(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シート前後方向及び幅方向の中央部分が開放された上側部材本体と、前記上側部材本体に取付けられることで前記上側部材本体のシート前後方向及び幅方向の中央部分の少なくとも一部を閉止する蓋部と、を有し、乗員の臀部を支持するシートクッションが固定される上側部材と、
前記上側部材のシート下方側に配置され、車体に固定される下側部材と、
前記上側部材本体と前記下側部材とを連結し、作動されることで前記上側部材が前記下側部材に対してシート上下方向に垂直に移動される連結部材と、
前記蓋部と前記下側部材との間に設けられ、前記蓋部と前記下側部材との間で変形されることで、前記下側部材から前記上側部材へ入力される荷重を低減すると共に前記下側部材から前記上側部材へ伝達される振動を減衰する変形部材と、
を備えた車両用シート用サスペンションユニットの製造方法に適用され、
前記連結部材の一部を前記下側部材に係合させる第1連結部材係合工程と、
前記連結部材の他の一部を前記上側部材本体に係合させることで、前記上側部材本体と前記下側部材とを前記連結部材を介して連結させる第2連結部材係合工程と、
前記変形部材を前記上側部材本体のシート前後方向及び幅方向の中央部分を通じて前記下側部材に載置する変形部材載置工程と、
前記蓋部を前記上側部材本体に取付ける蓋部取付工程と、
を有する車両用シート用サスペンションユニットの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された車両用シートでは、パッドの変形方向及び変形の態様が定まっていない。そのため、安定した乗り心地性能を得るという観点で改善の余地がある。また、上記特許文献1に記載された車両用シートでは、クッションシェル(保持部材)がクッションパンに対して上下方向に移動される際に、クッションシェル(保持部材)がクッションパンに対して水平方向に移動されるタイプのリンクが用いられている。そのため、クッションシェル(保持部材)のクッションパンに対する上下方向のストロークを大きくとることが難しい。また、クッションシェル(保持部材)がクッションパンに対して水平方向に移動されることにより、各部材の水平方向への摺動に伴う摩擦の影響を受けやすい。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、安定した乗り心地性能を得ることができる車両用シート用サスペンションユニット及び車両用シート用サスペンションユニットの製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用シート用サスペンションユニットは、乗員の臀部を支持するシートクッションが固定される上側部材と、前記上側部材のシート下方側に配置され、車体に固定される下側部材と、前記上側部材と前記下側部材とを連結し、作動されることで前記上側部材が前記下側部材に対してシート上下方向に垂直に移動される連結部材と、前記上側部材と前記下側部材との間に設けられ、前記上側部材と前記下側部材との間で変形されることで、前記下側部材から前記上側部材へ入力される荷重を低減すると共に前記下側部材から前記上側部材へ伝達される振動を減衰する変形部材と、を備えている。
【0007】
上記車両用シート用サスペンションユニットによれば、車体の振動に伴う荷重が下側部材に入力されると、連結部材が作動されて、上側部材が下側部材に対してシート上下方向に垂直に移動される。これにより、上側部材と下側部材との間に設けられた変形部材が変形されて、下側部材から上側部材へ伝達される荷重が低減されると共に下側部材から上側部材へ伝達された振動が減衰される。これにより、シートクッションに着座した乗員に伝わる振動が低減されて、乗り心地性能を良好にすることができる。
ここで、上記車両用シート用サスペンションユニットによれば、上側部材が下側部材に対してシート上下方向に垂直に移動されるようになっている。これにより、上側部材と下側部材との間に設けられた変形部材がシート上下方向に垂直に変形されるようになっている。すなわち、変形部材の変形方向が定まっていると共に変形部材の変形の態様が上側部材と下側部材との距離に対応して定まるようになっている。その結果、安定した乗り心地性能を得ることができる。
【0008】
また、上記課題を解決する車両用シート用サスペンションユニットの製造方法は、シート前後方向及び幅方向の中央部分が開放された上側部材本体と、前記上側部材本体に取付けられることで前記上側部材本体のシート前後方向及び幅方向の中央部分の少なくとも一部を閉止する蓋部と、を有し、乗員の臀部を支持するシートクッションが固定される上側部材と、前記上側部材のシート下方側に配置され、車体に固定される下側部材と、前記上側部材本体と前記下側部材とを連結し、作動されることで前記上側部材が前記下側部材に対してシート上下方向に垂直に移動される連結部材と、前記蓋部と前記下側部材との間に設けられ、前記蓋部と前記下側部材との間で変形されることで、前記下側部材から前記上側部材へ入力される荷重を低減すると共に前記下側部材から前記上側部材へ伝達される振動を減衰する変形部材と、を備えた車両用シート用サスペンションユニットの製造方法に適用され、前記連結部材の一部を前記下側部材に係合させる第1連結部材係合工程と、前記連結部材の他の一部を前記上側部材本体に係合させることで、前記上側部材本体と前記下側部材とを前記連結部材を介して連結させる第2連結部材係合工程と、前記変形部材を前記上側部材本体のシート前後方向及び幅方向の中央部分を通じて前記下側部材に載置する変形部材載置工程と、前記蓋部を前記上側部材本体に取付ける蓋部取付工程と、を有する。
