(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
三重項−三重項消滅過程を示す組み合わせである有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)が深共晶溶媒(C)中に溶解および/または分散されていることを特徴とする光波長変換要素。
前記深共晶溶媒(C)は、常温(25℃)で固体の非金属ハロゲン塩と、常温(25℃)で固体又は液体の水素結合ドナーとの混合物であって、常温(25℃)で液体の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の光波長変換要素。
光をより短い波長の光に変換する光アップコンバージョンフィルターであって、請求項1又は2に記載の光波長変換要素と、セルとを備え、前記光波長変換要素が、前記セル中に封入されていることを特徴とする光アップコンバージョンフィルター。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明の光波長変換要素は、三重項−三重項消滅過程を示す組み合わせである有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)が深共晶溶媒(C)中に溶解および/または分散されている。
【0023】
本実施形態に係る光アップコンバージョンが有する、光波長変換要素が含有する前記有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)としては、その組み合わせがTTA過程を示す(TTA過程に基づいて発光する)ものであれば、制限なく用いることができる。前記有機光増感分子(A)の吸光波長、および前記有機発光分子(B)の発光波長は、太陽光の波長範囲内から、制限なく選択することができる。例を挙げると、可視〜近赤外域の光をアップコンバージョンする態様の光波長変換要素においては、前記有機光増感分子(A)として可視〜近赤外域に光吸収帯を有するπ共役分子を用いることができ、前記有機発光分子(B)として可視〜近赤外域に発光帯を有するπ共役分子を用いることができる。前記有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)としては、芳香族π電子共役系化合物、特に多環芳香族π電子共役系化合物等、および、例えばS.Baluschev,et al.,New Journal of Physics,vol.10,p.013007−1〜013007−12,2008に記載されている化合物等を含め、低分子や高分子を広く用いることができる。
【0024】
前記有機光増感分子(A)としては、太陽光の波長範囲内に吸収極大波長を有するものであれば制限されなく使用できるが、通常は200〜1000nmの範囲内に吸収極大波長を有するものが使用される。前記有機光増感分子(A)として、500〜700nmの範囲内に吸収極大波長を有するものを使用してもよい。これにより、一般的な太陽電池や水素発生光触媒等の光−二次エネルギー変換要素では利用されない比較的長い波長の光を、一般的な光−二次エネルギー変換要素に利用される比較的短い波長の光に変換できるので、太陽光に含まれる広範な波長範囲の光を光−二次エネルギー変換要素で有効に利用することが可能となる。また、前記有機光増感分子(A)として、250〜499nmの範囲内に吸収極大波長を有するものを使用してもよい。これにより、青色領域、紫色領域、および紫外線領域の波長の光を有効に利用することが可能となる。
【0025】
前記有機光増感分子(A)としては、紫外領域から赤外領域までの範囲に光吸収を有するものであれば、これまでに色素と呼ばれていない分子種でも使用できる。前記有機光増感分子(A)としては、例えば、アセナフテン誘導体、アセトフェノン誘導体、アントラセン誘導体、ジフェニルアセチレン誘導体、アクリダン誘導体、アクリジン誘導体、アクリドン誘導体、チオアクリドン誘導体、アンゲリシン誘導体、アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、アザフルオレン誘導体、アズレン誘導体、ベンジル誘導体、カルバゾール誘導体、コロネン誘導体、スマネン誘導体、ビフェニレン誘導体、フルオレン誘導体、ペリレン誘導体、フェナントレン誘導体、フェナントロリン誘導体、フェナジン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ピレン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ビアセチル誘導体、ビアントラニル誘導体、フラーレン誘導体、グラフェン誘導体、カロテン誘導体、クロロフィル誘導体、クリセン誘導体、シンノリン誘導体、クマリン誘導体、クルクミン誘導体、ダンシルアミド誘導体、フラボン誘導体、フルオレノン誘導体、フルオレセイン誘導体、ヘリセン誘導体、インデン誘導体、ルミクロム誘導体、ルミフラビン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ペリフランテン誘導体、フェノール誘導体、フェノチアジン誘導体、フェノキサジン誘導体、フタラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、ピセン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポルフィセン誘導体、ヘミポルフィセン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、プソラレン誘導体、アンゲリシン誘導体、プリン誘導体、ピレン誘導体、ピロメテン誘導体、ピリジルケトン誘導体、フェニルケトン誘導体、ピリジルケトン誘導体、チエニルケトン誘導体、フラニルケトン誘導体、キナゾリン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、レチナール