(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内視鏡で患者の体内を撮影した内視鏡画像から、内視鏡検査で使用された器材を前記内視鏡画像と各器材のテンプレート画像との照合処理を使用した画像認識により検出する検出部と、
前記内視鏡画像から検出された器材の情報をメタデータとして、前記内視鏡画像のファイルに含める付加部と、
を備え、
前記検出部は、内視鏡で患者の体内を撮影した内視鏡画像から、内視鏡検査で使用された薬剤を、前記内視鏡画像内の画素の色調特徴量を使用した画像認識により検出し、
前記付加部は、前記内視鏡画像から検出された薬剤の情報をメタデータとして、前記内視鏡画像のファイルに含めることを特徴とする内視鏡業務支援システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る内視鏡業務支援システム1の構成を示す図である。内視鏡業務支援システム1は内視鏡部門に設置され、内視鏡業務を支援するためのシステムである。内視鏡業務支援システム1は、複数の内視鏡システム10a、10b(以下、特に区別しない場合には「内視鏡システム10」とよぶ)、内視鏡業務支援装置30、複数の端末装置40a、40b(以下、特に区別しない場合には「端末装置40」とよぶ)を備え、それらはLANなどのネットワーク2によって相互接続される。
【0015】
内視鏡業務支援システム1は医療施設内の別のシステムと連携が可能である。例えばネットワーク2に図示しないゲートウェイ装置が接続され、このゲートウェイ装置を介して内視鏡業務支援システム1は、オーダリングシステム、電子カルテシステム、医事会計システム等と連携可能である。
【0016】
図2は、実施の形態1に係る内視鏡システム10の構成を示す図である。内視鏡システム10は内視鏡11、内視鏡処理装置(カメラコントロールユニットともいう)12、記憶装置13、表示装置14及び光源装置15を備える。内視鏡11は患者の体内に挿入され、患者の体内を撮影する。内視鏡11は撮像素子111、鉗子チャンネル112及び操作部113を含む。
【0017】
撮像素子111はCCDイメージセンサ、CMDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサを備え、入射光を光電変換する。光電変換により生成された画像信号は、図示しない信号処理回路によりA/D変換、ノイズ除去などの信号処理が施され、内視鏡処理装置12に出力される。鉗子チャンネル112は、鉗子などの処置具を通すためのチャンネルである。操作部113にはレリーズボタン、内視鏡の先端を曲げるためのアングルノブ等が設けられる。
【0018】
光源装置15はキセノンランプ等の光源を備え、内視鏡11の先端に光を送る。光源装置15は、内視鏡処理装置12からの制御に従い明るさを調整する。表示装置14は、内視鏡処理装置12から入力される画像を表示する。例えば、内視鏡11により撮像されている患者の体内の画像をリアルタイムに表示する。記憶装置13はHDD、SSD等の記録媒体を備え、内視鏡11により撮像された内視鏡画像を記憶する。
【0019】
内視鏡処理装置12は内視鏡システム10全体を制御する。内視鏡処理装置12は制御部121及び通信部122を備える。制御部121は操作受付部121a、表示制御部121b、オブジェクト検出部121c及び検出情報通知部121dを含む。
図2の制御部121には、実施の形態1の処理に関連する機能ブロックのみを描いている。
【0020】
制御部121の機能は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、又はハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【0021】
図3は、実施の形態1に係る内視鏡業務支援装置30の構成を示す図である。内視鏡業務支援装置30は内視鏡業務支援システム1全体を制御する。内視鏡業務支援装置30は例えば、サーバで構成される。内視鏡業務支援装置30は通信部31、制御部32及び記憶部33を備える。制御部32は操作受付部321、検出情報取得部322、文書作成部323及び表示制御部324を含む。
