特許第6755424号(P6755424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6755424
(24)【登録日】2020年8月27日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20200907BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20200907BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20200907BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20200907BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20200907BHJP
【FI】
   H01M8/04 J
   H01M8/12 101
   H01M8/0662
   H01M8/249
   H01M8/04014
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-32090(P2020-32090)
(22)【出願日】2020年2月27日
【審査請求日】2020年2月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 俊之輔
(72)【発明者】
【氏名】川端 康晴
(72)【発明者】
【氏名】波多江 徹
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−184504(JP,A)
【文献】 特表2010−518559(JP,A)
【文献】 特表2010−508633(JP,A)
【文献】 特開2001−313053(JP,A)
【文献】 特開2018−137080(JP,A)
【文献】 特開平11−238520(JP,A)
【文献】 特開2019−169419(JP,A)
【文献】 特開2000−348742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極の燃料ガスと空気極の酸化剤ガスにより発電し、前記燃料極からアノードオフガスが排出され、前記空気極からカソードオフガスが排出される燃料電池と、
前記アノードオフガスの少なくとも一部を前記燃料電池での発電に供するアノードオフガス再利用路と、
前記アノードオフガス再利用路に設けられ、前記アノードオフガスと前記空気極へ向かう前記酸化剤ガスとで熱交換を行う空気予熱部と、
前記カソードオフガスの分岐された一部と前記燃料極へ向かう燃料ガスとで熱交換を行う燃料熱交換部と、
前記アノードオフガスの一部と前記カソードオフガスの分岐された他部が供給され、内部で前記アノードオフガスを燃焼させる燃焼部と、
前記燃焼部から排出される燃焼排ガスと前記空気予熱部を経た前記酸化剤ガスとで熱交換を行う空気熱交換部と、
を備えた燃料電池システム。
【請求項2】
前記アノードオフガス再利用路に設けられ、前記空気予熱部よりも下流側に前記アノードオフガスから水または二酸化炭素の少なくとも一方を除去する燃料再生部、
を備えた、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記アノードオフガス再利用路は、前記燃料電池から送出されるアノードオフガスを前記燃料電池へ循環させる循環路を含んでいる、請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記循環路は、前記アノードオフガスについて前記空気予熱部よりも下流側で前記燃料ガスと合流される、請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃料電池は、前記燃料ガスが供給されて発電する第1燃料電池と、前記第1燃料電池からのアノードオフガスが前記アノードオフガス再利用路経由で供給されて発電する第2燃料電池を含む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記空気予熱部は、前記第1燃料電池よりも下流側、前記第2燃料電池よりも上流側に設けられている、請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記燃料熱交換部では、前記第2燃料電池から送出されたカソードオフガスと前記燃料極へ向かう燃料ガスとで熱交換を行う、