誘導体、レチノール誘導体、ローダミン誘導体、リボフラビン誘導体、ルブレン誘導体、スクアリン誘導体、スチルベン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、アントラキノン誘導体、テトラセンキノン誘導体、ペンタセンキノン誘導体、チオホスゲン誘導体、インジゴ誘導体、チオインゾゴ誘導体、チオキサンテン誘導体、チミン誘導体、トリフェニレン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、トリアリール誘導体、トリプトファン誘導体、ウラシル誘導体、キサンテン誘導体、フェロセン誘導体、アズレン誘導体、ビアセチル誘導体、ターフェニル誘導体、ターフラン誘導体、ターチオフェン誘導体、オリゴアリール誘導体、フラーレン誘導体、共役ポリエン誘導体、含14族元素縮合多環芳香族化合物誘導体、縮合多環複素芳香族化合物誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0026】
前記有機光増感分子(A)としては、具体的には、金属ポルフィリン類(ポルフィリン類の金属錯体);金属テトラアザポルフィリン類;金属フタロシアニン類;3,5−ジメチル−ボロンジピロメテンのヨウ素誘導体;3,5−ジメチル−8−フェニルボロンジピロメテンのヨウ素誘導体等のようなボロンジピロメテン類;サレン金属錯体等のようなシッフ塩基金属錯体類;ルビジウム−ビピリジン錯体やイリジウム−フェナントロリン錯体等の金属ビピリジン錯体;金属フェナントロリン錯体;N−アルキルナフタレンジイミド等のナフタレンジイミド類;N−メチルアクリドンやN−ブチル−2−クロロアクリドン等のようなアクリドン類;2,4−ジエチルチオキサントン等のようなチオキサントン類、キサントン類、キサンテン類;アクリジンイエロー等のようなアクリジン類;クマリン6やクマリン314等のようなクマリン類;2,3−ブタンジオン等のようなビアセチル類;9,10−ジブロモアントラセンや9,9’−ビアントリル等のようなアントラセン類;ビフラン、ビチオフェン、ビス(ベンゾオキサゾリル)チオフェン等のようなオリゴアリール類;クリセンやフェナントレンあるいはその誘導体等のような縮合多環複素芳香族化合物類等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。前記金属ポルフィリン類および金属フタロシアニン類に含まれる金属原子としては、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Zn、Cu等を用いることができる。前記金属テトラアザポルフィリン類としては、後述の一般式(5)における5,10,15,20位の炭素原子及びそれに結合したR
8を窒素原子に置き換えた構造の金属テトラアザポルフィリン類が挙げられる。
【0027】
前記有機光増感分子(A)の例のうち、500〜700nmの範囲内に吸収極大波長を有し、その構造中に金属を含む有機光増感分子(A)の例としては、下記一般式(5)
【0029】
(式中、R
7はそれぞれ、水素原子を含む任意の置換基を表し、R
7は同じでも異なっていてもよく、互いに隣接する2つのR
7が互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよく、R
8はそれぞれ、水素原子を含む任意の置換基を有するアリール基を表し、R
8は同じでも異なっていてもよく、Mは金属原子を表す)で表される化合物が挙げられる。ここで、「水素原子を含む任意の置換基」とは、水素原子、又は水素原子を除く任意の置換基を意味する。さらに、「水素原子を含む任意の置換基」は、連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよい。
【0030】
前記一般式(5)中のR
7の例としては、水素原子、アルキル基(例えば炭素数1〜12のアルキル基)、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基(水酸基)、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシル基、リン酸塩基、ホスホン酸塩基、ホスフィン酸塩基、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボン酸塩基、硫酸塩基、アルキルスルフィニル基、スルホン酸塩基、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキルアリール基、またはアリール基、もしくはヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。前記一般式(5)中に含まれうる、互いに隣接する2つのR
7が互いに連結して形成された5員環または6員環が有する置換基の例としては、R
7の例として挙げた置換基が挙げられるが、これらに限定されない。前記5員環または6員環は、置換基を有していてもよい他のポルフィリン環と連結していてもよい。前記一般式(5)中のR
8の例としては、R
7の例として挙げた置換基が挙げられるが、これらに限定されない。前記金属ポルフィリン類および金属フタロシアニン類に含まれる金属原子としては、前記一般式(5)中の金属原子Mとしては、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Zn、Cu等が挙げられる。
【0031】
前記一般式(5)で表される金属ポルフィリン類としては、例えば、メソ−テトラフェニル−テトラベンゾポルフィリンパラジウム(CAS番号:119654−64−7)等のメソ−テトラフェニル−テトラベンゾポルフィリン金属錯体、オクタエチルポルフィリンパラジウム(CAS番号:24804−00−0)等のオクタエチルポルフィリン金属錯体、S.Baluschev,et al.,New Journal of Physics,vol.10,p.013007−1〜013007−12,2008に記載されているメソ−テトラフェニル−オクタメトキシ−テトラナフト[2,3]ポルフィリンパラジウム等のオクタエチルポルフィリン金属錯体等が挙げられる。
