(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態は、正極集電体の表面に正極活物質を含む正極活物質層が形成されてなる正極と、負極集電体の表面に負極活物質を含む負極活物質層が形成されてなる負極と、電解質層と、を含む発電要素を有し、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比が1.12Ah/cc以上であり、定格容量に対する電池面積の比が4.0cm
2/Ah以上であり、かつ、定格容量が30Ah以上である扁平積層型の非水電解質二次電池であって、前記電解質層が、電解質塩を溶解させた電解液を含み、負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値が0.031以上である、非水電解質二次電池である。
【0015】
本発明においては、負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値を0.031以上に制御することによって、高容量、高密度、かつ大面積の扁平積層型の電池において電解液が負極活物質中に均一に浸透しうる。その結果、反応抵抗が減少し、反応が均一に進行しうるため、耐久性に優れた非水電解質二次電池が得られうる。
【0016】
電気自動車は、近年、環境にやさしいとして注目されているが、ガソリン車に比べて、航続距離が短く、特に空調(冷房、暖房)使用時には特に航続距離の短さは顕著である。このため、非水電解質二次電池、特に電動車両用の非水電解質二次電池は、1回の充電での航続距離を伸ばすために、高出力および高容量であることが要求されている。また、高出力および高容量が、短時間、大電流での繰り返しの充放電によっても低下しないように耐久性(サイクル特性)の向上は、電動車両に搭載する電池においては重要な課題である。
【0017】
しかしながら、高容量電池では高目付け・高密度の設計をとるため、負極活物質層の空孔が比較的小さくなる傾向がある。そのため、充放電中に空孔内(粒子間・粒子内)のLiイオンの濃度勾配が発生しやすく、局所的な過電圧が発生しやすい。充電時に局所的な過電圧が発生すると、負極がLiの電析電位を下回るためLiデンドライトの発生や電解液の還元分解(被膜形成)が進行し、電池の耐久性低下が生じやすいことがわかった。
【0018】
また、大面積の扁平積層型非水電解質二次電池においては、加圧時に負極活物質層極面内で圧力分布が生じ、かような圧力分布により負極活物質層内で過電圧が異なる状態となる。
【0019】
このような状況下では、充放電時に負極活物質に負担がかかりやすく、寿命が悪化しやすい。また、負極活物質層の空孔体積に対して容量が大きい、容量密度が高いセルでは、車両用途のような短時間で大電流での充放電を繰り返し行う場合に、リチウムイオンの拡散性が悪いため、負極活物質層の空孔量の面内方向のばらつきによって充電時に面内で過電圧ばらつきが大きい。過電圧が大きい個所ではLiが析出しやすいため、電池の寿命劣化が生じやすい。また、高容量化、高密度化のために負極活物質層を厚くすると、リチウムイオンが負極活物質層の内部まで拡散するには抵抗が大きく、表面側での反応が過多となり、結果として副反応であるLi析出や電解液の還元分解などを引き起こし、耐久性が低下する場合があることがわかった。
【0020】
これに対して、本発明においては、負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値を0.031以上にすることによって、負極活物質層における電流密度に対して最適なリチウムイオンの量を負極活物質層の空孔内に確保できるため、反応抵抗が減少する。また、十分なリチウムイオンの量を負極活物質層の空孔内に確保できるため、リチウムイオンが負極活物質層の面内方向および厚み方向に均一に分布し、反応が均一に進行しうる。その結果、耐久性に優れた非水電解質二次電池が得られうる。
【0021】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0022】
[非水電解質二次電池]
図1は、本発明の電池の一実施形態である扁平積層型電池の概要を模式的に表した断面概略図である。積層型とすることで、電池をコンパクトにかつ高容量化することができる。なお、本明細書においては、
図1に示す扁平積層型の双極型でないリチウムイオン二次電池を例に挙げて詳細に説明する。
【0023】
まず、本発明の非水電解質二次電池の全体構造について、図面を用いて説明する。
【0024】
[電池の全体構造]
図1は、扁平積層型の双極型ではない非水電解質リチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の基本構成を模式的に表した断面概略図である。
図1に示すように、本実施形態の積層型電池10は、実際に充放電反応が進行する扁平略矩形の発電要素21が、外装体である電池外装材29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極と、電解質層17と、負極とを積層した構成を有している。なお、電解質層17は、セパレータと、非水電解質(例えば、液体電解質)を内蔵している。正極は、正極集電体12の両面に正極活物質層15が配置された構造を有する。負極は、負極集電体11の両面に負極活物質層13が配置された構造を有する。具体的には、1つの正極活物質層15とこれに隣接する負極活物質層13とが、電解質層17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極、電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、
図1に示す積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。
【0025】
なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層負極集電体には、いずれも片面のみに負極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、
図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層正極集電体が位置するようにし、該最外層正極集電体の片面正極活物質層が配置されているようにしてもよい。
【0026】
正極集電体12および負極集電体11は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板(タブ)27および負極集電板(タブ)25がそれぞれ取り付けられ、電池外装材29の端部に挟まれるようにして電池外装材29の外部に導出される構造を有している。正極集電板27および負極集電板25はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体12および負極集電体11に超音波溶接や抵抗溶接などにより取り付けられていてもよい。
【0027】
なお、
図1では、扁平積層型の双極型ではない積層型電池を示したが、集電体の一方の面に電気的に結合した正極活物質層と、集電体の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層と、を有する双極型電極を含む双極型電池であってもよい。この場合、一の集電体が正極集電体および負極集電体を兼ねることとなる。
【0028】
以下、本発明の一実施形態である非水電解質リチウムイオン二次電池を構成する各部材について説明する。
【0029】
[正極]
正極は、正極集電体と、正極集電体の表面に形成された正極活物質を含む正極活物質層とを有するものである。
【0030】
(正極集電体)
