【文献】
A.I. Zaghloul et al.,Aperture Size Reduction Using Sub-Beam Design Concepts for Multiple Spot Beam Satellites,[online],IEEE Antennas and Propagation Society International Symposium, [令和2年1月21日検索], インターネット,IEEE,2002年 8月 6日,pp.534-537,URL,https://ieeexplore.ieee.org/document/875196/authors#authors
【文献】
Mathiew Picard et al.,An Adaptive Multi-User Multi-Antenna Receiver for Satellite-Based AIS Detection, [online],2012 6th Advanced Satellite Multimedia Systems Conference(ASMS) and 12th Signal Processing for Space Communications Workshop(SPSC), [令和2年1月22日検索], インターネット,IEEE,2012年10月18日,pp.273-280,URL,https://ieeexplore.ieee.org/document/6333088
【文献】
Fabio Maggio et al.,Digital Beamforming Techniques Applied to Satellite-Based AIS Receiver, [online],IEEE A&E systems magazine, [令和2年1月22日検索], インターネット,IEEE,2014年 7月30日,URL,https://ieeexplore.ieee.org/document/6867653
【文献】
平原 大地,日本周辺船舶輻輳海域に向けた地上デジタルビームフォーミングによる超高性能AIS, [online],IEICE Technical Report, [令和2年1月22日検索],インターネット,一般社団法人 電子情報通信学会,2016年 7月14日,信学技報, vol.116, no.144, SAT2016-19,pp.45-50,URL,https://www.ieice.org/ken/paper/20160721Hbj9/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数点給電により円偏波特性となる構造のアンテナを、前記複数点給電をするための各給電部からそれぞれ独立してAIS信号を取り出し、前記偏波特性が異なる複数のAISアンテナとして用いる、請求項7に記載のAIS信号受信システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、人工衛星AISでは、船舶が過密なエリアでは信号が混信してしまい、信号が受信できても信号の復調ができず、船舶情報を得られない、という課題がある。
【0006】
従来から受信後の信号波形から信号を分離処理する技術は数多く報告されているが、混信する信号数が多い場合には理論的に限界があり、日本周辺海域(地中海も同様と思われる)では特に船舶も多く、信号の復調が困難である。
【0007】
これに対して、人工衛星に複数のアンテナや大規模なアンテナを搭載し、アナログ合成等により高指向アンテナを形成しアンテナビームを絞る方法が考えられる。当該方法によれば、受信エリアを狭め混信する信号数を減らすことはできる。しかしながら、一度に広域の受信が可能であり、同じ船舶を広範囲長時間観測することで得られる受信確率の向上という、本来の人工衛星によるメリットが失われるという問題がある。また、人工衛星ならではの軌道位置や観測海域、周辺陸域地形、それに伴う相対的な船舶分布の多様な変化に対し、十分対応ができないという問題がある。これらの課題を解決するには、複数視野を持つ大規模なアンテナシステム等を人工衛星に構築する必要があり、現実的ではない。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、大規模なアンテナシステムを用いずに、人工衛星ならではの軌道位置や観測海域、周辺陸域地形、それに伴う相対的な船舶分布の多様な変化に対して柔軟に対応することができる、AIS信号受信システム、AIS信号の受信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るAIS信号受信システムは、人工衛星に搭載され、船舶から送信されるAIS信号をそれぞれ独立して受信するための複数のAISアンテナと、DBFによりデジタル上で所望のアンテナビームを形成し、前記形成したアンテナビームに応じて、前記受信した各AIS信号を観測するデジタル信号処理部とを具備する。
