(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る気泡生成装置について、図面を参照しながら説明する。図中、同一又は相当する部分に同一符号を付す。
【0018】
〔第1の実施形態〕
図1に示すように、第1の実施形態に係る気泡生成装置100は、下流端10aが液槽60内の液体L中に配置されるガス流路10と、ガス流路10の上流端10bに接続された電磁弁20と、電磁弁20に接続されたガスタンク30及び真空ポンプ40と、電磁弁20を制御する弁制御装置50とを備える。
【0019】
ガス流路10は、内部にガスを収容する空間を画定する蓄気室12と、蓄気室12内のガスを液槽60に案内する下流側ガス管11と、蓄気室12を電磁弁20に接続する上流側ガス管13とを有する。
【0020】
下流側ガス管11は、蓄気室12に接続される本体部111と、本体部111の下流側端部に接続される気泡生成ノズル112とを有する。気泡生成装置100は、後述するように、気泡生成ノズル112から液体Lを吸い込み、吸い込んだ液体Lをガス流路10内のガスと共に気泡生成ノズル112から噴出させる動作を繰り返す。
【0021】
図2に示すように、気泡生成ノズル112は、本体部111側から、ガス流路10(
図1参照)の下流端10aに位置する端部開口112eに向かって順に連続して形成される縮径テーパ部112a、喉部112b、拡径テーパ部112c、及び直管部112dを有する。これらのうち、縮径テーパ部112a、喉部112b、及び拡径テーパ部112cによって、液体Lの流れを絞る絞り部が構成されている。
【0022】
縮径テーパ部112aでは、喉部112bに向かってガス流路10の断面積が次第に減少する。喉部112bでは、ガス流路10の断面積は略一定である。喉部112bにおけるガス流路10の断面積は、気泡生成ノズル112において最も小さい。拡径テーパ部112cでは、直管部112dに向かってガス流路10の断面積が次第に増大する。直管部112dにおけるガス流路10の断面積は、本体部111におけるガス流路10の断面積よりも小さい。
【0023】
図1に戻って、電磁弁20は、第1の入力ポート20a、第2の入力ポート20b、及び出力ポート20cを有する三方弁である。第1の入力ポート20aに、ガスタンク30が接続されている。第2の入力ポート20bに、真空ポンプ40の吸気口が接続されている。出力ポート20cに、ガス流路10の上流端10bが接続されている。
【0024】
ガスタンク30は、気密な容器で構成される。ガスタンク30には、気泡Bを形成するガスがコンプレッサにより予め圧入されている。ガスタンク30は、第1の入力ポート20aが出力ポート20cと連通した際に、ガス流路10の上流端10bからガス流路10内にガスを送り込む。
【0025】
真空ポンプ40は、第2の入力ポート20bが出力ポート20cと連通した際に、ガス流路10からガスを排出することで、ガス流路10内を減圧する。
【0026】
弁制御装置50は、第1の入力ポート20aが出力ポート20cに連通された状態と、第2の入力ポート20bが出力ポート20cに連通された状態とが交互に切り替えられるように、電磁弁20を制御する。これにより、弁制御装置50は、電磁弁20、ガスタンク30、及び真空ポンプ40と共に、ガス流路10内のガス圧を制御するガス圧制御装置としての役割を果たす。
【0027】
図3は、蓄気室12内の気圧変動を模式的に示したグラフである。以下、
図3を参照し、弁制御装置50によって実現される気泡生成装置100の動作を説明する。
【0028】
時刻T0で、弁制御装置50は、第2の入力ポート20bを出力ポート20cと連通させる。これにより、ガス流路10内のガスが、真空ポンプ40によって排気される。このため、蓄気室12内の気圧が次第に低下してゆく。以降、弁制御装置50は、時刻T0〜T2の間、第2の入力ポート20bを出力ポート20cと連通させた状態を保つ。
