(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような間接教示方法の場合、操作パネルを中心とした操作方向と、ロボットまたはロボットのアームを中心とした方向とを一致させる必要があるため、ロボットを移動させてロボットの位置や向きが変わることによって、操作方向が分からなくなってしまうことがある。またその操作は非常に複雑であり、熟練が必要である。
また特許文献2のような直接教示方法の場合、力覚センサの感度を高くしすぎると、ロボットのゆらぎや振動等にも反応してしまうため、安全性の面から所定量以上の力でないと動かないように制御されている。そのため、ロボット教示には相当な力を必要とする。特に大型ロボットの場合には負担が大きい。
さらに特許文献3のような非接触倣い制御装置は、ワークと同じ大きさのモデルを用いて経路を教示するため、一度経路を決定した後は、経路の変更は困難である。また光学式センサを用いる場合、反射波を受信する受信部を発信部に対して所定の場所に配置させなければならないため、例えば、大きく曲がっている、あるいは、受信部の死角の方向に曲がっている場合、反射波を受信できないことが想定され、3次元的に配設された経路を追随させることには適していない。
【0006】
本発明は、任意の移動経路をマニピュレータに教示することができるロボット教示装置およびロボットの教示方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のロボット教示装置は、ガイド線を用いてマニピュレータの移動経路を教示するロボット教示装置であって、前記マニピュレータに取り付けられ、複数の近接センサを備えたセンサ部と、各近接センサより信号を受ける演算部とを有し、前記演算部は、前記ガイド線に対するセンサ部の相対的な位置が一定となるようにマニピュレータの動作を制御することを特徴としている。
【0008】
本発明のロボット教示装置は、複数の近接センサを備えたセンサ部が非接触方式でガイド線に沿うようにマニピュレータの動作を制御するため、自動でマニピュレータの移動経路を教示することができる。特に、ガイド線を用いてマニピュレータの移動経路を教示するため、マニピュレータの移動経路を自由に選択することができ、その変更も簡単である。また、初期作業は、ガイド線を配設するだけでよく簡単である。さらに、移動経路の教示後、ガイド線を取り払うことにより通常のロボットとして使用することができる。
【0009】
このようなロボット教示装置であって、前記演算部は、前記ガイド線に対する各近接センサの距離が一定となるように前記マニピュレータの動作を制御するものが好ましい。
この場合、ガイド線の曲がり部に対して、センサ部はその角度に応じて回転しながら移動する。
【0010】
このようなロボット教示装置であって、前記演算部は、前記センサ部が平行移動するように前記マニピュレータの動作を制御するものが好ましい。
【0011】
このようなロボット教示装置であって、前記近接センサが静電容量型の近接センサであるものが好ましい。
静電容量型の近接センサを用いることにより、広角度でガイド線を検出することができ、三次元的に配線されるガイド線を検出させることができる。
【0012】
本発明のロボットの教示方法は、本発明のロボット教示装置を用いたロボットの教示方法であって、ガイド線を配設する配設工程と、前記ガイド線に対するセンサ部の相対的な位置が一定となるようにマニピュレータの動作を制御する教示工程とを有することを特徴としている。
本発明のロボット教示方法は、ガイド線を配設するだけでマニピュレータに任意の移動経路を教示することができ、操作者の作業が簡単である。またマニピュレータの移動経路の変更も簡単である。ガイド線を取り払うだけで通常のロボット操作ができる。
【0013】
本発明のロボットの教示方法であって、前記教示工程が、前記ガイド線に対する各近接センサの距離が一定となるようにマニピュレータの動作を制御する工程である方法が好ましい。
本発明のロボット教示方法であって、前記教示工程が、前記センサ部が平行移動するようにマニピュレータの動作を制御する工程である方法が好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1のロボット教示装置10は、ガイド線11と、マニピュレータに取り付けられ、複数の近接センサを備えたセンサ部12と、ガイド線11に対するセンサ部12の相対的な位置を記憶させた記憶部13と、各近接センサより信号を受ける演算部14とを有する。このロボット教示装置10は、センサ部12をガイド線11に沿って動くように制御することによりマニピュレータの移動経路を教示する装置である。
【0016】
ガイド線11は、フレキシブルな線状体である。ここでフレキシブルとは、任意の方向に曲げることが可能であり、かつ、その状態を保持することができることを言う。
