(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1〜3に記載の従来技術では、塗装ブース内にある塗装用ロボットの近傍に使用していない塗装ガンを待機させているため、待機している塗装ガンのメンテナンスを行うことができない。この場合、全ての塗装ガンを使い終わった後で、作業者が塗装ブース内に入って塗装ガンのメンテナンスを行う必要があるため、生産停止となる期間が生じてしまうという問題がある。しかも、作業者とともに塗装ブース内に侵入した埃が被塗物に付着することにより、被塗物の塗装品質が低下するという問題もある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被塗物の生産効率の向上及び塗装品質の向上を図ることができる塗装ブース及びそれを用いた塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、被塗物を塗装するための塗装用ロボットが塗装空間内に設置された塗装ブースであって、前記塗装用ロボットが備えるロボットアームの先端部に、前記被塗物に対して塗料を吹き付ける塗装ガンと、前記塗装ガンが先端に設けられたブラケットとを備える塗装ガンユニットが着脱可能に取り付けられ、前記塗装空間内には、複数の前記塗装ガンユニットが収容されており、前記
塗装ブースの内外を区
画する隔壁の
前記塗装ブース側に、複数の前記塗装ガンユニットのうち使用していない前記塗装ガンユニットを待機させる待機領域が複数箇所に設けられ、
前記塗装ブースの外側に、前記待機領域に待機している前記塗装ガンユニットの前記塗装ガンを収容して洗浄するための複数の洗浄箱が前記待機領域ごとに設けられ、前記洗浄箱が、側方に開口する開口部を有し、前記洗浄箱の内部領域が前記開口部を介して前記塗装ブース内に連通しており、前記
洗浄箱において、前記待機領域に待機している前記塗装ガンユニットの前記塗装ガン
の収容位置に対応する部分に、前記
洗浄箱の内外を遮断する扉が前記
洗浄箱ごとに設けられていることを特徴とする塗装ブースをその要旨とする。
【0008】
手段1に記載の発明によれば、塗装ブースの塗装空間を区画形成する隔壁の内面側に設けられた待機領域に、使用していない塗装ガンユニットを待機させている。このため、別の塗装ガンユニットを塗装用ロボットに取り付けた状態で被塗物の塗装を行っている間に、塗装ブースの外部にいる作業者が、待機領域の内外を遮断する扉を開くことにより、使用していない塗装ガンユニットのメンテナンスを行うことができる。つまり、全ての塗装ガンユニットを使い終わる前の段階で、塗装ガンユニットのメンテナンスを行うことができるため、生産停止となる期間が生じにくくなり、被塗物の生産効率が向上する。しかも、作業者は、塗装ブース内に入ることなく、塗装ブースの外部から扉を開くことにより、塗装ガンユニットのメンテナンスを行うことができる。ゆえに、作業者とともに塗装ブース内に侵入した埃が被塗物に付着するという問題が解消されるため、被塗物の塗装品質を向上させることができる。
【0009】
なお、待機領域には、扉を施錠するための施錠装置が設けられていることが好ましい。このようにした場合、施錠装置によって扉を施錠しておけば、色替えや洗浄の実施中に扉が開くことが防止されるため、塗料や溶剤が塗装ブースの外部に漏れるといった問題を解消することができる。
【0010】
また、塗装ガンユニットは、塗装ガンを塗装ブースの床部側に向けた状態で、待機領域に待機することが好ましい。このようにすれば、塗装ガンユニットを待機領域に待機させている際に、塗装ガンが塗装ガンユニットの最下部に位置するようになる。その結果、塗料や溶剤が塗装ガンからブラケット側に垂れることが回避されるため、塗装ガンユニットに付着する汚れを低減することができる。
【0011】
手段2に記載の発明は、上記手段1に記載の塗装ブースを用いた塗装方法であって、前記待機領域に待機している前記塗装ガンユニットのメンテナンス時に、それとは別の前記塗装ガンユニットを前記ロボットアームの先端部に取り付けた状態で、前記被塗物の塗装を行うことを特徴とする塗装方法をその要旨とする。
【0012】
