特許第6755246号(P6755246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755246
(24)【登録日】2020年8月27日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】自動車室内用照明装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 3/217 20170101AFI20200907BHJP
   B60Q 3/30 20170101ALI20200907BHJP
   B60Q 3/74 20170101ALI20200907BHJP
   B60Q 3/54 20170101ALI20200907BHJP
   B60Q 3/10 20170101ALI20200907BHJP
   B60Q 3/62 20170101ALI20200907BHJP
   B60Q 3/80 20170101ALI20200907BHJP
【FI】
   B60Q3/217
   B60Q3/30
   B60Q3/74
   B60Q3/54
   B60Q3/10
   B60Q3/62
   B60Q3/80
【請求項の数】2
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-525163(P2017-525163)
(86)(22)【出願日】2016年6月8日
(86)【国際出願番号】JP2016067007
(87)【国際公開番号】WO2016208388
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2019年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-125637(P2015-125637)
(32)【優先日】2015年6月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】亀井 理祥
(72)【発明者】
【氏名】野々内 悠人
(72)【発明者】
【氏名】菅 優樹
【審査官】 飯塚 向日子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−099045(JP,A)
【文献】 特開2004−174739(JP,A)
【文献】 特開昭62−172601(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3018355(JP,U)
【文献】 特開2013−086534(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01676751(EP,A2)
【文献】 特開2002−036401(JP,A)
【文献】 特開2014−189101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/217
B60Q 3/10
B60Q 3/30
B60Q 3/54
B60Q 3/62
B60Q 3/74
B60Q 3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の室内から見える装飾部を有する加飾部材と、
前記装飾部の表面に光を照射する第一照射部であって光軸が前記装飾部の一般面に直交する方向からずれた第一照射部と、前記室内とは反対側から前記装飾部の裏面に光を照射する第二照射部であって光軸が前記装飾部の一般面に直交する方向からずれた第二照射部と、を含む複数の照射部を有する光照射部と、を備え、
前記装飾部は、前記光照射部からの光により当該装飾部の表面に陰影が生じる凹凸部を有し、
前記複数の照射部の中から前記装飾部に光を照射する照射部を選択する選択部を備える、自動車室内用照明装置。
【請求項2】
自動車の室内から見える装飾部を有する加飾部材と、
前記装飾部に光を照射する光照射部であって光軸が前記装飾部の一般面に直交する方向からずれた光照射部と、を備え、
前記装飾部の一般面に投影したときの前記光軸の方向を投影面光軸方向とし、
該投影面光軸方向における前記光照射部からの距離を投影面距離とし、
前記光照射部が点灯している時に前記装飾部の表面における前記投影面距離に応じた輝度に現れる極大値及び極小値を前記投影面距離の順に並べたときに隣り合う極大値と極小値との該極小値を分母とする比の最大が1.5以上となるようにされた、自動車室内用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車室内用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室には、照明装置が設置されている。
国際公開第2013/081070号には、発光する発光領域を有し、ドアライニングに用いられる発光オーナメントが開示されている。この発光オーナメントは、発光領域の前方に向けて光を照射する照射体と、該照射体の前方位置にて該照射体から出射された光を透過させる透過体と、表面が露出した状態で透過体の前方位置に形成された光透過可能な加飾層とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/081070号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドアライニング等の内装部品は、衝突時に乗員への危害を低減させる観点から、形状に制約があり、深い立体形状にすることができない。国際公開第2013/081070号に開示された発光オーナメントは、加飾層に絵柄が付与されているが、夜間において自動車室内に深みのある造形を表現することができない。
尚、上述した問題は、ドアライニング用の照明装置に限らず、ルーフトリム用の照明装置等、種々の自動車室内用照明装置について同様に存在する。
【0005】
本発明は、形状の制約の中で点灯時に深みのある造形を室内に表現可能な自動車室内用照明装置を提供する目的を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動車室内用照明装置は、自動車の室内から見える装飾部を有する加飾部材と、
前記装飾部の表面に光を照射する第一照射部であって光軸が前記装飾部の一般面に直交する方向からずれた第一照射部と、前記室内とは反対側から前記装飾部の裏面に光を照射する第二照射部であって光軸が前記装飾部の一般面に直交する方向からずれた第二照射部と、を含む複数の照射部を有する光照射部と、を備え、
前記装飾部は、前記光照射部からの光により当該装飾部の表面に陰影が生じる凹凸部を有し、
前記複数の照射部の中から前記装飾部に光を照射する照射部を選択する選択部を備える、態様を有する。
【0007】
さらに、本発明の自動車室内用照明装置は、自動車の室内から見える装飾部を有する加飾部材と、
前記装飾部に光を照射する光照射部であって光軸が前記装飾部の一般面に直交する方向からずれた光照射部と、を備え、
前記装飾部の一般面に投影したときの前記光軸の方向を投影面光軸方向とし、
該投影面光軸方向における前記光照射部からの距離を投影面距離とし、
前記光照射部が点灯している時に前記装飾部の表面における前記投影面距離に応じた輝度に現れる極大値及び極小値を前記投影面距離の順に並べたときに隣り合う極大値と極小値との該極小値を分母とする比の最大が1.5以上となるようにされた、態様を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、形状の制約の中で点灯時に深みのある造形を室内に表現可能な自動車室内用照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、自動車室内用照明装置を取り付けた自動車の内装の例を側面部の図示が省略された状態で示す側面図。
図2図2(a)〜(c)は自動車室内用照明装置を取り付けた内装材の例を示す図。
図3図3は、自動車室内用照明装置を図2(a)のA1に相当する位置で切断したときの垂直端面の例を模式的に示す図。
図4図4(a)は加飾部材を図2(a)のA1に相当する位置で切断したときの垂直端面の例を模式的に示す図、図4(b)は加飾部材の表面の例を模式的に示す図。
図5図5は、加飾部材の取付構造の例を模式的に示す垂直断面図。
図6図6は、光照射部の別の例を模式的に示す図。
図7図7(a)は第一照射部を点灯した照明装置の垂直端面の例を模式的に示す図、図7(b)は第二照射部を点灯した照明装置の垂直端面の例を模式的に示す図。
図8図8は、自動車の電気回路の構成例を模式的に示す図。