図1においてガイド線11のハッチング部は、ガイド線11に対するセンサ部12の相対的な位置において、4つの近接センサ22に同時に検出されている領域である。センサ部12は、この位置からガイド線11の先端方向(矢印方向)に移動する。ロボット教示装置10は、このガイド線11とセンサ部12との相対的な位置関係を記憶し、この位置関係を維持するようにガイド線11の形状に応じてセンサ部12は移動する。
ガイド線11は、折り曲げ可能であるため、操作者は、作業空間内で、装置等の配置状況に応じた任意の形状とすることができる。つまり、マニピュレータの移動経路を自在に選択することができる。
ガイド線11としては、例えば、公知のフレキシブルアームや、銅線や鉄線等の金属線に合成樹脂を被覆したもの等が挙げられる。しかし、近接センサが検出できるものであれば、特に限定されない。
【0017】
センサ部12は、本体21と、その表面に設けられ、ガイド線11を検出する複数の近接センサ22とを備えている。このセンサ部12は、軸周りに回転し、かつ、基部側の関節を中心に旋回するマニピュレータのアーム106と、マニピュレータのハンド(エンドエフェクタ)107との間に取り付けられ、センサ部12はハンド107と一体となって移動または回転する。このようにセンサ部12はハンド107と一体となるように取り付けるのが好ましい。
【0018】
本体21は、円柱状としている。しかし、その形状は、断面正多角形の柱体または球体であってもよく、特に限定されない。特に、円柱体または球体が好ましい。
本体21の上面には、マニピュレータと係合する上部係合部21aが設けられており、下面にはマニピュレータと係合する下部係合部21bが設けられている。この実施形態では、上部係合部21aは、筒状であり、アーム106の係合部を挿入して固定する。下部係合部21bは、柱状であり、ハンド107の係合部に挿入して固定する。しかし、本体21とアーム106、および、本体21とハンド107との固定手段は特に限定されない。
【0019】
近接センサ22は、ケーブル23等によって演算部14と接続されている。そして、近接センサ22は、検出信号を演算部14に送る。
ガイド線11を検出させる近接センサ22は、3つ以上あればよく、4つが好ましい。
4つの近接センサ22は、本体21(センサ部12)の上下方向に隣り合う2つの近接センサ22a、22bと、それぞれの近接センサと本体21(センサ部12)の周方向に隣り合い、かつ、本体21の上下方向に隣り合う2つの近接センサ22c、22dとに配置するのが好ましい。また
図2aに示すように、上下方向に隣り合う近接センサ22a、22bを結ぶ線分a1と、近接センサ22c、22dを結ぶ線分a2とを本体21(センサ部12)の軸Zと平行とし、また周方向に隣り合う近接センサ22a、22cを結ぶ線分b1と、近接センサ22b、22dを結ぶ線分b2とは本体21の軸Zと垂直とするのが好ましい。
図2における矢印は、センサ部12(本体21)から見た方向である。
なお、センサ部12は、16個の近接センサ22を本体21に設けている。詳しくは、互いに上下に並んだ2つの近接センサ22を一組とし、その組を円柱状の本体21の側面に円周方向で等間隔(中心軸から90度間隔)に4箇所に配置し、かつ、本体21の上面および下面に、円周方向で等間隔(中心軸から90度間隔)に4つずつ、円周方向において側面に設けられたものの間となるように配置している。上記4つの近接センサ22以外は、マニピュレータに移動経路を教示させる前後で使用する。しかし、いずれか3つ以上の近接センサ22を用いるようにしてもよい。
【0020】
近接センサ22としては、静電容量型、誘導型などの公知ものが用いられる。特に、静電容量型の近接センサが好ましい。また、コイル状炭素繊維を誘電体からなる母材内に分散させたものを用いた近接センサ、例えば、特開2007−201641号公報の近接センサが好ましい。これらは、対象物の表面の電荷を検出するため、比較的検出領域が広く、三次元的に延びているガイド線の検出に適している。そして、検出物との距離に応じた強度の信号を出す。
【0021】
記憶部13は、ガイド線11に対するセンサ部12の相対的な位置を記憶する。具体的には、基本位置におけるガイド線11と4つの近接センサ22a〜22dとの信号値(距離)を記憶する。
ガイド線11とセンサ部12の相対的な位置関係としては、センサ部12に対してガイド線11が、周方向に隣り合う2つの近接センサを結ぶ線分b1、線分b2との間を通るようにした位置関係が挙げられる。特に、
図2a、bに示すように、ガイド線11が、線分b1、b2と平行であり、かつ、本体21の上下方向の中間を通るようにするのが好ましい。このような位置関係とすることにより、ガイド線11に対するセンサ部12の動作制御の計算を簡素化できる。