正極集電体を構成する材料に特に制限はないが、好適には金属が用いられる。具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、その他合金等などが挙げられる。また、後述の負極において、負極集電体を用いる場合も、上記と同様のもの、または銅などを用いることができる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位の観点からは、正極集電体としてはアルミニウム、ステンレスが、負極集電体としては銅が好ましい。
【0031】
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。集電体の厚さについても特に制限はない。集電体の厚さは、通常は1〜100μm程度である。
【0032】
(正極活物質層)
正極活物質層15は、正極活物質を含み、必要に応じて、バインダー;導電助剤、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、およびイオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。
【0033】
(正極活物質)
正極活物質としては、例えば、LiMn
2O
4、LiCoO
2、LiNiO
2、Li(Ni−Mn−Co)O
2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。
【0034】
より好ましくは、Li(Ni−Mn−Co)O
2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)が用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を持つ。また、遷移金属の1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
【0035】
NMC複合酸化物は、上述したように、遷移金属元素の一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられる。好ましくは、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crである。より好ましくは、Ti、Zr、P、Al、Mg、Crである。サイクル特性向上の観点から、さらに好ましくは、Ti、Zr、Al、Mg、Crである。
【0036】
NMC複合酸化物は、理論放電容量が高いことから、好ましくは、一般式(1):Li
aNi
bMn
cCo
dM
xO
2(但し、式中、a、b、c、d、xは、0.9≦a≦1.2、0<b<1、0<c≦0.5、0<d≦0.5、0≦x≦0.3を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、SrおよびCrから選ばれる少なくとも1種類である)で表される組成を有する。ここで、aは、Liの原子比を表し、bは、Niの原子比を表し、cは、Mnの原子比を表し、dは、Coの原子比を表し、xは、Mの原子比を表す。上記一般式(1)において、b、c及びdの関係は、特に制限されず、Mの価数などによって異なるが、b+c+d=1を満たすことが好ましい。なお、各元素の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定できる。
【0037】
一般に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)は、材料の純度向上および電子伝導性向上という観点から、容量および出力特性に寄与することが知られている。Ti等は、結晶格子中の遷移金属を一部置換するものである。サイクル特性の観点から、遷移元素の一部が他の金属元素により置換されていてもよい。この場合、一般式(1)において0<x≦0.3であることが好ましい。Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、SrおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1種が固溶することにより結晶構造が安定化されるため、その結果、充放電を繰り返しても電池の容量低下が防止でき、優れたサイクル特性が実現し得ると考えられる。
【0038】
上記NMC複合酸化物は、共沈法、スプレードライ法など、種々公知の方法を選択して調製することができる。複合酸化物の調製が容易であることから、共沈法を用いることが好ましい。具体的には、例えば、特開2011−105588号公報に記載の方法のように、共沈法により、ニッケル−コバルト−マンガン複合水酸化物を製造する。その後、ニッケル−コバルト−マンガン複合水酸化物と、リチウム化合物とを混合して焼成することによりNMC複合酸化物を得ることができる。
【0039】
なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0040】
正極活物質層に含まれる正極活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜25μmである。なお、本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法の粒度分布測定装置により計測されたものを採用する。
【0041】
正極活物質層中、正極活物質の含有量(固形分換算)は、80〜99.5重量%であることが好ましく、85〜99.5重量%であることがより好ましい。
【0042】
正極活物質層の密度は、高密度化の観点から、3.0〜3.7g/cm
3であることが好ましく、3.1〜3.6g/cm
3であることがより好ましい。
【0043】
(バインダー)
正極活物質層に用いられるバインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのバインダーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
正極活物質層中に含まれるバインダー量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは活物質層に対して、0.5〜15重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。
【0045】
(その他の添加剤)
導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
【0046】
正極活物質層中に含まれる導電助剤量は、特に限定されるものではないが、好ましくは活物質層に対して、0.5〜15重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。
【0047】
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(C
2F
5SO
2)
2N、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、LiCF
3SO
3等が挙げられる。
【0048】
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
【0049】
正極活物質層に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
【0050】
正極活物質層の厚さについても特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、正極活物質層の厚さは、2〜100μm程度である。
【0051】
[負極]
負極は、負極集電体と、負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを有するものである。
【0052】
(負極活物質層)
負極活物質層は負極活物質を含み、必要に応じて、導電助剤、バインダー、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。導電助剤、バインダー、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤については、上記正極活物質層の欄で述べたものと同様である。
