(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、本発明の実施の形態に係る電波時計が腕時計である場合を例として説明する。
【0012】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態に係る電波時計について、説明する。本実施形態に係る電波時計1は、衛星が送信する時刻情報を含んだ衛星信号を受信し、当該受信した衛星信号を用いて時刻情報の修正を行う。
図1は、本実施形態に係る電波時計1の外観を示す平面図である。また、
図2は、電波時計1の内部構成を示す構成ブロック図である。同図に示すように、電波時計1は、アンテナ10と、受信回路20と、制御回路30と、電源40と、太陽電池41と、駆動機構50と、時刻表示部51と、操作部60と、を含んで構成される。
【0013】
アンテナ10は、衛星から送信される衛星信号を受信する。本実施形態では、アンテナ10は、GPS(Global Positioning System)衛星から送信される周波数約1.6GHzの電波を受信することとする。GPSは、衛星測位システムの一種であって、地球の周囲を周回する複数のGPS衛星によって実現されている。これらのGPS衛星は、それぞれ高精度の原子時計を搭載しており、原子時計によって計時された時刻情報を含んだ衛星信号を周期的に送信している。なお、以下では、衛星信号に含まれる時刻情報によって示される時刻を、GPS時刻という。
【0014】
受信回路20は、アンテナ10によって受信された衛星信号を復号して、復号の結果得られる衛星信号の内容を示すビット列(受信データ)を出力する。具体的に、受信回路20は、高周波回路(RF回路)21及びデコード回路22を含んで構成されている。
【0015】
高周波回路21は、高周波数で動作する集積回路であって、アンテナ10が受信したアナログ信号に対して増幅、検波を行って、ベースバンド信号に変換する。デコード回路22は、ベースバンド処理を行う集積回路であって、高周波回路21が出力するベースバンド信号を復号化してGPS衛星から受信したデータの内容を示すビット列を生成し、制御回路30に対して出力する。
【0016】
制御回路30は、マイクロコンピュータ等であって、演算部31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、RTC(Real Time Clock)34と、モータ駆動回路35と、を含んで構成される。
【0017】
演算部31は、ROM32に格納されたプログラムに従って各種の情報処理を行う。本実施形態において演算部31が実行する処理の詳細については、後述する。RAM33は、演算部31のワークメモリとして機能し、演算部31の処理対象となるデータが書き込まれる。特に本実施形態では、受信回路20によって受信された衛星信号の内容を表すビット列(受信データ)が、RAM33内のバッファ領域に順次書き込まれる。また、時刻情報の修正に用いられる閏秒補正値LSがRAM33内に記憶される。RTC34は、電波時計1内部での計時に使用されるクロック信号を供給する。本実施形態に係る電波時計1では、演算部31が、RTC34から供給される信号によって計時された内部時刻を、受信回路20によって受信された衛星信号に基づいて修正して、時刻表示部51に表示すべき時刻(表示時刻)を決定する。さらに、モータ駆動回路35が、この決定された表示時刻に応じて、後述する駆動機構50に含まれるモータを駆動する駆動信号を出力する。これにより、制御回路30によって生成された表示時刻が時刻表示部51に表示される。
【0018】
電源40は、二次電池等の蓄電デバイスを含んで構成され、太陽電池41によって発電された電力を蓄積する。そして、蓄積された電力を、受信回路20や制御回路30に対して供給する。特に電源40から受信回路20への電力供給路の途中にはスイッチ42が設けられており、このスイッチ42のオン/オフは制御回路30が出力する制御信号によって切り替えられる。すなわち、制御回路30は、スイッチ42のオン/オフを切り替えることで、受信回路20の動作タイミングを制御できる。受信回路20は、スイッチ42を介して電源40から電力が供給されている間だけ動作し、その間にアンテナ10が受信した衛星信号の復号を行う。
【0019】
太陽電池41は、文字板53の下に配置されており、電波時計1に対して照射される太陽光などの外光によって発電し、発電した電力を電源40に供給する。
【0020】
駆動機構50は、前述したモータ駆動回路35から出力される駆動信号に応じて動作するステップモータと、輪列と、を含んで構成され、ステップモータの回転を輪列が伝達することによって、指針52を回転させる。時刻表示部51は、指針52及び文字板53によって構成される。指針52は、時針52a、分針52b、及び秒針52cからなり、これらの指針52が文字板53上を回転することによって、現在時刻が表示される。なお、文字板53上には、
図1に示すように、時刻表示のための目盛だけでなく、後述する閏秒補正値LSの有効/無効や時刻情報受信の成否をユーザに示すためのマーカーも表示されている。これらのマーカーを用いた表示例については、後述する。
【0021】
操作部60は、電波時計1の使用者による操作を受け付けて、その操作内容を制御回路30に対して出力する。具体的に、本実施形態において操作部60は、
図1に示すように、第1操作ボタンS1及び第2操作ボタンS2の2つの操作ボタンと、竜頭S3と、を含んでいる。制御回路30は、操作部60が受け付けた操作入力の内容に応じて、後述する閏秒補正値LSの更新や衛星信号の受信等の処理を実行する。これにより、使用者は、操作部60を操作することで、閏秒の補正等の動作を電波時計1に実行させることができる。
【0022】
ここで、GPS衛星が送信する衛星信号の構成について、説明する。
図3は、GPS衛星から送信される衛星信号(航法データ)の構成を示す概要図である。同図に示されるように、各GPS衛星は、計25フレーム(ページ)を1セットとする航法データを繰り返し送信している。各フレームは30秒分の信号を含んでおり、GPS衛星は、全25フレームの信号を12.5分周期で送信する。さらに、各フレームは、5個のサブフレームから構成される。1フレームが30秒なので、1個のサブフレームは6秒分の信号に相当する。さらに、1サブフレームは、10ワードから構成され、1ワード30ビット、1サブフレーム全体で300ビット分の情報を含んでいる。
