(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部に粘性流体が充填されたハウジングと、一部が前記ハウジング内に収容されて前記ハウジングに対して回転自在に支持されたシャフトと、互いに対向し得るトルク発生面を備えて前記ハウジング内に同軸に収容される、一方のトルク発生部材及び他方のトルク発生部材から構成される一対のトルク発生部材とを有し、回転駆動力を前記一方のトルク発生部材へ伝えて前記一方のトルク発生部材を弾性部材の弾発力に抗して前記他方のトルク発生部材側へ移動させることで、前記一対のトルク発生部材における前記トルク発生面の対向面積を変化させ、前記トルク発生面間に存在する粘性流体の粘性抵抗または剪断抵抗により前記シャフトまたは前記ハウジングの回転速度に応じたトルクを生成し、前記シャフトまたは前記ハウジングの回転にその回転速度に応じた抵抗を付与する回転ダンパにおいて、
前記一方のトルク発生部材および前記他方のトルク発生部材の、その軸方向において互いに対向する一方の対向面に、弾性変形する材質からなる摩擦抵抗部材が滑らないように設けられ、他方の対向面に、前記摩擦抵抗部材が当接する凹凸が形成され、前記シャフトまたは前記ハウジングの回転速度が急激に高くなるときに生じる、前記弾性部材の弾発力に抗する前記一方のトルク発生部材の前記他方のトルク発生部材側への移動によって、前記摩擦抵抗部材と前記凹凸とが互いに押し付けられることを特徴とする回転ダンパ。
前記一方のトルク発生部材および前記他方のトルク発生部材は、軸方向の相対移動により対向するように互いの径方向の位置がずれて盤状部に突出し、軸方向に垂直な方向において互いに対向する面が前記トルク発生面を構成する突出板がそれぞれ形成され、
前記摩擦抵抗部材は、前記一対のトルク発生部材の一方における前記盤状部に前記突出板の突出高さより低く設けられ、前記一対のトルク発生部材の他方における前記突出板の突出端面に前記凹凸が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の回転ダンパ。
前記摩擦抵抗部材は、前記盤状部に同心状に複数列形成された複数の前記突出板間に複数設けられ、前記摩擦抵抗部材に挟まれる前記突出板は周方向の一部が切り欠かれて切り欠き部が形成され、隣り合う前記摩擦抵抗部材は前記切り欠き部を通る連結部によって互いに連結されることを特徴とする請求項2に記載の回転ダンパ。
前記摩擦抵抗部材が設けられる前記盤状部と、当該盤状部に設けられる前記摩擦抵抗部材とは、互いに当接する面に、周方向において係合して軸方向において圧入される嵌合部が形成されることを特徴とする請求項2に記載の回転ダンパ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の回転ダンパは、昇降台や、複写機・複合機の大容量給紙トレーの昇降動作を制動する装置などとして利用される場合、装置を強制的に動作させるときに急激な力が加わり、シャフトの回転速度が急激に高くなる。しかしながら、特許文献1に開示された上記従来の回転ダンパでは、このように急激にシャフトの回転速度が高くなった場合、一対のトルク発生部材によって生成される大きさのトルクでは装置動作を緩衝させるのに足りず、装置を強制的に制動させることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
内部に粘性流体が充填されたハウジングと、一部がハウジング内に収容されてハウジングに対して回転自在に支持されたシャフトと、互いに対向し得るトルク発生面を備えてハウジング内に同軸に収容される、一方のトルク発生部材及び他方のトルク発生部材から構成される一対のトルク発生部材とを有し、回転駆動力を一方のトルク発生部材へ伝えて一方のトルク発生部材を弾性部材の弾発力に抗して他方のトルク発生部材側へ移動させることで、一対のトルク発生部材におけるトルク発生面の対向面積を変化させ、トルク発生面間に存在する粘性流体の粘性抵抗または剪断抵抗によりシャフトまたはハウジングの回転速度に応じたトルクを生成し、シャフトまたはハウジングの回転にその回転速度に応じた抵抗を付与する回転ダンパにおいて、
