(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のレンズ部(3)の表面は、材料が除去された前記レンズ(2)の領域において前記第2のレンズ部(5)の前記オーバーモールドされる材料に接触することができ、互いにオーバーモールドされる前記第1および第2のレンズ部(3、5)の材料間の接着性を増加させるために、前記表面を修正するステップを備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
前記第2のレンズ部(5)は、TPU(熱可塑性ポリウレタン)、ポリアミドまたはPEBA(ポリエーテルブロックアミド)のオーバーモールドによって形成される、請求項11に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照すると、符号1は、本発明による眼鏡用レンズを製造する方法が施されるレンズブランクを示している。
【0009】
レンズブランク1は、従来の適切な金型を用いた従来の射出成形プロセスまたは注型成形プロセスによってプラスチック材料から形成され、規則的な長方形または代替的には円形状の外周輪郭1aを有する曲面形状によって特徴付けされている。ブランクの厚さおよび曲率は、レンズに塗布される保護用コーティングまたは被覆層を除いて、特定の光学特性を付与する上でレンズが必要とする曲率に実質的に対応している。実際に、ブランクは、「コーティング」としても既知である一つまたは複数の表面被覆層を事前に備えていてもよく、これらのコーティングは、耐擦傷性、疎水性および/または耐油性、調光機能、または「ミラー」効果等の機能的および/または審美的な効果のために使われる。レンズに塗布することができる種々のコーティングには、所定の色彩効果をレンズに与える着色ワニスも含まれている。着色ワニスは、レンズ材料に顔料または他の着色生成物を混ぜて得られるレンズの着色方法の代替的な方法である。レンズに着色ワニスを塗布する典型的な例では、ワニスは、高い色彩強度を有するレンズの特定の領域(一般に上部領域)から、低い色彩強度を有するまたは完全に透明な別の領域(一般に下部領域)に向かって徐々に変化し、「陰影」の色彩効果を付与するために使用される。
【0010】
レンズブランク1を形成するプラスチック材料は、適切な光学的条件(透明度、屈折率、紫外線のフィルタリング能力等を含む)を満たすように選択され、眼鏡用レンズのために一般的に指定される材料である。
【0011】
レンズブランクの一般的な材料として、射出成形による形成が可能な熱可塑性樹脂であるポリアミドを挙げることができる。代替的に、レンズブランクは、熱硬化性プラスチック材料から形成されてもよく、その場合、ブランクは適切な金型を用いた注型成形プロセスによって作製される。
【0012】
レンズブランク1の材料は、機能的および/または審美的な種類のさらなる付加的要素によって特徴付けされている。例えば、レンズブランクに、様々な度合いの強度および/または透明度で様々に着色することができる。
【0013】
本製造方法の次のステップでは、対応する装着フレームへの装着に適した最終的な形状および輪郭を有する最終レンズ構造体2が、レンズブランク1から切り出されることによって作製できるようになる。より具体的には、切り出し加工は、レンズに固有の縁部輪郭を作製するために他の機械加工と組み合わされてもよい。すなわち、レンズが特定の装着部に結合するよう指定されている場合、切り出しの後に、レンズの縁部の面取り、または代替的にレンズの溝部が作製されてもよい。
【0014】
図1では、レンズ2の外周輪郭が示されており、この輪郭に沿ってブランク1からの切り出し作業が行われる。
【0015】
本方法のさらなるステップでは、レンズ2の予め選択された領域において材料が除去され、これにより、符号3で示される第1のレンズ部が作製される。
【0016】
レンズからの材料の除去は、機械加工による除去、例えばNC工作機械を用いた(
図2のツールTによる)切削加工による除去が好ましく、代替的には、レーザー加工による除去であってもよい。
【0017】
材料の除去によって、レンズブランクの予備成形された領域の厚さ、例えば、レンズ2の外周曲線に隣接する領域の付近の厚さは減少されるが、レンズの反対側の面の様々な位置における他の領域にも影響を与える可能性がある。
【0018】
