(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芯材の前記軸受補強部が、該軸受補強部の前記回転軸線方向の端面を起点としてほぼ前記回転軸線方向に延びる溝を該軸受補強部の内周面に有する、請求項1に記載のバタフライ弁。
前記輪郭形成部材の前記軸受内周部の肉厚が、前記芯材の前記軸受補強部より外周側の前記輪郭形成部材の部分の肉厚よりも小である、請求項2〜5のいずれか一項に記載のバタフライ弁。
前記輪郭形成部材の前記軸受内周部と前記弁軸との間に、あるいは前記軸受内周部と前記弁軸に外挿されたブッシュとの間に、シール部材が配置されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のバタフライ弁。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態によるバタフライ弁の閉弁時の正面部分断面図である。
【
図2】前記バタフライ弁の弁体の部分断面を含む斜視図である。
【
図4】前記弁体が内包する芯材の部分断面を含む斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態の第1の変形例における芯材の(a)平面図と(b)B−B断面図である。
【
図6】第1の変形例における弁体の上部の部分断面を含む正面図である。
【
図7】本発明の実施形態の第2の変形例における芯材の(a)平面図と(b)C−C断面図である。
【
図8】第2の変形例における弁体の上部の部分断面を含む正面図である。
【
図9】本発明の実施形態の第3の変形例における芯材の(a)平面図と(b)D−D断面図である。
【
図10】第3の変形例における弁体の上部の部分断面を含む正面図である。
【
図11】第4の変形例における弁体の上部の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるバタフライ弁10について説明する。
図1は、本発明の実施形態によるバタフライ弁10の正面部分断面図であって、弁体30が流路を閉鎖している状態を示している。このバタフライ弁10は、上下2箇所に突出部を有するが概ね環状の本体11と、円板状の弁体30と、回転軸線R上に配置された上側の第1弁軸13及び下側の第2弁軸14と、本体11と弁体30との間をシールする略円筒状のシートリング12と、複数のOリング16が装着されて弁軸の各々に外挿された合成樹脂製のブッシュ15と、上側の第1弁軸13に連結されたハンドル部17と、それに連結された歯車機構部18と、本体11の底部に配置されて下側の第2弁軸14を支持する弁軸ホルダ19とを主要な構成要素として具備する。なお、
図1ではハンドル部17と歯車機構部18は断面にされていない。
【0011】
本体11は、挿通された第1及び第2弁軸13,14を、ブッシュ15を介して回転可能に支持するために、本体軸受部21,22を上部及び下部に有している。本実施形態の本体11は、合成樹脂成形品として形成されており、本体軸受部21,22の周囲の内部には補強のための金属製のインサート部材23が含まれている。本体11の上部に連結されたハンドル部17は、水平に延びるハンドル軸の回転トルクを垂直に延びる第1弁軸13に伝達するための歯車機構部18を有する。なお、歯車機構部18は円筒ウォームとウォームホイールとから構成される従来型のものであるのでその内部の図示は省略する。ハンドル部17に加えられた回転トルクを第1弁軸13によって弁体30に伝達するために、第1弁軸13は、ブッシュ15を介して本体11により回転可能に支持される一方で弁体30に対しては回転不能に接続されている。このため、第1弁軸13の下端部とそれが挿入されて嵌合する弁体30の後述する第1小径穴部33bの横断面は非円形に形成されている。一方、第2弁軸14は、本体11に対しても弁体30に対しても回転可能にブッシュ15を介して支持されている。したがって第2弁軸14の横断面形状はどこでも円形に形成されている。
【0012】
図2は、本実施形態によるバタフライ弁10の弁体30の部分断面を含む斜視図である。弁体30は円板状の外形を形成する合成樹脂製の輪郭形成部材31と、輪郭形成部材31によって包囲された金属製の芯材32とから一体に形成されている。本実施形態における弁体30は、芯材32が予めセットされた射出成形用の金型に、輪郭形成部材31を構成する合成樹脂材料を射出して成形されたものである。前記合成樹脂材料として、本実施形態では、高い耐薬品性を有するPVDF(ポリフッ化ビニリデン)が用いられている。但し、本発明においては、他の合成樹脂材料、例えばPP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等が用いられた実施形態も可能である。一方、芯材32は、本実施形態では鋳造用のアルミニューム合金から形成されている。但し、芯材32の材料は、これに限定されることはなく、輪郭形成部材31よりも高い機械的強度を有するのであれば、他の金属材料であっても、さらには非金属材料であってもよい。