一方のトルク発生部材および他方のトルク発生部材の、その軸方向において互いに対向する一方の対向面に、弾性変形する材質からなる摩擦抵抗部材が滑らないように設けられ、他方の対向面に、摩擦抵抗部材が当接する凹凸が形成され
、シャフトまたはハウジングの回転速度が急激に高くなるときに生じる、弾性部材の弾発力に抗する一方のトルク発生部材の他方のトルク発生部材側への移動によって、摩擦抵抗部材と凹凸とが互いに押し付けられることを特徴とする。
【0007】
本構成においては、回転駆動力が一方のトルク発生部材へ伝えられることで、一方のトルク発生部材は弾性部材の弾発力に抗して他方のトルク発生部材側へ移動する。この移動により、一対のトルク発生部材におけるトルク発生面の対向面積が増加し、一対のトルク発生部材において、シャフトまたはハウジングの回転速度に応じたトルクが生成される。また、シャフトまたはハウジングの回転速度が急激に高くなるときには、一方のトルク発生部材の他方のトルク発生部材側への更なる移動により、一方のトルク発生部材および他方のトルク発生部材の互いに対向する一方の対向面に設けられた摩擦抵抗部材と、他方の対向面に形成された凹凸とが互いに押し付けられる。この状態で、一方のトルク発生部材と他方のトルク発生部材とが相対的に回転すると、摩擦抵抗部材が弾性変形して凹凸にくいついて、摩擦抵抗部材と凹凸との間には大きな摩擦抵抗が生じ、一対のトルク発生部材には大きなトルクが生成される。したがって、シャフトまたはハウジングの回転速度が急激に高くなるときには、トルク発生面の対向面積が増加して生成されるトルクに、摩擦抵抗部材と凹凸とが互いに押し付けられて生成される大きなトルクが加わる。シャフトまたはハウジングの回転には、この大きなトルクによる大きな抵抗が付与される。このため、急激にシャフトまたはハウジングの回転速度が高くなった場合でも、装置動作を緩衝させ得るトルクを生成して、装置を強制的に制動させることが可能な回転ダンパを提供することが出来る。
【0008】
また、本発明は、
軸方向の相対移動により対向するように互いの径方向の位置がずれて盤状部に突出し、軸方向に垂直な方向において互いに対向する面がトルク発生面を構成する突出板が、一方のトルク発生部材および他方のトルク発生部材のそれぞれに形成され、
一対のトルク発生部材の一方における盤状部に突出板の突出高さより低く摩擦抵抗部材が設けられ、一対のトルク発生部材の他方における突出板の突出端面に凹凸が形成されている
ことを特徴とする。
【0009】
本構成によれば、シャフトまたはハウジングが回転して一方のトルク発生部材が他方のトルク発生部材側へ移動すると、一対のトルク発生部材における各突出板の側面に形成されるトルク発生面の対向面積が増加する。したがって、一対のトルク発生部材において、ロータの回転速度に応じたトルクが生成される。シャフトまたはハウジングの回転速度が急激に高くなるときには、一方のトルク発生部材の他方のトルク発生部材側への更なる移動により、一対のトルク発生部材の一方における盤状部に設けられた摩擦抵抗部材と、一対のトルク発生部材の他方における突出板の突出端面に形成された凹凸とが互いに押し付けられる。この状態で、一方のトルク発生部材と他方のトルク発生部材とが相対的に回転すると、摩擦抵抗部材が弾性変形して凹凸にくいついて、摩擦抵抗部材と凹凸との間には大きな摩擦抵抗が生じる。したがって、シャフトまたはハウジングの回転速度が急激に高くなるときには、トルク発生面の対向面積が増加して生成されるトルクに、摩擦抵抗部材と凹凸とが互いに押し付けられて生成される大きなトルクが加わり、シャフトまたはハウジングの回転には、この大きなトルクによる大きな抵抗が付与される。
【0010】
また、本発明は、盤状部に同心状に複数列形成された複数の突出板間に摩擦抵抗部材が複数設けられ、摩擦抵抗部材に挟まれる突出板には周方向の一部が切り欠かれて切り欠き部が形成され、隣り合う摩擦抵抗部材が切り欠き部を通る連結部によって互いに連結されることを特徴とする。
【0011】
