【文献】
陸川政弘,炭化水素系高分子電解質の合成と機能,有機合成化学協会誌,2008年,Vol.66, No.5,p.488(64)-492(68)
【文献】
小久見善八,固体高分子形燃料電池の現状と課題,HORIBA 技術情報誌 Readout,2005年,No.30,p.26-31
【文献】
陸川政弘,炭化水素系高分子電解質膜の可能性と問題点,膜(MEMBRANE),2003年,Vol.28, No.1,p.14-20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配位重合工程とこれに続くアニオン重合工程からなる重合工程により得られるクロス共重合体がスルホン化されたスルホン化クロス共重合体の製造方法であり、配位重合工程として、シングルサイト配位重合触媒を用いてオレフィンモノマー、芳香族ビニル化合物モノマー及び芳香族ポリエンの共重合を行って、オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を合成し、次にアニオン重合工程として、前記オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を、芳香族ビニル化合物モノマーの共存下、アニオン重合開始剤を用いて重合を行って、クロス共重合体を合成し、次に、前記クロス共重合体をスルホン化する、スルホン化クロス共重合体の製造方法であり、かつ、前記アニオン重合工程によって得られたクロス鎖がスルホン化されたスルホン化クロス共重合体の製造方法であり、前記クロス共重合体の芳香族ビニル化合物をスルホン化した際の全スルホン化率が70mol%以上90mol%以下であるスルホン化クロス共重合体の製造方法であり、イオン交換容量が2.0meq/g以上4.0meq/g以下であるスルホン化クロス共重合体の製造方法。
全スルホン化率が72mol%以上90mol%以下であり、イオン交換容量が2.3meq/g以上4.0meq/g以下である請求項1記載のスルホン化クロス共重合体の製造方法。
芳香族ビニル化合物の側鎖スルホン化率が77mol%以上90mol%以下であり、イオン交換容量が2.8meq/g以上4.0meq/g以下である請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のスルホン化クロス共重合体の製造方法。
前記クロス共重合体をスルホン化する際、クロス共重合体に対して、1〜100倍量(質量比)のスルホン化剤を使用し、反応温度が、0℃以上100℃以下であり、反応時間が、0.5時間〜100時間である請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のスルホン化クロス共重合体の製造方法。
前記クロス共重合体をスルホン化する際、有機溶媒として、ハロゲン化炭化水素系化合物を使用し、スルホン化剤として、濃硫酸を使用する請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のスルホン化クロス共重合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[クロス共重合体]
クロス共重合体は、主鎖であるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体に、芳香族ビニル化合物モノマーから構成されるポリマー鎖たるクロス鎖が、主鎖の芳香族ポリエンユニット(主鎖芳香族ポリエンユニットということもある)を介し結合している構造(クロス共重合構造又はSegregated star copolymer構造)を含むと考えられる。クロス共重合体の構造やクロス共重合体の含まれる割合は任意であるが、本発明のクロス共重合体は本発明の製造方法により得られる共重合体と規定される。
【0013】
本発明に用いられるクロス共重合体の製造において、その配位重合工程に用いられるオレフィンモノマーとしては、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、即ち、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサンや、環状オレフィン、即ちシクロペンテン、ノルボルネン等が挙げられる。好ましくは、エチレンが用いられる。エチレンとα−オレフィンの混合物を用いても良い。この場合のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が用いられる。
【0014】
配位重合工程に用いられる芳香族ビニル化合物モノマーは、スチレン及び各種の置換スチレン、例えば、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、o−t−ブチルスチレン、m−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン等が挙げられる。工業的に好ましくは、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレンの何れか1種以上が用いられ、より好ましくはスチレンが用いられる。
【0015】
配位重合工程に用いられる芳香族ポリエンは10以上30以下の炭素数を有し、複数の二重結合(ビニル基)と単数又は複数の芳香族基を有し、配位重合可能な芳香族ポリエンであり、二重結合(ビニル基)の1つが配位重合に用いられて重合した状態において、残された二重結合がアニオン重合可能な芳香族ポリエンである。芳香族ポリエンの中では、ジビニルベンゼンが好ましい。ジビニルベンゼンとしては、オルトジビニルベンゼン、パラジビニルベンゼン及びメタジビニルベンゼンの何れか1種以上が用いられる。
【0016】
配位重合工程で得られる、主鎖たるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物含量5mol%以上30mol%以下、芳香族ポリエン含量0.01mol%以上3mol%以下、残部がオレフィン含量である条件を満たすことにより、高い軟質性と高い力学物性を有するクロス共重合体を得ることができる。公知の一般的方法、最も簡単にはモノマー仕込み組成比を変更する方法により、オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成を上記範囲に制御できる。芳香族ビニル化合物含量は、主鎖芳香族ビニル化合物含量ということもある。芳香族ビニルとしてスチレンを使用した場合、主鎖スチレン含量ということもある。芳香族ポリエン含量は、主鎖芳香族ポリエン含量ということもある。
【0017】
上記オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物含量5mol%未満の場合、オレフィン連鎖構造に由来する結晶構造、例えばエチレン連鎖やプロピレン連鎖に基づく結晶構造が一定以上存在し、最終的に得られる本発明の軟質性が損なわれてしまう場合があり、更に成形加工時に結晶化による収縮等成形体の寸法安定性が損なわれてしまう場合がある。
【0018】
上記オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物含量30mol%を超える場合には、スルホン化した際に親水性が高くなり、水へ容易に溶解してしまう可能性がある。更に、配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が芳香族ビニル化合物含量5mol%以上、好ましくは10mol%以上25mol%以下、芳香族ポリエン含量0.01mol%以上3mol%以下、残部がオレフィン含量である条件を満たすことにより、スルホン化した際に、水へ溶解せず、高い軟質性と高い力学物性を有するスルホン化クロス共重合体を得ることができる。
【0019】
更に、軟質性と高イオン伝導性を示すスルホン化クロス共重合体を得るためには、本製造方法の配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合はアニオン重合工程を経て最終的に得られるクロス共重合体質量の40質量%以上90質量%以下が好ましい。40質量%未満では硬質になり、水への溶解性も上がり、十分な力学物性が得られない場合がある。90質量%を超えると、芳香族ビニルの割合が少なくなりイオン伝導性が低下する場合がある。特に好ましくは本製造方法の配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合がアニオン重合工程を経て最終的に得られるクロス共重合体質量の60質量%以上80質量%以下である場合である。この場合、軟質性に優れるクロス共重合体が得られ、スルホン化した際のイオン伝導性が高い値を示すので好ましい。本配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の、アニオン重合工程を経て最終的に得られるクロス共重合体質量に対する質量割合(質量%)については、配位重合終了時に重合液を一部サンプリングし分析して求めた主鎖ポリマー生成質量とアニオン重合後の重合液を一部サンプリングし分析して求めたクロス共重合体生成質量から求めることが可能である。又は、主鎖オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成と、得られたクロス共重合体の組成とを、比較することで求めることも可能である。
【0020】
更に本製造方法の配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の重量平均分子量は、一般的に100万以下3万以上であり、本発明の樹脂組成物の成形加工性を考慮すると、好ましくは30万以下3万以上である。オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、一般的に1.5以上8以下であり、好ましくは1.5以上6以下であり、最も好ましくは1.5以上4以下である。分子量分布がこれらより高い値の場合、オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体のポリエン部分の自己架橋が起こっている場合があり、スルホン化し、フィルム化した際にブツの発生が懸念される場合がある。
【0021】
本発明は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求める。測定は以下の条件で行う。
カラム:TSK−GEL MultiporeHXL−M φ7.8×300mm(東ソ−社製)を2本直列に繋いで用いた。
カラム温度:40℃
溶媒:THF
送液流量:1.0ml/min.
