(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
共通の回転軸を中心として回転可能な入力部材及び出力部材を備え、前記入力部材から前記出力部材への正・逆いずれか一方向への回転が伝達され、前記出力部材から前記入力部材への回転は前記出力部材が空転して遮断される逆入力遮断装置であって、
前記入力部材及び前記出力部材は前記共通の回転軸上で軸方向に間隔をおいて配置されており、前記入力部材と前記出力部材との間には、板状の中間部材が配置され、前記中間部材には、軸方向に貫通すると共に径方向に延びるガイド溝が形成されており、
前記出力部材の外周面には、周方向他側を向く被係合面が形成され、
前記入力部材には、枢軸を中心にして回動可能なリンク部材が枢着され、
前記リンク部材には、前記ガイド溝を軸方向に貫通して外周面が前記出力部材の外周面と対向する係合軸、及び前記係合軸に固着されてこれと前記枢軸とを接続するリンク本体部が設けられており、
前記リンク部材は、前記係合軸が前記出力部材の前記被係合面と係合可能な作用位置と、前記係合軸が前記被係合面と係合することのない非作用位置との間で姿勢を変更自在であって、前記係合軸は、前記作用位置にあっては、前記共通の回転軸の周りを回転する前記出力部材の軌跡の内側に進入し、前記非作用位置にあっては、前記軌跡の外側に離隔する、ことを特徴とする逆入力遮断装置。
前記規制手段は前記中間部材に固着されて軸方向に起立した規制片であって、前記規制片は前記ガイド溝の周方向他側においてこれと隣接した位置に設けられている、請求項2に記載の逆入力遮断装置。
前記リンク部材及び前記被係合面は夫々周方向に間隔をおいて複数配設され、前記リンク部材の数は前記被係合面の数と同一若しくはそれより多い、請求項1乃至4のいずれかに記載の逆入力遮断装置。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、入力部材から出力部材への正・逆いずれか一方向への回転のみを伝達し、出力部材から入力部材への回転は出力軸を空転させて遮断する逆入力遮断装置の一例として、ローラー(ころ)の噛み込みを利用した形式のものが開示されている。特許文献1で開示された逆入力遮断装置は、入力部材と一体の入力円筒部材と、この入力円筒部材の内側に挿入された中実棒状の出力部材とを備えている。入力円筒部材の内周縁部には径方向内側に向かって開放された空間部が形成されている。空間部の径方向外側面は周方向片側に向かって径方向内側に傾斜したカム面となっており、従って、空間部は周方向片側に向かって狭くなる楔形状をなしている。空間部にはローラーが配設され、このローラーは空間部の周方向両側端に設置されたばね部材によって空間部の周方向中央に向かって常時付勢されている。
【0003】
特許文献1で開示された逆入力遮断装置の作動は以下のとおりである。即ち、入力部材が周方向片側に回転すると、ローラーはばね部材によるばね力に抗して空間部における上記楔の狭い側へ相対的に移動し、カム面と出力部材の外周面との間で噛み込み、入力円筒部材及び出力部材と一体となって回転する。つまり、入力部材が周方向片側に回転した際には、入力部材入力部材から出力部材への回転は伝達される。これに対し、出力部材が回転した際には、ローラーは出力部材との接触によって転動させられるものの、ローラーは空間部の周方向両側端に設置されたばね部材によって空間部内の中立位置、即ちローラーがカム面と出力部材の外周面との間で噛み込みを生じない位置で維持される。これにより、出力部材は空転することとなり、出力部材から入力部材へ回転が伝達されることはない。
【0004】