本構成によれば、隣り合う摩擦抵抗部材が、突出板に形成される切り欠き部を通る連結部によって互いに連結されることで、摩擦抵抗部材は、それが設けられるトルク発生部材に対して滑ることなく、それが設けられるトルク発生部材と共に回転する。このため、摩擦抵抗部材と凹凸とが互いに押し付けられながら、一方のトルク発生部材と他方のトルク発生部材とが相対的に回転する際に、摩擦抵抗部材は、凹凸との間に大きなトルクを生成することが出来る。
【0012】
また、本発明は、摩擦抵抗部材が設けられる盤状部と、当該盤状部に設けられる摩擦抵抗部材との互いに当接する面に、周方向において係合して軸方向において圧入される嵌合部が形成されることを特徴とする。
【0013】
本構成によれば、盤状部と、当該盤状部に設けられる摩擦抵抗部材とが互いに当接する面に、周方向において係合して嵌合部が形成されることで、摩擦抵抗部材は、それが設けられるトルク発生部材に対して滑ることなく、それが設けられるトルク発生部材と共に回転する。また、嵌合部が軸方向において圧入されるように形成されることで、摩擦抵抗部材は、それが設けられるトルク発生部材と共に軸方向に移動する。このため、盤状部に設けられる摩擦抵抗部材と突出板の突出端面に形成される凹凸とが互いに押し付けられながら、一方のトルク発生部材と他方のトルク発生部材とが相対的に回転する際に、摩擦抵抗部材は、凹凸との間に大きなトルクを生成することが出来、凹凸から離れるときには、それが設けられるトルク発生部材と共に移動する。
【0014】
また、本発明は、上記のいずれかの回転ダンパにより装置の動作を緩衝する制動装置を構成した。
【0015】
本構成によれば、装置を強制的に動作させるときにおいても、装置動作を緩衝させることが出来る制動装置を提供することが出来る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、急激にシャフトまたはハウジングの回転速度が高くなった場合でも、装置動作を緩衝させ得るトルクを生成して、装置を強制的に制動させることが可能な回転ダンパおよびそれを用いた制動装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明による回転ダンパおよびそれを用いた制動装置を実施するための形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る回転ダンパ2を示している。回転ダンパ2は、ハウジング4を備え、このハウジング4は、円筒形の本体4aと、この本体4aの開放端を塞ぐキャップ4bとから構成される。本体4a及びキャップ4bは共に適当な合成樹脂材料から一体成形品として成形されるが、金属で構成しても良い。本体4aとキャップ4bとによって形成された室内には、粘性流体が充填されている。
【0020】
回転ダンパ2は、合成樹脂材料或いは金属材料から形成されたシャフト6を具備する。シャフト6の一端部は、円柱状のアジャスタ8の軸受部8aに回転自在に支持される。アジャスタ8は、ハウジング本体4aの閉塞端に軸方向に移動しないように定位置で回転可能に装着される。シャフト6は、ハウジング4のキャップ4bに形成された中央孔を貫通し、その中間部はハウジング4の室内に収納される。一方、キャップ4bの中央の外面側に形成された凹部にはボール軸受10が設けられ、これにシャフト6が回転自在に支持されている。つまり、シャフト6は、一部がハウジング4内に収容されて、ハウジング4に対して回転自在に支持されている。
【0021】
また、キャップ4bの中央の内面側に形成された凹部内では、シャフト6を囲むようにOリングシール12が設けられ、これによりシャフト6に沿うキャップ4bからの粘性流体の漏れが防止される。なお、本実施形態において、回転ダンパ2は、ハウジング4が固定側、シャフト6が回転側として昇降台等の装置に取り付けられる。ハウジング本体4aの閉塞端側には第1トルク発生部材14が配置され、該部材14の外周面には、
図7に示すように、軸方向にキー16が形成されている。一方、ハウジング本体4aの内径部には、
図7に示すように、軸方向にキー溝18が形成され、該キー溝18に前記キー16がスライド自在に嵌合している。
【0022】
これにより、第1トルク発生部材14は、ハウジング本体4aに対して軸方向にスライド自在となっており、また、後述する第2トルク発生部材44と連動して回転しないように固定される。第1トルク発生部材14の内径部は、アジャスタ8の外周部に軸方向にスライド自在に嵌合し、第1トルク発生部材14の内径部に形成された2つの係合体20,21が、
