(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一のプレート要素の生成要素の前記二つ以上の第一の集合は、前記第一のプレート要素の異なるそれぞれの扇形表面部分をなし、前記第二のプレート要素の生成要素の前記二つ以上の第二の集合は、前記第二のプレート要素の異なるそれぞれの扇形表面部分をなす、請求項1記載の装置。
【背景技術】
【0002】
機械的エネルギーの小規模な源を使用可能な形の電気エネルギーにする収穫または変換は、近年、技術分野が急速で実質的な進展を経るとともに、かなりの関心を集めている分野である。
【0003】
多くの関心の焦点となってきた具体的な一つの分野は、摩擦電気エネルギー生成の分野である。摩擦電気効果(摩擦電気帯電としても知られる)は、物質が摩擦を通じて異なる物質と接触した後に帯電する、接触によって誘起される帯電である。摩擦電気発電は、摩擦電気効果を静電誘導と結合する方法を通じて、機械的エネルギーを電気エネルギーに変換することに基づく。歩行、ランダムな体の動き、風が吹くこと、振動または海の波のような源からの、普通なら無駄になる機械的なエネルギーを捕捉することによって、摩擦電気発電を、センサーおよびスマートフォンのようなウェアラブル装置に電力を与えるために利用することが提案されている(たとえば非特許文献1参照)。
【0004】
その最も単純な形では、摩擦電気発電機は、そのような異なる物質の二枚のシートを使い、一方が電子供与体、他方が電子受容体となる。それらの物質の一つまたは複数が絶縁体であることができる。他の可能な物質は半導体物質、たとえばネイティブな酸化物層を含むシリコンを含みうる。それらの物質が接触させられると、一方の物質から他方に電子が交換されて、両物質に相互的な電荷を誘起する。
【0005】
その後それらのシートが離されると、各シートは、両者の間のギャップによって隔離された(異なる極性の)電荷を保持し、電位が生じる。二つの物質表面に電極が配置されて電気的な負荷が両者の間に接続されると、それらのシートの、横方向であれ垂直方向であれどんなさらなる変位でも、応答して、両電極の間の電流の流れを誘起する。これは単に静電誘導の例である。二つのプレートのそれぞれの電荷中心の間の距離が増すにつれて、ギャップを介した両者の間の引きつける電場は弱まり、その結果、二つの外側電極の間の電位差が増大する。負荷を介した電荷の電気的引力が、ギャップを介した静電的な引力に打ち勝ち始めるからである。
【0006】
このようにして、摩擦電気発電機は、接触帯電(摩擦帯電)と静電誘導という二つの主要な物理的機構を通じて、機械的エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0007】
プレートの電荷中心の間の相互の離間を循環的に増減させることによって、プレートの間で行ったり来たり流れる電流を誘起し、それにより負荷を通じた交流電流を生成することができる。
【0008】
近年、非特許文献2に開示されるように、この効果を利用する、発電(環境発電)および電力変換のための台頭しつつある材料技術が、開発された。この効果に基づいて、いわゆる摩擦電気発電機(TEG: triboelectric generator)のいくつかの装置構成が開発された。
【0009】
2012年のその最初の報告以来、TEGの出力電力密度は大幅に改善された。体積電力密度は、立方メートル当たり400キロワット超に達することができ、約60%の効率が実証された(非特許文献2)。高い出力性能に加えて、TEG技術は、低い生産コスト、高い信頼性および堅牢性ならびに低い環境への影響といった数多くの他の利点を伴う。
【0010】
TEGは、発電機として使用されうる。すなわち、たとえば振動、風、水、ランダムな体の動きからのエネルギー収穫、またはさらには機械的に利用可能なパワーの電気への変換である。生成される電圧は電力信号である。
【0011】
TEGは大まかに四つの主要な動作クラスに分けられる。
【0012】
第一の動作モードは、垂直接触分離モードであり、二つ以上のプレートが印加される力によって、循環的に接触させられ、あるいは離間される。これは、たとえば靴において使用されうる。ユーザーが歩を進めるたびにユーザーによってはたらかされる圧力が、プレートを接触させるために利用される。そのような装置の一例が非特許文献3の論文に記載された。ここで、装置は、ジグザグ形状の基板上に形成された多層構造を有する。装置は、接触帯電に起因する表面電荷転移に基づいて動作する。構造に圧力がかけられるとき、ジグザグ形状は圧縮されて異なる層の間の接触を生じ、圧力が解放されると接触が解放される。収穫されたエネルギーはたとえば、モバイル・ポータブル装置の充電のために使われてもよい。
【0013】
第二の動作モードは、線形スライド・モードであり、プレートは、プレート間の重なりの面積を変えるために、互いに対して横方向にスライドするよう誘導される。プレート間に電位差が誘起され、その瞬時の大きさは全重なり面積の変化率に比例する。反復的にプレートを互いと相互に重ならせたり重ならないようにしたりすることによって、プレート間に接続された負荷を通じて交流電流が確立される。
【0014】
開発されている線形スライド・モードTEGの一つの具体的なサブセットは、回転ディスクTEGであり、これは接触(すなわち、連続的な摩擦帯電および静電誘導)または非接触モード(すなわち、初期の接触帯電後は静電誘導のみ)で動作させることができる。回転ディスクTEGは典型的には、少なくとも一つの回転子および一つの固定子からなり、それぞれ一組の離間した扇形(円セグメント)として形成される。二つのディスクが互いに対して回転するにつれて、扇形は重なり合い、次いで分離する。上記のように、二つの横方向にスライドする――逆に帯電した――層の間には電流が誘起され、その大きさは重なりの面積の変化率に比例する。回転子のそれぞれの連続的に離間された扇形が所与の固定子扇形と重なり、次いで重ならなくなるので、二つの扇形プレートの間に電流が誘起される。誘起される電流は、初期にプレートの重なりが増す際は第一の方向であり、次いでプレートの重なりが減る際には逆の方向である。
【0015】
スライド運動からエネルギーが収穫できるようにする設計が非特許文献4の論文に開示されている。一対の静止電極の間で、自立的な(freestanding)可動層がスライドする。可動層は、静止電極と接触しないよう配置されてもよいし(すなわち、静止電極の上に小さな間隙)、あるいはすべり接触をしてもよい。
【0016】
第三の動作モードは、一つの表面がたとえばグラウンドされており――たとえばフロア道路であり――、この第一の表面とグラウンドとの間に負荷が接続される単一電極モードである(非特許文献5参照)。第二の表面――第一の表面と電気的に接続されていない――は第一の表面と接触させられ、第一の表面を摩擦帯電させる。第二の表面がその後第一の表面から離されると、第一の表面における過剰な電荷はグラウンドに駆動され、負荷を通じた電流を与える。このように、この動作モードでは、出力電流を提供するために(単一層上の)単一の電極が使われる。
【0017】
第四の動作モードは、電気的接続がなされていない任意の動くオブジェクトからエネルギーを収穫するために設計される自立摩擦電気層モードである。このオブジェクトは、たとえば通行する自動車、通行する列車または靴であってもよい(再び非特許文献2を参照)。