請求項5または請求項6に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高温で作動する燃料電池システムにおいて、熱を有効利用することが行われている。例えば、特許文献1には、水分回収装置において、貯水部を挟んで上流側のアノードオフガスと下流側のアノードオフガスで熱交換が行われる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−199979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、アノードオフガスを再利用して発電を行う高効率の燃料電池システムが開発されているが、当該燃料電池システムにおいては、発電効率を高めるためには、発電時に発生する熱のさらなる有効利用が求められている。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して成されたものであり、燃料電池システムにおいて、システム内で熱を有効利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る燃料電池システムは、燃料極の燃料ガスと空気極の酸化剤ガスにより発電し、前記燃料極からアノードオフガスが排出され、前記空気極からカソードオフガスが排出される燃料電池と、前記アノードオフガスの少なくとも一部を前記燃料電池での発電に供するアノードオフガス再利用路と、前記アノードオフガス再利用路に設けられ、前記アノードオフガスと前記空気極へ向かう前記酸化剤ガスとで熱交換を行う空気予熱部と、前記カソードオフガスの分岐された一部と前記燃料極へ向かう燃料ガスとで熱交換を行う燃料熱交換部と、前記アノードオフガスの一部と前記カソードオフガスの分岐された他部が供給され、内部で前記アノードオフガスを燃焼させる燃焼部と、前記燃焼部から排出される燃焼排ガスと前記空気予熱部を経た前記酸化剤ガスとで熱交換を行う空気熱交換部と、を備えている。
【0007】
請求項1に係る燃料電池システムでは、アノードオフガス再利用路に設けられた空気予熱部において、アノードオフガスと空気極へ向かう酸化剤ガスとで熱交換が行われる。また、燃料熱交換部において、カソードオフガスと燃料極へ向かう燃料ガスとで熱交換が行われる。このように、アノードオフガス、カソードオフガスの各々が、燃料電池へ向かう流体と熱交換するので、熱を有効利用することができる。
【0008】
なお、ここでの燃料ガスは、燃料極へ向かうガスであり、改質後の燃料ガスだけでなく、改質前の原料ガスを含んでいる。
【0009】
請求項1に係る燃料電池システムは、前記アノードオフガスの一部と前記カソードオフガスの他部が供給され、内部で前記アノードオフガスを燃焼させる燃焼部と、前記燃焼部から排出される燃焼排ガスと前記空気予熱部を経た前記酸化剤ガスとで熱交換を行う空気熱交換部と、を備えている。
【0010】
請求項1に係る燃料電池システムは、アノードオフガスの一部とカソードオフガスの他部が供給され、内部でアノードオフガスを燃焼させる燃焼部を有している。そして、空気熱交換部において、燃焼部から排出される燃焼排ガスと空気予熱部を経た酸化剤ガスとで熱交換が行われる。このように、燃焼排ガスと空気予熱部を経た酸化剤ガスとで熱交換が行われるので、高温の燃焼排ガスが保有する熱を、昇温が必要な酸化剤ガスに熱交換で授受することができ、システム内で熱を有効利用することができる。
【0011】
請求項2に係る燃料電池システムは、前記アノードオフガス再利用路に設けられ、前記空気予熱部よりも下流側に前記アノードオフガスから水または二酸化炭素の少なくとも一方を除去する燃料再生部、を備えている。
【0012】
請求項2に係る燃料電池システムによれば、燃料再生部によりアノードオフガスから水または二酸化炭素の少なくとも一方が除去される。水や二酸化炭素は、発電反応に寄与せず、燃料極ガスを希釈して発電反応を滞らせる成分となっているので、除去することにより、アノードオフガスを再利用する燃料電池での発電効率を高めることができる。また、燃料再生部は、空気予熱部よりも下流側に配置されているので、燃料再生部において温度低下する前のアノードオフガスと酸化剤ガスとで熱交換を行い、システム内で熱を有効利用することができる。
【0013】
請求項3に係る燃料電池システムは、前記アノードオフガス再利用路が、前記燃料電池から送出されるアノードオフガスを前記燃料電池へ循環させる循環路を含んでいる。
【0014】
請求項3に係る燃料電池システムによれば、アノードオフガスを循環させて発電に再利用することにより、発電効率を高めることができる。
【0015】
請求項4に係る燃料電池システムは、前記循環路は、前記アノードオフガスについて前記空気予熱部よりも下流側で前記燃料ガスと合流される。
【0016】
請求項4に係る燃料電池システムでは、アノードオフガスは、燃料ガスと合流する前に酸化剤ガスと熱交換するので、比較的流量の多い酸化剤ガスを効果的に加熱することができる。
【0017】
請求項5に係る燃料電池システムは、前記燃料電池は、前記燃料ガスが供給されて発電する第1燃料電池と、前記第1燃料電池からのアノードオフガスが前記アノードオフガス再利用路経由で供給されて発電する第2燃料電池を含む。
【0018】
請求項5に係る燃料電池システムによれば、第1燃料電池からのアノードオフガスを第2燃料電池で発電に再利用することにより、発電効率を高めることができる。
