(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多関節ロボットアーム、前記2次元または3次元の撮像デバイスおよび前記把持部が協働して、前記被加工物の向きを反転させること、複数の前記被加工物を組み立てること、前記被加工物を位置決めすること、前記被加工物を識別すること、および前記被加工物の外形寸法を計測することからなる群より選択される少なくとも1つを行う、請求項2に記載の工作機械のための処理支援装置。
前記補助処理部は、前記多関節ロボットアームの前記先端部または前記把持部に着脱可能に取り付けられた、前記被加工物のバリを除去するバリ除去デバイス、前記被加工物の表面に刻印する刻印デバイス、前記被加工物にエアを吹きつけるエアブローデバイス、および/または前記被加工物を洗浄液で洗浄する洗浄デバイスを含む、請求項2に記載の工作機械のための処理支援装置。
前記走行台車部、前記多関節ロボットアーム、前記バリ除去デバイス、前記刻印デバイス、前記エアブローデバイス、および/または前記洗浄デバイスに給電する充電可能な第1の電池をさらに備え、
前記多関節ロボットアームの前記先端部は、前記2次元または3次元の撮像デバイスおよび前記把持部に給電する充電可能な第2の電池を内蔵する、請求項4に記載の工作機械のための処理支援装置。
前記補助制御部は、前記処理支援装置が異なる工場間で輸送される輸送体に乗降するように前記走行台車部を制御する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の工作機械のための処理支援装置。
前記補助処理工程は、前記被加工物の向きを反転させること、前記被加工物のバリを除去すること、複数の前記被加工物を組み立てること、前記被加工物を識別すること、前記被加工物の外形寸法を計測すること、前記被加工物の表面に刻印を付すこと、前記被加工物を洗浄すること、前記被加工物にエアを吹きつけること、および前記被加工物を位置決めすることからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項8または9に記載の工作機械のための処理支援方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ガイドまたはビームに沿って固定的にモジュール化された生産システムでは、生産工程が変更されると、周辺装置の配置位置を変更しなければならず、極めて煩雑な準備作業(プラント設計等)が強いられる。特にワークを少量生産する場合、周辺装置の配置変更は、エンドユーザのプラント設計者や作業者(オペレータ)にとって大きな負担となる。
【0010】
そこで生産工程に変更があっても、ガイドまたはビームに沿って工作機械を含めてモジュール化された従来式の生産システムに比して、より柔軟に対応できる生産システムを提供することが求められている。
【0011】
また一般的な無人搬送車は、複数のワークをワークトレイに収納して、次の工程(別の工作機械またはワークストッカ等)まで搬送するものであり、次工程の工作機械および/または周辺装置は、機械加工すべきワークが無人搬送車によって搬送されるまで、休止せざるを得なかった。とりわけ、複数の工作機械および/または周辺装置を用いて、一連の生産工程を順次行う生産システムにおいて、複数のワークをワークトレイに収納して次工程の工作機械に搬送する手法(バッチ処理)は、全体の生産工程におけるボトルネックとなっていた。すなわち、無人搬送車を用いて複数のワークを搬送している間、工作機械および/または周辺装置は休止し、その稼働率が低減するため、生産システムの生産効率が著しく阻害されていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る第1の態様は、前記工作機械のための処理支援装置に関し、この処理支援装置は、被加工物を機械加工する工作機械が設置された工場内で移動可能な走行台車部と、前記走行台車部に設けられ、前記工作機械による前記被加工物の機械加工を補助または支援する補助処理部と、前記走行台車部および前記補助処理部を制御する補助制御部と、を備え、前記補助制御部は、前記工場内で移動するように前記走行台車部を制御するとともに、前記走行台車部が移動している間に、前記工作機械による前記被加工物の機械加工を補助または支援するように前記補助処理部を制御する。
【0013】
好適には、前記補助処理部は、前記走行台車部に固定された多関節ロボットアームと、前記多関節ロボットアームの先端部に取り付けられた2次元または3次元の撮像デバイスおよび前記被加工物を把持する把持部と、を有する。
【0014】
具体的には、前記多関節ロボットアーム、前記2次元または3次元の撮像デバイスおよび前記把持部が協働して、前記被加工物の向きを反転させ、複数の前記被加工物を組み立て、前記被加工物を位置決めし、前記被加工物を識別し、および/または前記被加工物の外形寸法を計測するものであってもよい。
【0015】
また、前記補助処理部は、前記多関節ロボットアームの前記先端部または前記把持部に着脱可能に取り付けられた、前記被加工物のバリを除去するバリ除去デバイス、前記被加工物の表面に刻印する刻印デバイス、前記被加工物にエアを吹きつけるエアブローデバイス、および/または前記被加工物を洗浄液で洗浄する洗浄デバイスを含むものであってもよい。
【0016】
また好適には、前記補助処理部は、前記走行台車部、前記多関節ロボットアーム、前記バリ除去デバイス、前記刻印デバイス、前記エアブローデバイス、および/または前記洗浄デバイスに給電する充電可能な第1の電池をさらに備え、前記多関節ロボットアームの前記先端部は、前記2次元または3次元の撮像デバイスおよび前記把持部に給電する充電可能な第2の電池を内蔵する。
【0017】
さらに好適には、前記第2の電池は、前記第1の電池から非接触給電によって充電される。