【0029】
時刻T1で、蓄気室12内の気圧が大気圧P0未満の臨界値(以下、吸引開始圧力という。)まで低下し、気泡生成ノズル112内への液体Lの吸い込みが始まる。以降、時刻T1〜T3の間、気泡生成ノズル112内への液体Lの吸い込みが継続する。
【0030】
図2を参照し、液体Lが気泡生成ノズル112内に吸い込まれる際の作用を説明する。液体Lは、加圧されつつ拡径テーパ部112cを通り、喉部112b及び縮径テーパ部112aを通る過程で急激に減圧されることにより、本体部111側に噴出する。これにより、気泡生成ノズル112内又は本体部111内で、液体Lとガスとが混ざり合う。この結果、気泡生成ノズル112内又は本体部111内で、液体L中に気泡Bが生成される。また、気泡Bが生成された後も液体Lの吸い込みが継続されるため、いったん生成された気泡Bが、気泡生成ノズル112内又は本体部111内で攪拌力を受ける。この攪拌力で気泡Bが分裂するため、気泡Bの微細化も図られる。
【0031】
時刻T2で、蓄気室12の内圧が最小値Pminに達する。時刻T2で、弁制御装置50は、第1の入力ポート20aを出力ポート20cと連通させる。これにより、ガスタンク30からガス流路10内にガスが圧入される。このため、蓄気室12内の気圧が次第に上昇する。以降、弁制御装置50は、時刻T2〜T5の間、第1の入力ポート20aを出力ポート20cと連通させた状態を保つ。
【0032】
時刻T3で、蓄気室12内の気圧が大気圧P0に戻り、気泡生成ノズル112への液体Lの吸い込みが止まる。このとき、気泡Bを含む液体Lの上面は、
図2に示す縮径テーパ部112aよりも蓄気室12側の位置まで達する。
【0033】
時刻T4で、蓄気室12内の気圧が大気圧P0を超える臨界値(以下、噴出開始圧力という。)に達し、気泡生成ノズル112からの、液体L及び気泡Bの噴出が始まる。以降、時刻T4〜T6の間、気泡生成ノズル112からの液体L及び気泡Bの噴出が継続する。
【0034】
図2を参照し、液体L及び気泡Bが気泡生成ノズル112から噴出する際の作用を説明する。上述した時刻T1〜T3の間に、気泡生成ノズル112内で混ざり合ったガス及び液体L、即ち気泡生成ノズル112内で生成された気泡Bを含む液体Lは、本体部111側から加圧されつつ縮径テーパ部112aを通り、喉部112b及び拡径テーパ部112cを通る過程で急激に減圧されることにより、端部開口112e側に噴出する。この加圧と減圧及び噴出の過程で、気泡Bが攪拌力を受ける。攪拌力で気泡Bが分裂するため、気泡Bのさらなる微細化が図られる。こうして、微細化された気泡Bが液槽60内に噴出される。
【0035】
時刻T5で、蓄気室12の内圧が最大値Pmaxに達する。時刻T5で、弁制御装置50は、第2の入力ポート20bを出力ポート20cと連通させる。これにより、ガス流路10内のガスが、真空ポンプ40によって排気される。このため、蓄気室12内の気圧が次第に低下してゆく。以降、弁制御装置50は、時刻T5〜T8の間、第2の入力ポート20bを出力ポート20cと連通させた状態を保つ。
【0036】
時刻T6で、蓄気室12内の気圧が大気圧P0に戻り、気泡生成ノズル112からの気泡B及び液体Lの噴出が止まる。
【0037】
時刻T7で、蓄気室12内の気圧が吸引開始圧力まで低下し、気泡生成ノズル112内への液体Lの吸い込みが始まる。以降、時刻T7〜T9の間、気泡生成ノズル112内への液体Lの吸い込みが継続される。
【0038】
このとき、上述した時刻T4〜T6の間に液槽60中に噴出した気泡Bが再び吸い込まれることもあり得る。この場合、気泡B及び液体Lは、液槽60から吸い込まれる際、
図2に示す端部開口112eの位置で剪断力を受ける。剪断力で気泡Bが分裂するため、気泡Bのさらなる微細化が図られる。また、気泡Bは気泡生成ノズル112内で再び攪拌力を受けることによっても微細化される。
【0039】
