(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第2操作部が操作されているときに、前記基準速度の設定指令が入力されていると判断して、前記設定用制御特性に従い、前記第1操作部からの駆動指令に対応した駆動速度で前記モータを駆動制御するよう構成され、
前記記憶部は、前記制御部が前記設定用制御特性に従い前記モータを駆動制御している状態で、前記第2操作部の操作が停止されると、前記基準速度の設定指令が入力されたと判断して、そのときの前記モータの回転速度を前記基準速度として記憶するように構成されている、請求項1に記載の電動作業機。
前記制御部は、前記第2操作部が操作停止状態から操作状態に変化すると、前記基準速度の設定指令が入力されたと判断して、前記設定用制御特性に従い前記第1操作部からの駆動指令に対応した駆動速度で前記モータを駆動する駆動制御を開始するよう構成され、
前記記憶部は、前記制御部が前記設定用制御特性に従い前記モータを駆動制御している状態で、前記第2操作部が前記操作停止状態から前記操作状態に再度変化すると、前記基準速度の設定指令が入力されたと判断して、そのときの前記モータの回転速度を前記基準速度として記憶するように構成されている、請求項1に記載の電動作業機。
前記制御部は、前記記憶部に前記基準速度が記憶されると、該基準速度に基づき前記モータを駆動制御するのに用いる制御特性を設定し、該制御特性に基づく前記モータの駆動制御を開始する、ように構成されている請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の電動作業機。
前記制御部は、前記記憶部に前記基準速度が記憶され、その後、前記第1操作部からの駆動指令が停止されると、前記モータの駆動制御を実施するのに用いる制御特性として、前記記憶部に記憶された前記基準速度に基づき設定される制御特性を設定する、ように構成されている請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の電動作業機。
前記制御部は、前記記憶部に前記基準速度が記憶されて、前記基準速度に基づき設定される制御特性にて前記モータを駆動制御可能であるとき、その旨を報知するよう構成されている、請求項1〜請求項12の何れか1項に記載の電動作業機。
前記第2操作部と前記第3操作部とは並んで配置されており、前記第2操作部と前記第3操作部との間隔は、これら各操作部の配列方向に沿って、少なくとも一方の操作部の長さよりも長くなっている、請求項15に記載の電動作業機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のように、モータの駆動制御に利用する制御特性を複数の制御特性の中から選択できるようにしても、個々の制御特性は予め設定された固定特性である。
【0008】
このため、使用者は、モータの駆動制御に利用する制御特性を使用者好みの特性に設定変更することはできず、電動作業機を使用者にとってより使い勝手がよくなるように改良することはできなかった。
【0009】
本開示の一局面では、モータの駆動制御に利用する制御特性を、使用者が任意に設定可能な電動作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一局面の電動作業機は、モータと、第1操作部と、制御部と、第2操作部と、記憶部とを有する。
第1操作部は、モータの駆動を指令するための操作部であり、制御部は、第1操作部からの駆動指令に対応した回転速度でモータを駆動するためのものである。
【0011】
また、第2操作部は、制御部がモータを駆動する際の基準となる基準速度を設定するための操作部であり、記憶部は、この第2操作部を介して設定される基準速度を記憶する。
そして、制御部は、記憶部に記憶された基準速度に基づき設定される制御特性に従い、第1操作部からの指令に対応した回転速度でモータを駆動制御する。
【0012】
従って、この電動作業機によれば、制御部がモータを駆動制御する際の制御特性が、使用者が第2操作部を介して設定する基準速度に基づき設定されることになり、使用者は、第2操作部を介して基準速度を設定することで、制御特性を任意に設定できることになる。このため、電動作業機は、使用者にとって使い勝手のよいものとなり、使用者による電動作業機の操作性を改善することができる。
【0013】
ここで、記憶部は、制御部が第1操作部からの駆動指令に対応してモータを駆動制御している状態で、第2操作部から基準速度の設定指令が入力されると、そのときのモータの回転速度を基準速度として記憶するように構成されていてもよい。
【0014】
このようにすれば、使用者は、制御部により実際に駆動されるモータの回転状態を確認しつつ、その回転速度が所望回転速度になったときに第2操作部を操作することで、そのときの回転速度を基準速度として記憶部に記憶させることができる。従って、使用者は、基準速度として、所望の回転速度をより適正に設定することができるようになり、電動作業機の使い勝手を向上できる。
【0015】
また、この場合、制御部及び記憶部は、それぞれ、次のように構成されていてもよい。
すなわち、制御部は、第2操作部から基準速度の設定指令が入力され、且つ、第1操作部から駆動指令が入力されると、予め設定されている設定用制御特性に従い、第1操作部からの駆動指令に対応した回転速度でモータを駆動制御するよう構成される。
【0016】
また、記憶部は、制御部が設定用制御特性に従いモータを駆動制御している状態で、第2操作部から基準速度の設定指令が入力されると、そのときのモータの回転速度を基準速度として記憶するよう構成される。
【0017】
このようにすれば、使用者は、第2操作部から設定指令を入力することにより、制御部の動作モードを、基準速度の設定用制御特性に従いモータを駆動制御する動作モードに切り替えることができる。
【0018】
そして、その後、使用者は、第1操作部を操作することで、制御部に対し設定用制御特性に従いモータを駆動制御させ、モータが所望の回転速度になったときに、第2操作部から設定指令を再度入力させる。この結果、その設定指令再入力時のモータの回転速度が、基準速度として記憶部に記憶されることになる。
【0019】
よって、この場合、使用者は第1操作部を操作することで、基準速度を任意の回転速度に設定することができるようになり、その設定作業をより簡単且つ適正に実施することができる。
【0020】
次に、このように基準速度を設定して記憶部に記憶させる場合、第2操作部から設定指令を2回入力する必要があるが、そのためには、使用者により第2操作部が操作されたときと、その操作が停止されたときに、それぞれ設定指令が入力されるようにしてもよい。
【0021】
そして、このためには、制御部は、第2操作部が操作されているときに、基準速度の設定指令が入力されていると判断して、設定用制御特性に従い、第1操作部からの駆動指令に対応した駆動速度でモータを駆動制御するよう構成されているとよい。
【0022】
また、記憶部は、制御部が設定用制御特性に従いモータを駆動制御している状態で、第2操作部の操作が停止されると、基準速度の設定指令が入力されたと判断して、そのときのモータの回転速度を基準速度として記憶するように構成されているとよい。
【0023】
制御部及び記憶部をこのように構成した場合、使用者は、基準速度を設定する際に第2操作部を操作し続ける必要がある。
しかし、使用者が第2操作部を操作しているときにだけ、モータが設定用制御特性に従い駆動制御され、使用者が第2操作部の操作を中止すると、そのときのモータの回転速度が基準速度として記憶されるので、使用者にとって基準速度の設定動作が分かり易くなる。
【0024】
一方、第2操作部から設定指令を2回入力するには、使用者による操作によって、第2操作部が操作停止状態から操作状態に変化したときに、設定指令が入力されるようにしてもよい。
【0025】
そして、このためには、制御部は、第2操作部が操作停止状態から操作状態に変化すると、基準速度の設定指令が入力されたと判断して、設定用制御特性に従い第1操作部からの駆動指令に対応した駆動速度でモータを駆動する駆動制御を開始するよう構成されているとよい。
【0026】
また、記憶部は、制御部が設定用制御特性に従いモータを駆動制御している状態で、第2操作部が操作停止状態から操作状態に再度変化すると、基準速度の設定指令が入力されたと判断して、そのときのモータの回転速度を基準速度として記憶するように構成されているとよい。
【0027】