【0018】
また前記補助制御部は、前記処理支援装置が異なる工場間で輸送される輸送体に乗降するように前記走行台車部を制御するものであってもよい。
【0019】
前記工作機械は、開閉可能な前方開口部を備え、前記補助処理部は、専ら前方開口部を介して、前記被加工物を前記工作機械に搬入し、前記工作機械から搬出するように構成されてもよい。
【0020】
好適には、前記補助制御部は、前記工作機械による前記被加工物の機械加工を制御する本体制御部と通信して、前記被加工物の機械加工の進捗に応じて、前記被加工物の機械加工を補助または支援するように前記補助処理部を制御する。
【0021】
具体的には、前記補助制御部は、i)次の式[数1]を満たすとき、前記補助処理部が単一の前記被加工物の機械加工を補助または支援した後、単一の前記被加工物を載置した前記走行台車部が前記工作機械と所定位置との間を往復移動し、ii)次の式[数1]を満たさないとき、前記補助処理部が複数の前記被加工物の機械加工を補助または支援した後、複数の前記被加工物を載置した前記走行台車部が前記工作機械と前記所定位置との間を往復移動するように、前記走行台車部を制御するものであってもよい。
[数1]
H>B+S
ここで、Hは、前記工作機械による前記被加工物の機械加工に必要な機械加工時間であり、Bは、前記被加工物の機械加工を補助または支援するために必要な補助加工時間APおよび前記走行台車部が前記工作機械と前記所定位置との間を往復移動するために必要な移動時間Tのうちのいずれか長い方の時間(BはAPまたはTのいずれか長い方の時間)であり、Sは、前記補助処理部が前記工作機械に前記被加工物を着脱するために必要な配置時間である。
【0022】
本発明に係る第1の態様は、前記工作機械のための処理支援方法に関し、この処理支援方法は、被加工物を機械加工する工作機械が設置された工場内で走行台車部を移動させる移動工程と、前記走行台車部に設けられた補助処理部を用いて、前記工作機械による前記被加工物の機械加工を補助または支援する補助処理工程と、を備え、前記補助処理工程は前記移動工程中に行うものである。
【0023】
好適には、前記補助処理工程は、前記被加工物の向きを反転させ、前記被加工物のバリを除去し、複数の前記被加工物を組み立て、前記被加工物を識別し、前記被加工物の外形寸法を計測し、前記被加工物の表面に刻印を付し、前記被加工物を洗浄し、前記被加工物にエアを吹きつけ、および/または前記被加工物を位置決めすることを含む。
【0024】
また処理支援方法は、異なる工場間で輸送される輸送体に前記走行台車部を乗降させる輸送工程をさらに備え、前記補助処理工程は前記輸送工程中に行ってもよい。
【0025】
また好適には、前記工作機械は、開閉可能な前方開口部を備え、前記補助処理工程は、専ら前方開口部を介して、前記被加工物を前記工作機械に搬入し、前記工作機械から搬出することを含む。
【0026】
また好適には、前記補助処理工程は、前記工作機械による前記被加工物の機械加工の進捗に応じて行われる。
【0027】
具体的には、前記補助処理工程は、i)次の式[数1]を満たすとき、前記補助処理部が単一の前記被加工物の機械加工を補助または支援した後、単一の前記被加工物を載置した前記走行台車部が前記工作機械と所定位置との間を往復移動し、ii)次の式[数1]を満たさないとき、前記補助処理部が複数の前記被加工物の機械加工を補助または支援した後、複数の前記被加工物を載置した前記走行台車部が前記工作機械と前記所定位置との間を往復移動するように、前記走行台車部を制御することを含む。
[数1]
MP>B+S
ここで、MPは、前記工作機械による前記被加工物の機械加工に必要な機械加工時間であり、Bは、前記被加工物の機械加工を補助または支援するために必要な補助加工時間APおよび前記走行台車部が前記工作機械と前記所定位置との間を往復移動するために必要な移動時間Tのうちのいずれか長い方の時間(BはAPまたはTのいずれか長い方の時間)であり、Sは、前記補助処理部が前記工作機械に前記被加工物を着脱するために必要な配置時間である。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る態様によれば、生産工程に変更があっても、より柔軟に対応可能で、かつ走行台車部が工場内を移動している間に、補助処理部がワークの補助加工を行うことにより、生産効率の高い生産システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
添付図面を参照して本発明に係る工作機械のための処理支援装置および処理支援方法の実施形態を以下説明する。実施形態の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「鉛直方向」、「水平方向」、「長手方向」、および「Z軸方向」等)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本発明を限定するものでない。なお各図面において、工作機械の各構成部品の形状または特徴を明確にするため、これらの寸法を相対的なものとして図示し、必ずしも同一の縮尺比で表したものではない。また、各図面において同一の構成部品には同一の符号を用いて示す。
【0031】
[処理支援装置の全体構成]
本実施形態に係る工作機械のための処理支援装置1は、工作機械2によるワークWの機械加工を補助または支援するように構成されたものである。
図1は、本実施形態に係る処理支援装置1の概略的に示す斜視図である。
【0032】
本実施形態に係る処理支援装置1は、概略、ワークWを機械加工する工作機械2が設置された工場内で移動可能な走行台車部10と、走行台車部10に搭載され、工作機械によるワークWの機械加工を補助または支援する補助処理部20と、走行台車部10および補助処理部20を制御する補助制御部30(