手段2に記載の発明によれば、全ての塗装ガンユニットを使い終わる前の段階で、待機領域に待機している塗装ガンユニットのメンテナンスを行うことができるため、生産停止となる期間が生じにくくなり、被塗物の生産効率が向上する。しかも、作業者は、塗装ブース内に入ることなく、塗装ブースの外部から待機領域の内外を遮断する扉を開くことにより、塗装ガンユニットのメンテナンスを行うことができる。ゆえに、作業者とともに塗装ブース内に侵入した埃が被塗物に付着するという問題が解消されるため、被塗物の塗装品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上詳述したように、請求項1〜4に記載の発明によると、被塗物の生産効率の向上及び塗装品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
図1,
図2に示されるように、本実施形態の塗装設備10は、被塗物W1を塗装するために用いられるものである。塗装設備10には、被塗物W1を支持可能な枠体11を搬送するメインコンベア12が設置されている。なお、本実施形態の被塗物W1は、自動車用内装部品であるインストルメントパネルを構成する装飾パネルである。
【0017】
また、塗装設備10は、エアブローブース13、コンベア通路14、塗装ブース15及び調合室16を備えている。エアブローブース13内にはエアブロー装置17が設置されている。エアブロー装置17は、メインコンベア12によって搬送されてきた被塗物W1(枠体11)に付着しているごみを、エアによって吹き飛ばすためのものである。また、コンベア通路14の上流側部分には、枠体11に取り付けられたタグを読み取る読取装置18が設置されている。タグには、被塗物W1の搭載車種名、部品分類、塗料種、塗装ティーチNo. 、生産形態、工程経過時間、枠体使用回数などの情報が含まれている。なお、本実施形態では、RFID(オムロン株式会社製)を用いている。また、RFIDを用いる代わりに、QRコード(株式会社デンソーウェーブの登録商標)などの二次元コードやバーコードなどの一次元コードを用いてもよい。そして、コンベア通路14と塗装ブース15との境界部分には、移載機19が設置されている。移載機19は、読取装置18側から搬送されてきた枠体11をメインコンベア12から降ろして、塗装ブース15内のコンベア(ブースコンベア22)に載せるようになっている。また、移載機19は、枠体11をブースコンベア22から降ろして、メインコンベア12に戻すようになっている。
【0018】
図1,
図2に示されるように、塗装ブース15の塗装空間S1内には、枠体11(被塗物W1)を支持した状態のキャリア21を搬送する環状のブースコンベア22が設置されている。また、塗装空間S1内には、被塗物W1を塗装するための塗装用ロボット31が設置されている。塗装用ロボット31は、環状をなすブースコンベア22の内側領域に配置されており、本体部32と、本体部32から延びるロボットアーム33とを備えている。
【0019】
そして、
図1〜
図3に示されるように、ロボットアーム33の先端部には、塗装ガンユニット41が着脱可能に取り付けられている。塗装ガンユニット41は、塗装ガン42と、棒状をなすブラケット43とを備えている。本実施形態の塗装ガン42は、被塗物W1に対して塗料を吹き付けるための塗装機であり、ブラケット43の先端に取り付けられている。塗装ガン42は、ブラケット43に対して傾斜した状態に取り付けられており、ブラケット43の長さ方向を基準とした塗装ガン42の傾斜角度は、約45°に設定されている。なお、制御装置80(
図1参照)がロボットアーム33を駆動制御することにより、塗装ガン42から噴霧される塗料の吹付方向や吹付位置が変更される。その結果、被塗物W1の表面に塗膜が形成される。
【0020】
図3に示されるように、塗装ガン42は、ブラケット43の先端に取り付けられている。また、塗装ガン42には、複数のホース46が接続されており、調合室16に設置された塗料供給装置(図示略)からの塗料がホース46を介して供給されるようになっている。なお、塗装ガン42は、エアモータによって回転駆動されるベル型の回転霧化頭を備えるものであってもよい。
【0021】