【0009】
上記車両用シート用サスペンションユニットの製造方法によれば、先ず、連結部材の一部を下側部材に係合させる(第1連結部材係合工程)。次に、連結部材の他の一部を上側部材本体に係合させる(第2連結部材係合工程)。これにより、上側部材本体と下側部材とが連結部材を介して連結される。次に、変形部材を上側部材本体のシート前後方向及び幅方向の中央部分を通じて下側部材に載置する(変形部材載置工程)。次に、蓋部を上側部材本体に取付ける(蓋部取付工程)。以上の工程を経て車両用シート用サスペンションユニットが製造される。上記工程を経て製造された車両用シート用サスペンションユニットによれば、車体の振動に伴う荷重が下側部材に入力されると、連結部材が作動されて、上側部材が下側部材に対してシート上下方向に垂直に移動される。これにより、上側部材の蓋部と下側部材との間に設けられた変形部材が変形されて、下側部材から上側部材へ伝達される荷重が低減されると共に下側部材から上側部材へ伝達された振動が減衰される。これにより、シートクッションに着座した乗員に伝わる振動が低減されて、乗り心地性能を良好にすることができる。
ここで、上記工程を経て製造された車両用シート用サスペンションユニットによれば、上側部材が下側部材に対してシート上下方向に垂直に移動されるようになっている。これにより、上側部材の蓋部と下側部材との間に設けられた変形部材がシート上下方向に垂直に変形されるようになっている。すなわち、変形部材の変形方向が定まっていると共に変形部材の変形の態様が上側部材の蓋部と下側部材との距離に対応して定まるようになっている。その結果、安定した乗り心地性能を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明に係る車両用シート用サスペンションユニット及び車両用シート用サスペンションユニットの製造方法は、安定した乗り心地性能を得ることができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び
図2Aを用いて本発明の実施形態に係る車両用シート用サスペンションユニット10及び車両用サスペンションシート12について説明する。なお、以下の説明において前後左右上下の方向を示して説明するときは、特に説明のない限り車両用サスペンションシート12に着座した乗員から見た前後左右上下の方向を示すものとし、また各図に適宜示す矢印FRはシート前方向、矢印UPはシート上方向、矢印RHはシート右方向、矢印LHはシート左方向をそれぞれ示すものとする。また、左右の方向は、シート幅方向と一致している。
【0013】
図1に示されるように、車両用サスペンションシート12は、シート本体14が車両用シート用サスペンションユニット10に取付けられることによって構成されている。なお、以下の説明においては、「車両用シート用サスペンションユニット10」を単に「サスペンションユニット10」と呼ぶ。
【0014】
シート本体14は、乗員の臀部を支持するシートクッション16と、シートクッション16の後端部に取付けられ乗員の背部を支持するシートバック18と、シートバック18の上端部に取付けられ乗員の頭部を支持するヘッドレスト20と、を備えている。
【0015】
図2Aに示されるように、サスペンションユニット10は、シート本体14のシートクッション16(
図1参照)が固定される上側部材としてのアッパフレーム22と、アッパフレーム22の下方側に配置され車体に固定される下側部材としてのロアフレーム24と、を備えている。また、サスペンションユニット10は、アッパフレーム22とロアフレーム24とを連結する連結部材としてのXリンク26と、アッパフレーム22とロアフレーム24との間に設けられた変形部材としてのウレタンブロック28と、を備えている。
【0016】
アッパフレーム22は、シート上方側から見て前後方向及びシート幅方向の中央部分30Aが開放(開口)された矩形枠状に形成された上側部材本体としてのアッパフレーム本体30に頂板部及び蓋部としてのアッパパネル32が取付けられることによって構成されている。
【0017】