そして、時刻T8で、弁制御装置50がガスタンク30からのガスの圧入を開始させ、時刻T9で、気泡生成ノズル112への吸引が止まり、時刻T10で、気泡生成ノズル112からの噴出が始まる。
【0040】
このようにして、気泡生成ノズル112からの噴出と、気泡生成ノズル112内への吸引とが交互に繰り返される。この繰り返しの過程で、微細化された気泡Bが、さらに微細化されてゆく。この結果、例えば、ファインバブルと呼ばれる直径100μm以下の気泡Bを形成することができる。
【0041】
以上説明した気泡生成装置100によれば、ガス流路10内で気泡Bを生成することができ、生成された気泡Bに対し、液体Lの吸い込み及び噴出のそれぞれの過程で、攪拌力等を作用させることができるため、気泡Bの微細化を効率的に行うことができる。
【0042】
また、液槽60中には、気泡生成ノズル112を含むガス流路10の下流側端部を挿入するだけでよい。従来必要であった円盤等の剪断力を付与するための部材を液槽60中に配置する必要が無い。液体ポンプも不要である。このため、大がかりな構成を必要とせずに済む。
【0043】
〔第2の実施形態〕
次に、
図4を参照し、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0044】
図4に示すように、第2の実施形態に係る気泡生成装置200は、下流端70aが液体L中に配置されるガス流路70と、ガス流路70の上流端70bに接続された電磁弁20と、電磁弁20に接続されたガスタンク30及び真空ポンプ40と、電磁弁20を制御する弁制御装置50とを備える。
【0045】
さらに、本気泡生成装置200は、ガス流路70の下流端70aが配置される液体Lを貯留する液体貯留部80aを下方に有する蓄気室80と、液体貯留部80aを、蓄気室80の外部において液体Lを貯留する液槽60に連通させる液体連通路90とを備える。
【0046】
ガス流路70は、下流端70aを構成する気泡生成ノズル(以下、第1の気泡生成ノズルという。)112を備える。第1の気泡生成ノズル112は、液体貯留部80aに挿入されている。また、ガス流路70は、蓄気室80と連通している。具体的には、ガス流路70の、液体貯留部80aとの接続部分から上流端70bまでの間の中間部分が、蓄気室80に接続されている。
【0047】
液体連通路90の液槽60側の端部も、気泡生成ノズル(以下、第2の気泡生成ノズルという。)112’で構成されている。第2の気泡生成ノズル112’は、第1の気泡生成ノズル112と同じく、
図2に示す構成を有する。
【0048】
本実施形態においても、弁制御装置50は、第1の入力ポート20aが出力ポート20cに連通された状態と、第2の入力ポート20bが出力ポート20cに連通された状態とが交互に切り替えられるように電磁弁20を制御する。これにより、弁制御装置50は、電磁弁20、ガスタンク30、及び真空ポンプ40と共に、ガス圧制御装置としての役割を果たす。
【0049】
第2の入力ポート20bが出力ポート20cに連通された状態では、真空ポンプ40によって、ガス流路70及び蓄気室80が減圧される。この結果、液槽60内の液体Lが、液体連通路90を通じて液体貯留部80aに引き上げられ、液体貯留部80aの液面レベルが上昇すると共に、液体貯留部80aに移行した液体Lが、第1の気泡生成ノズル112内に吸い込まれる。
【0050】
これにより、液体Lが
図2に示す喉部112bから本体部111側に噴出し、第1の気泡生成ノズル112内で、液体Lとガスとが混ざり合う。この結果、気泡生成ノズル112内で、液体L中に気泡Bが生成される。また、いったん生成された気泡Bが第1の気泡生成ノズル112内で攪拌力を受ける。この攪拌力で気泡Bが分断されるため、気泡Bの微細化も図られる。
【0051】