本発明の一形態に係るAIS信号の受信方法は、船舶から送信されるAIS信号を、第1の人工衛星に搭載した複数のAISアンテナを介してそれぞれ独立して受信し、DBFによりデジタル上で所望のアンテナビームを形成し、前記形成したアンテナビームに応じて、前記受信した各AIS信号を観測する。
【0010】
本発明によれば、DBFによりデジタル上でアンテナビームを形成しているので、大規模なアンテナシステムを用いずに人工衛星ならではの軌道位置や観測海域、周辺陸域地形、それに伴う相対的な船舶分布の多様な変化に柔軟に対応可能となる。
【0011】
本発明の一形態に係るAIS信号受信システムは、前記所望のアンテナビームとして、DBFによりデジタル上で所望のマルチビームを同時に形成することが好ましい。
【0012】
本発明によれば、マルチビームが観測エリアを補い合うことで、観測エリアを実質的に拡大でき、かつ、観測時間も変わることなく、船舶からのAIS信号を観測することができる。
【0013】
本発明の一形態に係るAIS信号受信システムは、衛星バスシステムをさらに備え、前記各AISアンテナを介して受信した各受信信号を前記衛星バスシステムを介して地上に伝送し、地上側システムで、DBFによりデジタル上で所望のアンテナビームを形成し、前記形成したアンテナビームに応じて、前記受信した各AIS信号を観測することが好ましい。
【0014】
本発明によれば、処理負荷や計算機リソースに余裕のある地上側システムでDBF処理することで、人工衛星の処理負荷や搭載機器数の増加を抑えることができ、十分な性能を得るための人工衛星システムが成立する。
【0015】
本発明の一形態に係るAIS信号受信システムは、観測海域及び人工衛星の軌道条件に応じて、前記AIS信号を受信するAISアンテナの数を制御することが好ましい。
【0016】
本発明によれば、信号分離に必要なアンテナの数は干渉する信号数に依存することを利用し、観測海域や人工衛星の軌道条件に合わせて地上に受信信号を伝送するアンテナの数を制御する。これにより、人工衛星から地上へ伝送しなくてはいけないデータ量が、独立したアンテナの数だけ増加するようなことがなくなる、よって、通信回線が成立しないという問題を回避することができる。
【0017】
本発明の一形態に係るAIS信号受信システムは、前記観測したAIS信号からデータを復調したときの検出性能と、DBFによりデジタル上で所望のアンテナビームを形成する処理に要する負荷との関係から算出される信号処理負荷量当たりの検出性能指標を収納するデータベースを備えることが好ましい。検出性能指標の評価結果をAIS信号の観測計画に反映することにより、人工衛星によるAIS信号の観測をより効率よく行うことができる。
【0018】
本発明の一形態に係るAIS信号受信システムは、前記船舶から送信されるAIS信号を、第2の人工衛星に搭載したAISアンテナを介して受信して地上に伝送し、前記地上側システムで、DBFによりデジタル上で所望のアンテナビームを形成し、前記形成したアンテナビームに応じて、前記伝送された各AIS信号を観測することが好ましい。
【0019】
本発明の一形態に係るAIS信号受信システムは、前記船舶から送信されるAIS信号を、地上に設置されたAISアンテナを介して受信して前記地上側システムに伝送し、前記地上側システムで、DBFによりデジタル上で所望のアンテナビームを形成し、前記形成したアンテナビームに応じて、前記伝送された各AIS信号を観測することが好ましい。
【0020】
本発明では、独立したアンテナ毎の各受信信号を異なる軌道上にいる人工衛星やAIS地上側システムから得て各受信信号からDBF処理する。観測点毎のアンテナの数やデータ転送量が抑えられ、既存の衛星群や同時打上げの衛星間で協力観測による性能向上が可能となる。
