(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755104
(24)【登録日】2020年8月27日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】床材
(51)【国際特許分類】
E04F 15/04 20060101AFI20200907BHJP
【FI】
E04F15/04 C
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-43892(P2016-43892)
(22)【出願日】2016年3月7日
(65)【公開番号】特開2017-160619(P2017-160619A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213769
【氏名又は名称】朝日ウッドテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】福田 晶子
【審査官】
兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−226199(JP,A)
【文献】
特開2014−066126(JP,A)
【文献】
特開2002−349049(JP,A)
【文献】
特開2005−088245(JP,A)
【文献】
特開平07−026701(JP,A)
【文献】
特開2013−057183(JP,A)
【文献】
特開平06−280376(JP,A)
【文献】
特開2003−231176(JP,A)
【文献】
特開2009−241571(JP,A)
【文献】
特開平07−102746(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第104563442(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0036701(US,A1)
【文献】
特開2009−190311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00−15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ1.0〜3.0mmの化粧層と、
前記化粧層の裏面に貼り付けられた、前記化粧層の木目方向に垂直な木目を備え、
厚さ1.0〜3.0mmであるクロス単板層と、
前記クロス単板層の裏面に貼り付けられた、厚さ8〜10mmの木質ボード層とを備え、
前記木質ボード層が、パーティクルボードまたは木質繊維板からなり、
前記クロス単板層が、ラワン、ファルカータ、ユーカリ、カメレレ、ゴム、スギまたはカラマツからなり、
前記木質ボード層の裏面に貼り付けられた、
厚さ0.01〜0.1mmの防湿シート層を備え、
前記防湿シート層が、水蒸気透過度5g/m2・d以下であり、
下記(1)〜(6)の測定方法によって求められた寸法変化率MC
1およびMC
2が、いずれも0.038以下である、床材。
(1)各床材から300mm×50mmにカットした試験片を用意する。このとき、測定する方向(長さ方向の反りを測定する場合には長さ方向、巾方向の反りを測定する場合には巾方向)を300mmとする。
(2)次に、各試験片を温度20℃、湿度65%の環境に質量が一定になるまで放置し、調湿する(含水率8〜12%程度)。
(3)調湿直後の試験片の寸法S
0と質量M
0を測定する。
(4)各試験片を乾燥試験(温度40℃、湿度30%の環境に1週間放置する試験)および吸湿試験(温度30℃、湿度90%の環境に1週間放置する試験)に供して、乾燥試験後の試験片の寸法S
1と質量M
1、および、吸湿試験後の試験片の寸法S
2と質量M
2を測定する。
(5)乾燥試験後の試験片について、寸法S
1と質量M
1を測定した後の試験片を105℃に維持したオーブンに24時間放置し、全乾状態の試験片の質量M
3を測定する。また、
吸湿試験後の試験片について、寸法S
2と質量M
2を測定した後の試験片を105℃に維持したオーブンに24時間放置し、全乾状態の試験片の質量M
3を測定する。
(6)下記の計算式に基づいて、各方向における乾燥試験での寸法変化率MC
1および
吸湿試験での寸法変化率MC
2を求める。
【請求項2】
前記化粧層が、挽き板からなる、請求項1に記載の床材。
【請求項3】
前記化粧層の厚さt0(mm)とするとき、前記クロス単板層の厚さt1が、t0−0.3〜t0+0.3(mm)である、請求項1または2に記載の床材。