【0032】
500〜700nmの範囲内に吸収極大波長を有し、その構造中に金属を含まない有機光増感分子(A)の例としては、具体的には、下記一般式(1)
【0034】
(前記式中、R
1〜R
5はそれぞれ独立に水素原子を含む任意の置換基を表し、互いに隣接する置換基(R
1とR
2との対、R
2とR
4との対、R
1とR
3との対、R
3とR
4との対)はそれぞれ互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよく、R
6はハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基、または置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシル基を表す)で表される化合物(ボロンジピロメテン類)、C70等が挙げられる。
【0035】
前記一般式(1)中のR
1〜R
5の例としては、水素原子、脂肪族炭化水素基として、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基(水酸基)、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシル基、リン酸塩基、ホスホン酸塩基、ホスフィン酸塩基、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボン酸塩基、硫酸塩基、アルキルスルフィニル基、スルホン酸塩基、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキルアリール基、フェノキシ基またはアリール基、もしくはヘテロアリール基またはヘテロアリールオキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。前記一般式(1)中に含まれる、互いに隣接する置換基(R
1とR
2との対、R
2とR
4との対、R
1とR
3との対、R
3とR
4との対)が互いに連結して形成された5員環または6員環が有する置換基の例としては、R
1〜R
5の例として挙げた置換基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
前記一般式(1)中のR
1およびR
4は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいチエニル基、置換基を有してもよいチエノキシ基、下記式(2)
【0038】
で表される2−カルボキシルエテニル基、または下記式(3)
【0040】
で表される2−カルボキシル−2−シアノエテニル基であることが好ましく、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましく、無置換の炭素数1〜3のアルキル基であることがさらに好ましく、無置換のメチル基であることが最も好ましい。
【0041】
前記一般式(1)中のR
2およびR
3は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいチエニル基、置換基を有してもよいチエノキシ基、前記式(2)で表される2−カルボキシルエテニル基、または前記式(3)で表される2−カルボキシル−2−シアノエテニル基であることが好ましく、水素原子、臭素原子、またはヨウ素原子である(ただしR
2およびR
3の少なくとも一方が臭素原子またはヨウ素原子である)ことがより好ましく、水素原子またはヨウ素原子である(ただしR
2およびR
3の少なくとも一方がヨウ素原子である)ことがさらに好ましい。
【0042】
前記一般式(1)中のR
5は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいチエニル基、置換基を有してもよいチエノキシ基、前記式(2)で表される2−カルボキシルエテニル基、または前記式(3)で表される2−カルボキシル−2−シアノエテニル基であることが好ましく、置換基を有してもよいフェニル基であることがより好ましく、無置換またはアルキル置換のフェニル基であることがさらに好ましい。
【0043】
前記一般式(1)中のR
6は、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基、または置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシル基であるが、フッ素原子であることが好ましい。
【0044】
前記有機光増感分子(A)は、前記一般式(5)で表される金属ポルフィリン類、または前記一般式(1)で表される化合物であることが好ましく、前記一般式(1)で表される化合物であることがより好ましく、前記一般式(1)で表される化合物において前記一般式(1)中のR
1〜R
5がそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいチエニル基、置換基を有してもよいチエノキシ基、前記式(2)で表される2−カルボキシルエテニル基、または前記式(3)で表される2−カルボキシル−2−シアノエテニル基である化合物であることがさらに好ましく、下記一般式(4)
【0046】
(前記式中、R
1およびR
4はそれぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基を表し、R
2およびR
3はそれぞれ独立に水素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を表し、R
2およびR
3の少なくとも一方が臭素原子またはヨウ素原子であり、R
5は置換基を有してもよいフェニル基を表す)で表される化合物であることが最も好ましい。これにより、さらに高い光波長変換効率を有する光波長変換要素を実現できる。