【0018】
摩擦電気発電機のさらなる設計もある。たとえば、接触帯電に基づく二重アーチ形状の構成である。圧力により、それらのアーチが閉じてアーチ層の間の接触をなさせる。圧力が解放されるとアーチは開いた形状に戻る。周囲振動からエネルギーを捕捉するための調和共振器として形成される摩擦電気ナノ発電機も提案されている。
【0019】
たとえばジョージア工科大学によって提示される現状技術の摩擦電気ナノ発電機は、現在のところ、数ミリワットの範囲の低電力出力を実証できるだけである。特に、TEGの典型的な出力電力は現在のところ、数百ボルトの範囲の電圧レベルと数ミリアンペアの範囲の電流レベルからなる。さらに、既知のTEGの出力は、高電圧パルスの高周波数の規則的反復パターンからなる。これは、既知の装置における電極の周期的レイアウトが比較的高い動きのレートと組み合わさった結果である。
【0020】
そのような高周波数、高電圧の出力は、最も一般的な実際上の応用の多くにとって直接の電力供給としては不適であり、コンポーネントに電力を与えるのに使用できる前に、しばしば一つまたは複数の変成器(transformer)または増幅器回路による変換を必要とする。しかしながら、そのような出力によって直接駆動されることのできるある種のクラスの装置が存在する。具体的には、電気活性ポリマー(EAP)デバイス、LCDおよび電気泳動デバイス、たとえばディスプレイまたは微小流体工学デバイス(特に誘電泳動挙動を示すもの)のような装置である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
電気活性ポリマーは特に、TEGによる直接的な電力および制御のための最も有望な技術の一つを表わす。これらの材料は、きわめて低い機械的複雑さ、高い信頼性および安い製造コストの利点を提供する微小スケール・アクチュエーター・デバイスの基礎をなすために使用されうるからである。EAPの入力電圧要件は、現状技術のTEGによって典型的に出力されるレベルと同様であり、EAPは直接駆動のために特に好適となる。しかしながら、電圧および電流レベルはよく適合しているものの、入力および出力周波数は適合しておらず、TEG出力周波数は典型的には100Hz〜5000Hzの範囲内にはいるが、EAPはより一般的には(たとえば皮膚のアクチュエーションのような実際上の応用のために好適となるために)0.1Hz〜10Hzの範囲により近い入力周波数を要求する。
【0023】
さらに、同様の原理で動作する(たとえばエレクトレットに基づく)が特に摩擦電気効果は利用していない発電機の他の変種も、一般的なコンポーネントを直接駆動するために好適でない周波数で高電圧出力を提供するという同じ欠点をもつことがある。そのような発電機は一般に、二つ以上の帯電した要素の相対運動を通じて機能する任意の発電機を含みうる。それには、たとえば、静電誘導を通じて電力を生成するが、互いに動く要素の摩擦帯電を通じて機能するのではない誘導ベースの発電機が含まれる。
【0024】
現状技術の発電機の周波数ミスマッチに対する一つの解決策は、単に、発電機に加えて、発電機の出力周波数を修正できる、変成器または増幅器回路のような波形修正器を設けることである。だがそのような追加的な回路は当然、全体的なシステムに対して電力消費、追加的コストおよび複雑さを加え、よって効率、コストおよび簡単さの観点から望ましくない。
【0025】
現状技術の発電機における上記の欠点に鑑み、特定の所望される波形をもつ出力電流を、相互に帯電した発電要素の相対運動から直接生成するためのシステムであって、専用の波形生成器または波形操作器を要求しないものが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、請求項によって定義される。
【0027】
本発明のある側面によれば、
請求項1記載のような電流波形を生成する装
置が提供される。
【0028】
本発明は、複数の生成器構成の出力波形を組み合わせるまたは重ね合わせる原理に基づく。たとえば、各構成は、異なる周波数をもつ出力波形を生成するよう適応されていてもよい(たとえば、一つの生成構成の周波数が他の生成構成の周波数と異なる)。それにより、特定の所望される波形をもつ全体的な結果的な出力波形を提供するためである。ここで、特定の所望される波形は、所望される周波数をもつ波形をもつ。
【0029】
よく知られているように、わずかに異なる周波数をもつ正弦波信号が重ね合わされるとき、結果は、低周波数の振動する振幅の包絡線内でゆらぐ高周波数信号成分を含む変調された信号である。高周波数信号および包絡線両方の周波数は、重ね合わされる二つ以上の成分信号の周波数に直接的に依存する。したがって、成分信号の周波数を注意深く選択することによって、幅広い(連続的)範囲の可能な結果的な波形の任意のものが生成されうる。成分信号の数が増すにつれて、達成可能な波形の範囲も増大する。この範囲は、成分信号の無限級数(すなわちフーリエ級数)という理想的な極限では、すべての可能な波形を包含するよう拡張される。
【0030】
それぞれ特定の所定の周波数の出力電流を生成するよう適応された複数の生成器構成を設けることによって、――これらの複数の成分出力の組み合わせから――前もって決定できる波形をもつ全体的な結果的出力電流が形成されてもよい。したがって、前記複数の生成器構成の出力周波数を注意深く選ぶことによって、本発明の実施形態によって、ある範囲の特定の所望される波形の任意のものをもつ電気的出力波形が提供されうる。ここで、前記範囲は、設けられる生成構成の総数に応じて制約される。
【0031】
各生成構成によって提供される出力波形の周波数は、その構成が有する前記第一および第二の組の生成要素の構造、物質組成および/または機械的構成に依存しうる。これは、限定しない例として、生成要素のサイズおよび/または形状またはたとえば前記組の要素が配置される幾何学的パターンを含みうる。
【0032】
例において、前記複数の生成要素の前記二つ以上は、異なるピーク電圧または振幅をもつ出力電流を生成するよう適応されてもよい。このようにして、当該装置の結果的な出力波形の周波数のみならず、前記波形のピーク振幅も制御されうる。
【0033】
例において、各構成が有する両方の組の生成要素が電荷を保持するよう適応されてもよく、あるいは一方のみが電荷を保持するよう適応されてもよい。どちらの場合も、二つの組の要素の間の相対運動によって電力の静電誘導を容易にするために、第一の組の生成要素は、第二の組の要素とは異なる電荷をもつべきである。
【0034】
ある例示的な実施形態群によれば、電力生成器は、一つまたは複数の摩擦電気電力生成器を有していてもよい。この場合、前記複数組の生成要素は、摩擦電気電極の組または摩擦電気材料の表面の組であって、相互変位に応答して静電的に電流を生成するよう適応されているものを含んでいてもよい。
【0035】