図6)と、を備える。補助制御部30は、工場内で移動するように走行台車部10を制御するとともに、走行台車部10が工場内を移動している間に、工作機械によるワークWの機械加工を補助または支援するように補助処理部20を制御する。
【0033】
図1を参照すると、処理支援装置1は、走行台車部10(AGV(Auto-Guided Vehicle)ともいう)と、AGV10に固定された筐体12と、筐体12に固定された多軸関節のロボットアーム40と、ロボットアーム40の先端部に着脱自在に取り付けられたエンドエフェクタ50とを備える。
図1のエンドエフェクタ50は、コラム52(筒状体)に取り付けられたビジョンセンサ54(2次元または3次元の撮像デバイス)およびチャック56(把持部)を含む。
【0034】
工作機械2は、開閉可能な前方開口部(図示せず)を備え、補助処理部20は、専ら前方開口部を介して、ワークWを工作機械2内に搬入し、工作機械2から搬出するように構成されている。すなわちロボットアーム40は、ガイドまたはビームに沿って移動する搬送装置(上方)からではなく、専ら工作機械2の前方開口部を介して、ワークWを工作機械2に着脱する。
【0035】
筐体12の上には、
図1に示すように、複数のワークWを格納するワークトレイ14と、単一のワークWを保持するワークホルダ16が設けられている。なお、ここでは図示しないが、処理支援装置1には、AGV10およびエンドエフェクタ50を制御する補助制御部30と、これらに電力を供給する充電可能な電池(メイン電池ともいう)が内蔵されている。
【0036】
図1のロボットアーム40は、概略、筐体12に固定された基台部41、ベース42、第1アーム43、第2アーム44、およびリスト45を有する。ベース42は、略鉛直方向に延びる旋回軸J1の周りを旋回可能に基台部41に取り付けられている。第1アーム43は、旋回軸J1と直交する略水平方向に延びる旋回軸J2の周りを揺動可能にベース42に固設され、第2アーム44は、旋回軸J2と平行な方向に延びる水平軸J3の周りを揺動可能に第1アーム43に固設されている。リスト45は、第2アームの長手方向に略垂直な方向に延びる旋回軸J4の周りを旋回可能に第2アームに取り付けられている。また、エンドエフェクタ50は、旋回軸J4と略直交する方向に延びる旋回軸J5の周りを旋回可能にリスト45に固設されている。ロボットアーム40には、旋回軸J1〜J5の周りにそれぞれ旋回させるサーボモータが設けられており(図示せず)、補助制御部30は、ロボットアーム40の上記各構成部分の位置および向きを正確に制御することができる。
【0037】
図2は、ロボットアーム40のリスト45に旋回可能に固設されたコラム52と、コラム52に取り付けられたエンドエフェクタ50とを示す、拡大斜視図である。
図2のエンドエフェクタ50は、ビジョンセンサ54(2次元または3次元の撮像デバイス)および電動ハンド58(把持部)を有する。ビジョンセンサ54は、3次元画像を撮像するステレオカメラ(互いに離間した一対の撮像デバイス)として構成されている。また電動ハンド58は、ワークW等の被保持物を保持するための一対のチャック56(ジョーともいう)と、被保持物を保持または解放するために一対のチャック56を互いに接近または離間させるように駆動するサーボモータ(図示せず)とを有する。すなわち電動ハンド58は、これらのチャック56が接近して被保持物を保持し、離間して被保持物を解放する。
【0038】
エンドエフェクタ50は、上述の処理支援装置1の補助制御部30と通信可能なマイクロコントローラ(図示せず)をさらに有し、マイクロコントローラは、ビジョンセンサ54で3次元画像のデータを画像解析し、チャック56を駆動するサーボモータ(図示せず)を制御するように構成されている。すなわちエンドエフェクタ50のマイクロコントローラは、ビジョンセンサ54の焦点距離を調整し、得られた画像を補助制御部30に送信し、補助制御部30からの指令に基づき、電動ハンド58のチャック56を作動させる。マイクロコントローラと補助制御部30との間の通信は、例えばIEEE 802.11の通信規格を利用した無線LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)または光伝送装置を介して行うことが好ましい。
【0039】
図1のエンドエフェクタ50のチャック56は、円筒形状のワークを保持するのに適した円弧状の接触面を含むが、円弧状に限定されることはなく、被保持物等を保持するのに適した任意の形状を有する接触面を含むものと置換可能であってもよい。詳細を図示しないが、処理支援装置1は、コラム52を含むエンドエフェクタ50の全体を置換するか、またはエンドエフェクタ50のチャック56のみを置換するツールチェンジャを備えていてもよい。
【0040】
エンドエフェクタ50の電動ハンド58およびビジョンセンサ54等は、典型的には、ロボットアーム40の各アーム43,44、リスト45、およびコラム52の内部を経由するケーブルを介して(有線で)電力供給されるが、これらの内部空間は限定されており、ロボットアーム40の動作に伴って内部配線されたケーブルは損傷または劣化しやすい。そこで本実施形態に係るエンドエフェクタ50は、電動ハンド58およびビジョンセンサ54等に電力供給するサブ電池を内蔵し、さらにワイヤレス電力伝送技術を用いて、処理支援装置1のメイン電池から電力供給を受けてサブ電池(後述)を充電するように構成されている。
【0041】
図3(a)は、
図2のエンドエフェクタ50の一部を透視して上から見た部分破断平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のB−B線から見た断面図である。
エンドエフェクタ50のコラム52には、コラム受電コイル57(
図3(a))、コラムLC共振回路、AC/DCコンバータ(ともに図示せず)、およびサブ電池59(