【0047】
前記一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、下記式
【0049】
で表される化合物(2−ヨード−1,3,5,7−テトラメチル−8−フェニル−4,4−ジフルオロボラジアザインダセン)(吸収極大波長510nm)、下記式
【0051】
で表される化合物(2,6−ジヨード−1,3,5,7−テトラメチル−8−フェニル−4,4−ジフルオロボラジアザインダセン)(吸収極大波長529nm)、下記式
【0053】
で表される化合物(吸収極大波長629nm)、下記式
【0055】
で表される化合物(吸収極大波長539nm)、下記式
【0057】
で表される化合物(吸収極大波長557nm)、下記式
【0059】
で表される化合物(吸収極大波長576nm)、下記式
【0061】
で表される化合物(吸収極大波長575nmおよび618nm)、下記式
【0063】
で表される化合物(吸収極大波長532nm)、下記式
【0065】
で表される化合物(吸収極大波長526nm)等が挙げられる。これらの有機光増感分子(A)は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
250〜499nmの範囲内に最長波長の吸収極大波長を有し、構造中に金属を含まない有機光増感分子(A)の例としては、下記一般式(6)
【0068】
(式中、R
11〜R
18はそれぞれ独立に、水素原子を含む任意の置換基を表し、同じでも異なっていてもよく、R
11〜R
18のうち互いに隣接する2つが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよく、Xはチオ基(−S−)、スルフィニル基(−S(=O)−)、スルホニル基(−S(=O)
2−)、−N(R
19)−で表される2価基、または−C(R
20)(R
21)−で表される2価基を表し、R
19〜R
21はそれぞれ独立に、水素原子を含む任意の置換基を表す)で表される化合物が挙げられる。ここで、「水素原子を含む任意の置換基」とは、水素原子、又は水素原子を除く任意の置換基を意味する。
【0069】
前記一般式(6)中のR
11〜R
18の例としては、水素原子、アルキル基(例えば炭素数1〜12のアルキル基)、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基(水酸基)、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシル基、リン酸塩基、ホスホン酸塩基、ホスフィン酸塩基、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボン酸塩基、硫酸塩基、アルキルスルフィニル基、スルホン酸塩基、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキルアリール基、またはアリール基、もしくはヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。R
19〜R
21の例としては、水素原子、アルキル基(例えば炭素数1〜12のアルキル基)、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルキルアリール基、またはアリール基、もしくはヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。前記一般式(6)中に含まれうるR
11〜R
21のうち、互いに隣接する2つが互いに連結して形成された5員環または6員環が有する置換基の例としては、R
11〜R
18の例として挙げた置換基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
前記一般式(6)で表される化合物において、Xがチオ基であり、R
11〜R
18がそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、またはヘテロアリール基であることが好ましい。
【0071】
前記一般式(6)で表される化合物においてXがチオ基である場合、すなわちチオキサントン類である場合としては、例えば、無置換のチオキサントン(CAS番号:492−22−8)に加え、2,4−ジエチルチオキサントン(CAS番号:82799−44−8)や2−イソプロピルチオキサントン(CAS番号:5495−84−1)や2−クロロチオキサントン(CAS番号:86−39−5)等の置換チオキサントンが挙げられる。
【0072】
前記一般式(6)で表される化合物においてXがスルフィニル基である場合、すなわちチオキサントンオキシド類である場合としては、例えば、無置換のチオキサントンオキシド(CAS番号:7605−15−4)に加え、3−メチルチオキサントンオキシド(CAS番号:654670−82−3)や特開昭58−120605号公報に記載のチオキサントンオキシド誘導体等の置換チオキサントンが挙げられる。
【0073】
前記一般式(6)で表される化合物においてXがスルホニル基である場合、すなわちチオキサントンジオキシド類である場合としては、例えば、無置換のチオキサントンジオキシド(CAS番号:3166−15−2)に加え、2−メチルチオキサントンジオキシド(CAS番号:87548−99−0)や特開昭58−120605号公報に記載のチオキサントンジオキシド誘導体等の置換チオキサントンが挙げられる。
【0074】
前記一般式(6)で表される化合物においてXが−N(R
19)−で表される2価基である場合、すなわちアクリドン類である場合としては、例えば、無置換のアクリドン(CAS番号:578−95−0)に加え、N−メチルアクリドン(CAS番号:719−54−0)、N−メチル−2−ヨードアクリドン(CAS番号:1493782−35−6)、N−ブチル−2−クロロアクリドン(CAS番号:128420−54−2)、特開平8−67873号公報に記載のアクリドン誘導体等の置換アクリドンが挙げられる。
