特許第6755315号(P6755315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6755315高コンシステンシーの酵素フィブリル化ナノセルロースからフィルムを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755315
(24)【登録日】2020年8月27日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】高コンシステンシーの酵素フィブリル化ナノセルロースからフィルムを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20200907BHJP
   D21H 11/18 20060101ALI20200907BHJP
   B29C 41/24 20060101ALI20200907BHJP
   B29K 1/00 20060101ALN20200907BHJP
【FI】
   C08J5/18CEP
   D21H11/18
   B29C41/24
   B29K1:00
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-532240(P2018-532240)
(86)(22)【出願日】2016年12月30日
(65)【公表番号】特表2019-501255(P2019-501255A)
(43)【公表日】2019年1月17日
(86)【国際出願番号】FI2016050940
(87)【国際公開番号】WO2017115020
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2018年6月19日
(31)【優先権主張番号】20156042
(32)【優先日】2015年12月31日
(33)【優先権主張国】FI
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512068592
【氏名又は名称】テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】ベサ カナリ
(72)【発明者】
【氏名】ヤーッコ ペール
(72)【発明者】
【氏名】ヤーッコ ヒルトゥネン
(72)【発明者】
【氏名】カタリーナ ケムパイネン
【審査官】 芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−043963(JP,A)
【文献】 特表2015−502835(JP,A)
【文献】 特開2014−084431(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/072230(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
D21H
B29C 41/00−41/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素フィブリル化ナノセルロース原材料からフィルムを製造する方法であって、以下の単位操作:
前記原材料と添加剤とを混合し、繊維ウェブを形成する;
ここで、前記添加剤は、前記繊維ウェブの総重量の1%から30%のTEMPO-酸化セルロースナノフィブリルであり、
前記繊維ウェブを押出しによって金属基材上に置く;
前記金属基材上の前記繊維ウェブを乾燥させ、フィルム材料を形成する;
前記フィルム材料を前記金属基材から離層させる;
ロール上に前記フィルム材料を巻き直す;および
前記フィルム材料を前記ロールからカレンダー加工し、所望の厚さを有するフィルムを形成する、からなり、
前記フィルムが15%から40%のコンシステンシーを有する酵素フィブリル化セルロース原材料懸濁液から作られることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記酵素フィブリル化ナノセルロース原材料が、20%から30%のコンシステンシーを有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルムの厚さを20μmから500μmに調整することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
連続的であることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載の方法によって製造された、羽毛様形態のナノセルロースフィブリルを含み、20μmから500μmの厚さと100nm未満の表面粗さを有する半透明フィルム材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、酵素でフィブリル化されたナノセルロース原材料からフィルムをエネルギー効率よく製造する方法、及び、その方法に従って製造されたフィルム材料およびフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
典型的には、スタンドアローンナノセルロースフィルムは、約2%のコンシステンシーのCNF懸濁液から、溶媒キャスト法によって製造されるものであり、続いて過剰の水または溶媒を同様に蒸発させる。このキャスティングは現在、プラスチックベースの基材上で行われている。このように製造されたCNFフィルムは、非常に高い引張強さを有するが、靭性が低く、このことは、その後の加工工程及び最終用途を考慮するうえで、極めて重要な特徴である。フィルムは薄くもあり、このため、スタンドアローン構造としての使用が制限される。