材料の除去によって、第1のレンズ部3に一つまたは複数の面が画定され、これらの面は、以下により詳細に説明するように、オーバーモールド作業によってその面に蒸着される材料と接触および接着する地点となる。
【0019】
レンズブランク1またはレンズ2に、機能的または審美的な用途のために上述した種類のコーティングが一つまたは複数施されている場合、後にオーバーモールドされるレンズ2の領域からの表面材料の除去は、これらの表面被覆層またはコーティングの除去を含んでいる。その理由は、多くの場合、第1のレンズ部3の上に射出成形される材料と当該コーティングとが十分に接着しないため、異なる材料間の最適な接着性を提供する目的において、これらのコーティングの除去が有用または実際に必要となるからである。
【0020】
材料を除去するステップの後に、第1のレンズ部の材料とその上にオーバーモールドされる材料との接着性を向上させるために、材料の除去によって作製された面をさらに修正するステップが任意に続いてもよい。
【0021】
例えば、レンズブランクの材料とその上にオーバーモールドされる材料との間の良好な接着のために、材料が除去された領域のブランクの面に、物理的な修正を施すための機械加工が行われてもよい。例えば、適切な機械加工によって作製された局所的な表面粗さの増加は、異なる材料間に、より良好な把持力をもたらす可能性がある。
【0022】
同様に、おおよそ規則的な幾何モデルに従って、厚さの多くのまたは少ない顕著な変化、および局所的な厚さの多くのまたは少ない変化をもたらすために行なわれるレンズブランクへの機械加工は、互いに接触する構成要素間の接着力を増加させるために役立つ可能性がある。例えば、規則的または不規則な形状の一連の止り穴、溝穴、あるいは局所的に厚さが減少された他の部分を設けることで、材料間に追加的な「機械的」把持力をもたらすことができる。
【0023】
異なる材料間の接着力を大幅に増加させることが必要な場合において、これらの材料の本来の化学的適合性が低い場合、厚さの減少作業の後に、ブランクの面のオーバーモールドされる領域を化学的に修正できるように特殊な処置が行われてもよい。例えば、オーバーモールドされる材料がより容易に接着することができる「下塗り」用ワニス(定着剤)等の異なる表面コーティングが、局所的に塗布されてもよい。
【0024】
材料の除去およびその後の材料のオーバーモールドに関しては、レンズの縁部のみならず、レンズの表面2a、代替的には裏面2b、または同じレンズの両面を、材料でオーバーモールドしてもよい。
【0025】
図2では、レンズの一方の面(2a)の外周輪郭に沿ってレンズ縁部の厚さが減少された、第1のレンズ部の実施形態が示されている。
【0026】
レンズから材料を除去し、オーバーモールドされる材料を接着させる面の準備が整った後に、本方法では、第1のレンズ部3がオーバーモールドのために金型4に挿入される。この金型4は、例えば、一対の半金型4a、4bによって形成され、これらが閉じられることによって金型のキャビティが画定される。
【0027】
本方法では、次いで、材料が金型に射出され、第1のレンズ部3がオーバーモールドされて、第2のレンズ部5が形成される。
【0028】
次に、金型4を開くことによって金型からレンズを取り出すことできる。ここで第1のレンズ部3と第2のレンズ部5とが互いに一体化されて単一のレンズボディが形成されるが、これらの二つのレンズ部は、レンズボディにおいて互いに区別できる状態にある(
図4)。
【0029】
第1のレンズ部3を受容するための座部6が事前に金型のキャビティに設けられ、キャビティの残りの容積空間は、第2のレンズ部5を形成する射出された材料で満たされる空間を画定するようになされている。
【0030】
図5では、厚さの減少とその後の材料のオーバーモールドによって、レンズの縁部と隣接する全外周輪郭に沿って材料が延在するようになされた別の実施形態が示されている。
【0031】
レンズ縁部のみならず、レンズの表面または代替的に裏面(眼鏡の装着時にユーザの顔を向く面)、あるいはさらなる選択肢として、同じレンズの両面を、材料でオーバーモールドしてもよい。
【0032】
レンズの表面または裏面にある第2のオーバーモールド部5の外周部は、オーバーモールド部によって達成される特定の審美的または機能的な用途に応じて、レンズの輪郭の理論的な継ぎ足し部を形成してもよく、レンズの輪郭または縁部の外側に(突出するように)形成されてもよく、またはレンズの輪郭または縁部の内側に(凹むように)形成されてもよい。
【0033】