【0075】
前記一般式(6)で表される化合物においてXが−C(R
20)(R
21)−で表される2価基である場合、すなわちアントロン類である場合としては、例えば、無置換のアントロン(CAS番号:90−44−8)に加え、3−メチルアントロン(CAS番号:69653−12−9)、ベンズアントロン(CAS番号:82−05−3)等の置換アントロンが挙げられる。これらの有機光増感分子(A)は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0076】
本明細書において、特定の部分を「基」と称した場合には、当該部分はそれ自体が置換されていなくても、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても良いことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本実施形態における化合物に使用できる置換基は、どのような置換基でも良い。
【0077】
このような置換基の例を以下に挙げるが、特に制限はなく、これらに限定されない。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基と言っても良い)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルキルスルホニルアミノ基またはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基またはアリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基またはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、ホスフォ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)
2)、ホスファト基(−OPO(OH)
2)、スルファト基(−OSO
3H)、その他の公知の置換基が挙げられる。
【0078】
さらに詳しくは、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0079】
前記アルキル基は、直鎖、分岐、または環状の置換もしくは無置換のアルキル基を含む。前記アルキル基は、脂肪族アルキル基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換の脂肪族アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り除いた一価の基であり、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基である)、さらに環構造が多いトリシクロアルキル基等を包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)は、このような概念のアルキル基に加えて、さらにアルケニル基、アルキニル基も含むこととする。
【0080】
前記アルケニル基は、直鎖、分岐、または環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を含む。前記アルケニル基は、脂肪族アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換の脂肪族アルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り除いた一価の基であり、例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等である)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り除いた一価の基であり、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基等である)等を包含するものである。前記アルキニル基は、好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等である。
【0081】
前記アリール基は、好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル基、ビフェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等である。前記複素環基は、好ましくは、5員または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、より好ましくは、炭素数3〜30の5員もしくは6員の芳香族の複素環基である。前記複素環基は、例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基等である。なお、前記複素環基は、1−メチル−2−ピリジニオ基、1−メチル−2−キノリニオ基等のようなカチオン性の複素環基でも良い。
【0082】
前記アルコキシ基は、好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等である。前記アリールオキシ基は、好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等である。
【0083】
前記シリルオキシ基は、好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基等である。前記ヘテロ環オキシ基は、好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等である。
【0084】
前記アシルオキシ基は、好ましくは、ホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、または炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等である。