【0003】
セルロースフィブリル化法に関して、多くの先行技術刊行物を見つけることができ、その中では、セルロース繊維を酵素および/または機械的に処理している。例えば、国際公開第2011/004300号には、クラフトパルプのセルロース系繊維を処理してマイクロフィブリル化セルロースまたはナノセルロースを製造する方法が記載されており、この方法は、細断または研磨によって繊維またはクラフトパルプを機械的に前処理すること、及びセルラーゼのような酵素で繊維を処理することを含む。
【0004】
Zhuら(2011)は、木質繊維を酵素分画することによって、ナノフィブリル化セルロースおよびセルロースバイオ燃料を統合的に生産することを述べているが、この中で、漂白されたクラフトユーカリパルプからセルロースを分画するためにセルラーゼ酵素が使用された。また、ナノフィブリル化セルロースから作られたフィルムは、光学的に透明で力学的に強くて硬いことも見出している。
【0005】
しかしながら、従来技術では、高コンシステンシーのナノセルロース原材料からフィルムを製造する方法については述べられていない。
【0006】
したがって、市場にある現在の材料を置き換えるためには、より少ないエネルギーを消費し、ナノセルロースからの強靭で厚いフィルムを製造する新規な方法を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、独立請求項の特徴によって規定される。いくつかの特定の実施形態は、従属請求項で規定されている。
【0008】
本願発明の第1の態様によれば、高コンシステンシーの酵素フィブリル化ナノセルロース原材料からフィルムを製造する方法を提供する。
【0009】
本願発明の第2の態様によれば、良好な力学的特性および難燃性を有する半透明フィルム材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらおよび他の態様は、公知の解決策を上回るそれらの利点と共に、以下に記載され請求される本願発明によって実現される。
【0011】
本願発明の実施形態による方法は、主に、請求項1の特徴部分に記載されていることを特徴とする。
【0012】
本願発明の実施形態によるフィルム材料は、主に、請求項8に記載されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によりかなりの利点が得られる。本願明細書では、例えば従来のCNFフィルムと比較してより厚い新規なフィルムを提供する。フィルムを生産するプロセスは、前記原材料に含まれる蒸発させるべき水分量が少なく、それ故、プロセス中での単位操作が少なくて済むので、従来の方法に比べてより簡便で、エネルギー消費が少ない。同様の理由から、より低い輸送コストであるため、オフサイトでの生産も可能である。
【0014】
次に、本願技術を具体的な実施形態に言及しながら詳細に説明する。
【0015】
本願発明は、高コンシステンシーの酵素フィブリル化ナノセルロースからフィルムを製造する新規な方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は押出機のシャフトの画像である。
図2図2はリファレンスフィルムが押出されているところの画像である。
図3図3はTEMPO-CNFで強化されたフィルムが押出されているところの画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願発明の好ましい態様によれば、酵素フィブリル化ナノセルロース原材料からフィルムを製造する方法は、以下の単位操作を含む:
原材料と添加剤とを混合し、繊維ウェブを形成する;
繊維ウェブを金属基材上に置く;
金属基材上の繊維ウェブを乾燥させ、フィルム材料を形成する;
フィルム材料を金属基材から離層させる;
ロール上にフィルム材料を巻き直す;および
フィルム材料をロールからカレンダー加工し、所望の厚さを有するフィルムを形成する。
【0018】
本願発明の更なる実施形態によれば、前記方法は、コンシステンシーが15%から40%、より好ましくは20%から30%以下である酵素フィブリル化ナノセルロース原材料懸濁液から前記フィルムを製造することを特徴とする。
【0019】
高コンシステンシーのナノセルロース原材料を用いるこのような方法により、前記原材料に含まれる蒸発させるべき水分量が少なく、それ故、プロセス中での単位操作が少なくて済むので、従来の方法に比べてエネルギー消費が少なく、フィルムの製造プロセスをより簡便にすることができる。同様の理由から、より低い輸送コストであるため、オフサイトでの生産も可能である。
【0020】
ナノセルロース原材料を製造するのに適したプロセスは、例えば特許出願WO2015/092146に記載されている。
【0021】
本願発明の一実施形態によれば、前記フィルムの厚さは20μmから500μm、より好ましくは20μmから200μmのレベルに調整する。
【0022】
本願発明の更なる実施形態によれば、金属基材上に繊維ウェブを置くことは、押出しによって行い、例えば適切なノズルを選択することによって繊維を所望の方向に向けることもできる。低いコンシステンシー(例えば、2%)の従来のCNF懸濁液では押出しが不可能であることは注目に値する。乾燥中に金属支持体上にフィルム材料が付着することで、フィルムの収縮を防止する。金属支持体は、典型的には耐久性があり、耐熱性があり、洗浄が容易であり、また連続生産を可能にもするので、好ましくもある。金属支持体からフィルム材料の離層させることは、少なくとも実質的に乾燥したフィルムに対して行う。