制御部及び記憶部をこのように構成した場合、使用者は、基準速度を設定する際に第2操作部を2回操作する必要がある。
しかし、使用者は、第2操作部を最初に操作して次に操作するまでの間は、第1操作部だけを操作すればよいので、モータの回転速度の調整に集中することができる。よって、使用者は、基準速度を所望回転速度に設定する際の速度調整をし易くなり、その調整作業をより最適に行うことができる。
【0028】
ところで、第1操作部が、上述したトリガのように、使用者が引き量(換言すれば操作量)を調整可能な操作部である場合、制御部がモータを駆動制御するのに用いる制御特性は、上述した設定用制御特性を含めて、操作量対回転速度特性であってもよい。
【0029】
つまり、制御特性が操作量対回転速度特性である場合、使用者による第1操作部の操作量に応じてモータの回転速度を設定でき、制御部は、モータがその回転速度で回転するようにモータを駆動制御することになる。
【0030】
また、この場合、設定用制御特性は、モータの最低回転速度が、制御部がモータを駆動制御するのに用いる他の制御特性に比べて高くなるように設定されていてもよい。
つまり、設定用制御特性の最低回転速度を他の制御特性の最低回転速度と同様極低速(一般に回転速度:零)にしても、その極低速域でモータの回転速度を調整して基準速度を設定することは困難である。
【0031】
また基準速度は、制御部がモータを駆動制御する際の制御特性を設定するのに用いられるものであり、最低回転速度から最高回転速度までの間で、任意の操作量に対応した回転速度に設定可能であればよい。
【0032】
このため、基準速度の設定時には、基準速度を設定可能な所望の回転領域でモータを回転させているときに、その回転速度を操作量に応じて調整できればよい。その際には、設定用制御特性の最低回転速度を、他の制御特性の最低回転速度よりも高くしてもよい。
【0033】
このようにすると、第1操作部の操作量に対応して変化するモータの回転速度領域は、モータの高回転側に制限されることになり、その回転速度領域をモータの全速度領域に設定した場合に比べて狭くなる。このため、使用者は、第1操作部の操作によって、基準速度として設定されるモータの回転速度を、より細かく調整することができるようになる。
【0034】
一方、設定用制御特性は、モータの最高回転速度が、モータの全速駆動時の回転速度(つまり最大回転速度)となるように設定されていてもよい。このようにすれば、使用者は、基準速度として、上述した最低回転速度からモータ全速駆動時の最大回転速度までの間の任意の回転速度を設定できるようになる。
【0035】
また、制御部が、モータを駆動制御するのに用いる制御特性として、最高回転速度が異なる複数の制御特性の中から選択可能に構成されている場合、設定用制御特性の最低回転速度には、その複数の制御特性の中で最も小さい最高回転速度が設定されていてもよい。
【0036】
このようにすれば、設定用制御特性の最低回転速度を、他の制御特性の中で最も小さい最高回転速度にすることができるため、その最も小さい最高回転速度よりも回転速度が高速領域内で基準速度を設定することができるようになる。このため、基準速度として設定可能な回転速度範囲を実用的な範囲に制限して、その範囲内で基準速度をより細かく設定することが可能となる。
【0037】
なお、設定用制御特性は、モータの回転速度が第1操作部の操作量に比例して線形に変化するように設定されていてもよい。
この場合、基準速度を設定するために使用者が第1操作部を操作した際に、その操作量に応じてモータの回転速度が一対一で(換言すれば比例して)変化することになるため、使用者は第1操作部の操作によって基準速度を容易に設定することができるようになる。
【0038】
また、制御部は、第1操作部からの駆動指令に従い設定用制御特性にてモータを駆動制御可能であるときには、その旨を報知するように構成されていてもよい。
このようにすれば、使用者は、制御部からの報知によって、第1操作部を操作してモータを駆動させることにより基準速度を所望回転速度に設定できることを確認することが可能となり、電動作業機の使い勝手を向上できる。
【0039】
一方、基準速度の設定時には、必ずしも、使用者が第1操作部を操作してモータの回転速度を調整する必要はなく、制御部が自動でモータの回転速度を変化させるようにされていてもよい。
【0040】
具体的には、例えば、制御部は、第2操作部から基準速度の設定指令が入力されると、予め設定されている設定用変動特性に基づき、モータの回転速度が設定用最低回転速度と設定用最高回転速度との間で変化するようにモータを駆動制御する。
【0041】
そして、記憶部は、制御部が設定用変動特性に基づきモータを駆動制御している状態で、第2操作部から基準速度の設定指令が入力されると、そのときのモータの回転速度を基準速度として記憶する。
【0042】
このようにしても、使用者は、制御部が設定用変動特性に基づきモータを駆動制御しているときに変化するモータの回転速度の中から、基準速度として設定したい任意の回転速度を選択して、基準速度を設定することができる。
【0043】
なお、この場合、設定用変動特性は、モータの回転速度を、設定用最低回転速度から設定用最高回転速度、設定用最高回転速度から設定用最低回転速度、或いは、その両方向へと周期的に変化させるように構成されていてもよい。
【0044】
次に、記憶部に記憶される基準速度は、制御部がモータを駆動制御するのに用いる制御特性を設定するのに用いられるが、その制御特性の設定は、記憶部に基準速度が記憶されたときに実施するようにしてもよい。
【0045】
このようにすれば、制御部は、記憶部に基準速度が記憶されて制御特性が設定された直後から、その制御特性に基づくモータの駆動制御を実施することができるようになり、モータの駆動を停止させることなく、モータの制御特性を切り替えることができる。
【0046】
また、制御部は、記憶部に基準速度が記憶され、その後、第1操作部からの駆動指令が停止されると、モータの駆動制御を実施するのに用いる制御特性として、記憶部に記憶された基準速度に基づき設定される制御特性を設定するように構成されていてもよい。
【0047】
この場合、使用者は、モータを駆動させて基準速度を記憶部に記憶させてから、一旦モータの駆動を停止させ、その後、第1操作部を操作してモータを再度駆動させるときに、基準速度に基づき設定された新たな制御特性にてモータを駆動制御させることができる。
【0048】
また、制御部は、記憶部に基準速度が記憶されると、モータの回転を停止させるように構成されていてもよい。
この場合、モータを駆動させて基準速度を記憶部に記憶させると、モータの駆動が停止するので、使用者は、記憶部に基準速度が記憶されたことをモータの停止にて確認することができる。そして、その後、使用者は、第1操作部を操作してモータを再度駆動させることで、新たな制御特性にてモータを駆動制御させることができる。
【0049】
なお、制御部は、記憶部に基準速度が記憶されて、その基準速度に基づき設定される制御特性にてモータを駆動制御可能であるときに、その旨を報知するよう構成されていてもよい。
【0050】
このようにすれば、使用者は、制御部からの報知によって、自身が設定した制御特性によってモータを駆動制御可能なことを確認することができるようになり、電動作業機の使い勝手を向上できる。
【0051】
次に、制御部は、モータを駆動制御する際の動作モードとして、1又は複数の通常モードと、設定モードとの何れか一つを選択可能に構成されていてもよい。
ここで、通常モードは、予め設定された固定制御特性に従い、第1操作部からの駆動指令に対応した回転速度でモータを駆動制御する動作モードである。
【0052】
また、設定モードは、記憶部に記憶された基準速度に基づき設定される制御特性である可変制御特性に従い、第1操作部からの駆動指令に対応したモータを駆動制御する動作モードである。
【0053】
このため、制御部をこのように構成すれば、使用者は、第1操作部を操作することにより、所定の固定制御特性に従いモータの回転速度を制御させることができる。また、使用者は、制御部に対し、第2操作部を介して特定した基準速度に基づき設定される可変制御特性に従い、モータの回転速度を制御させることもできる。
【0054】
従って、この制御部を備えた電動作業機によれば、使用者は、第1操作部の操作に応じて変化するモータの回転速度の変化特性を、複数の制御特性の中から選択することができ、しかも、その制御特性の一つを、使用者好みの制御特性に任意に変更することができる。