【0021】
なお、観測点毎で異なる観測エリアが多く生じてしまう場合は、信号分離処理においてノイズとなってしまう性能劣化が生じるが、これは同時打上げの衛星間や軌道条件から適切な衛星選択をすることで改善できる。
【0022】
本発明の一形態に係るAIS信号受信システムは、前記複数のAISアンテナは偏波特性が異なり、デジタル信号処理部により、偏波ダイバーシティを使って前記受信した各AIS信号を観測することが好ましい。
【0023】
船舶と衛星間は、相対位置や伝搬条件(電離層による偏波回転等)によって偏波成分が変動するため、本発明により柔軟な偏波成分の設定及び最適化が可能となる。
【0024】
本発明の一形態に係るAIS信号受信システムは、複数点給電により円偏波特性となる構造のアンテナを、前記複数点給電をするための各給電部からそれぞれ独立してAIS信号を取り出し、前記偏波特性が異なる複数のAISアンテナとして用いることが好ましい。
【0025】
独立した偏波成分を得るために最大3成分の異なるアンテナが必要となるため、搭載リソースや通信回線への負荷が新たに発生する。特に、衛星AISではVHF帯によりアンテナサイズが大きくなりアンテナ搭載スペースが一番の課題となるが、上記構成によりこれらの課題が解決する。
【0026】
本発明の一形態に係るAIS信号受信システムでは、前記AISアンテナは当該人工衛星構体自体を使って構成される。
【0027】
特に、人工衛星構造物形状に対し長い波長特性を持つAIS信号の特性を利用し、アンテナパターンへの影響や設計調整の手間を軽減させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、大規模なアンテナシステムを用いずに人工衛星ならではの軌道位置や観測海域、周辺陸域地形、それに伴う相対的な船舶分布の多様な変化に柔軟に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態によって限定的に解釈されるものではない。
〈第1の実施形態〉
図1は、本発明の第1の実施形態に係るAIS信号受信システムを示す図である。
図1に示すように、AIS信号受信システム1は、人工衛星2に搭載される受信設備20を有する。受信設備20は、船舶から送信されるAIS信号を、複数のAISアンテナを介してそれぞれ独立して受信し、DBFによりデジタル上で所望のアンテナビームを形成し、形成したアンテナビームに応じて、受信した各AIS信号を観測する。
【0031】
図2は、
図1に示す人工衛星が有する受信設備の構成を示す図である。
【0032】
図2に示すように、受信設備20は、n個のAISアンテナ21
1〜21
nをそれぞれ独立して有し、更にAIS受信機22と、デジタル信号処理部23と、AIS信号復調部24とを有する。AISアンテナ21
1〜21
nは典型的には線状アンテナや平面パッチアンテナを用いることができる。
【0033】
AIS受信機22は、n個のAISアンテナ21
1〜21
nに対応するn個のAISサンプリング回路22
1〜22
nを有する。各AISサンプリング回路22
1〜22
nは典型的には低雑音増幅器(LNA)、ダウンコンバータ(D−C)及びAD変換器(A−D)などから構成される。各AISサンプリング回路22
1〜22
nは、それぞれ独立して、AISアンテナ21
1〜21
nで受信された受信信号からAIS信号をサンプリングする。
【0034】
デジタル信号処理部23は、DBFによりデジタル上で所望のアンテナビームを形成し、形成したアンテナビームに応じて、受信した各AIS信号を観測するものである。典型的にはデジタル信号処理部23は、各AISサンプリング回路22
1〜22
nからデジタル信号としてのAIS信号が入力される。デジタル信号処理部23は、DBF処理としてデジタル信号にそれぞれウエイトを与えて合成することで、デジタル上でアンテナビームを形成し、AIS信号を観測するものであり、ウエイトを与えて合成する際に異なるウエイトの組み合わせによる並列処理によって、マルチビームを同時に形成する。デジタル信号処理部23は、各マルチビームを所定の条件に応じて適応的に形成する。なお、DBFは、利得やビーム幅、方向に合わせてウエイトを決めて観測する手順に限定されず、マルチアンテナによる信号分離全般を意味する。すなわち、DBFとは、ヌルの方向やメインローブの利得、サイドローブの位置などが、信号分離に都合のよい状況を算出するもの全般を含むものである。