そのような実施形態のある種の具体例では、各生成器構成は別個の摩擦電気生成器であって、第一および第二の組の生成要素が第一および第二の摩擦電気生成器プレートに含まれて、互いに対して動いて電流を生成するよう適応されていてもよい。だが、代替例では、二つ以上の生成構成が単一の摩擦電気生成器の一部として含まれてもよい。たとえば、互いに対して動いて出力電流を生成するよう適応された三つ以上の積層された生成器プレート要素を有する摩擦電気生成器が設けられてもよい。この場合、各プレート要素は、たとえば一つまたは複数の組の生成要素を有していてもよい。あるいはまた、二つだけの生成器プレートを有するが、各プレートが複数の組の生成器要素を有する、摩擦電気生成器が設けられてもよい。たとえば、第一のプレートが生成器要素の第一の諸集合を有し、第二のプレートが生成器要素の第二の諸集合を有する。
【0036】
しかしながら、本発明の実施形態は、摩擦電気ベースの発電に限定されるものではなく、二つ以上の帯電した要素の相対運動を通じて機能する電力生成器の任意の変種を含みうる。それには、静電誘導を通じて電力を生成するが、相互に動く要素の摩擦帯電を通じて機能するものではない誘導ベースのまたはマイクロ・エレクトレット発電機が含まれる。
【0037】
これらまたは本発明の他の任意の例示的実施形態(摩擦電気ベースの実施形態を含む)によれば、電力生成器は、互いに対して可動であるよう構成された、少なくとも第一のプレート要素および第二のプレート要素を有していてもよく、前記第一のプレート要素は、前記複数の生成器構成の生成要素の前記第一の諸集合の二つ以上を有し、前記第二のプレート要素は、前記複数の生成器構成の生成要素の前記第二の諸集合の二つ以上を有する。
【0038】
より具体的な例では、生成要素の前記第一および第二の諸集合は、前記第一および第二のプレート要素の表面部分のそれぞれの第一および第二の諸集合をなしてもよい。
【0039】
プレート要素は、互いに対して回転可能であるよう構成されたディスク要素であってもよい。この場合、前記第一のプレート要素の生成要素の前記二つ以上の第一の集合は、前記第一のプレート要素の表面部分の異なるそれぞれの円環状構成をなしてもよく、前記第二のプレート要素の生成要素の前記二つ以上の第二の集合は、前記第二のプレート要素の表面部分の異なるそれぞれの円環状構成をなしてもよい。
【0040】
代替的な組の例では、前記第一のプレート要素の生成要素の前記二つ以上の第一の集合は、前記第一のプレート要素の異なるそれぞれの扇形表面部分をなしてもよく、前記第二のプレート要素の生成要素の前記二つ以上の第二の集合は、前記第二のプレート要素の異なるそれぞれの扇形表面部分をなしてもよい。
【0041】
一つまたは複数の例示的実施形態によれば、異なる生成構成の生成要素の、当該構成の生成要素の前記第一の集合と第二の集合の間の相対運動の方向に平行な方向に沿っての寸法は、異なっていてもよい。所与の集合の生成要素の寸法は、他のパラメータと一緒になって、前記集合によって生成される電流の出力周波数および全体的な波形に影響しうる。生成要素の所与のパターンまたは構成について、より多数の(要素間の相対運動の方向に沿って)より狭い要素のほうが、たとえばより少数のより幅広い要素よりも、高い周波数出力を生成する。さらに、(要素間の相対運動の方向に沿って)より幅広の要素は、より狭い要素よりも大きな振幅の出力信号を生成する傾向がある。
【0042】
代替的または追加的に、異なる生成構成の成分生成要素の間の、生成要素のそれぞれの第一の集合と第二の集合の間の相対運動の方向に平行な方向に沿っての離間距離は、異なっていてもよい。これは、各生成要素の出力電流の周波数および全体的な波形の両方に影響しうる。たとえば、広く離間された狭い要素は、鋭い、狭い電流パルスを含む波形を生成しうる一方、密接した間隔の幅広い要素は、よりなめらかで、より連続的な波形を生成しうる。
【0043】
異なる生成構成の生成要素の材料組成は、いくつかの実施形態では、異なっていてもよい。材料組成は、たとえば生成要素によって保持されることのできる電荷の量に影響しうる。それはひいては、それぞれの生成構成によって生成されうる電流プロファイル(たとえばピーク電圧)に影響する。
【0044】
一つまたは複数の実施形態によれば、各生成器構成の生成要素の前記第一および第二の集合の間の相対運動は、前記第一および第二の集合の間の機械的な結合に依存してもよく、前記機械的結合の物理的性質は、それぞれの各生成構成について異なる。これらの実施形態は、たとえば、二つ以上のプレートが加えられる力によって循環的に接触させられたり離されたりする、一つまたは複数の接触‐離間モード型摩擦電気生成器構成を含みうる。ここで、プレートの接触および分離を媒介する機械的結合の物理的性質は、たとえば所与の加えられる力に応答しての接触および分離のレートに影響するよう調整されてもよく、このレートはひいては生成される出力電流の波形プロファイルに影響する。より速いレートはより高い周波数の出力を生じ、より遅いレートはより低い周波数の出力を生じる。
【0045】
一例では、機械的結合は、ばね結合を含み、各生成構成についてのばね結合は異なるばね定数をもつ。
【0046】
他の例では、各生成器構成の生成要素の前記第一および第二の集合の間の相対運動は、ヒンジ結合に依存してもよく、ヒンジ結合の最大角度広がりはそれぞれの各生成構成について異なる。ヒンジ結合の最大角度広がりは、たとえばヒンジでつながれるそれぞれの生成要素が何らかの所与の加えられる力に応答して近づけられたり離されたりするレートに影響することがあり、これはひいては生成される電流の出力波形(たとえば生成される電流の周波数)に影響する。
【0047】
一つまたは複数の実施形態によれば、前記接続回路は、前記複数の出力電流の間の直列接続を提供してもよい。
【0048】
前記接続回路は、いくつかの場合には、フィルタ回路を有していてもよい。フィルタ回路はたとえば、ピーク検出器回路を含んでいてもよい。これは、前記複数の生成器構成の複数の出力電流の重ね合わせを通じて生成される結果的な変調された出力電流が、振動する振幅包絡線によって与えられる低周波数成分のみを残すようフィルタリングされることを許容する。このようにして、前記複数の、より高周波数の生成器出力から、低周波数の出力信号が生成されうる。
【0049】
本発明のもう一つの側面に基づく例は、アクチュエーターであって:
上記の例示的実施形態の一つまたは複数に基づく、電流波形を生成する装置と;
前記装置と電気的に接続されていて、電気活性ポリマー材料要素を有するアクチュエーター構造とを有する、
アクチュエーターを提供する。
【0050】
本発明のさらなる側面によれば、電気生成器によって出力電流を生成する方法であって、前記生成器は、接続回路によって電気的に接続された複数の生成構成を有し、各生成構成は異なる周波数をもつ出力電流を生成するよう構成されており、各構成は:
生成要素の第一の集合および生成要素の第二の集合を有し、その少なくとも一つは電荷を保持するよう構成されており、当該方法は:
前記複数の生成構成の各生成構成の生成要素の前記第一の集合と第二の集合の間の相対運動を誘起し;
前記複数の生成される出力電流を組み合わせ、それにより特定の決定された波形をもつ結果的な出力電流を生成することを含む。
【0051】
この方法は、たとえば、所定の周波数の出力電流を生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、複数の電力生成構成によって生成された複数の異なる周波数の出力電流の組み合わせを通じて、特定の所望される波形の電流を生成する装置を提供する。電力生成構成はそれぞれ、特定の周波数の出力電流を生成するために、相対的な電荷を保持し、互いに対して可動であるよう構成された、生成要素の少なくとも第一および第二の集合を有する。