よって、この電動作業機によれば、使い勝手をより向上することができる。
【0055】
ところで、このように動作モードを切り替えるためには、電動作業機に、制御部の動作モードを通常モードに切り替えるための第3操作部が設けられているとよい。そして、電動作業機に第3操作部を設けた場合には、制御部は、第3操作部が操作されることにより、動作モードが通常モードに切り替わり、第2操作部が操作されることにより、動作モードが設定モードに切り替わるように構成されていてもよい。
【0056】
この場合、第2操作部と第3操作部は、電動作業機の操作領域(例えば操作パネル等)に並んで配置されていてもよい。つまり、このようにすれば、使用者は、指を動かすだけで第2操作部と第3操作部との何れかを選択的に操作して、制御部の動作モードを簡単に切り替えることができる。
【0057】
しかし、第2操作部と第3操作部との間隔が短いと、その何れかを誤操作し易くなるので、第2操作部と第3操作部との間隔は、これら各操作部の配列方向に沿って、少なくとも一方の操作部の長さよりも長くなっているとよい。
【0058】
つまり、このように第2操作部及び第3操作部を配置すれば、制御部の動作モードを切り替える際に、使用者が操作部を誤操作するのを抑制できる。
なお、このように誤操作を抑制するには、第2操作部と第3操作部との間に、当該電動作業機の状態を表示するための表示部を配置するようにしてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下に、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態では、本開示の電動作業機として電動工具1を例にとり説明する。また、以下の説明では、モータの回転速度(詳しくはモータの単位時間当たりの回転数)を、単に回転数ともいう。また、スイッチを、単にSWとも記載する。
【0061】
図1に示すように、本実施形態の電動工具1は充電式インパクトドライバであり、左右の半割ハウジング2,3を組み付けることにより構成され、下方にグリップ部4が延設された本体ハウジング5を備える。そして、本体ハウジング5のグリップ部4の下端には、バッテリパック6が着脱自在に装着されている。
【0062】
本体ハウジング5の後方(
図1の左側)は、当該電動工具1の動力源となるモータ40(
図3参照)を収納するモータ収納部7となっており、モータ収納部7よりも前方には、減速機構及び打撃機構が収納されている。
【0063】
そして、本体ハウジング5の先端には、打撃機構の先端部にドライバビットやソケットビット等の各種工具ビット(図示略)を装着するためのチャックスリーブ8が設けられている。
【0064】
打撃機構は、例えば、減速機構を介して回転されるスピンドルと、スピンドルと共に回転し、且つ、軸方向へ移動可能なハンマと、ハンマの前方にあって先端に工具ビットが取り付けられるアンビルと、を備えたものであり、次のように動作する。
【0065】
すなわち、打撃機構においては、モータ40の回転に伴いスピンドルが回転すると、ハンマを介してアンビルが回転して、チャックスリーブ8(延いては工具ビット)を回転させる。
【0066】
そして、工具ビットによるねじ締めが進み、アンビルへの負荷が高まると、ハンマがコイルばねの付勢力に抗して後退してアンビルから外れ、そこからスピンドルと共に回転しつつコイルばねの付勢力で前進してアンビルに再係合する。
【0067】
この結果、アンビルに間欠的な打撃が加えられ、工具ビットによるねじの増し締めが行われる。なお、この打撃機構については、従来から知られている(例えば、特開2006−218605号公報参照)ため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0068】
次に、グリップ部4は、使用者が当該電動工具1を使用する際に把持する部分であり、その上方にトリガSW10が設けられている。
トリガSW10は、上述の第1操作部として機能するものであり、使用者により引き操作されるトリガと、トリガが引き操作されたときにオン状態となり、その引き量(操作量)に応じて抵抗値が変化する回路部と、を備える。
【0069】
また、トリガSW10の上側には、モータ40の回転方向を正転方向(例えば工具を後端側から見た状態で右回り方向)又は逆転方向(正転方向とは逆の回転方向)の何れか一方に切り替えるための正逆切替SW12が設けられている。
【0070】
また、チャックスリーブ8が設けられる本体ハウジング5の先端側には、トリガSW10が引き操作されたときに、電動工具1の前方を光で照射するための照明LED14が設けられている。
【0071】
また、グリップ部4において、バッテリパック6が装着される装着部の前方上部には、電動工具1の動作モードの切り替え、その動作モードやバッテリパック6の残容量の表示、等を行うための操作パネル20が設けられている。
【0072】
なお、バッテリパック6は、グリップ部4の下端の装着部に対し、装着部の前方側から後方側へとスライドさせることにより装着されている。
図2に示すように、操作パネル20には、通常モード設定SW22、回転数設定SW24、照明SW26、通常モード表示LED32、設定モード表示LED34、及び、残容量表示LED36が備えられている。
【0073】
通常モード設定SW22、回転数設定SW24、及び、照明SW26は、通常はオフ状態で、使用者が指で押下しているときにオン状態となる、自動復帰型の押しボタンスイッチであり、本実施形態では、所謂タクタイルスイッチ(tactileswitch)が使用される。
【0074】
このうち、通常モード設定SW22は、電動工具1の動作モードを、モータ40を高速・中速・低速の何れかの固定制御特性で駆動制御する通常モードに設定するためのものであり、上述した第3操作部として機能する。
【0075】
なお、本実施形態において、モータ40の制御特性は、トリガSW10の操作量(トリガ引き量)に対応してモータ40の回転数を設定するためのものであり、操作量対回転速度特性となっている。
【0076】
そして、通常モードで利用される高速・中速・低速の固定制御特性は、
図4に例示するように、0〜20迄の数値(換言すれば分解能)で表されるトリガ引き量に対しモータ40の回転数が比例するように、線形特性になっている。
【0077】
これら各固定制御特性は、トリガ引き量が最小(0)であるときの最低回転数が「0」となり、トリガ引き量が最大(20)であるときの最高回転数が、それぞれ高速・中速・低速となるように設定されている。
【0078】
各固定制御特性は線形であるため、
図4に示す線図では、最低回転数と最高回転数とを直線で結んだ直線形状となる。なお、
図4において、回転数は、モータ40を全速駆動したときの最大回転数を100%とする比率(%)で記載されている。
【0079】
そして、通常モード設定SW22が操作されると、過去に選択された最新の通常モード(高速・中速・低速の何れか)が選択される。また、その後、通常モード設定SW22が操作されると、その操作の度に、モータ40の通常モード(換言すれば固定制御特性)が、例えば、高速→中速→低速→高速…、と順に切り替えられる。
【0080】
次に、通常モード表示LED32は、通常モード設定SW22の操作によって切り替えられる固定制御特性の種類(高速・中速・低速)を表示するためのものであり、3つのLEDにて構成されている。
【0081】
つまり、3つのLEDは、それぞれ、高速・中速・低速の通常モードの固定制御特性に対応しており、通常モード設定SW22の操作によって選択された固定制御特性に対応するLEDが点灯され、他のLEDは消灯される。
【0082】
次に、回転数設定SW24は、電動工具1の動作モードを、使用者が任意に設定可能な可変制御特性でモータ40を駆動制御する設定モードに切り替えるためのものである。また、回転数設定SW24は、設定モードでモータ40を駆動制御するのに用いる可変制御特性を使用者が設定するのにも利用され、上述した第2操作部として機能する。
【0083】
つまり、本実施形態では、電動工具1の動作モードが設定モードであるときに、回転数設定SW24が操作されると、その操作が継続している間、モータ40を
図4に示す設定用制御特性で駆動制御する。
【0084】
そして、回転数設定SW24の操作が停止されると、そのとき設定用制御特性に従い駆動制御されているモータ40の回転数(
図4に示すNA、NB等)を、可変制御特性の基準速度として記憶する。
【0085】