また、オーバーモールドが可能なレンズの部分の数には制限がなく、個々の要件に従って、一つまたは複数の部分をオーバーモールドできることに留意されたい。
【0034】
本明細書に記載の方法によって作製することができる一つ目の種類のレンズとして、便宜上「厚さが一定の」レンズとして既知のものがある。より正確には、このレンズのオーバーモールド部を含むすべての部分が少なくとも同じ点で測定された場合、初期状態のレンズブランク1の厚さと同じ厚さを有するレンズである。
【0035】
サングラス用レンズブランクおよびそれらから作製されるレンズは通常、各点の厚さが必ずしも一定でないため、上述した正確な定義が必要である。実際には、レンズの縁部から幾何学的中心に向かって測定を行った場合、またはその逆の方向において測定を行った場合、厚さの漸進的な変化の度合いが示される。厚さの変化は、光学性能を最適化するための作業によって生じる場合があり、または用いられる生産方法の技術的特性によって生じる場合がある。
【0036】
本方法によって作製することができる二つ目のレンズの種類は、「厚さの異なる」レンズあるいは「三次元表面」を有するレンズとして分類されている。これは、オーバーモールド部の一点または複数の点で測定される厚さが、初期状態のレンズの主要部分(初期状態のブランクの主要部分)の様々な点で測定される厚さと異なり、また、オーバーモールド部の異なる点において測定を行った場合に、点毎に厚さが異なる可能性があるレンズである。
【0037】
例えば、所定の配置または幾何モデルに従って、オーバーモールド部の厚さまたは高さがレンズの主要部分より一様に大きい、あるいは一様に小さい、もしくは選択的に大きいまたは小さいレンズを作製することができる。すなわち、レンズに付与される触覚的または装飾的効果の種類、または機能的特性に応じて、厚さの急激または漸進的な局所的な変化を伴って、「三次元の」表面構成を有するレンズを作製することができる。
【0038】
第2のオーバーモールドされたレンズ部5(またはオーバーモールド部)の材料の性質および特性は、このオーバーモールド部の用途に応じて選択される。
【0039】
例えば、純粋に装飾的な用途の場合は、着色された材料が適切であり、これらの材料は透明でも、不透明でも、または様々な透明度を有していてもよい。ブランクの材料およびオーバーモールド部の材料において、隣接する異なる色の配置と組み合わせを慎重に設計することによって、完成したレンズに特定の独創性と色付けによる差別化をもたらすことができる。
【0040】
装飾的な用途として可能な別の例は、グリッター等の微細材料を取り入れることである。これらの材料は、レンズの光学特性に影響を及ぼす可能性があり、レンズ材料におけるグリッターの大きさと量に関して、当該分野で施行される製品の品質基準および安全基準の規定に沿って最小限の光学特性をレンズに付与する必要性が生じるため、それらの材料の使用は制限される。本明細書に記載の方法によってレンズを作製することで、極めて大量の、あるいは大きいサイズのグリッターを材料に混ぜ込んでからオーバーモールドして、レンズに縁部または視野の外側の部分を設けることができ、レンズに指定された保護フィルター機能を損なうことなく、前述の基準に従うことができる。
【0041】
また、オーバーモールド部に用いられる材料の選択に関しては、たとえ一部であっても、ユーザの視野に入り込むレンズ部分を占めるのであれば、これらのオーバーモールドされる材料は(初期状態のブランクの材料と等しい)高い光学品質によって特徴付けされてもよい。代替的に、レンズの純粋な縁部を占めるのであれば、これらの材料の光学品質は特に高くなくてもよく、典型的なフレームの材料と同様の技術的特性を有してよい。
【0042】
機能的な用途を装飾的な用途に追加する場合、あるいは装飾的な用途を機能的な用途で置き換える場合、オーバーモールドされる材料については、さらなる技術的要件を考慮する必要性が生じる。例えば、オーバーモールド部の機能は、レンズの主要部分の材料の硬度や弾性率とは異なる表面硬度または弾性率を必要とする場合がある。例えば、「ソフトタッチ」部、すなわち、いくつかの事例において、触った時や眺めた時にゴムや他のより柔らかな材料として認識される部分を備えたレンズを作製する目的で、レンズの主要部分の材料よりも硬度の低い材料から形成されたオーバーモールド部が設けられてもよい。
【0043】