【0019】
請求項6に係る燃料電池システムは、前記空気予熱部は、前記第1燃料電池よりも下流側、前記第2燃料電池よりも上流側に設けられている。
【0020】
請求項6に係る燃料電池システムによれば、燃料再生を効果的に行うことができる。
【0021】
請求項7に係る燃料電池システムは、前記燃料熱交換部では、前記第2燃料電池から送出されたカソードオフガスと前記燃料極へ向かう燃料ガスとで熱交換を行う。
【0022】
請求項7に係る燃料電池システムによれば、カソードオフガスの熱を有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る燃料電池システムによれば、燃料電池システムにおいて、システム内で発電時に発生する熱を、システム内部での熱交換を促進することで、有効利用することができる。これにより、発電システムの効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図2】第2実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態について詳細に説明する。図1には、本発明の実施形態に係る燃料電池システム10Aの主要構成の概略が示されている。本発明の実施形態に係る燃料電池システム10Aは、主要な構成として、原料熱交換部12、改質部14、第1燃料電池セルスタック16、第2燃料電池セルスタック18、燃焼部20、燃料再生部22、原料ガス供給ブロワ24、空気供給ブロワ28、空気予熱部32、空気熱交換部34を備えている。
【0026】
原料熱交換部12には、原料ガス供給管P1の一端が接続されており、原料ガス供給管P1から原料熱交換部12へ、原料ガスが供給される。原料熱交換部12では、後述する第2カソード18Bからのカソードオフガスにより原料ガスが加熱される。原料熱交換部12で加熱された原料ガスは、配管P3を経て改質部14へ供給される。
【0027】
なお、本実施形態では、原料ガスとしてメタンを用いるが、改質が可能なガスであれば特に限定されず、炭化水素燃料を用いることができる。炭化水素燃料としては、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、石炭改質ガス、低級炭化水素ガスなどが例示される。低級炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン等の炭素数4以下の低級炭化水素が挙げられ、本実施形態で用いるメタンが好ましい。なお、炭化水素燃料としては、上述した低級炭化水素ガスを混合したものであってもよく、上述した低級炭化水素ガスは天然ガス、都市ガス、LPガス等のガスであってもよい。また、バイオガスを用いてもよい。
【0028】
改質部14では、原料ガスを改質し、水素及び一酸化炭素を含む燃料ガスを生成する。改質部14は、第1燃料電池セルスタック16の第1アノード(燃料極)16Aと接続されている。改質部14で生成された燃料ガスは、燃料ガス管P4を介して第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aに供給される。
【0029】
第1燃料電池セルスタック16は固体酸化物形の燃料電池セルスタックであり、複数の燃料電池セルを有している。第1燃料電池セルスタック16は本発明における燃料電池(第1燃料電池)の一例であり、本実施形態では、作動温度が650℃程度とされている。個々の燃料電池セルは、電解質層と、当該電解質層の表裏面にそれぞれ積層された第1アノード16A、及び第1カソード(空気極)16Bと、を有している。
【0030】
なお、第2燃料電池セルスタック18についての基本構成は、第1燃料電池セルスタック16と同様であり、第1アノード16Aに対応する第2アノード18A、及び第1カソード16Bに対応する第2カソード18Bを有している。
【0031】
第1燃料電池セルスタック16の第1カソード16Bには、空気供給管P5(P5C)の一端が接続されており、空気供給管P5(P5A)の他端に接続された空気供給ブロワ28により、後述する空気予熱部32、空気熱交換部34を経た空気が供給される。第1カソード16Bでは、下記(1)式に示すように、空気中の酸素と電子とが反応して酸素イオンが生成される。生成された酸素イオンは電解質層を通って第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aに到達する。
【0032】
(空気極反応)
1/2O+2e →O2− …(1)
【0033】
また、第1カソード16Bには、第1カソード16Bから排出されるカソードオフガスを第2燃料電池セルスタック18の第2カソード18Bへ案内するカソードオフガス管P6が接続されている。
【0034】