【0022】
更に上記本製造方法の配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の芳香族ポリエン含量は0.01mol%以上3mol%以下であり、好ましくは0.01mol%以上1mol%以下である。上記範囲未満ではクロス共重合体として得られる割合が小さくなる場合があり、上記範囲より高いと成形加工性が悪化してしまう場合がある。
【0023】
クロス鎖部分の長さ(分子量)は、クロス化されなかったホモポリマーの分子量から推定できるが、その長さは、重量平均分子量として、好ましくは5000以上15万以下であり、より好ましくは5000以上10万以下であり、最も好ましくは5000以上7万以下である。又、その分子量分布(Mw/Mn)は好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下、最も好ましくは2以下である。分子量分布(Mw/Mn)は1.0以上が好ましい。
【0024】
本発明に用いられるクロス共重合体のクロス化工程において、アニオン重合が可能であり、かつ、スルホン化が可能である、芳香族ビニル化合物モノマーが用いられる。このような芳香族ビニル化合物モノマーとしては、スチレン、p−メチルスチレン、p−ターシャリ−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。好ましくはスチレンが挙げられる。配位重合工程に用いられる芳香族ビニル化合物モノマーとクロス化工程において用いられる芳香族ビニル化合物モノマーは同一であることが好ましい。最も好ましくは配位重合工程で用いられる芳香族ビニル化合物モノマーがスチレンであり、かつ、クロス化工程において用いられる芳香族ビニル化合物モノマーがスチレンであり、その一部又は全部が配位重合工程における未反応スチレンである。
【0025】
クロス化工程に於いては、芳香族ビニル化合物モノマーに加えて、アニオン重合可能なモノマーを添加しても良い。その添加量は、用いる芳香族ビニル化合物モノマー量に対して最大でも等mol量までである。
【0026】
本発明のクロス化工程では上記モノマー以外に、配位重合工程で重合されずに重合液中に少量残存する芳香族ポリエンも重合されて良い。
【0027】
以下に、本発明のクロス共重合体の製造方法について詳細に説明する。
【0028】
<配位重合工程>
本製造方法の配位重合工程においては、シングルサイト配位重合触媒が用いられる。好ましくは、下記の一般式(1)又は(2)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒を用いる。
【0030】
式中、A、Bは、非置換若しくは置換ベンゾインデニル基、非置換若しくは置換シクロペンタジエニル基、非置換若しくは置換インデニル基、又は、非置換若しくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。A、Bは同一でも異なっていても良い。
YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素若しくは炭素数1〜15の炭化水素基(1〜3個の窒素、酸素、硫黄、燐、珪素原子を含んでも良い)を有するメチレン基である。置換基は互いに異なっていても同一でも良い。又、Yは環状構造を有していても良い。
Xは、水素、水酸基、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、又は、炭素数1〜20の炭化水素置換基を有するアミド基である。Xが複数の場合、X同士は結合を有しても良い。
nは、1又は2の整数である。
Mはジルコニウム、ハフニウム、又はチタンである。
好ましくは、A、Bは非置換若しくは置換ベンゾインデニル基、非置換若しくは置換インデニル基から選ばれる基である。
【0031】
かかる遷移金属化合物の好適な例は、特開平11−130808号公報、特開平11−130808号公報、特開平9−309925号公報に具体的に例示した置換メチレン架橋構造を有する遷移金属化合物や、WO01/068719号公報に具体的に例示した硼素架橋構造を有する遷移金属化合物である。
【0033】
式中、Cpは非置換若しくは置換シクロペンタフェナンスリル基、非置換若しくは置換ベンゾインデニル基、非置換若しくは置換シクロペンタジエニル基、非置換若しくは置換インデニル基、又は非置換若しくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。Y’は、Cp、Zと結合を有し、他に水素若しくは炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基、シリレン基、エチレン基、ゲルミレン基、硼素基である。置換基は互いに異なっていても同一でも良い。又、Y’は環状構造を有していても良い。Zは窒素、酸素又はイオウを含み、窒素、酸素又はイオウでM’に配位する配位子であり、Y’と結合を有し、他に水素、炭素数1〜15の置換基を有する基である。
M’はジルコニウム、ハフニウム、又はチタンである。
X’は、水素、ハロゲン、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数8〜12のアルキルアリール基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、又は、炭素数1〜6のアルキル置換基を有するジアルキルアミド基である。
nは、1又は2の整数である。
【0034】
本製造方法の配位重合工程において、好ましくは、上記の一般式(1)で表されるシングルサイト配位重合触媒と助触媒から構成される重合触媒が用いられる。
【0035】
本製造方法の配位重合工程で用いる助触媒としては、従来遷移金属化合物と組み合わせて用いられる公知の助触媒を使用することができるが、そのような助触媒として、メチルアルミノキサン(メチルアルモキサン又はMAOと記す)等のアルモキサン又は硼素化合物が好適に用いられる。用いられる助触媒の例としては、特開平11−130808号公報、特開平11−130808号公報、特開平9−309925号公報、WO00/20426号公報、特開2000−143733号公報、特開平6−184179号公報に記載されている助触媒やアルキルアルミニウム化合物が挙げられる。
【0036】
アルモキサン等の助触媒は、遷移金属化合物の金属に対し、アルミニウム原子/遷移金属比(原子比)で0.1〜100000の比で、好ましくは10〜10000の比で用いられる。0.1未満では有効に遷移金属化合物を活性化できず、100000を超えると経済的に不利となる。
【0037】
助触媒として硼素化合物を用いる場合には、硼素原子/遷移金属比(原子比)で0.01〜100の比で用いられるが、好ましくは0.1〜10の比で、より好ましくは1の比で用いられる。0.01未満では有効に遷移金属化合物を活性化できず、100を超えると経済的に不利となる。遷移金属化合物と助触媒は、重合設備外で混合、調製してもよく、重合時に設備内で混合しても良い。
【0038】
本発明の配位重合工程でオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を製造するにあたっては、上記に例示した各モノマー、遷移金属化合物及び助触媒を接触させるが、接触の順番、接触方法は任意の公知の方法を用いることができる。
【0039】
以上の共重合の方法としては、溶媒を用いずに液状モノマー中で重合させる方法、或いは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロ置換ベンゼン、クロロ置換トルエン、塩化メチレン、クロロホルム等の、飽和脂肪族、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素といった、単独溶媒又は混合溶媒を用いる方法がある。好ましくは混合アルカン系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼンを用いる。重合形態は溶液重合、スラリ−重合何れでも良い。又、必要に応じ、バッチ重合、連続重合、予備重合、多段式重合等の公知の方法を用いることができる。
【0040】
単数や連結された複数のタンク式重合缶や、リニアやル−プといった単数のパイプ重合設備、連結された複数のパイプ重合設備を用いることも可能である。パイプ状の重合缶には、動的或いは静的な混合機や除熱を兼ねた静的混合機等の公知の各種混合機、除熱用の細管を備えた冷却器等の公知の各種冷却器を有しても良い。又、バッチタイプの予備重合缶を有していても良い。更には気相重合等の方法を用いることができる。
【0041】
重合温度は、−78℃以上200℃以下が好ましい。−78℃未満では工業的に不利である場合があり、200℃を超えると遷移金属化合物の分解が起こる場合がある。工業的により好ましくは0℃以上160℃以下であり、最も好ましくは30℃以上160℃以下である。
重合時の圧力は、工業的に好ましくは0.1気圧以上100気圧以下であり、より好ましくは1気圧以上30気圧以下であり、最も好ましくは1気圧以上10気圧以下である。