また、ブラケット43は、金属材料(本実施形態ではアルミニウム)を用いて矩形筒状に形成されている。ブラケット43の内部には、塗装ガン42に接続される全てのホース46が収容されている。さらに、ブラケット43には、塗装用ロボット31用のチャック部47と、待機領域40a〜40d(
図1,
図2参照)用のチャック部48とが別々に設けられている。なお、チャック部47は、ロボットアーム33の先端部に設けられたロボットハンド(図示略)によって把持(挟持)されるようになっている。
【0022】
図1,
図2,
図4に示されるように、本実施形態の塗装ブース15では、塗装空間S1内に4つの塗装ガンユニット41が収容されている。各塗装ガンユニット41の塗装ガン42からは、それぞれ同色、または異なる色の塗料が噴霧されるようになっている。そして、塗装空間S1を区画形成する隔壁51(具体的には、塗装ブース15と調合室16とを区画する隔壁51)の内面側(塗装ブース15側)には、各塗装ガンユニット41のうち使用していない塗装ガンユニット41を待機させる待機領域40a,40b,40c,40dが4箇所に設けられている。
【0023】
また、調合室16には、待機領域40a〜40dにある塗装ガンユニット41のホース46を収容するための収容室52が4箇所に設けられるとともに、待機領域40a〜40dにある塗装ガンユニット41の塗装ガン42を収容して洗浄するための洗浄箱53が4箇所に設けられている。各収容室52は、隔壁51の上部に取り付けられ、塗装ブース15に連通している。一方、各洗浄箱53は、隔壁51の下部に取り付けられ、内部が塗装ブース15に連通している。よって、塗装ガンユニット41は、塗装ガン42を塗装ブース15の床部54側に向けた状態で、待機領域40a〜40dに待機するようになる。
【0024】
図1,
図2に示されるように、各収容室52は、待機領域40a〜40dの一部をそれぞれ構成するものであり、内部にエアシリンダ61a,61b,61c,61dをそれぞれ有している。エアシリンダ61a〜61dは、収容室52の奥行方向に沿って延びるレール部62を備えている。レール部62には、空気圧によってレール部62の延出方向に移動するスライダ63が設けられている。スライダ63は、ホース46の一部を保持するようになっている。そして、エアシリンダ61a〜61dは、塗装ガンユニット41の使用時に、ホース46を待機領域40a〜40dから引き出す引出位置にスライダ63を移動させる動作を行うようになっている。一方、エアシリンダ61a〜61dは、塗装ガンユニット41の非使用時に、ホース46を待機領域40a〜40dに引き込む引込位置にスライダ63を移動させる動作を行うようになっている。なお、本実施形態のエアシリンダ61a〜61dは、2位置のエアシリンダであり、制御装置80から出力される制御信号に基づいて、引出位置または引込位置に切り替えられる。
【0025】
図2,
図4に示されるように、各洗浄箱53には、塗装ガン42の色替えや洗浄を行うための洗浄室71と、洗浄室71の下側に設けられ、塗装ガン42が噴霧したシンナー(揮発性有機溶剤)を含む塗料を排出するための排出室72とが設けられている。なお、洗浄室71は、待機領域40a〜40dの一部を構成するものである。また、洗浄箱53の側壁の内面には、斜め下方に向かって延びる誘導板73が突設されている。誘導板73は、シンナーを含む塗料を排出室72側に導く機能を有している。さらに、洗浄箱53には、待機領域40a〜40d(洗浄室71)の内外を遮断する扉74が待機領域40a〜40dごとに設けられている。扉74は、待機領域40a〜40dに待機している塗装ガンユニット41の塗装ガン42に対応する部分に配置されている。また、扉74と洗浄箱53との隙間には、フッ素樹脂(例えばテフロン(登録商標))製のパッキン(図示略)が介在している。パッキンは、扉74の外周縁部に貼付されている。さらに、各洗浄箱53(待機領域40a〜40d)には、扉74を施錠するための施錠装置75が設けられている。また、洗浄箱53の底部には排出口76が配置されている。排出口76からは、シンナーを含んだ塗料が排出されるようになっている。その結果、シンナーを含んだ塗料が、調合室16に設置された塗料回収タンク77に回収される。
【0026】
なお、以下の制御は、塗装状況やコンベアを制御する盤(具体的には、