また、この記憶した基準速度は、可変制御特性の最高回転数として、固定制御特性と同じ最低回転数「0」を用いて、可変制御特性(
図4に示すA、B等)を設定するのに利用される。そして、その後、設定モードでは、その設定された可変制御特性にて、モータ40が駆動制御される。
【0086】
なお、このように可変制御特性の基準速度を設定する際にモータ40の駆動制御に用いられる設定用制御特性は、最低回転数が、通常モードで最高回転数が最も低い低速の固定制御特性の最高回転数に設定されている。
【0087】
また、設定用制御特性の最高回転数には、通常モードで最高回転数が最も高い高速の固定制御特性と同様、モータ40の全速駆動時の最大回転数(
図4に示す100%の回転数)が設定されている。
【0088】
そして、設定用制御特性は、最低回転数を、トリガSW10を最低操作量(例えばトリガ引き量1又は2)だけ操作したときの回転数とし、その最低回転数と最高回転数(モータ40の最大回転数)とを直線で結ぶ線形特性として、予め設定されている。
【0089】
次に、設定モード表示LED34は、電動工具1の動作モードが設定モードであることを表示するためのものである。そして、設定モードでトリガSW10が操作されることにより、モータ40を設定用制御特性にて駆動制御可能なときには点滅され、モータ40を可変制御特性にて駆動制御可能なときには点灯される。
【0090】
次に、照明SW26は、照明LED14をトリガSW10の操作に連動して点灯させるか否かを切り替えるためのものである。この照明SW26により照明LED14を点灯しないように設定されると、トリガSW10が操作されても照明LED14は点灯しない。
【0091】
また、残容量表示LED36は、バッテリパック6内のバッテリ60(
図3参照)の残容量を表示するためのものであり、例えば、LEDの点灯・点滅、点滅周期、点灯色の切り換え、等によって、残容量を表示する。
【0092】
なお、バッテリ60の残容量とは、バッテリ60に残っている電力量(換言すれば、残りの充電量)のことである。
操作パネル20において、回転数設定SW24、残容量表示LED36、照明SW26、及び、通常モード設定SW22は、例えば、操作パネル20の左端側から右端側へと一列に順に並べて配置されている。
【0093】
このように回転数設定SW24と通常モード設定SW22との間に、残容量表示LED36及び照明SW26を配置することで、使用者がこれらSW24、22を同時に操作したり、操作すべきSWとは異なるSWを操作したりするのを抑制することができる。このため、電動工具1の動作モードが、SW24、22の誤操作により誤って切り替えられるのを抑制できる。
【0094】
なお、本実施形態では、回転数設定SW24と通常モード設定SW22との間に、残容量表示LED36及び照明SW26を配置しているが、残容量表示LED36等の表示部だけを配置しても、各SW22、24が誤操作されるのを抑制できる。
【0095】
また、誤操作を抑制するためには、回転数設定SW24と通常モード設定SW22とを、所定の間隔を空けて配置するだけでもよい。但し、この場合、間隔が短いと誤操作し易くなるので、各SW22、24の間隔は、各SW24、22の配列方向の長さ(詳しくは各SW24、22を押下するための操作領域の幅:一般的に10mm以上)よりも長くするとよい。
【0096】
次に、バッテリパック6に収容されたバッテリ60は、例えばリチウムイオン電池など、繰り返し充電可能な2次電池である。
また、モータ40は、本実施形態では、U,V,W各相の電機子巻線を備えた3相ブラシレスモータにて構成されている。そして、モータ40には、モータ40の回転位置(角度)を検出するための回転センサ42(
図3参照)が設けられている。
【0097】
なお、回転センサ42は、例えば、モータ40の各相に対応して配置される3つのホール素子を備え、モータ40の所定電気角の回転角度毎に回転検出信号を発生するよう構成されたホールIC等にて構成される。
【0098】
また、グリップ部4の内部には、バッテリパック6内のバッテリ60から電力供給を受けて、モータ40を駆動制御するためのモータ駆動装置50(
図3参照)が設けられている。
【0099】
図3に示すように、このモータ駆動装置50には、駆動回路52、ゲート回路54、制御回路56、及び、レギュレータ58が設けられている。
駆動回路52は、バッテリ60から電源供給を受けて、モータ40の各相巻線に電流を流すためのものであり、本実施形態では、6つのスイッチング素子Q1〜Q6からなる3相フルブリッジ回路として構成されている。なお、各スイッチング素子Q1〜Q6は、本実施形態ではMOSFETである。
【0100】
駆動回路52において、3つのスイッチング素子Q1〜Q3は、モータ40の各端子U,V,Wと、バッテリ60の正極側に接続された電源ラインとの間に、いわゆるハイサイドスイッチとして設けられている。
【0101】
また、他の3つのスイッチング素子Q4〜Q6は、モータ40の各端子U,V,Wと、バッテリ60の負極側に接続されたグラウンドラインとの間に、いわゆるローサイドスイッチとして設けられている。
【0102】
また、ゲート回路54は、制御回路56から出力された制御信号に従い、駆動回路52内の各スイッチング素子Q1〜Q6をオン/オフさせることで、モータ40の各相巻線に電流を流し、モータ40を回転させるものである。
【0103】
次に、制御回路56は、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータ(マイコン)にて構成されている。また、制御回路56には、モータ40を駆動制御するのに必要な各種パラメータを記憶するための不揮発性メモリ57が備えられている。
【0104】
なお、不揮発性メモリ57に記憶されるパラメータには、通常モードで使用される高速・中速・低速の固定制御特性、設定モードで使用される設定用制御特性及び可変制御特性、及び、可変制御特性の基準速度(最高回転数)も含まれる。
【0105】
制御回路56には、上述したトリガSW10、正逆切替SW12、照明LED14、及び、操作パネル20(詳しくは、操作パネル20に設けられた各種SW22、24、26や各種状態表示用のLED32、34、36)が接続されている。
【0106】
また、モータ駆動装置50において、駆動回路52からバッテリ60の負極側に至る通電経路には、モータ40に流れた電流を検出するための電流検出回路44が設けられている。電流検出回路44は、例えば、電流検出用の抵抗とその両端電圧を電流検出信号として制御回路56に入力する入力回路とにより構成される。
【0107】
また、モータ駆動装置50には、バッテリ60からの供給電圧(バッテリ電圧)を検出するバッテリ電圧検出部46も備えられている。
そして、制御回路56には、モータ40に設けられた回転センサ42からの回転検出信号、電流検出回路44からの電流検出信号、及び、バッテリ電圧検出部46からの電圧検出信号も入力される。
【0108】
制御回路56は、トリガSW10が操作されると、回転センサ42からの回転検出信号に基づきモータ40の回転位置及び回転数を求め、正逆切替SW12からの回転方向設定信号に従い、モータ40を所定の回転方向に駆動する。
【0109】
また、制御回路56は、通常モード設定SW22又は回転数設定SW24が操作されることにより設定される動作モードに対応した制御特性と、トリガSW10の操作量とに基づき、モータ40の制御目標である回転数を求め、モータ40の回転数指令値を設定する。
【0110】
そして、制御回路56は、その回転数指令値に基づき、駆動回路52内の各スイッチング素子Q1〜Q6の駆動デューティ比を求め、その駆動デューティ比に応じた制御信号(PWM信号)をゲート回路54に出力することで、モータ40の回転速度を制御する。
【0111】
なお、制御回路56は、こうしたモータ40駆動のための制御処理とは別に、モータ駆動時に照明LED14を点灯させる制御や、バッテリ60の残容量に応じて残容量表示LED36を点灯させる制御等も実行する。
【0112】
また、レギュレータ58は、バッテリ60から電源供給を受けて、制御回路56を動作させるのに必要な一定の電源電圧Vcc(例えば、直流5V)を生成するものであり、制御回路56は、レギュレータ58から電源電圧Vccが供給されることにより動作する。
【0113】
次に、制御回路56にて実行される制御処理について説明する。
図5に示すように、制御回路56は、所定の制御周期(タイムベース)でS120〜S170(Sはステップを表す)の一連の処理を繰り返し実行する。