アッパフレーム本体30は、シート幅方向に間隔をあけて配置され前後方向に延びる左右一対のアッパレール34と、左右一対のアッパレール34の前端部をシート幅方向につなぐ前側上部接続部36と、左右一対のアッパレール34の後端部をシート幅方向につなぐ後側上部接続部38と、を備えている。左右一対のアッパレール34は、上下方向及びシート幅方向に沿って切断した断面視でシート幅方向内側が開放された略U字状断面に形成されている。当該断面形状に形成されていることより、アッパレール34内において後述するローラ66が転動することが可能となっている。
【0018】
アッパパネル32は、上下方向を厚み方向として前後方向及びシート幅方向に延在する矩形板状に形成されている。なお、アッパパネル32の素材としては、厚みが2mm程度の鋼板(SPHC)が用いられている。ここで、アッパパネル32の下面において後述するウレタンブロック28に接触する部分は平面状に形成されている。なお、本実施形態では、アッパパネル32の下面の全体が平面状に形成されている。このアッパパネル32の前端部及び後端部が、アッパフレーム本体30の前側上部接続部36及び後側上部接続部38に締結部材を介して固定されることで、アッパパネル32がアッパフレーム本体30に取付けられるようになっている。また、アッパパネル32がアッパフレーム本体30に取付けられることで、アッパフレーム本体30の前後方向及びシート幅方向の中央部分30Aの開口の大部分がアッパパネル32によって覆われる(閉止される)ようになっている。
【0019】
ロアフレーム24は、シート上方側から見て前後方向及びシート幅方向の中央部分が開放された矩形枠状に形成されたロアフレーム本体40に底板部としてのロアパネル42が取付けられることによって構成されている。
【0020】
ロアフレーム本体40は、シート幅方向に間隔をあけて配置され前後方向に延びる左右一対のロアレール44と、左右一対のロアレール44の前端部をシート幅方向につなぐ前側下部接続部46と、左右一対のロアレール44の後端部をシート幅方向につなぐ後側下部接続部48と、を備えている。左右一対のロアレール44は、上下方向及びシート幅方向に沿って切断した断面視でシート幅方向内側が開放された略U字状断面に形成されている。当該断面形状に形成されていることより、ロアレール44内において後述するローラ66が転動することが可能となっている。なお、ロアフレーム本体40の前端部には、ロアフレーム24を車体に固定するための締結部材が挿通される舌片状の固定部50が接合されている。
【0021】
ロアパネル42は、上下方向を厚み方向として前後方向及びシート幅方向に延在する矩形板状に形成されている。なお、ロアパネル42の素材としては、厚みが2mm程度の鋼板(SPHC)が用いられている。ここで、ロアパネル42の上面において後述するウレタンブロック28に接触する部分は平面状に形成されている。このロアパネル42のシート幅方向の両端部が、左右一対のロアレール44の下面に締結部材等を介して固定されることで、ロアパネル42がロアフレーム本体40に取付けられるようになっている。なお、本実施形態では、ロアパネル42の前端部及び後端部が上方側へ向けて屈曲されている。
【0022】
Xリンク26は、左右一対の第1リンク部材52と、左右一対の第1リンク部材52に対してシート幅方向内側に配置された左右一対の第2リンク部材54と、を備えている。第1リンク部材52は、シート幅方向を厚み方向とする矩形板状に形成されている。また、第2リンク部材54は、第1リンク部材52と同様に、シート幅方向を厚み方向とする矩形板状に形成されている。そして、右側に配置された第1リンク部材52の長手方向の中間部と右側に配置された第2リンク部材54の長手方向の中間部とは、左右方向を軸方向する締結部材56を介して回動可能につながれている。また、左側に配置された第1リンク部材52の長手方向の中間部と左側に配置された第2リンク部材54の長手方向の中間部とは、左右方向を軸方向する締結部材56を介して回動可能につながれている。
【0023】
また、左右一対の第1リンク部材52の前端部は、筒状に形成された第1前側接続部材58を介してシート幅方向につながれている。さらに、左右一対の第2リンク部材54の前端部は、筒状に形成された第2前側接続部材60を介してシート幅方向につながれている。ここで、本実施形態では、左右一対の第1リンク部材52の前端部が左右一対の第2リンク部材54の前端部に対して上方側に配置されるようになっている。
【0024】
また、左右一対の第1リンク部材52の後端部は、筒状に形成された第1後側接続部材62を介してシート幅方向につながれている。さらに、左右一対の第2リンク部材54の後端部は、筒状に形成された第2後側接続部材64を介してシート幅方向につながれている。ここで、本実施形態では、左右一対の第1リンク部材52の後端部が左右一対の第2リンク部材54の後端部に対して下方側に配置されるようになっている。
【0025】
さらに、第1後側接続部材62及び第2後側接続部材64の左右方向の両端部には、シート幅方向を軸方向として転動可能とされたローラ66がそれぞれ取付けられている。
【0026】
