(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コードヒータと電源線との接続部およびコードヒータの先端部の双方またはいずれか一方の封止構造であって、封止すべき部分は本体部および蓋部からなる保護カバーで覆われており、前記保護カバーの内部には硬化前は流動性があり硬化後に固形化した非導電性樹脂材料が封入されており、
前記蓋部は、前記保護カバーの内面を構成する裏面を有し、
前記蓋部の前記裏面には、前記保護カバーの内側に突出し、前記接続部および前記先端部の双方またはいずれか一方を前記裏面から離間する方向に押圧する突条が設けられており、
前記接続部および前記先端部の双方またはいずれか一方と前記裏面との間には、前記非導電性樹脂材料が充填されており、
前記コードヒータは、一対の電線と、前記一対の電線の周囲を覆う可撓性を有する絶縁性樹脂からなる第1の絶縁外皮と、前記第1の絶縁外皮の周囲を覆う可撓性を有する絶縁性樹脂からなる第2の絶縁外皮と、を有し、
前記第1の絶縁外皮は、前記一対の電線の周囲をそれぞれ覆う一対の被覆部と、前記一対の被覆部同士を連結する連結部とを有するとともに、前記連結部においてくびれた形状に形成されており、
前記第1の絶縁外皮の前記連結部と前記第2の絶縁外皮との間には空間が形成されており、
前記保護カバーには、前記本体部および前記蓋部によって、前記コードヒータが挿通される挿通穴が形成されており、
前記本体部および前記蓋部の各々には、前記挿通穴の周縁部のうち前記第1の絶縁外皮の前記連結部に対向する部分に、前記空間に対応する形状の突部が前記挿通穴の内側に突出するように形成されており、
前記本体部の突部および前記蓋部の突部によって、前記連結部が挟み込まれていることを特徴とする封止構造。
コードヒータと電源線との接続部およびコードヒータの先端部の双方またはいずれか一方の封止方法であって、封止すべき部分に保護カバーの本体部を取り付ける工程、前記取り付けた本体部の内部に流動性があり経時的に硬化して固形化する性状を備えた非導電性樹脂材料を充填する工程、前記液状の非導電性樹脂材料を充填した後に前記本体部に前記保護カバーの蓋部を取り付ける工程、および、前記蓋部を取り付けた後に前記非導電性樹脂材料が硬化するのを待つ工程、を少なくとも備え、
前記蓋部は、前記保護カバーの内面を構成する裏面を有し、
前記蓋部の前記裏面には、前記保護カバーの内側に突出する突条が設けられており、
前記本体部に前記保護カバーの蓋部を取り付ける工程において、前記突条は前記接続部および前記先端部の双方またはいずれか一方を前記裏面から離間する方向に押圧し、前記接続部および前記先端部の双方またはいずれか一方と前記裏面との間には、前記非導電性樹脂材料が充填され、
前記コードヒータは、一対の電線と、前記一対の電線の周囲を覆う可撓性を有する絶縁性樹脂からなる第1の絶縁外皮と、前記第1の絶縁外皮の周囲を覆う可撓性を有する絶縁性樹脂からなる第2の絶縁外皮と、を有し、
前記第1の絶縁外皮は、前記一対の電線の周囲をそれぞれ覆う一対の被覆部と、前記一対の被覆部同士を連結する連結部とを有するとともに、前記連結部においてくびれた形状に形成されており、
前記第1の絶縁外皮の前記連結部と前記第2の絶縁外皮との間には空間が形成されており、
前記保護カバーには、前記本体部および前記蓋部によって、前記コードヒータが挿通される挿通穴が形成されており、
前記本体部および前記蓋部の各々には、前記挿通穴の周縁部のうち前記第1の絶縁外皮の前記連結部に対向する部分に、前記空間に対応する形状の突部が前記挿通穴の内側に突出するように形成されており、
前記本体部に前記保護カバーの蓋部を取り付ける工程において、前記本体部の突部および前記蓋部の突部によって、前記連結部が挟み込まれることを特徴とする封止方法。
コードヒータと電源線との接続部およびコードヒータの先端部の双方またはいずれか一方を封止するのに用いる封止用キットであって、封止すべき部分を覆うことのできる開閉自在な保護カバーと、前記保護カバーの内部に封入するための流動性があり経時的に硬化して固形化する性状を備えた非導電性樹脂材料とを少なくとも含み、