図3の制御部32にも、実施の形態1の処理に関連する機能ブロックのみを描いている。制御部32の機能も、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、又はハードウェア資源のみにより実現できる。
【0022】
記憶部33はHDD、SSD等の記録媒体を備え、内視鏡画像記憶部331、検出情報/反映情報関連付け記憶部332及びレポート記憶部333を含む。
図3の記憶部33にも、実施の形態1の処理に関連する機能ブロックのみを描いている。
【0023】
図4は、実施の形態1に係る端末装置40の構成を示す図である。端末装置40は医師、看護師など医療機関に従事する医療従事者が使用する端末装置であり、例えばPC、タブレット、PDAなどで構成される。タブレット、PDAなどの携帯端末装置が使用される場合、ネットワーク2に図示しないアクセスポイントが設置され、無線LANによりネットワーク2に接続される。端末装置40は通信部41、制御部42、記憶部43、表示部44及び操作入力部45を備える。以下、
図2〜
図4を参照しながら具体的に説明する。
【0024】
内視鏡11で患者の体内を撮影した内視鏡画像は動画として、内視鏡処理装置12に入力される。例えば30Hzのフレームレートで入力される。表示制御部121bは、入力された内視鏡動画を表示装置14に表示させる。操作受付部121aは、内視鏡11の操作部113に対してなされた医師の操作を受け付ける。例えば医師によるレリーズボタンの押下を受け付ける。図示しない画像抽出部は、レリーズボタンが押下されたタイミングで内視鏡動画から静止画を抽出する。抽出された静止画は記憶装置13に保存されるか、ネットワーク2を介して内視鏡業務支援装置30に転送されて内視鏡業務支援装置30の内視鏡画像記憶部331に保存される。
【0025】
オブジェクト検出部121cは、内視鏡動画に含まれるフレーム画像から、内視鏡検査で使用された薬剤および/または器材を画像認識により検出する。オブジェクト検出部121cは、内視鏡動画に含まれる全てのフレーム画像に対して画像認識を実行してもよいし、1枚おき又は数枚おきに画像認識を実行してもよい。上記の薬剤には例えば、患者の体内に散布された色素剤・染色剤が該当する。当該器材には、患者の体内で使用される処置具が該当する。以下、内視鏡画像内から画像認識技術を用いて色素・染色剤および各種処置具を検出する方法の一例を説明する。
【0026】
まず色素・染色剤の検出方法について説明する。色素剤は生体粘膜に吸収されず表面に貯留することで形状や凹凸を観察するのに使用される。染色剤は組織による吸収有無や反応の違いにより粘膜表面性状や細胞構造の違いを観察するのに使用される。以下の例では色素・染色剤の検出対象として、ヨード(ルゴール)、インジゴカルミン、ピオクタニン(クリスタルバイオレット)、メチレンブルー、及び墨汁の5種類を想定する。
【0027】
(1)ヨード(ルゴール)の主な散布臓器は食道であり、 食道癌の鑑別診断および範囲診断に用いられる。(2)インジゴカルミンの主な散布臓器は胃、大腸であり、腫瘍性病変(癌、腺腫等)及び非腫瘍性病変(過形成性ポリープ)等の鑑別診断および範囲診断に用いられる。(3)ピオクタニン(クリスタルバイオレット)の主な散布臓器は大腸であり、大腸癌を含む腫瘍性・非腫瘍性病変の鑑別診断および深達度診断に用いられる。(4)メチレンブルーの主な散布臓器は胃、大腸であり、胃の腸上皮化生の診断に用いられてる。近年は超拡大内視鏡(endocytoscopy:EC)観察の核染色にも使用される。なお、この用途でピオクタニンを使用する場合もある。(5)墨汁は粘膜下に局注する。病変近傍に黒色班をつけて目印とする。
【0028】
以下、5種類の色素・染色剤を色調特徴量に基づき検出する方法を説明する。白色光(通常光)を用いて撮像された内視鏡画像(サイズISX×ISY、RGB各8bitの256階調(0〜255))の各画素値をrij、gij及びbijとする。0≦i<ISX-1、0≦j<ISY-1、例えばISX=384、ISY=384とする。
【0029】
まず各画素のrij、gij及びbijに逆γ補正を適用する。次に、閾値処理rij、gij、bij<THL(RGB全値が閾値THL未満)、rij、gij、bij>THH(RGB全値が閾値THHより大)により、特徴量の算出に適さない暗部画素およびハレーション画素を以降の処理対象から除外する。閾値THL及び閾値THHは、例えばそれぞれ10及び200とする。