以上説明したアッパフレーム22とロアレール44とがXリンク26を介して連結されることで、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して上下方向に垂直に移動されるように、Xリンク26を構成する各部材の寸法等が設定されている。
【0027】
ウレタンブロック28は、所定の通気度(日本工業規格JIS L 1096 627.1で定められた試験方法での値)及び湿熱圧縮歪率(日本工業規格JIS K 6400-4で定められた試験方法での値)のウレタンを用いて直方体状に形成されている。なお、本実施形態では、一例として、通気度が0.05〜1cc/cm
2/secとされ、かつ湿熱圧縮歪率が0〜0.5%、密度が0.075g/cm
3のウレタンを用いてウレタンブロック28が形成されている。なお、本実施形態では、単一のウレタンブロック28を用いているが、複数のウレタンブロックを用いてもよい。
【0028】
(ウレタンブロック28に用いられる軟質ウレタンフォームについて)
次に、以上説明したウレタンブロック28に用いられる軟質ウレタンフォームについて説明する。
【0029】
軟質ウレタンフォームの材料として、TDIを主原料としたイソシアネート組成が主に使われている。TDIを主原料とする軟質フォーム(TM系の軟質フォーム)は、MDIを主原料とする軟質フォームに比べ反発弾性率が高くなることが知られており、低い反発弾性率による良好な減衰性と、低いヒステリシスロス率による高い耐久性とを両立することが難しい。そのため、特定の密度および硬度範囲において、高い減衰性能と低いヒステリシスロス率と高耐久性を実現する軟質フォーム製造用ポリウレタン組成物は、以下に示す特定のポリイソシアネート成分、ポリオール成分を用いて製造される。なお、TM系とは、TDIとMDIをブレンドしたものであって、TDIの割合が多いものである。
【0030】
以下、発泡ウレタンを形成するための各成分について説明する。
【0031】
(イソシアネート成分)
まず、ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物のイソシアネート成分について説明する。以下、ジフェニルメタンジイソシアネートを「MDI」と称する場合がある。
MDI系化合物は、特に限定されるものではない。例えば、純粋な(ピュア)ジフェニルメタンジイソシアネート(モノメリックMDI)、ポリメリックMDI、モノメリックMDIとポリメリックMDIとを含む混合物、ポリメリックMDIのイソシアネート末端変性ポリイソシアネート、及びモノメリックMDIとポリメリックMDIとを含むイソシアネート末端変性ポリイソシアネートが挙げられる。
【0032】
具体的には、例えば、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’−MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、およびこれらの混合物のモノメリックMDI;ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートのポリメリックMDI;モノメリックMDIとポリメリックMDIとの混合物;モノメリックMDIをポリオール成分の一部と反応させたイソシアネート末端変性ポリイソシアネート;ポリメリックMDIをポリオール成分の一部と反応させたイソシアネート末端変性ポリイソシアネート;モノメリックMDIとポリメリックMDIとの混合物をポリオール成分の一部と反応させたイソシアネート末端変性ポリイソシアネート;モノメリックMDIをポリオール成分の一部と反応させたイソシアネート末端変性ポリイソシアネートと、ポリメリックMDIをポリオール成分の一部と反応させたイソシアネート末端変性ポリイソシアネートとの混合物;モノメリックMDIとポリメリックMDIとの混合物をポリオール成分の一部と反応させたイソシアネート末端変性ポリイソシアネートに、モノメリックMDIおよびポリメリックMDIの少なくとも一方を含有させた混合物;などが挙げられる。これらのジフェニルメタンジイソシアネート系化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
これらのなかでも、MDI系化合物は、サスペンションユニット10用のクッション材(ウレタンブロック28)に必要な性能とする点で、モノメリックMDIとポリメリックMDIとの混合物をポリオール成分の一部と反応させたイソシアネート末端変性ポリイソシアネート(つまり、モノメリックMDIとポリメリックMDIとの混合物をポリオール成分の一部と反応させたプレポリマー)を含むことが好ましい。また、モノメリックMDIとポリメリックMDIとの混合物をポリオール成分の一部と反応させたイソシアネート末端変性ポリイソシアネートであることがより好ましい。
【0034】