このような逆入力遮断装置は、例えば特許文献2に示されるような所謂排煙ダンパーの機構部品に適用することができる。排煙ダンパーは、ビル等の建物の内部に設置され、建物の内部において火災が発生した際に建物の内部で発生した煙を建物の外部へ排出するための装置である。排煙ダンパーは建物の外部へ連通する排煙口を閉塞可能な羽根を有しており、この羽根は排煙口を閉塞する閉塞位置と排煙口を開放する開放位置との間で回動自在となっている。羽根はトーションばねによって排煙口が開放させられる方向に常時付勢されており、閉塞位置から開放位置への開方向への回動はトーションばねによる自由落下により、開放位置から閉塞位置への閉方向への回動はモーターによって夫々行われる。このような場合に、クラッチの一種である逆入力遮断装置を利用すれば、簡単に動力伝達の制御が可能となって、例えば電磁クラッチにより制御する場合のように、電力を要することなく、モーターと羽根との間の動力の伝達様式を適宜断接することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1で開示された逆入力遮断装置にあっては、出力部材が回転するとローラーは出力部材の外周面と当接してこの面上を転動するため、換言すれば、出力部材とローラーとの係合は完全には解除されていないため、出力部材を回転させた際には不要な抵抗トルクを伴うこととなる。また、弾性体であるばね部材とローラーとを空間部内で適切に組み合わせる作業は煩雑である。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、出力部材を回転させた際に抵抗トルクを伴うことがなく組立容易な、新規且つ改良された逆入力遮断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、入力部材と出力部材との間に中間部材を配置し、かかる中間部材には径方向に延びるガイド溝を形成し、入力部材には枢軸を中心として回動可能なリンク部材を枢着し、リンク部材には上記ガイド溝を軸方向に貫通して外周面が出力部材の外周面と対向する係合軸を設け、リンク部材は、係合軸が出力部材の被係合面と係合可能な作用位置と、係合軸が被係合面と係合することのない非作用位置との間で姿勢を変更自在であって、リンク部材が作用位置にあるときは、係合軸は共通の回転軸の周りを回転する出力部材の軌跡の内側に進入し、リンク部材が非作用位置にあるときは、係合軸は前記軌跡の外側に離隔するようにすることで、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する逆入力遮断装置として、共通の回転軸を中心として回転可能な入力部材及び出力部材を備え、前記入力部材から前記出力部材への正・逆いずれか一方向への回転が伝達され、前記出力部材から前記入力部材への回転は前記出力部材が空転して遮断される逆入力遮断装置であって、
前記入力部材及び前記出力部材は前記共通の回転軸上で軸方向に間隔をおいて配置されており、前記入力部材と前記出力部材との間には、板状の中間部材が配置され、前記中間部材には、軸方向に貫通すると共に径方向に延びるガイド溝が形成されており、
前記出力部材の外周面には、周方向他側を向く被係合面が形成され、
前記入力部材には、枢軸を中心にして回動可能なリンク部材が枢着され、
前記リンク部材には、前記ガイド溝を軸方向に貫通して外周面が前記出力部材の外周面と対向する係合軸、及び前記係合軸に固着されてこれと前記枢軸とを接続するリンク本体部が設けられており、
前記リンク部材は、前記係合軸が前記出力部材の前記被係合面と係合可能な作用位置と、前記係合軸が前記被係合面と係合することのない非作用位置との間で姿勢を変更自在であって、前記係合軸は、前記作用位置にあっては、前記共通の回転軸の周りを回転する前記出力部材の軌跡の内側に進入し、前記非作用位置にあっては、前記軌跡の外側に離隔する、ことを特徴とする逆入力遮断装置が提供される。
【0010】
好ましくは、周方向に見て、前記枢軸が前記係合軸を超えて周方向他側へ移動することを規制する規制手段が設けられている。この場合には、前記規制手段は前記中間部材に固着されて軸方向に起立した規制片であって、前記規制片は前記ガイド溝の周方向他側においてこれと隣接した位置に設けられているようにすることができる。前記枢軸は前記入力部材に固着されているのがよい。前記リンク部材及び前記被係合面は夫々周方向に間隔をおいて複数配設され、前記リンク部材の数は前記被係合面の数と同一若しくはそれより多いのが好ましい。好適には、