【0023】
各サブフレームの先頭ワード(第1ワード)は、TLM(TeLeMetry word)と呼ばれ、その先頭部分(すなわち、サブフレーム全体の先頭部分)には、当該サブフレームの開始位置を示すプリアンブルが含まれる。さらに各サブフレームの2番目のワード(第2ワード)は、HOW(HandOver Word)と呼ばれ、その先頭部分には、TOW(Time Of Week)と呼ばれる時刻情報が含まれている。このTOWは、週の始まり(日曜日の午前0:00)を起点としたGPS時刻を示す時刻情報である。電波時計1は、1又は複数のGPS衛星からこのTOWのデータを受信して、週番号WNの情報と組み合わせることで、GPS衛星によって計時されているGPS時刻を知ることができる。週番号WNは、TOWにより表される時刻が属する週の番号を示す情報であって、週に1度、日曜日の午前0:00になるごとにカウントアップされる。週番号WNの情報は、各フレームの第1サブフレーム内に格納されてGPS衛星から送信されている。
【0024】
電波時計1は、いずれかのサブフレームに含まれるTOWを受信することで、GPS衛星が送信している時刻情報を取得できる。しかしながら、この時刻情報が示すGPS時刻は、協定世界時に対して、閏秒によって生じる整数秒分のずれが存在する。具体的に、GPS時刻は、GPS衛星の最初の打ち上げ当時(1980年)以降に累積された閏秒の分だけ協定世界時とずれている。そのため、電波時計1は、GPS衛星から得られるGPS時刻を、閏秒の情報を用いて協定世界時に準拠した時刻に修正する必要がある。
【0025】
この修正に必要な閏秒に関する情報は、やはりGPS衛星から定期的に送信されている。具体的に、GPS衛星が送信する全25フレームの衛星信号のうち、第18ページ目のフレームの第4サブフレームに、閏秒情報が含まれている。当該サブフレームの後半5ワード(すなわち、先頭から数えて第151ビット以降)は、協定世界時に関する情報であって、この協定世界時に関する情報の中に、閏秒調整のためにGPS時刻に対して補正すべき整数値(以下、閏秒補正値LSという)の情報が含まれている。閏秒補正値LSは全航法データのうちの1個のサブフレームだけに含まれているので、12.5分に1回の周期でGPS衛星から送信されていることになる。本実施形態に係る電波時計1は、GPS衛星から受信した衛星信号に含まれる閏秒補正値LSを抽出することで閏秒の補正を行うが、GPS衛星から閏秒補正値LSの情報を受信できない場合の代替手段として、使用者が手動で閏秒補正値LSを変更することを可能にする機能を備えている。
【0026】
なお、閏秒補正値LSを含むサブフレームには、閏秒補正値LSとともに、次回の閏秒調整が行われる予定日時の情報(閏秒調整予告情報)が含まれている。この情報は、次回の閏秒調整の実施予定日が決定されると更新され、まだ次の閏秒調整実施タイミングが決定していない間は、前回の閏秒調整が実施された日時を示す情報になっている。この閏秒調整予告情報が未来の日時を示していれば、その日時が到来するまでは閏秒補正値LSが変更されないことが分かる。
【0027】
以下、本実施形態において制御回路30の演算部31が実行する処理の具体例について、説明する。演算部31は、ROM32に格納されたプログラムを実行することにより、機能的に、
図4に示すように、衛星信号受信部31aと、閏秒情報管理部31bと、時刻修正部31cと、を実現する。
【0028】
衛星信号受信部31aは、GPS衛星から送信される衛星信号を受信することにより、その中に含まれるTOW及び週番号WNのデータを取得する。なお、衛星信号受信部31aは、定期的にこのような時刻情報の取得処理を実行してもよいし、使用者の操作部60に対する指示操作に応じてこれらの処理を実行してもよい。さらに本実施形態では、衛星信号受信部31aは、予め定められたタイミングで、閏秒補正値LSを含んだサブフレームの受信を試みる。そして、受信に成功した場合にはその受信データの中から閏秒補正値LSを抽出し、RAM33内に格納する。
【0029】
閏秒情報管理部31bは、RAM33に格納された閏秒補正値LSの管理を行う。具体的に、RAM33には、閏秒補正値LSの情報とともに当該閏秒補正値LSの有効期限に関する情報(閏秒有効期限情報)が記憶されており、閏秒情報管理部31bは、この情報を用いてRAM33に格納されている閏秒補正値LSが有効か否か(すなわち、閏秒補正値LSの有効期限が切れているか否か)を判定する。さらに閏秒情報管理部31bは、閏秒補正値LSの有効期限が切れていると判断される場合には、使用者の指示により、手動による閏秒補正値LSの更新処理を実行する。すなわち、閏秒情報管理部31bは、RAM33に記憶されている閏秒補正値LSの有効期限が過ぎてしまった場合に、使用者の操作部60に対する指示操作に応じて、RAM33内に記憶されている閏秒補正値LSの表示及び更新を行う。閏秒情報管理部31bが実行する閏秒補正値LSの更新処理の具体例については、後述する。
【0030】
時刻修正部31cは、衛星信号受信部31aがGPS衛星から受信したGPS時刻の情報と、RAM33に記憶されている閏秒補正値LSと、を用いて、電波時計1の内部で計時されている内部時刻の修正を行う。具体的に、時刻修正部31cは、まずGPS時刻に閏秒補正値LSを加算することにより、協定世界時に基づく時刻情報を算出する。そして、制御回路30内で計時された内部時刻を、この協定世界時の時刻に一致するよう修正する。なお、時刻修正部31cによる修正の対象となる電波時計1の内部時刻情報は、RAM33内に格納され、RTC34から供給されるクロック信号に応じて更新されている。ここで時刻修正部31cは、閏秒補正値LSの有効期限が切れてしまっている場合にも、当該閏秒補正値LSを用いた時刻修正を行ってよい。電波時計1の内部で設定された有効期限が切れたとしても、現実に新たな閏秒の調整が実施されていなければ、RAM33に記憶されている閏秒補正値LSを用いて協定世界時に基づく時刻を算出できるからである。
【0031】