モノメリックMDIとポリメリックMDIとの混合物をポリオール成分の一部と反応させたイソシアネート末端変性ポリイソシアネートにおいて、モノメリックMDIとポリメリックMDIとの混合比(質量比)は、ポリメリックMDIの質量に対するモノメリックMDIの質量の比(モノメリックMDI/ポリメリックMDI)として、30/70以上90/10以下の範囲が好ましい。より好ましくは32/68以上80/20以下の範囲である。モノメリックMDIとポリメリックMDIのMDI混合比(質量比)が、30/70以上90/10以下の範囲内であると、座席用クッション材としての特性から逸脱したフォームとなることが抑えられる。さらに、成形性の低下が抑制される。
【0035】
また、モノメリックMDIとポリメリックMDIとの混合物をポリオール成分の一部と反応させたイソシアネート末端変性ポリイソシアネートは、NCO含有量(質量%)で、最終的に10以上30以下になるよう調整することが好ましい。
【0036】
(ポリオール成分)
ポリオール成分としては、特に限定されるものではない。本開示の座席用クッション材(ウレタンブロック28)が、乗り物用シート(特に車両用シート)用に適用される場合がある点で、ポリオール成分としては、加水分解を起こし難い(耐加水分解性に優れる)、エーテル系ポリオールが好ましい。エーテル系のポリオールとしては、例えば、具体的には、PPG系(ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール)、PTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)、PEG(ポリエチレングリコール)等の−O−結合(エーテル結合)を有するものが好ましい。
【0037】
ポリオール成分の平均分子量は、重量平均分子量で200以上10000以下(好ましくは600以上9000以下)の範囲であることがよい。また、活性水素基(OH基)の官能基数当たりの重量平均分子量が200以上4000以下(好ましくは300以上3000以下)の範囲であることがよい。
【0038】
(触媒)
触媒としては、特に限定されず、座席用クッション材として用いられる発泡ウレタンの分野において公知である各種のウレタン化触媒を使用できる。例えば、トリエチルアミン、トリエチルジアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモリホリン、N−エチルモリホリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N´,N´−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N´,N´,N´´−ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,2−ジメチルイミダゾール、ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチル−N−ヘキサノールアミン等のアミン化合物のアミン系触媒;これらアミン化合物の有機酸塩;スタナスオクトエート;ナフテン酸亜鉛などの有機金属化合物が挙げられる。また、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン;などの活性水素を有するアミン系触媒も挙げられる。これら触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
触媒の添加量は、ポリオール成分に対して、0.01質量%以上10質量%以下が好ましい。0.01質量%以上であると、キュアー不足が抑制されやすく、10質量%以下であると、成形性の低下が抑制される。
【0040】
(発泡剤)
発泡剤としては、水を含む発泡剤であることがよく、水単独であることが好ましい。
発泡剤として用いる水の量としては、ポリオール成分100質量部に対し、目的とする発泡倍率によって設定すればよい。
発泡剤は、水と併用する場合、水以外の発泡剤としては、例えば、塩化メチレン、ハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFC−123等)、ハイドロフルオロカーボン類(HFC−245fa等)、ブタン、ペンタン(シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタン)等の低沸点有機化合物;ギ酸等の有機酸;などが挙げられる。
また、発泡剤として、水を含む発泡剤に加えて、発泡ウレタンを得るための混合原料に対し、空気、窒素ガス、液化二酸化炭素等を混入溶解させてもよい。水以外の発泡剤の量は、目的とする発泡倍率によって設定すればよい。
【0041】
(その他成分)
その他成分は、必要に応じて添加される成分(添加剤)である。その他成分としては、例えば、架橋剤、着色剤、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、整泡剤等が挙げられる。その他成分を使用する場合には、これらを1種単独、又は2種以上を必要に応じて選択して用いればよい。
【0042】
次に、本実施形態のサスペンションユニット10の製造方法について説明する。
【0043】
図3Aには、図示しない作業台上に置かれたロアフレーム24が示されている。そして、先ず、
