特許第6755135号(P6755135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6755135高密着強度ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755135
(24)【登録日】2020年8月27日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】高密着強度ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 1/08 20060101AFI20200907BHJP
   B32B 15/092 20060101ALI20200907BHJP
   B32B 37/08 20060101ALI20200907BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20200907BHJP
   B32B 15/085 20060101ALI20200907BHJP
   F16L 9/14 20060101ALI20200907BHJP
   F16L 58/10 20060101ALI20200907BHJP
   B29C 63/02 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   B32B1/08 A
   B32B15/092
   B32B37/08
   B32B15/08 N
   B32B15/085 Z
   F16L9/14
   F16L58/10
   B29C63/02
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-130316(P2016-130316)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-1549(P2018-1549A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227261
【氏名又は名称】日鉄防食株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 将人
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 信樹
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 義洋
(72)【発明者】
【氏名】相賀 武英
(72)【発明者】
【氏名】浜辺 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】友部 弥
(72)【発明者】
【氏名】後藤 洋介
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−156268(JP,A)
【文献】 特開昭56−010422(JP,A)
【文献】 特開2005−161612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/0−43/00
B29C 63/02
F16L 9/14
F16L 58/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予熱された鋼管表面にエポキシ樹脂プライマー層、変性ポリオレフィン層、ポリオレフィン層を順次積層していく鋼管の外面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法において、最外層のポリオレフィン層を形成後、ポリオレフィン被覆鋼管の外面及び内面から水冷を行い、その水冷によって変性ポリオレフィン層の冷却速度を、当該変性ポリオレフィン樹脂の結晶化温度(Tc)±20℃の範囲において10℃/min以上とし、前記変性ポリオレフィン層の樹脂は、ポリオレフィン樹脂に極性成分を有する有機酸または酸無水物で共重合変性させたものであることを特徴とする高密着強度ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプラインや土木用途等に使用される表面処理層、プライマー層、変性ポリオレフィン樹脂層、ポリオレフィン樹脂層から構成されるポリオレフィン被覆において、高密着強度ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン被覆鋼材は、長期の防食性が優れていることから、鋼管、鋼管杭、鋼矢板等に利用されている。また、海底、極寒冷地、熱帯での使用を前提とした原油、重質油、天然ガスを輸送するパイプラインにも、ポリオレフィン被覆鋼管が使われている。
【0003】