少なくとも前記中間部材を収容するハウジングを備え、前記ハウジングと前記中間部材との間には波ばねが配置されており、前記中間部材には前記波ばねによる抵抗トルクが付与されている。前記波ばねと前記中間部材との間には環状の間座が配置されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の逆入力遮断装置にあっては、入力部材と出力部材との間に中間部材を配置し、かかる中間部材には径方向に延びるガイド溝を形成し、入力部材には枢軸を中心として回動可能なリンク部材を枢着し、リンク部材には上記ガイド溝を軸方向に貫通して外周面が出力部材の外周面と対向する係合軸を設ける。そして、リンク部材は、係合軸が出力部材の被係合面と係合可能な作用位置と、係合軸が被係合面と係合することのない非作用位置との間で姿勢を変更自在であって、係合軸は、上記作用位置にあっては、共通の回転軸の周りを回転する出力部材の軌跡の内側に進入し、上記非作用位置にあっては、上記出力部材の軌跡の外側に離隔するようにする。こうすることで、入力部材が周方向片側へ回転すると、リンク部材が作用位置に移動して係合軸は出力部材の外周面に形成された被係合面と係合し、入力部材が出力部材と一体となって回転する。そして、入力部材から出力部材への周方向片側への回転の伝達が終了すると、入力部材は周方向他側に回転させられ、リンク部材が非作用位置に移動して係合軸と出力部材の被係合面との係合は解除される。リンク部材が非作用位置にあるときは、係合軸は出力部材の回転半径の外側に位置するため、出力部材が回転してもリンク部材が連れ回りされることはなく、出力部材が回転する際の抵抗トルクは充分小さい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成された逆入力遮断装置の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0014】
図1及び
図2を参照して説明すると、本発明に従って構成された、全体を番号2で示す逆入力遮断装置は、いずれも適宜の合成樹脂により形成される、ハウジング4、入力部材6、出力部材8、及び中間部材10、及びリンク部材12を備えている。入力部材6及び出力部材8は共通の回転軸o上で軸方向に間隔をおいて配置されており、入力部材6と出力部材8との間に中間部材10が配置されており、中間部材10も共通の回転軸o上に配置されている。
図1等においては、容易に理解することができるように、入力部材6及び中間部材10にハッチングを、リンク部材12に薄墨を夫々付して示している。
【0015】
図1及び
図3を参照して説明すると、ハウジング4は円板形状の端板14と端板14の外周縁から軸方向に直線状に延びる筒状の外周壁16とを含むカップ形状であって、端板14と対向する軸方向端面は開放されている。端板14の中央には、後述する出力補助部材が挿通されてこれを回転可能に軸支する円形の貫通穴18が形成されている。外周壁16の内側には、断面が円形で比較的大径の第一の空間部20と、断面が円形で比較的小径の第二の空間部22とが同軸上に設けられており、第一の空間部20と第二の空間部22との境界部分には
図3(a)右図において左方を向いた円環形状の肩面24が設けられている。外周壁16の自由端縁部の内周面には円環形状の嵌合溝26が形成されており、ここにハウジング4の一部であるシールド板28が嵌め合わされることで、ハウジング4の内部が閉鎖される。シールド板28は入力部材6を囲繞する円環形状の板材であって、その外周面には上記嵌合溝26と嵌合する嵌合突条30が形成されている。
【0016】
図1及び