図7に示すように、アジャスタ8の外周部に形成された2つのカムのカム面22,24に当接している。アジャスタ8のカムはそれぞれ同一形状に構成され、各カムのカム面22,24は、これらに当接する係合体20,21を軸方向に移動するための傾斜面を有している。第1トルク発生部材14の係合体20,21の各先端Fは、初期状態において、圧縮コイルばね48のばね圧により対応するカム面22,24の各始点Sに当接している。
【0023】
アジャスタ8の2つのカムのカム面22,24は、それぞれアジャスタ8の軸方向の最も後方を始点Sとし、最も前方を終点Eとして、その間を、アジャスタ8の外周面に沿って結ぶ線上に、傾斜面を形成している。アジャスタ8を回転させることにより、係合体20,21の先端Fに対して、カム面22,24の位置を、その始点Sと、終点Eの間で変化させることができる。第1トルク発生部材14の盤状部14aには、ハウジング本体4aの内周方向に沿って同心状に複数列、4つの環状の突出板26が形成されている。各突出板26は、
図7に示すように、周方向の一部が切り欠かれて切り欠き部51が形成され、軸方向及び径方向に環状に展延して形成されている。
【0024】
これら突出板26はシャフト6の半径方向に等間隔で配置され、各突出板26の表面は後述するようにトルク発生面26aとして機能する。なお、突出板26は同心状に複数列設けた構成を説明したが単数列であっても良い。また、突出板26は環状でなくともよく、半環状その他、シャフト6の軸方向かつ該シャフト6の中心軸線を中心とする周方向に展延した形状であればどのような形状でも良い。
【0025】
本実施形態では、第1トルク発生部材14における複数の突出板26間の盤状部14aには、突出板26の突出高さより低い高さで、弾性変形する材質、例えば、ポリウレタンやゴム部材など、好ましくは硬度A100以下(JIS K 6253 デュロメータ タイプA)のゴム状材質からなる摩擦抵抗部材52aが複数設けられている。ここでは、摩擦抵抗部材52aの高さは、突出板26の突出高さの約50%になっている。しかし、突出板26の突出高さの20%〜80%の高さであってもよく、摩擦抵抗部材52aの高さはこの範囲の高さが好ましい。摩擦抵抗部材52aに挟まれる突出板26には上記の切り欠き部51が形成され、隣り合う摩擦抵抗部材52aは切り欠き部51を通る連結部52bによって互いに連結されている。
【0026】
シャフト6には、
図3に示すように、外周に複数のカム32が形成された管体40が被着され、この管体40の内面側には、シャフト6の軸方向に沿って少なくとも1つの凸条即ちキー(図示省略)が形成され、これらキーはシャフト6に形成されたキー溝(図示省略)と係合される。これにより、管体40は、シャフト6と共に一体的に回転する。管体40は、シャフト6と連動して回転するロータを構成する。管体40の外周部に形成された4個のカム32は、互いに等間隔を有している。尚、カム32は特に4個でなくともよい。各カム32は、略二等辺三角形の外径の周面部32aと該周面部32aの両側部に位置して、
図3に示すように、管体40の径方向に所定の幅を有する第1のカム面F1と第2のカム面F2が形成されている。
【0027】
カム32は、シャフト6の回転トルクによる、該カム32のカム面F1,F2に係合する後述する第2トルク発生部材44の係合体42に対する圧力を、カム面F1,F2の傾きによって、シャフト6の回転方向とシャフト6の軸方向に沿ったスラスト方向の二方向の力に変換するように構成される。各カム32のカム面F1,F2は、係合体42を回転方向に押圧するとともにスラスト方向にスライド自在に案内する、軸方向に対して角度を有する案内面を構成している。カム32は原動力を発生する原動カム、カム32に係合する係合体42は原動カムの原動力に従って動く従動カムとして作用する。互いに隣接する一対のカム32は、一方のカム32の第1のカム面F1が、他方のカム32の第2のカム面F2に