【0085】
前記カルバモイルオキシ基は、好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等である。
【0086】
前記アルキルスルホニルアミノ基またはアリールスルホニルアミノ基は、好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、または炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等である。
【0087】
前記アルキルチオ基は、好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等である。前記アリールチオ基は、好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等である。前記ヘテロ環チオ基は、好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基等である。
【0088】
前記スルファモイル基は、好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等である。
【0089】
前記アルキルスルフィニル基またはアリールスルフィニル基は、好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基等である。前記アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基は、好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基または炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等である。
【0090】
前記アシル基は、好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、または炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2―ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基等である。
【0091】
前記アリールオキシカルボニル基は、好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基等である。前記アルコキシカルボニル基は、好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基等である。
【0092】
前記カルバモイル基は、好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等である。
【0093】
前記アリールアゾ基またはヘテロ環アゾ基は、好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基または炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基等である。前記イミド基は、好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基等である。
【0094】
前記ホスフィノ基は、好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等である。前記ホスフィニル基は、好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等である。
【0095】
前記ホスフィニルオキシ基は、好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等である。前記ホスフィニルアミノ基は、好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基等である。
【0096】
前記シリル基は、好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等である。
【0097】
前記ヒドラジノ基は、好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のヒドラジノ基、例えば、トリメチルヒドラジノ基等である。前記ウレイド基は、好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のウレイド基、例えばN,N−ジメチルウレイド基等である。
【0098】
また、これらの置換基は、2つの置換基が共同して環を形成したものも含む。前記環は、芳香族または非芳香族の炭化水素環または複素環である。これらの環は、さらに組み合わされて多環縮合環を形成することができる。前記環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環等が挙げられる。
【0099】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り除き、さらに上記の置換基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、上記の、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基等が挙げられる。
【0100】