【0030】
次に、除外されなかった各画素ごとに色調特徴量としてG/R及びB/G(即ち、GRij=gij/rij及びBGij=bij/gij)を算出する。次に、ISX×ISYの画像のGRij及びBGijの平均値を、例えばサイズ8×8のブロックごとに算出する。この例では水平・垂直方向ともに384/8=48で、48×48=2304個のブロックに分割する。得られた各ブロックごとの平均値をそれぞれμGRk及びμBGkとする(0≦k<2304)。
【0031】
図5は、5種類の色素・染色剤と臓器粘膜から得られるμGRk及びμBGkをプロットした散布図の一例を示す。臓器粘膜は食道、胃、大腸の粘膜である。
図5に示すように、インジゴカルミン(青色〜緑青色)、ピオクタニン(紫色〜青紫色)、メチレンブルー(青色)はそれぞれの色調により特徴的な分布を示す。
【0032】
図6は、
図5の散布図においてG/R及びB/Gの特徴空間(平面)を分割して識別器を作成した図である。
図6ではピオクタニンの識別器Cp、メチレンブルーの識別器Cm及びインジゴの識別器Ciを描いている。色素・染色剤の散布直後は内視鏡画像視野内の多くの部分がその薬剤の色調で占められるため、良好な検出が可能である。なお白色光による内視鏡画像において生体粘膜は基本的にrij>gij>bijとなる。これは生体粘膜の色調がヘモグロビンの吸光に依存することによる。
【0033】
図7は、
図5の散布図の左下領域(G/R<1.00及びB/G<1.00)を拡大した図である。この領域にはピオクタニン、メチレンブルー及びインジゴのプロットは存在せず、ヨード、粘膜および墨汁のプロットのみが存在する。
図7に示すようにヨード(褐色〜黄褐色)及び墨汁(黒色〜粘膜透見を経る暗色)の色調から、生体粘膜とは異なる分布が得られる。
【0034】
図8は、
図7の散布図においてG/R及びB/Gの特徴空間(平面)を分割して識別器を作成した図である。
図8ではヨードの識別器Ci及び墨汁の識別器Cbを描いている。
図5〜
図8においては色素・染色剤散布直後ではない画像からの限られたサンプルを用いているため分布範囲が広く、一部生体粘膜の色調と重複しているところがあるが、散布直後の画像であれば、分布範囲がより狭くなる。
【0035】
なお、本出願人が特許4624841号、4472631号、4520405号に開示した色調特徴量(及びテクスチャ特徴量)を用いた領域分割・検出処理において、各色素・染色剤を新たなクラスとして設定することで、より良好な検出結果を得ることも可能である。また、G/R、B/G以外の色調特徴量として、R/(R+G+B)、G/(R+G+B)及びB/(R+G+B)や、HSI等の色空間変換後の色相・彩度等を使用することも可能である。
【0036】
次に処置具の検出方法について説明する。内視鏡検査において患者の体内において処置具が使用されたことを、処置具の種別を含めて画像認識技術により検出する。本実施の形態において検出対象の処置具には鉗子が含まれる。鉗子には生検鉗子、把持鉗子、ホットバイオプシー鉗子などがある。ホットバイオプシー鉗子は高周波通電ができ、異物をつまんで切除し回収できる鉗子である。
【0037】
検出対象の処置具には注射針が含まれる。注射針には生検針、生理食塩水を局注するための局注針などがある。検出対象の処置具には高周波処置具が含まれる。高周波処置具にはスネア、切開鉗子、ナイフ、止血鉗子などがある。高周波スネアはEMR(Endoscopic Mucosal Resection)に使用される。高周波ナイフはESD(Endoscopic Submucosal Dissection)に使用される。検出対象の処置具にはクリップが含まれる。クリップは止血に使用される。検出対象の処置具には結紮装置が含まれる。結紮装置は消化管内のポリープを結紮するために使用される。検出対象の処置具には十二指腸スコープ用処置具が含まれる。十二指腸スコープ用処置具には、カニューラ、造影チューブ、砕石具などが含まれる。カニューラはERCP(Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography)に使用される。
【0038】