前記保護カバーは、本体部および蓋部からなり、
前記蓋部は、前記保護カバーの内面を構成する裏面を有し、
前記蓋部の前記裏面には、前記保護カバーの内側に突出し、前記蓋部を前記本体部に取り付ける際に前記接続部および前記先端部の双方またはいずれか一方を前記裏面から離間する方向に押圧する突条が設けられており、
前記コードヒータは、一対の電線と、前記一対の電線の周囲を覆う可撓性を有する絶縁性樹脂からなる第1の絶縁外皮と、前記第1の絶縁外皮の周囲を覆う可撓性を有する絶縁性樹脂からなる第2の絶縁外皮と、を有し、
前記第1の絶縁外皮は、前記一対の電線の周囲をそれぞれ覆う一対の被覆部と、前記一対の被覆部同士を連結する連結部とを有するとともに、前記連結部においてくびれた形状に形成されており、
前記第1の絶縁外皮の前記連結部と前記第2の絶縁外皮との間には空間が形成されており、
前記保護カバーには、前記本体部および前記蓋部によって、前記コードヒータが挿通される挿通穴が形成されており、
前記本体部および前記蓋部の各々には、前記挿通穴の周縁部のうち前記第1の絶縁外皮の前記連結部に対向する部分に、前記空間に対応する形状の突部が前記挿通穴の内側に突出するように形成されており、
前記本体部の突部および前記蓋部の突部は、前記蓋部を前記本体部に取り付ける際に前記連結部を挟み込むように設けられていることを特徴とする封止用キット。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、コードヒータとして、正温度係数(PTC)特性を備えた発熱体を備えたコード状の線状PTCヒータを例として説明するが、これは一例であって、コードヒータはこれに限らない。
【0014】
[コードヒータの一例である線状PTCヒータ20の説明]
最初に、本発明によるコードヒータの一例である線状PTCヒータ20の一例について説明する。
図1は、
図2に示す線状PTCヒータ20の発熱部10を説明するための斜視図であり、好ましくは銅単線のより線または編組線である第1の給電線11と第2の給電線12とを給電線として備え、第1の給電線11と第2の給電線12の間には複数の正温度係数特性を備えたチップ状の発熱体13が複数個、並列に接続されている。
【0015】
チップ状の発熱体13は、チタン酸バリウムに添加物を加えたセラミックスからなるものであってもよく、カーボンブラックのような導電体粉末を含む樹脂組成物からなるものであってもよい。後者の場合、導電体粉末としては、カーボンブラック、ニッケルなどの導電体粉末が挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラックおよびファーネスブラックで表面積が大きいもの、例えば、バルカンXC−72(キャポット社製品)、コンチネックスN330(カポット社製品)などが挙げられる。導電体粉末の平均粒径は40〜70μmであるか、それより大きな平均粒径のものあるいはそれより小さい平均粒径のものと混合したものでもよい。樹脂組成物とは、ポリマーとして一般に使用されている高分子材料であってよく、ポリエチレン、ポリエチレン共重合体、ポリエステル、フッ素樹脂、フッ素系ゴム、アクリルゴム、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。
【0016】
導電体粉末の樹脂組成物に対する添加量は、樹脂組成物100質量部に対して、15〜30質量部であることが好ましい。導電体粉末の添加量が少なすぎると抵抗値が大きくなりすぎて発熱しなくなる。逆に多くなりすぎると抵抗が低くなると同時に、抵抗値の温度依存性がなくなりPTC特性を示さなくなる。
【0017】