図4を参照して説明すると、入力部材6は円筒形状部32と、この円筒形状部32の外周面に固着されて径方向外方に突出する3個の扇形状部34とから構成されている。3個の扇形状部34は何れも同一形状であって円筒形状部32の軸方向全域に亘って延在しており、これらは周方向に等角度間隔をおいて配置されている。これにより、周方向に隣接する2つの扇形状部34の間には夫々、径方向外方及び軸方向が開放された周状空間部36が設けられることとなる。図示の実施形態においては、扇形状部34の軸方向端面には枢軸38が夫々固着されている。枢軸38の中心軸は扇形状部34の周方向中央であって且つその径方向内側端部に設けられている。枢軸38の断面は円形である。
【0017】
上述した入力部材6は入力補助部材40と組み合わされ、入力補助部材40を介してモーターの如き適宜の駆動源が連結される。入力補助部材40は全体的に円筒形状であって、その軸方向端面には、入力部材6の周状空間部36に嵌め合わされる扇形状の連結部42が固着されている。図示の実施形態においては、連結部42は周方向に等角度間隔をおいて3つ設けられている。入力補助部材40の外周面には軸方向に直線状に延在する長方形の平坦面43が形成されており、この平坦面43を介して駆動源は入力補助部材40の外周面に接続される。
【0018】
図1及び
図5を参照して説明すると、出力部材8は軸方向に所定の厚さを有する平板状部材であって、その外周面には、径方向外方に突出する被係合突出部44が周方向に等角度間隔をおいて6個形成されている。平面視(即ち
図5左図)においては、被係合突出部44の外周面46は円弧形状であって、全ての被係合突出部44の外周面46は、出力部材8の中心軸と同軸であって二点鎖線で示される共通の仮想円C1上に位置する。そして、夫々の被係合突出部44の周方向他側(
図5左図において反時計方向側)の側面には被係合面48が形成されている。被係合面48は円弧形状であって、被係合面48を一部とする仮想円C2(これについても
図5左図において二点鎖線で示す)の中心位置は、仮想円C1の径方向内側に位置している。そして、被係合面48の一方端は外周面46の周方向他側端に接続され、被係合面48の他方端は周方向他側に隣接する被係合突出部44の外周面46の周方向片側端に直線状に接続されている。出力部材8の中央には非円形の貫通穴50が形成されており、ここには軸状の出力補助部材52が連結される(
図2も参照されたい)。これにより、出力部材8は出力補助部材52を介して、例えば排煙ダンパーの羽根の如き従動部材に接続されることとなる。
【0019】
図1及び
図2と共に
図6を参照して説明すると、中間部材10は円板形状であって、中央には出力補助部材52が挿通される断面円形の貫通穴52が形成されている。中間部材10の径方向中間部には更に、軸方向に貫通すると共に径方向に延びるガイド溝54が周方向に等角度間隔をおいて3つ形成されている。ガイド溝54は径方向に直線状に延びており、その幅は、ここに挿通される後述するリンク部材12の係合軸の外径と対応する。図示の実施形態においては、夫々のガイド溝54の周方向他側(
図6左図において反時計方向側)には、これと隣接して軸方向に起立する規制片56が固着されている。規制片56の断面は円弧形状である。規制片56については後に更に言及する。
【0020】
図1及び
図2と共に
図7を参照して説明すると、リンク部材12は長円形で板状のリンク本体部58と、リンク本体部58の長手方向片端部に固着されて軸方向に突出する断面円形の係合軸60と、リンク本体部58の長手方向他端部に形成されて軸方向に貫通する断面円形の係合穴62とを備えている。図示の実施形態においては、リンク部材12は3個設けられており、3個のリンク部材12の夫々は、夫々の係合穴62に入力部材6の3つの枢軸38の夫々が挿通されて夫々の枢軸38に対して回転可能に軸支され、夫々の係合軸60は中間部材10の3つのガイド溝54を軸方向に貫通して出力部材8の外周面と対向する。
図8及び
図9を参照して説明すると、リンク部材12は、係合軸60が出力部材8の被係合面48と係合可能な作用位置(
図9に示す状態)と、係合軸60が被係合面48と係合することのない非作用位置(