以下、閏秒情報管理部31bによって管理される閏秒補正値LSの有効期限について説明する。協定世界時に対する閏秒の調整は、協定世界時における各月の末日に実施されることになっている。そこで、例えば閏秒情報管理部31bは、手動による閏秒補正値LSの更新が行われた場合、少なくとも当該更新が行われた月の末日までは、現在記憶されている閏秒補正値LSが有効と判断する。また、閏秒の調整は6月末日及び12月末日に優先して実施されることになっており、現状ではこれらの日以外には実施されていない。そのため、閏秒情報管理部31bは、閏秒補正値LSの更新が行われた後、次の6月末日又は12月末日まで閏秒補正値LSが有効と判断してもよい。また、これに限らず、閏秒補正値LSの更新後、予め定められた期間が経過するまで閏秒補正値LSが有効であると判断してもよいし、予め定められた日時が到来するまで有効であると判断することとしてもよい。
【0032】
具体的に閏秒補正値LSの有効期限を管理する方法として、例えば閏秒情報管理部31bは、閏秒補正値LSが手動で更新されると、これに応じて、閏秒有効フラグを「有効」を示す値に更新するとともに、更新された閏秒補正値LSが何月まで有効かを示す情報(有効期限月の情報)を更新する。この例では、閏秒有効フラグと有効期限月の情報が閏秒有効期限情報として用いられる。一例として、2010年2月に閏秒補正値LSの更新が行われた場合、閏秒情報管理部31bは、6月及び12月のうち更新日後に先に末日が到来する月である2010年6月を有効期限月に設定する。その後、閏秒情報管理部31bは、毎月1日が到来すると、有効期限月の情報と、RAM33内で保持されている、協定世界時に基づく内部時刻の情報とを比較し、有効期限月を経過したか否かを判定する。前述の例では、協定世界時における2010年7月1日が到来したときに閏秒補正値LSの有効期限が切れたと判定される。この場合、閏秒情報管理部31bは、閏秒有効フラグを「有効」を示す値から「無効」を示す値に切り替える。この閏秒有効フラグの値を参照することで、閏秒情報管理部31bは現時点で記憶されている閏秒補正値LSが有効か否かを判定する。
【0033】
なお、この例においては、衛星信号受信部31aによって閏秒補正値LSをGPS衛星から受信できた場合、閏秒情報管理部31bは、この閏秒補正値LSとともにGPS衛星から送信される閏秒調整予告情報を参照して、有効期限月の情報を更新してもよい。すなわち、閏秒調整予告情報が未来の日時を示していれば、その日に応じた月を有効期限月に設定する。こうすれば、閏秒情報管理部31bは、過去に閏秒補正値LSの受信に成功しているか否かに関わらず、有効期限月の情報を参照することで現在記憶されている閏秒補正値LSが有効か否か判断できる。この場合において、閏秒調整予告情報が過去の日時を示している場合(すなわち、まだ次の閏秒調整実施タイミングが不明の場合)、閏秒情報管理部31bは、閏秒補正値LSが手動で更新された場合と同様のルールで、有効期限情報を更新することとしてもよい。
【0034】
閏秒有効期限の管理方法の別の例として、閏秒補正値LSが手動更新された月の末日で有効期限が切れるように設定する場合、閏秒情報管理部31bは、有効期限月の情報を保持しておく必要はない。この場合、閏秒情報管理部31bは、閏秒有効期限情報として閏秒有効フラグだけを利用して有効期限を管理する。すなわち、手動による閏秒補正値LSの更新が行われた場合には閏秒有効フラグを「有効」とし、毎月1日が到来すると、閏秒有効フラグを「無効」に変更する。これにより、毎月月初になると前月に更新された閏秒補正値LSを無効にすることができる。
【0035】
なお、この例では、閏秒情報管理部31bは、前回の閏秒補正値LSの更新が手動で行われたのか、又は衛星信号の受信によって行われたのかに応じて、有効期限の管理方法を変更してもよい。具体的に、閏秒情報管理部31bは、前回の閏秒補正値LSの更新が手動で行われたのか否かを示すフラグ情報をさらにRAM33内に保持して、毎月1日が到来した際には、このフラグ情報より前回の更新が手動で行われたと判定される場合には閏秒有効フラグを「無効」に変更する。一方、前回の更新が手動ではなく衛星信号の受信によって行われたと判定される場合、例えば前述した例と同様に閏秒補正値LSとともに受信した閏秒調整予告情報に基づいて閏秒有効フラグを更新する。
【0036】
閏秒有効期限の管理方法のさらに別の例として、閏秒情報管理部31bは、有効期限情報として、あとどのくらいの期間閏秒補正値LSが有効かを示すカウンタ値を用いて閏秒補正値LSの有効期限を管理してもよい。このカウンタ値は、時間単位、日単位、月単位などの所定時間単位で閏秒補正値LSが有効な残り期間を表す情報である。一例として、時間単位のカウンタ値を用いて閏秒補正値LSの有効期限を管理する場合、閏秒情報管理部31bは、閏秒補正値LSの手動更新が行われると、このカウンタ値を予め定められた値で初期化する。例えば閏秒補正値LSの有効期限を30日間とすると、カウンタ値は720(=30×24)に設定される。その後、閏秒情報管理部31bは、1時間が経過する毎に、カウンタ値を1減算した値に更新する。これにより、時間とともにカウンタ値は徐々に小さくなっていき、最終的に720時間経過後に0になる。カウンタ値が0になった後は、閏秒情報管理部31bは、それ以上カウンタ値を減らす処理は行わない。そして、カウンタ値が0になっている場合、閏秒補正値LSが有効でないと判定する。なお、この例では、閏秒情報管理部31bは、カウンタ値が0になった時点で閏秒有効フラグを「無効」に変更してもよいし、閏秒有効フラグを用いずに、カウンタ値が0か否かによって閏秒補正値LSが有効か否かを判定してもよい。なお、この場合にも、衛星信号の受信によって閏秒補正値LSの更新を行った場合には、閏秒補正値LSとともに受信した閏秒調整予告情報に基づいて、次の閏秒調整実施タイミングまでの時間を算出し、算出した値に応じてカウンタ値を設定してもよい。
【0037】
次に、電波時計1が閏秒補正値LSを更新する際の操作手順の一例について、
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は閏秒情報の更新処理が行われる際の電波時計1の状態遷移図であって、
図6は文字板53上における表示状態の変化を示す説明図である。
【0038】
まず、