【0023】
本願発明の一実施形態によれば、乾燥は、原材料の固体コンシステンシーに依存して、10時間未満を要する。例えば、20%から30%のコンシステンシーは4から5時間の乾燥時間しか必要としない。24時間の乾燥時間を必要とする2%のコンシステンシーと比較して、本願発明の方法は実質的により速い乾燥工程を提供し、したがって低固体コンシステンシーを用いる従来の方法よりも遥かに少ないエネルギー消費にもなる。これは、とりわけ、本願発明の更なる実施形態である連続生産プロセスを可能にする。
【0024】
本願発明の一実施形態によれば、形成されたフィルム構造と結合することによって、前記フィルムを取扱性に対してより寛容に、及び靭性あるものにするために、高コンシステンシーのフィブリル化セルロースを添加剤と混合するが、この添加剤は、好ましくは合成またはバイオベースのポリマーである。しかし、添加剤は必ずしもこのフィルム構造に結合している必要はない。したがって、粘度を増加させ、可塑剤として作用する添加剤が好ましい。適切なバイオベースの添加剤は、限定するものではないが、例えばグリセロール、カルボキシメチル化セルロース(CMC)、カラギーナン、ポリビニルアルコール(PVA)およびTEMPO-酸化セルロースナノフィブリル(TCNF)であり、これは例えばCNF懸濁液の総重量から1から30%の量で使うことができる。
【0025】
羽毛様形態で、20μmから500μmの厚さを有するナノセルロース繊維を含む半透明フィルム材料も本願発明の範囲に属する。前記フィルム材料は、100nmまでの低い表面粗さを有することも特徴とする。
【0026】
開示された本願発明の実施形態は、本願明細書で開示される特定の構造、プロセス工程、または材料に限定されず、関連技術分野の当業者によって認識されるような、それらの均等物まで拡張される。また、本願明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明するためだけに使用され、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0027】
本願明細書を通して、一実施形態(one embodiment)または一実施形態(an embodiment)に言及することは、この実施形態に関連して記載した特定の特徴、構造、または特性が、本願発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本願明細書の様々な箇所において、「一実施形態では(in one embodiment)」または「一実施形態では(in one embodiment)」という表現が出てきても、必ずしもすべて同じ実施形態を指しているとは限らない。例えば(such as)、例えば(for example)、約(about)または実質的に(substantially)の用語を用いて数値を言及する場合、正確な数値も開示される。
【0028】
本願明細書で使用されるように、物の複数形、構造要素、構成要素および/または材料を、便宜上共通のリストに提示することがある。しかし、これらのリストを、リストの各メンバーが別々の一意のメンバーとして個々に識別される、というように解釈するべきである。従って、そのようなリストの個々のメンバーを、個々のメンバーが別々のものであることを示唆することなく共通のグループとして提示されているということのみに基づいて、その同一リストの他のメンバーと実質的に等価であると解釈するべきではない。更に、本願発明の様々な実施形態および実施例を、本願明細書において、その様々な構成要素の代替と共に言及することがある。そのような実施形態、実施例、および代替を、互いに事実上等価であると解釈するべきではなく、本願発明の独立した自律的な表現とみなすべきであることが理解される。
【0029】
更に、記載された特徴、構造または特性を、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。以下の説明では、本願発明の実施形態の完全な理解を提供するために、長さ、幅、形状などの例のような多くの具体的な詳細を提供する。しかしながら、当業者であれば、本願発明は、1つまたは複数の具体的な詳細がなくても、または、他の方法、構成要素、材料などを用いて実施することができることを認識するであろう。他の例では、本願発明の態様を不明瞭にすることを避けるために、よく知られた構造、材料または操作を、詳細に示していない、または説明していない。
【0030】
前記の例は、1つまたは複数の特定の用途における本願発明の原理を説明するものであるが、発明的才能を発揮することなしに、及び本願発明の原理および概念から逸脱することなしに、形態、使用および実施の詳細において多くの変更を行うことができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、以下に示す特許請求の範囲を除いて、本願発明を限定することは意図していない。
【0031】
「を含む(to comprise)」および「を含む(to include)」という動詞を、記載されていない特徴の存在を排除も要求もしないオープンな制限としてこの文書で使用する。従属クレームに列挙された特徴は、他に明示的に述べられていない限り、相互に自由に組み合わせ可能である。更に、本願明細書を通して「a」または「an」、すなわち単数形の使用は複数を排除するものではないことを理解されたい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本願発明の少なくともいくつかの実施形態は、包装、輸送、エレクトロニクス、エネルギー貯蔵および建設産業に関連する分野において工業的用途がある。本願明細書で提供されるフィルムは、例えば、電子包装の一部として;診断プラットフォームとして;膜(membrane)用途において;生分解性プラスチックおよび食品包装のために、使用され得る。