図3に示すように所定の間隔を存して対向している。前記第1のカム面F1と第2のカム面F2は、管体40の外周面に軸方向に角度を有してその略全長にわたって形成され、第1と第2のカム面F1,F2は、互いの対向間隔が軸方向に広がるように、傾斜している。
【0028】
第1のカム面F1の傾斜は、これに接する係合体42に対して一方向の回転力と、スラスト方向Gの力を付与する。また、第2のカム面F2の傾斜は、これに接する係合体42に対して他方向の回転力と、スラスト方向Gの力を付与する。係合体42は、第2トルク発生部材44の内径部にくさび状に形成されている。圧縮コイルばね48は、第2トルク発生部材44を第1トルク発生部材14から離れる側へ付勢する弾性部材を構成し、係合体42は、2つのカム32の第1と第2カム面F1,F2間に、圧縮コイルばね48の弾発力により、圧接配置される。第1のカム面F1と第2のカム面F2の間に当接配置される係合体42は、前記カム32の数に対応してこれらと同数設けられ、各係合体42の両側部には、第1のカム受け面H1と第2のカム受け面H2が形成されている。各カム32の各円周面部32aは、同一周面上に形成され、各係合体42の周面部42aも同一円周面上に形成されている。管体40に第2トルク発生部材44が嵌合した状態において、係合体42の両側部は、第1のカム面F1と第1のカム受面H1とが対向して面接触し、第2のカム面F2と第2のカム受面H2とが対向して面接触し、対応する一対のカム32間に
図3(A)のように配置される。該状態において、各カム32の周面部32aは、係合体42間に形成された第2トルク発生部材44の内周面44bに面接触し、各係合体42の末広がり形状の周面部42aは、各カム32間の管体40の外周面40aに面接触する。
【0029】
シャフト6が停止した状態において、係合体42は、
図3(A)に示すように、圧縮コイルばね48のばね力により第1と第2のカム面F1,F2間の幅狭方向の奥端に位置し、該状態において、係合体42の一側部の第1のカム受け面H1は、対応する第1のカム面F1に当接し、他側部の第2のカム受け面H2は対応する第2のカム面F2に当接する。管体40が一方向に回転すると、この回転は第1のカム面F1を介して、係合体42の第1のカム受け面H1に伝達され、係合体42は、
図3(B)に示すように、回転速度に応じて、カム面F1に沿ってスラスト方向Gに移動する。管体40が他方向に回転すると、この回転は、第2のカム面F2を介して係合体42の第2のカム受け面H2に伝達され、回転速度に応じて、カム面F2に沿ってスラスト方向Gに移動する。第2トルク発生部材44は、カム32を介してシャフト6と共に回転するように、管体40上に装着される。この第2トルク発生部材44は合成樹脂材料で成形される。管体40は、原動カム部であるカム32が回転することにより、従動カム部である係合体42を介して回転を第2トルク発生部材44へ伝達すると共に、第2トルク発生部材44を第1トルク発生部材14側へ押圧する。
【0030】
第2トルク発生部材44は、
図1に示す最左方位置と、
図2に示す最右方位置との間で、管体40の外周面に沿って移動自在とされる。本実施形態では、第2トルク発生部材44は、シャフト6の中心軸線方向に移動可能な可動部材として定義することができ、その軸方向に移動自在にかつ回転自在にハウジング4に保持される。第2トルク発生部材44の盤状部44aにはハウジング本体4aの閉塞端内面側に向かって軸方向かつシャフト6の中心軸線を中心とする周方向に沿って同心状に3つの環状の突出板46が形成されている。これら突出板46は、第1トルク発生部材14の突出板26と同様に同心状に等間隔に複数列配置され、各突出板46の表面は、軸方向及び円周方向に展延した形状を備え、該表面は後述するようにトルク発生面46aとして機能する。尚、突出板46は環状でなくともよく、半環状その他、シャフト6の軸方向かつ該シャフト6の中心軸線を中心とする周方向に展延した形状であればどのような形状でも良い。
【0031】