【0053】
負極活物質としては、例えば、人造黒鉛、被覆天然黒鉛、天然黒鉛などの黒鉛(グラファイト)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、Li
4Ti
5O
12)、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0054】
負極活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜30μmである。
【0055】
負極活物質層においては、少なくとも水系バインダーを含むことが好ましい。水系バインダーは、結着力が高い。また、原料としての水の調達が容易であることに加え、乾燥時に発生するのは水蒸気であるため、製造ラインへの設備投資が大幅に抑制でき、環境負荷の低減を図ることができるという利点がある。
【0056】
水系バインダーとは水を溶媒もしくは分散媒体とするバインダーをいい、具体的には熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー、水溶性高分子など、またはこれらの混合物が該当する。ここで、水を分散媒体とするバインダーとは、ラテックスまたはエマルジョンと表現される全てを含み、水と乳化または水に懸濁したポリマーを指し、例えば自己乳化するような系で乳化重合したポリマーラテックス類が挙げられる。
【0057】
水系バインダーとしては、具体的にはスチレン系高分子(スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル共重合体等)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、(メタ)アクリル系高分子(ポリエチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリメチルメタクリレート(メタクリル酸メチルゴム)、ポリプロピルメタクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリヘキシルメタクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリエチルヘキシルメタクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリラウリルメタクリレート等)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブタジエン、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂;ポリビニルアルコール(平均重合度は、好適には200〜4000、より好適には、1000〜3000、ケン化度は好適には80モル%以上、より好適には90モル%以上)およびその変性体(エチレン/酢酸ビニル=2/98〜30/70モル比の共重合体の酢酸ビニル単位のうちの1〜80モル%ケン化物、ポリビニルアルコールの1〜50モル%部分アセタール化物等)、デンプンおよびその変性体(酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、カチオン化デンプン等)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレングリコール、(メタ)アクリルアミドおよび/または(メタ)アクリル酸塩の共重合体[(メタ)アクリルアミド重合体、(メタ)アクリルアミド−(メタ)アクリル酸塩共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜4)エステル−(メタ)アクリル酸塩共重合体など]、スチレン−マレイン酸塩共重合体、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性体、ホルマリン縮合型樹脂(尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂等)、ポリアミドポリアミンもしくはジアルキルアミン−エピクロルヒドリン共重合体、ポリエチレンイミン、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白、並びにガラクトマンナン誘導体等の水溶性高分子などが挙げられる。これらの水系バインダーは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用して用いてもよい。
【0058】
上記水系バインダーは、結着性の観点から、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、およびメタクリル酸メチルゴムからなる群から選択される少なくとも1つのゴム系バインダーを含むことが好ましい。さらに、結着性が良好であることから、水系バインダーはスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を含むことが好ましい。
【0059】
水系バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴムを用いる場合、塗工性向上の観点から、上記水溶性高分子を併用することが好ましい。スチレン−ブタジエンゴムと併用することが好適な水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールおよびその変性体、デンプンおよびその変性体、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、またはポリエチレングリコールが挙げられる。中でも、バインダーとして、スチレン−ブタジエンゴムと、カルボキシメチルセルロース(CMC)(塩)とを組み合わせることが好ましい。スチレン−ブタジエンゴムと、水溶性高分子との含有重量比は、特に制限されるものではないが、スチレン−ブタジエンゴム:水溶性高分子=1:0.1〜10であることが好ましく、1:0.3〜2であることがより好ましい。
【0060】
負極活物質層中に含まれるバインダー量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは活物質層に対して、0.5〜15重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。
【0061】
また、負極活物質層に用いられるバインダーのうち、水系バインダーの含有量は80〜100重量%であることが好ましく、90〜100重量%であることが好ましく、100重量%であることが好ましい。
【0062】
負極活物質層に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
【0063】
負極活物質層の厚さについても特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、負極活物質層の厚さは、2〜100μm程度であり、好ましくは40〜90μmである。
【0064】
また、負極活物質層の密度も特に制限されないが、例えば1.3〜1.9g/cm
3であり、好ましくは1.4〜1.8g/cm
3である。負極活物質層の塗工量は、例えば5〜17mg/cm
2であり、好ましくは7〜15mg/cm
2である。
【0065】
本実施形態の非水電解質二次電池においては、負極活物質層の比表面積が1.5m
2/g以上であることが好ましい。負極活物質層の比表面積を1.5m
2/g以上とすることで、負極活物質層における反応面積を増加させることができる。すなわち、負極活物質層の単位面積あたりの電流密度を減少させることができるため、抵抗が減少し、入出力特性が向上しうる。また、低温耐久性が向上し、電極面方向および厚さ方向における反応不均一性の低減が可能となる。より好ましくは、負極活物質層の比表面積は1.7m