一方、第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aでは、下記(2)式及び(3)式に示すように、電解質層を通ってきた酸素イオンが燃料ガス中の水素及び一酸化炭素と反応し、水(水蒸気)及び二酸化炭素と電子が生成される。第1アノード16Aで生成された電子が第1アノード16Aから外部回路を通って第1カソード16Bに移動することで、各燃料電池セルにおいて発電される。また、各燃料電池セルは、発電時に発熱する。
【0035】
(燃料極反応)
+O2− →HO+2e …(2)
CO+O2− →CO+2e …(3)
【0036】
第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aにはアノードオフガス管P7の一端が接続されており、アノードオフガス管P7には、第1アノード16Aからアノードオフガスが排出される。アノードオフガスには、未反応の水素、未反応の一酸化炭素、二酸化炭素及び水蒸気等が含まれている。
【0037】
なお、本発明の燃料電池としては、固体酸化物形の燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)に限られるものではなく、他の燃料電池、例えば溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)であってもよい。
【0038】
アノードオフガス管P7の他端は、燃料再生部22と接続されている。燃料再生部22は、アノードオフガスから、二酸化炭素、水の少なくとも一方を除去する。燃料再生部22としては、例えば、凝縮器、水蒸気分離膜、二酸化炭素分離膜、二酸化炭素吸収剤等を用いることができる。
【0039】
アノードオフガスは、アノードオフガス管P7に送出され、空気予熱部32を経て燃料再生部22へ供給される。空気予熱部32では、空気供給管P5から流入した空気と、第1アノード18Aから送出されてアノードオフガス管P7を経て流入したアノードオフガスとで熱交換が行われる。熱交換により、空気が加熱され、アノードオフガスが冷却される。
【0040】
燃料再生部22では、二酸化炭素及び水の少なくとも一方の濃度が低減される。二酸化炭素及び水の少なくとも一方の濃度が低減されたアノードオフガスは、再生燃料ガスとして、再生燃料ガス管P9へ送出される。再生燃料ガス管P9は、第2燃料電池セルスタック18のアノード18Aと接続されており、再生燃料ガスは、再生燃料ガス管P9を経て、第2燃料電池セルスタック18の第2アノード18Aに供給される。
【0041】
本実施形態の燃料電池システム10Aは、第1燃料電池セルスタック16で使用された燃料であるアノードオフガスが再生されて、燃料ガスとして第2燃料電池セルスタック18で再利用される多段式の燃料電池システムとなっている。
【0042】
第2燃料電池セルスタック18の第2アノード18A及び第2カソード18Bでは、第1燃料電池セルスタック16と同様の反応により発電が行われる。
【0043】
第2アノード18Aには、アノードオフガス管P10の一端が接続され、アノードオフガス管P10の他端は燃焼部20に接続されている。第2アノード18Aから排出されたアノードオフガスは、アノードオフガス管P10を経て燃焼部20へ供給される。
【0044】
燃焼部20は、改質部14と隣接されており、燃焼部20の燃焼熱が改質部14へ供給される。
【0045】
第2カソード18Bには、カソードオフガス管P11の一端が接続され、カソードオフガス管P11は、分岐部B1で熱交換用オフガス管P11Aと燃焼用オフガス管P11Bに分岐されている。熱交換用オフガス管P11Aは、原料熱交換部12と接続され、燃焼用オフガス管P11Bは、燃焼部20と接続されている。
【0046】
第2カソード18Bから排出されたカソードオフガスは、分岐部B1で分岐され、分岐された一方は、熱交換用オフガス管P11Aを経て原料熱交換部12へ供給される。分岐された他方は、燃焼用オフガス管P11Bを経て燃焼部20へ供給される。
【0047】
燃焼部20からは、燃焼排ガスが送出される。燃焼排ガスは、燃焼排ガス管P12内を流通し、空気熱交換部34での熱交換を経て排出される。空気熱交換部34では、空気予熱部32で予熱された空気が空気供給管P5Bを経て空気熱交換部34へ流入し更に加熱される。また、燃焼排ガス管P12を経て流入した燃焼排ガスが冷却される。空気熱交換部34で加熱された空気は、第1カソード18Bへ供給される。
【0048】
次に、本実施形態の燃料電池システム10Aの動作について説明する。
【0049】
燃料電池システム10Aにおいては、原料ガス供給ブロワ24によって、原料ガス供給管P1へ原料ガスが送出される。送出された原料ガスは、原料熱交換部12で加熱され、配管P3を経て改質部14へ供給される。
【0050】
改質部14へは、不図示の水蒸気供給管から水蒸気も供給され、原料ガスが改質反応により改質され、水素および一酸化炭素を含む燃料ガスが生成される。燃料ガスは燃料ガス管P4を介して第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aに供給される。