第1の給電線11および第2の給電線12とチップ状の発熱体13とは、両者を機械的および電気的に接続するための金属端子14によってかしめられて一体化している。チップ状の発熱体13の形状に制限はないが、この例では、幅がD、長さがL、厚みがHの直方体をなしており、一例として、幅D:8mm、長さL:6mm、厚みH:1.6mmの寸法である。可撓性を向上させるために、発熱体13での幅D/長さLの値Pが1または1以上であることが望ましい。金属端子14の素材としては、銅、リン青銅、鉄、鉄ニッケル合金、金、銀、アルミニウムなどを用いることができる。また、好ましくは、発熱体13と金属端子14との間には、導電ペースト15が塗布される。
【0018】
なお、隣接するチップ状の発熱体13、13間の距離は、所要の加熱環境が得られることを条件に任意であってよいが、通常は、30〜100mm程度の範囲である。また、隣接するチップ状の発熱体13、13の距離はすべて同じであってもよく、異なった間隔で配置されていてもよい。
【0019】
図1に示す発熱部10は、全体を絶縁性樹脂からなる第1の絶縁外皮16(
図2参照)で覆うことにより、線状PTCヒータ線17とされる。絶縁性樹脂としては、例として、電気絶縁性および可撓性を有する軟質塩化ビニル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、架橋ポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。さらに、線状PTCヒータ線17の全長に対して、例えばスズメッキ軟銅線のような金属の編組線による、アース線としても機能するシールド18が巻き付けられ、さらにその上に、好ましくは前記第1の絶縁外皮16と同じあるいは主成分が同じ絶縁性樹脂による第2の絶縁外皮19で覆うことで、絶縁外皮が2層構造とされた、
図2に示す線状PTCヒータ20とされる。線状PTCヒータ20は、例えば30〜3000m程度の長さに製造されて、図示しない巻き取りドラムなどに巻き取られて保管される。
【0020】
[線状PTCヒータ20と電源線30との接続]
線状PTCヒータ20は、使用に当たって、
図3に示すように、適宜の電源線30とその端部同士で接続される。通常、電源線30は、第1の給電線31と第2の給電線32とアース線33を有し、その全体が絶縁外皮34で被覆されている。線状PTCヒータ20と電源線30の接続に当たっては、双方の端部から絶縁外皮19、34を除去した後、第1の給電線11と31同士、第2の給電線12と32同士、アース線18と33同士を結線する。結線後の状態が
図4に示されており、結線には、圧着端子35が用いられ、その外側は収縮チューブ36によって被覆される。また、線状PTCヒータ20と電源線30との接続部には、発熱体13は存在しない。
【0021】
[線状PTCヒータ20の先端部の形状]
さらに、線状PTCヒータ20を現場で施工するに当たっては、ロール状に巻き込まれた線状PTCヒータ20が適宜の長さに切断され、その一方端には上記のように電源線30が接続され、他方端は、好ましくは、
図5に示すように、切断端面から10mm程度、第2の絶縁外皮19を除去した状態とされる。また、前記第2の絶縁外皮19を除去した領域には発熱体13が存在しないようにする。切断端面には、第1の給電線11および第2の給電線12の端面が露出している。
【0022】
[線状PTCヒータ20と電源線30との接続部の封止]
図4に示した状態にある線状PTCヒータ20と電源線30との接続部を水密状態に封止して、使用中に結線部間での絶縁破壊が生じないようにする必要がある。そのために、本発明では、接続部保護カバー40と、該接続部保護カバー40内に封入される、封入当初は流動性があり経時的に硬化して固形化する性状を備えた非導電性樹脂材料200を用いる。
【0023】
[接続部保護カバー40]
接続部保護カバー40は、
図6の斜視図に示すように、いずれも好ましくは熱可塑性樹脂の射出成形品である、本体部50と蓋部70とで構成される。
【0024】
[接続部保護カバー40の本体部50]
図6に斜視図を、
図7に4面図を示す本体部50は熱可塑性樹脂の成形品であり、その全体形状は、底板51を有し、上方を解放した箱型形状である。底板51の長手方向の両側辺からは左右の側壁52、52が立ち上がっており、底板51の短手方向の両側辺からは前側壁53aと後側壁53bが立ち上がっている。