【0013】
弁体30は、上側の第1弁軸13を支持するための第1軸受穴33と下側の第2弁軸14を支持するための第2軸受穴34とを有し、それら第1及び第2軸受穴33,34は回転軸線Rに同軸に形成されている。第1軸受穴33は、ブッシュ15が挿入されてブッシュ15を介して第1弁軸13を支持する、開口端を含む相対的に大径の第1大径穴部33aと、第1大径穴部33aから更に回転軸線R方向の内部に延びる相対的に小径の第1小径穴部33bとから構成されている。第1大径穴部33aの内周面は輪郭形成部材31により形成されるのに対して、第1小径穴部33bの内周面は芯材32から形成されている。第1小径穴部33bにはブッシュ15は挿入されず、第1弁軸13の先端側の部分が直接挿入されて嵌合する。また、本実施形態では、第1小径穴部33bの横断面形状は、第1弁軸13からの回転トルクの伝達が可能であるように非円形の二重D形、換言すると、円形の対向する2つの円弧部分を弦に置き換えた形状、に形成されている。
【0014】
第2軸受穴34も、ブッシュ15が挿入されてブッシュ15を介して第2弁軸14を支持する、開口端を含む相対的に大径の第2大径穴部34aと、第2大径穴部34aから更に回転軸線R方向の内部に延びる相対的に小径の第2小径穴部34bとから構成されている。第2大径穴部34aは第1軸受穴33の第1大径穴部33aと同じ構造及び寸法で形成されている。一方、第2小径穴部34bは、第2弁軸14との間で回転トルクを伝達しないので円形の横断面形状を有していて、この点で第1軸受穴33の第1小径穴部33bと異なっている。
【0015】
第1軸受穴33と第2軸受穴34とは、それらの第1小径穴部33bと第2小径穴部34bの横断面形状が異なることを除いて前述したとおり同様の構成を有しているので、以下においては、第1軸受穴33を代表にして説明する。弁軸については第1弁軸13を代表にする。また、記載を簡潔にするために、各構成要素の名称に含まれる序数の「第1」を省略して説明する。但し、「第1」と「第2」を識別する必要がある場合にはこの限りではない。
【0016】
ブッシュ15は、本実施形態では、腐食性流体に対して高い耐性を有するポリフッ化ビニリデン(PVDF)を材料として作られている。ブッシュ15は、流体が、弁体30の内部に侵入しないように、及び弁軸13に触れないようにするために複数のOリング16を備えている。特に、
図3に示されるように、軸受穴33の大径穴部33aに挿入されるブッシュ15の部分には4つのOリング16が配置されている。しかしながら、例えば、弁軸13が高い耐食性を有する材料から製作され、したがって流体が弁軸13に接触することが許容されるなら、及びOリングに回転トルクが作用することが許容されるなら、ブッシュ15を用いない実施形態も可能である。その場合は、弁軸にOリング用の溝を形成して、Oリングを弁軸に直接装着すればよい。実際、弁軸13は旋削加工により製作できるので、その材料として高い耐食性を有する例えばステンレス鋼のような材料を選択することも可能である。
【0017】
軸受穴33の大径穴部33aの内周面は前述したとおり輪郭形成部材31で形成されているが、
図3で詳細に示されるように、大径穴部33aの内周面よりも半径方向外側には芯材32の円筒状の部分が配置されている。本明細書では、芯材32の前記円筒状の部分35を「軸受補強部」と呼ぶ。また、大径穴部33aの内周面と円筒状の軸受補強部35との間の輪郭形成部材31の円筒状の部分36を「軸受内周部」と呼ぶ。芯材32の軸受補強部35は軸受内周部36を補強するために設けられている。流体から弁体30に作用する圧力に基づいて弁体30に発生するせん断力と曲げモーメントを大径穴部33aが支持するとき、弁軸13から大径穴部33a及び軸受内周部36に作用する力を軸受補強部35が支持するので、軸受内周部36の変形が抑えられて、ブッシュ15との間のOリング16によるシールを確実に維持することが可能になる。特に、本実施形態では、弁軸13が小径穴部33bによっても支持されるので、軸受内周部36に作用する力がより低減されることが理解されよう。
【0018】
このように、前記せん断力及び曲げモーメントの支持には軸受補強部35が大きく貢献するので、軸受内周部36の肉厚を薄くすることができる。その結果、弁体30の軸受穴33の外側寸法の増大とそれに伴う開弁時の流路抵抗の増大を避けることが可能になる。図示されないが、