【0035】
AIS信号復調部24は、従来の受信部に相当し、デジタル信号処理部23で観測されたAIS信号からデータをそれぞれ復調する。
【0036】
なお、本発明は、マルチビームでなくシングルのアンテナビームを、デジタル信号処理部23により形成するものであってもよい。
【0037】
このように構成されたAIS信号受信システム1では、人工衛星2が例えば
図1に示した所定の観測海域4を航行する複数の船舶3からAIS信号を受信する場合には、仮想するマルチビーム(デジタル上のマルチビーム)を形成して複数のエリア5からそれぞれAIS信号を受信する。この場合に、
図3に概念的に示すように、人工衛星2の受信設備20の各AISアンテナ21
1〜21
nは、例えば観測海域4の複数の船舶3からそれぞれ所定の単一指向性S
0でAIS信号を独立して受信する。
【0038】
受信した各AIS信号は、AIS受信機22でそれぞれ独立してデジタル信号に変換され、各デジタル信号がデジタル信号処理部23に入力される。
【0039】
デジタル信号処理部23では、DBF処理によりデジタル上でマルチビームS
1〜S
nを形成する。各マルチビームS
1〜S
nは、それぞれ当該人工衛星2の軌道位置や観測海域、周辺陸域地形、それに伴う相対的な船舶分布の多様な変化に柔軟に対応して形成すればよい。各マルチビームS
1〜S
nは、同一の利得や指向性を有するものでなくてもよいし、走査するものであってもよい。
【0040】
デジタル信号処理部23の出力は、例えば従来の複数のフェーズドアレーアンテナのそれぞれの出力に相当するものであり、AIS信号復調部24でそれぞれのエリアのAIS信号からデータに復調される。
【0041】
復調されたデータは典型的には人工衛星2が有する衛星バスシステム(図示せず)を介して陸上局6に伝送される。陸上局6はデータをAIS信号として船舶3に提供する。
【0042】
このAIS信号受信システム1では、デジタル信号処理部23で並列処理によってデジタル上でマルチビームを同時に形成する構成であるので、同時に高利得な複数のビームを得ることができる。従って、それぞれのビームで限られたエリアを観測して混信を防ぎつつ、複数のエリアを同時に観測できる。更に各ビームの指向性、利得、サイドローブ、方向など自在に変更可能であり、人工衛星ならではの軌道位置や観測海域、周辺陸域地形、それに伴う相対的な船舶分布の多様な変化に対し、柔軟に対応することができる。
【0043】
またこのAIS信号受信システム1では、デジタル信号処理部23で並列処理によってデジタル上でマルチビームを同時に形成しているので、エリアごとにフェーズドアレーアンテナを設けるような構成は不要となり、複数のエリアに対して1セットのAISアンテナ21
1〜21
nで対応することが可能となる。従って、大規模なアンテナシステムは不要となり、人工衛星に搭載するシステムとして適したものとなる。特にAIS信号は、VHF帯で波長が長くアンテナの規模が大きくなることから、1セットのAISアンテナ21
1〜21
nで対応可能なことは、人工衛星のシステムとして有利である。
【0044】
〈第2の実施形態〉
図4は、本発明の第2の実施形態に係るAIS信号受信システムの構成を示すブロック図である。この実施形態で第1の実施形態における要素と同一の要素には同一の符号を付す。
図4に示すように、AIS信号受信システム201は、人工衛星2に搭載される受信設備220と、地上側システム230とを有する。
人工衛星2は、上記の受信設備220と、衛星バスシステム221とを有する。
地上側システム230は、追跡管制システム231と、地上DBFシステム232とを有する。
【0045】
受信設備220は、n個のAISアンテナ21
1〜21
nをそれぞれ独立して有し、更にAIS受信機22を有する。AIS受信機22は、n個のAISアンテナ21
1〜21
nに対応するn個のAISサンプリング回路22
1〜22
nを有する。
【0046】
衛星バスシステム221は、AIS受信機22と、地上側システム230の追跡管制システム231との間でデータを伝送する。
【0047】
追跡管制システム231は、人工衛星2を追跡し、人工衛星2の衛星バスシステム221との間でデータを伝送する。