図6(a)に示すように、指針52によって現在日時が表示されている通常の時刻表示状態M1において、使用者は第1操作ボタンS1を押下する操作を行う。すると、電波時計1は閏秒有効表示状態M2に遷移し、現在保持されている閏秒補正値LSが有効か否かを表示する。具体的には、前述した処理によって閏秒補正値LSが有効であると判定された場合、
図6(b)に示すように、秒針52cが11時方向と12時方向の間の「LS−OK」を示す位置に移動して停止する。一方、閏秒情報管理部31bによって閏秒補正値LSが有効でないと判定された場合、
図6(c)に示すように、秒針52cが10時方向と11時方向の間の「LS−NG」を示す位置に移動して停止する。
【0039】
閏秒有効表示状態M2において、使用者が再び第1操作ボタンS1を押下した場合、電波時計1は時刻表示状態M1に復帰し、秒針52cを現在時刻に応じた位置に戻す。閏秒補正値LSが有効な場合、閏秒補正値LSを更新する必要はないので、使用者は第1操作ボタンS1を押下して電波時計1を時刻表示状態M1に復帰させればよい。なお、閏秒有効表示状態M2に遷移した後、所定時間にわたって使用者が何の操作も行わなかった場合にも、電波時計1は自動的に時刻表示状態M1に復帰する。一方、閏秒補正値LSの有効期限が切れている場合、使用者は、第2操作ボタンS2を押下して電波時計1に閏秒情報の受信を実行させるか、又は竜頭S3を引き出す操作を行って手動で閏秒情報の更新を行うかを選択する。
【0040】
閏秒有効表示状態M2において使用者が第2操作ボタンS2を押下すると、電波時計1は閏秒受信状態M3に遷移する。この状態においては、衛星信号受信部31aが、GPS衛星から送信される閏秒補正値LSを含んだ衛星信号の受信を試みる。このとき電波時計1は、
図6(d)に示すように、受信処理中であることを使用者に知らせるために、秒針52cを12時方向の「RX」マーカーを指し示す位置に移動させる。
【0041】
その後、閏秒補正値LSの受信に成功すると、閏秒情報管理部31bが受信した閏秒補正値LSをRAM33に格納して閏秒補正値LSの有効期限を再設定するとともに、時刻修正部31cが新たに受信した閏秒補正値LSを用いて時刻の修正処理を行う。そして、電波時計1は、閏秒補正値LSの受信に成功したことを使用者に示すために、
図6(e)に示すように秒針52cを「LS−OK」を示す位置に移動させて一旦停止させる。その後、電波時計1は自動的に(使用者の操作によらずに)
図6(f)に示す時刻表示状態M1に復帰する。
【0042】
一方、閏秒補正値LSの受信に失敗した場合には、電波時計1は、閏秒補正値LSの更新を行わずに時刻表示状態M1に復帰する。なお、
図6では閏秒補正値LSの受信に失敗した場合、直ちに時刻表示状態M1に復帰することとしたが、閏秒補正値LSの受信に成功した場合と同じように、閏秒補正値LSの受信に失敗したことを示すために、一旦秒針52cを「LS−NG」の位置に移動させてから、時刻表示状態M1に復帰してもよい。あるいは電波時計1は、閏秒補正値LSの受信に失敗した場合、時刻表示状態M1に復帰するのではなく、閏秒補正値LSの有効期限が切れたままであることを示すために、
図6(c)に示すような閏秒有効表示状態M2に戻ることとしてもよい。
【0043】
閏秒有効表示状態M2において、使用者が竜頭S3を引き出す操作を行った場合、電波時計1は、閏秒手動修正状態M4に遷移する。この状態では、
図6(g)に示すように、閏秒情報管理部31bが、RAM33に記憶されている閏秒補正値LSに応じた数値を時刻表示部51に表示する。
図6(g)の例では、時針52aを閏秒補正値LSに応じた位置に移動させることによって、閏秒補正値LSの表示が行われている。なお、この場合において、閏秒手動修正状態M4にあることを示すために、秒針52cは「LS−OK」と「LS−NG」の中間の11時方向を指し示している。この状態において使用者が竜頭S3を回転させると、閏秒情報管理部31bは、その回転方向及び回転量に応じて、時針52aを回転させる。このとき使用者は、例えばインターネット上のホームページ等で公開されている現在の閏秒情報を参照して、その閏秒に対応する位置まで時針52aを移動させる。そして、最終的に使用者が竜頭S3を押し込んで通常位置に戻すと、閏秒情報管理部31bは使用者による閏秒補正値LSの修正が終了したと判定し、その時点における時針52aの位置に応じた値に閏秒補正値LSを更新する。その後、電波時計1は、閏秒受信状態M3において閏秒の受信に成功した場合と同様に、自動的に
図6(e)の表示を経て時刻表示状態M1に復帰する。
【0044】
ここで、
図6(g)に示す表示方法は例示に過ぎず、閏秒情報管理部31bはその他の方法で閏秒補正値LSに応じた数値を表示してもよい。例えば
図6(g)では時針52aの位置によって数値を表示しているが、分針52bの位置によってこの数値を表示してもよい。また、上記の例では秒針52cが「LS−OK」や「LS−NG」、「RX」などのマーカーを指し示すことによって電波時計1の動作状態が示されているが、例えばこれらの状態を専用の指針を用いて表示する場合、秒針52cを用いて閏秒補正値LSに応じた数値を表示してもよい。さらに、閏秒情報管理部31bは、時針52a、分針52b、及び秒針52cのうちの2つ以上の組み合わせによって、閏秒補正値LSに応じた数値を表示してもよい。この場合、例えば閏秒情報管理部31bは、複数の指針52(例えば時針52aと分針52b)を重ね合わせて同じ位置を指し示すよう制御することによって、数値を表示する。こうすれば、通常の時刻表示が行われているのではなく、閏秒補正値LSに応じた数値の表示が行われていることを、使用者に明確に示すことができる。
【0045】
なお、閏秒手動修正状態M4において、閏秒情報管理部31bは、閏秒補正値LSの数値をそのまま表示してもよいが、この値に対して予め定められた数値を加算又は減算して、閏秒補正値LSに対応する数値を表示してもよい。前述の通り、本実施形態に係る電波時計1が受信するGPS時刻の情報は、1980年1月1日以降に累積された閏秒に相当する分だけ協定世界時とずれている。この1980年1月1日当時、国際原子時と協定世界時との間には19秒分のずれが存在していた。そのため、GPS時刻と国際原子時との間には、常に19秒分の差が存在することになり、GPS時刻を協定世界時に合わせるための閏秒補正値LSも、国際原子時を協定世界時に合わせるための補正量より19秒分小さな値になっている。そこで閏秒情報管理部31bは、閏秒補正値LSに19秒を加算した値を時刻表示部51に表示してもよい。具体的に、