図3(b))が内蔵されている。コラム受電コイル57、コラムLC共振回路、およびAC/DCコンバータを併せてコラム受電部ともいう。
【0042】
一方、処理支援装置1は、
図3(b)に示すように、給電ロッド62から延びるU字状の給電アーム64を有する給電ステーション65を備える。給電アーム64には、コラム受電コイル57に対向するアーム送電コイル66、AC/DCコンバータ、およびアームLC共振回路を含むアーム送電部(ともに図示せず)が内蔵されている。コラムLC共振回路およびアームLC共振回路は、その共振周波数が一致するように構成されている。補助制御部30は、アーム送電コイル66に高周波電流を供給することにより、アーム送電部からコラム受電部に非接触給電(磁界共鳴方式)することができる。このように本実施形態に係るエンドエフェクタ50は、磁界共鳴方式のワイヤレス電力伝送技術を用いて、処理支援装置1のメイン電池から電力供給され、サブ電池59を充電する。
【0043】
なお、上述の周辺装置による補助または支援(以下、単に「ジョブ」ともいう)には、例えば、ワークWの外形寸法を計測すること、ワークWの形状等を識別すること、ワークWを所定位置に配置(位置決め)すること、工作機械に着脱する前後にワークWの向きを反転させること、ワークWに形成されたバリを除去すること、ワークWに洗浄液またはエアを吹きつけてワークWを洗浄すること、ワークWの表面にレーザビームを照射して刻印を付すること、および/または複数のワークWを組み立てること等を含む。
【0044】
本実施形態に係る処理支援装置1の補助処理部20は、AGV10が工場内を移動している間に、工作機械によるワークWの機械加工を補助または支援するものであれば任意の構成を有するものであってもよく、少なくとも上記説明したロボットアーム40およびエンドエフェクタ50は、本実施形態に係る補助処理部20として機能する。こうして本実施形態に係る処理支援装置1によれば、従前、生産ラインに組み込まれていた工作機械の周辺装置(および周辺装置が占有していたスペース)を省略するとともに、周辺装置によるジョブに要するジョブ時間を省略または削減することにより、生産効率を実質的に改善することができる。
【0045】
図4〜
図15を参照しながら、処理支援装置1による補助または支援(ジョブ)について、いくつかの具体例を以下説明するが、処理支援装置によるジョブは以下の具体例に限定されない。また処理支援装置1によるジョブは、以下の具体例の1つまたはそれ以上の組み合わせであってもよい。さらに本発明は、工作機械による機械加工の内容および/または手法によっても限定されることはない。
【0046】
(処理支援装置によるジョブの具体例1:ワークの位置決め、計測)
図4は、処理支援装置1を示す
図1と同様の斜視図であり、とりわけ筐体12上のワークトレイ14およびワークホルダ16を拡大して示す。ワークホルダ16は、例えば中空部18(
図5(b))を有する直方体容器である。ワークホルダ16の中空部18は、円柱状のワークWの外形に相似する形状を有し、中空部18の内径は、ワークWの外径より僅かに(例えば0.5mmだけ)大きい。
【0047】
図1において、ビジョンセンサ54はワークトレイ14上の複数のワークWの3次元画像を取得する。補助制御部30は、3次元画像データに基づき、三角測量の原理を応用して、チャック56に対する所望のワークWまでの距離および位置(形状)を正確に認識し、ロボットアーム40を的確に駆動して、所望のワークWを確実に把持するようにチャック56を制御することができる。
【0048】
また補助制御部30は、ワークWをチャック56で把持した後、同様にビジョンセンサ54からの3次元画像データに基づいて、中空部18までの距離および位置(形状)を正確に認識し、ロボットアーム40を正確に駆動して、
図4に示すように、ワークWをワークホルダ16の中空部18に精緻に位置合わせして挿入することができる。なお、ワークWの外径と中空部18の内径との間のクリアランスが小さいため、中空部18に挿入されたワークWは、ワークホルダ16内で実質的に固定される。
【0049】
また補助制御部30は、ロボットアーム40を駆動し、ビジョンセンサ54がさまざまな方向からワークWを撮像して得られた画像に基づき、画像解析技術を用いてワークWの3次元形状(大きさや表面凹凸等)を計測または認識することができる。そして補助制御部30は、例えば次に機械加工を行う工作機械2の本体制御部3に、ワークWの3次元形状に関するデータを通信し、工作機械2による機械加工を補助または支援することができる。補助制御部30と本体制御部3との間の通信は、同様に、無線LANを介して行うことが好ましい。
【0050】
(処理支援装置によるジョブの具体例2:反転)
図5(a)〜(c)は、補助制御部30がワークWを反転させる一連の工程を示す斜視図である。
図5(a)は、中空部18に挿入されたワークWを示し、ここでは上面をA面といい、下面をB面という。
図5(b)は、ロボットアーム40およびチャック56を駆動して中空部18から持ち上げられたワークWを示し、その後ワークWは双方向矢印で示すように反転させられる。
図5(c)は、上下反転し、再び中空部18に挿入されたワークWを示す。
【0051】
図6は、本実施形態に係る処理支援装置1および2台の工作機械2a,2bを備えた生産システムの概略ブロック図である。第1および第2の工作機械2a,2bはそれぞれ、本体制御部3a,3b、および第1ならびに第2の機械加工部4a,4bを備え、処理支援装置1は、補助制御部30がAGV10を駆動して、材料ワークWが保管された材料ワークストッカ70と第1の機械加工部4aとの間、第1および第2の機械加工部4a,4bの間、さらに第2の機械加工部4bと完成品が保管される完成品ワークストッカ72との間を往復移動することができる。
【0052】
