(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755312
(24)【登録日】2020年8月27日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】船舶の蒸発ガスの再液化方法
(51)【国際特許分類】
B63B 25/16 20060101AFI20200907BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
B63B25/16 D
B63H21/38 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-522766(P2018-522766)
(86)(22)【出願日】2016年10月24日
(65)【公表番号】特表2018-534206(P2018-534206A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】KR2016011944
(87)【国際公開番号】WO2017082552
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2018年5月2日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0158922
(32)【優先日】2015年11月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】デウ シップビルディング アンド マリン エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジュン チェ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ナム ス
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2015−0001600(KR,A)
【文献】
国際公開第2014/167219(WO,A1)
【文献】
特開2006−348752(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2015−0049371(KR,A)
【文献】
韓国登録特許第10−1511214(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/12,25/16,
B63H 21/38,
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム駆動の初期には、貯蔵タンクから排出される蒸発ガスを直ちに2つの流れに分岐させて、一方の流れを主圧縮部に送り、他方の流れを予備圧縮部に送り、
システム駆動後、前記主圧縮部で圧縮された蒸発ガスと前記予備圧縮部で圧縮された蒸発ガスとが合流して熱交換器に供給され始めたら、前記貯蔵タンクから排出される蒸発ガスを前記熱交換器に送り、
前記貯蔵タンクから排出された後に前記熱交換器を通過した蒸発ガスを2つの流れに分岐させて、一方の流れを前記主圧縮部に送り、他方の流れを前記予備圧縮部に送り、
前記主圧縮部で圧縮された蒸発ガスと前記予備圧縮部で圧縮された蒸発ガスとを合流させて、一部をエンジンに送り、他の一部を前記熱交換器に送り、
前記熱交換器で、前記貯蔵タンクから排出された蒸発ガスと熱交換して冷却された流体は減圧装置によって膨張されて再液化され、
再液化された流体は気液分離器によって気体成分と液体成分とに分離されて、液体成分
は前記貯蔵タンクに戻され、気体成分として残っている蒸発ガスは前記貯蔵タンクから排出される蒸発ガスと合流して前記熱交換器に送られる、船舶の蒸発ガスの再液化方法。
【請求項2】
船舶が停泊状態であるか、生産地で液化ガスを船積みして運搬する間には、前記予備圧縮部を稼働させ、
前記船舶が運航状態であるか、液化ガスを需要先で荷揚げした後には、平常時は前記予備圧縮部を稼働させず、前記主圧縮部が故障したときに前記予備圧縮部を稼動させることを特徴とする、請求項1に記載の船舶の蒸発ガスの再液化方法。
【請求項3】
運航を開始した直後または入港する直前で、蒸発ガスの迅速な処理が必要であるときに、前記主圧縮部及び前記予備圧縮部を稼動させることを特徴とする、請求項1に記載の船舶の蒸発ガスの再液化方法。