【0054】
例示的実施形態のある特定の集合によれば、電力生成構成は、一つまたは複数の摩擦電気電力生成器に含まれるまたは一つまたは複数の摩擦電気電力生成器をなす。これらの摩擦電気電力生成器は、各生成構成の生成要素の第一および第二の集合の間の相対的な電荷が間欠的期間の物理的接触によって確立され、維持され、その期間中に各集合の要素に相互的な電荷が蓄積されること(摩擦帯電のプロセス)を特徴とする。これらの実施形態は、生成要素が、摩擦電気活性のある物質(それらが「帯電系列」の一部をなす)でできていることを要求する。
【0055】
特に摩擦電気ベースの生成器構成を組み込む多様な例示的実施形態について、これから詳細に、本発明の原理の例として、記述する。しかしながら、これらの例によって示される概念は、摩擦電気ベースのシステムへの特定の応用に限定されるものではなく、実は一連の具体的な電力生成器構成の任意のものに適用されうることを理解しておくべきである。そのような生成器は、一般に、二つ以上の帯電した要素の相対運動を通じて機能する任意の電力生成器を含みうる。それにはたとえば、静電誘導を通じて電力を生成するが、相互に動く要素の摩擦帯電を通じて機能するものではない誘導ベース生成器が含まれる。記載される各実施形態において、提供される摩擦電気ベースの生成器は、既存の現状技術の装置に対する記載される構成によって与えられる主要な利点を損なうことなく、異なる多様な生成器によって置き換えられても同じくらいによいことがありうることを理解しておくべきである。
【0056】
上記で説明したように、追加的な複雑な波形操作回路を設ける必要性なしに、生成装置から直接、特定の駆動波形(周期的または非周期的)および振幅を生成できることが望ましい。これは、誘導ベースの生成器装置によって生成される典型的な出力周波数とは異なる入力周波数を要求するコンポーネントを駆動することが望まれる場合に成り立つ。そのようなコンポーネントの一つの例示的なクラスは、電気活性ポリマー(EAP)ベースの装置、たとえばEAPベースのアクチュエーター装置である。これらは、たとえば典型的な摩擦電気生成器(TEG)によって提供される電流の周波数より著しく低い周波数の入力電流を要求する。
【0057】
従来技術では、EAPに電力を与えるための波形を生成することは、典型的には、専用の電子回路によって実現される。たとえば、電力はバッテリーを源とし、高電圧に変換され、その後、この高電圧が高電圧増幅器に電力を与えるために使われ、高電圧増幅器が、EAPに電力を与える所望される波形を生成する。
【0058】
本発明の実施形態は、その代わりに、複数のTEGによって生成されるまたは複数の出力波形を同期して生成するよう適応された単一のTEGによって提供される複数の出力波形の混合を通じて、要求される駆動波形を提供することを提案する。複数のわずかに異なる出力波形を組み合わせることは、生成装置から直接に、低周波数の駆動信号をもつ結果的な出力電流を生成することを許容する。該低周波数の駆動信号は、たとえばEAP装置に電力を与えるために使用されうる。
【0059】
図1は、本発明の実施形態に基づく、波形生成装置の簡単な第一の例を示している。本装置は回転ディスク摩擦電気生成器12を有し、該生成器は、単一の回転子16および二つの固定子18、20を有する。第一の固定子および回転子の上面22が第一の生成構成(generating arrangement)32をなし、第二の固定子および回転子の下面24が第二の生成構成34をなす。
【0060】
回転子の上面22は、摩擦電気材料表面部分38あるいは摩擦電気電極の円周状の配置(circumferential arrangement)を有し、第一の生成構成32のための生成要素(generating element)の第一の集合をなす。第一の固定子の下面26は、摩擦電気材料表面部分あるいは摩擦電気電極の協働的に離間された配置(co-operatively spaced arrangement)を有し、第一の生成構成32のための生成要素の第二の集合をなす。
【0061】
第二の固定子の上面28は、摩擦電気材料表面部分38あるいは摩擦電気電極の円周状の配置を有し、第二の生成構成34のための生成要素の第一の集合をなす。回転子16の下面24は、摩擦電気材料表面部分あるいは摩擦電気電極の協働的に離間された配置を有し、第二の生成構成34のための生成要素の第二の集合をなす。
【0062】
図2は、この実施形態の例において回転子16または第一18もしくは第二20の固定子の表面が有しうる摩擦電気材料表面部分38あるいは摩擦電気電極の円周状の配置の上面図を示している。これらの表面部分は、それらが結合されたディスク要素50の円周状に分離された扇形領域をなす。図示した具体的なパターンは単に例解のためであり、この実施形態の例において、表面領域38の間隔、配置または構成が異なることがあることを理解しておくべきである。実際、のちに論じるように、
図1の特定の例については、表面部分の特定のパターンまたは配置は、二つの固定子のそれぞれについて異なる(回転子の上面22および下面24のそれぞれにおいて対応する相互的な配置(reciprocal arrangement)が提供される)。
【0063】
先に論じたように、回転ディスクTEGは、互いに回転するディスク要素の向かい合う面に形成された摩擦電気活性物質の離間した扇形の相続く重なりおよび分離を通じて電力が生成される、線形スライド・モードTEGの特定のサブセットである。上記のように、二つの横方向にスライドする――逆に帯電した――層の間に、重なりの面積の変化率に比例した大きさをもつ電荷が誘起される。回転子のそれぞれの連続して離間した扇形は、所与の固定子扇形と重なっては離れ、よって(負荷があれば)二つの扇形プレートの間に電流が誘起される。電流は、最初、プレートの重なりが増加していく際には第一の方向であり、次いで、プレートの重なりが減少していく際には逆方向である。その結果は交流電流であり、中でも摩擦電気表面部分の表面積および物質組成に関係するピーク振幅をもち、中でもディスク間の相対的な回転速度と、摩擦電気表面部分のパターンの相対的な間隔もしくはピッチに関係する周波数をもつ。
【0064】
図1の実施形態の回転子16が回転する際、回転子の表面部分38と第一の固定子18との相対回転が、第一の固定子の下面26の前記表面部分の特定の配置に関係する第一の周波数をもつ、第一の生成構成からの出力電流40を生成する。同時に、回転子の表面部分と第二の固定子20との相対回転が、第二の固定子の前記表面部分の特定の配置に関係する第二の周波数をもつ、第二の生成構成34からの出力電流42を生成する。第一および第二の固定子は、わずかに互いに異なる表面部分38パターンまたは配置をもつよう構成され(たとえば、それぞれの表面部分の間の異なる間隔をもつ)、それにより、わずかに異なる周波数をもつ第一および第二の出力電流が形成される。
【0065】
二つの生成構成の電気出力は組み合わせ器回路46に電気的に接続され、該組み合わせ器回路46がそれら二つの出力電流を組み合わせるまたは混合することにより、両者の組み合わせからなる第三の結果的な出力電流48を生じる。