一方の第2トルク発生部材44と他方の第1トルク発生部材14とは、互いに対向し得るトルク発生面46a,26aを備えてハウジング6内に同軸に収容される一対のトルク発生部材を構成する。また、第1トルク発生部材14および第2トルク発生部材44の、その軸方向において互いに対向する一方の対向面、本実施形態では第1トルク発生部材14における盤状部14aには、摩擦抵抗部材52aが連結部52bによって滑らないように設けられている。また、他方の対向面、本実施形態では、第2トルク発生部材44における、摩擦抵抗部材52aが設けられた突出板26間に入り込む突出板46の突出端面には、摩擦抵抗部材52aが当接する凹凸(図示省略)が形成されている。
【0032】
第2トルク発生部材44が第1トルク発生部材14に向かってスラスト方向に移動させられた際には、第1トルク発生部材14の突出板26と、第2トルク発生部材44の突出板46とは、
図2に示すように互いに対向配置されて係合し合うことになる。すなわち、第2トルク発生部材44の突出板46の厚さは第1トルク発生部材14の突出板26の厚さとほぼ同じであり、第2トルク発生部材44の突出板46の配置ピッチは第1トルク発生部材14の突出板26の配置ピッチに対して半ピッチ分だけ外側にずらされ、このため、
図2に示すような係合状態が得られる。
【0033】
なお、突出板46は同心状に複数列設けた構成を説明したが、単数列であっても良い。第1トルク発生部材14と第2トルク発生部材44の対向部には、ばね収納用凹部がそれぞれ形成され、これらに、弾性部材即ち圧縮コイルばね48が保持されている。圧縮コイルばね48は、第2トルク発生部材44を第1トルク発生部材14から弾性的に引き離すように機能し、このため第2トルク発生部材44は
図1に示す最左方位置に通常は弾性的に留められる。
【0034】
尚、図中、符号5はシール部材、7はワッシャ、27はスナップリング、28はばね用座金、30はシール部材である。
【0035】
次に本実施形態による回転ダンパ2の動作について説明する。
【0036】
回転ダンパ2のシャフト6が非回転状態におかれているとき、
図1に示すように、圧縮コイルばね48の弾性力により第2トルク発生部材44は、第1トルク発生部材14から引き離されて、各係合体42の両側面の第1のカム受面H1,第2のカム受面H2が、対向間隔の最も狭い部分の第1のカム面F1と第2のカム面F2に密着する。このとき、第1トルク発生部材14の突出板26のトルク発生面26aと第2トルク発生部材44の突出板46のトルク発生面46aとの対向面積はゼロとされる。
【0037】
シャフト6がいずれかの回転方向に回転させられると、その回転速度がきわめて小さいときは、カム面F1,F2の傾斜面により係合体42に発生するスラスト方向の力は、ほとんどなく、従って第1トルク発生部材14の突出板26のトルク発生面26aと第2トルク発生部材44の突出板46のトルク発生面46aとの対向面積がゼロで回転する。シャフト6が一方向に回転させられて、その回転速度が徐々に速くなると、係合体42の、カム面F1から受けるスラスト方向の力が増大し、係合体42が、カム32の回転と連動して回転しながら圧縮コイルばね48の弾発力に抗して、第1のカム面F1に押圧されてスラスト方向Gに移動させられる。
【0038】
このとき、第2トルク発生部材44は回転しつつ第1トルク発生部材14側に移動させられて、第1トルク発生部材14の突出板26のトルク発生面26aと第2トルク発生部材44の突出板46のトルク発生面46aとが互いに対向することになる。その結果、双方のトルク発生面26a,46a間に粘性流体の粘性抵抗または粘性流体の剪断抵抗によりトルクが発生させられ、シャフト6には制動力が加わることになる。シャフト6の回転速度が大きくなるにつれ、係合体42は、次第に大きくなるスラスト方向の力を受け、第1トルク発生部材14に向かう第2トルク発生部材44の移動量も大きくなり、各突出板26,46が互いに噛み合う深さが深くなって、各突出板26,46の側面に形成されるトルク発生面26a,46aの対向面積も次第に増大し、双方のトルク発生面26a,46a間に発生するトルク、即ちシャフト6に加わる制動力も増大する。
【0039】
カム32のカム面F1,F2は傾斜面として形成されているので、第1トルク発生部材14の突出板26のトルク発生面26aと第2トルク発生部材44の突出板46のトルク発生面46aとの間の対向面積の変化は、シャフト6の回転速度に比例することになる。従って、双方のトルク発生面26a,46a間に発生するトルク、即ちシャフト6に加わる制動力もシャフト6の回転速度に比例することになる。