前記有機発光分子(B)としては、前記有機光増感分子(A)と共に使用することでTTA過程により光アップコンバージョンされた光を発することのできる有機化合物であれば、特に限定されることなく使用することができる。前記有機発光分子(B)としては、例えば、アセナフテン誘導体、アセトフェノン誘導体、アントラセン誘導体、ジフェニルアセチレン誘導体、アクリダン誘導体、アクリジン誘導体、アクリドン誘導体、チオアクリドン誘導体、アンゲリシン誘導体、アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、アザフルオレン誘導体、アズレン誘導体、ベンジル誘導体、カルバゾール誘導体、コロネン誘導体、スマネン誘導体、ビフェニレン誘導体、フルオレン誘導体、ペリレン誘導体、フェナントレン誘導体、フェナントロリン誘導体、フェナジン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ピレン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ビアセチル誘導体、ビアントラニル誘導体、フラーレン誘導体、グラフェン誘導体、カロテン誘導体、クロロフィル誘導体、クリセン誘導体、シンノリン誘導体、クマリン誘導体、クルクミン誘導体、ダンシルアミド誘導体、フラボン誘導体、フルオレノン誘導体、フルオレセイン誘導体、ヘリセン誘導体、インデン誘導体、ルミクロム誘導体、ルミフラビン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ペリフランテン誘導体、フェノール誘導体、フェノチアジン誘導体、フェノキサジン誘導体、フタラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、ピセン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポルフィセン誘導体、ヘミポルフィセン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、プソラレン誘導体、アンゲリシン誘導体、プリン誘導体、ピレン誘導体、ピロメテン誘導体、ピリジルケトン誘導体、フェニルケトン誘導体、ピリジルケトン誘導体、チエニルケトン誘導体、フラニルケトン誘導体、キナゾリン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、レチナール誘導体、レチノール誘導体、ローダミン誘導体、リボフラビン誘導体、ルブレン誘導体、スクアリン誘導体、スチルベン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、アントラキノン誘導体、テトラセンキノン誘導体、ペンタセンキノン誘導体、チオホスゲン誘導体、インジゴ誘導体、チオインゾゴ誘導体、チオキサンテン誘導体、チミン誘導体、トリフェニレン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、トリアリール誘導体、トリプトファン誘導体、ウラシル誘導体、キサンテン誘導体、フェロセン誘導体、アズレン誘導体、ビアセチル誘導体、ターフェニル誘導体、ターフラン誘導体、ターチオフェン誘導体、オリゴアリール誘導体、フラーレン誘導体、共役ポリエン誘導体、含14族元素縮合多環芳香族化合物誘導体、縮合多環複素芳香族化合物誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0101】
前記有機発光分子(B)としては、具体的には、例えば、9,10−ジフェニルアントラセン(CAS番号:1499−10−1)およびその誘導体、9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン(CAS番号:10075−85−1)およびその誘導体(例えば1−クロロ−9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン)、ペリレン(CAS番号:198−55−0)およびその誘導体(例えばペリレンジイミド)、ピレンおよびその誘導体、ルブレンおよびその誘導体、ナフタレンおよびその誘導体(例えば、1−ドデシルナフタレン、ナフタレンジイミド、パーフルオロナフタレン、1−シアノナフタレン、1−メトキシナフタレン、2−シアノナフタレン、2−メトキシナフタレン、1−メチルナフタレン、アセナフテン)、9,10−ビス(フェニルエチニル)ナフタセン、4,4’−ビス(5−テトラアセニル)−1,1’−ビフェニレン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ビフェニルおよびその誘導体、ビフラン、ビチオフェン、4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン(ボロンジピロメテン)等が挙げられるが、これらに限定されない。前記有機発光分子(B)としては、ペリレンやピレンやナフタレンおよびその誘導体のような縮合多環芳香族化合物、特に芳香族π電子共役系化合物等が好ましい。
【0102】
前記有機発光分子(B)の好ましい化合物の例としては、下記一般式(7)
【0104】
(式中、Zは−C(R
28)=Y−で表される2価基、−N(R
30)−で表される2価基、オキシ基(−O−)、またはチオ基を表し、Yは=C(R
29)−で表される3価基、またはアザ基(=N−)を表し、R
22〜R
30はそれぞれ独立に、水素原子を含む任意の置換基を表し、同じでも異なっていてもよく、R
22〜R
30のうち互いに隣接する2つが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよい)で表される化合物が挙げられる。前記一般式(7)で表される化合物において、R
22〜R
29がそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、前記一般式(2)のR
30が、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルキルアリール基、アリール基、またはヘテロアリール基であることが好ましい。
【0105】
前記一般式(7)で表される化合物のうち、Zが−C(R
28)=Y−で表される2価基である場合、すなわち、下記一般式(8)
【0107】
(式中、Yは=C(R
29)−で表される3価基、またはアザ基を表し、R