2/g以上である。負極活物質層の比表面積の上限値は特に制限されないが、初回充放電時の不可逆容量抑制の観点から、5.0m
2/g以下であることが好ましい。
【0066】
なお、本明細書において、負極活物質層の比表面積は、窒素吸着法により測定されるBET比表面積(m
2/g)である。
【0067】
負極活物質層の比表面積は、例えば、負極活物質の種類や粒径、表面処理を適切に選択することで制御することができる。粒径の小さい負極活物質を用いることで比表面積を大きくできる。また、負極作製時のプレス条件を調節することで制御することができる。
【0068】
[電解質層]
電解質層は、電解質塩を溶解させた電解液を含み、好ましくは上記の電解液がセパレータに保持される。
【0069】
電解液層を構成する電解液は、可塑剤である有機溶媒に電解質塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。用いられる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類が例示される。有機溶媒は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
電解質塩としては、リチウム塩が用いられうる。リチウム塩としては、Li(CF
3SO
2)
2N、Li(C
2F
5SO
2)
2N、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、LiTaF
6、LiCF
3SO
3等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。電解質塩の濃度は特に制限されないが、例えば0.2〜2.0mol/Lであり、好ましくは0.7〜1.7mol/Lであり、さらに好ましくは0.8〜1.5mol/Lである。
【0071】
電解液は、上述した成分以外の添加剤をさらに含んでもよい。かような添加剤の具体例としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2−ジビニルエチレンカーボネート、1−メチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−メチル−2−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−2−ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1−ジメチル−2−メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。なかでも、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートがより好ましい。これらの添加剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0072】
本発明の非水電解質二次電池においては、負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値が0.031以上である。負極活物質量に対して最適な電解質塩量を空孔内に確保することで、電流密度に応じた最適なリチウムイオンキャリア数が存在することになり、反応抵抗が減少する。このため、高密度、高容量の電池であっても、リチウムイオンが負極の内部まで拡散するため、表面側と内部との反応性の差が生じにくい。また、高容量、高密度、大面積の電池であり、車両用途のように短時間で大電流で繰り返し充放電を行う場合であっても、負極活物質層におけるリチウムイオンの拡散性が十分に得られるために、電極の空孔量の面内のばらつきに起因する充電時の面内の過電圧のばらつきが生じにくい。好ましくは、上記負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値が0.033以上であり、より好ましくは0.034以上である。上限値は特に限定されないが、実質的に、0.060以下である。
【0073】
負極活物質層の空孔内の電解質塩重量は、下記の計算式で算出する。
【0074】
負極活物質層の空孔内の電解質塩重量(g)=空孔体積(m
3)×電解液の電解質塩濃度(g/m
3)
負極活物質層の空孔体積(m
3)は、下記の方法で測定した値を用いる。
【0075】
水銀ポロシメーター(mercury porosimeter)
装置名:マイクロメリティクス製 オートポアIV 9510型
測定細孔径範囲:φ370μm〜3nm
水銀接触角:130°
水銀表面張力:485dynes/cm
上記条件で得られたデータより、φ10〜0.01μmの細孔径範囲に相当する空孔の容積分布から空孔体積を求める。
【0076】
負極活物質層の空孔体積は、塗工量、プレス温度、プレス圧、を調節することで制御することができ、これによって空孔内の電解質塩重量を調節することができる。
【0077】
本実施形態の非水電解質二次電池において、負極活物質層の空孔内の電解質塩重量は、上記負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値が0.031以上となる重量であれば特に制限されない。
【0078】
負極活物質重量は、塗工、乾燥後の負極の重量を測定し、下記式より求める。
【0079】
(負極活物質重量)=(負極重量)−(集電体重量)−(導電助剤、バインダー、電解質およびその他の添加剤の重量)
本実施形態の非水電解質二次電池において、負極活物質重量は、上記負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値が0.031以上となる重量であれば特に制限されないが、例えば、負極活物質層の面積1cm
2あたりの重量が、6〜15g/cm
2であり、好ましくは7.5〜14g/cm
2である。
【0080】
負極活物質重量は、負極活物質層の組成、塗工量、密度、厚さを制御することで調節できる。
【0081】
好ましくは、電解液の0℃におけるワルデン積が、2.5×10
−6〜3.5×10
−6Pa・s・S・m
2・mol
−1である。0℃における電解液のワルデン積を上記範囲とすることで、低温時の電解液の粘度上昇を抑制することができる。そのため、低温時の入出力特性が向上しうる。したがって、低温時においても電極の面方向および厚さ方向において反応が不均一になりにくく、低温時の耐久性が向上しうる。ワルデン積(Pa・s・S・m
2・mol
−1)は、ワルデン積(
10−9×Pa・s・S・m
2・mol
−1)=粘度(mPa・s)×モル伝導率(mS/m・M)の式で求めることができる。粘度は、回転式粘度測定法により、所定の温度にて粘度を測定して求める。モル伝導率は、モル伝導率=電気伝導率÷モル濃度で求められ、電気伝導率は、試料に電気伝導セルを浸漬し、所定の温度にて測定して求めることができる。電解液のワルデン積は、電解質塩濃度や有機溶剤を適宜選択することで調整することができる。
【0082】
セパレータは、電解液を保持して正極と負極との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極と負極との間の隔壁としての機能を有する。
【0083】
セパレータの形態としては、例えば、上記電解液を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
【0084】
ポリマーないし繊維からなる多孔性シートのセパレータとしては、例えば、微多孔質(微多孔膜)を用いることができる。該ポリマーないし繊維からなる多孔性シートの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;これらを複数積層した積層体(例えば、PP/PE/PPの3層構造をした積層体など)、ポリイミド、アラミド、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素系樹脂、ガラス繊維などからなる微多孔質(微多孔膜)セパレータが挙げられる。