【0042】
更に用いられるシングルサイト配位重合触媒の遷移金属化合物が一般式(1)で示される構造を有し、かつ、A、Bは非置換若しくは置換ベンゾインデニル基、非置換若しくは置換インデニル基から選ばれる基であり、YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素若しくは炭素数1〜15の炭化水素基(1〜3個の窒素、酸素、硫黄、燐、珪素原子を含んでも良い)を有するメチレン基又は硼素基であり、かつ、本遷移金属化合物はラセミ体である場合、得られる本組成範囲のオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体は、オレフィン−芳香族ビニル化合物の交互構造、好ましくはエチレン−芳香族ビニル化合物交互構造がアイソタクティックの立体規則性を有し、そのため本発明のクロス共重合体は本交互構造に由来する微結晶性を有することができる。そのため、本オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体は、立体規則性がない場合と比較して、交互構造の微結晶性に基づく良好な力学物性や耐油性を与えることができ、この特徴は最終的に本発明のクロス共重合体にも受け継ぐことができる。
【0043】
<クロス化工程>
本発明の製造方法のクロス化工程では、配位重合工程で得られたオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体と芳香族ビニル化合物モノマーの共存下、アニオン重合開始剤を用いてアニオン重合を行う。芳香族ビニル化合物モノマーは、スルホン化が可能であり、かつ、アニオン重合性を有すれば良い。
【0044】
本発明のクロス化工程では、公知のアニオン重合開始剤を用いることができる。好ましくは、アルキルリチウム化合物、ビフェニル、ナフタレン、ピレン等のリチウム塩或いはナトリウム塩の何れか1種以上が用いられ、より好ましくは、sec−ブチルリチウム、n(ノルマル)−ブチルリチウムの何れか1種以上が用いられる。又、多官能性開始剤、ジリチウム化合物、トリリチウム化合物を用いても良い。必要に応じて公知のアニオン重合末端カップリング剤を用いても良い。
【0045】
溶媒は、連鎖移動等の不都合を生じない混合、アルカン系溶媒、シクロヘキサン、ベンゼン等の溶媒が好ましいが、重合温度が150℃以下であれば、トルエン、エチルベンゼン等の他の溶媒も用いることが可能である。
【0046】
本発明のクロス化工程では、芳香族ビニル化合物モノマーの重合転換率が高い程、好ましい力学物性や光学物性を有するクロス共重合体が得られる。そのため、比較的短い時間で容易に芳香族ビニル化合物モノマーの高重合転換率が達成可能なアニオン重合が好ましく採用される。
【0047】
本発明のクロス化工程は、上記の配位重合工程の後に実施される。この際、配位重合工程で得られた共重合体を、クラムフォーミング法、スチームストリッピング法、脱揮槽、脱揮押出し機等を用いた直接脱溶媒法等、任意のポリマー回収法を用いて、重合液から分離、精製してクロス化工程に用いても良い。しかし、配位重合後の重合液から、残留オレフィンを放圧後、或いは、放圧せずに、次のクロス化工程に用いるのが、経済的に好ましい。重合体を重合液から分離せずに、重合体を含んだ重合液をクロス化工程に使用できることが本発明の特徴の1つである。
【0048】
重合形態は、アニオン重合に用いられる任意の公知の方法を用いることができる。重合温度は、−78℃以上200℃以下が好ましい。−78℃未満の重合温度は工業的に不利である場合があり、150℃を超えると連鎖移動等が起こる場合がある。工業的に好ましくは0℃以上200℃以下であり、より好ましくは30℃以上150℃以下である。
重合時の圧力は、工業的に好ましくは0.1気圧以上100気圧以下であり、より好ましくは1気圧以上30気圧であり、最も好ましくは1気圧以上10気圧である。
【0049】
[スルホン化工程]
本発明のクロス共重合体の芳香族ビニル化合物のスルホン化率は50mol%以上90mol%以下である。スルホン化率が50mol%未満だと、十分なイオン伝導パスができず、電解質膜としての性能が低下する。好ましくは66mol%以上、より好ましくは70mol%以上90mol%以下のスルホン化率である。スルホン化率が90mol%を超えると耐水性が低下するおそれがある。
【0050】
スルホン化率とは、(スルホン酸基のモル数)/(芳香族ビニル化合物のモル数)×100(mol%)で示される。スルホン酸基とは、−SO3M基(Mは、水素、NH4+、又は、イオン形態の1族、2族、7族、11族若しくは12族の金属である)をいう。
【0051】
ここでいうスルホン化率とは、全スルホン化率をいう。全スルホン化率とはクロス共重合体を構成するすべての芳香族ビニルに対するスルホン化率のことをいう。側鎖スルホン化率とは側鎖芳香族ビニルに対するスルホン化率のことをいう。ここで側鎖とは、クロス鎖のことをいう。
【0052】
更に、本発明のクロス共重合体の芳香族ビニル化合物の側鎖スルホン化率は50mol%以上が好ましい。側鎖スルホン化率が50mol%未満だと、十分なイオン伝導パスができず、電解質膜としての性能が低下する。好ましくは66mol%以上、より好ましくは70mol%以上の側鎖スルホン化率である。側鎖スルホン化率は90mol%以下が好ましい。
【0053】
クロス共重合体の配位重合工程で得られる主鎖のオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体(エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体)の芳香族ビニル化合物の連鎖は少ない。一方、アニオン重合で合成される芳香族ビニル化合物を用いたクロス鎖は連鎖構造となっており、このクロス鎖をスルホン化することによって十分なイオン伝導パスを有し、主鎖で力学強度を有することができる。
【0054】
本発明でイオン伝導基の含有量に由来するスルホン化クロス共重合体のイオン交換容量は1.0meq/g以上5.5meq/g以下である。イオン交換容量が1.0meq/g未満だと、十分なイオン伝導パスが得られない。又、クロス共重合体に含まれる芳香族ビニルの含有量から5.5meq/gを超えるイオン交換容量を得ることは難しい。好ましくは1.2meq/g以上5.0meq/g以下であり、より好ましくは1.5meq/g以上4.0meq/g以下であり、最も好ましくは2.0meq/g以上3.5meq/g以下である。
【0055】
本発明のクロス共重合体の芳香族ビニル化合物のスルホン化は、溶媒等に溶解分散させた後にスルホン化剤を用いて行う方法や、クロス共重合体をフィルムにした後に無水硫酸ガスを用いて行う方法等、公知のスルホン化剤を用いることができる。本発明のスルホン化剤としては、クロロスルホン酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、三酸化硫黄−トリエチルホスフェート、濃硫酸、硫酸−無水酢酸、トリメチルシリルクロロサルフェート等が挙げられる。工業的入手の容易さやスルホン酸基の導入の容易さや得られるイオン伝導性高分子膜の特性を考慮すると、これらのスルホン化剤が好ましい。
【0056】
本発明に使用可能な有機溶媒としては、クロス共重合体を劣化させたり、スルホン化剤のスルホン化能を消失させたりしなければ特に制限を受けない。スルホン酸基の導入のしやすさ等を考慮すると、本発明に使用する有機溶媒はクロス共重合体が溶解若しくは膨潤しやすいハロゲン化炭化水素系化合物が好ましく、更に得られる高分子電解質膜の機械的特性やハンドリング性、スルホン酸基の導入制御のし易さ等を考慮すると、少なくとも1個以上の塩素原子を含むハロゲン化炭化水素が好ましい。少なくとも1個以上の塩素原子を含むハロゲン化炭化水素としては、1−クロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1,4−ジクロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−クロロペンタン、1−クロロヘキサン、クロロシクロヘキサンの何れか1種以上が好ましいが、これらのみに限定されるものではない。前記溶媒の中では、工業的入手の容易さや得られる高分子電解質膜の特性等の点から、1,2−ジクロロエタンが好ましい。
【0057】
スルホン化剤の使用量は、クロス共重合体に対して、1〜100倍量(質量比)が好ましく、2〜50倍量(質量比)がより好ましい。スルホン化剤の使用量が、1倍量未満だと、スルホン酸基の導入量が少なくなり、得られる高分子電解質膜のイオン伝導性等の特性が不充分となる場合がある。100倍量を超えると、クロス共重合体が化学的に劣化し、得られる高分子電解質膜の機械的強度が低下し、ハンドリングが困難となったり、スルホン酸基の導入量が多くなりすぎて、水に可溶になったりする等、高分子電解質膜の実用的な特性が損なわれる場合がある。