【請求項4】
前記気液分離器が故障したときに、前記熱交換器及び前記減圧装置を通過した流体を、前記気液分離器を迂回させて、直接前記貯蔵タンクに送ることを特徴とする、請求項1に記載の船舶の蒸発ガスの再液化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明
は、貯蔵タンクの内部で発生した蒸発ガスのうち、エンジンの燃料として使用されずに残った蒸発ガスを再液化する
船舶の蒸発ガスの再液化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液化天然ガス(Liquefied Natural Gas、LNG)などの液化ガスの消費量が世界的に急増している傾向にある。ガスを低温で液化させた液化ガスは、ガスに比べて体積が非常に減少するため、貯蔵及び移送効率が高まるという長所がある。また、液化天然ガスをはじめとする液化ガスは、液化工程中に大気汚染物質が除去または軽減され、燃焼時に大気汚染物質の排出が少なく、環境にやさしい燃料である。
【0003】
液化天然ガスは、メタン(methane)が主成分である天然ガスを約−162℃に冷却し液化することで得られる無色透明な液体であり、体積が天然ガスと比較して約1/600である。したがって、天然ガスを液化して移送すると非常に効率的な移送が可能となる。
【0004】
しかし、天然ガスの液化温度は常圧で−162℃の極低温であり、液化天然ガスは温度変化に敏感であるため、すぐに蒸発する。そのため、液化天然ガスを貯蔵する貯蔵タンクには断熱処理が施されるが、外部熱が貯蔵タンクに継続的に伝達され、液化天然ガスの輸送過程で貯蔵タンク内では継続的に液化天然ガスが自然気化し、蒸発ガス(Boil−Off Gas、BOG)が発生する。これは、エタンなどの他の低温液化ガスにおいても同様である。
【0005】
蒸発ガスは損失の1つであって、輸送効率において重要な問題である。また、貯蔵タンク内に蒸発ガスが蓄積すると、タンク内圧が過度に上昇し、極端な場合にはタンク破損の虞もある。したがって、貯蔵タンク内で発生する蒸発ガスを処理するための様々な方法が研究され、最近では蒸発ガスを処理するために、蒸発ガスを再液化して貯蔵タンクに戻す方法、蒸発ガスを船舶のエンジンなどの燃料消費先のエネルギー源として使用する方法などが用いられている。
【0006】
蒸発ガスを再液化する方法には、別の冷媒を用いた冷凍サイクルを備えて蒸発ガスを冷媒と熱交換して再液化する方法、および別の冷媒を用いずに蒸発ガス自体を冷媒として再液化する方法などがある。特に、後者の方法を採用したシステムを部分再液化システム(Partial Re−liquefaction System、PRS)という。
【0007】
また、船舶に使用される一般的なエンジンのうち、天然ガスを燃料として使用できるエンジンは、DFDEやME−GIエンジンなどのガス燃料エンジンがある。
【0008】
DFDEは、4ストローク機関であり、比較的低圧である6.5bar程度の圧力の天然ガスを燃焼空気入口に注入して、ピストンが上昇しながら圧縮する、オットーサイクル(Otto Cycle)を採用している。
【0009】
ME−GIエンジンは、2ストローク機関であり、300bar程度の高圧天然ガスをピストンの上死点付近で燃焼室に直接噴射するディーゼルサイクル(Diesel Cycle)を採用している。最近では、燃料効率と推進効率がより優れたME−GIエンジンへの関心が高まっている傾向にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は
、優れた蒸発ガス再液化性能が発揮できる
船舶の蒸発ガスの再液化方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため本発明の