次に、第1の入力ポート20aが出力ポート20cに連通された状態では、ガスタンク30からガス流路70にガスが送り込まれる。この結果、第1の気泡生成ノズル112から気泡B及び液体Lが噴出する。また、ガス流路70と連通した蓄気室80が加圧されるため、液体貯留部80aに噴出された液体L及び気泡Bは、液体連通路90を通じて、液槽60に押し込まれる。
【0052】
但し、第1の気泡生成ノズル112から噴出された気泡Bのうち、サイズが大きいものは、浮力が勝って上昇し、蓄気室80に消散する。このため、サイズの小さな気泡Bだけを液槽60に移動させることができる。さらに、気泡Bは液槽60に移動する過程で、第2の気泡生成ノズル112’内で攪拌力を受ける。このため、気泡Bのさらなる微細化が図られる。
【0053】
次に、再び第2の入力ポート20bが出力ポート20cに連通された状態では、液槽60内の液体L及び気泡Bが、液体連通路90を通じて液体貯留部80aに引き戻され、液体貯留部80aの液面レベルが上昇すると共に、液体貯留部80aに移行した液体L及び気泡Bが、第1の気泡生成ノズル112内に吸い込まれる。この過程で、気泡Bは、第2の気泡生成ノズル112’及び第1の気泡生成ノズル112で、再び微細化されうる。
【0054】
こうして、弁制御装置50によって、第1の入力ポート20aが出力ポート20cに連通された状態と、第2の入力ポート20bが出力ポート20cに連通された状態とが交互に切り替えられることにより、微細化された気泡Bが、さらに微細化されてゆく。この結果、ファインバブルと呼ばれる直径100μm以下の気泡Bを形成することができる。
【0055】
本実施形態に係る気泡生成装置200によれば、ガス流路70内で気泡Bを生成することができ、生成された気泡Bに対し、ガス流路70の加圧及び減圧のそれぞれの過程で、攪拌力等を作用させることができるため、気泡Bの微細化を効率的に行うことができる。
【0056】
また、液体貯留部80aの液体L中には、第1の気泡生成ノズル112を挿入するだけでよく、液槽60の液体L中には、液体連通路90の下流側端部を挿入するだけでよい。従来必要であった円盤等の剪断力を付与するための部材は不要である。液体ポンプも不要である。このため、大がかりな構成を必要とせずに済む。
【0057】
以下、
図5を参照し、ガス流路10,70の下流端10a,70a、及び液体連通路90の液槽60側端部の構成の変形例について説明する。
【0058】
図5(A)に示すように、気泡生成ノズル300は、喉部301と直管部303との間にのみ拡径テーパ部302を備え、喉部301の上流側には縮径テーパ部を備えない構成としてもよい。この場合、喉部301と拡径テーパ部302とで絞り部が構成される。気泡B及び液体Lを気泡生成ノズル300内に吸引する際の吸引抵抗を、拡径テーパ部302によって緩和でき、多くの気泡B及び液体Lを気泡生成ノズル300内に吸引できる。このため、気泡Bを効率よく微細化することができる。
【0059】
図5(B)に示すように、気泡生成ノズル400は、テーパ部を備えずに、オリフィス401を備えてもよい。この場合、オリフィス401によって絞り部が構成される。気泡B及び液体Lは、オリフィス401を通過する際に、圧力変動を受け、攪拌される。これにより、例えばオリフィス401において気泡Bが分裂する等して、気泡Bの微細化が図られる。
【0060】
図5(C)に示すように、気泡生成ノズル500は、複数の貫通孔501aが形成されたシャワープレート501を下流端に備えてもよい。このシャワープレート501も、個々の貫通孔501aにおいて液体L及び気泡Bの流れを絞るため、絞り部を構成する。なお、シャワープレート501の配置位置は、ガス流路の途中でもよい。シャワープレート501でガスや気泡Bが細断され、微細化が図られる。
【0061】