【0058】
溶媒中のスルホン化剤の濃度は、スルホン酸基の目標とする導入量や反応条件(温度・時間)を勘案して適宜設定すれば良い。具体的には、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.2質量%以上10質量%がより好ましい。0.1質量%未満だと、スルホン化剤と高分子化合物中の芳香族単位とが接触しにくくなり、所望のスルホン酸基が導入できなかったり、導入するのに時間がかかりすぎたりする場合がある。10質量%を超えるとスルホン酸基の導入が不均一となったり、得られたイオン伝導性高分子膜の機械的特性が損なわれたりする場合がある。
【0059】
又、接触させる際の反応温度、反応時間については特に限定は無い。反応温度は、0℃以上100℃以下が好ましく、10℃以上60℃以下がより好ましい。反応時間は、0.5時間以上が好ましく、1〜100時間がより好ましい。反応温度が0℃未満だと、設備上冷却等の措置が必要になると共に、反応に必要以上の時間がかかる傾向があり、100℃を超えると、反応が過度に進行したり、副反応を生じたりして、膜の特性を低下させる傾向がある。反応時間が0.5時間未満だと、スルホン化剤とクロス共重合体中の芳香族単位との接触が不充分となり、所望のスルホン酸基が導入しにくくなる場合があり、反応時間が100時間を超えると、生産性が著しく低下する傾向を示すと共に、膜特性の大きな向上が期待できない場合がある。実際には、使用するスルホン化剤や溶媒等の反応系、目標とする生産量等を考慮して、所望の特性を有するイオン伝導性高分子膜を効率的に製造できるように設定すれば良い。
【0060】
具体的なスルホン化方法は、H.S.Makowski,R.D.Lundberg,及び、G.H.Singhalが米国特許第3,870,841号公報に記述した方法が挙げられる。このような方法としては、硫酸と無水酢酸を−70℃以上130℃以下(好適には−20℃以上20℃以下)の温度で混合し、無水物を生じさせた後、この混合物とクロス共重合体を、ハロゲン化炭化水素等の溶媒に、−20℃以上100℃以下の温度で添加する方法が挙げられる。
【0061】
本発明の高分子電解質膜は、本発明の効果を損なわない限り、各種添加剤、例えば、軟化剤、安定剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、顔料、染料、増白剤、カーボン繊維、無機充填剤等を単独又は2種以上組み合わせて含有しても良い。
【0062】
本発明のフィルムにおけるスルホン化クロス共重合体の含有量は、イオン伝導性の観点から、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が最も好ましい。
【0063】
[フィルム]
本発明のスルホン化クロス共重合体を用いたフィルムの厚みは1μm以上1mm以下である。燃料電池用電解質膜用途に必要な性能、膜強度、ハンドリング性等の観点から、その膜厚は10μm以上500μm以下が好ましい。膜厚が10μm未満だと、膜の機械的強度やガスの遮断性が不充分となる場合がある。膜厚が500μmを超えると、膜抵抗が大きくなり、充分なイオン伝導性が発現しないため、電池の発電特性が低くなる傾向がある。該膜厚は20μm以上250μm以下がより好ましい。
【0064】
本発明のスルホン化クロス共重合体を用いたフィルムの調製法は、公知の方法を採用できる。例えば、本発明の高分子電解質膜を構成するスルホン化クロス共重合体及び上記のような添加剤を適当な溶媒と混合して、8質量%以上のスルホン化クロス共重合体の溶液又は懸濁液を調製した後、離形処理済みのPETフィルム等に、コーターやアプリケーター等を用いて塗布した後、適切な条件で溶媒を除去することによって、所望の厚みを有する電解質膜を得る溶液塗工方法や、ポリテトラフルオロエチレンシート等に5質量%以下のスルホン化クロス共重合体の溶液又は懸濁液をキャストした後、溶媒を徐々に除去することによって、所望の厚みを有する電解質膜を得るキャスト法や、熱プレス成形、熱ロール成形、押し出し成形等の公知の方法を用いて成膜する方法等を用いることができるが、良好な強度と柔軟性を有する電解質膜を調整しやすい観点から、溶液塗工方法が好適に用いられる。
【0065】
又、得られた電解質膜の上に、新たに同じ若しくは異なるスルホン化クロス共重合体溶液又は懸濁液を塗布し、乾燥することにより、積層化させても良い。又、上記のようにして得られた、同じ若しくは異なる電解質膜同士を熱ロール成形等で圧着させて積層化させても良い。
【0066】
この時に使用する溶媒は、スルホン化クロス共重合体の構造を破壊することなく、溶液塗工が可能な程度に粘度の溶液を調製できれば特に制限されない。例えば、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン等の直鎖状脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、或いはこれらの混合溶媒等が挙げられる。ブロック共重合体の構成、分子量、イオン交換容量等に応じて、上記に例示した溶媒の中から、1種以上の組合せを適宜選択し、使用できるが、溶解性の観点から、ジメチルスルホキシドが好ましい。
【0067】
又、溶液塗工方法における溶媒除去の条件は、スルホン化クロス共重合体のスルホン酸基が脱落する条件、若しくは、スルホン酸基由来の架橋反応が起こらない温度よりも低温で、溶媒を完全に除去できる条件であれば任意に選択することが可能である。所望の物性を発現させるために、温度条件を任意に組み合わせたり、通風気下と真空下等を任意に組み合わせたりしても良い。
【0068】
本発明で得られるスルホン化クロス共重合体のフィルムのイオン伝導率は80℃、相対湿度80%のときに10mS/cm以上である。これより小さいと、燃料電池の電解質膜としての性能が低下し、十分な発電効率が得られない。
【0069】
[架橋]
本発明のスルホン化クロス共重合体及びそのスルホン化クロス共重合体を含むフィルムは、電子線、γ線、イオンビーム等の各種エネルギー線等の公知の方法を用いて架橋することができる。クロス共重合体は、低線量で十分な架橋度が得られ、スルホン化クロス共重合体を成膜後に架橋でき、水への溶解性等が抑制できる点で、好ましい。ここで用いられるエネルギー線としては、粒子線、電磁波、及び、これらの組み合わせが挙げられる。粒子線としては、電子線(EB)、α線等が挙げられる。電磁波としては、紫外線(UV)、可視光線、赤外線、γ線、X線等が挙げられる。これらの中では、連続的に照射できる電子線(EB)が好ましい。
【0070】
これらの活性エネルギー線は、公知の装置を用いて照射することができる。電子線(EB)の場合の加速電圧としては0.1MeV以上10MeV以下の範囲、照射線量としては10kGy以上500kGy以下の範囲が適当である。本加速電圧は、フィルムの厚さにより適切に制御する。表面から1回の照射でフィルム全体を架橋しようとする場合、フィルム裏面まで十分に電子線が透過し架橋が進行する必要があり、フィルム厚さ250μmでは加速電圧250kV以上、フィルム厚さ500μmでは500kV以上、フィルム厚さ1000μmでは1000kV以上の加速電圧を用いる。フィルム両面から電子線を照射する場合には、それぞれこれらの半分の加速電圧以上で行うのが適当である。特に下記に示す光重合開始剤や架橋助剤を用いずに架橋を行う方法は、コストや残留するこれら薬剤に対する配慮が必要ない点で、好ましい。特に、本発明のスルホン化クロス共重合体に対して用いる場合、低照射線量で架橋を行うことが可能となり、生産性が向上する観点から、好ましい。具体的には、表面から1回の照射でフィルム裏面を含む全体を架橋しようとする場合、上記の加速電圧を満たした条件で、50kGy以上200kGy以下、好ましくは100kGy以上200kGy以下の低照射線量で架橋を行うことができる。これ以上の照射線量で架橋を行った場合、架橋が進行しすぎることにより、含水率が抑制され、十分なイオン伝導率が得られず、好ましくない。
【0071】
紫外線(UV)の場合、その線源として放射波長が200nm以上450nm以下のランプを好適に用いることができる。本発明のスルホン化クロス共重合体及びそのスルホン化クロス共重合体を含むフィルムは必要に応じて、特にエネルギー線として紫外線(UV)を用いる場合には、光重合開始剤を更に配合できる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチロールベンゾイン、α−メチロールベンゾインメチルエーテル、α−メトキシベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、α−t−ブチルベンゾイン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの光重合開始剤は単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。光重合開始剤を配合する場合、樹脂成分の合計質量に対して0.01質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0072】