図3B及び
図4Aに示されるように、Xリンク26の一部をロアフレーム24に係合させる(第1連結部材係合工程)。すなわち、Xリンク26を構成する左右一対の第2リンク部材54の前端部をロアフレーム本体40の左右一対のロアレール44の前端側にそれぞれ図示しない締結部材等を介して連結する。ここで、左右一対の第2リンク部材54の前端部は、締結部材等を支軸部としてシート幅方向を軸方向として回動可能になっている。また、Xリンク26を構成する第1後側接続部材62の左右の両端部にそれぞれ取付けられたローラ66(
図2A参照)を左右一対のロアレール44内にそれぞれ配置する。
【0044】
次に、
図4B及び
図5Aに示されるように、Xリンク26の他の一部をアッパフレーム本体30に係合させる(第2連結部材係合工程)。すなわち、Xリンク26を構成する第1前側接続部材58(
図2A参照)をアッパフレーム本体30の左右一対のアッパレール34の前端側にそれぞれ図示しない締結部材等を介して連結する。ここで、左右一対の第1リンク部材52の前端部は、第1前側接続部材58に挿通された締結部材等を支軸部としてシート幅方向を軸方向として回動可能になっている。また、Xリンク26を構成する第2後側接続部材64の左右の両端部にそれぞれ取付けられたローラ66を左右一対のアッパレール34内にそれぞれ配置する。これにより、アッパフレーム本体30とロアフレーム24とがXリンク26を介して連結される。
【0045】
次に、
図5B及び
図6Aに示されるように、ウレタンブロック28をアッパフレーム本体30の前後方向及びシート幅方向の中央部分30Aを通じてロアフレーム24のロアパネル42(
図2A参照)上に載置する(変形部材載置工程)。
【0046】
次に、
図6B及び
図7に示されるように、アッパパネル32をアッパフレーム本体30に取付ける(蓋部取付工程)。以上の工程を経てサスペンションユニット10が製造される。
【0047】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0048】
図1及び
図2Aに示されるように、本実施形態のサスペンションユニット10を備えた車両用サスペンションシート12では、車体の振動に伴う上方側への荷重Fがロアフレーム24に入力されると、Xリンク26の第1後側接続部材62及び第2後側接続部材64に取付けられたローラ66が、ロアフレーム24のロアレール44及びアッパフレーム22のアッパレール34に沿って後方側へ移動される。これにより、Xリンク26を構成する左右一対の第1リンク部材52に対する左右一対の第2リンク部材54の角度が変化して、ロアフレーム24とアッパフレーム22との上下方向への距離が近くなる。その結果、ウレタンブロック28が、アッパフレーム22のアッパパネル32とロアフレーム24のロアパネル42との間で上下方向におしつぶされるように変形される。これにより、ロアフレーム24からアッパフレーム22へ伝達される荷重が低減されると共にロアフレーム24からアッパフレーム22へ伝達された振動がウレタンブロック28の変形により減衰される。その結果、シート本体14のシートクッション16に着座した乗員に伝わる振動が低減されて、乗り心地性能を良好にすることができる。
【0049】
ここで、本実施形態のサスペンションユニット10を備えた車両用サスペンションシート12では、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して上下方向に垂直に移動されるようになっている。これにより、アッパフレーム22のアッパパネル32とロアフレーム24のロアパネル42との間に設けられたウレタンブロック28が上下方向に垂直に変形されるようになっている。すなわち、ウレタンブロック28の変形方向が定まっていると共にウレタンブロック28の変形の態様がアッパフレーム22のアッパパネル32とロアフレーム24のロアパネル42との距離に対応して定まるようになっている。その結果、安定した乗り心地性能を得ることができる。
【0050】
また、本実施形態では、アッパフレーム22が、ロアフレーム24に対してXリンク26によって上下方向に垂直に移動されるようになっている。当該構成では、アッパフレーム22が、ロアフレーム24に対して平行リンクによって上下方向に移動される構成と比べて、アッパフレーム22のロアフレーム24に対するストロークを大きくとることができる。なお、平行リンクとは、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して上下方向に移動される際に、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して水平方向(例えば前後方向)にも移動されるタイプのリンクである。
【0051】