【0040】
また、シャフト6の回転速度が急激に高くなるときには、第2トルク発生部材44の第1トルク発生部材14側への更なる移動により、第2トルク発生部材44および第1トルク発生部材14の互いに対向する一方の対向面に設けられた摩擦抵抗部材52aと、他方の対向面に形成される凹凸とが互いに押し付けられる。本実施形態では、
図2に示すように、第1トルク発生部材14における突出板26間の盤状部14aに設けられた摩擦抵抗部材52aと、第2トルク発生部材44における、摩擦抵抗部材52aが設けられた突出板26間に入り込む突出板46の突出端面に形成される凹凸とが互いに押し付けられる。この状態で、第1トルク発生部材14と第2トルク発生部材44とが相対的に回転すると、摩擦抵抗部材52aが弾性変形して凹凸にくいついて、摩擦抵抗部材52aと凹凸との間には大きな摩擦抵抗が生じる。このため、一対のトルク発生部材14,44には大きなトルクが生成される。この際、隣り合う摩擦抵抗部材52aが、突出板26に形成される切り欠き部51を通る連結部52bによって互いに連結されることで、摩擦抵抗部材52aは、それが設けられる第1トルク発生部材14に対して滑ることなく、それが設けられる第1トルク発生部材14と共に回転する。
【0041】
したがって、シャフト6の回転速度が急激に高くなるときには、トルク発生面26a,46aの対向面積が増加して生成されるトルクに、摩擦抵抗部材52aと凹凸とが互いに押し付けられて生成される大きなトルクが加わる。シャフト6の回転には、この大きなトルクによる大きな抵抗が付与される。このため、急激にシャフト6の回転速度が高くなった場合でも、昇降台等の装置動作を緩衝させ得るトルクを生成して、装置を強制的に制動させることが可能な回転ダンパ2を提供することが出来る。また、この回転ダンパ2により装置の動作を緩衝する制動装置を構成することで、装置を強制的に動作させるときにおいても、装置動作を緩衝させることが出来る制動装置を提供することが出来る。
【0042】
なお、上記の実施形態では、第1トルク発生部材14における盤状部14aに摩擦抵抗部材52a、盤状部14aに対向する第2トルク発生部材44における突出板46の突出端面に凹凸が形成されている場合について、説明した。しかし、第2トルク発生部材44における突出板46間の盤状部46aに摩擦抵抗部材52aを設け、さらに、盤状部46aに対向する第1トルク発生部材14における突出板26の突出端面に凹凸を形成するように構成してもよい。この場合、摩擦抵抗部材52aが設けられる突出板46間の盤状部46aと、当該盤状部46aに設けられる摩擦抵抗部材52aとは、互いに当接する面に、周方向において係合して軸方向において圧入される嵌合部(図示省略)が形成される。
【0043】
本構成によれば、盤状部46aと、当該盤状部46aに設けられる摩擦抵抗部材52aとが互いに当接する面に、周方向において係合して嵌合部が形成されることで、摩擦抵抗部材52aは、それが設けられる第2トルク発生部材44に対して滑ることなく、それが設けられる第2トルク発生部材44と共に回転する。また、嵌合部が軸方向において互いに圧入されるように形成されることで、摩擦抵抗部材52aは、第2トルク発生部材44と共に軸方向に移動する。このため、盤状部46aに設けられる摩擦抵抗部材52aと突出板26の突出端面に形成された凹凸とが互いに押し付けられながら、第2トルク発生部材44と第1トルク発生部材14とが相対的に回転する際に、摩擦抵抗部材52aは、凹凸との間に大きなトルクを生成することが出来る。また、摩擦抵抗部材52aは、突出板26の突出端面に形成された凹凸から離れるときには、それが設けられる第2トルク発生部材44と共に移動する。このような構成によっても上記の実施形態による回転ダンパ2と同様な作用効果が奏される。
【0044】