本発明のスルホン化クロス共重合体には、必要に応じて架橋助剤を更に配合することができる。架橋助剤としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、N,N’−フェニレンビスマレイミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの架橋助剤は1種を単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。架橋助剤を配合する場合、その含有量は特に制限はないが、通常、スルホン化クロス共重合体の合計質量に対して0.01質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0073】
[バインダー]
本発明の触媒層バインダーは、前記のスルホン化クロス共重合体、及び/又は 前記のスルホン化クロス共重合体に上記の添加剤を配合した組成物を、燃料電池の触媒層を作製する際に用いるものである。
【0074】
ここでのバインダーとは、燃料電池用触媒(例えば、白金等の貴金属触媒を胆持したカーボン粉体)を薄膜状に形成するための結着剤であり、イオノマーと表現されることも多い。このバインダーに対しても、膜同様の高いイオン伝導性、耐久性、水への不溶性が求められるのと同時に、触媒を分散させるための溶媒溶解性、結着保持力等が求められる。
【0075】
触媒層バインダーは、任意の溶媒で溶解或いは分散させた高分子電解質溶液或いは高分子電解質分散液として用いることが、取り扱いが容易であるので好ましい。その高分子電解質の濃度は、1質量%以上90質量%以下であること、より好ましくは1質量%以上75質量%以下であること、最も好ましくは1質量%以上50質量%以下であることが、取り扱いが容易であることから好ましい。1質量%未満では、触媒層形成材料の粘度が低いので、触媒層の形成が困難である場合があり、90質量%を超えると、触媒層形成材料の粘度が高いので、触媒層の形成が困難である場合がある。前記高分子電解質を溶解或いは分散させる溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、NMP、或いはジメチルスルホキシド等が好ましい。本発明の触媒層バインダーを用いた触媒層形成方法は、従来公知の方法が適応できる。
【0076】
ここで示したスルホン化クロス共重合体は、燃料電池電解質膜、触媒層バインダーの他にも、例えば、水浄化分離膜等の限外ろ過膜、加湿・除湿膜等の気体分離膜、冷却効果を有する機能性複合織物や、高分子アクチュエータ、湿度センサー、ガスセンサー、湿度センサー、ガスセンサー、限外ろ過膜、有機EL用電荷輸送材料、2次電池用セパレータ等の電気化学素子の原料としても使用される。
【実施例】
【0077】
以下、参考例、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0078】
実施例で得られた共重合体の分析は以下の手段によって実施した。
【0079】
[全スチレン含量]
クロス共重合体中の全スチレン含量の決定は、スルホン化する前であり、かつ、クロス化工程終了後のクロス共重合体について行った。共重合体中のスチレン含量の決定は、
1H−NMRで行い、機器は日本電子社製α−500及びBRUCKER社製AC−250を用いた。重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解し、測定は、80〜100℃で行った。TMSを基準としてフェニル基プロトン由来のピーク(6.5〜7.3ppm)とアルキレン基由来のプロトンピーク(0.8〜3ppm)の面積強度を比較し、全スチレン含量の決定を行った。
【0080】
[主鎖スチレン含量]
主鎖スチレン含量の決定は、スルホン化する前であり、かつ、配位重合工程終了後、クロス化工程開始前のオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体について行った。主鎖スチレン含量は、配位重合工程で得られる、主鎖たるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体中に含有する、スチレンの含量をいう。主鎖スチレン含量の決定は、以下の通りである。配位重合工程終了後、クロス化工程開始前の重合液をサンプリングし、
1H−NMRを用い、機器は日本電子社製α−500及びBRUCKER社製AC−250を用いた。重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解し、測定は、80〜100℃で行った。TMSを基準としてフェニル基プロトン由来のピーク(6.5〜7.3ppm)とアルキレン基由来のプロトンピーク(0.8〜3ppm)の面積強度を比較し、主鎖スチレン含量の決定を行った。
【0081】
[主鎖芳香族ポリエン含量]
主鎖芳香族ポリエン含量の決定は、スルホン化する前であり、かつ、配位重合工程終了後、クロス化工程開始前のオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体について行った。主鎖芳香族ポリエン含量は、配位重合工程で得られる、主鎖たるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体中に含有する、芳香族ポリエン(ジビニルベンゼン)の含量をいう。主鎖芳香族ポリエン含量の決定は、以下の通りである。配位重合工程終了後、クロス化工程開始前の重合液をサンプリングし、
1H−NMRを用い、機器は日本電子社製α−500及びBRUCKER社製AC−250を用いた。重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解し、測定は、80〜100℃で行った。TMSを基準としてフェニル基プロトン由来のピーク(6.5〜7.3ppm)とアルキレン基由来のプロトンピーク(0.8〜3ppm)とポリエン由来のピーク(5.1〜5.3ppm)の面積強度を比較し、主鎖芳香族ポリエン含量の決定を行った。
【0082】
[オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合]
オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合の決定は、スルホン化する前であり、かつ、クロス化工程終了後のクロス共重合体について行った。オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合は、アニオン重合工程(クロス化工程)を経て最終的に得られるクロス共重合体中に含有する、オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合をいう。オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合の決定は、以下の通りである。
1H−NMRを用い、機器は日本電子社製α−500及びBRUCKER社製AC−250を用いた。重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解し、測定は、80〜100℃で行った。TMSを基準として、オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体に含まれる、フェニル基プロトン由来のピーク(6.5〜7.3ppm)、オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体に含まれる、アルキレン基由来のプロトンピーク(0.8〜3ppm)、クロス鎖に含まれる、フェニル基プロトン由来のピーク(6.4〜6.8ppm)の面積強度を比較し、オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合の決定を行った。
【0083】
[オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の重量平均分子量と分子量分布]
スルホン化する前であり、かつ、配位重合工程終了後、クロス化工程開始前のオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体について行った。配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体について、分子量測定を行った。詳細は、以下の通りである。配位重合工程終了後、クロス化工程開始前の重合液をサンプリングし、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求めた。測定は以下の条件で行った。
カラム:TSK−GEL MultiporeHXL−M φ7.8×300mm(東ソ−社製)を2本直列に繋いで用いた。
カラム温度:40℃
溶媒:THF
送液流量:1.0ml/min.