ポリオレフィン被覆鋼管は、鋼材もしくはその上層のプライマー層と通常は接着することのない無極性のポリオレフィン樹脂とを積層させた鋼管である。この密着を実現させるために両材質と相性の良い材料として変性ポリオレフィン樹脂を中間に挿入する。変性ポリオレフィン樹脂は、その下層である鋼材もしくはプライマー層とは変性部に有する極性基との化学結合で、その上層であるポリオレフィン樹脂層とは樹脂同士の相溶により密着力を確保する。樹脂の相溶性は樹脂中の非晶部の絡み合いが主であり、樹脂の結晶化と関連がある。
【0004】
ポリオレフィン樹脂の結晶化は結晶化温度(Tc)を境に発生するため、この付近の冷却が大きく影響する。冷却速度が遅すぎると樹脂の結晶化が進み、非晶部成分が減少するため変性ポリオレフィン樹脂とポリオレフィン樹脂間の相溶性が不十分となり、密着力が低下し容易に剥離する。
【0005】
対してプライマー層と変性ポリオレフィン樹脂間は化学結合が主であるため、層間密着力は樹脂の結晶化とは無関係であり、冷却速度との相関はない。
【0006】
ポリオレフィン被覆鋼管の製造工程において、変性ポリオレフィンの結晶化に大きく影響するのは被覆後の冷却工程である。多くの場合、鋼管に対して冷却水をかけ流す方式が適用されている。特許文献1では、ポリオレフィンの被覆後に水の微粒子を連続的に噴霧しながら圧縮空気を吹き付けて被覆表面に被着した水滴を吹き飛ばすことで速やかな表面温度の低下を実現している。しかしこの方法では鋼管内部が充分に冷えないため、復熱による被覆温度の再上昇が起こり、変性ポリオレフィンの冷却速度は急激に減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−291398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポリオレフィン被覆鋼管の製造時に、鋼管の口径や板厚の違い等によってポリオレフィン被覆の密着力が変動する問題が散見されたが、従来はその原因が分からず安定した密着力を有する鋼管被覆を得ることが課題となっている。
そこで、本発明の目的は樹脂の結晶化を制御することで高密着力を実現した高密着強度ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは変性ポリオレフィン樹脂層の冷却速度に着目した。
本発明者らは鋭意検討の結果、冷却工程時のTc±20℃の温度範囲における冷却速度が10℃/min以上であれば高密着力を発揮するポリオレフィン被覆鋼管が得られることを見出した。冷却速度が10℃/min未満では樹脂中の非晶部成分が減少し、変性ポリオレフィン樹脂層とポリオレフィン樹脂層の界面近傍の密着力が低下し易くなる。
【0010】
上記冷却速度を実現させる方法として冷却方法に着目した。上記記載に明らかなように、密着力は中間層である変性ポリオレフィン樹脂層の冷却速度による部分が大きいが、上層のポリオレフィン樹脂層は通常2〜3mmと厚く、上層からの冷却のみでは中間層の変性ポリエチレン樹脂層は十分に冷却されない。
そこで、本発明者らは冷却工程において最上層のポリオレフィン樹脂層表面のみからだけでなく、鋼管内面にも水を通すことで冷却速度の上昇と復熱の防止が可能となることを見出した。
すなわち本発明によって適切に変性ポリオレフィン樹脂層の冷却速度をコントロールすることで高密着強度を有するポリオレフィン被覆鋼管を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように、高密着強度を有するポリオレフィン被覆鋼管を得ることができる。これによりラインパイプの長期供用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のポリオレフィン被覆鋼管の被膜構成断面図である。
図2】ポリオレフィン被覆鋼管の冷却時の温度変化の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき詳細に説明を行なう。図1は、本発明の一つの実施態様を示すポリオレフィン被覆鋼管の被覆構成断面図である。
【0014】
本発明に使用する鋼材としては普通鋼あるいは高合金鋼など、どのような鋼種でも適用可能である。なお、従来重防食被覆が適用されていた鋼管、また、海洋構造物等で使用される鋼管杭、鋼管矢板等にも適用可能である。
まず鋼管をブラスト処理し、スケールを除去する。ブラストの方法としてはサンドブラスト処理、グリッドブラスト処理、あるいはショットブラスト処理等のいずれかの処理を用いる。鋼材1は、プライマー層3を形成する前に、下地処理として表面処理層2を形成させると、より優れた防食性が得られるため望ましい。表面処理の例としてはクロメート処理、リン酸処理等が挙げられる。
【0015】
プライマー層3には耐熱性に優れ、高温環境でも高い防食性を発揮する粉体エポキシ樹脂プライマーを使用するのが好ましい。
粉体エポキシ樹脂プライマーの塗布前に鋼材を加熱する必要がある。加熱温度範囲は160〜260℃である。160℃未満では粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化反応が不十分となり、プライマー層3自体の破壊が起きる可能性がある。加熱温度が260℃を超える場合は、形成されたプライマー層3の劣化が始まり密着性、防食性が低下する。鋼材の加熱方法は高周波誘導加熱、遠赤外加熱、ガス直火加熱などの方式を適用することができる。