図8に示す状態)との間で姿勢を変更自在である。係合軸60は、リンク部材12が作用位置にあるときは、共通の回転軸oの周りを回転する出力部材8の軌跡の内側に進入し、リンク部材12が非作用位置にあるときは、上記出力部材8の軌跡の外側に離隔する。ここで、「出力部材8の軌跡」とは、回転軸oの周りを回転する出力部材8の円形軌跡のうち、最も径の大きい円形軌跡のことを意味する。図示の実施形態においては、上述したとおり、出力部材8の被係合突出部44の外周面46は全て共通の仮想円C1上に位置し(
図5も参照されたい)、外周面46が回転軸oの周りを回転する出力部材8の円形軌跡のうち、最も径の大きい円形軌跡となることから、出力部材8の軌跡は仮想円C1と同一である。
【0021】
図1及び
図2を参照して説明を続けると、図示の実施形態における逆入力遮断装置2にあっては、円環形状の間座64及び波ばね66も配設されている。間座64は合成樹脂製であるが、波ばね66は金属製である。間座64及び波ばね66は共に入力部材6を囲繞し、シールド板28と中間部材10との間で、間座64が中間部材10の規制片56と、波ばね66がシールド板28と夫々当接するようにして軸方向に並列して配置されている。間座64及び波ばね66も軸方向に密接する。これにより、波ばね66とシールド板28との間の摩擦による抵抗トルクが、間座64を介して中間部材10に付与されることとなる。
【0022】
上述した各構成部品が所要とおりに組み合わされると、
図1のA−A断面図に示されるとおり、ハウジング4内で、入力部材6、中間部材10、間座64、及び波ばね66が第一の空間部20に、出力部材8が第二の空間部22に夫々収容される。リンク部材12は、リンク本体部58が第一の空間部20に位置し、係合軸60が第一の空間部20から第二の空間部22に向かって延びる。中間部材10はリンク部材12と肩面24によって軸方向に支持される。
【0023】
続いて、
図1に示す逆入力遮断装置の作動について、
図8及び
図9を比較参照して説明する。
図8に示す状態から、入力補助部材40を介して入力部材6がA−A断面図の左方向から見て時計方向(周方向片側)に回転すると、入力部材6に固着された枢軸38はB−B断面図において時計方向に移動する。このとき、リンク本体部58と枢軸38とが相対回転可能に接続されていると共に、リンク本体部58には中間部材10のガイド溝54に挿通された係合軸60が固着されていることに起因して、
図9のB−B断面図に示すとおり、リンク本体部58は枢軸38を軸として反時計方向に自転する。これにより、リンク本体部58に固着された係合軸60は中間部材10のガイド溝54に沿って径方向内側に移動して出力部材8の軌跡(図示の実施形態においては仮想円C1)の内側に進入し、リンク部材12は作用位置に位置することとなる。ここで、図示の実施形態においては、中間部材10には間座64を介して波ばね66によって抵抗トルクが付与されているため、係合軸60がガイド溝54に沿って径方向内側、つまり出力部材8の外周面に接近する方向に移動する間、中間部材10の姿勢は維持され、係合軸60は周方向に移動しない。係合軸60は、径方向内側に移動して出力部材8の外周面と当接した後、時計方向に移動する枢軸38によって中間部材10と共にB−B断面図において時計方向に連れ回りさせられる。このとき、中間部材10は上述した波ばね66による抵抗トルクに抗して回転する。そして、係合軸60が上記のとおりに移動すると、
図9のC−C断面図において係合軸60は反時計方向に移動するため、これが出力部材8の外周面に形成された被係合面48と係合し、出力部材8が一体回転することとなる。かくして、入力部材6から出力部材8への一方向への回転が伝達される。
【0024】
入力部材6から出力部材8への周方向片側への回転の伝達が終了すると、入力部材6は入力補助部材40を介して接続された駆動源によって周方向他側(A−A断面図の左方向から見て反時計方向)に所要程度回転させられる。入力部材6から出力部材8への周方向片側への回転の伝達が終了した直後の状態は