【0084】
[クロス鎖部分の重量平均分子量と分子量分布]
スルホン化する前であり、かつ、クロス化工程終了後のクロス共重合体について行った。クロス鎖部分については、クロス化されなかったスチレンのホモポリマーの分子量から推定した。詳細は、以下の通りである。ポリマーの溶解度の差を利用した溶媒分別法により、クロス共重合体とクロス化されなかったスチレンのホモポリマーを分別し、スチレンのホモポリマーを回収した。詳細は、以下の通りである。クロス共重合体をトルエンに溶解させた後にアセトンを添加し、クロス共重合体だけを析出させた。クロス共重合体をろ過により除去した後に、濾過した液からアセトンを一部除去した。その後、メタノールを添加してスチレンのホモポリマーを析出させ、スチレンのホモポリマーを濾過により回収した。スチレンのホモポリマーについて、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、クロス鎖部分の重量平均分子量と分子量分布とした。測定は以下の条件で行った。
カラム:TSK−GEL MultiporeHXL−M φ7.8×300mm(東ソ−社製)を2本直列に繋いで用いた。
カラム温度:40℃
溶媒:THF
送液流量:1.0ml/min.
【0085】
[スルホン化率]
スルホン化クロス共重合体のスルホン化率の決定は
1H−NMRで行い、機器は日本電子社製α−500及びBRUCKER社製AC−250を用いた。重DMSOにスルホン化クロス共重合体を1質量%の濃度で溶解させ、測定は100℃で行った。TMSを基準としてスルホン化フェニル基プロトン由来のピーク(7.3〜7.8ppm)とスルホン化前のフェニル基プロトン由来のピーク(6.5〜7.3ppm)の面積強度を比較し、スルホン化率の決定を行った(全スルホン化率の場合)。側鎖スルホン化率は、TMSを基準としてスルホン化フェニル基プロトン由来のショルダーピーク(7.3〜7.45ppm)とスルホン化前のフェニル基プロトン由来のピーク(6.5〜7.3ppm)の面積強度を比較することにより決定した。
【0086】
[スルホン化クロス共重合体フィルム]
スルホン化クロス共重合体を10質量%の濃度でジメチルスルホキシドに溶解させ、マイクロメーター付きフィルムアプリケーター(テスター産業社製)のギャップを500μmに設定し、ガラス板上にクロス共重合体キャストフィルムを作成した。その後、送風乾燥機120℃で30分間乾燥させた。得られたフィルムは40μm〜80μmであった。
【0087】
[電子線架橋]
岩崎電気EB装置TYPE:CB250/15/180Lを用い、加速電圧200kVで所定の照射線量(kGy)の照射を1回実施した。
【0088】
[イオン交換容量]
スルホン化クロス共重合体フィルム100mgを1Mの硫酸水溶液に24時間浸漬させ、フィルムを取り出し、表面を蒸留水で洗浄した。表面の水分を拭き取り、飽和食塩水に24時間浸漬させた。0.1MのNaOH水溶液を用い、使用した蒸留水のpHを終点として、滴定し算出した。
【0089】
[イオン伝導率]
スルホン化クロス共重合体フィルムを5mm×20mmに切り出し、膜導電率測定セルBT110型(東陽テクニカ製)の白金電極に挟み込み、80℃、相対湿度80%の恒温槽にセットした。恒温槽が80℃、相対湿度80%になってから30分間恒温槽中で静置し、直流法(ソラトロンSI1260型(東陽テクニカ製))により膜抵抗を算出し、イオン伝導率を算出した。
【0090】
[耐水性]
スルホン化クロス共重合体フィルムを20mm×20mmに10枚切り出し、室温で蒸留水に浸漬させた。5分後フィルムの状態を観察し、以下の通りに評価した。
形状を保持した枚数が9枚以上 ○
形状を保持した枚数が3枚以上8枚以下 △
形状を保持した枚数が2枚以下 ×
【0091】
[触媒(遷移金属化合物)]
以下の実施例1〜6及び比較例1〜6では、触媒(遷移金属化合物)として、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド(化3)を用いた。
【0092】
【化3】
【0093】
[クロス共重合体の製造]
(合成例1)
触媒としてrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、以下のように実施した。
容量50L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。シクロヘキサン17.1kg、スチレン4.3kg及び新日鐵化学社製ジビニルベンゼン(メタ、パラ混合品、純度81質量%、ジビニルベンゼン分として64mmol)を仕込み、内温60℃に調整し攪拌(220rpm)した。乾燥窒素ガスを10L/分の流量で約30分、液中にバブリングして系内及び重合液の水分をパージした。次いで、トリイソブチルアルミニウム50mmol、メチルアルモキサン(ファインケム社製、MMAO−3A/トルエン溶液)をAl基準で100mmolを加え、直ちにエチレンで系内をパージした。十分にパージした後、内温を85℃に昇温してエチレンを導入し、圧力0.58MPa(4.8kg/cm
2G)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを100μmol、トリイソブチルアルミニウム1mmolを溶かしたトルエン溶液約50mlをオートクレーブ中に加えた。更に、流量制御弁を介しエチレンを補給し、内温を90℃、圧力を0.58MPaに維持しながら重合を行った。エチレンの流速、積算量から重合進行状況をモニタ−した。エチレンの積算量が2.87kgに達した後、エチレンの供給を停止し、放圧すると共に内温を70℃まで冷却した(以上配位重合工程)。分析用重合液を数十ml採取した。スチレンを0.9kg添加した後、n−ブチルリチウム175mmolを触媒タンクから窒素ガスに同伴させて重合缶内に導入した(以上クロス化工程)。直ちにアニオン重合が開始し、内温は70℃から一時80℃まで上昇した。そのまま30分間温度を70℃に維持し攪拌を継続し重合を続けた。約百mlのメタノールを重合缶に加え、アニオン重合を停止した。
重合液を抜き出した後、重合液に対して約同体積のメタノールを添加し、クロス共重合体を析出させ、ろ過することによって固形分を回収した。その後、60℃で24時間真空乾燥を行い、クロス共重合体(合成物1)を得た。
【0094】
(合成例2)
触媒としてrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、以下のように実施した。