【0025】
前側壁53aには、線状PTCヒータ20を収容するための凹陥部54が形成されており、該凹陥部54の横幅は線状PTCヒータ20の横幅にほぼ等しく、深さは線状PTCヒータ20の厚みにほぼ等しいか、厚みよりもわずかに大きい。前側壁53aは、そこから外側に突出する突出壁部55を有しており、前記凹陥部54は該突出壁部55にも連続している。凹陥部54の底面の中央部には突条56が形成されており、この突条56は、
図2に示す、線状PTCヒータ20の第2の絶縁外皮19と第1の絶縁外皮16との間に形成される空間(長手方向に凹部19a)の形状とほぼ同じ形状である。なお、突条56は省略することもできる。
【0026】
後側壁53bは、そこから外側に突出する突出壁部57を有しており、該突出壁部57の先端は垂直壁58で閉じられている。該垂直壁58の周凹部には、底面が半円状である凹陥溝59が形成されており、該凹陥溝59の横幅は前記した線状PTCヒータ20に接続する電源線30の直径にほぼ等しい。また、凹陥溝59の深さは、電源線30の直径にほぼ等しいか、直径よりもわずかに大きい。
【0027】
前記した左右の側壁52、52の天面、前側壁53aと後側壁53bの天面、突出壁部55の天面、突出壁部57の天面、および垂直壁58の天面は、面一とされており、該天面と前記底板51とはほぼ平行面となっている。
【0028】
前記底板51の横幅方向のほぼ中央部であって、好ましくは後側壁53bに偏位した位置には、適数本(図示のものでは4本)の支柱60が垂直方向に立設している。支柱60の高さは、側壁52の高さと等しいか、やや低い。支柱60は、後記するように、
図4に示した線状PTCヒータ20と電源線30との接続部における3本の結線を分離するためのものであり、したがって、支柱60の直径は、結線と結線との間に入り込めるような直径とされている。また、左右の側壁52、52の天面のやや下方における内面部には、長手方向での端部近傍に、4個の切り欠き部61が形成されている。
【0029】
[接続部保護カバー40の蓋部70]
図6に上から見た斜視図を、
図8に下から見た斜視図を、
図9に4面図を示す蓋部70は、前記した本体部50内に、
図4に示した線状PTCヒータ20と電源線30との接続部を収容した状態で、該本体部50の内部空間を実質的に封止できる形状であれば、任意の形状であってよい。
図6、
図8、
図9は、蓋部70の一例を示しており、この例では、蓋部70は基本的に平板状であり、その平面視での形状は、本体部50の開放側での外郭形状と一致する形状とされている。
【0030】
蓋部70の平板状の天板71は、前方側延出部72と後方側延出部73とを有し、前方側延出部72には、本体部50に形成した凹陥部54に対応する位置に、凹陥部54の横幅とほぼ同じ横幅である突出壁74が形成されている。突出壁74の厚みは、凹陥部54の厚みとほぼ等しい。そして、前記突出壁74には、線状PTCヒータ20の断面形状にほぼ等しい形状の凹部75が形成されており、該凹部75の底面の中央部には、本体部50の凹陥部54に形成した突条56と同じ形状の突条77が形成されている。
【0031】
蓋部70の後方側延出部73における、本体部50に形成した凹陥溝59に対応する位置には、該凹陥部59の横幅とほぼ同じ横幅の突出壁78が形成されている。突出壁78の厚みは、凹陥部59の厚みとほぼ等しい。そして、前記突出壁78には、前記電源線30の直径にほぼ等しいか、直径よりもわずかに大きい大きさの円弧溝79が形成されている。
【0032】
天板71の外周縁は、本体部50の壁部の厚みと等しい幅で、肉薄部80とされている。そして、本体部50の開放側を蓋部70で閉鎖したときに、本体部50の左右の側壁52、52に形成した4個の切り欠き部61に対応することとなる蓋部70の箇所には、前記肉薄部80の内周縁に外壁を一致させるようにして、4本の脚81が立設されている。脚81の外側面には、蓋を閉じたときに前記切り欠き部61内に入り込むことのできる凸部82が形成されている。また、天板71の裏面には、適宜の高さである適数本(図示のものでは3本)の突条83が形成されている。