処理支援装置1は、システム制御部(図示せず)を介して予め設定(ティーチング)された工程プログラムに記述された移動経路に沿って移動するか、またはビジョンセンサ54で得た3次元画像に基づき人工知能技術を用いて自律走行するように構成してもよい。
【0053】
処理支援装置1は、
図6に示す生産システムにおいて、例えば第1の工作機械2aがワークWのA面を保持してB面を切削し、第2の工作機械2bがワークWのB面を保持してA面に穿孔を設ける場合、ワークWを反転させることにより、第1および第2の工作機械2a,2bによる機械加工(切削および穿孔)を補助または支援することができる。
【0054】
また処理支援装置1は、補助制御部30がAGV10を駆動して第2の工作機械2bまで移動している間にロボットアーム40およびチャック56を駆動してワークWを反転させるので、ワークWの反転に要する反転時間を省略または実質的に削減することにより、生産効率を改善することができる。
【0055】
このとき第1の工作機械2aによるB面の切削加工が完了するまでに、処理支援装置1は、第1の工作機械2aから第2の工作機械2bまで移動するとともにワークWを反転させ、第2の工作機械2bに反転したワークWを取り付け、第2の工作機械2bから第1の工作機械2aまで戻ることが好ましい。
【0056】
(処理支援装置によるジョブの具体例3:バリ取り)
処理支援装置1は、補助制御部30がAGV10を駆動して、材料ワークWが保管された材料ワークストッカ70に移動する。材料ワークストッカ70は、複数のワークトレイ14を保管し、各ワークトレイ14には複数の材料ワークWが載置されている。処理支援装置1は、1つのワークトレイ14をチャック56で把持し、ロボットアーム40を用いて筐体12上に移動させる。
【0057】
材料ワークWは、ワークトレイ14に乱雑に載置されていてもよい。ビジョンセンサ54が各材料ワークWを3次元的に撮像し、補助制御部30は、3次元画像に基づいて各材料ワークWの形状および配置位置を認識する。また補助制御部30は、上述のとおり、画像解析技術を用いて、さまざま方向から撮像された3次元画像に基づいて加工前後のワークWの外形寸法および表面凹凸等を正確に画像認識する。よって、ワークトレイ14に乱雑に載置されていても、ビジョンセンサ54で得られた3次元画像に基づいて、処理支援装置1は、ロボットアーム40およびチャック56を用いて所望の材料ワークWを的確に識別した上でピックアップ(把持)することができる。
【0058】
所望の材料ワークWをワークトレイ14に載置した後、処理支援装置1は、補助制御部30がAGV10を駆動して、第1の工作機械2aまで移動する。補助制御部30は、ロボットアーム40およびチャック56を駆動して、材料ワークWを第1の機械加工部4a(例えば旋盤)に装着する。例えば、材料ワークWは円柱状のワークWであり、第1の機械加工部4aはワークWの一方の端面を平坦に切削するとき、ワークWの端面境界部にはバリが形成され得る。
【0059】
補助制御部30は、ロボットアーム40およびチャック56を駆動して、切削加工されたワークWを、処理支援装置1の筐体12上に固定されたワークホルダ16に挿入するとともに、ワークトレイ14から別の材料ワークWをピックアップして、第1の機械加工部4aに装着する。
【0060】
図7は、ワークホルダ16に固定されたワークWのバリを除去するバリ取りツール80(バリ除去デバイスともいう)の概略斜視図である。
図8(a)および
図8(b)は、ワークホルダ16(ならびにワークW)、および処理支援装置1の筐体12上においてワークホルダ16に隣接して配置されたツールホルダ90(ならびにバリ取りツール80)を示す概略斜視図である。
図9は、
図8(b)のツールホルダ90およびバリ取りツール80の鉛直面から見た断面図であり、概略的な回路構成を示す。ここでは便宜上、バリが形成されるワークWの端面をA面といい、対向する端面をB面という。
【0061】
バリ取りツール80は、図示のように、概略、ツール本体81から外側に向かって延びる円環状のフランジ82、ツール本体81に内蔵されたモータ83、モータ83の出力シャフト84に連結されたバリ取りブレード85、モータ83に電力供給するための充電可能な電池(サブ電池)、AC/DCコンバータ、およびサブ電池を充電するツール受電部(いずれも図示せず)を備える。ツール受電部は、ツール受電コイルおよびツールLC共振回路86を有する。
【0062】
他方、ツールホルダ90は、ワークホルダ16と同様、中空部18を有する直方体容器であり、バリ取りツール80を保持するものである。またツールホルダ90は、ホルダ送電コイル92およびホルダLC共振回路93を有するホルダ送電部を備える。バリ取りツール80のフランジ82は、バリ取りツール80がツールホルダ90に挿入されたときの位置決め部材または係止部材として機能する。ホルダ送電コイル92は、挿入時、ツール受電コイル87に対向するように巻回され、ホルダLC共振回路93およびツールLC共振回路86の共振周波数が一致するように構成されている。
【0063】
このように補助制御部30は、ホルダ送電コイル92に高周波電流を供給することにより、ホルダ送電部からツール受電部に非接触給電(磁界共鳴方式)することができる。すなわち本実施形態に係るバリ取りツール80は、磁界共鳴方式のワイヤレス電力伝送技術を用いて、処理支援装置1のメイン電池から電力供給され、サブ電池を充電するように構成されている。このように構成されたバリ取りツール80は、従前のように、メイン電池から有線で直接(ケーブルを介して)サブ電池を充電する場合とは異なり、ケーブルがバリ取りツール80の動作と干渉する可能性を排除することができる。
【0064】