オーバーモールドに適した材料の性質に関しては、特定の用途の技術的要件を前提とする場合、まず考えられる材料は、最高の化学的適合性をもたらす熱可塑性材料である。すなわち、初期状態のブランクの材料に関しては、最高の接着力が求められる。例えば、ブランクがポリアミドから形成されている場合、オーバーモールドに好適な材料は、TPU(熱可塑性ポリウレタン)として既知の材料である。TPUは、様々な硬度のものが入手可能であり、特に硬質のポリアミド製のレンズ上に、より柔らかな材料の部分を形成する場合に好適である。この場合、二つの材料の間の化学的適合性は高く、接着力を増大させるための追加の配慮は不要である。当然のことながら、例えば、ポリアミド上にポリアミドをオーバーモールドすること、すなわち、同じ基本的性質を有しつつ、異なる色彩や仕上げ等の異なる特徴を有するよう変質された二種類のポリマーの使用を指定することもできる。
【0044】
別の例示的な材料は、PEBA(ポリエーテルブロックアミド)として既知の材料である。PEBAもまた様々な硬度のものが入手可能であり、ポリアミドに良好に直接接着できることを特徴としている。
【0045】
さらに、材料が初期状態のブランクの表面上に様々に作用して、本来互いに接着させるのにあまり適していない二つの材料間の接着性を増加させる可能性に関して、上述した材料についての考察は有効である。
【0046】
本発明の方法によって作製することができる機能的な用途に優れたレンズの種類として、プラスチック材料で構成され、フレームの主要装着部に脱着可能に装着される補助的または付加的な装着レンズについても特筆しておく必要がある。例えば、「前掛け式(clip−on)」サングラスとして既知のレンズ、すなわち、完成された主要装着部の見栄えを損なわないために適用することができる(サイドフレームのない)付加的な装着サングラスの作製を挙げることができる。
【0047】
この種の製品では、前掛け式レンズを取り付けるための構造は、弾性的装着のための要素、すなわち、可撓性が高いまたは低いブッシュまたはピン、フック、止り穴や通し穴、溝穴等を含んでもよい。またこの構造は、眼鏡の装着部への装着のためのシステムと、さらに、例えば主装着部上で(「はね上げ式」の補助装着部で)前掛け部を昇降させるための一つまたは複数のヒンジを有する、機械的要素への装着のためのシステムとを含むような、複雑な構造となっている場合がある。
【0048】
前掛け式の眼鏡の分野での適用に限定されないが例示の目的で示すと、付加的なサングラスは、本明細書に記載の方法によって作製された二つの別個のレンズ(右レンズおよび左レンズ)を有することができるが、本明細書に記載の方法によって同じく作製された単一のレンズ(この場合、ユーザの視野全体をカバーするような延長部分を有する単一のレンズ)を有してもよいことに留意されたい。
【0049】
さらに、前掛け式の眼鏡の分野での適用に限定されないが例示の目的で示すと、二枚のレンズ(右および左)に、または単一のレンズ(当該分野において“マスク”としても既知である一枚レンズ(monolens))にオーバーモールドすることで、二枚のレンズの間に接合要素を作製することもでき、これによって、実際の前フレーム、あるいは硬質または軟質材料の完成された眼鏡フレームまで作製することができる。この場合、レンズはオーバーモールドされることによって固定されるので、この種類の眼鏡でのレンズの交換は当然のことながら不可能である。
【0050】
作製することができる別の種類のレンズとして、フレームへのレンズの装着(弾性装着)を容易にするために、またはレンズとレンズフレームとの間の緩衝作用という付加的な目的のために、外周(全体または部分的)にライニングを有するレンズがある。
【0051】
可撓性が高いまたは低い材料の外周ライニングを施す他の理由も挙げることができる。例えば、眼鏡用レンズ(一枚レンズを含む)やスキーマスク用レンズ等のスポーツ用保護マスクに用いられる防護ライニングとして、あるいは一定のカテゴリーに用いられるサングラス用偏光レンズ等のような剥離の可能性がある多層構造のレンズの輪郭を包んで封入するために、ライニングが施される。
【0052】
本発明の方法で得られる利点として、まず、本方法はレンズブランクの使用を前提としており、このようなブランクは、様々な寸法、厚さ、曲率、材料、色合い、表面処理等で市販されている点を挙げることができる。最適と考えられるブランクが選択された後に、パンタグラフ彫刻機、好ましくはNC工作機械、すなわち機器の準備に関して経済的で、柔軟且つ迅速な処理方法を用いて、レンズブランクから最終的な形状を有するレンズを切り出すことができる。言い換えると、所定のレンズ形状に関して、ブランクは外部の製造業者から入手することができ、レンズは既に最終形状を有しており、レンズを作製するための第1の適切な射出成型用金型を作製する必要がなく、オーバーモールドするためにブランクを第2の適切な金型に直接挿入することができる。