【0051】
第1燃料電池セルスタック16の第1カソード16Bには、空気予熱部32及び空気熱交換部34で熱交換により加熱された空気が、空気供給管P5(P5A、P5B、P5C)を経て供給される。これにより、第1燃料電池セルスタック16では、前述の反応により発電が行われる。この発電に伴い燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aからは、アノードオフガスが排出される。また、第1カソード16Bからは、カソードオフガスが排出される。カソードオフガスは、カソードオフガス管P6を通って第2燃料電池セルスタック18の第2カソード18Bへ供給される。
【0052】
第1アノード16Aから排出されたアノードオフガスは、アノードオフガス管P7に導かれ、空気予熱部32へ流入し、空気との熱交換後に燃料再生部22へ供給される。燃料再生部22では、アノードオフガスから、二酸化炭素、水の少なくとも一方が除去され、再生燃料ガスが生成される。再生燃料ガスは、再生燃料ガス管P9へ送出され、第2燃料電池セルスタック18の第2アノード18Aへ供給される。
【0053】
第2燃料電池セルスタック18では、前述の反応により発電が行われる。第2アノード18Aからアノードオフガスが排出され、第2カソード18Bからカソードオフガスが排出される。第2アノード18Aから排出されたアノードオフガスは、アノードオフガス管P10を経て燃焼部20へ供給される。第2カソード18Bから排出されたカソードオフガスは、分岐部B1で分岐され、分岐された一方は、熱交換用オフガス管P11Aを経て原料熱交換部12へ供給される。原料熱交換部12では、熱交換により、原料ガスが加熱され、カソードオフガスが冷却される。分岐された他方は、燃焼用オフガス管P11Bを経て燃焼部20へ供給され、アノードオフガスの燃焼に供される。
【0054】
燃焼部20から排出された燃焼排ガスは、空気熱交換部34へ送出され、空気予熱部32で予熱された空気との熱交換が行われる。空気熱交換部34では、空気が加熱され、燃焼排ガスが冷却される。空気熱交換部34で加熱された空気は、第1カソード18Bへ供給される。
【0055】
本実施形態の燃料電池システム10Aでは、アノードオフガス管P7に設けられた空気予熱部32において、アノードオフガスと空気とで熱交換が行われる。また、原料熱交換部12において、カソードオフガスと原料ガスとで熱交換が行われる。さらに、空気熱交換部34において、燃焼部20から排出される燃焼排ガスと空気予熱部32を経た空気とで熱交換が行われる。このように、アノードオフガス、カソードオフガスの各々が、第1燃料電池セルスタック16または第2燃料電池セルスタック18へ向かう流体と熱交換するので、システム内における熱を有効利用することができる。
【0056】
また、空気は、燃焼排ガスとの熱交換よりも上流側でアノードオフガスと熱交換するので、燃料再生部22へ向かうアノードオフガスを、水の凝縮温度や膜の作動温度まで、効果的に冷却することができる。
【0057】
また、本実施形態では、燃料再生部22で、アノードオフガス中の水及び二酸化炭素の少なくとも一方が除去されて再生燃料ガスが第2燃料電池セルスタック18での発電に供されるので、第2燃料電池セルスタック18での発電効率を高くすることができる。
【0058】
また、カソードオフガス管P11は、分岐部B1で熱交換用オフガス管P11Aと燃焼用オフガス管P11Bに分岐されているので、カソードオフガスについて、圧力損失を少なくすることができる。これにより、空気供給ブロワ28の出力を下げることができ、消費電力を抑制することができる。
【0059】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0060】
図2には、本発明の第2実施形態に係る燃料電池システム10Bが示されている。燃料電池システム10Bは、第1実施形態で説明した燃料電池システム10Aと比較して、第2燃料電池セルスタック18を有していない点が異なっている。
【0061】
第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aにはアノードオフガス管P10の一端が接続されており、アノードオフガス管P10には、第1アノード16Aからアノードオフガスが排出される。アノードオフガス管P10は、分岐部B2で循環用オフガス管P10Aと燃焼用オフガス管P10Bに分岐されている。循環用オフガス管P10Aは、空気予熱部32を経て燃料再生部22と接続されている。燃焼用オフガス管P10Bは、燃焼部20と接続されている。
【0062】
燃料再生部22の下流側(出口側)には、再生燃料ガス管P9の一端が接続されており、再生燃料ガス管P9の他端は、原料ガス供給管P1に接続されている。燃料再生部22から再生燃料ガス管P9へ再生燃料ガスが送出される。再生燃料ガス管P9には、ガス供給ブロワ25が設けられており、再生燃料ガスを原料ガス供給管P1と合流させる。
