(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755266
(24)【登録日】2020年8月27日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】自動車両用ホイール取付用塑性変形可能シェル
(51)【国際特許分類】
B60G 7/00 20060101AFI20200907BHJP
【FI】
B60G7/00
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-563066(P2017-563066)
(86)(22)【出願日】2016年5月12日
(65)【公表番号】特表2018-516204(P2018-516204A)
(43)【公表日】2018年6月21日
(86)【国際出願番号】FR2016051120
(87)【国際公開番号】WO2016193563
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2019年4月22日
(31)【優先権主張番号】1555155
(32)【優先日】2015年6月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ロレー, レミ
(72)【発明者】
【氏名】ソドゥモン, ヨアン
【審査官】
高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−236481(JP,A)
【文献】
特開2013−151200(JP,A)
【文献】
米国特許第06152468(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0332496(US,A1)
【文献】
特開平6−171545(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0306176(US,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2009−0066390(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
B62D 7/18
B60B 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両用ホイールを自動車両の構造要素またはサスペンション要素に取り付けるためのシェル(100)であって、前記シェルがU字型の断面を有し、かつ
− 基本的に垂直な方向を有するホイール支持プレート(10)と、
− 平行で、かつ前記支持プレート(10)の面に直交する2つの三角形のサイドフランジ(12)であって、前記サイドフランジ(12)のそれぞれが、前記支持プレート(10)に隣接する第1の垂直な側部(22)、第2のほぼ水平な底部側部(24)および第3の側部(26)により区画される、2つの三角形のサイドフランジ(12)と
を含み、
横方向の打撃が、前記ホイールの底部に、前記ホイールの面に対して横断方向(T)に加えられた際に、塑性的に変形する低抗力領域(34、44)を、各サイドフランジ(12)が含むことを特徴とする、シェル(100)。
【請求項2】
前記低抗力領域が、前記第3の側部(26)まで延在する三角形の突起部(34)の形態の、前記サイドフランジ(12)の変形可能部分であることを特徴とする、請求項1に記載のシェル。
【請求項3】
前記突起部(34)が、水平底部縁部(38)で区画される三角形の輪郭を有することを特徴とする、請求項2に記載のシェル。
【請求項4】
前記支持プレート(10)が、中央穴(19)を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のシェル。
【請求項5】
前記突起部(34)が、前記中央穴(19)の中心(C)を通る水平面(PH)より下に位置することを特徴とする、請求項2または3に従属する請求項4に記載のシェル。
【請求項6】
前記低抗力領域が、減厚部(44)であることを特徴とする、請求項1に記載のシェル。
【請求項7】
前記減厚部(44)が、前記穴の前記中心を通る水平面より上に位置することを特徴とする、請求項4に従属する請求項6に記載のシェル。
【請求項8】
2つの前記減厚部(44)が、前記支持プレート(10)の減厚領域(48)により、互いに連結することを特徴とする、請求項6に記載のシェル。
【請求項9】
前記第3の側部(26)が、前記減厚部(44)の真上に、切り抜き部(46)を含むことを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載のシェル。
【請求項10】
各サイドフランジ(12)が、底部補剛ストリップ(28)を含み、前記底部補剛ストリップ(28)は、前記サイドフランジ(12)の面で、前記支持プレート(10)から前記第2のほぼ水平な底部側部(24)に沿って延在することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のシェル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ホイールを自動車両の構造要素またはサスペンション要素に取り付けるためのシェルに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、詳細には、ホイールが回転可能なように取り付けられる手段を取り付けるためのシェルに関する。