図9図9(a)は第一照射部が点灯している時において装飾部の表面における投影面距離に応じた輝度の例を模式的に示す図、図9(b)は第二照射部が点灯している時において装飾部の表面における投影面距離に応じた輝度の例を模式的に示す図、図9(c)は両照射部が消灯していて車外から環境光が入射している時において装飾部の表面における投影面距離に応じた輝度の例を模式的に示す図。
図10図10(a)は第一照射部を点灯した照明装置の垂直端面の別の例を模式的に示す図、図10(b)は第二照射部を点灯した照明装置の垂直端面の別の例を模式的に示す図。
図11図11(a)は第一照射部を点灯した照明装置の垂直端面の別の例を模式的に示す図、図11(b)は第二照射部を点灯した照明装置の垂直端面の別の例を模式的に示す図。
図12図12は、第二照射部の導光体の機能を加飾部材の導光層に付与した変形例を示す図。
図13図13(a),(b)は別の自動車室内用照明装置を取り付けた内装材の例を示す図。
図14図14は、自動車室内用照明装置を図13(a)のA2に相当する位置で切断したときの垂直端面の例を模式的に示す図。
図15図15は、別の自動車室内用照明装置を図2(a)のA1に相当する位置で切断したときの垂直端面の例を模式的に示す図。
図16図16(a)は第一照射部を点灯した照明装置の垂直端面の例を模式的に示す図、図16(b)は第二照射部を点灯した照明装置の垂直端面の例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0011】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1〜16に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、図1〜16は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。
【0012】
[態様1]
本技術の自動車室内用照明装置10は、加飾部材20と光照射部40を備える。前記加飾部材20は、自動車1の室内(例えば車室SP1)から見える装飾部30を有する。前記光照射部40は、前記装飾部30に光LT0を照射する。前記光照射部40の光軸AX0は、前記装飾部30の一般面31に直交する方向D10からずれている。前記装飾部30は、前記光照射部40からの光LT0により当該装飾部30の表面30aに陰影S0が生じる凹凸部35を有する。
【0013】
光軸AX0が装飾部30の一般面31に直交する方向D10からずれた光照射部40からの光LT0が装飾部30の凹凸部35に照射されると、この凹凸部35の陰影S0が当該装飾部30の表面30aに生じる。このため、装飾部30の形状に自動車1の内装としての制約があっても、点灯時に装飾部30の表面30aに現れる陰影により深みのある造形を表現することが可能となる。従って、本態様は、形状の制約の中で点灯時に深みのある造形を室内に表現可能な自動車室内用照明装置を提供することができる。
【0014】
ここで、自動車の室内には、車室、荷室、等が含まれる。
加飾は装飾を加えることを意味し、加飾部材は自動車の室内に装飾を加える部材を意味する。
装飾部に光を照射する光照射部は、装飾部の表面に光を照射してもよいし、室内とは反対側から装飾部の裏面に光を照射してもよい。
凹凸は、一様でないさまを意味する。従って、凹凸部には、凹部と凸部の両方が含まれる場合の他、凹部が無くて凸部がある場合、及び、凸部が無くて凹部がある場合も含まれる。
本技術の自動車室内用照明装置は、車室側壁部、車室天井部、車室前部、荷室側壁部、等に設置可能である。
図14等に例示するように、加飾部材(120)は、装飾部30とともに、自動車の室内から見える補助部125であって光照射部からの光が照射されない補助部125を有してもよい。この場合、点灯時に光が照射される装飾部30が補助部125と比べて強調されるので、形状の制約の中で点灯時にさらに深みのある造形を室内に表現可能な自動車室内用照明装置を提供することができる。
【0015】
尚、前記凹凸部35は、前記室内(SP1)側へ凸とされた凸部36を有してもよい。該凸部36の曲率半径は、3.5mm以上でもよい。本態様は、装飾部30の凸部36が曲率半径3.5mm以上と緩やかな曲面形状であるので、内装部品の形状として好適な制約の中で点灯時に深みのある造形を室内に表現可能な自動車室内用照明装置を提供することができる。
【0016】
[態様2]
図7(a)等に例示するように、前記光照射部40は、前記装飾部30の表面30aに光LT1を照射してもよい。この場合、光軸AX1が装飾部30の一般面31に直交する方向D10からずれた光照射部40からの光LT1が装飾部30の凹凸部35に照射されると、この凹凸部35の陰影S1が当該装飾部30の表面30aに生じる。本態様は、装飾部30の表面30aに光LT1が照射されるので、形状の制約の中で点灯時にさらに深みのある造形を室内に表現可能な自動車室内用照明装置を提供することができる。
【0017】
[態様3]
本照明装置10は、前記室内(SP1)側に前記加飾部材20を配置した内装部材70を備えてもよい。また、前記光照射部40からの光LT1が前記装飾部30に遮られることによる陰影S3が前記内装部材70の表面70aに生じてもよい。この場合、点灯時に照らされる装飾部30に近い部分の内装部材70の表面70aに陰影S3が生じるので、内装部材70に対して装飾部30が浮かび上がったような演出が可能となる。従って、本態様は、点灯時に装飾部を内装部材に対して浮かび上がらせる演出を表現可能な自動車室内用照明装置を提供することができる。
【0018】
尚、本照明装置10は、前記光照射部40から前記室内(SP1)側に配置された遮光性の覆い部75を備えてもよい。この態様は、室内(SP1)にいる乗員から光照射部40が見え難くなるので、自動車室内の美観を向上させることができる。
【0019】
[態様4]
前記光照射部40は、前記装飾部30の表面30aに光LT1を照射する第一照射部50であって光軸AX1が前記装飾部30の一般面31に直交する方向D10からずれた第一照射部50と、前記室内(SP1)とは反対側から前記装飾部30の裏面30bに光LT2を照射する第二照射部60であって光軸AX2が前記装飾部30の一般面31に直交する方向D10からずれた第二照射部60と、を含む複数の照射部42を有してもよい。図8に例示するように、本照明装置10は、前記複数の照射部42の中から前記装飾部30に光LT0を照射する照射部42を選択する選択部80を備えてもよい。本態様は、装飾部30の表面30aに生じる陰影S0が照射部42の選択に応じた陰影となるので、点灯時にさらに深みのある造形を室内に表現可能な自動車室内用照明装置を提供することができる。例えば、凹凸部35の陰影S0は、装飾部30の表面30aに光LT1を照射する場合と、室内(SP1)とは反対側から装飾部30の裏面30bに光LT2を照射する場合と、で位置関係が逆になる。そこで、装飾部30に光LT0を照射する照射部42を第一照射部50と第二照射部60とで切り替えると、トリックアートのような演出を表現することが可能となる。
ここで、前記複数の照射部42には、前記第一照射部50及び前記第二照射部60とは異なる照射部が含まれてもよい。
【0020】
[態様5]
前記装飾部30は、拡散透過性を有してもよい。図7(b)等に例示するように、前記光照射部40は、前記室内(SP1)とは反対側から前記装飾部30の裏面30bに光LT2を照射してもよい。この場合、装飾部30に拡散透過性があるので、装飾部30の裏面30bに照射された光LT2が拡散して室内(SP1)側へ出る。また、光軸AX2が装飾部30の一般面31に直交する方向D10からずれた光照射部40からの光LT2が室内(SP1)とは反対側から拡散透過性の装飾部30の凹凸部35に照射されると、この凹凸部35の陰影S2が当該装飾部30の表面30aに生じる。従って、本態様は、形状の制約の中で点灯時にさらに深みのある造形を室内に表現可能な自動車室内用照明装置を提供することができる。
ここで、拡散透過とは、多くの方向に光を拡散する透過を意味する。
【0021】
[態様6]
図15等に例示するように、前記加飾部材(220)は、前記装飾部30の前記室内(例えば車室SP1)側に配置された導光体(例えば導光層22)を有してもよい。この場合も、光軸AX0が装飾部30の一般面31に直交する方向D10からずれた光照射部40からの光LT0が装飾部30の凹凸部35に照射されると、この凹凸部35の陰影S0が当該装飾部30の表面30aに生じる。この陰影S0は、導光体(22)を通して室内から見える。従って、本態様は、形状の制約の中で点灯時にさらに深みのある造形を室内に表現可能な自動車室内用照明装置を提供することができる。
[態様7]