【0114】
すなわち、制御回路56は、S110にて、タイムベースが経過したか否かを判断することにより、所定の制御周期が経過するのを待ち、S110にてタイムベースが経過したと判断すると、S120に移行する。
【0115】
S120では、トリガSW10、正逆切替SW12、通常モード設定SW22、回転数設定SW24からの信号入力を確認することで、これら各SWの操作状態を検出する、スイッチ操作検出処理を実行する。
【0116】
次に、S130では、トリガSW10の操作量や、電流検出回路44、バッテリ電圧検出部46からの検出信号をA/D変換して取り込むA/D変換処理を実行する。
そして、続くS140では、通常モード設定SW22、回転数設定SW24の操作状態に応じて、動作モードを、高速・中速・低速の通常モード若しくは設定モードの何れかに設定するためのモード設定処理を実行する。
【0117】
次に、S150では、設定モードでモータ40を駆動制御するのに用いる可変制御特性を生成するのに必要な基準速度(つまり可変制御特性の最高回転数)を、不揮発性メモリ57に記憶するための回転数設定保存処理を実行する。
【0118】
また、S160では、通常モード設定SW22及び回転数設定SW24の操作により設定される動作モードに対応した制御特性に従い、トリガSW10の操作量に応じた回転速度でモータ40を駆動制御するモータ制御処理を実行する。
【0119】
そして、最後に、S170にて、操作パネル20の通常モード表示LED32若しくは設定モード表示LED34を点灯又は点滅させることで、電動工具1の動作モードや可変制御特性の設定状態を表示する表示処理を実行し、S110に移行する。
【0120】
次に、
図5のS140にて実行されるモード設定処理について説明する。
図6に示すように、モード設定処理では、まずS210にて、現在設定されている動作モードが通常モードであるか否かを判断する。そして、動作モードが通常モードであれば、S220に移行して、通常モード設定SW22が操作停止状態(以下、オフ状態という)から操作状態(以下、オン状態という)に変化したか否かを判断する。
【0121】
S220にて、通常モード設定SW22がオフ状態からオン状態に変化した(換言すれば、通常モード操作SW22が操作された)と判断されると、S230に移行して、通常モードで利用する固定制御特性を設定変更し、当該モード設定処理を終了する。
【0122】
なお、S230での固定制御特性の設定変更は、通常モード操作SW22が操作される度に、固定制御特性を、高速から中速、中速から低速、低速から高速へと順に切り替えることにより行われる。
【0123】
一方、S220にて、通常モード設定SW22は操作されていないと判断された場合には、S240に移行して、回転数設定SW24がオフ状態からオン状態に変化したか否か(換言すれば回転数設定SW24が操作されたか否か)を判断する。
【0124】
S240にて、回転数設定SW24が操作されたと判断されると、S250に移行して、動作モードを、通常モードから設定モードに変更し、当該モード設定処理を終了する。また、S240にて、回転数設定SW24は操作されていないと判断された場合には、そのまま当該モード設定処理を終了する。
【0125】
次に、S210にて、現在設定されている動作モードは通常モードではないと判断されると(つまり、動作モードが設定モードである場合には)、S260に移行する。
S260では、通常モード設定SW22がオフ状態からオン状態に変化したか否か(換言すれば通常モード設定SW22が操作されたか否か)が操作されたか否かを判断する。
【0126】
そして、S260にて、通常モード設定SW22が操作されたと判断された場合には、S270に移行して、動作モードを、設定モードから通常モードに変更し、当該モード設定処理を終了する。
【0127】
また、S260にて、通常モード設定SW22は操作されていないと判断された場合には、そのまま当該モード設定処理を終了する。
次に、
図5のS150にて実行される回転数設定保存処理について説明する。
【0128】
図7に示すように、回転数設定保存処理では、まずS310にて、現在設定されている動作モードは、設定モードであるか否かを判断する。
そして、動作モードが設定モードであれば、S320に移行して、回転数設定SW24は使用者により操作されてオン状態になっているか否か(換言すれば、基準速度の設定指令が入力されたか否か)を判断する。
【0129】
S320にて、回転数設定SW24はオン状態になっていると判断されると、S330に移行して、現在の設定モードで利用する制御特性として、不揮発性メモリ57に記憶された制御特性の中から設定用制御特性を選択し、当該回転数設定保存処理を終了する。
【0130】
一方、S320にて、回転数設定SW24はオフ状態になっていると判断されると、S340に移行して、現在の設定モードで利用する制御特性として、不揮発性メモリ57に記憶された制御特性の中から可変制御特性を選択し、S350に移行する。
【0131】
S350では、前回の回転数設定保存処理ではS320にて回転数設定SW24がオン状態であると判定されていて、今回、S320での判定結果がオフ状態に変化したか否かを判断する。なお、S350では、回転数設定SW24がオン状態からオフ状態に変化して、基準速度の設定指令が再度入力されたか否かを判断している。
【0132】
S350にて、回転数設定SW24がオフ状態に変化した直後であると判断されると、S360に移行して、現在のモータ40の回転数指令値(換言すればモータ40の回転速度)を基準速度として不揮発性メモリ57に記憶し、S370に移行する。
【0133】
S370では、S360にて不揮発性メモリ57に記憶した基準速度を最高回転数として、可変制御特性を生成(換言すれば更新)し、不揮発性メモリ57に記憶した後、当該回転数設定保存処理を終了する。
【0134】
また、S310にて、現在設定されている動作モードは設定モードではないと判断された場合、或いは、S350にて、回転数設定SW24はオフ状態に変化した直後ではないと判断された場合には、当該回転数設定保存処理を終了する。
【0135】
次に、
図5のS160にて実行されるモータ制御処理について説明する。
図8に示すように、モータ制御処理が開始されると、まずS410にて、トリガSW10が使用者により操作されて、オン状態になっているか否かを判断し、トリガSW10がオン状態になっていれば、S420に移行する。
【0136】
S420では、トリガSW10の操作量やバッテリ60若しくはモータ40の状態等に基づき、モータ40を駆動するか否かを判断し、モータ40を駆動すると判断すると、S430に移行して、モータ駆動処理を実行する。
【0137】
このモータ駆動処理は、モータ40の回転数が、現在の動作モード(通常モード又は設定モード)で設定されている制御特性と、トリガSW10の操作量とで決まる目標回転数となるように、モータ40を駆動制御するための処理である。
【0138】
つまり、このモータ駆動処理では、上述したようにモータ40の制御目標である目標回転数を求めて回転数指令値を設定し、その回転数指令値に基づき駆動デューティ比を求め、その駆動デューティ比に応じた制御信号(PWM信号)をゲート回路54に出力する。そして、このモータ駆動処理実行後は、当該モータ制御処理を一旦終了する。
【0139】
一方、S410にて、トリガSW10はオン状態になっていないと判断されると、S440に移行して、モータ停止処理を実行し、当該モータ制御処理を終了する。なお、S440のモータ停止処理では、駆動回路52を介してモータ40に制動力を発生させるか、或いは、単に通電を遮断してモータ40をフリーラン状態にすることで、モータ40を停止させる。
【0140】
次に、
図5のS170にて実行される表示処理について説明する。
図9に示すように、表示処理では、まずS510にて、現在設定されている動作モードが通常モードであるか否かを判断する。
【0141】
そして、動作モードが通常モードであれば、S520に移行して、設定モード表示LED34を消灯し、続くS530にて、通常モード表示LED32を点灯した後、当該表示処理を終了する。
【0142】
なお、S530での通常モード表示LED32の点灯は、通常モード表示LED32を構成する3つのLEDの内、通常モードで選択されている高速・中速・低速の固定制御特性に対応したLEDを点灯させることにより実施される。
【0143】