【請求項4】
前記化粧層と前記クロス単板層との接着層、および、前記クロス単板層と前記木質ボード層との接着層が、変性酢酸ビニル接着剤で構成される、請求項1から3までのいずれかに記載の床材。
【請求項5】
前記木質ボード層が、パーティクルボードからなる、請求項1から4までのいずれかに記載の床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建住宅、マンションその他の建築物に用いられるフローリングには、無垢の木材からなる無垢床材のほか、合板、MDF、パーティクルボードなどからなる木質基材の表面、または、これらの木質基材を積層してなる木質基材(以下、積層してなる木質基材も単に「木質基材」と呼ぶ。)の表面に銘木の化粧材を貼り付けた化粧貼床材などがある。
【0003】
化粧貼床材は、無垢材よりも水分に起因する膨張・収縮が少ない基材を用いており、表面には各種の塗装が施され内部への水分の侵入を防止しているため、施工後の使用環境において反りが少なく扱いが容易であるなどの理由から、多くの建築現場で用いられるようになってきている。
【0004】
化粧貼床材に用いられる木質化粧材は、厚さ0.2〜0.6mm程度の薄板と、厚さ0.7〜3.0mm程度の厚板とに大別される。薄板は、複数の木材ブロックを組み合わせ接着したものをスライサーで切削して製造される。このような製法で製造された板は突き板と呼ばれる。これに対して、厚板としては、突き板の場合もあるが、1.0mm以上の比較的厚いものは木材を帯鋸などで切り出して製造されることが多い。このような製法で製造された板は挽き板と呼ばれる。
【0005】
前記の木質基材のうち、パーティクルボードは、木材の小片を接着剤と混合し、熱圧成型した木質ボードの一種である。原料として、建築端材や解体廃材などを用いるため、低価格で、安定的に供給される点で、様々な用途で用いられている。しかし、合板に比較して、吸湿時または放湿時の寸法変動が大きい。
【0006】
特開2009−190311号公報(特許文献1)には、パーティクルボードの表裏面に単板を貼着し、裏面に貼着する単板の厚さを表面に貼着する単板の厚さよりも大きくした木質複合床材が開示されている。この発明によれば、寸法安定性に優れた木質複合床材が得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−190311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の実施例では、厚さ9mmのパーティクルボードの表面に厚さ0.8mmの単板、裏面に厚さ2.2mmの単板を貼り付けた木質基材の表面に化粧材として突板を貼り付けたものを例示している。ここで、特許文献1には、化粧材の厚さについて説明がないが、化粧材が突板であることからして、その厚さは0.6mm以下の薄板であると考えられる。また、パーティクルボードの表裏面に貼り付ける単板の木目の向きについて特に説明がないため、単板の木目の方向は化粧材のそれと同じであると考えられる。
【0009】
特許文献1に記載されるように、化粧材が薄板であれば、化粧材の膨張・収縮が木質基材に与える影響が小さいが、1.0mm以上の厚板を用いた化粧材の場合、その膨張・収縮によって木質基材の巾方向の寸法変化が大きくなる。しかし、木目の方向が化粧材のそれと同じである単板を化粧材とパーティクルボードとの間に介在させても、1.0mm以上の厚板を用いた化粧材の膨張・収縮による巾方向の寸法変化を抑止することは困難である。
【0010】
本発明は、従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、1.0mm以上の厚板を用いた化粧材および木質ボード基材を備える床材の巾方向の寸法変化に起因するスキ、巾反りおよびねじれの発生を抑止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記の発明を要旨とする。
【0012】
(1)厚さ1.0mm以上の化粧層と、前記化粧層の裏面に貼り付けられた、前記化粧材の木目方向に垂直な木目を備え、厚さが1.0mm以上であるクロス単板層と、前記クロス単板層の裏面に貼り付けられた、木質ボード層とを備える、床材。
【0013】
(2)さらに、前記木質ボード層の裏面に貼り付けられた、防湿シート層を備える、上記(1)の床材。
【0014】
(3)前記化粧層の厚さt
0(mm)とするとき、前記クロス単板層の厚さt