【0085】
微多孔質(微多孔膜)セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできない。1例を示せば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車(FCV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。前記微多孔質(微多孔膜)セパレータの微細孔径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。
【0086】
不織布セパレータとしては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた電解質により十分な電池特性が得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。
【0087】
また、セパレータとしては多孔質基体に耐熱絶縁層が積層されたセパレータ(耐熱絶縁層付セパレータ)であってもよい。耐熱絶縁層は、無機粒子およびバインダーを含むセラミック層である。耐熱絶縁層付セパレータは融点または熱軟化点が150℃以上、好ましくは200℃以上である耐熱性の高いものを用いる。耐熱絶縁層を有することによって、温度上昇の際に増大するセパレータの内部応力が緩和されるため熱収縮抑制効果が得られうる。その結果、電池の電極間ショートの誘発を防ぐことができるため、温度上昇による性能低下が起こりにくい電池構成になる。また、耐熱絶縁層を有することによって、耐熱絶縁層付セパレータの機械的強度が向上し、セパレータの破膜が起こりにくい。さらに、熱収縮抑制効果および機械的強度の高さから、電池の製造工程でセパレータがカールしにくくなる。
【0088】
耐熱絶縁層における無機粒子は、耐熱絶縁層の機械的強度や熱収縮抑制効果に寄与する。無機粒子として使用される材料は特に制限されない。例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンの酸化物(SiO
2、Al
2O
3、ZrO
2、TiO
2)、水酸化物、および窒化物、ならびにこれらの複合体が挙げられる。これらの無機粒子は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来のものであってもよいし、人工的に製造されたものであってもよい。また、これらの無機粒子は1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらのうち、コストの観点から、シリカ(SiO
2)またはアルミナ(Al
2O
3)を用いることが好ましく、アルミナ(Al
2O
3)を用いることがより好ましい。
【0089】
無機粒子の目付けは、特に限定されるものではないが、5〜15g/m
2であることが好ましい。この範囲であれば、十分なイオン伝導性が得られ、また、耐熱強度を維持する点で好ましい。
【0090】
耐熱絶縁層におけるバインダーは、無機粒子どうしや、無機粒子と樹脂多孔質基体層とを接着させる役割を有する。当該バインダーによって、耐熱絶縁層が安定に形成され、また多孔質基体層および耐熱絶縁層の間の剥離を防止される。
【0091】
耐熱絶縁層に使用されるバインダーは、特に制限はなく、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリロニトリル、セルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、アクリル酸メチルなどの化合物がバインダーとして用いられうる。このうち、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アクリル酸メチル、またはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いることが好ましい。これらの化合物は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0092】
耐熱絶縁層におけるバインダーの含有量は、耐熱絶縁層100重量%に対して、2〜20重量%であることが好ましい。バインダーの含有量が2重量%以上であると、耐熱絶縁層と多孔質基体層との間の剥離強度を高めることができ、セパレータの耐振動性を向上させることができる。一方、バインダーの含有量が20重量%以下であると、無機粒子の隙間が適度に保たれるため、十分なリチウムイオン伝導性を確保することができる。
【0093】
耐熱絶縁層付セパレータの熱収縮率は、150℃、2gf/cm
2条件下、1時間保持後にMD、TDともに10%以下であることが好ましい。このような耐熱性の高い材質を用いることで、正極発熱量が高くなり電池内部温度が150℃に達してもセパレータの収縮を有効に防止することができる。その結果、電池の電極間ショートの誘発を防ぐことができるため、温度上昇による性能低下が起こりにくい電池構成になる。
【0094】
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板27と負極集電板25とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
【0095】
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
【0096】
[電池外装体]
電池外装体29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましく、軽量化の観点からアルミニウムラミネートフィルムがより好ましい。
【0097】
[負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比]
本実施形態の非水電解質二次電池において、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.12Ah/cc以上である。負極活物質層の空孔体積に対する容量の比は、負極活物質層の高容量密度化を示す指標である。ここで、負極活物質層の活物質密度を示すg/ccでは、負極活物質自体の密度が考慮される必要がある。例えば、活物質の密度の小さい材料では、同じ容積中に同程度の活物質が充填されても、活物質の密度の大きい材料よりも、負極活物質層の密度が小さくなるため、密度が小さいのか、負極活物質の重量が小さいのかが把握できない。そのため、本明細書では、空孔体積あたりの容量を規定し、容量密度の高さの指標としている。さらに、空孔体積あたりの容量とすることで、どれだけ隙間なく負極活物質が充填されているかという密度の指標となる。さらに、充放電の際にリチウムイオンが移動する経路である電解液が存在する空孔の体積は、リチウムイオンの拡散性の指標となる。
【0098】
また、電池を高容量化することで、負
極活物質層内のLiイオンが増大する一方で、負
極活物質層内の空孔体積が小さくなると、Liイオンの拡散性が低下する。したがって、負極の空孔体積に対する容量の比は、Liイオンの拡散性の指標となり、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比が1.12Ah/cc以上と、Liイオンの拡散性が低い環境下であっても、負極活物質重量に対する電解質塩重量の割合を0.031以上とすることで、サイクル特性が顕著に向上する。
【0099】