次に、S510にて、動作モードは通常モードではない(つまり設定モードである)と判断された場合には、S540に移行して、現在選択されているモータ40の制御特性は、設定用制御特性であるか否かを判断する。
【0144】
そして、現在選択されている制御特性が設定用制御特性であれば、S550に移行して、設定モード表示LED34を一定の点滅周期で点灯・消灯させる点滅制御を開始し、S560に移行する。
【0145】
なお、この点滅制御は、使用者に対し、設定用制御特性にてモータ40を駆動制御可能であることを報知するための処理である。そして、この処理によって設定モード表示LED34が点滅することより、使用者は、トリガSW10を操作してモータ40の回転速度を調整することで、モータ40の駆動特性を任意に設定可能であることを確認できる。
【0146】
また、S540にて、現在選択されている制御特性は設定用制御特性ではない(つまり可変制御特性である)と判断された場合には、S570に移行して、設定モード表示LED34を点灯し、S560に移行する。そして、S560では、通常モード表示LED32を消灯し、当該表示処理を終了する。
【0147】
なお、S570の処理によって設定モード表示LED34が点灯されることにより、使用者は、トリガSW10の操作によって自身が設定した駆動特性にてモータ40を駆動できることを、確認できる。
【0148】
以上説明したように、本実施形態の電動工具1においては、動作モードを、モータ40を固定制御特性で駆動制御する通常モードと、モータ40を可変制御特性で駆動制御する設定モードとの何れかに切替可能に構成されている。
【0149】
そして、その設定モードで使用される可変制御特性は、使用者が回転数設定SW24の操作により指定した回転数を基準速度として生成される。このため、使用者は、可変制御特性を任意に設定できることになり、設定モードでの電動工具1の使い勝手を高めることができる。
【0150】
また、設定モードでは、使用者が回転数設定SW24を操作すると、基準速度の設定指令が入力されたと判断されて、設定用制御特性が選択される。そして、その状態で使用者がトリガSW10を操作すると、その選択された設定用制御特性に従い、トリガSW10の操作量に応じてモータ40が駆動制御される。
【0151】
また、このようにモータ40が駆動制御されている状態で、使用者が回転数設定SW24の操作を中止すると、基準速度の設定指令が再入力されたと判断されて、そのときのモータ40の回転数が、可変制御特性の基準速度として不揮発性メモリ57に記憶される。そして、その記憶された基準速度は、可変制御特性の最高回転数として、可変制御特性を生成するのに利用される。
【0152】
このため、使用者は、モータ40を、設定用制御特性に従いトリガSW10の操作で実際に回転させて、そのときの電動工具1の動作状態を確認しつつ、可変制御特性の基準速度(最高回転数)を設定することができる。
【0153】
なお、このように可変制御特性の基準速度を設定する際、使用者は、モータ40の回転数を所望回転数に調整するが、その調整時には、回転数設定SW24を操作(押下)し続ける必要がある。
【0154】
しかし、モータ40は、使用者が回転数設定SW24を操作しているときにだけ、設定用制御特性に従い駆動制御され、使用者が回転数設定SW24の操作を中止すると、そのときのモータ40の回転数が基準速度(最高回転数)として記憶される。このため、使用者にとっては基準速度の設定動作が分かり易くなる。
【0155】
次に、設定用制御特性は、モータ40の全速駆動時の最大回転数を最高回転数、通常モードの制御特性(高速・中速・低速)の中で最も小さい最高回転数を最低回転数として、トリガSW10の操作量に比例して回転数が線形に変化するように設定されている。しかも、この設定用制御特性の最低回転数は、トリガSW10の操作量が零の点ではなく、トリガSW10が使用者により一定量だけ操作された最小操作量の点に対応している。
【0156】
従って、使用者は、トリガSW10の最小操作量から最大操作量までの操作範囲内で、通常モードの低速の制御特性の最高回転数から、モータ40の全速駆動時の最大回転数までの間の任意の回転数を、可変制御特性の基準速度(最高回転数)として設定できる。
【0157】
よって使用者は、可変制御特性の基準速度(最高回転数)として設定すべき所望の回転数を、容易に且つ適正に指定できることになる。このため、本実施形態によれば、使用者による可変制御特性の設定作業が簡単になり、これによっても、電動工具1の使い勝手を向上できる。
【0158】
また、本実施形態の電動工具1によれば、使用者が通常モード設定SW22を操作して、電動工具1の動作モードを通常モードに切り替えることにより、モータ40を、高速・中速・低速の何れかの固定制御特性で駆動制御させることができる。
【0159】
このため、本実施形態の電動工具1は、可変制御特性の設定が面倒であるが、用途によって制御特性を変更したい、という使用者に対しても、使い勝手のよい電動工具1を提供できる。
【0160】
なお、本実施形態では、トリガSW10が第1操作部に相当し、回転数設定SW24が第2操作部に相当し、通常モード設定SW22が第3操作部に相当する。
また、本実施形態では、記憶部としての機能が、不揮発性メモリ57と、不揮発性メモリ57に可変制御特性の基準速度(最高回転数)を記憶するために制御回路56にて実行される回転数保存処理により実現される。
【0161】
また、制御部としての機能は、基準速度(最高回転数)に基づき生成された可変制御特性に従いトリガSW10からの駆動指令(操作量)に応じた回転速度でモータ40を駆動制御するために、制御回路56にて実行されるモータ制御処理により実現される。
[第1変形例]
上記実施形態では、設定モードで、可変制御特性の基準速度(最高回転数)を設定し、可変制御特性を更新させる際には、モータ40が基準速度として設定すべき所望回転数になるまで、第2操作部としての回転数設定SW24を操作し続けるものとして説明した。
【0162】
また、その設定した基準速度に基づき、制御に用いる可変制御特性を更新するタイミングは、回転数設定SW24がオン状態からオフ状態に切り替えられて、基準速度を不揮発性メモリ57に記憶した直後であるものとして説明した。
【0163】
しかし、基準速度の設定は、制御特性を設定用制御特性に切り換えるために使用者が回転数設定SW24を操作(オン)してから、次に使用者が回転数設定SW24を操作(オン)したときに行うようにしてもよい。
【0164】
また、基準速度に基づく可変制御特性の更新は、基準速度が設定されて不揮発性メモリ57に記憶した直後(換言すれば、モータ40の駆動中)に実施しなくてもよく、基準速度の設定後、モータ40の駆動が停止されてから実施するようにしてもよい。
【0165】
そこで、第1変形例では、基準速度の設定(換言すれば不揮発性メモリ57への記憶)及び可変制御特性の更新を、上記のように実施する場合の回転数設定保存処理及びモータ制御処理について説明する。
【0166】
図10に示すように、第1変形例の回転数設定保存処理では、S310にて、現在設定されている動作モードが設定モードであると判断されると、S322に移行して、回転数設定SW24が予め設定された一定時間(例えば数秒)以上長押しされたか否かを判断する。
【0167】
そして、回転数設定SW24が長押しされると、基準速度の設定指令が入力されたと判断して、S330に移行し、現在の設定モードで利用する制御特性として設定用制御特性を選択して、当該回転数設定保存処理を終了する。
【0168】
また、S322にて、回転数設定SW24は長押しされていないと判断されると、S342に移行して、現在選択されている制御特性は設定用制御特性であるか否かを判断する。そして、現在選択されている制御特性が設定用制御特性であれば、S352に移行し、そうでなければ、当該回転数設定保存処理を終了する。
【0169】
S352では、回転数設定SW24がオフ状態からオン状態に変化して、基準速度の設定指令が再入力されたか否かを判断する。
そして、S352にて、回転数設定SW24がオフ状態からオン状態に変化したと判断されると、S360に移行して、現在のモータ40の回転数指令値(換言すればモータ40の回転速度)を基準速度として不揮発性メモリ57に記憶し、S362に移行する。
【0170】
S362では、上記実施形態のS340と同様、現在の設定モードで利用する制御特性として可変制御特性を選択し、S364に移行する。