なお上記具体例では、バリ取りツール80のサブ電池は、ホルダ送電部からツール受電部へ非接触給電することにより充電されるものとして説明したが、これに限定されない。例えば、バリ取りツール80がツール本体81の外周面に露出したツール正極端子およびツール負極端子を有し、ツールホルダ90がその収容部の内周面に露出したホルダ正極端子およびホルダ負極端子を有し(いずれも図示せず)、バリ取りツール80がツールホルダ90の収容部に挿入されたとき、ツール正極端子ならびにホルダ正極端子およびツール負極端子ならびにホルダ負極端子が電気的に接続されるように構成してもよい。このときツールホルダ90のサブ電池は、電源ケーブルおよび上記各端子間の電気接続を介して(有線で)処理支援装置1のメイン電池から直接充電することができる。
【0065】
また
図7に示すバリ取りツール80は、エンドエフェクタ50のチャック56で把持(固定)されるものであってもよい。択一的には、上述のように、ツールチェンジャを用いて、チャック56をバリ取りツール80に置換してもよいし、コラム52をロボットアーム40から切り離し、チャック56を含むエンドエフェクタ50の全体を、バリ取りツール80を含むエンドエフェクタ50と置換してもよい。
【0066】
図10は、さらに別の態様を有するバリ取りツール80を示す、
図4と同様の概略斜視図である。
図10に示すバリ取りツール80は、筐体12に固定されたツールホルダ90に着脱自在に保持されるものであってもよく、ツールホルダ90に保持されているときには実質的に筐体12に対して固定される。このバリ取りツール80は、同様にモータの出力シャフト(ともに図示せず)に連結されたバリ取りブレード85を有する。ただし
図10のバリ取りツール80は、バリ取りブレード85を上向きにして筐体12に固定されており、電源ケーブルおよびツールホルダ90の内部配線(ともに図示せず)を介して(有線で)、処理支援装置1のメイン電池から直接給電される。
【0067】
いずれにしても、補助制御部30がロボットアーム40の動作を正確に制御することにより、エンドエフェクタ50とバリ取りツール80との間の相対的な位置および向きを精緻に制御することができる。こうしてバリ取りツール80は、ワークWのA面に形成されたバリを確実に除去することができる。
【0068】
なお、バリ取りツール80がワークWのバリを除去しているとき、バリ屑が処理支援装置1に周囲に飛散する場合がある。そこで処理支援装置1は、詳細を図示しないが、少なくとも
図7のワークホルダ16または
図10のツールホルダ90を包囲するシールドケースを備えることが好ましい。より好ましくは、シールドケースは、処理支援装置1の全体を包囲するように構成される。ただし、こうしたシールドケースは、ロボットアーム40の動作およびAGV10の走行を干渉することのないように構成する必要がある。こうしたシールドケースにより、バリ屑がワークWから飛び散った場合であっても、周囲のオペレータの安全を確保し、工作機械2の損傷を未然に防止することができる。
【0069】
また本実施形態に係る処理支援装置1は、ロボットアーム40およびチャック56を用いてワークWを第1の工作機械2に着脱した後、バリ取りツール80を用いてバリを除去しながら、AGV10を用いて第1の工作機械2から第2の工作機械2まで移動する。この具体例では、補助処理部20は、ロボットアーム40、エンドエフェクタ50(チャック56)、およびバリ取りツール80を含む。
【0070】
さらに処理支援装置1は、ロボットアーム40およびチャック56を用いてバリを除去したワークWを第2の工作機械2bに装着した後、AGV10を用いて第2の工作機械2bから第1の工作機械2aまで移動する。第1の工作機械2aが次のワークWに対する切削加工を完了する前に、処理支援装置1は、上記一連の動作を行う(AGV10が第1の工作機械2aと第2の工作機械2bとの間を往復する)ように構成される。こうして、従前、工作機械2の周辺装置として生産ラインに組み込まれていたバリ取りツール(およびバリ取りツールが占有していたスペース)を省略するとともに、バリを除去するためのジョブ時間を省略または削減することにより、生産効率を実質的に改善することができる。
【0071】
(処理支援装置によるジョブの具体例4:洗浄)
処理支援装置1は、洗浄液またはエア(または気相流体)を切削加工されたワークWに吹き付けることにより、切削屑および/またはクーラントを除去する洗浄装置100を備えていてもよい。洗浄装置100は、概略、洗浄保持部110、昇降シャフト120、洗浄流体の噴出孔122、および開閉可能な天板124を有する(
図12(a)および(b))。
【0072】
図11(a)は、筐体12上に昇降可能に配置された洗浄保持部110の平面図であり、
図11(b)は、
図11(a)のB−B線から見た洗浄保持部110の断面図である。
図12(a)は、筐体12上に露出した洗浄保持部110を示す断面図であり、
図12(b)は、筐体12の内部に収容された洗浄保持部110を示す断面図である。
【0073】
洗浄保持部110は、台座部112と、台座部112から略鉛直方向に延びる複数(6本)の支柱部114と、支柱部114から略水平方向の内側に延びる爪部116とを備える。また洗浄保持部110の台座部112には昇降シャフト120が設けられ、昇降シャフト120は、図示しない昇降装置により昇降するように構成されている。すなわち処理支援装置1の補助制御部30は、昇降装置を制御して、洗浄保持部110を露出状態から収容状態に(または収容状態から露出状態に)昇降させることができる。
【0074】
処理支援装置1は、補助制御部30がロボットアーム40を駆動して、切削加工されたワークWを工作機械2から取り出し、露出状態にある洗浄保持部110に挿入した後(
図12(a))、昇降装置を駆動させて、昇降シャフト120を下降させる(
図12(b))。このとき洗浄保持部110およびワークWは、露出状態から収容状態に下降する。また処理支援装置1の筐体12には、