【0033】
[線状PTCヒータ20と電源線30との接続部への本体部50の取り付け]
封止に当たっては、最初に、
図10に示すように、線状PTCヒータ20と電源線30との接続部を本体部50内に挿入する。その際に、線状PTCヒータ20側に本体部50の凹陥部54側が位置し、電源線30側に本体部50の凹陥溝59側が位置するように、両者を位置させる。また、本体部50の前記凹陥部54内に線状PTCヒータ20の第2の絶縁外皮19が位置できるように、また、凹陥溝59内に電源線30の絶縁外皮34が位置することができるように、また、前記のように、接続部には発熱体13が存在しないように、接続部の長さを設定する。
【0034】
挿入した状態では、図示のように、3本の結線は、本体部50の底面51に立設した適数本の支柱60によって、互いに密着しない状態で保持されるとともに、接続部の周囲には、空所62が残存している。
【0035】
[硬化前は流動性があり硬化後に固形化する非導電性樹脂材料200の充填]
図10に示す状態に線状PTCヒータ20と電源線30との接続部を本体部50内に挿入した後、本体部50の前記した空所62内に、硬化前は流動性があり硬化後に固形化する非導電性樹脂材料200を注入しながら充填する。このような物性を有する非導電性樹脂材料200としては、エポキシ系樹脂、シリコーンゴム、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等を例示することができる。2液型のものであってもよく、1液型のものであってもよい。空所62内に非導電性樹脂材料200を注入すると、それ自体が流動性を有することから、外部から力を加えることなく、前記空所62の隅々まで、非導電性樹脂材料200が自己の流動性によって行きわたり、本体部50の内部空間は非導電性樹脂材料200によってすべて充填される。
【0036】
[充填後の封止]
非導電性樹脂材料200を充填した後、本体部50の開放側に蓋部70を取り付ける。上記の例では、蓋部70は凸部82を有する脚81を有しており、本体部50は脚部81の凸部82が係合できる切り欠き部61を有しているので、蓋部70を本体部50の上から押し付けることで、両者は、
図11に示すように、ほぼ密閉された状態で一体化する。もし、そのような係止機能を備えない本体部50および蓋部70を用いる場合には、シャコ万のような固定具を用いて、本体部50と蓋部70を一体に保持する。また、蓋部70は、裏面に突条83を有しており、突条83により押し付けられることで、線状PTCヒータ20と電源線30およびその接続部が、蓋部70の裏面に密着するのも回避できる。
【0037】
その状態で、非導電性樹脂材料200が硬化(固化)するのを待つ。シャコ万などの固定具を用いる場合には、硬化後に固定具を取り外す。それにより、本発明によるコードヒータと電源線との接続部の封止構造は完成する。接続部での少なくとも結線部は、接続部保護カバー40の内面に接することなく、すべて硬化後に固形化した非導電性樹脂材料200によって包み込まれた状態で、封入されたものとなる。
【0038】
また、上記の実施の形態で示されるものでは、接続部保護カバー40の内部には、線状PTCヒータ20を構成する発熱体13は存在しない。そのために、発熱体13のON−OFFによる部品や材料の熱伸縮による影響が接続部保護カバー40の内部にまで及ぶのを確実に阻止することができる。それにより、接続部保護カバー40内部での絶縁性の低下を長期にわたり回避することが可能となる。
【0039】
一方、前記した特許文献1に例示される線状PTCヒータはPTC発熱体層がヒータの全長にわたって配置された形態であり、線状PTCヒータの端末部にも発熱体層が存在している。そのために、特許文献1に記載されるものでは、結果として、上下の端末保護カバー内にPTC発熱体層の一部が入り込むこととなり、ヒータのON−OFFによって、端末保護カバーおよびその内部の部品や材料に大きな熱伸縮が作用することになる。そのために、隙間が発生し絶縁性が低下する恐れがある。