図3から回転軸線R周りで90度回転した断面で見た場合でも、軸受内周部36の肉厚は、軸受補強部35の外周側の輪郭形成部材31の肉厚よりも薄く形成されている。
【0019】
次に、芯材32の部分断面を含む斜視図である
図4を参照して、芯材32についてより詳しく以下に説明する。芯材32は、回転軸線Rに沿って延びる棒状の中心部37と、回転軸線Rを含む平面に概ね沿って、前記中心部37の両側で左右対称に延びる2つの主補強部38とを有する。棒状の中心部37の上端部及び下端部にはそれぞれ前述の軸受補強部35が設けられている。
【0020】
主補強部38は、棒状の中心部37から横に延びる5つの横材38aと、それら横材38aを接続するために回転軸線R方向に延びる2つの縦材38bとから格子状に形成されている。5つの横材38aは、その長さが弁体30の円形の外径に応じて異なっており、また中心部37の外径とほぼ等しい幅の基部を有し、基部から先端に向けて先細になるようにテーパが付けられている。芯材32はこのように形成されているので、比較的軽量かつ少ない材料で、流体から弁体30に作用する力を効果的に支えることができる。
【0021】
第1軸受穴33の第1小径穴部33bと第2軸受穴34の第2小径穴部34bは、本実施形態では、回転軸線Rに同軸に延びる縦穴39によって連通している。芯材32のこの縦穴39には金属製のパイプ部材41が埋め込まれている。パイプ部材41の材料は、芯材32の材料よりも高い縦弾性係数及び引張り強さを有する。また、パイプ部材41は、本実施形態では、芯材32を鋳造するときに鋳ぐるみされて芯材32に組み入れられたものである。この縦穴39とパイプ部材41によって、芯材32の強度を低下させることなく、芯材32の軽量化及び鋳造性の向上が実現可能である。但し、前記縦穴39のあけられていない芯材の実施形態も本発明において可能である。
【0022】
軸受補強部35には、本実施形態では、その内周面と外周面とを連通する貫通穴35aが複数設けられている。これら貫通穴35aは、芯材32を金型(図示せず)にセットして輪郭形成部材31を射出成形する際に、軸受内周部36を形成する合成樹脂材料の通路となるように設けられたものである。射出成形時において、軸受内周部36を形成する合成樹脂材料は、軸受補強部35の外周側からその端面を乗り越えるルートだけでなく、前記貫通穴35aを通るルートによっても軸受内周部36を形成するための円筒状の空隙に流れ込むことができる。そのため、軸受内周部36の厚さが薄く、したがって前記空隙の幅が狭い場合、あるいは大径穴部33aの深さ(従って前記空隙の深さ)が深い場合であっても、合成樹脂材料は前記空隙に確実に流れ込み、充填不足を生じることなく軸受内周部36を成形することが可能になる。特に、本実施形態のように、芯材32が比較的少ない材料で形成され、弁体30に占める輪郭形成部材31の割合が比較的大きくなるように弁体30が形成されている場合は、前記隙間に合成樹脂材料が流れ込みにくくなりやすいので、貫通穴35aを設けることは特に効果的である。ただし、本発明においてはこのような貫通穴35aは必須ではない。例えば、軸受内周部36の厚さが比較的厚い場合あるいは軸受穴33の大径穴部33aの深さが比較的浅い場合にはこのような貫通穴35aがなくとも充填不足は生じないであろう。
【0023】
本発明によるバタフライ弁10においては、弁体30の軸受穴33の大径穴部33aは、金属製の芯材32が露出することなく合成樹脂材料からなる輪郭形成部材31によって形成される一方で、内部、つまり半径方向外側には芯材32からなる軸受補強部35が配置されている。そのため、軸受穴33の大径穴部33aは、充分な耐食性を有する一方で、たとえ高温の流体の流れを開閉する場合であっても変形を起こすことがなく、したがって高いシール性を維持することができる。特に、大径穴部33aの開口周縁部の変形を効果的に抑えることが可能になるので、ブッシュ15に装着されたOリングと大径穴部33aの内周面との間のシール性はもとより、前記開口周縁部とシートリング12との間のシール性も確実に維持することができる。また、軸受内周部36を形成する合成樹脂材料が周囲の合成樹脂材料と連続していることも軸受穴33の大径穴部33aの変形の抑制に寄与している。
【0024】
本実施形態では、軸受穴33の小径穴部33bにおいては芯材32が露出しているが、これは、大径穴部33aの上述した高いシール性により、流体が小径穴部33bに侵入することは通常は考えなくてよいからである。しかしながら、本発明において、弁体の軸受穴33の大径穴部33aだけでなく小径穴部33bの内周面も輪郭形成部材31から形成した実施形態も可能である。この場合、小径穴部33bの軸受内周部への合成樹脂材料の充填を促進するために、例えば前述した貫通穴35aを小径穴部33bの周囲の芯材32の中心部37にもあけることが好ましい。また、芯材32の中心部37に縦穴39があけられていない実施形態の場合、小径穴部33bは有底穴として形成されるので、その小径穴部33bの内周面だけでなく底面も輪郭形成部材で形成されてよい。