図12(b)に示すように開閉可能な天板124が設けられ、洗浄保持部110が収容状態にあるとき、密閉可能な処理チャンバ126を形成することが好ましい。
【0075】
さらに処理支援装置1は、洗浄流体(洗浄液またはエア)を噴出する複数の噴出孔122を有し、各噴出孔122は、洗浄流体を加圧して供給する洗浄流体源(図示せず)と連通している。そして洗浄保持部110が収容状態にあるとき、補助制御部30は各噴出孔122から加圧された洗浄液またはエアを噴出することにより、ワークに付着した切削屑および/またはクーラントを除去することができる。この具体例の補助処理部20は、ロボットアーム40およびエンドエフェクタ50(チャック56)の他、洗浄保持部110、昇降装置、開閉可能な天板124、および洗浄流体を噴出する機構(噴出孔122ならびに洗浄流体源)を含む。なお、昇降装置等の筐体12の内部に配置された各構成部品は、処理支援装置1のメイン電池から電力供給される。
【0076】
(処理支援装置によるジョブの具体例5:レーザ刻印)
図13は、レーザ刻印デバイス130を下から見た底面斜視図である。レーザ刻印デバイス130は、任意の金属からなるワークWの表面にレーザビームを照射することによりマーキングできるものであれば、任意の構成を有するものであってもよい。この具体例では、レーザ刻印デバイス130は、工作機械による機械加工が完了した後に、例えば部品品番および/または製造シリアル番号をワークWの表面にレーザで刻印するものである。
【0077】
レーザ刻印デバイス130は、
図13に示すように、概略、レーザビームを出力するレーザ発振部132、レーザ発振部132から出力されたレーザビームをワークWに向けて反射するガルバノミラー(図示せず)を含むレーザ偏向部134、レーザ発振部132から略水平方向に延びるレーザ支持部136、およびレーザ支持部136に固定され、略鉛直方向に延びるハンドル138を備える。またハンドル138は、レーザ支持部136より上部においてロボットアーム40に保持され、レーザ支持部136より下部には、レーザ発振部132に電力供給するための充電可能なサブ電池、これを充電するツール受電部、ツールLC共振回路、およびAC/DCコンバータ(いずれも図示せず)が内蔵されている。ハンドル138は、外側に向かって延びる円環状のフランジ82を備え、フランジ82は、バリ取りツール80について上記説明したものと同様、係止部として機能する。
【0078】
レーザ刻印デバイス130は、エンドエフェクタ50と同様、処理支援装置1の補助制御部30と通信可能なマイクロコントローラ(図示せず)を有する。マイクロコントローラは、レーザビームを出力するようにレーザ発振部132を制御するとともに、レーザビームの照射位置を偏向するようにガルバノミラーの偏向角を制御する。こうしてレーザ刻印デバイス130は、レーザ発振部132からレーザビームにより、所望の文字/数字等をワークWの表面にマーキングすることができる。なお、ツール受電部およびフランジ82は、バリ取りツール80について上記説明したものと同様のものであるので、詳細な説明を省略する。
【0079】
レーザ刻印デバイス130は、ハンドル138の下部がツールホルダ90に挿入されたとき、ホルダ送電コイル92は、ツール受電コイル87に対向するように巻回され、ホルダLC共振回路93およびツールLC共振回路86の共振周波数が一致するように構成されている。こうして補助制御部30は、ホルダ送電コイル92に高周波電流を供給することにより、ホルダ送電部からツール受電部に非接触給電(磁界共鳴方式)することができる。この具体例における補助処理部20は、ロボットアーム40およびエンドエフェクタ50(チャック56)の他、レーザ刻印デバイス130を含む。
【0080】
本実施形態に係る処理支援装置1は、ロボットアーム40およびチャック56を用いてワークWを第1の工作機械2に着脱した後、レーザ刻印デバイス130を用いて、ワークWにレーザ刻印しながら、AGV10を用いて第1の工作機械2aから第2の工作機械2bまで移動する。したがって、工作機械の周辺装置として生産ラインに組み込まれていたレーザ刻印装置(およびレーザ刻印装置が占有していたスペース)を省略するとともに、ワークWレーザ刻印するためのジョブ時間を省略または削減することにより、生産効率を実質的に改善することができる。
【0081】
(処理支援装置によるジョブの具体例6:複数のワークの組み立て)
詳細を図示しないが、ロボットアーム40およびチャック56を用いて複数のワークWの組み立てジョブを実行することができる。例えば、雄ネジを有する第1のワークWを筐体12上に保持した後、ロボットアーム40を用いて、雌ネジを有する第2のワークWを第1のワークWに位置合わせして、第2のワークWを第1のワークWに対して回転させることにより、雌ネジと雄ネジとを互いに螺合させて、第1のワークWおよび第2のワークWを組み立てることができる。複数のワークWの組み立てジョブも、AGV10を用いて第1の工作機械2から第2の工作機械2まで移動する間に行われるので、組み立て装置およびその占有スペースを省略するとともに、組み立てジョブに要するジョブ時間を省略または削減することにより、生産効率を実質的に改善することができる。
【0082】
(処理支援装置によるジョブの具体例7:ワークの個別処理またはバッチ処理)
上記説明したように、処理支援装置1は、例えば、補助制御部30がAGV10を駆動して材料ワークストッカ70から工作機械2aに移動する間に、ワークトレイ14に格納された各ワークWの形状等を測定してもよい。工作機械2aの本体制御部3aは、補助処理部20を介して各ワークWの形状等のデータを収集し、例えば切削加工を支援するために利用してもよい。また処理支援装置1は、バリ取りツール80を用いてワークWのバリを取り除き、洗浄装置100を用いてワークWに付着したバリを除去してもよい。さらに処理支援装置1は、レーザ刻印デバイス130を用いてワークWにシリアル番号をレーザ刻印して、さらにロボットアーム40およびチャック56を用いてワークトレイ14を完成品ワークストッカ72に移動させてもよい。処理支援装置1が行うジョブは、上記説明したもの以外のものであってもよい。