図5(D)に示すように、気泡生成ノズルを用いずに、直管状の本体部111が、ガス流路10の下流端10aを構成してもよい。即ち、絞り部を有する気泡生成ノズルは必須でなく、直管状の本体部111を直接的に液体L中に配置してもよい。直管状の本体部111を用いても、液体Lがガス流路10内でガスと混ざり合うように、液体Lを吸い込ませ得ることは当業者に理解できるであろう。例えば、ガス流路10の減圧を急激に行えば、直管状の本体部111の下流端10aから液体Lが噴入し、液体Lとガスが混ざり合う結果、ガス流路10内で気泡Bが生成され得ると共に、生成された気泡Bの微細化も図られ得る。このようにして、ガス流路10内で液体Lとガスとを混合させるにあたり、用いる液体Lの粘度等との関係で、直管状の本体部111の内径やガス流路10の減圧と加圧の切り替えの周波数等をどのように設定するかは、当業者の設計事項である。
【0062】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0063】
〔実施例1〕
図1に示す気泡生成装置100を用いて気泡の生成を行った。但し、気泡生成ノズル112は用いず、
図5(D)に示す直管状の本体部111を直接的に液槽60に浸漬させた。本体部111には、内径0.7mm、長さ40mm、断面が円形の細管を用いた。液体Lには、粘度1cPの蒸留水を用い、気泡Bを形成するガスには空気を用いた。ガスタンク30からの空気の供給量は0.5〜2.0L/minとした。真空ポンプ40には到達真空度−20〜−100kPaのものを用いた。
【0064】
図6(A)に、蓄気室12の気圧変動のグラフを示す。弁制御装置50によって、蓄気室12の気圧変動の周波数が5Hzとなるよう電磁弁20を制御した。蓄気室12の気圧の平均値は約1kPaであり、振幅は、10〜15kPaであった。
【0065】
図6(B)に、得られた気泡Bの直径別頻度分布であるヒストグラムを示す。このヒストグラムは、得られた気泡Bを含む液体Lのサンプルを光学顕微鏡で観察し、サンプル中の気泡を直径の階級別に分類することで得た。また、このヒストグラムから、気泡Bのゾータ(Sauter)平均径D
32を求めた。ゾータ平均径D
32は、階級iの中央値をd
i、気泡数(度数)をn
iとしたとき、値(n
i×d
i3)/(n
i×d
i2)の、階級iに関する和で与えられる。ゾータ平均径D
32は68.0μmであった。即ち、直径100μm以下のファインバブルを生成できたことを確認した。
【0066】
〔実施例2〕
液体Lとして、蒸留水の添加により粘度を21.6cPに調整した液体デキストリンを用いた。ガスタンク30からの空気の供給量は1.5〜2.0L/minとした。これ以外は、実施例1と同じ条件で気泡を生成した。
【0067】
図7(A)に、蓄気室12の気圧変動のグラフを示す。実施例1と同じく、弁制御装置50によって、蓄気室12の気圧変動の周波数が5Hzとなるよう電磁弁20を制御した。蓄気室12の気圧の平均値は約3kPaであり、振幅は、10〜15kPaであった。
【0068】
図7(B)に、得られた気泡Bのヒストグラムを示す。得られた気泡Bのゾータ平均径D
32は52.1μmであった。以上のように、粘度が蒸留水の約20倍程度の粘性液体に対しても、ファインバブルを生成できたことを確認した。
【0069】
〔実施例3〕
図4に示す気泡生成装置200を用いて気泡の生成を行った。但し、気泡生成ノズル112は用いず、
図5(D)の例と同様、ガス流路70を構成する直管状部材を直接的に液体貯留部80aに挿入した。その直管状部材には内径0.5mmの細管を用いた。液体貯留部80aは筒状をなし、その内径は10mmである。液体連通路90には、内径0.7mm、長さ40mmの細管を用いた。液体Lには、粘度1cPの蒸留水を用い、気泡Bを形成するガスには空気を用いた。ガスタンク30からの空気の供給量は1.0〜2.0L/minとした。真空ポンプ40には到達真空度−20〜−100kPaのものを用いた。
【0070】