容量50L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。シクロヘキサン17.1kg、スチレン2.97kg及び新日鐵化学社製ジビニルベンゼン(メタ、パラ混合品、純度81質量%、ジビニルベンゼン分として128mmol)を仕込み、内温60℃に調整し攪拌(220rpm)した。乾燥窒素ガスを10L/分の流量で約30分、液中にバブリングして系内及び重合液の水分をパージした。次いで、トリイソブチルアルミニウム50mmol、メチルアルモキサン(ファインケム社製、MMAO−3A/トルエン溶液)をAl基準で100mmolを加え、直ちにエチレンで系内をパージした。十分にパージした後、内温を85℃に昇温してエチレンを導入し、圧力0.58MPa(4.8kg/cm
2G)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを100μmol、トリイソブチルアルミニウム1mmolを溶かしたトルエン溶液約50mlをオートクレーブ中に加えた。更に、流量制御弁を介しエチレンを補給し、内温を90℃、圧力を0.58MPaに維持しながら重合を行った。エチレンの流速、積算量から重合進行状況をモニタ−した。エチレンの積算量が2.05kgに達した後、エチレンの供給を停止し、放圧すると共に内温を70℃まで冷却した(以上配位重合工程)。分析用重合液を数十ml採取した。スチレンを1.1kg添加した後、n−ブチルリチウム160mmolを触媒タンクから窒素ガスに同伴させて重合缶内に導入した(以上クロス化工程)。直ちにアニオン重合が開始し、内温は70℃から一時80℃まで上昇した。そのまま30分間温度を70℃に維持し攪拌を継続し重合を続けた。約百mlのメタノールを重合缶に加え、アニオン重合を停止した。
重合液を抜き出した後、重合液に対して約同体積のメタノールを添加し、クロス共重合体を析出させ、ろ過することによって固形分を回収した。その後、60℃で24時間真空乾燥を行い、クロス共重合体(合成物2)を得た。
【0095】
[実施例1]
スルホン化剤として0℃に冷却しながらDCE(1,2−ジクロロエタン)140gに無水酢酸を74g添加し、10分間撹拌した。続いて0℃に冷却、撹拌しつつ濃硫酸を47g添加した。20分後、室温まで温め、20分以上撹拌したものを用いた。合成例1のクロス共重合体50gをDCE1kgに溶解させ、30分間窒素バブリングを行った。クロス共重合体溶液が50℃になるように設定し、窒素パージを行いながら前述のスルホン化剤を滴下し、60分間反応させた。反応溶液に420mLのn−プロパノール溶液を添加し、液温が30℃になるまで放冷した。2層の液体をエバレートすることにより、DCE層を溜去し、n−プロパノール1層になったところ、分画分子量が3500の透析膜に入れ、透析膜の外液のpHが5.5になるまで蒸留水を入れ替えた。その後凍結乾燥を行うことでスルホン化クロス共重合体を得た。得られたスルホン化クロス共重合体の評価は表1に記載した。
【0096】
[実施例2]
スルホン化剤として0℃に冷却しながらDCE140gに無水酢酸を74g添加し、10分間撹拌した。続いて0℃に冷却、撹拌しつつ濃硫酸を47g添加した。20分後、室温まで温め、20分以上撹拌したものを用いた。合成例1のクロス共重合体50gをDCE1kgに溶解させ、30分間窒素バブリングを行った。クロス共重合体溶液が50℃になるように設定し、窒素パージを行いながら前述のスルホン化剤を滴下し、90分間反応させた。反応溶液に420mLのn−プロパノール溶液を添加し、液温が30℃になるまで放冷した。2層の液体をエバレートすることにより、DCE層を溜去し、n−プロパノール1層になったところ、分画分子量が3500の透析膜に入れ、透析膜の外液のpHが5.5になるまで蒸留水を入れ替えた。その後凍結乾燥を行うことでスルホン化クロス共重合体を得た。得られたスルホン化クロス共重合体の評価は表1に記載した。
【0097】
[実施例3]
スルホン化剤として0℃に冷却しながらDCE140gに無水酢酸を74g添加し、10分間撹拌した。続いて0℃に冷却、撹拌しつつ濃硫酸を47g添加した。20分後、室温まで温め、20分以上撹拌したものを用いた。合成例1のクロス共重合体50gをDCE1kgに溶解させ、30分間窒素バブリングを行った。クロス共重合体溶液が50℃になるように設定し、窒素パージを行いながら前述のスルホン化剤を滴下し、120分間反応させた。反応溶液に420mLのn−プロパノール溶液を添加し、液温が30℃になるまで放冷した。2層の液体をエバレートすることにより、DCE層を溜去し、n−プロパノール1層になったところ、分画分子量が3500の透析膜に入れ、透析膜の外液のpHが5.5になるまで蒸留水を入れ替えた。その後凍結乾燥を行うことでスルホン化クロス共重合体を得た。得られたスルホン化クロス共重合体の評価は表1に記載した。
【0098】
[実施例4]
スルホン化剤として0℃に冷却しながらDCE140gに無水酢酸を74g添加し、10分間撹拌した。続いて0℃に冷却、撹拌しつつ濃硫酸を47g添加した。20分後、室温まで温め、20分以上撹拌したものを用いた。合成例1のクロス共重合体50gをDCE1kgに溶解させ、30分間窒素バブリングを行った。クロス共重合体溶液が50℃になるように設定し、窒素パージを行いながら前述のスルホン化剤を滴下し、180分間反応させた。反応溶液に420mLのn−プロパノール溶液を添加し、液温が30℃になるまで放冷した。2層の液体をエバレートすることにより、DCE層を溜去し、n−プロパノール1層になったところ、分画分子量が3500の透析膜に入れ、透析膜の外液のpHが5.5になるまで蒸留水を入れ替えた。その後凍結乾燥を行うことでスルホン化クロス共重合体を得た。フィルム化後、電子線により架橋を行った。得られたスルホン化クロス共重合体の評価は表1に記載した。
【0099】
[実施例5]
スルホン化剤として0℃に冷却しながらDCE140gに無水酢酸を74g添加し、10分間撹拌した。続いて0℃に冷却、撹拌しつつ濃硫酸を47g添加した。20分後、室温まで温め、20分以上撹拌したものを用いた。合成例2のクロス共重合体50gをDCE1kgに溶解させ、30分間窒素バブリングを行った。クロス共重合体溶液が50℃になるように設定し、窒素パージを行いながら前述のスルホン化剤を滴下し、60分間反応させた。反応溶液に420mLのn−プロパノール溶液を添加し、液温が30℃になるまで放冷した。2層の液体をエバレートすることにより、DCE層を溜去し、n−プロパノール1層になったところ、分画分子量が3500の透析膜に入れ、透析膜の外液のpHが5.5になるまで蒸留水を入れ替えた。その後凍結乾燥を行うことでスルホン化クロス共重合体を得た。得られたスルホン化クロス共重合体の評価は表1に記載した。
【0100】
[実施例6]