また、第2トルク発生部材44における突出板46間の盤状部46aに摩擦抵抗部材52aを設けるこの構成では、盤状部46aと摩擦抵抗部材52aとの間に嵌合部が形成されて滑り止めが構成されるので、上記の実施形態のように、摩擦抵抗部材52aを連結部52bによって連結して滑り止めを構成する必要がない。このため、任意の突出板46間の1箇所の盤状部46aに摩擦抵抗部材52aを設ける構成や、また、複数の突出板46間の複数箇所の盤状部46aに、連結部52bによって連結することなく複数の摩擦抵抗部材52aを設ける構成においても、上記の実施形態による回転ダンパ2と同様な作用効果が奏される。
【0045】
さらに、上記の実施形態において、第1トルク発生部材14における盤状部26aと、当該盤状部26aに設けられる摩擦抵抗部材52aとが互いに当接する面に、周方向において係合して嵌合部が形成されることで、摩擦抵抗部材52aは、滑ることなく、それが設けられる第1トルク発生部材14と共に回転する。このため、この構成によれば、突出板26間の盤状部26aに、連結部52bによって連結することなく複数の摩擦抵抗部材52aを設ける構成や、1つの摩擦抵抗部材52aを設ける構成においても、上記の実施形態による回転ダンパ2と同様な作用効果が奏される。
【0046】
また、第2トルク発生部材44の突出板46に切り欠き部51と同様な切り欠き部を設け、第2トルク発生部材44における突出板46間の盤状部46aに、連結部52bによって連結される摩擦抵抗部材52aを設けるように構成してもよい。この場合、摩擦抵抗部材52aが突出板46間に圧入されるように構成することで、連結部52bによって連結される摩擦抵抗部材52aは、第2トルク発生部材44と共に軸方向に移動する。このような構成によっても上記の実施形態による回転ダンパ2と同様な作用効果が奏される。
【0047】
次に、第1トルク発生部材44を初期位置からシャフト6の軸方向に移動し、初期状態の第1トルク発生部材14と第2トルク発生部材44との対向間隔を調整する作業について説明する。
【0048】
アジャスタ8をその穴8aを使用して、手操作若しくは回転工具を用いて、所定の方向に回転させると、カム面22,24が、係合体20,21の先端をスラスト方向に押圧し、この押圧力によって、第1トルク発生部材14は、圧縮コイルばね48の弾発力に抗して、軸方向に移動する。この移動によって、初期状態における、第1トルク発生部材14と第2トルク発生部材44との位置関係を調整することができる。
図5は、第1トルク発生部材14を、最も、ハウジング本体4aの閉塞端側に移動した状態を示している。
【0049】
この状態において、第1トルク発生部材14と第2トルク発生部材44間にトルクは発生せず、この位置状態において、初期状態即ちシャフト6の回転力が小さいとき、回転ダンパ2はシャフト6の回転に制動力を作用させない。
図6は第1トルク発生部材14を最も第2トルク発生部材44側に移動した状態を示し、この状態において、第1トルク発生部材14の突出板26のトルク発生面26aと第2トルク発生部材44の突出板46のトルク発生面46aとの間の対向面積は増え、初期状態即ちシャフト6の回転力が小さいとき、回転ダンパ2は所定の制動力を発生する。回転ダンパ2は、アジャスタ8を回転させることで、第1トルク発生部材14の位置を、
図5に示す最も右方向の位置から、
図6に示す最も左方向の位置の間で任意の位置に調整することができる。
【0050】
尚、本発明の実施に際し、係合体42は、一対のカム32,32間の第1カム面F1と第2カム面F2に密着する図示する形状に特に限定されるものでなく、
図4に示すように、カム面F1,F2に点接触する形状のものや線接触する形状のもの等任意の形状のものを用いることができる。また、ハウジング4側がシャフト6に対して回転する構成としても良い。また、係合体42を管体40側に設け、カム32を第2トルク発生部材44側に設け、両者の管体40と第2トルク発生部材44に対する取り付け関係を逆にしても良い。また、第2トルク発生部材44、カム32、係合体42をハウジング4側に設け、第1トルク発生部材14をシャフト6側に設け、シャフト6に対してハウジング4を回転させる構成としても良い。また、アジャスタ8はなくてもよく、この場合、第1トルク発生部材14はハウジング本体4aと一体となる。なお、上記説明において、スラスト方向と軸方向は同一の方向を示すものとして用いている。