図9に示す状態であって、かかる状態から入力部材6が周方向他側へ回転させられると、
図9のB−B断面図において枢軸38は反時計方向に移動し、リンク部材12のリンク本体部58は枢軸38の周りを時計方向に自転すると共に、係合軸60は中間部材10のガイド溝54に沿って径方向外方へ移動して出力部材8の軌跡(図示の実施形態においては仮想円C1)の外側に離隔し、リンク部材12は非作用位置に位置することとなる。このときも、図示の実施形態においては、中間部材10には波ばね66による抵抗トルクが付されていることに起因して、リンク本体部58が枢軸38に対して自転する間、中間部材10の姿勢は保持される。入力部材6は、係合軸60が出力部材8の回転半径、即ち被係合突出部44の外周面46よりも径方向外方に離隔するまで周方向他側に回転させられる。そうすると、係合軸60と出力部材8との係合は完全に解除されて
図8に示す状態となり、その後に出力部材8が正逆いずれの方向に回転しても、出力部材8は係合軸60と係合することなく空転することとなる。かくして、出力部材8から入力部材6への回転は出力部材8が空転して遮断される。
【0025】
本発明の逆入力遮断装置にあっては、入力部材6と出力部材8との間に中間部材10を配置し、かかる中間部材10には径方向に延びるガイド溝54を形成し、入力部材6には枢軸38を中心として回動可能なリンク部材12を枢着し、リンク部材12には上記ガイド溝54を軸方向に貫通して外周面が出力部材8の外周面と対向する係合軸60を設ける。リンク部材12は、係合軸60が出力部材8の被係合面48と係合可能な作用位置と、係合軸60が被係合面48と係合することのない非作用位置との間で姿勢を変更自在であって、係合軸60は、上記作用位置にあっては、共通の回転軸oの周りを回転する出力部材8の軌跡の内側に進入し、上記非作用位置にあっては、上記出力部材8の軌跡の外側に離隔するようにする。こうすることで、入力部材6が周方向片側へ回転すると、リンク部材12が作用位置に移動して係合軸60は出力部材8の外周面に形成された被係合面48と係合し、入力部材6が出力部材8と一体となって回転する。そして、入力部材6から出力部材8への周方向片側への回転の伝達が終了すると、入力部材6は周方向他側に回転させられ、リンク部材12の係合軸60と出力部材8の被係合面48との係合が解除される。リンク部材12が非作用位置にあるときは、係合軸60は出力部材8の回転半径の外側に位置するため、出力部材8が回転してもリンク部材12が連れ回りされることはなく、出力部材8が回転する際の抵抗トルクは充分小さい。
【0026】
ここで、図示の実施形態においては、中間部材10の所要位置には軸方向に起立した規制片56が固着されていることに起因して、入力部材6から出力部材8への周方向片側への回転の伝達が終了した後に、入力部材6を周方向他側に回転させる回転量は所定量以上であれば任意であってよく、モーターの如き駆動源の制御を簡便化することが可能となる。これは以下の理由による。即ち、
図9に示す状態から入力部材6を周方向他側(A−A断面図の左方向から見て反時計方向)へ回転させると、上述したとおり、B−B断面図において枢軸38は反時計方向に移動し、リンク部材12のリンク本体部58は枢軸38の周りを時計方向に自転すると共に、係合軸60は中間部材10のガイド溝54に沿って径方向外方へ移動する。このとき、規制片56がガイド溝54の周方向他側においてこれと隣接して設けられていることに起因して、周方向に見て、枢軸38が係合軸60を超えて反時計方向に移動しようとすると、
図8のB−B断面図に示すとおり、リンク部材12のリンク本体部58が規制片56と干渉してリンク本体部58が枢軸38の周りを自転することが規制される。つまり、規制片56は、周方向に見て、枢軸38が係合軸60を超えて周方向他側へ移動することを規制する規制手段として作用する。これにより、周方向に見て、枢軸38が係合軸60を超えて反時計方向に移動しようとすると、枢軸38(つまり入力部材6)と、リンク本体部58(つまりリンク部材12)と、規制片56(つまり中間部材10)とは一体となって反時計方向に回転することとなる。入力部材6と、リンク部材12と、中間部材10とが一体となって反時計方向(つまり周方向他側)に回転可能な状態にあっては、係合軸60はガイド溝54中の径方向外側端に位置することとなり、リンク部材12の係合軸60は出力部材8から完全に離隔している。