【0063】
本実施形態の燃料電池システム10Bは、第1燃料電池セルスタック16で使用された燃料であるアノードオフガスが再生されて、再度燃料ガスとして第1燃料電池セルスタック16で再利用される循環式の燃料電池システムとなっている。
【0064】
第1カソード16Bには、カソードオフガス管P11の一端が接続されており、カソードオフガス管P11には、第1カソード16Bからカソードオフガスが排出される。カソードオフガス管P11は、分岐部B1で熱交換用オフガス管P11Aと燃焼用オフガス管P11Bに分岐されている。熱交換用オフガス管P11Aは、原料熱交換部12と接続され、燃焼用オフガス管P11Bは、燃焼部20と接続されている。
【0065】
次に、本実施形態の燃料電池システム10Bの動作について説明する。
【0066】
第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aから排出されたアノードオフガスは、分岐部B2で分流れ、分流の一方は、循環用オフガス管P10Aに導かれ、空気予熱部32へ流入し、空気との熱交換後に燃料再生部22へ供給される。燃料再生部22では、アノードオフガスから、二酸化炭素、水の少なくとも一方が除去され、再生燃料ガスが生成される。再生燃料ガスは、再生燃料ガス管P9へ送出され、原料ガス供給管P1へ合流し、原料ガスと共に原料熱交換部12、改質部14を経て、第1燃料電池セルスタック16での発電に供される。
【0067】
分流の他方は、燃焼用オフガス管P10Bを経て燃焼部20へ供給される。
【0068】
第1カソード16Bから排出されたカソードオフガスは、分岐部B1で分岐され、分岐された一方は、熱交換用オフガス管P11Aを経て原料熱交換部12へ供給される。原料熱交換部12では、熱交換により、原料ガスが加熱され、カソードオフガスが冷却される。分岐された他方は、燃焼用オフガス管P11Bを経て燃焼部20へ供給され、アノードオフガスの燃焼に供される。
【0069】
本実施形態の燃料電池システム10Bでは、循環用オフガス管P10Aに設けられた空気予熱部32において、アノードオフガスと空気とで熱交換が行われる。また、原料熱交換部12において、カソードオフガスと原料ガスとで熱交換が行われる。さらに、空気熱交換部34において、燃焼部20から排出される燃焼排ガスと空気予熱部32を経た空気とで熱交換が行われる。このように、アノードオフガス、カソードオフガスの各々が、第1燃料電池セルスタック16へ向かう流体と熱交換するので、システム内における熱を有効利用することができる。
【0070】
また、空気は、燃焼排ガスとの熱交換よりも上流側でアノードオフガスと熱交換するので、燃料再生部22へ向かうアノードオフガスを、水の凝縮温度や膜の作動温度まで、効果的に冷却することができる。
【0071】
また、本実施形態では、燃料再生部22で、アノードオフガス中の水及び二酸化炭素の少なくとも一方が除去されて再生燃料ガスが第1燃料電池セルスタック16での発電に再度供給されるので、第1燃料電池セルスタック16での発電効率を高くすることができる。
【0072】
なお、第1、第2実施形態では、改質部14で原料ガスの改質が行われ、改質後の燃料ガスが第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aへ供給される例について説明したが、原料ガスの改質は、第1アノード16Aで行われてもよい。すなわち、改質部14を備えず、原料ガス供給管P1を直接第1アノード16Aへ接続して、原料ガスを第1アノード16Aへ供給し、改質部を兼ねた第1アノード16Aで改質を行ってもよい。
【符号の説明】
【0073】
10A、10B 燃料電池システム
12 原料熱交換部(燃料熱交換部)
14 改質部
16 第1燃料電池セルスタック(燃料電池)
16A 第1アノード(燃料極)
16B 第1カソード(空気極)
18 第2燃料電池セルスタック(燃料電池)
18A 第2アノード(燃料極)
18B 第2カソード(空気極)
20 燃焼部
22 燃料再生部
32 空気予熱部
34 空気熱交換部
P7 アノードオフガス管(アノードオフガス再利用路)
P9 再生燃料ガス管(アノードオフガス再利用路)
P10A 循環用オフガス管(アノードオフガス再利用路)
【要約】
【課題】燃料電池システムにおいて、システム内で発電時に発生する熱を、内部で有効利用することで、発電システムの効率を向上させる。
【解決手段】アノードオフガスを第2燃料電池セルスタックでの発電に供するアノードオフガス管P7を有し、アノードオフガス管P7に設けられた空気予熱部32では、アノードオフガスと第1燃料電池セルスタック16の第1カソード16Bへ向かう空気とで熱交換が行われる。原料熱交換部12では、カソードオフガスと原料ガスとで熱交換が行われる。
【選択図】図1
図1
図2