また、前記加飾部材20は、前記室内(SP1)側に前記装飾部30が積層された導光層22を有してもよい。前記光照射部40は、前記導光層22の縁部23から該導光層22に光LT2を入射させて前記装飾部30の裏面30bに照射してもよい。本態様は、光照射部40からの光LT2を効率的に装飾部30へ導くことができるので、点灯時にさらに深みのある造形を室内に表現可能な自動車室内用照明装置を提供することができる。
【0022】
[態様8]
前記光照射部40から前記導光層22に入射した光LT2が該導光層22から出射して前記内装部材70の表面70aを照らすようにされてもよい。この態様は、内装部材70の表面70aを照らしながら室内(SP1)に深みのある造形を表現可能な自動車室内用照明装置を提供することができる。
【0023】
[態様9]
また、図9(a),(b)等に例示するように、本技術の自動車室内用照明装置10は、自動車1の室内(SP1)から見える装飾部30を有する加飾部材20と、
前記装飾部30に光LT0を照射する光照射部40であって光軸AX0が前記装飾部30の一般面31に直交する方向D10からずれた光照射部40と、を備え、
前記装飾部30の一般面31に投影したときの前記光軸AX0の方向を投影面光軸方向D11とし、
該投影面光軸方向D11における前記光照射部40からの距離を投影面距離Zとし、
前記光照射部40が点灯している時に前記装飾部30の表面30aにおける前記投影面距離Zに応じた輝度L(Z)に現れる極大値Li及び極小値Ljを前記投影面距離Zの順に並べたときに隣り合う極大値Liと極小値Ljとの該極小値Ljを分母とする比Li/Ljの最大(例えば点灯時最大比Ron)が1.5以上となるようにされた、態様を有する。
【0024】
装飾部30の表面30aにおける投影面距離Zに応じた輝度L(Z)に現れる極大値Li及び極小値Ljを投影面距離Zの順に並べたときに隣り合う極大値Liと極小値Ljとの該極小値Ljを分母とする比Li/Ljの最大(Ron)は、装飾部30の表面30aにおいて陰影S0と該近辺の高輝度部分との輝度比に対応する。前記比Li/Ljの最大(Ron)が1.5以上となることにより、装飾部30の形状に自動車1の内装としての制約があっても、点灯時に装飾部30の表面30aに現れる陰影S0により深みのある造形を表現することが可能となる。従って、本態様も、形状の制約の中で点灯時に深みのある造形を室内に表現可能な自動車室内用照明装置を提供することができる。
ここで、極大はある関数の値が変数の或る値の近傍で最大となることを意味し、極大値はその値を意味する。極小はある関数の値が変数の或る値の近傍で最小となることを意味し、極小値はその値を意味する。
【0025】
(2)自動車の例:
図1は、自動車室内用照明装置10を取り付けた自動車の内装の例を側面部の図示が省略された状態で示している。これらの図中、FRONT、REAR、UP、DOWNは、それぞれ、前、後、上、下を示す。左右の位置関係は、自動車1の前を見る方向を基準とする。また、符号D1は加飾部材20の長手方向を示し、符号D2は自動車1の前後方向を示し、符号D3は上下方向を示す。
図1に示す自動車1は、道路上で使用されるように設計及び装備された路上走行自動車とされ、図2に示すような車体パネル2が車室SP1(自動車の室内)を囲んで車体を形成している。車体パネル2は、例えば、鋼板といった金属で形成される。本自動車1は、前席7aとセカンドシート7bとサードシート7cの3列シートを備えるワゴンタイプの乗用自動車とされている。むろん、本技術を適用可能な自動車には、いわゆるステーションワゴンやワンボックスカー等の他、セダンタイプ等の自動車も含まれ、2列シートタイプといった3列シートタイプ以外の自動車も含まれる。
【0026】
車体パネル2の車室SP1側には、各種内装材3,4,5,6が設置されている。車両前部のインストルメントパネルには、インストルメントパネル内装材3a等、車室SP1の前部を形成するための前部用内装材3が設置されている。車両側面部の車体パネルには、自動車室内の側面部を形成するための側面部用内装材4が設置されている。側面部用内装材4には、サイドドアパネルに設置されるサイドドアトリム4a、ピラーに設置されるピラーガーニッシュ4b、デッキサイドパネルに設置されるデッキサイドトリム4c、等がある。車両後部の後部ドアパネルには、後部ドアトリム5a等、荷室SP2(自動車の室内)の後部を形成するための後部用内装材5が設置されている。車両天井部のルーフパネルには、ルーフトリム6a等、車室SP1の天井部を形成するための天井用内装材6が設置されている。
【0027】
内装材3〜6には、ドアトリム4aのための照明装置10A、ピラーガーニッシュ4bのための照明装置10B、デッキサイドトリム4cのための照明装置10C、ルーフトリム6aのための照明装置10D、インストルメントパネル内装材3aのための照明装置10E、後部ドアトリム5aのための照明装置10F、といった照明装置10を設置することが可能である。むろん、照明装置10A〜10Fの一部が無くても、本技術を適用可能である。以下の具体例では、ドアトリム4aのための照明装置10Aについて、説明する。
【0028】
(3)照明装置の具体例:
図2(a)は、照明装置10を取り付けたサイドドアトリム4aの車室SP1側を示している。図2(a)に示すドアトリム4aは、主要部を構成するトリムロア(内装部材70)、ドアトリム4aの上縁部に配置されたトリムアッパー(覆い部75)、照明装置10、を備えている。トリムロア(70)には、アームレスト71、ポケット72、等が取り付けられている。内装部材70及び覆い部75には、熱可塑性樹脂といった樹脂材料を射出成形等により成形した成形品、樹脂材料を発泡させながら射出成形等により成形した成形品、樹脂材料の内装基材に不織布、織物、編物、といった表皮材を積層したもの、等を用いることができる。前記樹脂材料には、ポリプロピレン(PP)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、これらの合成樹脂にエラストマーを添加した改質樹脂、これらの樹脂に着色剤や充てん材といった添加剤を添加した材料、等を用いることができる。
照明装置10は、車室SP1に面する装飾部30を有する加飾部材20、及び、図2(b),(c)に示すように光LT0を装飾部30に照射する光照射部40を備えている。装飾部30は、車室SP1から見える。加飾部材20における長手方向D1の両端部25にはホルダー28が取り付けられ、これらのホルダー28がトリムロア(70)とトリムアッパー(75)に取り付けられている。
【0029】
図3は、照明装置10を図2(a)のA1に相当する位置で切断したときの垂直端面を模式的に示している。図4(a)は、加飾部材20を図2(a)のA1に相当する位置で切断したときの垂直端面を模式的に示している。図4(b)は、加飾部材20の車室SP1側の面を模式的に示している。これらの図中、符号D4は、自動車1の幅方向を示す。図3図4(a)では、分かり易く示すため、加飾部材20の断面を示すハッチングを省略している。
図3に示すように、光照射部40は、車室SP1側から装飾部30の表面30aに光LT1を照射する第一照射部50、及び、車室SP1とは反対側(車外側)から装飾部30の裏面30bに光LT2を照射する第二照射部60を有する。尚、第一照射部50が車室SP1(室内)側から装飾部30の表面30aに光LT1を照射するとは、第一照射部50が装飾部30に対して裏面30b側ではなく表面30a側にあることを意味する。また、第二照射部60が車室SP1(室内)とは反対側から装飾部30の裏面30bに光LT2を照射するとは、第二照射部60が装飾部30に対して表面30a側ではなく裏面30b側にあることを意味する。第一照射部50の光軸AX1は、装飾部30において凹凸部35を除く一般面31に直交する方向D10からずれている。第二照射部60の光軸AX2も、装飾部30において凹凸部35を除く一般面31に直交する方向D10からずれている。従って、両照射部50,60の光軸AX0は、いずれも、装飾部30の一般面31に直交する方向D10からずれている。
【0030】
ここで、光軸とは、光照射部から出る光の中心線を意味する。例えば、光源から光を直接、装飾部に照射する場合、光源の設計上の中心軸が光軸に相当する。本明細書において、光軸AX0は光軸AX1,AX2を総称し、光LT0は光LT1,LT2を総称する。
図3に示す装飾部30は、加飾部材20において室内(車室SP1)から普通に見える範囲内で室内(車室SP1)に面する部位とする。図3に例示するように加飾部材20から室内(車室SP1)側に遮光性の覆い部75が配置される場合、加飾部材20において覆い部75で覆われず室内(車室SP1)に面する部位とする。図3図4(a)に示す加飾部材20の装飾部30は、最上点P1を起点として最下点P2までの部位となる。