一実施形態では、システム駆動の初期には、貯蔵タンクから排出される蒸発ガスを直ちに2つの流れに分岐させて、一方の流れを主圧縮部に送り、他方の流れを予備圧縮部に送り、システム駆動後に前記主圧縮部で圧縮された蒸発ガスと前記予備圧縮部で圧縮された蒸発ガスとが合流して熱交換器に供給され始めたら、前記貯蔵タンクから排出される蒸発ガスを前記熱交換器に送り、前記貯蔵タンクから排出された後に前記熱交換器を通過した蒸発ガスを2つの流れに分岐させて、一方の流れを前記主圧縮部に送り、他方の流れを前記予備圧縮部に送り、前記主圧縮部で圧縮された蒸発ガスと前記予備圧縮部で圧縮された蒸発ガスとを合流させて、一部をエンジンに送り、他の一部を前記熱交換に送り、前記熱交換器で前記貯蔵タンクから排出された蒸発ガスと熱交換して冷却された流体は減圧装置によって膨張されて再液化され、再液化された流体は気液分離器によって気体成分と液体成分とに分離されて、液体成分は前記貯蔵タンクに戻され、気体成分として残っている蒸発ガスは前記貯蔵タンクから排出される蒸発ガスと合流して前記熱交換器に送られる、
船舶の蒸発ガスの再液化方法が提供される。
【0018】
船舶が停泊した状態であるか、生産地で液化ガスを船積みして運搬する間には前記予備圧縮部を稼働させることができ、前記船舶が運航状態であるか液化ガスを需要先で荷揚げした後には、平常時は前記予備圧縮部を稼働させず、前記主圧縮部が故障したときに前記予備圧縮部を稼働させる。
【0019】
運航を開始した直後または入港する直前で、蒸発ガスの迅速な処理が必要であるときに、前記主圧縮部及び前記予備圧縮部を稼働させる。
【0020】
前記気液分離器が故障したときに、前記熱交換器及び前記減圧装置を通過した流体を、前記気液分離器を迂回させて、直接前記貯蔵タンクに送ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、従来の部分再液化システム(PRS)に比べて、既に設置された予備圧縮機を利用して再液化効率と再液化量を高めるため、船上空間の確保に有利であり、圧縮機の追加設置にかかる費用を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】従来の部分再液化システムを概略的に示した構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る船舶の蒸発ガス処理システムを概略的に示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態の構成と作用を詳細に説明する。本発明の船舶は、天然ガスを燃料として使用するエンジンを搭載した船舶や液化ガス貯蔵タンクを備えた船舶などに様々な応用と適用が可能である。また、下記の実施形態は他の様々な形態に変更することができ、本発明の範囲は下記の実施形態に限定されない。
【0025】
後述する本発明の蒸発ガス処理システムは、低温液体貨物または液化ガスを貯蔵できる貯蔵タンクが設置された全種類の船舶や海上構造物、すなわち、液化天然ガス運搬船、液化エタンガス(Liquefied Ethane Gas)運搬船、LNG RVなどの船舶をはじめ、LNG FPSO、LNG FSRUなどの海上構造物に適用することができる。ただし、後述する実施形態は、説明の便宜上、代表的な低温液体貨物である液化天然ガスを例に挙げて説明する。
【0026】
また、本発明における各ラインの流体は、システムの運用条件に応じて、液体状態、気液混合状態、気体状態、超臨界流体状態のいずれか1つの状態である。
【0027】
図1は、従来の部分再液化システムを概略的に示した構成図である。
【0028】
図1を参照して、従来の部分再液化システムでは、液体貨物を貯蔵する貯蔵タンクで発生して排出される蒸発ガスは、配管に沿って移送されて蒸発ガス圧縮部(10)で圧縮される。
【0029】
貯蔵タンク(T)は、液化天然ガスなどの液化ガスを極低温状態で貯蔵できるように密封および断熱障壁が設置されるが、外部から伝達される熱を完全に遮断することはできず、タンク内では液化ガスの蒸発が継続してタンク内圧が上昇する。蒸発ガスによるタンク圧力の過度な上昇を防止し、適正なレベルの耐圧を維持するために貯蔵タンク内の蒸発ガスを排出し、蒸発ガス圧縮部(10)に供給する。
【0030】