そして、S364では、モータ制御処理でS440のモータ停止処理が実行された後に、S360にて記憶した基準速度に基づき可変制御特性が生成(更新)されるように、更新フラグをセットし、当該回転数設定保存処理を終了する。
【0171】
また、S310にて、動作モードが設定モードではない(換言すれば通常モードである)と判断された場合には、S380に移行し、次の設定モードで利用する制御特性として可変制御特性を選択し、当該回転数設定保存処理を終了する。なお、このS380の処理は、電動工具1の動作モードが通常モードから設定モードに切り替えられたときに、設定用制御特性でモータ40が駆動制御されるのを防止するための処理である。
【0172】
次に、
図11に示すように、第1変形例のモータ制御処理は、基本的には、
図8に示した上記実施形態のモータ制御処理と同様に実行されるが、S440のモータ停止処理を実行した後、S450〜S470の処理を実行する点が、上記実施形態と異なる。
【0173】
つまり、第1変形例のモータ制御処理では、S440にてモータ停止処理を実行すると、S450にて、更新フラグがセットされているか否かを判断する。そして、更新フラグがセットされていなければ、そのまま当該モータ制御処理を終了し、更新フラグがセットされていれば、S460に移行する。
【0174】
S460では、回転数設定保存処理のS360にて不揮発性メモリ57に記憶した基準速度を最高回転数として、可変制御特性を生成(換言すれば更新)し、不揮発性メモリ57に記憶する。そして、続くS470にて、更新フラグをクリアし、当該モータ制御処理を終了する。
【0175】
このように、第1変形例では、基準速度を設定する際には、第2操作部としての回転数設定SW24を2回操作(押下)し、しかも1回目の操作では回転数設定SW24を長押しする必要がある。
【0176】
しかし、回転数設定SW24を長押しすれば、モータ40の制御特性が可変制御特性から設定用制御特性に切り替えられて、基準速度を設定できるようになるので、基準速度の設定時には、第1操作部としてのトリガSW10だけを操作すればよいことになる。
【0177】
このため、使用者は、基準速度を設定するためのモータ40の回転数の調整に集中できるようになり、基準速度の設定作業をより最適に行うことができる。
また、第1変形例では、基準速度の設定後、その設定された基準速度を最高回転数として可変制御特性が生成(更新)されるのは、モータ40の駆動が停止されてからである。このため、モータ40の駆動中に制御特性が切り替えられて、使用者に違和感を与えるのを抑制できる。
【0178】
なお、このように、モータ40の駆動を停止してから可変制御特性を更新するには、必ずしも、トリガSW10がオフされて、モータ停止処理が実行されたときにする必要はなく、例えば、基準速度の設定後、強制的にモータ停止処理を実行さるようにしてもよい。
【0179】
そして、このためには、
図11のS420にて、モータ40を駆動するか否かを判断する際、更新フラグの状態を確認し、更新フラグがセットされていれば、S440のモータ停止処理に移行するようにすればよい。
【0180】
つまり、このようにすれば、トリガSW10の状態にかかわらず、基準速度が設定されて不揮発性メモリ57に記憶された後、強制的にモータ停止処理を実行させて、可変制御特性を更新させることができる。
[第2変形例]
次に、上記実施形態では、基準速度を設定する際には、モータ40を設定用制御特性に従い駆動制御するようにし、モータ40の回転数は、使用者がトリガSW10を操作することにより調整するものとして説明した。
【0181】
しかし、基準速度の設定時には、制御回路56が、所定の設定用変動特性(換言すれば変動パターン)に従いモータ40の回転数を変化させ、使用者が、モータ40が所望の回転数になったときに設定指令を入力することで、基準速度を指定できるようにしてもよい。
【0182】
そして、このためには、回転数設定保存処理を、例えば、
図12に示す手順で実行するようにすればよい。
そこで、第2変形例では、制御回路56がモータ40の回転数を変動させることで、使用者がトリガSW10を操作することなく基準速度を設定できるようにした、回転数設定保存処理について説明する。
【0183】
図12に示すように、第2変形例の回転数設定保存処理においては、S310にて、現在設定されている動作モードが設定モードであると判断されると、S312に移行して、トリガSW10がオン状態であるか否かを判断する。
【0184】
そして、トリガSW10がオン状態であれば、S320に移行して、回転数設定SW24がオン状態であるか否かを判断し、回転数設定SW24がオン状態であれば、基準速度の設定指令が入力されたと判断して、S332に移行する。
【0185】
S332では、モータ40の駆動制御に用いられる回転数指令値を変化させる。具体的には、モータ40の回転数が、所定の設定用変動制御特性に従い、一定周期で設定用最低回転数と設定用最高回転数との間を変化するように、回転数指令値を設定する。
【0186】
なお、モータ40の回転数を変化させるに当たっては、その回転数が、設定用最低回転数から設定用最高回転数、設定用最高回転数から設定用最低回転数、或いは、その両方向へと、連続的に変化するようにすればよい。
【0187】
また、設定用最低回転数及び設定用最高回転数には、例えば、上記実施形態の設定用制御特性の最低回転数及び最高回転数と同様の回転数を利用するようにすればよい。
そして、S332にて、モータ40の回転数が変動するように回転数指令値を設定すると、そのまま当該回転数設定保存処理を終了する。
【0188】
このように設定された回転数指令値は、モータ制御処理でモータ駆動処理(
図11に示すS430)を実行する際に用いられる。
このため、使用者が、トリガSW10及び回転数設定SW24の両方を操作しているときには、モータ40の回転数は、設定用最低回転数と設定用最高回転数との間で変化することになる。
【0189】
次に、S320にて、回転数設定SW24はオン状態ではないと判断されると、S350に移行して、回転数設定SW24がオン状態からオフ状態に変化した直後であるか否か、換言すれば、基準速度の設定指令が再度入力されたか否かを判断する。
【0190】
S350にて、回転数設定SW24がオフ状態に変化した直後であると判断されると、S365に移行する。
そして、S365では、現在のモータ40の回転数指令値(換言すればモータ40の回転速度)を可変制御特性の最高回転数(つまり基準速度)として不揮発性メモリ57に記憶し、当該回転数設定保存処理を終了する。
【0191】
また、S310にて動作モードは設定モードではないと判断された場合、S312にてトリガSW10はオン状態ではないと判断された場合、或いは、S350にて回転数設定SW24はオフ状態に変化した直後ではないと判断された場合には、そのまま当該回転数設定保存処理を終了する。
【0192】
なお、S365の処理実行後に、当該回転数設定保存処理を終了するのは、可変制御特性は必ずしも不揮発性メモリ57に記憶する必要はないからである。
つまり、モータ駆動処理でモータ40を駆動する際に、そのとき利用すべき制御特性(固定制御特性若しくは可変制御特性)の最高回転数を不揮発性メモリ57から読み出すようにしても、その制御特性に従いモータ40を駆動制御できる。具体的には、モータ40を駆動する際に、制御特性の最高回転数が判れば、各制御特性共通の最低回転数(零)と、トリガSW10の操作量とからモータの目標回転数を算出でき、その目標回転数を回転数指令値として、モータ40を駆動制御することができる。
【0193】
そこで、第2変形例では、S365にて可変制御特性の最高回転数(=基準速度)を不揮発性メモリ57に記憶すると、その最高回転数に基づき可変制御特性を生成するための処理を実行することなく、当該回転数設定保存処理を終了するようにしているのである。
【0194】
このように第2変形例では、使用者は、トリガSW10を操作してモータ40の回転数を調整することなく、モータ40の回転を確認しながら基準速度を設定することができる。このため、トリガSW10の操作が面倒であると感じる使用者にとっては、使い勝手のよい電動工具1となる。
[第3変形例]
第2変形例では、電動工具1の動作モードが設定モードであるとき、使用者がトリガSW10と回転数設定SW24との両方を同時に操作して、これら両SWをオン状態にすれば、回転数が周期的に変動するように、モータ40が駆動制御されるものとした。
【0195】
これに対し、第3変形例では、回転数設定保存処理を、