検出対象の処置具にはその他に、ガイドワイヤ、ブラシ、バスケット、チューブ、ステント、バルーン、カテーテル等が含まれる。ガイドワイヤ及びカテーテルはERCPに使用される。ブラシは細胞診に使用される。バスケットは採石、異物回収に使用される。チューブは色素散布に使用される。ステントは留置術に使用される。バルーンは拡張術に使用される。
【0039】
以下、処置具の具体的な検出方法について説明する。内視鏡は機種によって処置具の挿通部(鉗子チャネル)の位置が決まっている。鉗子チャンネルが2チャンネルの機種もある。各処置具を鉗子チャネルに挿通した際の内視鏡画像をテンプレート画像とし、検査時の内視鏡画像と照合することにより、いずれかの処置具が使用されたことを検出する。テンプレート画像は処置具ごとに、鉗子チャネル方向、突出長、開閉状態が異なる画像を複数用意する。また回転により画像上の形状が変化する非対称形状の処置具については、回転角度が異なる画像を複数用意する。
【0040】
内視鏡画像から処置具を検出するために、まず内視鏡画像からエッジを検出する。エッジ検出用の画像にはR画像またはG画像を用いる。処置具シースが赤い場合はG画像を用いるとよい。次にエッジ画像内からテンプレートマッチング、Hough変換などを用いて線分形状を検出する。次に、検出した線分形状とテンプレート画像を照合し、一致度を算出する。一致度が最も高いテンプレート画像の処置具を検出結果とする。
【0041】
図9は、生検鉗子51を含む内視鏡画像50の一例を示す図である。処置具は、
図9に示すように基本的に、4〜8時の方向からフレームインする。従って処置具のテンプレート画像は、4〜8時の方向からフレームインする向きのテンプレート画像のみを用意すればよい。これによりテンプレート画像の数、照合に必要な演算量を低減できる。
【0042】
なお処置具の検出において、シースの色情報を考慮することも可能である。また近年パターン検出等で利用されているSIFT(Scale-Invariant Feature Transform)、SURF(Speeded Up Robust Features)等の特徴量を用いたアルゴリズムを用いてもよい。
【0043】
図2〜
図4に戻る。内視鏡処理装置12の検出情報通知部121dは、オブジェクト検出部121cにより内視鏡画像内で検出された薬剤および/または器材の情報を検出情報として、ネットワーク2を介して内視鏡業務支援装置30に通知する。
【0044】
内視鏡業務支援装置30の検出情報取得部322は、内視鏡処理装置12から通知された検出情報を取得する。操作受付部321は、端末装置40の操作入力部45に対する医療従事者の入力操作を受け付ける。文書作成部323は、受け付けた医療従事者の入力操作に従い内視鏡検査に関する医療文書を作成する。表示制御部324は、内視鏡検査に関する医療文書の作成画面を端末装置40の表示部44に表示させる。文書作成部323は内視鏡検査に関する医療文書を作成する際、検出情報取得部322により取得された検出情報をもとに、医療従事者による医療文書作成のための入力操作を補助する。例えば、医療文書の作成画面の入力項目欄の内、当該検出情報をもとに入力可能な欄を仮入力する。
【0045】
内視鏡検査に関する医療文書の主なものに内視鏡検査レポート、検査実施記録がある。内視鏡検査レポートには医師の診断内容や所見が記載される。内視鏡画像の添付も可能である。文書作成部323は作成した内視鏡検査レポートをレポート記憶部333に保存する。内視鏡検査レポートは図示しない電子カルテシステムに送信することもできる。また印刷して病理診断医などに渡すこともできる。検査実施記録には内視鏡検査で使用された手技、薬剤、器材などが記録され、図示しない医事会計システムに送信される。検査実施記録は保険点数算定の基礎として使用される。
【0046】
文書作成部323により医療文書の作成画面の入力可能な欄が仮入力される前に、表示制御部324は上記の検出情報が正しいか否かを医療従事者に確認させるための確認画面を、端末装置40の表示部44に表示させる。
【0047】
検出情報が医療従事者により確認されると、文書作成部323は検出情報/反映情報関連付け記憶部332を参照して、検出情報から反映情報を抽出する。反映情報は、検出情報である薬剤または処置具の使用から特定または推定される、内視鏡検査に関する情報または知見である。例えば、検出情報にルゴールが含まれる場合、上部内視鏡検査が実施されたと推定できる。ルゴールは通常、食道癌の診断に用いられ、大腸癌の診断には用いられないためである。検出情報/反映情報関連付け記憶部332は薬剤、処置具ごとに、その使用により特定または推定される、内視鏡検査に関する情報または知見を保持する。