【0003】
それ自体は既知の設計によれば、たとえば、ホイールはホイールスタブアクスルにより支持されている。
【0004】
ホイールの足部とも呼ばれている、ホイールの底部は、いわゆる横方向の、すなわち車両の進行方向に対応する車両の一般的な長軸方向に対して基本的に横断する方向の、打撃または衝撃を受ける可能性がある。
【0005】
このような打撃または衝撃は、たとえば密着性の低い路面上で自動車両がオーバーステアして、結果として歩道の縁石にぶつかる際などに、発生する可能性がある。
【0006】
車両の全体設計においては、そのような打撃が発生した際に、それに対応する走行ギアが損傷したということを、特に高速時には、その走行ギアがその後に故障する危険を示す前に、ドライバーに知らせることを意図して、いわゆる「フュージビリティ」シナリオを提案することが必要である。
【0007】
たとえば、それ自体が既知の解決策によれば、ホイールを支持するスタブアクスルが塑性的に変形し、ホイールがポジティブキャンバーになり、このことがドライバーに認識される。別の設計では、構造要素(外形部材または交差部材)が不安定になる。
【0008】
これらの例では、スタブアクスルの交換または構造要素の矯正もしくは交換に必要な修理作業にコストがかかることになる。
【0009】
さらには、非常に堅い交差部材と結合した特定のシェル中にねじ止めされたベアリングにより、スタブアクスルを交換するという新たな設計が提案されている。この場合、これら2つの構成要素は、ホイール足部に横方向の打撃を受けた際も変形することはない。
【0010】
米国特許第6152468号では、長軸方向部材にホイールを取り付けるための剛性シェルの設計が示されており、この長軸方向部材は、U字型の断面を有し、また基本的に垂直な方向を有する1つのホイール支持プレート、および上記支持プレートの面に直交する2つの平行な三角形のサイドフランジを含んでおり、サイドフランジのそれぞれは、支持プレートに隣接する第1の垂直な側部、第2のほぼ水平な底部側部、および第3の傾斜した側部により区画される。上記明細書では、サイドフランジのそれぞれはスタンプ加工した部分により剛性が高められている。
【0011】
支持プレートは、ホイールを回転可能なように支持するための手段を固定するための、1つの中央穴と4つの周辺穴を含む。
【0012】
文献EP−B1−1.380.455では、ホイールスタブアクスルを支持する垂直プレートに関する別の剛性を高めた設計が示されている。
【0013】
これらの文献に示されたものとは対照的に、本発明の目的は、シェルの新たな設計を提案するものである。
【発明の概要】
【0014】
この目的を達成するため、自動車両用ホイールを自動車両の構造要素またはサスペンション要素に取り付けるためのシェルであって、シェルがU字型の断面を有し、かつ
− 基本的に垂直な方向を有するホイール支持プレートと、
− 平行で、かつ支持プレートの面に直交する2つの三角形のサイドフランジであって、サイドフランジのそれぞれが、支持プレートに隣接する第1の垂直な側部、第2のほぼ水平な底部側部および第3の側部により区画される、2つの三角形のサイドフランジと
を含み、
横方向の打撃が、ホイールの底部に、ホイールの面に対して横断方向に加えられた際に、塑性的に変形する低抗力領域を、各サイドフランジが含むことを特徴とするシェルを、本発明は提案する。
【0015】
本発明の他の特徴は、
− 低抗力領域が、第3の側部まで延在する三角形の突起部の形態の、フランジの変形可能部分である、
− 突起部が、水平底部縁部で区画される三角形の輪郭を有する、
− 支持プレートが、ホイールを回転可能なようにガイドするための手段を通すための、中央穴を含む、
− 突起部が、穴の中心を通る水平面より下に位置する、
− 低抗力領域が、減厚部である、
− 減厚領域が、穴の中心を通る水平面より上に位置する、
− 2つの減厚領域が、支持プレートの減厚領域により、互いに連結する、
− 第3の側部が、前記減厚部の真上に、切り抜き部を含む、
各サイドフランジが、底部補剛ストリップを含み、底部補剛ストリップは、サイドフランジの面で、支持プレートから前記第2の側部に沿って延在する。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明を熟読することにより明らかになるであろう。この理解のため、以下の添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】突起部の形態で実現した低抗力領域を含む、本発明によるシェルの第1の実施形態を、塑性変形前の状態で示す、
図1と同様の概略斜視図である。
【
図3】減厚部の形態による低抗力領域を含む、本発明によるシェルの第2の実施形態を示す、
図2と同様の概略斜視図である。
【
図4】車両用ホイールを回転可能なように取り付ける手段を伴った
図3のシェルの、減厚領域の塑性変形後の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明において、同一の参照番号は、同一の構成要素または同様な機能を有する構成要素を示すよう使用されている。
【0019】
垂直方向、長軸方向、横断方向および水平方向の表現は、本説明および特許請求の範囲の理解を容易にするため、地球の重力方向および図中に示される基準三面体L,V,Tに関連して用いられる。