図13に示す手順で実行することで、電動工具1の動作モードが設定モードであるとき、使用者が回転数設定SW24を操作する度に、モータ40の回転数を段階的に変化させる。
【0196】
つまり、本実施形態の回転数設定保存処理では、S312にて、トリガSW10がオン状態であると判断されると、S324にて、回転数設定SW24が操作されてオフ状態からオン状態に変化したか否かを判断する。
【0197】
そして、S324にて回転数設定SW24が操作されてオフ状態からオン状態に変化したと判断された場合に、S332に移行して、回転数指令値を変化させ、当該回転数設定保存処理を終了する。
【0198】
これに対し、S324にて回転数設定SW24がオフ状態からオン状態に変化したと判断されなければ(つまり、回転数設定SW24が再操作されていなければ)、そのまま当該回転数設定保存処理を終了する。
【0199】
また、S312にて、トリガSW10がオン状態でないと判断された場合には、S355に移行して、トリガSW10は、オン状態かオフ状態に変化した直後であるか否か(換言すれば、使用者がトリガSW10の操作を中止したか否か)を判断する。
【0200】
そして、トリガSW10がオン状態かオフ状態に変化した直後であれば、第2変形例と同様のS365に移行して、現在のモータ40の回転数指令値を可変制御特性の最高回転数として不揮発性メモリ57に記憶し、当該回転数設定保存処理を終了する。
【0201】
また、S310にて動作モードは設定モードではないと判断された場合、或いは、S355にてトリガSW10はオン状態からオフ状態に変化した直後ではないと判断された場合には、そのまま当該回転数設定保存処理を終了する。
【0202】
このように、第2変形例では、設定モードで、可変制御特性の基準速度(最高回転数)を設定する際には、トリガSW10を操作してモータ40を駆動させつつ、回転数設定SW24を操作すれば、その操作毎にモータ40の回転数が変化する。
【0203】
そして、モータ40の回転数が所望回転数になったときに、トリガSW10の操作を中止すれば、そのときのモータ40の回転数が可変制御特性の基準速度(最高回転数)として不揮発性メモリ57に記憶される。
【0204】
そして、その後は、電動工具1の動作モードが設定モードであれば、トリガSW10を操作すれば、不揮発性メモリ57に記憶された基準速度に基づき設定される可変制御特性に従い、モータ40が駆動制御されることになる。
[他の変形例]
以上本開示の実施形態及び変形例について説明したが、本開示の電動作業機は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内にて、種々の態様をとることができる。
【0205】
例えば、上記実施形態では、第1操作部はトリガSWにて構成されるものとして説明したが、例えば、回転操作により駆動指令を入力できる可変抵抗器や、回転位置或いはスライド位置に応じて接続される接点の位置が変化する多段スイッチ等であってもよい。つまり、第1操作部は、モータ40の回転速度を指定可能な駆動指令を入力できればよい。
【0206】
また、第2操作部及び第3操作部は、自動復帰型の押しボタンスイッチにて構成されているものとして説明したが、これら各操作部についても、使用者の操作或いは操作位置によって、オン・オフ状態若しくは入力信号レベルが変化するように構成されていてもよい。
【0207】
一方、上記実施形態では、基準速度(最高回転数)は、実際にモータ40を駆動させて、電動工具1が所望の回転状態となったところで、第1操作部としてのスイッチを操作することで、設定するものとして説明した。
【0208】
これに対し、基準速度(最高回転数)は、モータ40を駆動することなく、使用者が第2操作部となるスイッチやダイヤル等を操作して、基準速度選択用のパラメータを直接入力することにより、設定するようにしてもよい。
【0209】
また、可変制御特性の基準速度は、必ずしも最高回転数である必要はなく、例えば、第1操作部の全操作量の80%での回転数等、全操作量の所定割合に対応した回転数を設定するようにしてもよい。
【0210】
このようにしても、その設定された回転数を基準速度として、第1操作部からの駆動指令(操作量)に対応した最低回転数から最高回転数までの回転数を特定可能な制御特性を生成できる。
【0211】
また上記実施形態では、設定用制御特性を始め、可変制御特性、固定制御特性等の制御特性は、全て、最低回転数から最高回転数までの回転数が、トリガSW10の操作量に比例して線形に変化するものとして説明した。
【0212】
しかし、これら各制御特性は、例えば、操作量が小さい領域、或いは大きい領域では、回転数の変化が小さくなるよう、非線形になっていてもよい。また、基準速度を設定する際に利用する設定用制御特性は、上記実施形態と同様に線形にし、他の制御特性(固定制御特性、可変制御特性は、非線形にするようにしてもよい。
【0213】
なお、このように固定制御特性及び可変制御特性を非線形にする場合、これら各制御特性は、例えば、最高回転数が最も大きくなる高速の固定制御特性を基準として、トリガSW10の操作量に対応する回転数が一定の比率で小さくなるように設定してもよい。
【0214】
つまり、固定制御特性及び可変制御特性では、
図4に示した制御特性と同様、最低回転数(零)から、制御特性毎に設定された最高回転数までの間で、モータ40の回転数が、トリガSW10の操作量に応じて変化するようにする。
【0215】
そして、中速、低速の固定制御特性及び可変制御特性については、トリガSW10の操作量に対する回転数が、これら各制御特性での最高回転数と高速の固定制御特性での最高回転数との比率分だけ、高速の固定制御特性よりも小さくなるように設定する。
【0216】
このようにすれば、中速、低速の固定制御特性及び可変制御特性は、
図4に示した線形の制御特性と同様、高速の固定制御特性を回転数の軸方向に圧縮した非線形特性となる。この結果、上記各制御特性を非線形にしても、各制御特性でモータ40を最高回転数まで上昇させる際のトリガSW10の操作感覚を一致させることができ、使用者は違和感なくトリガSW10を操作することが可能となる。
【0217】
また、上記実施形態では、モータ40が設定用制御特性若しくは可変制御特性に従い駆動制御される場合には、設定モード表示LED34を点滅又は点灯させることで、その旨を報知するものとして説明した。
【0218】
しかし、この報知は、例えば、LCD等にて構成された表示パネルへの表示によって行うようにしてもよく、音声出力によって行うようにしてもよく、LED若しくは表示パネルへの表示と音声出力との両方で行うようにしてもよい。
【0219】
また電動工具1には、バッテリパック6が装着され、電動工具1は、バッテリパック6から電力供給を受けて動作するものとして説明したが、バッテリパック6等の電源は、電動工具1と別体で配置されて、電動工具1は電力線を使って外部電源から電力供給を受けるようになっていてもよい。また、外部電源として、商用電源等の交流電源を利用してもよい。
【0220】
また、上記実施形態では、モータ40は、3相ブラシレスモータにて構成されるものとして説明したが、回転数を制御可能なモータであればよく、3相ブラシレスモータに限らず、他の直流モータであってもよいし、交流モータであってもよい。
【0221】
また、上記実施形態では、本開示の電動作業機として、モータにより駆動される打撃機構を備えた電動工具1(充電式インパクトドライバ)を例にとり説明した。しかし、本開示の電動作業機は、上述した電動工具1に限定されるものではなく、モータを備え、モータの回転速度を操作部からの駆動指令に応じて制御する制御部を備えた電動作業機であれば、上記実施形態と同様に適用して、同様の効果を得ることができる。
【0222】
つまり、本開示の技術は、石工用、金工用、木工用の電動工具や、園芸用の作業機等に適用することができる。より具体的には、電動ハンマ、電動ハンマドリル、電動ドリル、電動ドライバ、電動レンチ、電動グラインダ、電動マルノコ、電動レシプロソー、電動ジグソー、電動ハンマ、電動カッター、電動チェンソー、電動カンナ、電動釘打ち機(鋲打ち機を含む)、電動ヘッジトリマ、電動芝刈り機、電動芝生バリカン、電動刈払機、電動クリーナ、電動ブロア、電動噴霧器、電動散布機、電動集塵機、といった各種電動作業機に適用することができる。
【0223】
また、上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。