スルホン化剤として0℃に冷却しながらDCE140gに無水酢酸を74g添加し、10分間撹拌した。続いて0℃に冷却、撹拌しつつ濃硫酸を47g添加した。20分後、室温まで温め、20分以上撹拌したものを用いた。合成例2のクロス共重合体50gをDCE1kgに溶解させ、30分間窒素バブリングを行った。クロス共重合体溶液が50℃になるように設定し、窒素パージを行いながら前述のスルホン化剤を滴下し、90分間反応させた。反応溶液に420mLのn−プロパノール溶液を添加し、液温が30℃になるまで放冷した。2層の液体をエバレートすることにより、DCE層を溜去し、n−プロパノール1層になったところ、分画分子量が3500の透析膜に入れ、透析膜の外液のpHが5.5になるまで蒸留水を入れ替えた。その後凍結乾燥を行うことでスルホン化クロス共重合体を得た。得られたスルホン化クロス共重合体の評価は表1に記載した。
【0101】
[比較例1]
スルホン化剤として0℃に冷却しながらDCE140gに無水酢酸を74g添加し、10分間撹拌した。続いて0℃に冷却、撹拌しつつ濃硫酸を47g添加した。20分後、室温まで温め、20分以上撹拌したものを用いた。合成例1のクロス共重合体50gをDCE1kgに溶解させ、30分間窒素バブリングを行った。クロス共重合体溶液が50℃になるように設定し、窒素パージを行いながら前述のスルホン化剤を滴下し、40分間反応させた。反応溶液に420mLのn−プロパノール溶液を添加し、液温が30℃になるまで放冷した。2層の液体をエバレートすることにより、DCE層を溜去し、n−プロパノール1層になったところ、分画分子量が3500の透析膜に入れ、透析膜の外液のpHが5.5になるまで蒸留水を入れ替えた。その後凍結乾燥を行うことでスルホン化クロス共重合体を得た。得られたスルホン化クロス共重合体の評価は表1に記載した。
【0102】
[比較例2]
スルホン化剤として0℃に冷却しながらDCE140gに無水酢酸を74g添加し、10分間撹拌した。続いて0℃に冷却、撹拌しつつ濃硫酸を47g添加した。20分後、室温まで温め、20分以上撹拌したものを用いた。合成例1のクロス共重合体50gをDCE1kgに溶解させ、30分間窒素バブリングを行った。クロス共重合体溶液が50℃になるように設定し、窒素パージを行いながら前述のスルホン化剤を滴下し、15分間反応させた。反応溶液に420mLのn−プロパノール溶液を添加し、液温が30℃になるまで放冷した。2層の液体をエバレートすることにより、DCE層を溜去し、n−プロパノール1層になったところ、分画分子量が3500の透析膜に入れ、透析膜の外液のpHが5.5になるまで蒸留水を入れ替えた。その後凍結乾燥を行うことでスルホン化クロス共重合体を得た。得られたスルホン化クロス共重合体の評価は表1に記載した。
【0103】
[比較例3]
スルホン化剤として0℃に冷却しながらDCE30gに無水酢酸を18g添加し、10分間撹拌した。続いて0℃に冷却、撹拌しつつ濃硫酸を10g添加した。20分後、室温まで温め、20分以上撹拌したものを用いた。合成例1のクロス共重合体50gをDCE1kgに溶解させ、30分間窒素バブリングを行った。クロス共重合体溶液が50℃になるように設定し、窒素パージを行いながら前述のスルホン化剤を滴下し、120分間反応させた。反応溶液に420mLのn−プロパノール溶液を添加し、液温が30℃になるまで放冷した。2層の液体をエバレートすることにより、DCE層を溜去し、n−プロパノール1層になったところ、分画分子量が3500の透析膜に入れ、透析膜の外液のpHが5.5になるまで蒸留水を入れ替えた。その後凍結乾燥を行うことでスルホン化クロス共重合体を得た。得られたスルホン化クロス共重合体の評価は表1に記載した。
【0104】
[比較例4]
スルホン化剤として0℃に冷却しながらDCE140gに無水酢酸を74g添加し、10分間撹拌した。続いて0℃に冷却、撹拌しつつ濃硫酸を47g添加した。20分後、室温まで温め、20分以上撹拌したものを用いた。合成例2のクロス共重合体50gをDCE1kgに溶解させ、30分間窒素バブリングを行った。クロス共重合体溶液が50℃になるように設定し、窒素パージを行いながら前述のスルホン化剤を滴下し、30分間反応させた。反応溶液に420mLのn−プロパノール溶液を添加し、液温が30℃になるまで放冷した。2層の液体をエバレートすることにより、DCE層を溜去し、n−プロパノール1層になったところ、分画分子量が3500の透析膜に入れ、透析膜の外液のpHが5.5になるまで蒸留水を入れ替えた。その後凍結乾燥を行うことでスルホン化クロス共重合体を得た。得られたスルホン化クロス共重合体の評価は表1に記載した。
【0105】
[比較例5]
スルホン化剤として0℃に冷却しながらDCE140gに無水酢酸を74g添加し、10分間撹拌した。続いて0℃に冷却、撹拌しつつ濃硫酸を47g添加した。20分後、室温まで温め、20分以上撹拌したものを用いた。合成例1のクロス共重合体50gをDCE1kgに溶解させ、30分間窒素バブリングを行った。クロス共重合体溶液が50℃になるように設定し、窒素パージを行いながら前述のスルホン化剤を滴下し、240分間反応させた。反応溶液に420mLのn−プロパノール溶液を添加し、液温が30℃になるまで放冷した。2層の液体をエバレートすることにより、DCE層を溜去し、n−プロパノール1層になったところ、分画分子量が3500の透析膜に入れ、透析膜の外液のpHが5.5になるまで蒸留水を入れ替えた。その後凍結乾燥を行うことでスルホン化クロス共重合体を得た。得られたスルホン化クロス共重合体の評価は表1に記載した。
【0106】
[比較例6]
スルホン化剤として0℃に冷却しながらDCE140gに無水酢酸を74g添加し、10分間撹拌した。続いて0℃に冷却、撹拌しつつ濃硫酸を94g添加した。20分後、室温まで温め、20分以上撹拌したものを用いた。合成例2のクロス共重合体50gをDCE1kgに溶解させ、30分間窒素バブリングを行った。クロス共重合体溶液が50℃になるように設定し、窒素パージを行いながら前述のスルホン化剤を滴下し、300分間反応させた。反応溶液に420mLのn−プロパノール溶液を添加し、液温が30℃になるまで放冷した。2層の液体をエバレートすることにより、DCE層を溜去し、n−プロパノール1層になったところ、分画分子量が3500の透析膜に入れ、透析膜の外液のpHが5.5になるまで蒸留水を入れ替えた。その後凍結乾燥を行うことでスルホン化クロス共重合体を得た。得られたスルホン化クロス共重合体の評価は表1に記載した。
【0107】
【表1】
【0108】
表1の結果から、本発明のスルホン化クロス共重合体(実施例1〜6)は、全スルホン化率が適量であるため、優れたイオン伝導度と優れた耐水性を示すことが分かる。側鎖スルホン化率も適量である場合(実施例1〜4)、更に優れたイオン伝導度を示すことが分かる。スルホン化率が小さい場合、イオン交換容量やイオン伝導率が小さく、イオン伝導度を示さない(比較例1〜4)。スルホン化率が大きい場合、耐水性が小さい(比較例5〜6)。