図8(A)に、蓄気室12の気圧変動のグラフを示す。弁制御装置50によって、蓄気室80の気圧変動の周波数が0.2Hzとなるように電磁弁20を制御した。蓄気室80内の気圧の平均値は約8kPaであり、振幅は、約30kPaであった。
【0071】
図8(B)に、得られた気泡Bのヒストグラムを示す。得られた気泡Bのゾータ平均径D
32は51.1μmであった。液体貯留部80aと液体連通路90とを備えた構成により、実施例1に比べて小さなファインバブルを生成できたことを確認した。
【0072】
次に、液体L中に生成される気泡Bのサイズの、蓄気室12の気圧変動の周波数に対する依存性を調べるために、蓄気室12の気圧変動の周波数を種々変更した実施例4〜7及び比較例について説明する。
【0073】
図9(A)に、実施例4〜7で共通して用いた気泡生成ノズル600の斜視図を示す。気泡生成ノズル600は、直管状の本体部111の複数箇所に形成された絞り部601〜603を有する。絞り部601〜603の各々の流路断面積は、本体部111の流路断面積よりも小さい。絞り部601は、ガス流路10の下流端を構成しており、絞り部602は、絞り部601よりも上流に配置されており、絞り部603は、絞り部602よりも上流に配置されている。
【0074】
本体部111の流路断面は円形であり、絞り部601〜603の各々の流路断面は、一方向を長手方向とする長方形である。このように、本体部111と絞り部601〜603とで流路断面の形状を異ならせている。これにより、絞り部601〜603の流路断面を本体部111の流路断面と相似形とする場合に比べて、気泡Bを破砕する効果を高めることができ、かつ圧力損失を抑制できる。圧力損失を抑制することで、気泡生成ノズル600内での液体Lの上下運動を円滑に行わせることができる。
【0075】
以下、絞り部601〜603の各々の流路断面の長手方向をY軸方向、同流路断面の短手方向をX軸方向、気泡生成ノズル600の流路に沿う長さ方向をZ軸方向とするXYZ直交座標系を定義して説明を続ける。
【0076】
図9(B)は、気泡生成ノズル600のXZ平面に平行な断面図である。絞り部602のZ軸方向中間位置の下流端からの距離D1は、10mmである。絞り部603のZ軸方向中間位置の下流端からの距離D2は、30mmである。本体部111の内径D3は1.55mmであり、本体部111のZ軸方向の全長は120mmである。絞り部601〜603の流路断面のX軸方向の幅D4は、400μm以下である。なお、絞り部601〜603の流路断面のY軸方向の幅は、本体部111の内径D3と略等しい。
【0077】
〔実施例4〕
図1に示す気泡生成装置100において、気泡生成ノズル112に代えて、上述した気泡生成ノズル600を用い、気泡Bを生成した。液体Lには、粘度1cPの蒸留水を用い、気泡Bを形成するガスには空気を用いた。ガスタンク30からの空気の供給量は0.5〜2.0L/minとした。真空ポンプ40には到達真空度−20〜−100kPaのものを用いた。
【0078】
図10(A)に、蓄気室12の気圧変動のグラフを示す。弁制御装置50によって、蓄気室12の気圧変動の周波数が4.5Hzとなるよう電磁弁20を制御した。蓄気室12の気圧の平均値は約10kPaであり、振幅は、15〜20kPaであった。
【0079】
図10(B)に、得られた気泡Bのヒストグラムを示す。気泡Bのゾータ平均径D
32は357.1μmであった。
【0080】
〔実施例5〕
蓄気室12の気圧変動の周波数を実施例4の条件とは異ならせ、周波数以外は実施例4と同じ条件で気泡Bを生成した。
【0081】
図11(A)に、蓄気室12の気圧変動のグラフを示す。弁制御装置50によって、蓄気室12の気圧変動の周波数が5.3Hzとなるよう電磁弁20を制御した。蓄気室12の気圧の平均値は約7.5kPaであり、振幅は、10〜15kPaであった。
【0082】
図11(B)に、得られた気泡Bのヒストグラムを示す。気泡Bのゾータ平均径D
32は135.4μmであった。
【0083】
〔実施例6〕