【0020】
本明細書の図中に示されるシェルのそれぞれは、非限定的な例として、垂直かつ横断方向の対称面PVMに関して一般的な設計の対称性を有する。
【0021】
1つの支持プレート10と2つのサイドフランジ12により構成されるシェル100を
図1に示す。
【0022】
非限定的な例として、シェル100は、切断され折り曲げられた金属シートから一体物として製造される。
【0023】
支持プレート10は、基本的に垂直かつ長軸方向の面に延在する。
【0024】
支持プレート10は、シェル100の正面を構成する。
【0025】
支持プレート10は、頂部14および底部16の2つの長軸方向水平縁部、ならびに2つの垂直縁部18により区画される。
【0026】
それ自体既知の方法で、この場合の支持プレート10は、その上部に、(非限定的な例として、)たとえばホイールを回転可能なようにガイドする手段の一部(図示せず)を通すための1つの中央穴19、およびたとえばホイールを回転可能なようにガイドする手段を固定するための手段を通すための4つの周辺穴20を含む。
【0027】
中央穴19の中心点Cおよび中心点Cを通る水平方向の幾何学面PHは、図のように定義される。
【0028】
各サイドフランジ18は垂直かつ横断方向の面に延在する。したがって、2つのサイドフランジ18は、互いに平行であり、かつ支持プレート10の面に直交する。
【0029】
各サイドフランジ18は、一般的に三角形状の長方形であり、支持プレート10に隣接する垂直縁部18に対応する垂直縁部22により区画される。
【0030】
また、各サイドフランジ18は、横断方向の水平底部縁部24および傾斜した後部縁部26により区画される。傾斜した縁部26は、底部水平縁部25の後部自由先端部25から、垂直縁部22の頂部先端部23まで延在し、凸状の湾曲部27により頂部先端部23に接続する。
【0031】
各サイドフランジ18は、その底部で、底部補剛ストリップ28により延在しており、底部補剛ストリップは、サイドフランジ18の面で、第2の水平底部縁部24に沿って延在する。
【0032】
補剛ストリップ28は、支持プレート10の垂直縁部18から、第2の水平底部側部24の長さの一部分のみまで、横断方向に後方に向かって延在する。
【0033】
したがって、補剛ストリップ18は、垂直縁部30により後方が区画されており、垂直縁部30は、第2の水平底部側部24の自由部分と合わせて、直角の輪郭を有する「切り抜き部」32を区画する。
【0034】
図1に示す設計では、サイドフランジは平面であり、また高い剛性を有しており、特に、たとえば関連するホイールの足部に衝撃を受けた際には、「ポジティブキャンバー」になる方向への応力に対して、高い剛性を有する。
【0035】
シェルの全体剛性は、2つの切り抜き部32で受ける構造要素(図示せず)に溶接でシェルが固定された際には、さらに高くなる。
【0036】
図2に示す第1の実施形態によれば、各サイドフランジ18は、低抗力の塑性変形可能領域を含み、塑性変形可能領域は、たとえば「スタンプ加工」の方式で製造される突起部34の形態で実現される。
【0037】
非限定的な例として、ここでは、各突起部34は、シェルの「内側」に向かって、もう1つのサイドフランジの方向に延在する。
【0038】
ここでは、各突起部34は、三角形の輪郭を有し、その頂部36は第1の垂直縁部22に近接して配置される。
【0039】
各突起部34は、ほぼ水平の底部縁部38および別の傾斜した頂部縁部40により底部を区画される。
【0040】
2つの縁部38および40は、第3の傾斜した縁部26まで延在し、したがって、突起部34は後部に向かって開口し、この縁部26の内側湾曲部42により区画される。
【0041】
この設計では、たとえば関連するホイールの足部に打撃または衝撃が生じた際には、2つのサイドフランジ18はただちに変形可能であり、これによって、ポジティブキャンバーになる方向へのキャンバー角の変更に対応したシェルの全体的な変形が可能になる。
【0042】
この変形は、正面支持プレート10の変形に対応し、正面支持プレート10の上部は、たとえば、スタンプ加工された突起部34の頂部36のほぼ真上に位置する、水平かつ長軸方向の軸(図示せず)まわりに「旋回する」ことがあり得る。
【0043】
図3および
図4に示す第2の実施形態によれば、各サイドフランジ18は、低抗力の塑性変形可能領域44を含んでおり、今回の場合は、低抗力の塑性変形可能領域44はサイドフランジの減厚部、すなわち肉厚が薄い部分である。
【0044】
各薄肉領域44は、水平面PHの上方に位置する。
【0045】
各薄肉領域44は、第3の傾斜した縁部26内に形成される凹型の輪郭を備えた切り抜き部46を伴っていてもよい。
【0046】
打撃を受けた際の塑性変形を助長し、
図4に模式的に示す状態をもたらすために、正面支持プレート10はまた、サイドフランジ18の薄肉領域44のほぼ真上に配置される薄肉領域48を含んでいてもよい。
【0047】
図4に示すように、
図4には、関連するホイールを回転可能なように取り付ける手段50(たとえばベアリング)が、模式的な表現で示されており、たとえば、関連するホイールの足部に打撃または衝撃を受けた際には、2つのサイドフランジ18は、ただちに変形可能であり、これによって、ポジティブキャンバーになる方向へのキャンバー角の変更に対応したシェル100の全体的な変形が可能になる(手段50の軸aの水平面PHに対する傾きで模式的に示す)。