【0066】
二つのDC直流電圧源が互いに直列に接続される場合、全出力は、二つの入力電圧の和になる。同じ原理はAC電圧源にも当てはまるが、ここでは、二つの信号の間の位相シフトも考慮に入れる必要がある。信号が同相であれば、全出力の振幅は二つの入力源の振幅の和に等しくなる。二つの電圧源の間の位相シフトが180°である場合には、結果はゼロ出力になる。
【0067】
二つの源が(本発明の実施形態におけるように)その周波数において異なる場合、結果は、変調された出力信号であり、それは
図3に示される上のグラフにおいて例示的に描かれている(V(V1+,V2-)とラベル付けされている)。これは、同じ振幅だがわずかに異なる周波数をもつ(第一および第二の生成器構成からの)二つの源信号を示しており、これらが組み合わされてAM(振幅変調された)信号をなす。V(V1+,V1-_V2+)は第一の例示的な生成構成の出力電圧を表わし、V(V1-_V2+,V2-)は第二の例示的な生成構成の出力電圧を表わし、V(V1+,V2-)は第一および第二の生成構成の組み合わされた出力電圧を表わす。回路中で電圧V1+、V1-_V2+およびV2-が出てくる位置は
図4に見ることができる。V1-_V2+は、第一の生成器TEG1の負側の電圧V1-が第二の生成器TEG2の正側の電圧V2+と同じであることを表わす(両者が直列に接続されているため)。
【0068】
変調された信号V(V1+,V2-)の包絡線64は、二つの入力周波数の間の差に等しい周波数で振動する。二つの周波数がわずかに異なるだけである場合には、包絡線は入力周波数よりずっと低い周波数をもつことがある。この低い周波数が、電気活性ポリマー(EAP)デバイス(たとえばEAPアクチュエーター)のような低入力周波数コンポーネントの直接駆動に好適なように(二つの入力周波数の注意深いエンジニアリングを通じて)設計されうる。
【0069】
しかしながら、組み合わされた出力信号V(V1+,V2-)は、それ自身、いまだ高周波数成分を有しており、該信号をEAPデバイスに加える前に、該高周波数成分をフィルタ除去する必要がある。これは、たとえば、一つまたは複数の半波整流器回路を有する組み合わせ器回路68を通じて達成されうる。
図3の下のグラフは、AM信号V(V1+,V2-)を、二つの半波整流器(一方は正電圧用、他方は負電圧用)からなるフィルタ回路を通過させることによって生成された例示的な出力波形を示す。V(+out)は、正の半波整流器の出力信号を表わす。V(-out)は、負の半波整流器の出力信号を表わす。
図4は、半波整流器回路68を有する、
図1の装置のための一つの例示的な電気的構成を示している。
【0070】
図4の回路は、二つの端子に付随するダイオードと、低域通過RCフィルタとを有する半波整流器の例である。他の半波整流器または包絡線検出器が使われてもよいことはもちろんである。
【0071】
ひとたび半波整流器を通されたら、結果として得られる電圧波形は、小さなリプルを含む、包絡線信号の整流された信号として現われる。しかしながら、低周波数での動作のために意図されているEAPは典型的には、かなり大きな容量をもち、この大きな容量が当然ながら、高周波数リプルをさらにフィルタリングする作用をする。
【0072】
図5では、組み合わされたTEG出力信号64の包絡線の表現が概略的に描かれており、その上には、ひとたびこの組み合わされた信号が
図4の半波整流器68を通過したときの、結果として得られるフィルタリングされた出力波形70が描かれている。
【0073】
TEG 12の設計は、第一および第二の生成構成が異なる周波数をもつ出力電流を生じるよう構成される。これを達成する一つの方法は、第一および第二の固定子に対して(そして協働的に、回転子の上面22および下面24に)、異なるそれぞれの周方向間隔をもつ生成要素(摩擦電気表面領域38または摩擦電気電極)のそれぞれのパターンを与えることであろう。このようにして、回転子16が所与の速度で回転する際、より狭い間隔をもつパターンは、より高い周波数をもつ出力電流を生じ、より幅広い間隔をもつパターンは、より低い周波数をもつ出力電流を生じる。
【0074】
代替的実施形態では、異なる周波数は異なる仕方で与えられてもよい。たとえば、
図1の特定の例は単一の回転子および二つの固定子を有するが、代替例では、構成はその代わり、二つの付随する回転子とともに単一の固定子を有していてもよい。この場合、二つの生成構成の表面部分の二つのそれぞれのパターンの間で、異なる相対回転率が誘起され、第一の回転子は単一の固定子に対して第一の速度で回転するよう誘導され、第二の回転子は単一の固定子に対して第二の速度で回転するよう誘導される。このようにして、各生成要素の表面に設けられる生成要素(表面部分または電極)のパターンは同じであってもよく、それでも、二つの構成のプレート間に誘起される異なる回転率が、それぞれから異なる周波数をもつ出力電流が生成されることを保証する。
【0075】
さらなる例では、生成器は、三つ以上の回転子および/または固定子を有し、三つ以上の生成構成がたとえば単一の生成器によって提供されてもよい。いくつかの例では、
図1に示される複数の生成器12は、たとえば直列に接続されて設けられてもよい。それぞれが二つの生成構成をなし、各生成構成が異なる周波数および/または波形をもつ出力電流を提供するよう構成される。さらなる例では、二つ以上の生成構成は、単に、それぞれが異なる周波数をもつ出力電流を生成するよう構成されている複数の別個の単一回転子‐単一固定子TEGによって提供されてもよい。
【0076】
さらに、
図1の例は回転ディスク摩擦電気生成器を有するが、代替例では、電力生成はその代わりに、TEG構成の代替的な変種によって提供されてもよい。これは、たとえば、線形スライド・モードTEGの異なる変種を含みうる。この場合、
図1の例によって与えられたものとの直接対応する構成が、たとえば、二つの静止プレート要素の間にはさまれて配置された単一のスライド生成器プレート要素を有していてもよい。
図1の例と同様に、動く要素はこの場合、上面および下面での摩擦電気表面部分のわずかに異なるパターンを与えられ、静止要素はそれぞれその下面および上面で協働するパターンを与えられる。さらなる例において、TEGの任意の変種または他の誘導ベースの生成構成が代替的に考えられてもよい。
【0077】
上記で論じた例のそれぞれについて、複数の生成構成がそれぞれの場合において設けられ、各生成構成は異なる周波数をもつ出力電流を生成するよう構成される。ここで、各生成構成は、別個の、専用の生成器プレートまたは生成部材の提供を要求する。しかしながら、のちに例を記述する実施形態の第二の集合によれば、異なる出力周波数の複数の生成構成は、たった二つの相対的に動く生成プレートまたは部材を有する単一のTEG生成器によって提供されてもよい。これは、全体的なシステムの低下したコスト、複雑さおよび形状因子を許容する。
【0078】
これらの実施形態においては、単一の対の生成器プレート部材から、各プレート部材を複数のそれぞれの生成領域に分割することを通じて、複数の出力電流が生成される。各領域は、摩擦電気表面部分または摩擦電気電極の、それ自身の(わずかに異なる)パターンまたは配置を有する。単一の結果的な出力波形を生成するために、これら複数の領域の出力は次いで、提供される組み合わせ器回路によって、一緒に組み合わされる。