図6(g)の例では、閏秒補正値LSが15秒の場合に、これに19秒を加算した値「34」に応じた位置を時針52aが指し示している。この状態で使用者が竜頭S3を回転させて時針52aを移動させた場合、その時針52aが指し示す数値から19を減じた値で閏秒補正値LSを更新する。こうすれば、使用者は、GPS時刻の国際原子時からのずれを意識することなく、時刻表示部51に表示された値を国際原子時と協定世界時との間のずれ(閏秒の累積値)として一般的に公表されている数値に変更することで、GPS時刻を正しく協定世界時に修正できるような値に閏秒補正値LSを更新できる。
【0046】
あるいは閏秒情報管理部31bは、閏秒補正値LSを、その初期値(例えば電波時計1の出荷時にROM32に記憶されている閏秒補正値LS)に対する相対値として表示してもよい。
図7は、このような例における、閏秒補正値LSに対応する数値の表示例を示している。なお、
図7では、閏秒補正値LSの初期値が15秒であり、
図6(g)の場合と同様にこの初期値に19秒を加算した値(34秒)を閏秒調整の基準値とする例について示している。
図7における破線は、基準値の表示位置(以下、基準位置Rという)を示している。また、文字板53の周囲の数値は、それぞれ基準値に対して+10秒、+20秒、・・・、50秒された数値の表示位置を示している。ただし、この例では、文字板53上に実際に基準位置Rや基準値に対する相対値が表示されているわけではない。この
図7の例においては、閏秒補正値LSが15秒〜40秒まで(すなわち、文字板53上の表示値が34秒から59秒まで)の間は、時針52aは
図6(g)の場合と同じ位置を指し示すことになる。
図6(g)の場合は絶対値表示なので60秒以上の値を表示することはできないが、
図7では34秒の位置を基準位置Rとして相対位置により数値が表示されるので、使用者は、竜頭S3を操作することで、閏秒補正値LSとして74秒まで(文字板53上の表示値としては93秒まで)の数値を設定することが可能になる。なお、この93秒という値は、基準値34秒に対する相対値としては+59秒に相当する値である。
図7の例では、時針52aが1時方向を指しており、これは表示値65秒(基準値34秒に対して+31秒)を表している。規格上、閏秒の調整には閏秒の追加及び削除の双方があり得るが、実際の運用では、これまで閏秒の削除は実施されておらず、閏秒の累積値は増加し続けている。そのため、例えば電波時計1の出荷時点における閏秒の累積値に対応する値を閏秒補正値LSの初期値とし、その初期値に対して正の相対値のみで閏秒補正値LSを設定することとしても、不都合はない。なお、基準位置Rを34秒としたのは単なる例示に過ぎない。例えば出荷時の閏秒補正値LSが26秒であり、これにオフセットである19秒を加算した45秒の位置(9時方向)が基準位置Rとなる場合、表示可能な数値範囲は45秒から104秒までとなり、これに対応して26秒から85秒までの範囲の閏秒補正値LSを設定することができる。いずれにせよ、基準値に対する相対値として閏秒の累積値を表示、設定することで、閏秒の累積値が基準値から最大で59秒(すなわち、文字板53上の1周に相当する秒数)分増加するまで、閏秒補正値LSを手動更新することができる。
【0047】
また、
図5の状態遷移図では閏秒有効表示状態M2において第2操作ボタンS2又は竜頭S3が操作されると、それぞれ閏秒受信状態M3又は閏秒手動修正状態M4に遷移することとしている。しかしながら、閏秒情報管理部31bは、閏秒補正値LSが有効か否かの判定結果に応じて、このような状態遷移を制限してもよい。すなわち、閏秒情報管理部31bは、閏秒補正値LSの有効期限が切れていると判定し、閏秒有効表示状態M2においてその旨が表示されているときだけ、閏秒受信状態M3又は閏秒手動修正状態M4への遷移を行うこととし、閏秒補正値LSの有効期限が切れていないと判定したときには、このような遷移を制限する。こうすれば、閏秒補正値LSが有効な場合に、不要な閏秒補正値LSの更新をユーザに行わせないようにすることができる。
【0048】
また、
図5及び
図6では示されていないが、電波時計1は、使用者の指示操作により、TOWのデータが受信できているか、また週番号WNのデータが受信できているかを表示してもよい。また、TOWや週番号WNのデータが受信できていない場合に、使用者の指示操作に応じてこれらのデータの受信を試みてもよいし、手動による時刻やカレンダーの修正を実行してもよい。
【0049】
ここで、電波時計1のシステムが再起動される場合の制御について、説明する。例えば電源40の電源電圧が低下して動作の続行が困難になった場合などにおいて、電波時計1は、システムダウンが発生してしまう前にRAM33内の情報を不揮発性メモリに待避させて制御回路30を正常終了させる処理を実行する場合がある。また、制御回路30のシステムリセットが実行される場合もある。このような処理が実行されて、その後に制御回路30を再起動する際には、演算部31は、起動処理の一部として、閏秒情報の再取得を行う。具体的に、
図5の状態遷移図に示したように、電波時計1は、システムリセット状態M5からの復帰時に、当該時点の竜頭S3の状態に応じて、閏秒受信状態M3又は閏秒手動修正状態M4のいずれかに遷移する。すなわち、竜頭S3が引き出されておらず、通常位置にある場合(S3オフ状態の場合)には、閏秒受信状態M3に遷移して閏秒情報の受信を試みる。一方、竜頭S3が引き出されている場合(S3オン状態の場合)、閏秒手動修正状態M4に遷移して、使用者の竜頭S3に対する操作に応じて、閏秒補正値LSを更新する。電波時計1が再起動される場合、その前に長時間電波時計1が停止していたとすると、閏秒補正値LSの有効期限が切れている可能性が高い。そこで、このような更新処理を再起動時に行うことで、電波時計1は最新の閏秒補正値LSの情報を取得することができる。なお、このような再起動処理を実行する際には、TOW及び週番号WNのデータについても再取得する必要がある。これらの情報をGPS衛星から受信する受信処理は、閏秒補正値LSの受信処理や手動更新を行う前に実行してもよいし、後に実行してもよい。
【0050】