【0048】
図10(a)−(b)は、検出情報確認画面44a及び反映情報確認画面44bの一例を示す図である。医師は、検出情報確認画面44aに表示された検出情報が正しい場合、OKボタンを押下する。検出情報確認画面44aに表示された検出情報に誤りがある場合、端末装置40の操作入力部45を操作して検出情報を修正する。例えば、誤りの検出情報についてはチェックボックスを外す。医師は同様に、反映情報確認画面44bに表示された反映情報が正しいか否か確認する。
【0049】
図11は、内視鏡検査に関する医療文書の入力画面44cの一例を示す図である。所見エリア及び診断エリアは内視鏡検査レポートを作成するためのエリアである。実施エリアは、検査実施記録を作成するためのエリアである。
図11では検査情報の検査項目欄、処置エリアの処置情報欄、実施エリアの手技欄、加算欄、薬剤欄、器材欄に、
図10(b)の反映情報確認画面44bで確認された反映情報が自動入力されている。医師は自動入力された内容を確認し、誤りがある場合は端末装置40の操作入力部45を操作して修正する。また自動入力されていない空欄に必要な情報を入力する。
【0050】
図12は、実施の形態1に係る医療文書作成支援処理の流れを示すフローチャートである。内視鏡処理装置12は内視鏡11から内視鏡画像を取得する(S10)。オブジェクト検出部121cは、内視鏡画像内から画像認識により薬剤および/または処置具を検出する(S11)。検出情報は内視鏡業務支援装置30に通知される。医師が端末装置40を使用して内視鏡検査に関する文書を作成する際、内視鏡業務支援装置30の表示制御部324は表示部44に、検出情報の確認画面を表示させる(S12)。医師により検出情報が確認されると、文書作成部323は検出情報に紐付けられた反映情報を抽出する(S13)。表示制御部324は表示部44に、反映情報の確認画面を表示させる(S14)。医師により反映情報が確認されると、文書作成部323は文書作成画面の入力項目欄に反映情報を自動入力する(S15)。
【0051】
以上説明したように実施の形態1によれば、内視鏡検査で使用された薬剤および/または器材に関する情報を自動検出するため、当該情報を医療従事者がシステムに入力する手間を軽減できる。医師の記憶違いや打ち間違いによる当該情報の入力ミスを防止できる。薬剤や器材に識別ラベルを貼付して、リーダーで読み取る運用も考えられるが、リーダーを配置するスペースが取りづらい問題がある。また識別ラベルにリーダーをかざす作業が依然として残る。この点、本実施の形態ではこのような作業も必要ない。
【0052】
(実施の形態2)
図13は、本発明の実施の形態2に係る内視鏡システム10の構成を示す図である。以下、実施の形態1と共通する説明は適宜省略する。実施の形態2では内視鏡処理装置12の制御部121は、操作受付部121a、表示制御部121b、オブジェクト検出部121c及び検出情報通知部121dに加えて、開始/終了位置検出部121e及び録画データ格納部121fを含む。
【0053】
記憶装置13には内視鏡11で撮影された動画の一部区間の録画データが記憶される。開始/終了位置検出部121eは、オブジェクト検出部121cにより内視鏡画像から検出された薬剤および/または器材の情報をもとに、記憶装置13に記憶する上述の動画の一部区間の開始位置および/または終了位置を決定する。例えば、処置具が出現したフレーム画像を録画区間の開始位置に決定する。その後、当該処置具が存在しなくなったフレーム画像を録画区間の終了位置に決定する。なお終了位置は、画像認識による処置具のフレームアウトの検出ではなく、医師による終了操作がなされたことに起因して決定してもよい。当該終了操作は、内視鏡処理装置12に設置された終了ボタン、又は内視鏡11の操作部113に設置された終了ボタンを押下することにより実行される。
【0054】
録画データ格納部121fは、開始/終了位置検出部121eにより決定された一部区間の開始位置および/または終了位置をもとに生成される録画データを記憶装置13に格納する。なお録画データ格納部121fは当該録画データを、ネットワーク2を介して内視鏡業務支援装置30に転送し、内視鏡業務支援装置30の内視鏡画像記憶部331に格納してもよい。