【0040】
[線状PTCヒータ20の先端部の封止]
次に、線状PTCヒータ20の先端部の封止について説明する。
【0041】
[先端部保護カバー90]
先端部保護カバー90は、
図12の斜視図に示すように、いずれも好ましくは熱可塑性樹脂の射出成型品である、本体部100と蓋部110とで構成される。
【0042】
[先端部保護カバー90の本体部100]
本体部100は、
図13の3面図にも示すように、底板101と底板101の周囲から立ち上がる周囲壁102を有する。この例において、底板101の前方側は円弧状をなしており、後方側は方形をなしている。周囲壁102は、底板101の後方端の辺から立ち上がる後壁103と、他の周囲辺から立ち上がる周囲壁104とで構成される。
【0043】
後壁103には、線状PTCヒータ20の端部を収容するための凹陥部105が形成されており、該凹陥部105の横幅は線状PTCヒータ20の横幅にほぼ等しく、深さは線状PTCヒータ20の厚みにほぼ等しいか、厚みよりもわずかに大きい。後壁103は外側に突出する突出壁部106を有しており、前記凹陥部105は該突出壁部106にも連続している。凹陥部105の底面の中央部には突条107が形成されており、この突条107は、
図2に示す、線状PTCヒータ20の第2の絶縁外皮19と第1の絶縁外皮16との間に形成される空間(長手方向の凹部19a)の形状とほぼ同じ形状である。なお、突条107は省略することもできる。
【0044】
前記した周囲壁102と突出壁部106の天面の高さは等しく、該天面と前記底板101とはほぼ平行面となっている。また、周囲壁104の内面側の適所、図示の例では、後壁103に近い部分と、後壁103に対向する部分の3か所における天面のやや下方には、3個の切り欠き部108が形成されている。
【0045】
[先端部保護カバー90の蓋部110]
蓋部110は、前記した本体部100内に線状PTCヒータ20の先端部を収容した状態で、該本体部100の内部空間を実質的に封止できる形状であれば、任意の形状であってよい。
図14に下から見た斜視図を、また、
図15に3面図を示すように、この例では、蓋部110は基本的に平板状であり、その平面視での形状は、本体部100の開放側での外郭形状と一致する形状とされている。
【0046】
蓋部110の平板状の天板111は延出部112を有し、延出部112には、本体部100に形成した凹陥部105に対応する位置に、凹陥部105の横幅とほぼ同じ横幅である突出壁113が形成されている。突出壁113の厚みは、凹陥部105の厚みとほぼ等しい。そして、前記突出壁113には、線状PTCヒータ20の断面形状にほぼ等しい形状の凹部114が形成されており、該凹部114の底面の中央部には、本体部100の凹陥部105に形成した突条107と同じ形状の突条115が形成されている。
【0047】
天板111の外周縁は、本体部100の周囲壁102の厚みと等しい幅で、肉薄部116とされている。そして、本体部100の開放側を蓋部110で閉鎖したときに、本体部100の周囲壁102に形成した3個の切り欠き部108に対応することとなる蓋部110の箇所には、前記肉薄部116の内周縁に外壁を一致させるようにして、3本の脚117が立設されている。脚117の外側面には、蓋を閉じたときに前記切り欠き部108内に入り込むことのできる凸部118が形成されている。また、天板111の裏面には、適宜の高さである適数本(図示のものでは1本)の突条119が形成されている。
【0048】
[線状PTCヒータ20の端部への本体部100の取り付け]
線状PTCヒータ20の端部の封止に当たっては、最初に、
図5に示すように、線状PTCヒータ20の端部から所定の長さにわたり第2の絶縁外皮19を除去する。第2の絶縁外皮19を除去した状態の先端部を、