しかし、ガイド線11とセンサ部12との相対的な位置関係は、特に限定されるものではない。
【0022】
演算部14は、センサ部12をガイド線11に沿って移動させている状態において、ガイド線11に対するセンサ部12の相対的な位置が記憶部13に記憶させた位置関係となるようにマニピュレータの動作を制御する。詳しくは、ガイド線11に対する各近接センサ22a〜22dの距離が記憶部13に記憶させた距離となるようにマニピュレータの動作を制御する。
図2a、bのようなガイド線11とセンサ部12の位置関係とした場合において、ガイド線11の曲がり部11aに対するセンサ部の動作の制御の一例を次に示す。
演算部14は、ガイド線11の曲がり部11aに対してマニピュレータの動作を制御するとき、センサ部12の上下方向の移動成分を制御し、次いで、センサ部12の左右方向の移動成分を制御して、各近接センサ22a〜22dの距離が記憶部13に記憶させた距離となるようにマニピュレータの動作を制御する。
【0023】
センサ部12の上下方向の移動成分の制御は、上下隣り合う近接センサ22aの信号値と近接センサ22bの信号値が同じ値となるように、かつ、近接センサ22cの信号値と近接センサ22dの信号値が同じ値となるように、センサ部12を、センサ部12の中心周りに上下方向に回転させる。これによりセンサ部12はガイド線11に沿って回転し、ガイド線11の位置は上下方向において線分b1および線分b2の中間となる。
図3a〜
図3cは、センサ部12の側面に対して垂直な位置から見た状態図であり、センサ部12が相対的に上側に曲がっているガイド線11に沿って実質的に回転しながら進行している状態を示す。矢印は、センサ部12を中心とした方向を示す。
【0024】
次いで、センサ部12の左右方向の移動成分の制御は、4つの近接センサ22a〜22dの信号値(距離)が記憶部13に記憶させた信号値(距離)となるように、センサ部12を、センサ部12の中心周りに左右方向に回転させる。これによりセンサ部12はガイド線11に沿って回転し、ガイド線11とセンサ部12の相対的な位置関係が保たれる。
図3d〜
図3fは、センサ部12の上面に対して垂直な位置から見た状態図である。
図3d〜
図3fのように、ガイド線11とセンサ部12の左右方向の成分の距離Xが保たれるようにセンサ部12を左方向に回転させる。これによりセンサ部12は、相対的に左側に曲がっているガイド線11に沿って実質的に回転しながら移動する。矢印は、センサ部12を中心とした方向を示す。
【0025】
このように演算部14は、ガイド線11に対する相対的な位置が一定となるようにセンサ部12を移動させる。特に、ガイド線11の曲がり部に対して、その角度に応じてセンサ部12を回転させながら移動させる。
なおガイド線11に対する近接センサ22の距離が一定となるような演算部14の制御は、上述の手段に限定されない。
【0026】
このようにロボット教示装置10は、4つの近接センサ22a〜22dとガイド線11の距離が一定となるようにセンサ部12の動作を制御するため、センサ部12をガイド線11と衝突させることなく、センサ部12をガイド線11に沿って自動に進行させることができる。また、ガイド線11に対するセンサ部12の向き(角度)が常時同じとなるため、センサ部12とエンドエフェクタとを一体化する場合、エンドエフェクタの向きも同時に制御することができる。
さらに、センサ部12の移動経路は、ガイド線によって選択することができ、操作者にとって簡単にできる。
【0027】
この実施形態では、近接センサ22を本体21に設けたセンサ部12をマニピュレータに取り付けているが、近接センサ22を直接マニピュレータの外周面に取り付けてもよい。この場合、特許請求の範囲のセンサ部は、近接センサ22と、その近接センサが取り付けられたマニピュレータの外周面とから構成される。
この実施形態では、センサ部12をエンドエフェクタと一体となるように取り付けているが、センサ部12の取付箇所は特に限定されない。
【0028】
この実施形態では、ガイド線11の曲がり部に対してセンサ部12を回転させながらガイド線11に沿って進行させているが、ガイド線11の形状にかかわらずセンサ部12をガイド線11に沿って平行移動させてもよい。
この場合、記憶部13は、センサ部12の中心とガイド線11との距離を記憶する。
そして、演算部14は、センサ部12をガイド線11に沿って移動させている状態において、センサ部12が平行移動するようにマニピュレータの動作を制御する。
具体的には、ガイド線11を検出する複数の近接センサ22のセンサ部12における位置、および、各近接センサ22のガイド線11に対する距離からガイド線11の向きを算出する。そして、センサ部12の向きを一定とした状態で、ガイド線11とセンサ部12との距離が記憶部13に記憶させた距離となるように、センサ部12を算出したガイド線11の向きと平行な方向に動かす。