【0025】
一方、軸受穴33の大径穴部33aの一部、例えば上半分だけ、が輪郭形成部材31で形成され、大径穴部33aの残りの部分が芯材32で形成される実施形態も可能である。
【0026】
次に、本発明の前述の実施形態の第1の変形例について
図5及び
図6を参照して以下に説明する。
図5の(a)は、第1の変形例の芯材132の平面図であり、
図5の(b)は、(a)のB‐B断面図であって、芯材132の上部を示している。
図6は、輪郭形成部材131が射出成形された弁体130の上部の部分断面正面図である。第1の変形例は、前述の実施形態とは、弁体130の芯材132の軸受補強部135の形状が異なっている。第1の変形例の軸受補強部135は、その端面から回転軸線R方向に延びる複数の切欠き135aを有する。
図5に示される例では、8個の矩形状に形成された切欠き135aが設けられている。これら切欠き135aによって軸受補強部135の内周面と外周面とが連通するので、輪郭形成部材131の射出成形時に、これらの切欠き135aを通って合成樹脂材料が流れることができ、したがってそれによって軸受内周部136への合成樹脂材料の充填が促進される。
【0027】
次に、本発明の前述の実施形態の第2の変形例について
図7及び
図8を参照して以下に説明する。
図7の(a)は、第2の変形例の芯材232の平面図であり、
図7の(b)は、(a)のC‐C断面図であって、芯材232の上部を示している。
図8は、輪郭形成部材231が射出成形された弁体230の上部の部分断面正面図である。第2の変形例の軸受補強部235は、その円筒の端面を起点として回転軸線R方向に延びる複数の溝235aを内周面に有する。
図7に示される例では、8個の矩形断面を有する溝235aが設けられている。これら溝235aによって、輪郭形成部材231の軸受内周部236に厚さの厚い部分が形成され、その結果、輪郭形成部材231の射出成形時に、軸受内周部236への合成樹脂材料の充填が促進される。
【0028】
次に、本発明の前述の実施形態の第3の変形例について
図9及び
図10を参照して以下に説明する。
図9の(a)は、第3の変形例の芯材332の平面図であり、
図9の(b)は、(a)のD‐D断面図であって、芯材332の上部を示している。
図10は、輪郭形成部材331が射出成形された弁体330の上部の部分断面正面図である。第3の変形例の軸受補強部335は、その円筒の端面に向かうにつれて連続的に拡径している。このように軸受補強部335が拡径することによって、輪郭形成部材331の軸受内周部336に厚さの厚い部分が形成され、その結果、輪郭形成部材331の射出成形時に、軸受内周部336への合成樹脂材料の充填が促進される。また、
図9では、軸受補強部335は連続的に拡径しているが、軸受補強部335が段階的に拡径するさらなる変形例も可能である。
【0029】
次に、本発明の前述の実施形態の第4の変形例について
図11を参照して以下に説明する。第4の変形例は、前述の実施形態及び変形例とは、軸受内周部436の製造方法が異なっている。第4の変形例の弁体430の軸受内周部436は、射出成形によって形成されるのではなく、合成樹脂製のブッシュ436’を圧入して溶着することにより形成されている。このため第4の変形例では、当初の弁体430の輪郭形成部材431は軸受内周部436を有しない。軸受内周部436は、合成樹脂材料製のブッシュ436’が芯材432の軸受補強部435の内周側に圧入され、さらに、周囲の輪郭形成部材431と開口側の端部Eで溶着されて一体化されることにより形成される。これによれば、軸受内周部の材料の流動性あるいは充填性を考慮する必要がない。なお、ブッシュ436’が周囲の輪郭形成部材431と溶着ではなく接着されて一体化されるさらなる変形例も本発明において可能である。
【0030】
次に、本発明の前述の実施形態の第5の変形例について以下に説明する。第5の変形例(図示せず)は、第1軸受穴の第1大径穴部が機械加工によって形成される。このため、第5の変形例では、輪郭形成部材の射出成形時に第1大径穴部の全てが合成樹脂材料で充填された弁体が準備され、その後、第1大径穴部が機械加工により穿孔される。これによれば、軸受内周部の材料の流動性あるいは充填性を考慮する必要がない。
【0031】
前述の実施形態およびその変形例においては、第1軸受穴の第1大径穴部の横断面形状は円形であったが、その横断面形状が矩形、あるいはD形、あるいは二重D形、あるいはスプライン穴等の非円形で形成される実施形態も可能である。その場合には、第1小径穴部をなくすことが可能である。