【0031】
装飾部30の一般面31は、装飾部30の表面30aに陰影S0が生じる凹凸部35が無いと仮定したときの面を意味し、本具体例では凹凸部35を除く面でもあり、平面でもよいし、曲率半径100mm程度以上(好ましくは程度150mm以上、さらに好ましくは程度200mm以上)の緩やかな曲面でもよい。
一般面31が曲面である場合、一般面31に直交する方向D10は、一般面31の平均的な傾きを表す平面に直交する方向とする。例えば、図3図4(a)に示すように垂直断面において一般面31が曲線となる場合、一般面31に直交する方向D10は、最上点P1と最下点P2とを通る平面に直交する方向とする。
【0032】
加飾部材20は、車室SP1側に装飾部30が積層された導光層22を有する略板状の部材である。加飾部材20は、面状の装飾部30を車室SP1に向け長手方向D1を略前後方向D2に向けて配置される。図3に示す加飾部材20の裏面20bは、導光層22の裏面でもあり、内装部材70に面している。導光層22の上縁部23は、第二照射部60からの光LT2が入射する部位であり、反射及び拡散が抑制されるように正透過性を有する入射面とされている。ここで、正透過とは、巨視的にみて屈折の法則に従う光の透過を意味する。むろん、正透過性を有することには、正透過成分を主としながら反射成分と拡散成分の少なくとも一方があることが含まれる。導光層22の下縁部24は、上縁部23から入射した光LT2が出射する部位であり、反射及び拡散が抑制されるように正透過性を有する出射面とされている。
導光層22には、透明材料を射出成形といった公知の方法により成形した透明の成形品等を用いることができる。前記透明材料には、アクリル(PMMA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、シリコーン(SI)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、といった透明性を有する樹脂材料等を用いることができる。
【0033】
装飾部30は、車室SP1からの光に対して拡散反射性を有するとともに、車室SP1とは反対側からの光に対して拡散透過性を有する。ここで、拡散反射とは、多くの方向に光を拡散する反射を意味する。上述したように、拡散透過とは、多くの方向に光を拡散する透過を意味する。むろん、拡散反射性を有することには、拡散反射成分を主としながら透過成分があることが含まれる。拡散透過性を有することには、拡散透過成分を主としながら反射成分があることが含まれる。装飾部30は、透過光と反射光の両方ともランバーシャンな角度強度分布(無指向性)に近い光線となるような正反射成分の少ないマッドな状態が好ましい。装飾部30に拡散反射性があることにより、第一照射部50の装飾部30への映り込みが抑制され、見栄えが向上する。装飾部30に拡散透過性があることにより、装飾部30が行燈のように照らされる効果が発現する。
【0034】
装飾部30は、光照射部40からの光LT0により当該装飾部30の表面30aに陰影S0が生じる形状とされた凹凸部35を有している。第一照射部50からの光LT1が装飾部30の表面30aに照射されると、凹凸部35による陰影S1が装飾部30の表面30aに形成される。第二照射部60からの光LT2が装飾部30の裏面30bに照射されると、凹凸部35による陰影S2が装飾部30の表面30aに形成される。本明細書において、陰影S0は陰影S1,S2を総称する。図2(a)に示すように凹凸部35の高さを長手方向D1における位置に応じて徐変させると、図2(b),(c)に示すように陰影S1,S2の高さを長手方向D1における位置に応じて徐変させることができる。
図3等に示す凹凸部35は、車室SP1側へ凸とされた凸部36を有している。この凸部36の曲率半径は、衝突時に乗員への危害を低減させる観点から、3.5mm以上とされている。むろん、凹凸部35は、車室SP1とは反対側へ凹とされた凹部を有してもよい。凹凸部35の凹凸形状、一般面31の曲面形状、光照射部40の配置、等により、陰影S1,S2の形状を任意に変えることができる。
【0035】
装飾部30には、光拡散性を有する光拡散フィルム、粗面形状、等を採用することができる。光拡散フィルムには、低グロスなマッド調のフィルムが好ましく、例えば、光拡散剤を分散させた合成樹脂フィルム等を用いることができる。前記光拡散剤には、ガラスビーズ、プラスチックビーズ、等を用いることができる。光拡散剤を分散させる合成樹脂は、透明性、ビーズ分散性、耐光性、及び、耐湿性がある樹脂が好ましく、例えば、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、等を用いることができる。また、導光層22になる導光体の表面に粗面形状を形成して室内側に装飾部30が積層された導光層22を形成してもよい。この粗面形状は、例えば、導光体の表面にブラスト材を吹き付ける粗面化処理により形成してもよいし、粗面形状を有する金型に樹脂材料を射出して成形することにより形成してもよい。
【0036】
加飾部材20は、接着剤等で内装部材70や覆い部75に固定されてもよいが、図5に示すようなホルダー28で内装部材70や覆い部75に固定されてもよい。図5は、加飾部材20の取付構造の例を模式的に示す垂直断面図である。加飾部材20における長手方向D1の両端部25に固定されるホルダー28は、加飾部材20の端部25が挿入される凹部28d、裏面28bから車室SP1とは反対側へ突出したボス28e、上縁部28cから上方へ延出した延出部28f、等を有している。加飾部材20の端部25をホルダー28の凹部28dに挿入すると、加飾部材20の端部25にホルダー28が取り付けられる。加飾部材端部25とホルダー凹部28dとを接着剤等で固定してもよい。
【0037】
延出部28fには、覆い部75の裏面75bから車室SP1とは反対側へ突出したボス76を通すための挿通穴28gが形成されている。例えば、覆い部75のボス76をホルダー28の挿通穴28gに通して覆い部75の台座部76bを延出部28fに突き当て、溶着手段によりボス76の先端部を溶着することにより、加飾部材端部25に取り付けられたホルダー28が覆い部75に固定される。
内装部材70には、ホルダー28のボス28eを通すための挿通穴70cが形成されている。例えば、ホルダー28のボス28eを内装部材70の挿通穴70cに通してホルダー28の裏面28bを内装部材70の表面70aに当て、溶着手段によりボス28eの先端部を溶着することにより、加飾部材端部25に取り付けられたホルダー28が内装部材70に固定される。
【0038】
むろん、加飾部材20は、覆い部75には固定されずに内装部材70に固定されてもよいし、内装部材70には固定されずに覆い部75に固定されてもよいし、車体パネルといった内装部材70及び覆い部75とは異なる部位に固定されてもよい。
本技術は、原理的に加飾部材20の大きさによらず、各構成部品の位置関係により陰影効果を発現し成立するものである。照明装置10が自動車室内用であることを考慮した場合、加飾部材20の大きさは、例えば、長手方向D1における長さを2000mm以下、高さ(上下方向D3における長さ)を1500mm、及び、厚み(幅方向D4における長さ)を200mm以下としてもよい。
【0039】
第一照射部50は、装飾部30の表面30aに照射する光LT1を出す光源51を有している。この光源51は、図3に示すように光LT1を装飾部30に直接照射する配置とされてもよいし、図6に示す導光体52等を介して光LT1を照射する配置とされてもよい。第一照射部50の光軸AX1と、一般面31に直交する方向D10と、のなす角度θh1は、装飾部30の表面30aに陰影S1が形成されるように、0°ではなく、90°以下の範囲内で、好ましくは45°≦θh1≦89°、より好ましくは60°≦θh1≦88°、さらに好ましくは75°≦θh1≦87°を満たす角度とされる。凸部36の上側から第一照射部50が光LT1を装飾部30の表面30aに照射することにより、図7(a)に示すように、凸部36を起点とした下側において表面30aに陰影S1が生じ、凸部36を起点とした上側において表面30aに高輝度部分H1が生じる。また、内装部材70から車室SP1側に加飾部材20が配置されているので、第一照射部50からの光LT1が装飾部30に遮られることによる陰影S3が内装部材70の表面70aにおいて加飾部材20の下に生じる。
【0040】