しかし、ガイド線11に対してセンサ部12を平行移動させる演算部14の制御は、上述の手段に限定されない。例えば、各近接センサ22とガイド線11との距離の平均値が一定となるように平行移動させてもよく、各近接センサ22とガイド線11との距離のうち一番小さい値が一定となるように平行移動させてもよい。
さらなる他の実施形態としては、センサ部12の上下方向の動きを平行移動とし、左右方向の動きを回転としてもよい。さらに、センサ部12の上下方向の動きを回転とし、左右方向の動きを平行移動としてもよい。
【0029】
次に、ロボット教示装置10を取り付けたロボット装置100を
図4に示す。
ロボット装置100は、ベース101と、そのベースから延びるマニピュレータ102と、マニピュレータに動きを指示する制御部103とを有する。このマニピュレータ102にロボット教示装置のセンサ部12が取り付けられ、制御部103にロボット教示装置の記憶部13および演算部14が組み込まれている。そして、センサ部12と制御部103とはケーブル等によって接続されている。なお、ロボット教示装置の記憶部13と演算部14を別の装置として制御部103と接続してもよい。
【0030】
マニピュレータ102は、公知の多関節アーム106と、その先端に設けられた公知のハンド107とを備えている。
センサ部12は、アーム106とハンド107との間に、ハンド107と一体に取り付けられている。
制御部103は、記憶部13と、演算部14と、主記憶部103a、主演算部103bと、通信部103cとを有する。また制御部103には、入力装置(図示せず)と、出力装置(図示せず)とが接続されている。
【0031】
主記憶部103aは、マニピュレータ102に教示した動作を記憶する。
主演算部103bは、アームおよびハンドの位置・姿勢の演算処理を行う。また、主演算部103bは、センサ部12の作業空間中の位置・姿勢も同時に算出する。
通信部103cは、主演算部103bおよび演算部14の結果に基づいてアーム106およびハンド107に必要な指示を送信する。また、入力装置に入力される操作者の指示を送信する。
【0032】
ロボットの教示方法について説明する。
初めに、ガイド線11に対するセンサ部12の相対的な位置を記憶する(工程S1)。
具体的には、ガイド線11と各近接センサ22a〜22dとの距離を記憶させる。これにより、ガイド線11に対するセンサ部12の向きが決定される。そのため、センサ部12は、ガイド線11に対して一定の向きを維持するようにガイド線11に沿って移動する。
【0033】
次に、任意の形状に曲げたガイド線11を作業空間に配設する(工程S2)。
操作者は、作業空間内の装置等の配置状況に応じてマニピュレータの移動経路を想定し、それに基づいてガイド線11を任意の形状に曲げ、その曲げたガイド線11を作業空間内に配設する。
【0034】
センサ部12をガイド線11に沿って移動させて、ガイド線11に対するセンサ部12の相対的な位置が記憶された相対的な位置となるようにマニピュレータ102の動作を制御する(工程S3)。
詳しくは、ガイド線11と各近接センサ22a〜22dの距離が記憶された距離となるようにマニピュレータ102の動作を制御する。
センサ部12を、ガイド線11に沿って移動させる方法としては、
図2のような相対的な位置関係の場合、入力装置を介してセンサ部12が前方向に移動するようにマニピュレータ102を外部から操作することによって行う。しかし、例えば、制御部103に、センサ部12をガイド線11に配置させた初期位置からガイド線11の両(前後)方向に移動させ、近接センサ22の信号値(例えば、信号値がゼロとなる)によりガイド線11の基端を探知させ、その反対方向をセンサ部12の進行方向として、求めさせてもよい。
【0035】
このように本発明のロボット教示方法は、ガイド線を配設するだけでマニピュレータに任意の移動経路を教示することができる。また、マニピュレータの移動経路を作業空間の状況に応じて自由に選択することができる。そのため、作業空間の状況が変わるたびに簡単に移動経路を変更することができる。
【0036】
なお工程S1は、工程S2の後に行ってもよい。例えば、工程S2においてガイド線11を配設し、そのガイド線11に対してセンサ部12を配置させ、その状態で各近接センサ22a〜22dの信号値(距離)を記憶してもよい。このように工程S2の後に、ガイド線11に対するセンサ部12の相対的な位置を記憶させることにより、センサ部12への初期作業が簡単となる。
【0037】
またロボットの教示方法の他の実施形態として、センサ部12をガイド線11に沿って平行移動させてもよい。この場合、工程S1では、ガイド線に対するセンサ部の距離を記憶させる。そして、工程S3では、ガイド線11に対するセンサ部12の距離が一定となるように、センサ部が平行移動するようにマニピュレータの動作を制御する。