図1に示す制御装置80)によって行われる。制御装置80には、色替えや洗浄が実施されていることの表示や、扉74が開いていることの表示を行うランプ(図示略)が取り付けられている。本実施形態では、通常時(色替えの有無にかかわらず、異常がない場合)にランプが緑色に点灯し、扉74が開いている場合にランプが橙色及び緑色に交互点滅し、設備異常時(ガン交換にかかわらず、塗装設備10全体における異常時)にランプが赤色に点灯するようになっている。また、本実施形態では、扉74が開いている場合に洗浄や寸吹き(塗装ガン42までの塗料充填)を停止させる制御が行われる。特に、洗浄時に扉74を開いてしまった場合には、洗浄及び寸吹きを停止させる制御が行われるとともに、塗装用ロボット31による塗装ガンユニット41の交換を停止させる制御が行われる。
【0027】
次に、塗装設備10の電気的構成について説明する。
【0028】
図1に示されるように、塗装設備10は、設備全体を統括的に制御する制御装置80を備えている。制御装置80は、CPU81、メモリ82及び入出力ポート83等からなる周知のコンピュータにより構成されている。CPU81は、塗装用ロボット31、塗装ガン42及びエアシリンダ61a〜61dに電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。
【0029】
次に、塗装ブース15を用いた被塗物W1の塗装方法を説明する。
【0030】
まず、枠体11に未塗装状態の被塗物W1を取り付ける。そして、被塗物W1を取り付けた枠体11をメインコンベア12上に載置する。なお、メインコンベア12上に載置された枠体11は、メインコンベア12の下流側に移動して、エアブローブース13に搬入される。
【0031】
枠体11がエアブローブース13に到達すると、エアブロー装置17から被塗物W1に対してエアを噴出するエアブロー工程が行われる。その結果、被塗物W1に付着しているごみが、エアブロー装置17から噴出したエアによって吹き飛ばされる。その後、枠体11は、メインコンベア12の下流側に移動して、コンベア通路14に搬入される。
【0032】
枠体11がコンベア通路14に到達すると、読取装置18により、枠体11に取り付けられたタグが読み取られる。なお、読取装置18は、タグの情報を読取信号に変換し、制御装置80のCPU81に出力する。その後、枠体11は、メインコンベア12の下流側に移動する。
【0033】
そして、枠体11が移載機19に到達すると、移載機19は、枠体11をメインコンベア12から降ろして、塗装ブース15内のブースコンベア22にあるキャリア21上に載置する。その結果、被塗物W1が、枠体11に載置された状態で塗装ブース15に搬入される。なお、キャリア21は、ブースコンベア22に沿って塗装用ロボット31の周囲を移動する。
【0034】
そして、枠体11及びキャリア21が塗装位置A1(
図1参照)に到達すると、CPU81は、塗装用ロボット31に取り付けられている塗装ガンユニット41の塗装ガン42に駆動信号を出力し、塗装ガン42から枠体11上の被塗物W1に対して塗料を吹き付ける制御(塗装工程)を行う。その結果、被塗物W1の表面に塗膜が形成される。
【0035】
塗装工程の終了後、CPU81は、読取装置18から出力された読取信号に含まれている情報に基づいて、塗装ガンユニット41の交換が必要であるか否かを判定する。そして、塗装ガンユニット41の交換が必要であると判定された場合、CPU81は、塗装ガンユニット41を交換する制御を行う。ここで、現在使用中の塗装ガンユニット41を、
図1において最も左に位置する待機領域40aに待機させた後、
図1において左から3番目に位置する待機領域40cに待機している塗装ガンユニット41を用いて塗装を行う場合について説明する。
【0036】
図5に示されるように、まず、現在使用中の塗装ガンユニット41による塗装が完了すると、CPU81は、塗装ガンユニット41を待機領域40aに返却する制御を行う。詳述すると、CPU81は、塗装用ロボット31に駆動信号を出力し、ロボットアーム33を待機領域40a〜40d側(