負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比の上限は特に限定されるものではないが、Liイオンの拡散性を考慮すると、負極活物質の空孔体積に対する定格容量の比は、例えば2.00Ah/cc以下であり、1.80Ah/cc以下であることが好ましく、1.70Ah/cc以下であることがより好ましい。また、高密度化の観点からは、1.20Ah/cc以上であることが好ましく、本発明の効果がより発揮されやすいことから、1.40Ah/cc以上であることがより好ましい。
【0100】
定格容量は、温度25℃、所定の電圧範囲で、次の手順1〜2によって測定される。
【0101】
手順1:0.2Cの定電流充電によって上限電圧に到達後、定電圧充電にて2.5時間充電し、その後、10秒間休止する。
【0102】
手順2:0.2Cの定電流放電によって下限電圧に到達後、10秒間休止する。
【0103】
定格容量:手順2における定電流放電における放電容量(CC放電容量)を定格容量とする。
【0104】
[定格容量に対する電池面積の比および定格容量]
一般的な電気自動車では、電池格納スペースが170L程度である。このスペースにセルおよび充放電制御機器等の補機を格納するため、通常セルの格納スペース効率は50%程度となる。この空間へのセルの積載効率が電気自動車の航続距離を支配する因子となる。単セルのサイズが小さくなると上記積載効率が損なわれるため、航続距離を確保できなくなる。
【0105】
したがって、本発明において、発電要素を外装体で覆った電池構造体は大型であることが好ましい。また、上述したように、大型の電池において、本発明の効果が発揮される。具体的には、本実施形態においては、電池面積および電池容量の関係から電池の大型化が規定される。具体的には、本形態に係る非水電解質二次電池は、定格容量に対する電池面積の比の値が4.0cm
2/Ah以上である。本発明においては、定格容量が30Ah以上と大きいため、電池面積は必然的に120cm
2以上と大型となる。高容量化の点からは定格容量に対する電池面積の比は大きいほど好ましいが、車載容積の関係上、通常18cm
2/Ah以下である。定格容量に対する電池面積の比の値は、好ましくは、5.0〜15cm
2/Ahである。高密度化の点からは定格容量に対する電池面積の比は15cm
2/Ah以下であることが好ましく、10cm
2/Ah以下であることがより好ましい。
【0106】
ここで、電池面積とは、正極の(面方向の)面積を指す。正極が複数存在し、その面積が異なる場合には、最大の正極面積を電池面積とする。
【0107】
本実施形態において定格容量は30Ah以上である。定格容量に対する電池面積の比の値が4.0cm
2/Ah以上でかつ、定格容量が30Ah以上と、大面積かつ大容量の電池の場合、充放電サイクルの繰り返しによって高容量を維持することが一層困難となり、サイクル特性の向上という課題がよりいっそう顕著に発現しうるのである。一方、従来の民生型電池のような、上記のように大面積かつ大容量ではない電池においては、かような問題の発生は顕在化しにくい(後述の比較例7、8)。定格容量は、大きいほど好ましく、その上限は特に限定されるものではないが、通常100Ah以下となる。定格容量は、30〜70Ahであることが好ましく、40〜60Ahであることがより好ましく、50〜60Ahであることがより好ましい。なお、定格容量は下記実施例に記載の方法により測定された値を採用する。
【0108】
また、物理的な電極の大きさとしては、電池の短辺の長さが100mm以上であることが好ましい。かような大型の電池は、車両用途に用いることができる。ここで、電池の短辺の長さとは、最も長さが短い辺を指す。短辺の長さの上限は特に限定されるものではないが、通常400mm以下である。なお、電極の大きさは正極の大きさとして定義される。
【0109】
さらに、矩形状の電極のアスペクト比は1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。なお、電極のアスペクト比は矩形状の正極活物質層の縦横比として定義される。アスペクト比をかような範囲とすることで、車両要求性能と搭載スペースを両立できるという利点がある。
【0110】
[組電池]
組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
【0111】
電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0112】
このように電池を複数枚積層したセルユニットを、上下のケース(例えば金属ケース)内に収容して、組電池を形成してもよい。この際、通常は、締結部材により金属ケースを締結して組電池がケース内に収納される。したがって、ケース内では電池が積層方向に加圧されることとなる。かような加圧により、大型電池では面内の圧力分布が生じやすくなるが、本実施形態の構成によれば、正極活物質内の空孔率のばらつきが小さいため、圧力分布による電流の集中を緩和することができると考えられる。
【0113】
[車両]
本実施形態の非水電解質二次電池は、長期使用しても放電容量が維持され、サイクル特性が良好である。電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの車両用途においては、電気・携帯電子機器用途と比較して、高容量、大型化が求められるとともに、長寿命化が必要となる。したがって、上記非水電解質二次電池は、車両用の電源として、例えば、車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0114】
具体的には、電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に搭載することができる。本実施形態では、長期信頼性および出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【実施例】
【0115】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「重量部」あるいは「重量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0116】
(実施例1)
1.電解液の作製
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(30:30:40(体積比))を溶媒とした。電解質塩(リチウム塩)にはLiPF
6を用いた。さらに全体重量に対して2.0重量%のビニレンカーボネートを添加して電解液を作製した。LiPF
6の濃度は、負極空孔内の電解液のLiPF
6重量を単セルあたりの負極活物質重量で除した値が0.033となるように調製した。この電解液の0℃におけるワルデン積は2.9×10
−6Pa・s・S・m
2・mol
−1であった。
【0117】
2.正極の作製
正極活物質としてLiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2(平均粒子径:15μm)90重量%、導電助剤としてアセチレンブラック5重量%、およびバインダーとしてPVdF5重量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、正極スラリー組成物を作製した。次に、正極スラリー組成物を、集電体であるアルミニウム箔(厚み20μm)の両面に塗布し、乾燥・プレスを行って、正極活物質層の密度3.4g/cm
3、正極活物質層の片面塗工量15.0mg/cm
2の正極を作製した。
【0118】
3.負極の作製
負極活物質として天然黒鉛(平均粒子径:20μm)94重量%、導電助剤としてアセチレンブラック2重量%およびバインダーとしてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)3重量%、カルボキシメチルセルロース(CMC)1重量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるイオン交換水を適量添加して、負極活物質スラリー組成物を作製した。次に、負極活物質スラリー組成物を、集電体である銅箔(10μm)の両面に塗布し、乾燥・プレスを行って、負極活物質層の密度1.5g/cm