また、電波時計1は、再起動時に直ちに閏秒受信状態M3や閏秒手動修正状態M4に遷移するのではなく、前回のシステム終了時の閏秒有効期限情報を参照して、閏秒補正値LSの有効期限が切れているか否かを判定し、閏秒補正値LSの有効期限が切れていると判定された場合だけ、上述したような閏秒受信状態M3又は閏秒手動修正状態M4への遷移を行ってもよい。この場合、電波時計1は、再起動後にまずTOW及び週番号WNのデータを受信して、現在日時の情報を取得する。そして、この現在日時の情報と、閏秒有効期限情報と、を参照して、閏秒補正値LSの有効期限が切れているかを判定する。閏秒補正値LSの有効期限が切れていなければ、電波時計1は時刻表示状態M1に遷移して、通常の時刻表示を開始する。
【0051】
以上説明した本実施形態に係る電波時計1によれば、閏秒を手動で設定できるようにしたので、閏秒の受信に成功していない場合にも、閏秒情報を取得して衛星信号から受信した時刻情報の修正に利用することができる。前述の通り、閏秒情報のGPS衛星からの送信頻度はTOWなどと比べて低く、受信機会が限られることになる。特に腕時計などの携帯型の時計においては、安定的に良好な受信環境を確保できないこともあり、長時間にわたって閏秒情報を受信できない場合もあり得る。本実施形態に係る電波時計1では、このような場合に、代替措置として使用者が手動で閏秒を設定することができる。さらに、使用者による閏秒の設定を受け付けた場合に、この閏秒情報に対して有効期限を設定し、有効期限が切れた場合にはその旨を使用者に表示することとしたので、使用者は閏秒情報を再設定する必要があるか否かを容易に把握することができる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る電波時計について、説明する。なお、本実施形態に係る電波時計は、その内部処理が第1実施形態に係る電波時計とは相違するが、ハードウェア構成や機能構成は第1実施形態と同様であってよい。そのため、以下では第1実施形態と同一の構成要素については同一の参照符号を用いて参照し、その詳細な説明については省略する。
【0053】
本実施形態では、衛星信号受信部31aは、衛星信号に含まれるTOW及び週番号WNの情報は取得するが、閏秒補正値LSの情報は受信しない。ROM32には、出荷時に閏秒補正値LSの初期値が記憶されており、閏秒情報管理部31bは、まずこの初期値を読み出してRAM33内に格納する。このRAM33に記憶された閏秒補正値LSは、第1実施形態の場合と同様に、使用者による手動更新によって変更される。時刻修正部31cは、このRAM33内に格納された閏秒補正値LSを用いてTOWから得られるGPS時刻を協定世界時に基づく時刻に補正する。
【0054】
ここで、本実施形態において電波時計1が閏秒補正値LSを更新する場合の操作手順の一例について、
図8及び
図9を用いて説明する。
図8は
図5と同様に閏秒情報の更新処理が行われる際の電波時計1の状態遷移図であって、
図9は
図6と同様に文字板53上における表示状態の変化を示す説明図である。
【0055】
まず、
図9(a)に示すように、指針52によって現在日時が表示されている通常の時刻表示状態M1において、使用者は第1操作ボタンS1を押下する操作を行う。すると、電波時計1は閏秒有効表示状態M2に遷移し、現在保持されている閏秒補正値LSが有効か否かを表示する。具体的に、閏秒補正値LSが有効の場合、
図9(b)に示すように、秒針52cが「LS−OK」を示す位置に移動し、有効期限が切れている場合、
図9(c)に示すように、秒針52cが「LS−NG」を示す位置に移動する。
【0056】
閏秒有効表示状態M2において使用者が第1操作ボタンS1を押下した場合、あるいは使用者が何の操作もしないまま所定時間が経過した場合、第1実施形態と同様に、電波時計1は時刻表示状態M1に復帰する。一方、閏秒補正値LSの有効期限が切れている場合、使用者は、竜頭S3を引き出す操作を行って手動で閏秒情報の更新を行う。本実施形態に係る電波時計1は閏秒情報の受信に対応していないので、第1実施形態の場合と異なり、第2操作ボタンS2を操作して閏秒受信状態M3に遷移することはできない。
【0057】
閏秒有効表示状態M2において使用者が竜頭S3を引き出す操作を行った場合、電波時計1は、閏秒手動修正状態M4に遷移する。この状態では、
図9(d)に示すように、閏秒情報管理部31bが、時針52aを閏秒補正値LSに応じた位置に移動させることによって、RAM33に記憶されている閏秒補正値LSに応じた数値が表示される。併せて、秒針52cが「LS−OK」と「LS−NG」の中間の位置(11時方向)を指し示す位置に移動する。この状態において使用者が竜頭S3を回転させると、閏秒情報管理部31bは、その回転方向及び回転量に応じて、時針52aを回転させる。そして、最終的に使用者が竜頭S3を押し込んで通常位置に戻すと、閏秒情報管理部31bは使用者による閏秒補正値LSの修正が終了したと判定し、その時点における時針52aの位置に応じた値に閏秒補正値LSを更新する。
図9では、第1実施形態と異なり、閏秒補正値LSの手動更新が終了すると、秒針52cが「LS−OK」の位置を示すことなく、電波時計1は自動的に
図9(a)に示すような時刻表示状態M1に復帰している。ただし、第1実施形態と同様に、
図6(e)に示すような表示を経て時刻表示状態M1に戻ることとしてもよい。
【0058】
なお、本実施形態に係る電波時計1も、第1実施形態と同様に、システムリセット状態M5からの復帰時には、当該復帰時点の竜頭S3の状態に応じて、閏秒手動修正状態M4に遷移してもよい。この場合、
図8の状態遷移図に示したように、竜頭S3が引き出されていれば、電波時計1はシステムリセット状態M5からの復帰時に閏秒手動修正状態M4に遷移する。一方、竜頭S3が通常状態にある場合、第1実施形態と異なり本実施形態では閏秒情報の受信処理は実行されないので、電波時計1は、時刻表示状態M1に遷移することとする。いずれの場合にも、電波時計1は、第1実施形態と同様に、再起動時にはTOW及び週番号WNのデータをGPS衛星から受信する必要がある。特に竜頭S3が引き出されており、閏秒手動修正状態M4に移行する場合には、電波時計1は、閏秒手動修正状態M4に移行する前にTOW及び週番号WNのデータを受信するのではなく、閏秒の手動修正が終了して、使用者が竜頭S3を通常状態に戻した後にこれらのデータの受信を実行することが好ましい。閏秒手動修正状態M4への遷移前に受信処理を行うこととすると、受信処理の間、閏秒の手動修正を行うことができなくなり、使用者を待たせてしまうからである。