【0055】
図14は、内視鏡動画と録画データの関係を示す図である。内視鏡11により撮影される内視鏡動画の内、処置具がフレームインしてから当該処置具がフレームアウトするまでの期間の画像が録画データとして記録される。その他の期間の内視鏡動画は、医師によりレリーズボタンが押下されたタイミングのフレーム画像を除き、原則的に破棄される。
【0056】
図15は、実施の形態2に係る録画データ作成処理の流れを示すフローチャートである。内視鏡処理装置12は内視鏡11から内視鏡画像を取得する(S20)。オブジェクト検出部121cは、内視鏡画像内から画像認識により処置具がフレームインしたか否かを検出する(S21)。処置具が内視鏡動画にフレームインした場合(S21のY)、内視鏡動画の録画を開始する(S22)。医師により録画終了操作がなされた場合(S23のY)、録画を終了する(S25)。医師により録画終了操作がなされない間に(S23のN)、処置具が内視鏡動画からフレームアウトした場合(S24のY)も録画を終了する(S25)。録画データ格納部121fは録画データを記憶装置13に格納する(S26)。
【0057】
以上説明したように実施の形態2によれば、内視鏡検査における処置具を使用した手技の動画を簡単かつ正確に録画できる。内視鏡部門では、教育の観点から上級の医師の手技を録画して、新人の医師や研修医が閲覧できるようにしているところがある。その場合において、内視鏡検査の全ての期間を録画している場合、見たい手技のシーンを探す手間が発生する。また重要性が低いシーン(例えば、患部を発見するまでの期間)も記録されることになるため、データベースの容量を無駄に使用することになる。また医師が手技を始める前に録画開始ボタンを押下する運用も考えられるが、ボタンを押下する手間が発生する。また押し忘れる可能性もある。この点、本実施の形態では適切なタイミングから自動的に録画が開始されるため上記のような問題が発生しない。
【0058】
(実施の形態3)
図16は、本発明の実施の形態3に係る内視鏡業務支援装置30の構成を示す図である。以下、実施の形態1と共通する説明は適宜省略する。実施の形態3では内視鏡業務支援装置30の制御部32は、操作受付部321、検出情報取得部322、文書作成部323及び表示制御部324に加えてメタデータ付加部325を含む。
【0059】
メタデータ付加部325は、内視鏡画像のフレーム画像から検出された薬剤および/または器材の情報をメタデータとして当該フレーム画像のファイルに含める。実施の形態1では、検出された薬剤および/または器材の情報は検査情報自体に関連付けられたが、実施の形態3では内視鏡画像に直接関連付ける。
【0060】
図17は、生検鉗子51を含む内視鏡画像50の一例を示す図である。
図17に示す内視鏡画像にはタブ52が付加され、タブ52内には観察部位(
図17の例では胃)が表示される。さらに内視鏡画像50の中に薬剤または処置具が含まれる場合、タブ52内にその薬剤名または処置具名も表示される。
図17の例ではタブ52内に生検鉗子が表示される。
【0061】
なお内視鏡画像に関連付けられた検出情報の使用方法は、
図17に示す使用方法に限るものではない。例えばタブ52を付加せずに、右クリックにより表示されるポップアップメニュー内に検出情報を含めてもよい。医療従事者が端末装置40の操作入力部45を操作して当該検出情報を選択すると、文書作成部323は当該検出情報から反映情報を抽出し、当該内視鏡画像を添付した内視鏡検査レポートの該当する入力欄に、当該反映情報を仮入力する。
【0062】
また内視鏡画像に関連付けられた検出情報はユーザインタフェースだけでなく、画像検索にも利用できる。例えば、ルゴールを検索キーとして内視鏡画像記憶部331に記憶された内視鏡画像を検索した場合、内視鏡画像記憶部331に記憶された内視鏡画像の内、ルゴールが使用されている内視鏡画像のみを抽出できる。
【0063】
以上説明したように実施の形態3によれば、薬剤および/または器材が検出された内視鏡画像にその情報をメタデータとして付加することにより、当該内視鏡画像の管理や検索が容易になる。また当該内視鏡画像が添付される内視鏡検査レポートの作成も容易になる。また当該内視鏡画像をカンファレンスや学会で学術情報として利用することも容易になる。