【0079】
そのような実施形態の簡単な第一の例が
図6に示されている。ここでは、単一の回転子82および単一の固定子84を有する回転ディスク摩擦電気生成器80が与えられている。回転子および固定子はそれぞれ、二つの異なる生成領域を有し、それらの生成領域はそれぞれ、各ディスクの表面のそれぞれの円環状部分を有する。回転子のこの第一の生成領域と、固定子の協働的な間隔およびサイズにされた第一の生成領域とが、第一の生成構成をなし、それが第一の周波数をもつ出力電流を生成する。回転子の第二の生成領域と、固定子の協働的な間隔およびサイズにされた第二の生成領域とが、第二の生成構成をなし、それが第二の周波数をもつ出力電流を生成する。二つの生成構成の電流出力は、組み合わせ器回路46によって組み合わされて、一つまたは複数のコンポーネントを直接的に駆動するために使われうる単一の結果的な出力波形を形成する。
【0080】
回転子82および固定子84についての摩擦電気表面領域の一つの例示的な配位が
図7に示されている。回転子および固定子の下面および上面はそれぞれ二つの円環状の生成領域100、102に分割され、各領域が円周状に配置された摩擦電気表面部分または電極38のそれぞれのパターンをもつ。パターンまたは配置は、各生成領域についてわずかに異なっている。この特定の例では、内側の円環状生成領域102よりも、外側の円環状生成領域100のほうに、より多数の摩擦電気電極が設けられる。回転子は所与の速度で回転し、内側と外側の生成領域の間の速度差は固定した比である。内側領域のほうにより少数の電極を設けるとは、ディスクの回転の所与の相対速度について、内側領域が、外側領域よりも低い周波数をもつ出力電流を生成することを意味する(ディスクの任意の所与のフル回転の過程で、内側領域によって生成される信号は、外側領域によって生成される信号よりも少数のピークを含むため)。
【0081】
図8は、内側100および外側102生成領域によって生成されるそれぞれの出力信号110、112を概略的に示している。各生成領域に設けられる電極38の総数および/または設けられる電極の面積を調整することによって、二つの出力電流の周波数は対応して調整されうる。それにより、結果として得られる組み合わされた出力は、特定の所望される波形を形成するよう調節されうる。
【0082】
結果として得られる出力波形はたとえば、電気活性ポリマー・ベースのアクチュエーターを駆動するのに好適であるよう調節されてもよい。
図9は、二つの成分出力電流110および112の組み合わせを通じて生成される、生成された低周波数出力電流120に応答しての、例示的なEAPアクチュエーターの誘起される偏向(x)122を、時間に対して概略的に示している。
【0083】
例において、摩擦電気電極38の具体的な物質組成は、異なる生成領域100、102について異なっていてもよい。異なる物質は、異なる電圧振幅をもつ出力電流の生成を許容してもよく、よって、それぞれの領域についての材料の注意深い選択は、結果として得られる組み合わされた出力波形の特定の電圧振幅(単数または複数)のための、本装置の最適化を許容する。
【0084】
図6および
図7の例では回転子および固定子はそれぞれ二つの円環状の生成領域を有しているが、代替例では、ディスクはより多数、たとえば三つ以上、たとえば四つ以上の生成領域に分割されてもよい。生成領域の数が増すにつれて(よって成分出力信号の数が増すにつれて)、達成可能な結果的波形の範囲が拡大する。よって、生成領域の数が多いほど、生成できる波形の点で、装置の柔軟性が高まる。
【0085】
図10は、第二の、少し変形した例示的実施形態に基づく、回転子および固定子に設けるための例示的な摩擦電気表面領域パターン130を示している。この第二の例によれば、回転子および固定子のそれぞれは、
図6および
図7の例と同様に、複数の円環状の生成領域130、132、134に分割され、各領域は、摩擦電気表面部分(または摩擦電気電極)38の、それぞれの円周状に配置されたパターンを有する。しかしながら、今回の例では、各生成領域のパターンは電気的に相互接続されており、最も内側の領域130のそれぞれの単一電極が、その次に内側の領域132にはいるときに二つ以上の電極に分岐し、さらにその次に内側の領域134にはいるときにも分岐し、設けられている領域について同様に分岐していく。よって、それぞれの連続する円環状領域は、直前の領域の二倍(あるいは、具体的な分岐構造によってはそれ以上)の数の摩擦電気電極(表面部分)38を有し、このようにして、それぞれの生成領域は、回転子および固定子の相対回転の際、異なる周波数をもつ出力電流を生成するよう適応される。最も内側の領域130は最低周波数の信号を生成し、最も外側の領域134は最高周波数の信号を生成し、中間のそれぞれの連続する円環状領域は両者の中間の周波数の信号を生成する。
【0086】
電極の分岐は本質的には、電極「木」構造の円周状に配列されたパターンをなす。それぞれの木は、最も内側の電極のうちの単一のものから発し、複数の円環状の生成領域を横断して動径方向に延びるにつれて、周方向に外側に広がる。それぞれの木は、前記複数の生成領域のそれぞれからの電極を含み、これらの電極はみな直列に接続されている。よって、回転子が回転する際のそれぞれの木の電気出力は、各生成領域の電極の出力周波数の組み合わせまたは重ね合わせで形成される「事前混合された」信号を含む。それぞれの木の分岐構造が同じであれば、それぞれによって生成される混合された出力信号も同じになる。したがって、すべての木の出力を単に組み合わせることによって、それぞれの個別の木の波形と同じ波形をもつが、個々の木の信号のそれぞれのピーク振幅の和に等しい振幅をもつ、装置からの全体的な出力が、提供されうる。
【0087】
「混合された出力」という用語は必ずしも、たとえば明瞭な単一の周波数をもつ、完璧になめらかな混合された出力への限定を含意しないことを注意しておく。いくつかの場合には、成分となる木信号の「混合」(すなわち重ね合わせ)は、いまだ複数の明瞭に区別可能な周波数成分から構成された出力波形を生じることがある。たとえば、1kHzの信号(たとえば)を含み、中間に明らかに別個の5kHzの信号が含まれる出力波形を生成することが可能であろう。この場合、組み合わされたまたは重ね合わされた出力は、信号のなめらかな混合ではなく、むしろさまざまな周波数のスパイクがいまだ明瞭に見える波形を有する。
【0088】
よって、この実施形態において、組み合わせ器回路は、少なくとも部分的には、TEGディスク自身の電極構造によって提供される。さらに、例において、さらなる組み合わせ器回路要素、たとえば
図1などの例のようなフィルタ回路(たとえばピーク検出器回路)が提供されてもよい。
【0089】
複数の生成領域は、円環状の表面領域である必要はない。
図11には、さらなる例示的実施形態に基づく電極の例示的配位が示されており、ここでは、単一の回転子および単一の固定子を有する回転ディスクTEGが提供され、二つのディスクの少なくとも一方が複数の円周状に配置された生成ドメインまたは領域140、144、146、148を有する。各生成領域はディスクの楔形または扇形の領域をなし、各扇形は、摩擦電気表面部分(電極)38の、わずかに異なる円周状パターンまたは配置を有する。