図1では反時計回り方向)に回動させる制御を行う。その結果、ロボットアーム33の先端部に取り付けられている塗装ガン42が、塗装位置A1から待機領域40a側に移動する。それとともに、CPU81は、待機領域40aに位置するエアシリンダ61aに駆動信号を出力し、エアシリンダ61aのスライダ63を引出位置から引込位置に移動させる制御を行う。その結果、エアシリンダ61aによるホース46の引き込みが行われる。なお、CPU81は、ホース46の引っ掛かりを防止するために、ロボットアーム33を回動させる制御よりも、スライダ63を移動させる制御を先に行うことにより、ホース46を張り気味にする。そして、ホース46の引き込みが終了すると、CPU81は、ロボットアーム33を停止させる制御を行う。
【0037】
次に、CPU81は、塗装用ロボット31に取り付けられている塗装ガンユニット41を待機領域40aに受け渡す制御を行う。詳述すると、まず、CPU81は、待機領域40aの収容室52内に設置したチャック(図示略)に駆動信号を出力し、塗装ガンユニット41のチャック部48をチャックに挟持させる制御を行う。次に、CPU81は、塗装用ロボット31に駆動信号を出力し、ロボットハンドによる塗装ガンユニット41のチャック部47の挟持を解除させる制御を行う。この時点で、作業者は、待機領域40aを構成する洗浄室71の扉74を開くことにより、待機領域40aに待機している塗装ガンユニット41の塗装ガン42のメンテナンスを行うことが可能になる。
【0038】
次に、CPU81は、塗装用ロボット31に駆動信号を出力し、ロボットアーム33を待機領域40c側(
図1では時計回り方向)に回動させる制御を行う。その結果、ロボットアーム33の先端部に設けられたロボットハンドが、待機領域40a側から待機領域40c側に移動する。そして、CPU81は、待機領域40cに待機している塗装ガンユニット41を塗装用ロボット31に受け渡す制御を行う。詳述すると、まず、CPU81は、塗装用ロボット31に駆動信号を出力し、待機領域40cに待機している塗装ガンユニット41のチャック部47をロボットハンドによって挟持する制御を行う。次に、CPU81は、待機領域40cの収容室52内に設置したチャック(図示略)に駆動信号を出力し、チャックによるチャック部48の挟持を解除させる制御を行う。
【0039】
次に、CPU81は、塗装用ロボット31に駆動信号を出力し、ロボットアーム33を塗装位置A1側(
図1では時計回り方向)に回動させる制御を行う。その結果、ロボットアーム33の先端部に取り付けられている塗装ガン42が、待機領域40cから塗装位置A1側に移動する。それとともに、CPU81は、待機領域40cに位置するエアシリンダ61cに駆動信号を出力し、エアシリンダ61cのスライダ63を引込位置から引出位置に移動させる制御を行う。その結果、エアシリンダ61cによるホース46の引き出しが行われる。なお、CPU81は、ホース46の引っ掛かりを防止するために、スライダ63を移動させる制御よりも、ロボットアーム33を回動させる制御を先に行うことにより、ホース46を張り気味にする。そして、ホース46の引き出しが終了すると、CPU81は、ロボットアーム33を停止させる制御を行う。
【0040】
その後、次の枠体11が塗装位置A1に搬送されてくると、CPU81は、塗装用ロボット31に取り付けられている塗装ガンユニット41の塗装ガン42に駆動信号を出力し、塗装ガン42から枠体11上の被塗物W1に対して塗装を開始させる制御(塗装工程)を行う。即ち、待機領域40aに待機している塗装ガンユニット41のメンテナンス時において、それとは別の塗装ガンユニット41をロボットアーム33の先端部に取り付けた状態で、被塗物W1の塗装を行う。
【0041】
なお、塗装後の被塗物W1は、枠体11に載置された状態でブースコンベア22の下流側に移動する。そして、枠体11が移載機19に到達すると、移載機19は、枠体11をブースコンベア22のキャリア21から降ろして、メインコンベア12上に載置する。その後、枠体11は、メインコンベア12の下流側に移動し、塗装設備10から搬出される。
【0042】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0043】