貯蔵タンクから排出されて蒸発ガス圧縮部(10)で圧縮された蒸発ガスを第1ストリームと称し、圧縮された蒸発ガスの第1ストリームを第2ストリームと第3ストリームとに分け、第2ストリームを液化して貯蔵タンク(T)に戻すように構成し、第3ストリームを船内の推進用エンジンや発電用エンジンなどのガス燃料消費先に供給するように構成することができる。この場合、蒸発ガス圧縮部(10)は燃料消費先への供給圧力まで蒸発ガスを圧縮することができ、第2ストリームは必要に応じて蒸発ガス圧縮部の全部または一部を経て分岐させることができる。燃料消費先の燃料必要量に応じて、第3ストリームに圧縮された蒸発ガスの全部を供給することもでき、第2ストリームに全量を供給して圧縮された蒸発ガスの全部を貯蔵タンクに戻すこともできる。ガス燃料消費先は、高圧ガス噴射エンジン(例えば、MDT社が開発したME−GIエンジンなど)や低圧ガス噴射エンジン(例えば、Wartsila社のX−DFエンジン(Generation X−Dual Fuel engine)など)をはじめ、DF−Generator、ガスタービン、DFDEなどがある。
【0031】
このとき、圧縮された蒸発ガスの第2ストリームを液化するために、熱交換器(20)が設置されるが、貯蔵タンクから発生する蒸発ガスを圧縮された蒸発ガスの冷熱源として利用する。熱交換器(20)を経て蒸発ガス圧縮部での圧縮過程で温度が上昇した圧縮された蒸発ガス、すなわち第2ストリームは、冷却され、貯蔵タンクから発生して熱交換器(20)に導入された蒸発ガスは、加熱されて蒸発ガス圧縮部(10)に供給される。
【0032】
圧縮前の蒸発ガスの流量は第2ストリームの流量より多いため、圧縮された蒸発ガスの第2ストリームは圧縮前の蒸発ガスから冷熱を供給され、少なくとも一部が液化する。このように熱交換器では、貯蔵タンクから排出された直後の低温蒸発ガスと蒸発ガス圧縮部で圧縮された高圧状態の蒸発ガスとを熱交換させて高圧蒸発ガスを液化する。
【0033】
熱交換器(20)を経た第2ストリームの蒸発ガスは、膨張バルブまたは膨張機などの膨張手段(30)を通過して減圧されながら冷却され、気液分離器(40)に供給される。液化した蒸発ガスは、気液分離器で気体成分と液体成分とに分離され、液体成分、すなわち、液化天然ガスは貯蔵タンクに戻され、気体成分、すなわち、蒸発ガスは貯蔵タンクから排出されて熱交換器(20)および蒸発ガス圧縮部(10)に供給される蒸発ガスの流れに合流させるか、再び熱交換器(20)に供給して、蒸発ガス圧縮部(10)で圧縮された高圧状態の蒸発ガスと熱交換する冷熱供給源として利用される。なお、ガス燃焼装置(Gas Combustion Unit;GCU)などに送って燃焼すること、ガス消費先(ガスエンジンを含む)に送って消費することができることは当然である。蒸発ガスの流れに合流する前に、気液分離器で分離された気体成分をさらに減圧するために、更に他の膨張手段(50)を設置することができる。
【0034】
図2は、本発明の実施形態に係る船舶の蒸発ガス処理システムを概略的に示した構成図である。
【0035】
図2を参照して、本実施形態の船舶は、主圧縮部(210)、予備圧縮部(220)、熱交換器(500)、減圧装置(600)、および気液分離器(700)を備える。
【0036】
本実施形態の貯蔵タンク(100)は、内部に液化天然ガス、液化エタンガスなどの液化ガスを貯蔵し、内部圧力が所定圧力以上になったら蒸発ガスを外部に排出する。
【0037】
本実施形態の主圧縮部(210)は、貯蔵タンク(100)から排出される蒸発ガスの一部を圧縮する。主圧縮部(210)は、複数の圧縮機が直列に連結された形態であり、一例として5つの圧縮機を備えて、蒸発ガスを5ステップで圧縮する。
【0038】
本実施形態の予備圧縮部(220)は、貯蔵タンク(100)から排出される蒸発ガスの他の一部を圧縮する。予備圧縮部(220)は、主圧縮部(210)の使用が不可能になった場合に主圧縮部(210)を代替して使用するものであり(Redundancy)、主圧縮部(210)と並列に設置される。予備圧縮部(220)は、主圧縮部(210)を代替するものであり、主圧縮部(210)と同じ圧力で蒸発ガスを圧縮することが好ましい。
【0039】
予備圧縮部(220)は、主圧縮部(210)と同数の圧縮機が直列に連結された形態であるか、
図2に示すように、主圧縮部(210)に備えられた圧縮機より小さい容量の圧縮機がより多く直列に連結された形態である。
【0040】
本実施形態の主圧縮部(210)及び予備圧縮部(220)は、それぞれME−GIエンジンの要求圧力である約300barまで蒸発ガスを圧縮する。以下、ME−GIエンジンなどの比較的高圧のガスを燃料として使用するエンジンを「高圧エンジン」という。
【0041】