【0048】
地上DBFシステム232は、デジタル信号処理部23と、AIS信号復調部24とを有する。
【0049】
従って、第2の実施形態に係るAIS信号受信システム201は、第1の実施形態では人工衛星2側に配置されていたデジタル信号処理部23及びAIS信号復調部24を、地上側に配置した点で第1の実施形態に係る受信設備20と異なる。
【0050】
このように構成されたAIS信号受信システム201では、各AISアンテナ21
1〜21
nでそれぞれ独立して受信したAIS信号は、AIS受信機22でそれぞれ独立してデジタル信号に変換される。
【0051】
AIS受信機22で変換された各デジタル信号は、衛星バスシステム221及び地上側システム230の追跡管制システム231を介して、地上DBFシステム232に伝送される。
【0052】
地上DBFシステム232のデジタル信号処理部23では、DBFによりデジタル上でマルチビームS
1〜S
nを形成し、形成したアンテナビームに応じて、受信した各AIS信号を観測する。AIS信号復調部24では、それぞれのエリアのAIS信号からデータに復調される。
【0053】
デジタル信号処理部23は、処理負荷の大きいDBF処理を並列処理として実行することから、人工衛星2に当該処理部23を配置すると人工衛星2の処理負荷が大きくなり、しかも搭載機器数が増加する。これに対して、この第2の実施形態に係るシステム201では、処理負荷や計算機リソースに余裕のある地上側システム230に当該処理部23を配置しているので、人工衛星における処理負荷や搭載機器数の増加を抑えることができる。
【0054】
この第2の実施形態に係るAIS信号受信システム201では、観測海域及び人工衛星の軌道条件に応じて、AIS信号を受信するAISアンテナ21
1〜21
nの数を制御してもよい。具体的には、観測海域及び人工衛星の軌道条件に応じて信号分離に必要なAISアンテナの数を予めデータベース化しておき、人工衛星2の受信設備220では、現在の位置情報から観測海域及び人工衛星の軌道条件を求め、この求められた観測海域及び人工衛星の軌道条件に対応するAISアンテナ21
1〜21
nの数を読み出す。受信設備220では、その数のAISアンテナ21
1〜21
nでそれぞれ独立して受信したAIS信号を、AIS受信機22でそれぞれ独立してデジタル信号に変換する。
【0055】
AIS受信機22で変換した各デジタル信号は、衛星バスシステム221及び地上側システム230の追跡管制システム231を介して地上DBFシステム232に伝送される。
【0056】
これにより、人工衛星2から衛星バスシステム221及び地上側システム230の追跡管制システム231を介して地上DBFシステム232に伝送しなくてはいけないデータ量を合理的な量まで減らすことができる。このため、衛星バスシステム221と追跡管制システム231との間で通信回線が成立しないという問題を回避することができる。
【0057】
また、この第2の実施形態に係るAIS信号受信システム201では、地上側システム230の地上DBFシステム232側で観測したAIS信号からデータを復調したときの検出性能と、DBFによりデジタル上で所望のアンテナビームを形成する処理に要する負荷との関係から算出される、信号処理負荷量あたりの検出性能指標を観測ケース毎に評価して予めデータベース化しておくことが好ましい。基本的には、目的の海域を観測できる時間は全てのAISアンテナ21
1〜21
nで受信して信号処理負荷量あたりの検出性能指標を評価する。なお、複数の人工衛星で観測してもよい。
【0058】
観測海域及び人工衛星の軌道条件に合わせて、必要なAISアンテナの数及び観測時間を効率的かつ最小限になるように、例えば不要な観測期間ではアンテナ数を切り替えるように、当該検出性能指標の評価結果をAIS信号の観測計画に反映することができる。これにより人工衛星2によるAIS信号の観測をより効率よく行うことができる。
なお、通常の観測処理とは別に、DBFにより信号衝突の顕著な海域や干渉源の到来方向の推定を行い、各軌道での算出結果から位置を特定する処理を行ってもよい。そして、得られた情報は、DBF処理時の不要波方向として定義し、衛星位置毎に相対方向を与えてヌルステアリング等で影響を最小限になるよう工夫してもよい。更に、数ある船舶輻輳域を同時に見ないよう人工衛星2の位置毎に各相対方向を与えて、DBF処理を最適化してもよい。