【実施例】
【0033】
(実施例1)キャスティングによるフィルムの調製。
漂白針葉樹パルプを原材料として使用して、フィブリル化セルロースを特許出願WO2015/092146に記載されているように25%のコンシステンシーで酵素的に調製した。フィブリル化後、酵素活性を、温度を90℃まで20分間上昇させることによって阻害した。その後、前記材料を濾過し、脱イオン水で完全に洗浄した。洗浄後、フィブリル化セルロースのコンシステンシーは典型的には20%から24%であった。
【0034】
キャスティングプロセスは、洗浄段階の後、20%から24%の固形分のフィブリル化セルロースでの典型的な場合よりも低い粘度を必要とする。したがって、前記材料を、フィブリル化段階の処理時間に依存して、水を用いて約12%から17%のコンシステンシーに希釈する。次いで、キャスティング前に、前記材料を、高せん断混合を使用して、確実に均一で滑らかな繊維懸濁液になるまで注意深くバラバラにする。次の処理工程における仕上げフィルムの取り扱いおよび処理がしやすいように、繊維懸濁液の中に添加剤を添加することができる。添加剤は、フィルム形成のために必要ではない。前記フィルムを移動支持体上にキャストし、支持体上で乾燥し、乾燥後に支持体から離層してスタンドアローン構造を製造することができる。
【0035】
(実施例2)押出しに適したフィブリル化セルロースの調製。
漂白針葉樹パルプを原材料として使用して、フィブリル化セルロースを特許出願WO2015/092146に記載されているように25%のコンシステンシーで酵素的に調製した。フィブリル化後、酵素活性を、温度を90℃まで20分間上昇させることによって阻害した。その後、前記材料を濾過し、脱イオン水で完全に洗浄した。洗浄後、フィブリル化セルロースのコンシステンシーは典型的には20%から24%であった。フィルム形態への押出しに適したフィブリル化セルロース材料を得るために、様々なバイオベースの添加剤を試験した。これらは以下を含む:
カルボキシメチル化セルロース(CMC)
カラギーナン
ポリビニルアルコール(PVA)
TEMPO-酸化セルロースナノフィブリル(TCNF)
【0036】
これらの添加剤を、高コンシステンシーのフィブリル化セルロースに1%、2%または4%(乾燥重量基準で計算)の最終濃度で混合した。シグマミキサー(ファリノグラフ(Farinograph)、ブラベンダー(Brabender)、ドイツ)中で混合を行い、最終混合物のコンシステンシーが約20%になるように添加剤を水溶液または分散液としてゆっくりと添加した。30rpmの混合速度で、50℃で20分間混合を行った。混合後、材料を冷却し、使用するまで+4℃で保存した。
【0037】
(実施例3)改質高コンシステンシーセルロースのフィルム形態への押出し。
押出試験は、実施例2に記載した改質セルロース材料について、1本のシャフト(図1)およびありつぎのオリフィスを備えたブラベンダー社の押出機を用いて行った。押出しは、25℃および101/分の回転速度で行った。押出しの間、改質フィブリル化セルロースの固形分濃度は、典型的には19%から20%であった。
【0038】
押出された材料をプラスチック製のシートまたはボードの上に集めた。この試験を下記表1にまとめる。
【0039】
【表1】
【0040】
セルロースフィルム押出中の高コンシステンシーセルロースの添加剤としての様々なポリマーの効果を試験した。何ら添加剤を加えない場合、数か所の破断と、低強度の不均一なフィルムが観察された。最も良い結果はTEMPO-酸化セルロースナノフィブリルを加えることにより得られ、これは、オリフィスの開口部で起こるせん断に対してウェブに十分高い粘度および湿潤強度を与え、かなり均一なフィルム構造とした。適切な押出しおよびフィルム特性を可能にするための添加剤として、他のバイオベースまたは合成ポリマーを使用することもできる。リファレンスフィルムおよびTEMPO-CNF強化フィルムの画像を図2および図3にそれぞれ示す。
【0041】
(実施例4)フィルムの特性
実施例1に記載した手順に従って調製したキャストしたフィルムを、酸素水蒸気透過特性および引張強さ、伸びおよび弾性係数等の力学的特性に関して評価した。
【0042】
酸素水蒸気透過特性を以下の表2にまとめる。
【0043】
【表2】
【0044】
力学的特性を以下の表3にまとめる。
【0045】
【表3】
【0046】
得られたデータに基づくと、フィルムにキャストした場合、酵素的にフィブリル化したセルロースは、流動化した繊維からキャストしたフィルムに匹敵する酸素水蒸気特性を示すことがわかった。その強度値は、より低いが、依然として十分な強度が提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】WO2011/004300
【特許文献2】WO2015/092146
【非特許文献】
【0048】
【非特許文献1】Zhu,J.Y.,SaboR.,LuoX.,Integratedproductionofnano-fibrillatedcelluloseandvellulosicbiofuelbyenzymaticfibrillationofwoodfibers,GreenChemistry,2011,13(5),pp.1339-1344.
図1
図2
図3