第二照射部60は、装飾部30の裏面30bに照射する光LT2を出す光源61を有している。この光源61は、図3に示すように光LT2を装飾部30に直接照射する配置とされてもよいし、図6に示す導光体62等を介して光LT2を照射する配置とされてもよい。第二照射部60の光軸AX2と、一般面31に直交する方向D10と、のなす角度θh2は、装飾部30の表面30aに陰影S2が形成されるように、0°ではなく、90°以下の範囲内で、好ましくは45°≦θh2≦89°、より好ましくは60°≦θh2≦88°、さらに好ましくは75°≦θh2≦87°を満たす角度とされる。導光層22の上縁部23から導光層22に光LT2を入射させて拡散透過性の装飾部30の裏面30bに照射することにより、装飾部30が行燈のように照らされる。また、図7(b)に示すように、凸部36を起点とした上側において表面30aに陰影S2が生じ、凸部36を起点とした下側において表面30aに高輝度部分H2が生じる。第二照射部60による陰影S2と高輝度部分H2との位置関係は、第一照射部50による陰影S1と高輝度部分H1との位置関係の逆となる。このように、第二照射部60からの光LT2による装飾部30の輝度分布が第一照射部50からの光LT1による輝度分布と異なるので、第二照射部60の点灯時に第一照射部50の点灯時とは異なる態様の演出が表現される。さらに、第二照射部60から導光層22の上縁部23に入射した光LT2が導光層22の下縁部24から出射するので、この出射光による高輝度部分H3が内装部材70の表面70aにおいて加飾部材20の下に生じる。
【0041】
尚、光源51,61には、LED(発光ダイオード)、白熱電球、ハロゲン電球、蛍光ランプ、放電ランプ、等を用いることができる。LEDは、軽量かつ超寿命で、(照射方向に指向性を有し、)省電力、省スペース、等の点で好ましい。光源の発光色には白、赤、緑、青、等、種々の色を採用することができ、同じ自動車に異なる発光色の光源を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
図6は、長尺な導光体52,62を介して光源51,61からの光LT1,LT2を装飾部30に照射する光照射部の例を模式的に示している。図6に示す導光体52,62は、略四角柱状の棒状部材であり、長手方向D1を略前後方向D2に向けて配置されている。導光体52,62における長手方向D1の端面52c,62cは、光源51,61からの光LT1,LT2が入射する部位であり、反射及び拡散が抑制されるように正透過性を有する入射面とされている。光源51,61から端面52c,62cに向かう光軸AX1,AX2は、ほぼ長手方向D1に沿った向きとされている。導光体52,62において装飾部30側となる出射面52a,62aは、装飾部30とは反対側となる反射面52b,62bで反射した光LT1,LT2が出射する部位であり、反射及び拡散が抑制されるように正透過性を有している。反射面52b,62bには、端面52c,62cから入射した光LT1,LT2を出射面52a,62aの方へ反射させるための凹部53,63が長手方向D1へ間隔を空けて複数形成されている。凹部53,63を有する反射面52b,62bには、金属層といった反射率を高める反射層を積層してもよい。凹部53,63の形状は、出射面52a,62aから装飾部30に向かう光軸AX1,AX2が図3で示した向きとなるように設計されている。凹部53,63の好ましい形状は、反射面52b,62bから導光体52,62の内部に向かって先細りとなる断面溝状といった、端面52c,62cから入射した光LT1,LT2を出射面52a,62aの方へ反射させる傾斜面を有する形状等である。
【0043】
導光体52,62には、導光層22と同様、透明材料を射出成形といった公知の方法により成形した透明の成形品等を用いることができる。前記透明材料には、PMMA樹脂、PC樹脂、ABS樹脂、SI樹脂、PE樹脂、PP樹脂、といった透明性を有する樹脂材料等を用いることができる。
尚、導光体52,62の各面(面52a,52b,52c,62a,62b,62c等)は、平面のみならず、一部又は全部が曲面に形成されてもよい。また、導光体52,62は、直線状に延びた形状のみならず、一部又は全部が曲線状に延びた形状でもよい。
【0044】
加飾部材20が長手方向D1へ非常に長尺な部材である場合、光源51,61からの光LT1,LT2を略均一となるように装飾部30に直接照射するためには、光源の数を多くする必要がある。このような場合、図6に示すように導光体52,62を介して光LT1,LT2を装飾部30に照射するように光源51,61を配置すると、光源の数を削減することでき、部品のコストを削減することができる。また、消費電力も少なくすることができる。むろん、装飾部30に対して光LT1,LT2を長手方向D1へ流れるように照射する等、装飾部30の部分毎に光LT1,LT2の照射を制御する場合には、光源51,61からの光LT1,LT2を装飾部30に直接照射してもよい。
【0045】
照明装置10は、第一照射部50及び第二照射部60を含む複数の照射部42の中から装飾部30に光LT0を照射する照射部を選択する選択部80を備えてもよい。図8は、照明装置10等の照明系統を制御する制御部80U及び周辺の電気回路をブロック図により示している。制御部80Uには、照明系統を制御するECU(Electronic Control Unit;電子制御装置)を利用することができる。
図8に示す制御部80Uには、スイッチSW1,SW2を含む各種スイッチ、光源51,61を含む各種光源、等が接続されている。スイッチSW1,SW2には、乗員からの操作を受け付ける操作スイッチ、ドアが開いているか否かに応じて切り替わるドア開検出スイッチ、ドアがロックされているか否かに応じて切り替わるドアロック検出スイッチ、イグニッションがオンであるか否かに応じて切り替わるイグニッションスイッチ、これらの組合せ、等を適用することができる。スイッチSW1,SW2及び制御部80Uは、選択部80を構成する。
【0046】
制御部80Uは、例えば、CPU(Central Processing Unit)80a、ROM(Read Only Memory)80b、RAM(Random Access Memory)80c、I/O(入出力)回路80d、等が互いに情報を入出力可能に接続されて構成される。ROM80bには、図8に示す情報テーブルT1に従って照明を切り替える処理を実行するための照明制御プログラムを含むプログラム80pが書き込まれている。ここで、「間接照明」とは、第一照射部50から装飾部30の表面30aに光LT1を照射して内装部材70の表面70aにおける加飾部材20の下に陰影S3を生じさせる照明モードを意味する。「直接照明」とは、第二照射部60から装飾部30の裏面30bに光LT2を照射して内装部材70の表面70aにおける加飾部材20の下を照らす照明モードを意味する。
【0047】
図8に示すテーブルT1の例では、スイッチSW1がオフからオンに切り替わると、制御部80Uは、第一照射部50の光源51を点灯させ、第二照射部60の光源61を消灯状態にする。スイッチSW1がオンからオフに切り替わると、制御部80Uは、第一照射部50の光源51を消灯させる。スイッチSW2がオフからオンに切り替わると、制御部80Uは、第二照射部60の光源61を点灯させ、第一照射部50の光源51を消灯状態にする。スイッチSW2がオンからオフに切り替わると、制御部80Uは、第二照射部60の光源61を消灯させる。
【0048】
むろん、照明の切り替えは、図8に示す例に限定されない。例えば、制御部80Uを使用せず、スイッチSW1がオンである時に光源51が点灯してスイッチSW1がオフである時に光源51が消灯するようにし、スイッチSW2がオンである時に光源61が点灯してスイッチSW2がオフである時に光源61が消灯するようにしてもよい。
【0049】
ここで、図3図4(a),(b)、等に示すように、装飾部30の一般面31に投影したときの光軸AX0の方向を投影面光軸方向D11とし、該投影面光軸方向D11における光照射部40からの距離を投影面距離Zとする。尚、図3及び図4(a),(b)には、投影面光軸方向D11において、装飾部30のうち光照射部40に最も近い位置P1、及び、光照射部40から最も遠い位置P2を示している。最も遠い位置P2の投影面距離(ZP2とする。)は、最も近い位置P1の投影面距離(ZP1とする。)よりも大きい。
【0050】
図9(a)は、第二照射部60が消灯していて第一照射部50が点灯している時において装飾部30の表面30aにおける投影面距離Zに応じた輝度L(Z)の例を模式的に示している。図9(b)は、第一照射部50が消灯していて第二照射部60が点灯している時において装飾部30の表面30aにおける投影面距離Zに応じた輝度L(Z)の例を模式的に示している。図9(c)は、両照射部50,60が消灯していて車外から環境光が入射している時において装飾部30の表面30aにおける投影面距離Zに応じた輝度L(Z)の例を模式的に示している。図9(a)〜(c)において、横軸は投影面距離Zを示し、縦軸は輝度L(Z)の相対値Lr(Z)を示す。輝度L(Z)の最大値をLmax(Z)とすると、相対値Lr(Z)はL(Z)/Lmax(Z)となる。