【0059】
〈第3の実施形態〉
図5は、本発明の第3の実施形態に係るAIS信号受信システムの構成を示すブロック図である。この実施形態で第1及び第2の実施形態における要素と同一の要素には同一の符号を付す。
図5に示すように、AIS信号受信システム301は、人工衛星2に搭載される受信設備220と、地上側システム230と、別のn個の人工衛星302にそれぞれ搭載される受信設備320と、陸上の地上局400に配置された受信設備420とを有する。
【0060】
人工衛星2は、上記の受信設備220と、衛星バスシステム221とを有する。
人工衛星302は、上記の受信設備320と、衛星バスシステム221とを有する。
【0061】
受信設備320は、典型形には1つのAISアンテナ21
1と、AIS受信機322とを有する。AIS受信機322は、1つのAISアンテナ21
1に対応する1つのAISサンプリング回路22
1を有する。
【0062】
地上局400は、受信設備420を有する。受信設備420は、典型形には1つのAISアンテナ21
1と、AIS受信機422とを有する。AIS受信機422は、1つのAISアンテナ21
1に対応する1つのAISサンプリング回路22
1を有する。
【0063】
地上側システム230は、追跡管制システム231と、地上DBFシステム232とを有する。
【0064】
このように構成されたAIS信号受信システム301では、人工衛星2の受信設備220の各AISアンテナ21
1〜21
nでそれぞれ独立して受信したAIS信号は、AIS受信機22でそれぞれ独立してデジタル信号に変換される。
【0065】
同様に、人工衛星302の受信設備320のAISアンテナ21
1で受信したAIS信号は、AIS受信機322でデジタル信号に変換される。地上局400の受信設備420のAISアンテナ21
1で受信したAIS信号は、AIS受信機422でデジタル信号に変換される。
【0066】
人工衛星2及び人工衛星302の各AIS受信機22、322で変換された各デジタル信号は、衛星バスシステム221及び地上側システム230の追跡管制システム231を介して地上DBFシステム232に伝送される。また地上局400のAIS受信機422で変換されたデジタル信号は、有線ネットワークなどを介して地上DBFシステム232に伝送される。
【0067】
地上DBFシステム232のデジタル信号処理部23では、DBFによりデジタル上でマルチビームS
1〜S
nを形成し、形成したアンテナビームに応じて、受信した各AIS信号を観測する。AIS信号復調部24では、それぞれのエリアのAIS信号からデータに復調される。
【0068】
この第3の実施形態に係るAIS信号受信システム301では、独立したAISアンテナ21
1毎の各受信信号を異なる軌道上にいる人工衛星2、302や地上局400から得て、地上DBFシステム232で各受信信号からDBF処理している。このため、観測点毎のアンテナの数やデータ転送量が抑えられ、既存の衛星群や同時打上げの衛星間での協力観測による性能向上が可能となる。
【0069】
この第3の実施形態では、人工衛星2、別の人工衛星302及び地上局400から受信信号を得ていたが、人工衛星2及び別の人工衛星302から受信信号を得てもよく、或いは人工衛星2及び地上局400から受信信号を得てもよい。
【0070】
〈第4の実施形態〉
図6は、本発明の第4の実施形態に係るAIS信号受信システムの構成を示すブロック図である。この実施形態で第1の実施形態における要素と同一の要素には同一の符号を付す。
図6に示すように、この実施形態に係るAIS信号受信システム501は、偏波特性が異なるAISアンテナとして、それぞれ垂直偏波AISアンテナ521
1と、水平偏波AISアンテナ521
2と、円偏波AISアンテナ521
3とを有する。
【0071】
このAIS信号受信システム501では、各AISアンテナ521
1〜521
nでそれぞれ独立して受信したAIS信号は、AIS受信機22でそれぞれ独立してデジタル信号に変換される。
【0072】
AIS受信機22で変換された各デジタル信号は、デジタル信号処理部23に入力される。デジタル信号処理部23では、DBFによりデジタル上でマルチビームS
1〜S
