた。ダメージ処理は、ブリーチが一回、パーマが一回施術された場合である(ビューライトNA−25s 25%水溶液に一時間浸漬後、約40度の湯で洗浄、ハンドドライヤーで乾燥したもの。)。
【0062】
16本の毛束における櫛どおり時の荷重は、下表4のとおりである。櫛どおりのテストでは、コーミングテスター(岩瀬コスファ株式会社製)が用いられ、毛束に櫛を十回とおし、そのうちの八回目から十回目のそれぞれにおけるピーク値の平均が算出された。
【0064】
16本の毛束を、ビューライトNA−25s 25%水溶液に十分間浸漬させ、約40度の湯で洗浄した。実施例1から8は、ウイッグに取り付けられた状態で十分間、毛髪処理装置1による二次乾燥手順が実行された。比較例1から8は、ウイッグに取り付けられた状態で十分間、150mm離れた位置からハンドドライヤー(Highモード)で乾燥した。櫛どおり時の荷重は、下表5、表6のとおりである。
【0067】
実施例の平均と比較例の平均とから、櫛どおり時の荷重に大きな相違はないともいえるが(表6参照。)、下表7、表8に示されているとおり、比較例では、ハンドドライヤーによる乾燥後、櫛どおり時の荷重が増えたのに対し、実施例では、毛髪処理装置1による二次乾燥手順後、櫛どおり時の荷重が減っている。
【0070】
さらに、二次乾燥手順またはハンドドライヤーによって乾燥した16本の毛束における静電気を測定したところ、下表9、表10に示されているとおり、実施例の静電気は、比較例の静電気の1/3程度である。このことは、実施例の毛髪の内部に水分が残されていることから、毛束が帯電し辛いためであると考えられる。
【0073】
以上、本開示の実施形態を詳述したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。そして本開示は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。