【0051】
照射部50,60の一方が点灯している時、装飾部30の表面30aにおける輝度L(Z)には極小値Ljが生じ、多くの場合、極大値Liが生じる。極小値Ljには陰影S1,S2により生じる極小値が含まれ、極大値Liには高輝度部分H1,H2により生じる極大値が含まれる。
ここで、照射部50,60の一方が点灯している時に装飾部30の表面30aにおける投影面距離Zに応じた輝度L(Z)に現れる極大値Li及び極小値Ljを投影面距離Zの順に並べたときに隣り合う極大値Liと極小値Ljとの該極小値Ljを分母とする比Li/Ljの最大を点灯時最大比Ronとする。一方、両照射部50,60が消灯している時に装飾部30の表面30aにおける輝度L(Z)に極大値Li及び極小値Ljが生じる場合において、極大値Li及び極小値Ljを投影面距離Zの順に並べたときに隣り合う極大値Liと極小値Ljとの該極小値Ljを分母とする比Li/Ljの最大を消灯時最大比Roffとする。点灯時最大比Ronは、消灯時最大比Roffよりも大きくなる。尚、点灯時最大比Ronは、1.5以上が好ましい。
車外からフロントウィンドウやサイドウィンドウ等を介して入射する環境光には、一般面31に直交する方向D10とのなす角度(θh1に相当)が0°以上45°未満の向きを含む様々な向きの成分が含まれている。従って、装飾部30の表面30aにおける輝度L(Z)に極大値Li及び極小値Ljが生じても、通常、消灯時最大比Roffは最大でも1.25程となる。
【0052】
図9(a)に示すように、第二照射部60が消灯し第一照射部50が点灯している時において、投影面距離Zが大きくなる順に、極小値Lj=L1、極大値Li=L2、極小値Lj=L3(0<L3<L1<L2)が現れたとする。極大値L2は図7(a)で示した高輝度部分H1に生じる極大値であり、極小値L3は図7(a)で示した陰影S1に生じる極小値である。この場合、隣り合う極小値L1と極大値L2との該極小値L1を分母とする比L2/L1は、隣り合う極小値L3と極大値L2との該極小値L3を分母とする比L2/L3よりも小さい。従って、点灯時最大比Ronは、L2/L3である。
図9(b)に示すように、第一照射部50が消灯し第二照射部60が点灯している時において、投影面距離Zが大きくなる順に、極小値L4、極大値L5(0<L4<L5)が現れたとする。極小値L4は図7(b)で示した陰影S2に生じる極小値であり、極大値L5は図7(b)で示した高輝度部分H2に生じる極大値である。この場合、隣り合う極小値L4と極大値L5との該極小値L4を分母とする比L5/L4が点灯時最大比Ronである。
尚、図9(c)に示すように、両照射部50,60が消灯している時において、投影面距離Zが大きくなる順に、極小値Lj=L6、極大値Li=L7、極小値Lj=L8(0<L8<L6<L7)が現れたとする。この場合、隣り合う極小値L6と極大値L7との該極小値L6を分母とする比L7/L6は、隣り合う極小値L8と極大値L7との該極小値L8を分母とする比L7/L8よりも小さい。従って、消灯時最大比Roffは、L7/L8である。
【0053】
本照明装置10は、光照射部40からの光LT0により装飾部30の表面30aに陰影S0が生じる凹凸部35が装飾部30に形成されていることにより、図9(a),(b)に示すように、輝度L(Z)の極小値Ljが生じ、多くの場合、極大値Liが生じる。これにより、装飾部30の形状に自動車1の内装としての制約があっても、点灯時に装飾部30の表面30aにおいて輝度L(Z)の極小値Ljが生じる陰影S0により深みのある造形を表現することが可能となる。また、装飾部30の表面30aに輝度L(Z)の極大値Liも生じると、好ましくはRon≧1.5であると、さらに深みのある造形が表現される。
【0054】
尚、投影面光軸方向D11において凹凸部35に含まれる凸部36と凹部の数の合計が2以上である等により、より多くの極大値Liが存在したり、より多くの極小値Ljが存在したりすることがある。
【0055】
(4)照明装置の作用、及び、効果:
次に、照明装置10の作用、及び、効果を説明する。
第二照射部60が消灯して第一照射部50が点灯している時、図7(a)等に示すように、光軸AX1が装飾部30の一般面31に直交する方向D10からずれた第一照射部50からの光LT1が車室SP1側から装飾部30の表面30aに照射される。これにより、図2(b)及び図7(a)に示すように、凸部36を起点とした下側において表面30aに陰影S1が生じ、凸部36を起点とした上側において表面30aに高輝度部分H1が生じる。
【0056】
自動車の内装部品は、衝突時の乗員への危害低減の観点から、形状に制約があり、シャープな立体的造形を用いることはできない。このような制約が装飾部30の形状にあっても、点灯時に装飾部30の表面30aに現れる陰影S1及び高輝度部分H1の輝度比が強調され、これにより深みのある造形が車室SP1に表現される。
また、第一照射部50からの光LT1が装飾部30に遮られることによる陰影S3が内装部材70の表面70aにおいて加飾部材20の下に生じるので、内装部材70に対して装飾部30が浮かび上がったような立体的な演出が車室SP1に表現される。
【0057】
第一照射部50が消灯して第二照射部60が点灯している時、図7(b)等に示すように、光軸AX1が装飾部30の一般面31に直交する方向D10からずれた第二照射部60からの光LT2が上縁部23から導光層22に入射して装飾部30の裏面30bに照射される。装飾部30に拡散透過性があるので、装飾部30が行燈のように照らされ、装飾部30の裏面30bに照射された光LT2が拡散して車室SP1側へ出る。これにより、図2(c)及び図7(b)に示すように、凸部36を起点とした上側において表面30aに陰影S2が生じ、凸部36を起点とした下側において表面30aに高輝度部分H2が生じる。このため、装飾部30の形状に自動車1の内装としての制約があっても、点灯時に装飾部30の表面30aに現れる陰影S2及び高輝度部分H2の輝度比が強調され、第一照射部50の点灯時とは異なる態様で深みのある造形が車室SP1に表現される。
また、導光層22の下縁部24からの出射光LT2による高輝度部分H3が内装部材70の表面70aにおいて加飾部材20の下に生じるので、本照明装置10は、内装部材70の表面70aを照らしながら車室SP1に深みのある造形を表現可能である。
【0058】
ここで、第二照射部60による陰影S2と高輝度部分H2との位置関係は、第一照射部50による陰影S1と高輝度部分H1との位置関係の逆となる。これにより、第二照射部60の点灯時に凸部36が凹んで見え、点灯する照射部42を第一照射部50と第二照射部60とで切り替えると、装飾部30の表面30aに表現される凹凸形状がトリックアートのように反転して見える。従って、装飾部30に光LT0を照射する照射部42が第一照射部50と第二照射部60とで切り替わると、トリックアートのような演出が表現される。また、本照明装置10は、「間接照明」と「直接照明」とを切り替えることが可能であるので、デザイン性、及び、演出性が高められている。
以上説明したように、本技術は、陰影効果を表現として用いることで、自動車内装部品としての形状の制約を守りながら、特に夜間において、彫りの深いシャープな造形という、これまでにないデザイン性、及び、演出を表現可能な照明装置を提供することができる。
【0059】
(5)変形例:
尚、本技術は、種々の変形例が考えられる。
本技術を適用可能な自動車室内用照明装置は、図1を参照して説明すると、ドアトリム4aのための照明装置10A以外の照明装置10B〜10F等にも適用可能である。本技術の装飾部は、図3等で示した位置P1,P2の間隔が比較的小さい方が陰影の発現位置を制御し易い点で好ましいものの、ルーフトリム6aといった比較的大きい面積の内装材に設置することも可能である。例えば、本技術の照明装置をルーフトリム6aに設置する場合、曲率半径50mm以上であっても上述した陰影効果が発現され、昼夜の見映えの違いという観点では点灯時の陰影のインパクトを非点灯時よりも大きく与えることができる。
【0060】
図10(a),(b)は、車室SP1とは反対側へ凹んだ凹部37を有する凹凸部35が有る場合に生じる陰影S0を模式的に示している。