【0064】
(実施の形態4)
図18は、本発明の実施の形態4に係る内視鏡業務支援装置30の構成を示す図である。以下、実施の形態1と共通する説明は適宜省略する。実施の形態4では内視鏡処理装置12の制御部121は、操作受付部121a、表示制御部121b、オブジェクト検出部121c及び検出情報通知部121dに加えて禁忌行為判定部121gを含む。
【0065】
記憶装置13は禁忌情報記憶部131を含む。禁忌情報記憶部131は、各薬剤および各処置具の禁忌情報を規定している。例えば、患者が血液の抗凝固薬を服用している場合、患者の生体粘膜を切除する手技は禁忌行為となる。禁忌情報記憶部131は、当該手技に使用する処置具の禁忌情報として抗凝固薬の服用を規定している。
【0066】
禁忌行為判定部121gは、オブジェクト検出部121cにより内視鏡画像から検出された薬剤および/または器材が患者の禁忌情報に違反するか否かを、禁忌情報記憶部131を参照して判定する。禁忌情報に違反する場合、表示制御部121bは表示装置14にアラートメッセージを表示させる。例えば、抗凝固薬を服用している患者の内視鏡検査において、内視鏡画像に生検鉗子がフレームインすると「抗凝固剤を使用している患者です。生検しないでください。」といったメッセージを表示させる。なお、内視鏡処理装置12に音声出力部を設置し、アラートメッセージの表示に代えてアラート音を報知してもよい。または両者を併用してもよい。
【0067】
図19は、実施の形態4に係るアラート報知処理の流れを示すフローチャートである。内視鏡処理装置12は内視鏡11から内視鏡画像を取得する(S40)。オブジェクト検出部121cは、内視鏡画像内から画像認識により処置具がフレームインしたか否かを検出する(S41)。処置具が内視鏡動画にフレームインした場合(S41のY)、禁忌行為判定部121gは当該内視鏡検査において当該処置具の使用が禁忌行為に該当するか否か判定する(S42)。該当する場合(S42のY)、表示制御部121bは表示装置14にアラートメッセージを表示させる(S43)。該当しない場合(S42のN)、アラートメッセージは表示されない。
【0068】
以上説明したように実施の形態4によれば、内視鏡画像から画像認識により禁忌行為に使用される薬剤または処置具を検出するとアラートを報知することにより、禁忌行為がなされることを未然に防止できる。
【0069】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0070】
上述の実施の形態1−4ではオブジェクト検出部121cは内視鏡画像から薬剤または器材を検出する例を説明した。この点、オブジェクト検出部121cは内視鏡画像から観察方法を検出してもよい。観察方法には、拡大内視鏡を用いた観察、狭帯域光観察(NBI観察)、超音波内視鏡を用いた観察などがある。拡大内視鏡は、粘膜の表層表面構造の観察に使用される。NBI観察は、血管や上皮構造などの粘膜表面微細構造を高コントラストに観察する方法である。超音波内視鏡は、深達度の観察に使用される。拡大内視鏡とNBIを併用すると保険点数が加算される。
【0071】
NBI観察では、ヘモグロビンが吸収するように狭帯域化された青と緑の2つの波長の光を照射する。これにより内視鏡画像内で血液は濃い茶褐色に染まって表示され、微細血管像のコントラストが増強される。オブジェクト検出部121cは例えば、内視鏡画像内の赤成分が閾値以上、減少したことを認識することによりNBI観察を検出する。文書作成部323は内視鏡画像から検出された観察方法をもとに、医療従事者による医療文書作成のための入力操作を補助する。
【0072】
上述の実施の形態1、3に係る処理では、内視鏡システム10と内視鏡業務支援装置30の連携により実現する例を説明したが、内視鏡業務支援装置30単体で実現してもよい。その場合、内視鏡処理装置12のオブジェクト検出部121c、開始/終了位置検出部121e及び録画データ格納部121fの機能を、内視鏡業務支援装置30の制御部32で実現すればよい。
【0073】
また上述の実施の形態2、4に係る処理では、内視鏡システム10により実現する例を説明したが、内視鏡システム10と内視鏡業務支援装置30の連携、又は内視鏡業務支援装置30単体で実現してもよい。