【0053】
したがって、特許請求の範囲に記載の方法によって、単一の射出成型用金型を作製することができ、この金型によって初期状態のブランクの正確な幾何学的特性(寸法、曲率および厚さ)がオーバーモールドの「型締め」のステップで、ブランクの表面と金型のキャビティの表面とが完全に一致する最も高い精度を提供することができる。
【0054】
オーバーモールドによって形成されるレンズ部に対応する金型の「刻印」またはキャビティに関しては、いずれの場合も、複数の種類のレンズを作製するための金型を製造することができる。これらのレンズは、異なる形状、寸法、材料、表面仕上げ等の特徴を有するオーバーモールド部によって本質的に区別することができる。異なるレンズの種類を作製するために、既知の射出成形法に従って、交換可能なインサートとして既知のものを備える金型を作製するだけでよい。すなわち、金型の限定された複数の部分が交換可能であり、交換可能な各部分がオーバーモールドされる部分の反転型としてなされた金型を作製するだけでよい。
【0055】
本方法の変形例では、外部の製造業者からレンズブランクを入手する代わりに、社内で形成されたプラスチック製のレンズブランクから開始できるようになされてもよい。当然のことながら、この場合、ブランクを作製するために別の射出成型用金型、または適切であれば、注型成形用金型を準備することが依然として必要である。しかしながら、定型となる初期状態のブランクを作製する際の利益の程度を見出すことはできる。すなわち、ブランクはNC工作機械を用いて再度切り出し加工をすることができるため、さらなる射出成型用金型を使用する必要性がなく、ブランクを実質的に無限の種類の最終的なレンズ形状に作製することができる。
【0056】
本方法のさらなる重要な利点は、当該分野において利用可能なものから選択された一つまたは複数の審美的または機能的な「コーティング」で被覆されたレンズを、均一なコーティングを確保しつつ作製することができる点であり、これによって、レンズに良好な審美的効果、および/またはコーティングによる高効率性および耐久性をもたらすことができる。
【0057】
典型的には、種々のコーティングは、適切な槽での浸し塗り処理、または真空下のチャンバー内での蒸着処理によって施される点に留意されたい。これらの処理の結果もたらされる精度および品質は、レンズの厚さの極わずかな局所的変化によって大きく影響され、それによって、表面の不連続性の領域またはラインから離れた地点での精度および品質の結果に大きな影響を与える。これは、槽での浸し塗りによってコーティングが施される場合、処置を行っている間に、局所的な不連続性がレンズの表面上の蒸着液の確実な流れを妨げる可能性があるためである。
【0058】
真空チャンバー内でコーティングが施される場合、厚さの不連続性または変化は、例えば、より薄く不十分な層の蒸着を引き起こし、隣接する領域でのコーティングの正しい蒸着処理を妨害する可能性がある。
【0059】
その結果として、主に使用される材料が異なることによって区別することができる少なくとも二つの部分によって形成され、且つ一つまたは複数の機能的および/または審美的なコーティングで少なくとも部分的に被覆されるプラスチック材料のレンズを作製するために、オーバーモールドした後にレンズにこれらの処理の一つが施されると、多かれ少なかれ顕著に存在する表面の不連続性は、施されたコーティングに特定の欠陥をもたらす可能性がある。
【0060】
他方で、本発明による有利な方法を用いて、所望のコーティングが既に被覆されたレンズブランクから開始し、次に、指定された部分をオーバーモールドすることにより、元々存在するコーティングは明らかに保たれるが、当然のことながら、これはオーバーモールドされていないレンズの領域のみに限られる。オーバーモールド部にも同様に特定のコーティングを塗布する必要がある場合、潜在的に高い不良発生率と生産コストの問題に直面するが、この塗布作業は技術的に実現可能ではある。
【0061】
したがって、本発明は、既知の解決策と比較して前述した利点をもたらす一方で、提案された目的を達成している。