図10(a)に示すように、凹部37の上側から第一照射部50が光LT1を装飾部30の表面30aに照射することにより、凹部37を起点とした上側において表面30aに陰影S1が生じ、凹部37を起点とした下側において表面30aに高輝度部分H1が生じる。凹部37による陰影S1と高輝度部分H1との位置関係は、凸部36による陰影S1と高輝度部分H1との位置関係の逆となる。この場合も、形状の制約の中で点灯時に深みのある造形が車室SP1に表現される。また、内装部材70から車室SP1側に加飾部材20が配置されているので、第一照射部50からの光LT1が装飾部30に遮られることによる陰影S3が内装部材70の表面70aにおいて加飾部材20の下に生じる。従って、内装部材70に対して装飾部30が浮かび上がったような立体的な演出が車室SP1に表現される。
【0061】
図10(b)に示すように、導光層22の上縁部23から導光層22に光LT2を入射させて拡散透過性の装飾部30の裏面30bに照射することにより、装飾部30が行燈のように照らされる。また、凹部37を起点とした下側において表面30aに陰影S2が生じ、凹部37を起点とした上側において表面30aに高輝度部分H2が生じる。第二照射部60による陰影S2と高輝度部分H2との位置関係は、第一照射部50による陰影S1と高輝度部分H1との位置関係の逆となる。このように、第二照射部60からの光LT2による装飾部30の輝度分布が第一照射部50からの光LT1による輝度分布と異なるので、第二照射部60の点灯時に第一照射部50の点灯時とは異なる態様の演出が表現される。この場合も、形状の制約の中で点灯時に深みのある造形が車室SP1に表現される。さらに、第二照射部60から導光層22の上縁部23に入射した光LT2が導光層22の下縁部24から出射するので、この出射光による高輝度部分H3が内装部材70の表面70aにおいて加飾部材20の下に生じる。従って、本変形例の照明装置10も、内装部材70の表面70aを照らしながら車室SP1に深みのある造形を表現可能である。
【0062】
図11(a),(b)は、凸部36と凹部37の両方を有する凹凸部35が有る場合に生じる陰影S0を模式的に示している。図11(a)に示すように、凹凸部35の上側から第一照射部50が光LT1を装飾部30の表面30aに照射する場合、凸部36を起点とした下側、及び、凹部37を起点とした上側において表面30aに陰影S1が生じ、凸部36を起点とした上側、及び、凹部37を起点とした下側において表面30aに高輝度部分H1が表面30aに生じる。図11(b)に示すように、導光層22の上縁部23から導光層22に光LT2を入射させて拡散透過性の装飾部30の裏面30bに照射する場合、凸部36を起点とした上側、及び、凹部37を起点とした下側において表面30aに陰影S1が生じ、凸部36を起点とした下側、及び、凹部37を起点とした上側において表面30aに高輝度部分H1が表面30aに生じる。従って、形状の制約の中で点灯時に深みのある複雑な造形が車室SP1に表現される。
【0063】
図12は、図6で示した第二照射部60の導光体62の機能を加飾部材20の導光層22に付与した変形例を示している。図12に示す照明装置10は、導光層22と図6で示した導光体62とが一体化されているとも言える。図12に示す導光層22は、反射面62bを有する導光体部62Aを備えている。導光体部62Aにおける長手方向D1の端面62cは、光源61からの光LT2が入射する部位であり、正透過性を有する入射面とされている。反射面62bには、端面62cから入射した光LT2を装飾部30の方へ反射させるための凹部63が長手方向D1へ間隔を空けて複数形成されている。光源61からの光LT2は、端面62cから導光体部62Aに入射して凹部63で反射し、導光層22から拡散透過性の装飾部30の裏面30bに照射される。これにより、装飾部30が行燈のように照らされ、凹凸部35の形状に応じた陰影S2及び高輝度部分H2が表面30aに生じ、導光層22の下縁部24から出射する光LT2による高輝度部分H3が内装部材70の表面70aにおいて加飾部材20の下に生じる。従って、本変形例の照明装置10も、内装部材70の表面70aを照らしながら車室SP1に深みのある造形を表現可能である。
【0064】
図13(a)は、別の加飾部材120を備える照明装置10を取り付けたサイドドアトリム4aの車室SP1側を示している。尚、加飾部材120は、上述した加飾部材20の概念に含まれる。図13(b)は、光照射部40からの光LT0を装飾部30に照射した様子を示している。図14は、加飾部材120を備える照明装置10を図13(a)のA2に相当する位置で切断したときの垂直端面を模式的に示している。本具体例の照明装置10は、第二照射部が無く、車室SP1側から装飾部30の表面30aに光LT1を照射する第一照射部50を光照射部40として備えている。この第一照射部50は、図6で示したように、長尺な導光体52を介して光源51からの光LT1を装飾部30に照射する。この光LT1の光軸AX1は、装飾部30の一般面31に直交する方向D10からずれている。
尚、導光体52の凹部53は、断面三角形のライン状の溝等でもよいが、当該凹部の形状の映り込みを抑制するため、レーザー加工による直径が50〜500μmほどの微細なドットパターンが好ましい。
【0065】
加飾部材120は、第一照射部50からの光LT1が照射される装飾部30、及び、前記光LT1が照射されない補助部125を有している。装飾部30は、補助部125との境界部126から車室SP1とは反対側(車外側)へ向かうように立ち上がっている。鉛直方向からの装飾部30の傾きは、鉛直方向からの光軸AX1の傾きよりも急である。補助部125は、装飾部30との境界部126から略下方へ延出している。
【0066】
以上より、装飾部30の表面30aには第一照射部50からの光LT1が照射される一方、補助部125には光LT1が照射されずに陰影S4が生じる。光照射部が無ければ、夜間に装飾部が見難くなり、昼間と比べて車室の高級感が低下する可能性がある。このような高級感の低下は、車室の色や内装材の表皮を変更しても抑えることが容易ではない。照明装置10に第一照射部50があることにより、夜間においても、装飾部30が見易くなり、車室SP1の高級感が演出される。また、装飾部30と補助部125とで車室SP1側へ凸とされた境界部126が加飾部材120にあることにより、陰影効果が発現され、光LT1が照射される装飾部30が強調される。これにより、昼夜で異なる造形が車室SP1に実現され、点灯時にシャープな造形が車室SP1に実現される。
【0067】
装飾部30の表面30aには、装飾部の「素材感」を強調するため、「シボ」等といった微細な凹凸部35が形成されている。凹凸部35は、複数の微細な凸部36、及び、複数の微細な凹部37を有している。本具体例の装飾部30の一般面31も、凹凸部35が無いと仮定したときの面を意味する。一般面31に直交する方向D10は、一般面31の平均的な傾きを表す平面に直交する方向とし、最上点P1と最下点P2(境界部126)とを通る平面に直交する方向とする。光軸AX1が一般面31に直交する方向D10からずれている光LT1が装飾部30の表面30aに照射されると、微細な凸部36を起点とした下側、且つ、微細な凹部37を起点とした上側において表面30aに陰影S1が生じ、微細な凸部36を起点とした上側、且つ、微細な凹部37を起点とした下側において表面30aに高輝度部分H1が生じる。
【0068】
光照射部が無ければ、装飾部の微細な凹凸部の陰影効果は、ウィンドウから入ってくる日光でしか発現されない。照明装置10に第一照射部50があることにより、点灯時に装飾部30の表面30aに現れる陰影S1及び高輝度部分H1の輝度比が強調され、夜間においても、装飾部30の微細な凹凸部35の陰影効果が発現され、装飾部の「素材感」が強調される。これにより、深みのある造形が車室SP1に表現される。
【0069】
尚、加飾部材120の表面には、光源の映り込みを抑制するため、低グロス又は艶消しの面が好ましい。
また、第一照射部50は、図3等で示したように光源51からの光LT1を直接、装飾部30に照射してもよい。
【0070】
図15は、別の加飾部材220を備える照明装置10を図2(a)のA1に相当する位置で切断したときの垂直端面の例を模式的に示している。尚、加飾部材220は、上述した加飾部材20の概念に含まれる。図16(a)は、加飾部材220の装飾部30の表面30aに第一照射部50から光LT1を照射している様子を模式的に示している。図16(b)は、加飾部材220の装飾部30の裏面30bに第二照射部60から光LT2を照射している様子を模式的に示している。図15図16(a),(b)では、分かり易く示すため、加飾部材220の断面を示すハッチングを省略している。
【0071】