nを形成し、形成したアンテナビームに応じて、受信した各AIS信号を観測する。ここで、AISアンテナとして偏波特性の異なるアンテナを用いていることから、偏波ダイバーシティを使って各AIS信号を観測することができる。
【0073】
船舶と衛星間は、相対位置や伝搬条件(電離層による偏波回転等)によって偏波成分が変動する。これに対して、このシステム501では偏波ダイバーシティを使って各AIS信号を観測しており、デジタル信号処理部23において各偏波アンテナからの受信信号のウエイトを可変できるので、柔軟な偏波成分の設定及び最適化が可能となる。
【0074】
この実施形態では、垂直偏波AISアンテナ521
1、水平偏波AISアンテナ521
2及び円偏波AISアンテナ521
3をそれぞれ別個に有すものであるが、複数点給電により円偏波特性となる構造のアンテナを、複数点給電をするための各給電部からそれぞれ独立してAIS信号を取り出し、偏波特性が異なる複数のAISアンテナとして用いてもよい。
図7及び
図8にその例を示す。
【0075】
図7は、平面パッチアンテナに適用した例である。
図7(a)に示すように、平面パッチアンテナ701では一般的には平面パッチアンテナ701の90°位相の異なる給電部702、703からの出力を合成器704で合成し、AISサンプリング回路705に入力している。
【0076】
これに対して、この実施形態では、
図7(b)に示すように、平面パッチアンテナ701の90°位相の異なる給電部702、703からの出力をそれぞれ独立してAISサンプリング回路705、705でデジタル信号に変換し、デジタル信号処理部23に入力する。デジタル信号処理部23は、上記の偏波ダイバーシティ処理及びマルチビームによる観測を行う。
【0077】
図8は、線状アンテナに適用した例である。
図8(a)に示すように、線状アンテナ801では一般的には線状アンテナ801の90°位相の異なる給電部802、803からの出力を合成器804で合成し、AISサンプリング回路805に入力している。
【0078】
これに対して、この実施形態では、
図8(b)に示すように、線状アンテナ801の90°位相の異なる給電部802、803からの出力をそれぞれ独立してAISサンプリング回路805、805でデジタル信号に変換し、デジタル信号処理部23に入力する。上記と同様にデジタル信号処理部23は、偏波ダイバーシティ処理及びマルチビームによる観測を行う。
【0079】
独立した偏波成分を得るために最大3成分の異なるアンテナが必要となるため、搭載リソースや通信回線への負荷が新たに発生する。特に、衛星AISではVHF帯を用いているので、アンテナサイズが大きくなりアンテナ搭載スペースが一番の課題となる。これに対して、本発明に係るAISアンテナでは、1つのアンテナを使って、しかもマルチビームによる観測とともに偏波ダイバーシティ処理を行うことができるので、アンテナ搭載スペースを小型化することができ、処理効率も良い。
【0080】
〈第5の実施形態〉
図9及び
図10は、一般的な人工衛星におけるAISアンテナの設置例の説明図である。
図11及び
図12は、本発明の第5の実施形態に係るAISアンテナの設置例の説明図である。
【0081】
図9及び
図10に示すように、一般的な人工衛星901では、人工衛星901の衛星構体902の外側にAISアンテナ903を配置し、衛星構体902の内部の給電部904より同軸ケーブルを介してAISアンテナ903に給電する構成が採用されている。
【0082】
しかし、すでに説明したとおり、衛星AISではVHF帯を用いているので、アンテナサイズが大きくなりアンテナ搭載スペースが課題となる。
【0083】
これに対して、
図11及び
図12に示すように、第5の実施形態に係るAISアンテナ913は、人工衛星911の衛星構体912自体を使って構成されている。
【0084】
人工衛星911の衛星構体912には、1又は2以上のスリット915を適宜設け、衛星構体912の内部の給電部914より衛星構体912に給電することでアンテナ放射器として機能させ、スリット式のAISアンテナ913を構成している。
【0085】
第5の実施形態に係るAISアンテナ913は、アンテナ搭載スペースを小さくできる。加えて、人工衛星構造物形状に対し長い波長特性を持つAIS信号の特性を利用し、アンテナパターンへの影響や設計調整の手間を軽減させることができる。