本実施形態の熱交換器(500)は、主圧縮部(210)で圧縮された蒸発ガスと予備圧縮部(220)で圧縮された蒸発ガスとが合流した流れのうち、ME−GIエンジンなどの高圧エンジンに送られずに残った蒸発ガスを、貯蔵タンク(100)から排出された蒸発ガスと熱交換させて冷却する。
【0042】
本実施形態の減圧装置(600)は、熱交換器(500)で貯蔵タンク(100)から排出された蒸発ガスと熱交換して、冷却された蒸発ガスを膨張させる。減圧装置(600)は、ジュール−トムソン(Joule−Thomson)バルブなどの膨張バルブ、または膨張機である。
【0043】
本実施形態の気液分離器(700)は、主圧縮部(210)または予備圧縮部(220)で圧縮され、熱交換器(500)で冷却され、減圧装置(600)で膨張され、一部が再液化された液化天然ガスと気体状態で残っている蒸発ガスとを分離する。
【0044】
本実施形態の船舶は、主圧縮部(210)及び予備圧縮部(220)の下流にそれぞれ設置され、主圧縮部(210)または予備圧縮部(220)で圧縮された蒸発ガスからオイルを分離するオイル分離器(300)をさらに備える。
【0045】
また、本実施形態の船舶は、主圧縮部(210)で圧縮された蒸発ガスと予備圧縮部(220)で圧縮された蒸発ガスとが合流して熱交換器(500)に送られるL40のライン上に設置されて、オイル分離器(300)によって分離されずに残っているオイルを所定濃度以下になるように濾過するオイルフィルタ(400)をさらに備える。
【0046】
本実施形態のシステムによって貯蔵タンク(100)から排出された蒸発ガスが再液化される過程を以下に説明する。
【0047】
貯蔵タンク(100)から排出された蒸発ガスは、システム駆動の初期には熱交換器(500)を通過せず直ちにL10のラインに沿ってシステムに供給される。L10のラインに沿って供給された蒸発ガスは2つの流れに分岐し、一方はL12のラインに沿って主圧縮部(210)に供給され、他方はL13のラインに沿って予備圧縮部(220)に供給される。
【0048】
システム駆動の初期には貯蔵タンク(100)から排出された蒸発ガスが熱交換器(500)を経由せずにL10のラインに沿って直ちに主圧縮部(210)または予備圧縮部(220)に送られるが、システムを駆動して所定時間が経過し、主圧縮部(210)または予備圧縮部(220)で圧縮された蒸発ガスの一部が熱交換器(500)に供給され始めると、貯蔵タンク(100)から排出された蒸発ガスはL11のラインに沿って熱交換器(500)に送られた後、更にL10ラインで2つの流れに分岐し、一方は主圧縮部(210)に送られ、他方は予備圧縮部(220)に送られる。
【0049】
L12のラインに沿って主圧縮部(210)に供給される蒸発ガスの量とL13のラインに沿って予備圧縮部(220)に供給される蒸発ガスの量は同量であり得る。
【0050】
従来の部分再液化システム(PRS)では、平常時には主圧縮部(210)のみで蒸発ガスを圧縮し、主圧縮部(210)が故障した場合には予備圧縮部(220)のみで蒸発ガスを圧縮していたが、本実施形態では従来の部分再液化システム(PRS)に比べて2倍程度の蒸発ガスを圧縮することができる。圧縮機の容量を超える蒸発ガスはガス燃焼装置(GCU)などに送って焼却することになるが、本実施形態は蒸発ガスの量が増加した場合でもほとんどの蒸発ガスを圧縮することができるため、蒸発ガスの焼却量を大幅に減らし、ほとんどの蒸発ガスを再液化することができる。
【0051】
貯蔵タンク(100)内部の蒸発ガスの量は貯蔵タンク(100)の内部に貯蔵された液化天然ガスの量に比例するため、一般的に液化天然ガスを生産地で船積みして需要先に輸送する時には蒸発ガスの発生量が増加し、需要先で液化天然ガスを荷揚げした後で再び生産地に向かう時には蒸発ガスの発生量が減少する。蒸発ガスの発生量が多い時には主圧縮部(210)と予備圧縮部(220)との両方を稼動させ、蒸発ガスの発生量が少ない時には主圧縮部(210)または予備圧縮部(220)のいずれか1つのみを稼動させる方式でシステムを運用することができる。
【0052】