【0016】
プライマー層3に使用する材料の成分としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等を単独、もしくは混合して使用する。更に高温特性が要求される場合、多官能性のフェノールノボラック型エポキシ樹脂やハロゲン化樹脂を上記のビスフェノールA型エポキシ樹脂あるいは、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と組み合わせて用いることが出来る。エポキシ樹脂硬化剤はジシアンアミド系、芳香族ポリアミン系、フェノール系硬化剤等が使用でき、中でもフェノール系硬化剤が好ましい。フェノール系硬化剤を用いることで低温衝撃性に優れた塗膜が得られる。また、硬化促進剤、レベリング剤、流動化助剤、脱気剤等の添加剤や助剤を含有してもよい。
なお、粉体エポキシ樹脂プライマーのガラス転移温度(Tg)は80℃以上、好ましくは100℃以上である。Tgが80℃より低いとパイプラインの操業温度が高温である時に耐食性が低下する。
【0017】
粉体エポキシ樹脂プライマーは静電粉体塗装や流動浸漬塗装等の一般的な粉体塗装方法で塗布することができる。膜厚は50〜1000μmの範囲で塗布する。膜厚が50μmより薄い場合にはピンホールが多数発生する。一方、1000μmを超える厚膜塗装では低温での耐衝撃性等の特性が低下しやすい。
【0018】
変性ポリオレフィン層4に使用する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の公知のポリオレフィン樹脂をベースとし酸無水物でグラフト変性したもの、または公知のポリオレフィン樹脂に、極性成分を有する有機酸、酸無水物で共重合変性させたもの、あるいは、それら変性物をポリオレフィン樹脂で適宜希釈したものが挙げられる。中でもアクリル酸や酢酸ビニル成分を有する共重合変性ポリオレフィン樹脂は冷却速度の影響が大きく、本特許による手法がより効果的である。
グラフト変性率は0.1%〜3%である。0.1%より少ない場合はプライマー層との化学結合が少なく、密着力に乏しい。対して3%を超える場合では変性の過程で低分子量成分が増大し、接着界面に拡散し接着力が低下する。グラフト変性率の測定は赤外分光法にて行う。本発明で用いることができる変性オレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)(ポリエチレン:190℃、ポリプロピレン:230℃、荷重2.16kg)は、0.1〜10g/10分、より好ましくは0.1〜2.5g/10分である。この範囲より多くても少なくても成形性が悪くなる。
【0019】
変性ポリオレフィン樹脂の被覆方法としては、押出機のダイスを用いて加熱溶融した変性ポリオレフィン樹脂で直接鋼材を被覆する押出被覆方法を用いることができる。あるいは加熱した鋼材に予め成形した変性ポリオレフィン樹脂シートを貼り付ける方法、粉砕した変性ポリオレフィン樹脂を粉体塗装して溶融して被膜を形成する方法等がある。これらの方法により、0.05〜1mmの膜厚を有する変性ポリオレフィン層4を形成する。膜厚が0.05mm未満ではプライマー層との溶融濡れが悪く、接着力が不十分である。また、1mmを越えると経済性の観点から好ましくない。
【0020】
最外層のポリオレフィン樹脂層5に使用する材料としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−プロピレン共重合体等の従来公知のポリオレフィン樹脂等であっても、またこれらのブレンド樹脂であってもよい。
本発明で用いることができるポリオレフィン樹脂のMFR(ポリエチレン:190℃、ポリプロピレン:230℃、荷重2.16kg)は、0.1〜5g/10分、より好ましくは0.1〜2.5g/10分である。この範囲より多くても少なくても成形性が悪くなる。
最外層のポリオレフィン樹脂層には、ポリオレフィン樹脂以外の成分としては、耐熱性、耐候性対策としてカーボンブラック又はその他の着色顔料、充填強化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の耐候剤等を任意の組み合わせで添加することができる。
【0021】
ポリオレフィン樹脂の被覆方法としては、接着剤と同様に押出機のダイスを用いて加熱溶融したポリオレフィン樹脂で直接鋼材を被覆する押出被覆方法を用いることができる。あるいは加熱した鋼材に予め成形したポリオレフィン樹脂シートを貼り付ける方法、粉砕したポリオレフィン樹脂を粉体塗装して溶融して被膜を形成する方法等がある。これらの方法により、1mm〜6mmの膜厚を有するポリオレフィン樹脂層を形成する。膜厚が1mmより薄いと、防食性、耐衝撃性が劣るため好ましくない。また膜厚が6mmを超えると寒暖差による塗膜の収縮により、端部からポリオレフィン被覆層が剥離しやすいため好ましくない。
【0022】