【0059】
以上説明した本実施形態に係る電波時計1によれば、そもそも閏秒の受信処理を行わないので、閏秒の受信に失敗した等の事象を使用者に通知する必要がなくなり、使用者にとって操作を分かり易くすることができる。また、閏秒の受信処理による電力消費を避けることができる。一方で、閏秒の受信機能を備えていないにも関わらず、手動による閏秒の設定を受け付けることで、閏秒の調整が行われた場合にその内容を反映した協定世界時に基づく時刻を表示することができる。なお、現状では閏秒調整の実施頻度はそれほど高くないので、使用者に手動で閏秒の設定を実行させたとしても、それほど使用者に手間をとらせずに済む。
【0060】
[変形例]
本発明の実施の形態は、以上説明したものに限られない。例えば上記説明では電波時計1は腕時計であることとしたが、これ以外にも、時刻情報を含む信号を衛星から受信して時刻の修正を行う各種の時計であってよい。また、以上の説明において制御回路30の演算部31が実行することとした処理の少なくとも一部は、独立したロジック回路等の演算回路によって実現されることとしてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態に係る電波時計1による閏秒補正値LSの有効期限が切れているか否かの表示や、閏秒補正値LSに応じた数値の表示の態様は、いずれも例示であって、本発明の実施形態に係る電波時計は、これ以外の各種の表示態様でこれらの情報を表示してもよい。例えば電波時計1は、閏秒補正値LSの有効期限が切れている場合、2秒運針を行うなどの方法で有効期限切れを使用者に表示してもよい。また、閏秒の更新処理を行う際の使用者による指示操作の手順も、以上説明したもの以外の各種の手順であってよい。
【0062】
以下では、本発明の実施形態に係る電波時計1が、前述した閏秒手動修正状態M4において閏秒補正値LSに応じた数値を表示する際の別の表示例について、説明する。なお、以下では閏秒手動修正状態M4において表示、及び使用者による調整の対象となる数値を、調整対象値という。調整対象値は、前述したように、閏秒補正値LSそのものであってもよいし、閏秒補正値LSに対して所定の値(GPS時刻と国際原子時との間のずれを示す値など)を加算した値であってもよい。
【0063】
例えば電波時計1は、分針52b及び秒針52cの組み合わせにより閏秒補正値LSを表示してもよい。この場合の第1の具体例として、電波時計1は、調整対象値の1の位の値を秒針52cの位置で、10の位の値を分針52bの位置で、それぞれ指し示してもよい。
図10はこの場合の表示例を示している。
図10の例では、分針52bが3時方向を指し示しており、秒針52cが4時方向を指し示していることから、調整対象値として34秒が表示されている。このような表示がなされた状態で、竜頭S3を回転させる操作を行うことにより、使用者は閏秒補正値LSの修正を行うことができる。
【0064】
このとき、電波時計1は、時針52aの位置によってロールオーバーカウンタの値を併せて表示してもよい。ここで、ロールオーバーカウンタの値というのは、前述した週番号WNの桁あふれが所定の開始時点以降に起こった回数を示している。GPS衛星が送信する情報に含まれる週番号WNは、10ビットの情報であって、その最大値は1023である。そのため、1024週(約20年)が経過するごとに週番号WNは桁あふれを起こし、0にリセットされてしまう。そこで、電波時計1は、この桁あふれ回数を計数するロールオーバーカウンタの機能を備える場合がある。この場合、電波時計1は、週番号WNが桁あふれを起こすとロールオーバーカウンタの値に1を加算する。これにより、電波時計1は、20年以上の長期にわたって使用されたとしても、ロールオーバーカウンタの値と週番号WNを組み合わせれば、現在時刻が所定の開始時点から数えて第何週に当たるかを知ることができ、この情報に基づいてカレンダー日付を表示できる。
図10の表示例では、このようにして得られたカレンダー日付に基づいて、日窓54による日表示が行われている。なお、電波時計1は、日窓54を用いるのではなく、使用者からの指示に応じて時刻表示モードからカレンダー表示モードへの切り替えを行い、このカレンダー表示モードにおいて指針52を用いてカレンダー日付を表示してもよい。
【0065】
しかしながら、このロールオーバーカウンタ機能を備えた電波時計1が、週番号WNの桁あふれが生じるタイミングを含めて長期間にわたって停止した場合、週番号WNの桁あふれ時にロールオーバーカウンタの値がカウントアップされず、現在時刻が第何週に当たるか分からなくなってしまうおそれがある。そこで、
図10に示すように、電波時計1のRAM33内に記憶されているロールオーバーカウンタの値を表示し、使用者の操作入力によって修正可能とすることで、このような事態に対処することができる。
図10の例では、時針52aが1時方向を指し示すことによって、ロールオーバーカウンタの値が1であることを示している。この状態で、例えば使用者は第1操作ボタンS1を操作することによって、ロールオーバーカウンタの値を変更することができる。
【0066】
図11は、分針52b及び秒針52cの組み合わせによって調整対象値を表示する方法の第2の具体例を示している。この第2の具体例では、電波時計1は、毎時0分0秒から調整対象値と同じ秒数だけ時間が進んだときと同じ位置に分針52b及び秒針52cを回転させる。すなわち、調整対象値が60秒未満の場合には、電波時計1は、秒針52cの位置によりその数値を示す。このとき、分針52bは0分の位置(12時方向、または12時方向からの回転角が6度未満の位置)を指し示す。また、調整対象値が60秒以上120秒未満の場合には、分針52bが1分の位置(12時方向からの回転角が6度以上12度未満の位置)を指し示すとともに、秒針52cが調整対象値から60を減じた数値の位置を示す。
図11の例では、分針52b及び秒針52cが1分15秒の時刻を示す位置に移動しており、これにより調整対象値が75秒であることを示している。なお、この例では、ロールオーバーカウンタの値は、調整対象値と同時には表示されず、別の修正状態において例えば秒針52cが何秒の位置を指し示すかによって表示される。また、この例においても、