図16(a)に示すように、本体部100内に挿入する。その際に、本体部100の前記凹陥部105内に線状PTCヒータ20の第2の絶縁外皮19が位置できるように、また、本体部100の内部には発熱体13が位置しないように、第2の絶縁外皮19を除去する場所および距離を調整する。
図16(a)に示すように、挿入した状態で、線状PTCヒータ20の先端部と本体部100の周囲壁102の間には、空所120が残存している。
【0049】
[硬化前は流動性があり硬化後に固形化した非導電性樹脂材料200の充填]
図16(a)に示す状態に線状PTCヒータ20の先端部を本体部100内に挿入した後、本体部100の前記した空所120内に、硬化前は流動性があり硬化後に固形化した非導電性樹脂材料200を注入しながら充填する。このような物性を有する非導電性樹脂材料200としては、前記したように、エポキシ系樹脂、シリコーンゴム、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等を例示することができる。2液型のものであってもよく、1液型のものであってもよい。空所120内に非導電性樹脂材料200を注入すると、それ自体が流動性を有することから、外部から力を加えることなく、前記空所120の隅々まで、非導電性樹脂材料200が自己の流動性によって行きわたり、本体部100の内部空間は非導電性樹脂材料200によってすべて充填される。
【0050】
[充填後の封止]
非導電性樹脂材料200を充填した後、本体部100の開放側に蓋部110を取り付ける。上記の例では、蓋部110は凸部118を有する脚117を有しており、本体部100は脚部117の凸部118が係合できる切り欠き部108を有しているので、蓋部110を本体部100の上から押し付けることで、両者は、
図16(b)に示すように、ほぼ密閉された状態で一体化する。もし、そのような係止機能を備えない本体部100および蓋部110を用いる場合には、シャコ万のような固定具を用いて、本体部100と蓋部110を一定時間一体に保持する。また、蓋部110は、裏面に突条119を有しており、突条119により押し付けられることで、線状PTCヒータ20の先端部が、蓋部110の裏面に密着するのも回避できる。
【0051】
その状態で、非導電性樹脂材料200が硬化(固化)するのを待つ。シャコ万などの固定具を用いる場合には、硬化後に固定具を取り外す。それにより、本発明によるコードヒータの先端部の封止構造は完成する。線状PTCヒータ20の先端部は、先端部保護カバー90の内面に接することなく、すべて硬化後に固形化した非導電性樹脂材料200によって包み込まれた状態で、封入されたものとなる。
【0052】
また、先端部保護カバー90内には、発熱体13は存在しないので、発熱体13のON−OFFによる部品や材料の熱伸縮による影響が、先端部保護カバー90の内部にまで及ぶのを確実に阻止することができる。それにより、先端部保護カバー90内部での絶縁性の低下を長期にわたり回避することが可能となる。
【0053】
[封止用キット]
図17は、本発明による封止用キットの一例を示している。この封止用キット300では、前記した本体部50と蓋部70とからなる接続部保護カバー40と、本体部100と蓋部110とからなる先端部保護カバー90と、硬化前は流動性があり硬化後に固形化する非導電性樹脂材料200の一例である2液型非導電性樹脂材料のチューブ201と202とからなっている。使用現場の環境によっては、接続部保護カバー40と非導電性樹脂材料200とで封止用キットとしてもよく、先端部保護カバー90と非導電性樹脂材料200とで封止用キットとしてもよい。また、図示しないが、線状PTCヒータ20と電源線30とをキットに加えることもできる。
【0054】
このような、封止用キット300を用いることにより、施工現場において、その環境に応じた線状PTCヒータ20の配置および電源線30との接続を、施工現場で容易に行うことが可能となる。
【0055】
[封止構造の種々の実施の形態]