【0083】
とりわけ、上述のように処理支援装置1が複数のジョブを行う場合、補助制御部30は、本体制御部3aと通信して、ワークWの機械加工の進捗に応じて、ワークWの機械加工を補助または支援するように補助処理部20を制御することが好ましい。補助制御部30は、例えば機械加工部4aの休止時間が最も短くなるように、すなわちワークWの機械加工を最適化するように工作機械2を補助または支援する。
【0084】
これに限定されるものではないが、より詳細な具体例として、補助制御部30は、工作機械2aによるワークWに対して機械加工するために必要な機械加工時間MP(ワークWの機械加工の進捗に対応)と、処理支援装置1がワークWに対してジョブを行うために必要な補助加工時間APと、走行台車部10が第1の工作機械2aと第2の工作機械2bとの間を往復移動するために必要な移動時間Tと、ロボットアーム40が第2の工作機械2bにワークWを着脱(取り付けおよび取り外し)するために必要な着脱時間Sに基づいて、AGV10が往復移動中に単一のワークWに対してジョブを行うべきか(個別処理)、または複数のワークWに対してジョブを行うべきか(バッチ処理)を判断してもよい。
【0085】
機械加工時間MPが、補助加工時間APまたは移動時間Tのうちのいずれか長い方の時間Bと、ワークWの着脱時間Sとの和より大きいとき、すなわち次式を満たすとき、工作機械2の休止時間はゼロとなるので、補助制御部30は、AGV10が次の工作機械2bまたは完成品ワークストッカ72に移動している間に、単一のワークWに対してジョブを行う(個別処理)ように補助処理部20を制御する。
[数1]
MP>B(APまたはT)+S
【0086】
一方、上記[数1]を満たさないとき、工作機械2aが休止している時間が生じるので、個別処理を行わず、補助制御部30は、複数のワークWに対してジョブを行い、ワークトレイ14に載置するように補助処理部20を制御するとともに、その後、次の工作機械2bまたは完成品ワークストッカ72に移動するようにAGV10を制御する(バッチ処理)。こうして補助制御部30は、ワークWの機械加工を最適化するように工作機械2aを補助または支援する。
【0087】
上記説明したように、上記実施形態によれば、一連の生産工程に変更があった場合(例えばワークWのバリを除去する必要がなくなった場合等)でも、工程プログラムを修正するだけでよく、工作機械2の周辺装置(バリ取り装置)を含む全体のレイアウト(一連の生産工程)を変更する必要がなく、より柔軟に対応できる生産システムを提供することができる。
【0088】
また上記実施形態によれば、処理支援装置1は、工作機械2が設置された工場内を移動している間に、上記説明した一連のジョブを反復して行うことにより、オペレータを介することなく、24時間の連続的な機械加工を実現することができる。
【0089】
なお
図6に示す生産システムは、処理支援装置1および2台の工作機械2a,2bを備えたものであったが、これに限定されるものではない。
図14は、処理支援装置1および単一の工作機械2を備えた生産システムの概略ブロック図である。工作機械2は、本体制御部3および機械加工部4を備える。処理支援装置1は、補助処理部20がAGV10を駆動して、材料ワークWが保管された材料ワークストッカ70と機械加工部4との間、および機械加工部4と完成品が保管される完成品ワークストッカ72との間を往復移動することができる。なお、
図14に示す材料ワークストッカ70および完成品ワークストッカ72は、同一工場内に配置されたものである。
【0090】
図15は、
図6の変形例を示すブロック図であり、材料ワークストッカ70および第1の工作機械2aは材料工場に設置され、第2の工作機械2bおよび完成品ワークストッカ72は組立工場に設置されている。例えば、第1の工作機械2aが切削加工した後、材料工場から組立工場に移動する輸送トラック等(輸送体)に処理支援装置1が乗降するように補助制御部30はAGV10を制御する。処理支援装置1は、輸送トラックで輸送されている間に、例えばバリ取りツール80を用いてワークWのバリを取り除き、洗浄装置100を用いてワークWに付着したバリを除去し、および/またはレーザ刻印デバイス130を用いてワークWにシリアル番号をレーザ刻印してもよい。
【0091】
このように処理支援装置1は、輸送トラックで工場間を輸送されている間に、1つまたはそれ以上の支援ジョブまたは補助ジョブを行うことにより、工場内に固定的に設置された周辺装置を省略するとともに、これらに要するジョブ時間を省略または削減して、生産効率を実質的に改善することができる。
【0092】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【課題】生産工程に変更があっても、より柔軟に対応可能で、かつ走行台車部が移動している間に、補助処理部が被加工物の補助加工を行うことにより、生産効率の高い生産システムを提供する。
【解決手段】工作機械のための処理支援装置は、被加工物を機械加工する工作機械が設置された工場内で移動可能な走行台車部と、走行台車部に設けられ、工作機械による被加工物の機械加工を補助または支援する補助処理部と、走行台車部および補助処理部を制御する補助制御部と、を備え、補助制御部は、工場内で移動するように走行台車部を制御するとともに、工作機械による被加工物の機械加工を制御する本体制御部と通信して、被加工物の機械加工の進捗に応じて、走行台車部が工場内を移動している間に、工作機械による被加工物の機械加工を補助または支援するように補助処理部を制御する。