図15等に示す加飾部材220は、車室SP1とは反対側に装飾部30が積層された導光層22(導光体の例)を有している。この加飾部材220には裏面20bに装飾部30があり、この装飾部30の車室SP1側に導光層22があることになる。加飾部材220は、図示しないホルダーで内装部材70と覆い部75に固定されているものとするが、接着剤等で固定されてもよいし、覆い部75に固定されずに内装部材70に固定されてもよいし、内装部材70に固定されずに覆い部75に固定されてもよい。尚、内装部材70と覆い部75は、上述した例と実質的に同じであるので、詳しい説明を省略する。また、光照射部40の各要素も、上述した例と実質的に同じであるので、詳しい説明を省略する。光源51,61は、図15に示すように光LT1,LT2を装飾部30に直接照射する配置とされてもよいし、図6に示す導光体52,62等を介して光LT1,LT2を照射する配置とされてもよい。
【0072】
図15等に示す例において、装飾部30の表面30aは導光層22に覆われ、装飾部30の裏面30bは空気層を介して内装部材70に面している。すなわち、本例も、装飾部の表面30aは室内を向いている面を意味し、装飾部の裏面30bは室内とは反対側を向いている面を意味する。図15に示す装飾部30は、加飾部材220において室内(車室SP1)から普通に見える範囲内で室内(車室SP1)に向いている部位とする。遮光性の覆い部75がある場合、加飾部材220において覆い部75で覆われず室内(車室SP1)に向いている部位とする。図15に示す加飾部材220の装飾部30は、最上点P1を起点として最下点P2までの部位となる。この装飾部30の一般面31も、装飾部30の表面30aに陰影S0が生じる凹凸部35が無いと仮定したときの面を意味し、上述した例で説明した曲率半径の緩やかな曲面でもよい。一般面31に直交する方向D10も、上述した例で説明した方向とする。
【0073】
加飾部材220は、面状の装飾部30を車室SP1とは反対側に向け長手方向D1を略前後方向D2に向けて配置される。導光層22の上縁部23は、第一照射部50からの光LT1が入射する部位であり、反射及び拡散が抑制されるように正透過性を有する入射面とされている。導光層22の下縁部24は、上縁部23から入射した光LT1が出射する部位であり、反射及び拡散が抑制されるように正透過性を有する出射面とされている。導光層22には上述した例で説明した成形品等を用いることができ、この成形品のための透明材料にも上述した例で説明した材料を用いることができる。
【0074】
加飾部材220の装飾部30は、導光層22を介した車室SP1からの光に対して拡散反射性を有するとともに、車室SP1とは反対側からの光に対して拡散透過性を有する。この装飾部30も、上述した例で説明したように、透過光と反射光の両方ともランバーシャンな角度強度分布(無指向性)に近い光線となるような正反射成分の少ないマッドな状態が好ましい。加飾部材220の装飾部30にも、上述した例で説明した材料を用いることができる。むろん、導光層22になる導光体の裏面に粗面形状を形成して室内とは反対側に装飾部30が積層された導光層22を形成してもよい。この粗面形状も、上述した例で説明したように形成することができる。
【0075】
第一照射部50からの光LT1が導光層22を介して装飾部30の表面30aに照射されると、図16(a)に示すように、凹凸部35による陰影S1が装飾部の表面30aに形成される。第二照射部60からの光LT2が空気層を介して装飾部30の裏面30bに照射されると、図16(b)に示すように、凹凸部35による陰影S2が装飾部の表面30aに形成される。加飾部材220における凹凸部35も、車室SP1側へ凸とされた凸部36を有している。この凸部36の曲率半径は、導光層の室内側に装飾部が配置されている場合の曲率半径よりも小さくすることが可能であるものの、自動車内装部品として導光層22の厚みを制限しながら加飾部材220の耐久性を維持する必要性から、極端に小さくすることはできない。
【0076】
装飾部30の室内側に導光層22が配置されている場合の照明装置10も、上述した例で説明した作用及び効果が得られる。
第二照射部60が消灯して第一照射部50が点灯している時、図16(a)に示すように、光軸AX1が装飾部30の一般面31に直交する方向D10からずれた第一照射部50からの光LT1が導光層22を通って車室SP1側から拡散反射性の装飾部30の表面30aに照射される。これにより、図2(b)にも示すように、凸部36を起点とした下側において表面30aに陰影S1が生じ、凸部36を起点とした上側において表面30aに高輝度部分H1が生じる。また、光LT1が装飾部30に遮られることによる陰影S3が内装部材70の表面70aにおいて加飾部材20の下に生じるので、内装部材70に対して装飾部30が浮かび上がったような立体的な演出が車室SP1に表現される。
【0077】
第一照射部50が消灯して第二照射部60が点灯している時、図16(b)に示すように、光軸AX1が装飾部30の一般面31に直交する方向D10からずれた第二照射部60からの光LT2が上縁部23から導光層22に入射して拡散透過性の装飾部30の裏面30bに照射される。これにより、装飾部30が行燈のように照らされ、装飾部の裏面30bに照射された光LT2が拡散して車室SP1側へ出て、図2(c)にも示すように、凸部36を起点とした上側において表面30aに陰影S2が生じ、凸部36を起点とした下側において表面30aに高輝度部分H2が生じる。また、加飾部材220の背後の空気層を通る光LT2による高輝度部分H3が内装部材70の表面70aにおいて加飾部材20の下に生じるので、本照明装置10は、内装部材70の表面70aを照らしながら車室SP1に深みのある造形を表現可能である。
【0078】
また、装飾部30に光LT0を照射する照射部42が第一照射部50と第二照射部60とで切り替わるとトリックアートのような演出が表現され、さらに、「間接照明」と「直接照明」とが切り替わるのでデザイン性、及び、演出性が高められている。従って、装飾部30の室内側に導光層22が配置されている場合も、自動車内装部品としての形状の制約を守りながら、特に夜間において、彫りの深いシャープな造形という、これまでにないデザイン性、及び、演出を表現可能な照明装置を提供することができる。
【0079】
装飾部の室内側に導光層が配置される場合も、図10(a),(b)で示したように凹凸部35が車室SP1とは反対側へ凹んだ凹部37を有してもよいし、図11(a),(b)で示したように凹凸部35が凸部36と凹部37の両方を有してもよい。また、図12で示した例と同様、図6で示した第一照射部50の導光体52の機能を加飾部材220の導光層22に付与することも可能である。
【0080】
加えて、上述した全ての例において、凹凸部35に曲率半径3.5mm未満の凸部が含まれていても、本技術の基本的な効果が得られる。
また、上述した全ての例において、第一照射部50と第二照射部60の一方しか無くても、本技術の基本的な効果が得られる。
【0081】
(6)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、形状の制約の中で点灯時に深みのある造形を室内に表現可能な自動車室内用照明装置等の技術を提供することができる。むろん、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1…自動車、2…車体パネル、
3…前部用内装材、3a…インストルメントパネル内装材、
4…側面部用内装材、4a…ドアトリム、
4b…ピラーガーニッシュ、4c…デッキサイドトリム、
5…後部用内装材、5a…後部ドアトリム、
6…天井用内装材、6a…ルーフトリム、
10…照明装置、
20,120,220…加飾部材、22…導光層、23,24…縁部、25…端部、
28…ホルダー、28b…裏面、28c…上縁部、28d…凹部、
28e…ボス、28f…延出部、28g…挿通穴、
30…装飾部、30a…表面、30b…裏面、
31…一般面、
35…凹凸部、36…凸部、37…凹部、
40…光照射部、42…照射部、
50…第一照射部、51…光源、52…導光体、53…凹部、
60…第二照射部、61…光源、62…導光体、63…凹部、
70…内装部材、70a…表面、70c…挿通穴、
71…アームレスト、72…ポケット、
75…覆い部、75b…裏面、76…ボス、76b…台座部、
80…選択部、
125…補助部、126…境界部、
AX0,AX1,AX2…光軸、
D1…長手方向、D2…前後方向、D3…上下方向、D4…幅方向、
D10…一般面に直交する方向、
D11…投影面光軸方向、
LT0,LT1,LT2…光、
S0,S1,S2,S3,S4…陰影、
SP1…車室(自動車の室内)、SP2…荷室(自動車の室内)、
Z…投影面距離、
L(Z)…輝度、Li…極大値、Lj…極小値、
Ron…点灯時最大比。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16