【0027】
なお、規制片56が設けられていない場合には、入力部材6から出力部材8への周方向片側への回転の伝達が終了した後に入力部材6を周方向他側へ回転させる回転量は、
図9に示す状態から周方向に見て、枢軸38が係合軸60を超えない程度の所定量に制御する必要があり、モーターの如き駆動源に精密な制御が要求されることとなる。入力部材6が所定量を超えて周方向他側へ回転すると、入力部材6の周方向他側への回転に伴って、再度係合軸60がガイド溝54に沿って径方向内側へ移動してしまい、出力部材6の外周面と干渉してしまうためである。
【0028】
上述した
図1に示す実施形態においては、規制手段は中間部材10に固着された規制片56であって、入力部材6が周方向他側へ回転した際に、規制片56(中間部材10)がリンク部材12と干渉することで、枢軸38が係合軸60を超えて周方向他側へ移動することを規制していたが、本発明の第二の実施形態として
図10及び
図11に示すとおり、規制手段を入力部材6´に設けられた第一規制片56a´、及び中間部材10´に設けられた第二規制片56b´から構成されるようにして、枢軸38´が係合軸60´を超えて周方向他側へ移動しようとすると、入力部材6´と中間部材10´とが干渉するようにすることもできる。入力部材6´及び中間部材10´を除く他の部品の構成は
図1に示す本発明の第一の実施形態のものと同一で良い。更に、本発明の第三実施形態として
図12及び
図13に示すとおり、規制手段を入力部材6´´に固着された規制片56´´として、枢軸38´´が係合軸60´´を超えて周方向他側へ移動しようとすると、入力部材6´´とリンク部材12とが干渉するようにすることもできる。この場合には中間部材に規制片を設ける必要はない。本発明の第三実施形態においても入力部材6´´及び中間部材10´´を除く他の部品の構成は
図1に示す本発明の第一の実施形態のものと同一で良い。本発明の第二実施形態の
図10及び本発明の第三実施形態の
図12は本発明の第一実施形態の
図8のB−B断面図及びC−C断面図と対応する図であって、リンク部材の係合軸は出力部材の外周面から離隔した状態を示す図である。本発明の第二実施形態の
図11及び本発明の第三実施形態の
図13は本発明の第一の実施形の
図9のB−B断面図及びC−C断面図と対応する図であって、リンク部材の係合軸が出力部材の被係合面と係合した状態を示す図である。
【0029】
以上、本発明の逆入力遮断装置について、添付した図面を参照して詳述したが、本発明の逆入力遮断装置は上述した実施形態に限定されることはなく、種々の変形例が考えられる。例えば、上述した実施形態においては、入力部材に枢軸が固着されていると共にリンク部材に枢軸が挿通される係合穴が形成されていたが、これに替えて、リンク部材に枢軸を固着すると共に入力部材に枢軸が挿通される係合穴が形成されているようにしてもよい。
【解決手段】入力部材6と出力部材8との間に中間部材10を配置し、かかる中間部材10には径方向に延びるガイド溝54を形成し、入力部材6には枢軸38を中心として回動可能なリンク部材12を枢着し、リンク部材12には上記ガイド溝54を軸方向に貫通して外周面が出力部材8の外周面と対向する係合軸60を設け、リンク部材12は、係合軸60が出力部材8の被係合面48と係合可能な作用位置と、係合軸60が被係合面48と係合することのない非作用位置との間で姿勢を変更自在であって、リンク部材12が作用位置にあるときは、係合軸60は共通の回転軸oの周りを回転する出力部材8の軌跡の内側に進入し、リンク部材12が非作用位置にあるときは、係合軸60は前記軌跡の外側に離隔するようにする。