(1)本実施形態の塗装設備10では、塗装ブース15の待機領域40a〜40dに使用していない塗装ガンユニット41を待機させている。このため、別の塗装ガンユニット41を塗装用ロボット31に取り付けた状態で被塗物W1の塗装を行っている間に、塗装ブース15の外部にいる作業者が、待機領域40a〜40dの内外を遮断する扉74を開くことにより、使用していない塗装ガンユニット41のメンテナンスを行うことができる。つまり、全ての塗装ガンユニット41を使い終わる前の段階で、塗装ガンユニット41のメンテナンスを行うことができるため、生産停止となる期間が生じにくくなり、被塗物W1の生産効率が向上する。しかも、作業者は、塗装ブース15内に入ることなく、塗装ブース15の外部から扉74を開くことにより、塗装ガンユニット41のメンテナンスを行うことができる。ゆえに、作業者とともに塗装ブース15内に侵入した埃が被塗物W1に付着するという問題が解消されるため、被塗物W1の塗装品質を向上させることができる。
【0044】
(2)本実施形態では、待機領域40a〜40dに、扉74を施錠するための施錠装置75が設けられているため、扉74を施錠しておけば、色替えや洗浄の実施中に扉74が開くことが防止される。しかも、扉74の外周縁部には、洗浄箱53との隙間を塞ぐためのパッキンが貼付されている。従って、塗料や溶剤が塗装ブース15の外部に漏れるといった問題を解消することができる。
【0045】
なお、本実施形態を以下のように変更してもよい。
【0046】
・上記実施形態の塗装ガンユニット41は、塗装ガン42を塗装ブース15の床部54側に向けた状態で、待機領域40a〜40dに待機していた。しかし、塗装ガンユニット41は、ブラケット43の基端側を床部54側に向けた状態で、待機領域40a〜40dに待機していてもよいし、床部54に寝かせた状態(ブラケット43の長さ方向と床部54の面方向とが平行に配置された状態)で、待機領域40a〜40dに待機していてもよい。
【0047】
・上記実施形態では、塗装空間S1内に4つの塗装ガンユニット41が収容され、塗装空間S1を区画形成する隔壁51の内面側に、4つの待機領域40a〜40dが設けられていた。しかし、塗装ガンユニット及び待機領域は、それぞれ5つ以上あってもよいし、2つ以上3つ以下であってもよい。
【0048】
・上記実施形態では、塗装用ロボット31、塗装ガン42、エアシリンダ61a〜61d、及び、待機領域40a〜40dの収容室52内に設置したチャックの制御を1つのCPU81で制御していたが、各制御を別々のCPUで行うように構成してもよい。
【0049】
・上記実施形態では、塗装ブース15において塗装される被塗物W1としてインストルメントパネル(装飾パネル)を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、コンソールボックスやアームレストなどの自動車用内装部品を被塗物としてもよいし、バンパーや空力付加物(スポイラー等)などの自動車用外装部品を被塗物としてもよい。また、被塗物は、必ずしも自動車用部品でなくてもよい。
【0050】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0051】
(1)上記手段1において、前記塗装ガンに、同塗装ガンに前記塗料を供給するホースが接続され、前記塗装ガンの使用時に、前記ホースを前記待機領域から引き出す動作を行う一方、前記塗装ガンの非使用時に、前記ホースを待機領域に引き込む動作を行う流体圧シリンダが設けられ、前記塗装用ロボット及び前記流体圧シリンダを制御する制御装置が設けられ、前記制御装置が、前記塗装用ロボットが備える前記ロボットアームを前記待機領域側に回動させて、前記塗装ガンを塗装位置から前記待機領域側に移動させる制御と、前記流体圧シリンダのスライダを引出位置から引込位置に移動させて、前記スライダに保持された前記ホースを引き込む制御とを行うことにより、前記塗装ガンユニットが前記待機領域に返却されることを特徴とする塗装ブース。
【0052】
(2)技術的思想(1)において、前記制御装置は、前記ロボットアームを前記塗装位置側に回動させて、前記塗装ガンを前記待機領域から前記塗装位置側に移動させる制御と、前記スライダを前記引込位置から前記引出位置に移動させて、前記ホースを引き出す制御とを行うことを特徴とする塗装ブース。