図10と同様に、ロールオーバーカウンタの値と週番号WNの情報を組み合わせて得られたカレンダー日付に基づいて日窓54による日表示が行われている。
【0067】
また、電波時計1は、時刻表示用の時針52a、分針52b、及び秒針52cとは別の指針を用いて調整対象値を表示してもよい。
図12は、この場合の表示例を示している。この例においては、文字板53上に時針52a、分針52b、及び秒針52cの他に、第1小針52d、第2小針52e、第3小針52f、及び第4小針52gが配置されている。なお、第1小針52d及び第2小針52eは文字板53の9時側に互いに共通する回転軸を中心として回転可能に配置されており、第3小針52f及び第4小針52gは文字板53の3時側に互いに共通する回転軸を中心として回転可能に配置されている。電波時計1は、閏秒手動修正状態M4においてこれらの小針を用いて調整対象値を表示する。具体的に、電波時計1は、第1小針52d及び第2小針52eによって更新前の閏秒補正値LSに対応する調整対象値を表示し、第3小針52f及び第4小針52gによって使用者が竜頭S3を操作して調整した後の調整対象値を表示する。なお、2つの小針を用いて調整対象値を表示する方法は、前述した分針52b及び秒針52cの組み合わせによって調整対象値を表示する方法と同様のものであってよい。閏秒手動修正状態M4において使用者が竜頭S3を回転する操作を行うと、第1小針52d及び第2小針52eの位置は維持されたまま、第3小針52f及び第4小針52gだけが使用者の操作に応じて回転する。これにより、使用者は、自分が変更を指示する前の調整対象値をいつでも確認できる状態で、閏秒補正値LSの調整を行うことができる。
【0068】
また、
図12の例では、ユーザは、操作部60を操作して変更後の調整対象値を入力するとともに、当該入力した調整対象値に対応する閏秒補正値LSを適用する時期(適用時期)をも併せて入力することができるようになっている。電波時計1は、この適用時期に応じたタイミングで、入力された調整対象値に対応する閏秒補正値LSへの変更を行う。具体的に、電波時計1は、使用者から調整対象値及び適用時期の入力を受け付けると、入力された適用時期が到来するまでは、入力受け付け前の閏秒補正値LSをそのまま使用し続ける。そして、入力された適用時期が到来すると、それ以降は、この適用時期とともに受け付けた調整対象値に対応する閏秒補正値LSで、古い閏秒補正値LSを上書きする。こうすれば、使用者は、将来的な閏秒補正値LSの変更がアナウンスされた時点で、直ちに電波時計1に対して将来変更される予定の閏秒補正値LSを指示するとともに、この閏秒補正値LSが有効となる将来の時期を指示しておくことができる。例えば電波時計1は、時針52a及び分針52bによって更新時期を表示する。具体的に、
図12の例では、時針52aが更新時期の月を、分針52bが更新時期の日を、それぞれ示しており、図中では時針52a及び分針52bが時刻7時1分を指し示しているので、7月1日が更新時期として設定されていることになる。使用者は、閏秒手動修正状態M4において、第1操作ボタンS1又は第2操作ボタンS2を操作するなどの方法で操作の対象を調整対象値、更新時期の月、及び更新時期の日の中から切り替え、竜頭S3を操作することによってそれぞれの操作対象の値を変更する。なお、
図12においては、閏秒手動修正状態M4にあることを示すために、秒針52cは「LS−OK」と「LS−NG」の中間の11時方向を指し示している。
【0069】
また、電波時計1は、閏秒有効表示状態M2において閏秒補正値LSが有効であることを示す場合に、併せて閏秒補正値LSがいつまで有効か(すなわち、閏秒補正値LSの有効期限がいつ切れるか)を表示してもよい。この場合、電波時計1は、前述した
図6(b)や
図9(b)の表示の代わりに、
図13に例示されるような表示を行う。
図13では、時針52a及び分針52bによって、有効期限が切れる日が何月何日かを示している。ここでは、
図12における更新時期の表示と同様に、時針52aが有効期限切れとなる月を、分針52bが日を、それぞれ示している。
図13では時針52a及び分針52bが時刻1時1分を指し示しているので、現在記憶されている閏秒補正値LSが12月末日まで有効で、1月1日には有効期限切れとなることを示している。なお、
図13においては、
図6(b)や
図9(b)と同様に、秒針52cは「LS−OK」を指し示している。
【0070】
さらに、以上の説明では、
図6(b)や
図9(b)の状態(閏秒補正値LSが有効であることが示される状態)においては、
図6(c)や
図9(c)の状態(閏秒補正値LSが無効であることが示される状態)と異なり、使用者が竜頭S3を操作しても閏秒手動修正状態M4に遷移しないようにすることとしている。ここで、閏秒補正値LSが有効であることが示される状態において使用者が竜頭S3を引き出す操作を行った場合、電波時計1は、閏秒手動修正状態M4に遷移する代わりに、現在設定されている閏秒補正値LSに関連する情報を表示してもよい。
図14は、この場合の表示例であって、
図13の表示がされている状態で竜頭S3が操作されたときの表示例を示している。この図においては、これまで
図10や
図11を用いて説明したように、分針52b及び秒針52cを用いて閏秒補正値LSに応じた調整対象値が表示されるとともに、第5小針52h及び第6小針52iによって当該閏秒補正値LSを前回GPS衛星から受信した際の受信環境に関する情報が示されている。具体的に、第5小針52hは、閏秒補正値LSの情報を複数のGPS衛星のうちのどのGPS衛星から受信したかを示す衛星番号の情報を表示する。また、第6小針52iは、どの地域(都市)で閏秒補正値LSを受信したかを示す情報を表示する。なお、この状態において竜頭S3を押し込む操作がなされた場合、電波時計1は時刻表示状態M1に復帰する。また、ここでは
図13の表示がされた状態においてさらに所定の操作を行った場合に閏秒補正値LSに関連する情報を表示することとしたが、これに限らず、電波時計1は、
図13に示すような有効期限の表示を行う際に、併せて受信した衛星番号の情報や受信した際の都市の情報などを表示してもよい。