3、片面塗工量7.3mg/cm
2の負極を作製した。負極活物質層の比表面積は1.7m
2/gであった。
【0119】
4.単電池の完成工程
上記で作製した正極を200mm×204mmの長方形状に切断し、負極を205×209mmの長方形状に切断した(正極24枚、負極25枚)。この正極と負極とを210×214mmのセパレータ(ポリプロピレン製の微多孔膜、厚さ25μm、空隙率55%)を介して交互に積層して発電要素を作製した。
【0120】
得られた発電要素にタブを溶接し、アルミニウムラミネートフィルムからなる外装中に電解液とともに密封して電池を完成させた。その後、電極面積よりも大きいウレタンゴムシート(厚み3mm)、更にAl板(厚み5mm)で電池を挟み込み、電池を両側から積層方向に適宜加圧した。そして、このようにして得られた電池について、5時間かけて初回充電を行い(上限電圧4.15V)、その後、45℃にて5日間エージングを行い、ガス抜き、放電を実施して、本実施例の電池を完成させた。このようにして作製された電池の定格容量(セル容量)は40Ahであり、定格容量に対する電池面積の比の値は10.2cm
2/Ahであった。また、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.12Ah/ccであった。
【0121】
実施例1で作製した電池において、負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値は0.033であった。
【0122】
なお、電池の定格容量は以下により求めた。
【0123】
≪定格容量の測定≫
定格容量は、温度25℃、3.0Vから4.15Vの電圧範囲で、次の手順1〜2によって測定される。
【0124】
手順1:0.2Cの定電流充電によって4.15Vに到達後、定電圧充電にて2.5時間充電し、その後、10秒間休止する。
【0125】
手順2:0.2Cの定電流放電によって3.0Vに到達後、10秒間休止する。
【0126】
定格容量:手順2における定電流放電における放電容量(CC放電容量)を定格容量とした。
【0127】
(実施例2)
実施例1において、0℃における電解液のワルデン積を3.2×10
−6Pa・s・S・m
2・mol
−1となるように調製した。さらに、負極活物質層の密度、負極活物質層の片面塗工量、正極活物質層の密度、正極活物質層の片面塗工量を適宜調整し、表1に示す非電解質二次電池を得た。
【0128】
電池の定格容量(セル容量)は40Ahであり、定格容量に対する電池面積の比の値は10.2cm
2/Ahであった。また、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.12Ah/ccであった。負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値は0.041であった。負極活物質層の比表面積は1.7m
2/gであった。
【0129】
(実施例3)
実施例2において、負極活物質層の密度、負極活物質層の片面塗工量、正極活物質層の密度、正極活物質層の片面塗工量を適宜調整し、表1に示す非電解質二次電池を得た。
【0130】
負極活物質層の比表面積は2.2m
2/gであった。電池の定格容量(セル容量)は50Ahであり、定格容量に対する電池面積の比の値は8.4cm
2/Ahであった。また、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.25Ah/ccであった。負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値は0.038であった。
【0131】
(実施例4)
実施例2において、負極活物質層の密度、負極活物質層の片面塗工量、正極活物質層の密度、正極活物質層の片面塗工量を適宜調整し、表1に示す非電解質二次電池を得た。
【0132】
負極活物質層の比表面積は2.6m
2/gであった。電池の定格容量(セル容量)は60Ahであり、定格容量に対する電池面積の比の値は7.0cm
2/Ahであった。また、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.65Ah/ccであった。負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値は0.035であった。
【0133】
(実施例5)
実施例1において、0℃における電解液のワルデン積を3.6×10
−6Pa・s・S・m
2・mol
−1となるように調製した。さらに、負極活物質層の密度、負極活物質層の片面塗工量、正極活物質層の密度、正極活物質層の片面塗工量を適宜調整し、表1に示す非電解質二次電池を得た。
【0134】
負極活物質層の比表面積は1.7m
2/gであった。電池の定格容量(セル容量)は40Ahであり、定格容量に対する電池面積の比の値は10.2cm
2/Ahであった。また、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.12Ah/ccであった。負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値は0.048であった。
【0135】
(実施例6)
実施例5において、負極活物質層の密度、負極活物質層の片面塗工量、正極活物質層の密度、正極活物質層の片面塗工量を適宜調整し、表1に示す非電解質二次電池を得た。
【0136】
負極活物質層の比表面積は2.2m
2/gであった。電池の定格容量(セル容量)は50Ahであり、定格容量に対する電池面積の比の値は8.4cm
2/Ahであった。また、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.25Ah/ccであった。負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値は0.045であった。
【0137】
(実施例7)
実施例5において、負極活物質層の密度、負極活物質層の片面塗工量、正極活物質層の密度、正極活物質層の片面塗工量を適宜調整し、表1に示す非電解質二次電池を得た。
【0138】
負極活物質層の比表面積は2.6m
2/gであった。電池の定格容量(セル容量)は60Ahであり、定格容量に対する電池面積の比の値は7.0cm
2/Ahであった。また、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.65Ah/ccであった。負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値は0.041であった。
【0139】
(実施例8)
実施例1において、負極活物質層の密度、負極活物質層の片面塗工量、正極活物質層の密度、正極活物質層の片面塗工量を適宜調整し、表1に示す非電解質二次電池を得た。
【0140】
負極活物質層の比表面積は1.3m
2/gであった。電池の定格容量(セル容量)は40Ahであり、定格容量に対する電池面積の比の値は10.2cm
2/Ahであった。また、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.12Ah/ccであった。負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値は0.033であった。
【0141】
(実施例9)
実施例1において、0℃における電解液のワルデン積を3.1×10
−6Pa・s・S・m
2・mol
−1となるように調製した。さらに、負極活物質層の密度、負極活物質層の片面塗工量、正極活物質層の密度、正極活物質層の片面塗工量を適宜調整し、表1に示す非電解質二次電池を得た。
【0142】
負極活物質層の比表面積は2.6m