1が、t
0−0.3〜t
0+0.3(mm)である、上記(1)または(2)の床材。
【0015】
(4)前記化粧層と前記クロス単板層との接着層、および、前記クロス単板層と前記木質ボード層との接着層が、変性酢酸ビニル接着剤で構成される、上記(1)〜(3)のいずれかの床材。
【0016】
(5)前記木質ボード層が、パーティクルボードからなる、上記(1)〜(4)のいずれかの床材。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、1.0mm以上の厚板を用いた化粧材を備える床材の巾方向の寸法変化に起因するスキ、巾反りおよびねじれの発生を抑止することを抑止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を用いて、本実施形態に係る床材およびその製造方法を説明する。
【0020】
1.本実施形態に係る床材
図1に示すように、本実施形態に係る床材10は、厚さ1.0mm以上の化粧層1と、化粧層1の裏面に貼り付けられた、化粧層1の木目方向(床材長手方向)に垂直な木目を備え、厚さが1.0mm以上であるクロス単板層2と、クロス単板層2の裏面に貼り付けられた、木質ボード層3とを備える床材である。本実施形態に係る床材10は、さらに木質基材3の裏面に貼り付けられた、防湿シート層4を備えるものであってもよい。
【0021】
本実施形態に係る化粧層1は、突板、挽板等の木材を加工したものを用いることができる。化粧層1が薄すぎると、意匠性が悪くなり、また、クロス単板層2の映出が懸念されるので、化粧層1の厚さは1.0mm以上のものを用いる。しかし、化粧層1が厚いほど、コストを上昇させ、また、反りなどの寸法変化が大きくなり扱いにくくなるため、化粧層1の厚さは8.0mm以下とするのが好ましい。より好ましくは、5.0mm以下、更に好ましいのは3.0mm以下である。
【0022】
本実施形態に係るクロス単板層2は、例えば、ラワン、ファルカータ、ユーカリ、カメレレ、ゴム、スギ、カラマツなどの単板を用いることができる。単板層2が薄すぎると、化粧層1に起因する床材巾方向の寸法変化を防止するのが困難となるため、その厚さは、1.0mm以上とする。一方、厚すぎると、クロス単板層2自体に起因する床材長さ方向の寸法変化を防止するのが困難となることがあるため、クロス単板層2の厚さは8.0mm以下とするのが好ましい。より好ましくは、5.0mm以下、更に好ましいのは3.0mm以下である。
【0023】
クロス単板層2の厚さは、化粧層1の厚さとの関係で決定することが好ましく、特に、化粧層1の厚さt
0(mm)とするとき、クロス単板層2の厚さt
1が、t
0−0.3〜t
0+0.3(mm)とすることが好ましい。クロス単板層2の厚さt
1が、t
0−0.3(mm)未満では、化粧層1に起因する床材巾方向の寸法変化を防止できず、クロス単板層2の厚さt
1が、t
0+0.3(mm)を超えると、クロス単板層2に起因する床材長さ方向の寸法変化を防止できないことがある。クロス単板層2の厚さt
1が、t
0−0.2〜t
0+0.2(mm)とすることがより好ましく、t
0−0.1〜t
0+0.1(mm)とすることが更に好ましい。
【0024】
本実施形態に係る木質ボード層3は、例えば、MDF、ハードボード、インシュレーションボードなどの木質繊維板、パーティクルボード、OSBなどの木質ボードを用いることができる。木質ボード層の厚さは、2.5〜15.0mmとするのが好ましい。好ましい下限は8.0mmであり、好ましい上限は10.0mmである。
【0025】
本実施形態に係る防湿シート層4は、例えば、PETフィルムやポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)を用いることができる。また、上記以外の防湿層として紙、紙とポリエチレンを複合したポリサンド紙を用いることができる。防湿シート層4は、JIS K 7129Bにおいて、例えば、水蒸気透過度が5g/m
2・d以下であり、好ましくは4g/m
2・d以下である。防湿シート層4は、木質ボード層3の裏面側から水分が浸入するのを効果的に抑制することができる。防湿シート層4は、接着剤以外の固定部材によって木質ボード層3に固定されていてもよい。防湿シート層4の厚さは、0.01〜0.1mmであることが好ましい。0.01mm未満では防湿性能が不十分となるおそれがあり、0.1mmを超えてもコストを上昇させるだけである。
【0026】