【0086】
〈その他〉
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で様々変形や応用が可能であり、その範囲の本発明の技術的範囲に属するものである。
【0087】
例えば、上記実施形態では、デジタル信号処理部においてDBF処理としてデジタル信号にそれぞれウエイトを与えて合成することで、デジタル上でアンテナビームを形成し、AIS信号を観測するものであったが、このウエイト値を観測条件に応じて再利用してもよい。また、観測後からデータ提供の時間を短縮するため、衛星1週回帰分の全観測パスで条件出しを行い、以後は該当する観測パス毎に導出されたウエイト値を再利用してもよい。ただし、この場合には、別システムで定期的または常時DBF条件(ウエイト値と同義)を校正させ反映させられることが前提となる。更に、観測後からデータ提供の時間を短縮するため、最も効果的なビーム条件で信号検出を行い、速報データの提供を実現し、その後マルチビーム観測による高検出結果は随時配信するようにしてもよい。
【0088】
また、本発明のAIS信号の受信方法は、以下の(1)〜(10)のとおりである。
(1)複数の船舶から送信される自動船舶識別システム(AIS)信号を、第1の人工衛星に搭載した複数のAISアンテナを介してそれぞれ独立して受信し、
デジタルビームフォーミング(DBF)によりデジタル上で所望のアンテナビームを形成し、
形成したアンテナビームに応じて、受信した各AIS信号を観測する、AIS信号の受信方法。
(2)上記(1)に記載のAIS信号の受信方法であって、
所望のアンテナビームとして、DBFによりデジタル上で所望のマルチビームを同時に形成する、AIS信号の受信方法。
(3)上記(1)又は(2)に記載のAIS信号の受信方法であって、
各AISアンテナを介して受信した各受信信号を地上に伝送し、
地上側システムで、DBFによりデジタル上で所望のアンテナビームを形成し、形成したアンテナビームに応じて、受信した各AIS信号を観測する、AIS信号の受信方法。
(4)上記(3)に記載のAIS信号の受信方法であって、
観測海域及び人工衛星の軌道条件に応じて、AIS信号を受信するAISアンテナの数を制御する、AIS信号の受信方法。
(5)上記(1)から(4)のうちいずれか一に記載のAIS信号の受信方法であって、
観測したAIS信号からデータを復調したときの検出性能とDBFによりデジタル上で所望のアンテナビームを形成する処理に要する負荷との関係から算出される信号処理負荷量当たりの検出性能指標を観測ケース毎に評価し、
観測海域及び人工衛星の軌道条件に合わせて必要なAISアンテナの数及び観測時間を効率的かつ最小限になるように、検出性能指標の評価結果をAIS信号の観測計画に反映する、AIS信号の受信方法。
(6)上記(3)から(5)のうちいずれか一に記載のAIS信号の受信方法であって、
船舶から送信されるAIS信号を、第2の人工衛星に搭載したAISアンテナを介して受信して地上に伝送し、
地上側システムで、DBFによりデジタル上で所望のアンテナビームを形成し、形成したアンテナビームに応じて、伝送された各AIS信号を観測する、AIS信号の受信方法。
(7)上記(3)から(6)のうちいずれか一に記載のAIS信号の受信方法であって、
船舶から送信されるAIS信号を、陸上に設置されたAISアンテナを介して受信して地上側システムに伝送し、
地上側システムで、DBFによりデジタル上で所望のアンテナビームを形成し、形成したアンテナビームに応じて、伝送された各AIS信号を観測する、AIS信号の受信方法。
(8)上記(1)から(7)のうちいずれか一に記載のAIS信号の受信方法であって、
複数のAISアンテナは偏波特性が異なるものを含むものであり、
偏波ダイバーシティを使って受信した各AIS信号を観測する、AIS信号の受信方法。
(9)上記(8)に記載のAIS信号の受信方法であって、複数点給電により円偏波特性となる構造となるアンテナを、複数点給電をするための各給電部からそれぞれ独立してAIS信号を取り出し、偏波特性が異なる複数のAISアンテナとして用いる、AIS信号の受信方法。
(10)上記(1)から(9)のうちいずれか一に記載のAIS信号の受信方法であって、
AISアンテナは当該人工衛星構体自体を使って構成される、AIS信号の受信方法。