2/gであった。電池の定格容量(セル容量)は60Ahであり、定格容量に対する電池面積の比の値は7.0cm
2/Ahであった。また、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.65Ah/ccであった。負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値は0.032であった。
【0143】
(比較例1)
実施例1において、負極活物質層の密度、負極活物質層の片面塗工量、正極活物質層の密度、正極活物質層の片面塗工量を適宜調整し、表1に示す非電解質二次電池を得た。
【0144】
負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値は、0.030であった。
【0145】
負極活物質層の比表面積は2.2m
2/gであった。電池の定格容量(セル容量)は50Ahであり、定格容量に対する電池面積の比の値は8.4cm
2/Ahであった。また、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.25Ah/ccであった。
【0146】
(比較例2)
実施例1において、負極活物質層の密度、負極活物質層の片面塗工量、正極活物質層の密度、正極活物質層の片面塗工量を適宜調整し、表1に示す非電解質二次電池を得た。
【0147】
負極活物質層の比表面積は2.6m
2/gであった。負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値は、0.027であった。
【0148】
電池の定格容量(セル容量)は60Ahであり、定格容量に対する電池面積の比の値は7.0cm
2/Ahであった。また、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.65Ah/ccであった。
【0149】
(比較例3)
実施例1において、0℃における電解液のワルデン積を2.7×10
−6Pa・s・S・m
2・mol
−1となるように調製した。さらに、負極活物質層の密度、負極活物質層の片面塗工量、正極活物質層の密度、正極活物質層の片面塗工量を適宜調整し、表1に示す非電解質二次電池を得た。
【0150】
負極活物質層の比表面積は1.7m
2/gであった。電池の定格容量(セル容量)は40Ahであり、定格容量に対する電池面積の比の値は10.2cm
2/Ahであった。また、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.12Ah/ccであった。負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値は0.027であった。
【0151】
(比較例4)
比較例3において、負極活物質層の密度、負極活物質層の片面塗工量、正極活物質層の密度、正極活物質層の片面塗工量を適宜調整し、表1に示す非電解質二次電池を得た。
【0152】
負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値は、0.025であった。
【0153】
負極活物質層の比表面積は2.2m
2/gであった。電池の定格容量(セル容量)は50Ahであり、定格容量に対する電池面積の比の値は8.4cm
2/Ahであった。また、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.25Ah/ccであった。
【0154】
(比較例5)
比較例3において、負極活物質層の密度、負極活物質層の片面塗工量、正極活物質層の密度、正極活物質層の片面塗工量を適宜調整し、表1に示す非電解質二次電池を得た。
【0155】
負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値は、0.022であった。
【0156】
負極活物質層の比表面積は2.6m
2/gであった。電池の定格容量(セル容量)は60Ahであり、定格容量に対する電池面積の比の値は7.0cm
2/Ahであった。また、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.65Ah/ccであった。
【0157】
(比較例6)
比較例3において、負極活物質層の密度、負極活物質層の片面塗工量、正極活物質層の密度、正極活物質層の片面塗工量を適宜調整し、表1に示す非電解質二次電池を得た。
【0158】
負極活物質層の比表面積は1.8m
2/gであった。電池の定格容量(セル容量)は30Ahであり、定格容量に対する電池面積の比の値は14.0cm
2/Ahであった。また、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.01Ah/ccであった。負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値は0.028であった。
【0159】
(比較例7)
比較例3において、負極活物質層の密度、負極活物質層の片面塗工量、正極活物質層の密度、正極活物質層の片面塗工量を適宜調整した。負極活物質層の比表面積は1.8m
2/gであった。
【0160】
正極の大きさを80mm×132mmに、負極を85mm×137mmに変更し、積層数を24層から35層に変更した。
【0161】
負極活物質層の比表面積は1.8m
2/gであった。電池の定格容量(セル容量)は27Ahであり、定格容量に対する電池面積の比の値は3.9cm
2/Ahであった。また、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比は1.25Ah/ccであった。負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値は0.028であった。
【0162】
(サイクル特性)
正極に対する電流密度を2mA/cm
2として、各実施例および比較例で作製した電池をカットオフ電圧4.15Vまで充電して初期充電容量とし、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。この充放電サイクルを500回繰返した。初期放電容量に対する500サイクル目の放電容量の割合を容量維持率(%)とし、サイクル耐久性として評価した。
【0163】
(入出力特性)
各実施例および比較例で作製した電池について、25℃でSOCを50%に調整した後、電池の温度が0℃になった状態で1Cで20秒間放電を行い、直流抵抗(DCR、オーム)を測定した。実施例1で作製した電池の値を100として相対値として表した。
【0164】
各実施例および比較例の条件ならびに入出力特性およびサイクル特性の結果を下記表1に示す。
【0165】
【表1】
【0166】
上記結果より、実施例の非水電解質二次電池は、負極の電流密度に対して最適な電解質塩濃度を負極活物質の空孔内に確保することができるため、高密度、高容量、かつ大面積の扁平積層型の電池においてサイクル特性に優れることがわかる。特に、電解液の0℃でのワルデン積が2.5〜3.5×10
−6Pa・s・S・m
2・mol
−1の範囲である実施例1〜4、9の電池では、低温時の電解液の粘度上昇を抑制することができ、低温時の入出力特性が向上しうる。
【0167】
一方、負極活物質層の空孔体積に対する定格容量の比が1.12Ah/cc以上である、定格容量に対する電池面積の比が4.0cm
2/Ah未満である、または、定格容量が30Ah未満である比較例5、6の電池では、負極活物質層における空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値が0.031よりも小さい場合であっても耐久性および入出力性能に影響はない。そのため、高容量、高容量密度および大面積の電池において、空孔内の電解質塩重量を負極活物質重量で除した値を0.031以上とすることでサイクル特性が顕著に向上することがわかる。