船舶が高速運航する時には、エンジンにおける蒸発ガスの消費量が多くなって再液化する蒸発ガスの量が減少し、船舶が停泊した時には、エンジンで蒸発ガスを消費しないため再液化する蒸発ガスの量が増加する。再液化する蒸発ガスの量が多い場合には、主圧縮部(210)と予備圧縮部(220)との両方を稼動させ、再液化する蒸発ガスの量が少ない場合には主圧縮部(210)または予備圧縮部(220)のいずれか1つのみを稼働させる方式でシステムを運用することができる。
【0053】
また、運航を開始した直後には、貯蔵タンク(100)の内部安定性の確保と貯蔵タンク(100)の環境条件を改善するために、停泊状態で蓄積された多量の蒸発ガスを迅速に処理することになるが、運航を開始した直後に蓄積された蒸発ガスを迅速に処理する場合にも主圧縮部(210)と予備圧縮部(220)との両方を稼働させることができる。
【0054】
更に、入港する直前に、貯蔵タンク(100)の環境条件を入港条件に合わせて変更するために、蒸発ガスの迅速な処理が必要である場合にも、主圧縮部(210)と予備圧縮部(220)との両方を稼動させることができる。
【0055】
貯蔵タンク(100)から排出された後に2つの流れに分岐し、L12のラインとL13のラインに沿って、それぞれ主圧縮部(210)または予備圧縮部(220)で圧縮された蒸発ガスは、合流した後に、一部はME−GIエンジンなどの高圧エンジンに送られ、他の一部は分岐してL40のラインに沿って熱交換器(500)に送られる。
【0056】
主圧縮部(210)で圧縮された蒸発ガスと予備圧縮部(220)で圧縮された蒸発ガスとが合流して、熱交換器(500)で貯蔵タンク(100)から排出される蒸発ガスと熱交換して冷却された後、減圧装置(600)によって膨張される。主圧縮部(210)または予備圧縮部(220)による圧縮、熱交換器(500)による冷却、および減圧装置(600)による膨張過程を経て再液化された液化天然ガスと気体状態で残っている蒸発ガスとが気液分離器(700)によって分離され、気液分離器(700)によって分離された液化天然ガスは貯蔵タンク(100)に戻され、気液分離器(700)によって分離されて気体状態で残っている蒸発ガスは貯蔵タンク(100)から排出される蒸発ガスと合流して熱交換器(500)で冷媒として使用される。主圧縮部(210)と予備圧縮部(220)とを同時に稼動させると、主圧縮部(210)のみを稼働させる時より、気液分離器(700)によって分離される液化天然ガスの量が多くなる。
【0057】
本実施形態において、貯蔵タンク(100)から排出される蒸発ガスの全量をガス燃焼装置で燃焼すること、又は直接貯蔵タンク(100)に貯蔵せずに液化して貯蔵タンク(100)に送ることができるため、液化天然ガスの輸送量を増加させることができ、貯蔵タンク(100)の圧力を低下させるか又は一定に維持することができるため長期間に亘って停泊状態を維持することができる。
【0058】
主圧縮部(210)または予備圧縮部(220)による圧縮、熱交換器(500)による冷却、および減圧装置(600)による膨張過程を経た流体は、気液分離器(700)が故障した時には、熱交換器(500)を通過した流体を気液分離器(700)に送ることなく、L60のラインに沿って直接貯蔵タンク(100)に送ることもできる。
【0059】
また、主圧縮部(210)及び予備圧縮部(220)が直列に連結された複数の圧縮機を備える場合、主圧縮部(210)の複数の圧縮機のうち一部のみを経た蒸発ガスの一部と、予備圧縮部(220)の複数の圧縮機のうち一部のみを経た蒸発ガスの一部とを、それぞれ分岐させてDFGEに送ることができる(L22のライン及びL23のライン)。以下、DFエンジンなどの比較的低圧のガスを燃料として用いるエンジンを「低圧エンジン」という。
【0060】
また、余剰蒸発ガスが発生した場合には、主圧縮部(210)からDFGEなどの低圧エンジンに送られる蒸発ガスの一部と、予備圧縮部(220)からDFGEなどの低圧エンジンに送られる蒸発ガスの一部とを、それぞれ分岐させてガス燃焼装置(GCU)に送って焼却することができる(L32のライン及びL33のライン)。
【0061】
図2に示した各バルブを前述の過程によって適宜に開閉できることは通常の技術者にとって自明である。本発明は、前記実施形態に限定されず、本発明の技術的要旨を逸脱しない範囲内で様々な修正又は変更実施が可能であることは、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明である。