化粧層1とクロス単板層2との接着層(図示省略)、および、クロス単板層2と木質ボード層3との接着層(図示省略)は、変性酢酸ビニル接着剤、ユリア・メラミン樹脂接着剤で構成されていることが好ましい。また、ホルムアルデヒドを放散しない変性酢酸ビニル接着剤で構成されていることがより好ましい。
【0027】
本実施形態に係る床材10は、その厚さが、5.0〜25.0mmとするのが好ましい。好ましい下限は10.0mmであり、好ましい上限は15.0mmである。
【0028】
2.本実施形態に係る床材の製造方法
本発明の床材10の製造方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、木質ボード上にクロス単板を貼り付けた後、クロス単板上に化粧材を貼り付けることにより製造することができる。防湿シート層4を備える床材の場合、予め防湿シートを貼り付けた木質ボードを用いればよい。
【実施例】
【0029】
実施例1として、変性酢酸ビニル接着剤を用いて、厚さ9.0mmのパーティクルボード上に厚さ1.5mmのクロス単板を貼り付け(プレス条件:130℃、140秒)、その後に、同じ条件でクロス単板上に化粧材を貼り付けた床材を用意した。なお、パーティクルボードとして、変性酢酸ビニル接着剤を用いて、その裏面に、防湿層として厚さ0.01mmの防湿シート(ポリエチレンシート)を貼り付けたものを用いた。
【0030】
比較例1として、変性酢酸ビニル接着剤を用いて、厚さ9.0mmのパーティクルボードの表裏面に厚さ1.5mmの平行単板を貼り付け(プレス条件:130℃、140秒)、その後に、同じ条件で、平行単板上に化粧材を貼り付けた床材を用意した。なお、平行単板とは、化粧材の木目方向に平行な木目を備える単板である。
【0031】
従来例(比較例2)として、変性酢酸ビニル接着剤を用いて、厚さ10.0mmの合板の表面に厚さ2.0mmの化粧材を貼り付け(プレス条件:130℃、180秒)た床材を用意した。
【0032】
得られた各床材について、下記の方法により各方向における寸法変化率を測定し、その結果を表1に示す。
【0033】
<寸法変化率測定方法>
(1)各床材から300mm×50mmにカットした試験片を用意する。このとき、測定する方向(長さ方向の反りを測定する場合には長さ方向、巾方向の反りを測定する場合には巾方向)を300mmとする。
(2)次に、各試験片を温度20℃、湿度65%の環境に質量が一定になるまで放置し、調湿する(含水率8〜12%程度)。
(3)調湿直後の試験片の寸法S
0と質量M
0を測定する。
(4)各試験片を乾燥試験(温度40℃、湿度30%の環境に1週間放置する試験)および吸湿試験(温度30℃、湿度90%の環境に1週間放置する試験)に供して、乾燥試験後の試験片の寸法S
1と質量M
1、および、吸湿試験後の試験片の寸法S
2と質量M
2を測定する。
(5)乾燥試験後の試験片について、寸法S
1と質量M
1を測定した後の試験片を105℃に維持したオーブンに24時間放置し、全乾状態の試験片の質量M
3を測定する。また、
吸湿試験後の試験片について、寸法S
2と質量M
2を測定した後の試験片を105℃に維持したオーブンに24時間放置し、全乾状態の試験片の質量M
3を測定する。
(6)下記の計算式に基づいて、各方向における乾燥試験での寸法変化率MC
1および
吸湿試験での寸法変化率MC
2を求める。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示すように、化粧層と木質ボード層との間にクロス単板層を備える本発明例1は、乾燥、吸湿のいずれの条件においても巾方向の寸法変化率が小さい。また、長さ方向と巾方向の寸法変化率に差がないので、ねじれが発生しない。その結果、木質ボード層として合板を用いた場合(従来例2)と、寸法変化では若干の差異があったが、ねじれについては遜色がない結果となった。これに対して、比較例1では、表裏面に単板層を備えるが、巾方向の寸法変化率が大きくなった。また、長さ方向と巾方向の寸法変化率が大きく異なっており、ねじれが生じやすい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、1.0mm以上の厚板を用いた化粧材を備える床材の巾方向の寸法変化に起因するスキ、巾反りおよびねじれの発生を抑止することを抑止することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 化粧層
2 クロス単板層
3 木質ボード層
4 防湿シート層
10 本実施形態に係る床材