被覆後の冷却方法は最外層のポリオレフィン層表面への冷却水のかけ流し(以下、外面水冷と表記)と鋼管内面への冷却水の流入(以下、内面水冷と表記)を同時に行うことで本発明の冷却速度を得ることができる。
使用する冷却水の水温は35℃以下が好ましい。35℃を超えると冷却効率が悪くなる。外面水冷の冷却水の量は3000L/min以上が望ましい。3000L/min未満では本発明の冷却速度を得ることができない。また内面水冷の冷却水の量は1000L/min以上が望ましい。1000L/min未満では復熱が発生し、本発明の冷却速度を得ることができない。
変性ポリオレフィン樹脂の温度がTc+20℃以上の状態で内面水冷を開始する。Tc+20℃未満ではTc±20℃の温度範囲における冷却が不十分となるため10℃/min以上の冷却速度が得られない。また変性ポリオレフィン樹脂の温度がTc−20℃以下となるまで内面水冷は継続する。Tc−20℃を超える場合では同様にTc±20℃の温度範囲における冷却が不十分となる。
【0023】
内面水冷の効果の例として、図2にポリオレフィン被覆鋼管の冷却時の温度変化の一例を示す。
使用した鋼管のサイズは、外形1420mm、肉厚32mm、管長12000mmである。外面水冷の水量は3000L/min、内面水冷の水量は1000L/min、また変性ポリオレフィン樹脂の結晶化温度は121℃である。
内面水冷なしでは温度低下が緩慢であり、Tc±20℃での冷却速度は4℃/minと非常に小さい。対して内面水冷を実施することで冷却が加速され、Tc±20℃での冷却速度は10℃/minとなり、本発明の請求範囲内にすることが可能となる。
【0024】
鋼管端部にジョイント等を用いて連結し連続的に被覆を行う場合は、ポリオレフィン樹脂を被覆後にジョイント部に鋼管一周にわたる切り込みを入れる。切り込み後の搬送速度を速くすることで自動的に分離することができ、鋼管内面への冷却水の流入が可能となる。分離前後の搬送速度差は0.2m/min以上が望ましい。0.2m/min未満では鋼管の分離に時間がかかるため、冷却水の流入のタイミングが遅くなり、冷却効率が悪化する。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
鋼材サンプルとして、9mm×100mm×150mmの熱延鋼板に、グリッドブラスト処理を施したものを用意した。これら鋼板サンプルにクロメート処理を行い、鋼板を200℃に加熱し、粉体エポキシ樹脂プライマーを静電粉体塗装で150μmに塗装した。
【0026】
〔実施例1〜3〕
実施例1〜3ではエチレン−アクリル酸変性共重合ポリエチレン(Tc=120℃)の厚さ0.2mmの樹脂シートを予め200℃に加熱し被覆した。樹脂シートにK熱電対型のサーモカップルシートを貼り付けた。このサーモカップルシートは温度と時間を記録するデータロガーに接続し、冷却開始から終了までの温度変化を毎秒記録した。変性ポリエチレン樹脂シートの被覆後、厚さ3mmのポリエチレン樹脂のシートを被覆した。冷却速度が10,50及び100℃/minとなるように水温、水量を調整して冷却を行い、被覆鋼材サンプルを作製した。
【0027】
〔比較例1,2〕
比較例1,2では実施例1〜3で用いた変性ポリエチレンの厚さ0.2mmの樹脂シートを予め200℃に加熱し被覆した。樹脂シートにK熱電対型のサーモカップルシートを貼り付けた。このサーモカップルシートは温度と時間を記録するデータロガーに接続し、冷却開始から終了までの温度変化を毎秒記録した。変性ポリエチレン樹脂シートの被覆後、厚さ3mmのポリエチレン樹脂のシートを被覆した。冷却速度が4及び8℃/minとなるように水温、水量を調整して冷却を行い、被覆鋼材サンプルを作製した。
【0028】
上記実施例および比較例によって得られたポリエチレン被覆鋼材サンプルを下記に従って評価試験を行った。
〔冷却速度の算出〕
被覆サンプル作製時に記録した冷却開始から終了までの温度変化の内、Tc±20℃の温度範囲のデータから温度(℃)と時間(min)の近似曲線を一次関数として算出し、その傾き(℃/min)を冷却速度とした。
〔ピール強度の評価〕
幅20mmの粉体エポキシ樹脂プライマー面に到達する切り込みを長手方向に入れて先端のポリエチレン樹脂層を剥がした。この先端部を掴み代とし、引張速度を10mm/分、剥離角度を90度の条件で引張試験機を用いて剥離させ、この時の平均強度を切り込み幅で除した値をピール強度とし、密着力と見なした。ピール強度の単位はN/mmである。試験中の温度は80℃で実施した。
【0029】
本発明の実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【表1】
【0030】
実施例1〜3は冷却速度が10℃/min以上であり、80℃での密着力が高い。一方冷却速度が請求項範囲未満である比較例1、2は冷却速度が遅く、変性ポリエチレン樹脂の結晶化が進行したため密着力が大きく低下した。
【符号の説明】
【0031】
1 鋼材
2 表面処理層
3 プライマー層
4 変性ポリオレフィン層
5 ポリオレフィン層



図1
図2