また、本実施形態では、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して上下方向に垂直に移動される際に、アッパフレーム22のアッパパネル32においてウレタンブロック28に接している部分とロアフレーム24のロアパネル42においてウレタンブロック28に接している部分との平行状態が保たれるようになっている。これにより、ウレタンブロック28の上下平面に均一に荷重が加わるため、高い持上げ力を発生させつつ低いばね定数とすることができる。また、当該構成では、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して上下方向に垂直に移動される際に、アッパパネル32とウレタンブロック28とが摺動すること及びロアパネル42とウレタンブロック28とが摺動することを抑制することができる。これにより、アッパパネル32とウレタンブロック28との摩擦及びロアパネル42とウレタンブロック28との摩擦が乗り心地性能に影響することを抑制することができる。なお、アッパフレーム22が、ロアフレーム24に対して前述の平行リンクによって上下方向に移動される構成では、アッパパネル32とウレタンブロック28との水平方向への摩擦及びロアパネル42とウレタンブロック28との水平方向への摩擦が乗り心地性能に影響することが考えられる。
【0052】
さらに、本実施形態では、単一のウレタンブロック28が用いられる構成とされている。そのため、複数のウレタンブロックが設けられた構成と比べて、前述の変形部材載置工程(
図5B及び
図6A参照)の作業性を良好にすることができる。
【0053】
また、本実施形態では、アッパフレーム22のアッパパネル32とウレタンブロック28の上面とが面接触すると共に、ロアフレーム24のロアパネル42とウレタンブロック28の下面とが面接触するようになっている。これにより、ウレタンブロック28が変形された際に、ウレタンブロック28内の空気(微細な気孔内の空気)がアッパパネル32側及びロアパネル42側へ排出されることを抑制することができる。換言すると、ウレタンブロック28が変形された際に、ウレタンブロック28内の空気(微細な気孔内の空気)の大部分を、当該ウレタンブロック28の前面、後面、右面及び左面のみから排出させることができる。これにより、ウレタンブロック28の変形による振動の減衰効果を高めることができる。
【0054】
また、本実施形態のサスペンションユニット10は、ウレタンブロック28と同様に機能するエアスプリングやオイルダンパを設けた構成と比べて、軽量化を図ることができると共に安価に構成することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、ウレタンブロック28を直方体状に形成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。ウレタンブロック28の形状は、当該ウレタンブロック28が変形される際の荷重特性等を考慮して適宜設定すればよい。ウレタンブロック28を側面視でそれぞれジグザグ状、円弧状等に形成してもよい。ウレタンブロック28の上下面は、側面視で水平面に対してそれぞれ若干の角度で傾いていてもよい。また、アッパフレーム22のアッパパネル32においてウレタンブロック28に接している部分とロアフレーム24のロアパネル42においてウレタンブロック28に接している部分の距離等についても、ウレタンブロック28が変形される際の荷重特性等を考慮して適宜設定すればよい。
【0056】
また、本実施形態では、アッパフレーム22とロアフレーム24とをXリンク26を介して連結した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。アッパフレーム22がロアフレーム24に対して上下方向に垂直に移動可能であれば、アッパフレーム22とロアフレーム24とを他の連結部材を介して連結してもよい。
【0057】
ここで、シート本体14のシートクッション16に着座した乗員に伝わる振動を低減して乗り心地性能を良好にするという観点では、ウレタンブロック28に入力される荷重(上下方向へ押しつぶそうとする荷重)とストローク(ウレタンブロック28の上下方向への変形量)との関係が重要であることを実験的に発見した。その結果、シート本体14のシートクッション16に着座した乗員の体重や路面入力(ウレタンブロック28に入力される荷重)を考慮して、ウレタンブロック28の圧縮率が10〜40%の範囲となるように当該ウレタンブロック28の形状や寸法を設定すればよいことが分かった。
【0058】
ここで、
図2Bにおいては、本実施形態のウレタンブロック28のデータ、並びに、MDI系及びTM系のウレタンのデータを比較例として記載している。そして、ウレタンブロック28に用いられたウレタンのヒステリシスロスが、MDI系及びTM系のウレタンよりも低いことにより、耐久性を高めることができる。なお、
図2Bの表に記載されたヒステリシスロス及び25%ILDは、日本工業規格JIS K 6400-2(2012)に準拠した方法で測定された値である。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。