図11の特定の例では、各生成領域は、異なる数の摩擦電気電極を有し、それらの間に対応して異なるピッチまたは間隔をもつ。よって、回転子が回転する際、各生成領域のパターンは、わずかに異なる周波数をもつ出力電流を生成する。
【0090】
ここでもまた、各領域の出力を組み合わせることによって、各領域によって生成される個別の周波数に依存する波形をもつ、全体的な結果的出力が生成されうる。各領域の電極の表面積を、また各領域に設けられる電極の数を最適化することによって、結果として得られる組み合わされた出力は、特定の所望される波形に調節されうる。
【0091】
この実施形態の例において、各領域によって生成される電圧振幅を調整するために、各生成領域の摩擦電気表面部分について異なる材料が追加的に使われてもよい。さらに、いくつかの例では、回転子および固定子の両者が、ちょうど相互的な(reciprocal)電極配置を設けられてもよい。一方、他の例では、電極パターンは異なっていてもよい。たとえば、固定子だけが
図11のパターンを設けられて、回転子は単に標準的な、一様なパターンの均等な間隔の電極を有していて複数領域を全くもたなくてもよい。そのような実施形態でも、異なる周波数の複数の出力信号(固定子の異なる領域のそれぞれについて一つ)という所望される効果を生じるであろう。だが、ディスク要素の両方に電極のより複雑なパターンを与える必要はない。
【0092】
上述したように、本発明の目的のためには、提供される電力生成器は一般に、回転ディスク型の発電機である必要はない:本発明の原理は、幅広い範囲の異なる動作モードの異なる発電機の任意のものに適用されうる。
【0093】
図12および
図13には、線形スライド・モードTEG 152を有する例示的実施形態が示されている。このTEGは、固定子プレート154およびスライダー・プレート156を有し、それぞれ複数の摩擦電気表面部分(または摩擦電気電極)38を有する。
図13に示されるように、固定子プレートの幅は二つの異なる生成領域(AおよびB)に分割され、各領域は、摩擦電気電極38のわずかに異なる線形配置を有する。
図13の特定の例では、領域Bのパターンは、領域Aのパターンよりも、単位長さ当たり、より少数の電極を有する。図示していないが、スライダーの下面も二つの協働的な生成領域に分割され、各領域は摩擦電気電極の相互的なパターンを有する。スライダー156が固定子154の長さに沿って線形に動かされる際、固定子とスライダーの電極の間の相対運動が、各生成領域AおよびBについて一つずつ、二つの出力電流を生成する。領域Aについての出力電流は、領域Bについての出力電流より高い周波数をもつ。スライダーの所与の線形速度について、単位時間当たり、領域Bを横断するよりも領域Aを横断するほうが、より多数の電極が通過されるからである。
【0094】
二つの領域についての出力は、組み合わせ器回路(図示せず)によって組み合わされる。それにより、特定の波形をもつ、結果的な組み合わされた出力電流を生成するためである。設けられる電極38の表面積を最適化することによって、各生成領域の出力電流の電圧振幅が変えられる。
【0095】
図12および
図13の例に対する変形では、スライダー自身は、それぞれが固定子の電極と協働するよう構成された電極のパターンをもつ複数の異なる生成領域を有していなくてもよく、その代わり、その幅全体にわたって延在する諸電極の単一の一様なパターンを有しているか、あるいは二つの生成領域に分割されているが各領域が同じ電極パターンを有しているのでもよいことを注意しておく。
【0096】
さまざまな例において、各生成領域に設けられる摩擦電気電極のパターンは、いくつもの異なる仕方で変えられてもよい。たとえば、異なる領域の電極は、異なる物質組成を有していたり、異なる表面積を有していたり、異なる角度配向を有していたり、異なる外側寸法を有していたり、あるいは異なる幾何学形状を有していたりしてもよい。
【0097】
図14には、
図13の例に対する変形が示されている。ここでは、その幅ではなくその長さに沿って配列された複数の生成領域をもつ線形スライド・モードTEGが提供される。この実施形態によれば、少なくとも固定子の長さは、電極38の第一の線形パターンを有する第一の生成領域(A)と電極38の第二の線形パターンを有する第二の生成領域(B)との間で交互する。生成領域AとBのパターンは、異なる数の摩擦電気電極38を有し、対応して異なる間隔を有する。領域Aが領域Bより密なパターンをもつ。スライダー156が固定子154の上を線形に動く際、スライダーの下面に設けられた電極が、該電極が通過する生成領域の電極と結合し、それにより特定の周波数の出力電流を生成する。
【0098】
例において、固定子は(
図14に示されるように)連続する生成領域A、Bの単一の対にわたる長さに等しい長さをもつよう設けられてもよい。このようにして、任意の所与の時点において、スライダーのちょうど半分は固定子の領域Aセクションの部分を覆い、半分は固定子の領域Bセクションの部分を覆う。よって、任意の所与の時点において、スライダーの電極の半分は、前記より密なパターンと結合しており、半分は、より狭いパターンと結合している。つまり、固定子およびスライダーにまたがって生成される全体的な結果的な出力電流は、ちょうど(領域Bからの)より低い周波数の信号の半分と、(領域Aの)より高い周波数の信号の半分との混合を有する。
【0099】
代替例では、スライダーは、固定子と同じ長さ寸法を有していてもよい。さらに、異なる例では、二つより多くの異なる生成領域、たとえば三つまたは四つの異なる生成領域の系列であって固定子の長さに沿って循環的に繰り返すものを有する固定子が提供されてもよい。
【0100】
いくつかの場合には、異なる生成領域の電極は異なる材料でできていてもよい。これは、各生成領域からの出力電流が、たとえば特定の所望される電圧振幅のために最適化されることを許容しうる。さらに、電極のパターンは、多様な異なる仕方で、生成領域の間で異なりうる。先の
図13の例と同様に、これらは、例として、異なる表面積、異なる角度配向、異なる外側寸法または異なる幾何学形状を有する摩擦電気電極を含みうる。
【0101】
図15は、本発明の実施形態に基づく、TEGのそれぞれスライダーおよび固定子(または固定子およびスライダー)に設けられうる相補的な(complimentary)電極配置160、162のさらなる例を示している。この場合、スライダーおよび固定子はそれぞれ三つの異なる生成領域164、166、168に分割され、各生成領域は異なる電極パターンをもつ。各パターンは各成分電極の幅Wおよび電極間のピッチPの両方において異なる。幅WおよびピッチPは下部領域168についてのみ示されている。さらなる例では、各生成領域における要素の長さLも異なっていてもよいことを注意しておく。
【0102】
材料選択、表面テクスチャーおよびスライド速度に依存して、それぞれの異なる領域にまたがって生成される出力信号は、電圧振幅、電流振幅および/または周波数において異なりうる。電極面積、材料選択および生成領域当たりの摩擦電気活性領域の量を最適化することにより、所望される組み合わされた出力波形が生成されてもよい。
【0103】