本発明による封止構造は、コードヒータと電源線との接続部とコードヒータの先端部の双方に同時に適用することもできる。また、コードヒータと電源線との接続部とコードヒータの先端部のいずれか一方にのみ適用することもできる。後者の場合には、本発明による封止構造を適用しない個所には、適宜の他の封止構造を適用することで、現場での施工が行われる。
【実施例】
【0056】
[実施例1]
(使用材料)
線状PTCヒータ20として、
図2に示した線状PTCヒータ20と同様な構成を備えたテープヒーター(積水化成品工業株式会社製)(発熱体:チタン酸バリウムに添加物を加えたセラミックス)を用いた。横幅18mm、厚み8mmであり、第1の絶縁外皮16と第2の絶縁外皮19は、共に耐熱性塩化ビニル樹脂である。また、電源線30として、直径が11mmである
図3に示した形状のビニルキャブタイヤケーブル(VCT)を用いた。絶縁外皮34は、線状PTCヒータ20の絶縁外皮と同じ耐熱性塩化ビニル樹脂である。
【0057】
線状PTCヒータ20の第1の絶縁外皮16と第2の絶縁外皮19、および電源線30の絶縁外皮34を、それぞれ端部から40mm除去した後、
図4に示すように、それぞれの給電線とアース線とを結線した。結線部には圧着端子35を固定し、その外側は収縮チューブ36によって被覆した。その結果、線状PTCヒータ20と電源線30とは、60mmである接続部でもって、互いに接続された。
【0058】
また、線状PTCヒータ20の他方端である切断された先端部から第2の絶縁外皮19を40mm除去した、
【0059】
(接続部保護カバー40と先端部保護カバー90)
図7および
図9に示した形状の接続部保護カバー40を、変成PPE(旭化成株式会社、ザイロン540Z)を用いて射出成形した。また、
図13および
図15に示す先端部保護カバー90を同じ材料を用いて射出成形した。
【0060】
(封止処理1)
線状PTCヒータ20と電源線30との接続部を接続部保護カバー40の本体部50内に挿入し、その空間部に2液型の非導電性樹脂材料200として、主材質がエポキシ樹脂である非導電性樹脂材料(セメダイン社製、ハイスーパー5)を、本体部50内に充填した。その後で蓋部70を本体部50の解放側に被せて密封状態に封止し、30分放置して樹脂を硬化させた。
【0061】
(封止処理2)
線状PTCヒータ2の切断した先端部を先端部保護カバー90の本体部100内に挿入し、その空間部に2液型の非導電性樹脂材料200として、主材質がエポキシ樹脂である非導電性樹脂材料(セメダイン社製、ハイスーパー5)を、本体部50内に充填した。その後で蓋部110を本体部100の解放側に被せて密封状態に封止し、30分放置して樹脂を硬化させた。
【0062】
[絶縁性、防水性のテスト]
電気特性(a.導通・短絡、b.絶縁抵抗、c.水中絶縁抵抗)を確認したところいずれも不都合は生じなかった。なお、電気特性のテストは、a.導通・短絡については、2本の給電線の間の抵抗を抵抗計で測定する方法で行い、b.絶縁抵抗については、給電線と編組線シールドの間の抵抗を500Vメガ抵抗計で測定する方法で行い、c.水中絶縁抵抗については、成形後の接続部が完全に水没した状態で水と編組線シールドの間の抵抗を500Vメガ抵抗計で測定する方法にて行った。
【0063】
そして、a.導通・短絡については、抵抗計の表示が零あるいは∞になる場合に、b.絶縁抵抗については、メガ抵抗計の表示が1MΩ未満になる場合に、c.水中絶縁抵抗については、メガ抵抗計の表示が0.3MΩ未満になるような現象が生じた場合に、不具合が生じたものとした。
【0064】
以上のことから、線状PTCヒータと電源線の接続部および線状PTCヒータの先端部に対して、本発明による封止構造を施すことにより、水の侵入に対する確実な封止接続構造が得られることを確認できた。
【0065】
[実施例2]
非導電性樹脂材料200として、シリコーンゴム(信越化学社製、KE−200)を用いた以外は、実施例1と同様にして線状PTCヒータ20と電源線30との接続部および線状PTCヒータ20の先端部に対する封止処理を行った。結果、実施例1と同様な電気特性の確認結果が得られた。