蓄気室12の気圧変動の周波数を実施例4及び5の条件とは異ならせ、周波数以外は実施例4及び5と同じ条件で気泡Bを生成した。
【0084】
図12(A)に、蓄気室12の気圧変動のグラフを示す。弁制御装置50によって、蓄気室12の気圧変動の周波数が8.3Hzとなるよう電磁弁20を制御した。蓄気室12の気圧の平均値は約10.5kPaであり、振幅は、15〜20kPaであった。
【0085】
図12(B)に、得られた気泡Bのヒストグラムを示す。気泡Bのゾータ平均径D
32は78.6μmであった。
【0086】
〔実施例7〕
蓄気室12の気圧変動の周波数を実施例4〜6の条件とは異ならせ、周波数以外は実施例4〜6と同じ条件で気泡Bを生成した。
【0087】
図13(A)に、蓄気室12の気圧変動のグラフを示す。弁制御装置50によって、蓄気室12の気圧変動の周波数が14.3Hzとなるよう電磁弁20を制御した。蓄気室12の気圧の平均値は約2.3kPaであり、振幅は、5〜10kPaであった。
【0088】
図13(B)に、得られた気泡Bのヒストグラムを示す。気泡Bのゾータ平均径D
32は45.2μmであった。
【0089】
〔比較例〕
実施例4〜7で用いた気泡生成ノズル600を用い、蓄気室12の気圧変動の周波数をゼロとして、気泡Bを生成した。具体的には、蓄気室12の気圧を、気泡生成ノズル600への液体Lの吸い込みは生じず、気泡生成ノズル600の下流端から徐々に気泡Bが離脱するような一定値に保った。この場合、液体L中に生成された気泡Bのゾータ平均径D
32は3360μmであった。
【0090】
図14に、以上説明した実施例4〜7及び比較例で得られた気泡Bのゾータ平均径D
32をプロットしたグラフを示す。横軸は、蓄気室12の気圧変動の周波数を示す。共通の気泡生成ノズル600を用いる場合、蓄気室12の気圧変動の周波数が高い程、ゾータ平均径D
32の小さな気泡Bが得られることが分かる。蓄気室12の気圧変動の周波数を調整することにより、ゾータ平均径D
3245.2μm以上、3360μm未満の気泡Bを生成することができた。
【0091】
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明した。本発明はこれに限られず、例えば、以下に述べる変形が可能である。
【0092】
上記実施形態及び実施例では、1つのガス流路10又は70を備えた気泡生成装置を示したが、気泡生成装置は、複数のガス流路を備えてもよい。例えば、
図1で、下流側ガス管11を蓄気室12に複数本接続してもよい。また、
図4で、液体貯留部80aに複数本のガス流路70を挿入してもよい。複数のガス流路を備えることにより、気泡の生成効率を高めることができる。
【0093】
上記実施形態及び実施例では、1つの孤立した液槽60内で気泡Bの生成を行ったが、液体Lを案内する液体循環路中で、気泡を生成することもできる。例えば、その液体循環路に、
図1の下流側ガス管11又は
図4の液体連通路90を挿入することで、その液体循環路中に気泡を生成することもできる。
図1及び
図4に示す液槽60は、液体の循環経路の一部を構成するものであってもよい。
【0094】
上記実施形態及び実施例では、断面が円形のガス流路を用いたが、ガス流路の断面形状は限定されない。気泡生成ノズル112や本体部111の断面形状は、例えば、矩形、多角形、又は楕円形であってもよい。ガスとしては、空気の他、例えば、酸素、オゾン、二酸化炭素、窒素等を用いることができる。
【0095】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態及び実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。即ち、本発明の範囲は、実施形態及び実施例ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。