各生成領域164、166、168の出力は、異なる周波数の出力電流を生成し、それら複数の電流を組み合わせることにより、たとえばEAPベースのアクチュエーター・デバイスを駆動するのに好適な、成分周波数のそれぞれより低い周波数をもつ、所望される波形が生成されうる。
【0104】
たとえば、所与のスライド速度において、スライド式(または回転式)TEGのさまざまな生成領域がそれぞれ、異なる周波数の正弦波様出力電流を生成する場合、重ね合わせを通じて方形波型の出力を生成するよう個別の周波数をエンジニアリングすることが可能である。これは、本質的には、前記複数の異なる周波数信号のフーリエ級数、すなわち:
I(t)=ASin(ωt)+BSin(3ωt)+CSin(5ωt)+…… (1)
を通じて形成されてもよい。そのような方形型信号は、固定子/回転子のさまざまな生成領域を注意深く設計して、互いの高調波である周波数をもつ出力電流を生成するようにすることを通じて生成されることができる。たとえば、
図15を参照するに、領域168のパターンは基本周波数ωをもつ信号を生成するよう適応されてもよく、領域166のパターンはこの周波数の第三高調波3ωを生成するよう適応されてもよく、領域164のパターンは第五高調波5ωを生成するよう適応されてもよい。
【0105】
よく知られているように、方形波に対する良好な近似が、フーリエ級数(1)の最初のいくつかの項の組み合わせによって生成されうる。よって、たった三つまたは四つの生成領域を有する固定子/回転子が、(正しく設計されれば)そのような近似的な方形波を生成するために十分でありうる。
【0106】
図16は、今度は多層タップ・モードTEG 172を有する本発明のさらなる実施形態を示している。TEGは、一連のジグザグ表面要素172を有する。それらのジグザグ表面要素はヒンジで結合されてアコーディオン様の配置をなし、力を加えることで圧縮されうる。このような圧縮に際して、隣接するヒンジ結合された要素176の表面が漸進的に互いにさらに接触させられる。TEGを交互に圧縮および伸長することにより、隣接する要素間の離間距離が循環的に変えられる。隣接する表面が、帯電系列からの異なる相補的な材料の摩擦電気物質層(または摩擦電気電極)を設けられていれば、このアクションは静電誘導を通じて両者の間に電流を生成する。TEGが圧縮される際に要素間に誘導される接触も、摩擦電気効果を通じてプレート要素を帯電させるはたらきをする。
【0107】
TEG 172の一方の側の例示的なセクションの正面および裏面の等角投影図が
図17に示されている。ここで、隣り合う生成要素176の向かい合う表面178、179が、異なる相補的な(complementary)摩擦電気材料層を有することが見て取れる。
【0108】
図16の実施形態では、TEG 172は二つの異なる縦に積層された生成領域AおよびBに分けられる。これらの領域は、隣接する表面要素の間の広がりの最大角が領域Bの要素について(角β)よりも領域Aの要素についてのほうが大きい(角α)点において異なる。結果として、TEGの圧縮の際、領域Bの要素がまず接触しはじめ、固定した下向き圧縮レートについては、領域Bの要素よりも速いレートで完全な接触状態にされる。よって、単一の圧縮‐伸長サイクルの過程で、領域Aの要素が領域Bの要素よりもゆっくり変化する出力信号を生成する(すなわち、領域Aは領域Bよりも低い周波数をもつ出力電流を生成する)。
【0109】
異なる領域によって生成される信号を組み合わせることによって、寄与する各領域の出力周波数の注意深いエンジニアリングによって調節されることのできる波形をもつ結果的な出力電流が、本装置によって生成されうる。
【0110】
図18は、TEGの単一の圧縮の過程で二つの生成領域によって生成される出力電流の差を概略的に示している。波形180が領域Bによって生成される例示的な信号を表わし、波形182が領域Aによって生成される対応する信号を表わす。
【0111】
代替的な実施形態では、隣接する要素間の角度α、βは、生成領域AおよびBの両方について同じであってもよい。だが、隣接する要素間のヒンジ結合の硬さ〔スチフネス〕が領域Bについてよりも領域Aについてのほうが大きいように構成されてもよい。つまり、TEGの圧縮の際、領域Aの要素は領域Bよりもゆっくりと近づけられる。結果として、領域Bよりも低い周波数をもつ領域Aからの出力信号が生成される。
【0112】
接触面積(幅および長さ)、材料の選択、要素176の対の間の角度、要素の対の間の硬さ、各生成領域における要素の総数および積層された層の周期性を変えることによって、さまざまな領域によって生成される異なる周波数を調整することが可能である。このようにして、出力信号の組み合わせに基づいて生成される全体的な結果的な波形が調節されうる。
【0113】
図16の特定の例は、ただ二つの異なる生成領域の積層された配置を有するが、代替例では、それぞれ異なる周波数の出力電流を生成するよう適応された任意の数の異なる生成領域をもつ構成が提供されてもよい。
【0114】
図19には、本発明のさらなる可能な実施形態が描かれている。この実施形態の例は、電流を生成するために摩擦電気生成器プレート間の相対運動を誘起するために環境振動を利用する振動ハーベスター型TEG生成器の適応に基づく。
【0115】
本実施形態については、複数(この場合二つ)の振動生成構成191、192を有する振動型TEG 190が提供される。各生成構成について、二対の可動生成プレート194がばね196によって支持枠202から懸下される。異なる生成構成のそれぞれについて、異なるばね定数をもつばねが設けられる。さらに、異なる振動要素の質量も異なっていてもよい。等しくないばね定数および/または異なる質量の組み合わせが、同一の振動運動にさらされるときに、異なる共振周波数を誘起する。このようにして、同じ外部の駆動振動が、これら二つのそれぞれの構成の可動プレートにおいて、異なる共振周波数の物理的振動を誘起する。結果として、二つの構成は異なる周波数をもつ出力電流を生成する。
【0116】
組み合わせ回路によって複数の生成構成の出力電流を組み合わせることによって、異なる構成のそれぞれのばねのばね定数および/または可動要素の質量の注意深いエンジニアリングによって調節できる波形をもつ結果的な出力電流が生成されうる。
【0117】
ばねおよび動く質量の好適な組み合わせを通じて、振動および重ね合わされた共振周波数から、複数高調波信号が生成されることができる。
図1〜
図18では、電極の反復パターンが特定の波形を生成するために使われているが、ここでは、複数のばね‐質量(ダンパー)TEGシステムの共振特性が、生成される波形信号についての主要な決定要因である。
【0118】
図面、本開示および付属の請求項の吟味から、本発明を実施する際に当業者によって、開示される実施形態に対する他の変形が理解され、実施されることができる。請求項において、「有する/含む」の語は他の要素や段階を排除するものではなく、単数形の表現は複数を排除するものではない。ある種の施策が互いに異なる従属請求項に記載されているというだけの事実が、これらの施策の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0119】
請求項に含まれる参照符号は範囲を限定するものと解釈されるべきではない。