22〜R
29はそれぞれ独立に、水素原子を含む任意の置換基を表し、同じでも異なっていてもよく、R
22〜R
29のうち互いに隣接する2つが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよい)で表される化合物が好ましい。
【0108】
前記一般式(8)で表される化合物のうち、Yが=C(R
29)−で表される3価基である場合、すなわち、下記一般式(9)
【0110】
(式中、R
22〜R
29はそれぞれ独立に、水素原子を含む任意の置換基を表し、同じでも異なっていてもよく、R
22〜R
29のうち互いに隣接する2つが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよい)で表される化合物が好ましい。さらに、前記一般式(9)で表される化合物において、R
22〜R
29がそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、またはヘテロアリール基であることが好ましい。
【0111】
前記有機発光分子(B)の好ましい化合物の他の例としては、下記一般式(10)
【0113】
(式中、R
31〜R
36はそれぞれ独立に、水素原子を含む任意の置換基を表し、同じでも異なっていてもよく、R
31〜R
36のうち互いに隣接する2つが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよく、Qは−N(R
37)−で表される2価基、オキシ基、またはチオ基を表し、Rは−N(R
38)−で表される2価基、オキシ基、またはチオ基を表す)で表される化合物が挙げられる。
【0114】
前記有機発光分子(B)の好ましい化合物の他の例としては、下記一般式(11)
【0116】
(式中、R
43〜R
52はそれぞれ独立に、水素原子を含む任意の置換基を表し、同じでも異なっていてもよく、R
43〜R
52のうち互いに隣接する2つが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよく、R
43とR
52とが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよく、R
47とR
48とが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよい)で表される化合物が挙げられる。
【0117】
ここで、「水素原子を含む任意の置換基」とは、水素原子、又は水素原子を除く任意の置換基を意味する。
【0118】
前記一般式(8)〜(11)中のR
22〜R
27、R
31〜R
36、およびR
43〜R
52の例としては、水素原子、アルキル基(例えば炭素数1〜12のアルキル基)、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基(水酸基)、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシル基、リン酸塩基、ホスホン酸塩基、ホスフィン酸塩基、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボン酸塩基、硫酸塩基、アルキルスルフィニル基、スルホン酸塩基、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキルアリール基、またはアリール基、もしくはヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。R
30、R
37およびR
38の例としては、水素原子、アルキル基(例えば炭素数1〜12のアルキル基)、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルキルアリール基、またはアリール基、もしくはヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。前記一般式(8)〜(11)中に含まれるR
22〜R
38およびR
43〜R
52のうち、互いに隣接する2つが互いに連結して形成された5員環または6員環が有する置換基、R
43とR
52とが互いに連結して形成された5員環または6員環が有する水素原子を含む任意の置換基、並びにR
47とR
48とが互いに連結して形成された5員環または6員環が有する水素原子を含む任意の置換基の例としては、R
22〜R
27、R
31〜R
36、およびR
43〜R
52の例として挙げた置換基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
前記一般式(8)で表される化合物においてYが=C(R
29)−で表される3価基である場合、すなわちナフタレン類である場合としては、例えば、無置換のナフタレン(CAS番号:91−20−3)に加え、オクタフルオロナフタレン(CAS番号:313−72−4)や2−メトキシナフタレン(CAS番号:93−04−9)や2−シアノナフタレン(CAS番号:613−46−7)や1−ドデシルナフタレン(CAS番号:38641−16−6)や1−メチルナフタレン(CAS番号:90−12−0)やアセナフテン(CAS番号:83−32−9)や2,6−ジ−t−ブチルナフタレン(CAS番号:3905−64−4)等の置換ナフタレンが挙げられる。
【0120】
前記一般式(8)で表される化合物においてYがアザ基である場合、すなわちキノリン類である場合としては、例えば、無置換のキノリン(CAS番号:91−22−5)に加え、6−t−ブチルキノリン(CAS番号:68141−13−9)やベンゾ[h]キノリン(CAS番号:230−27−3)等の置換ナフタレンが挙げられる。
【0121】
前記一般式(7)で表される化合物においてZが−N(R
30)−で表される2価基である場合、すなわちインドール類である場合としては、例えば、無置換のインドール(CAS番号:120−72−9)に加え、1,2−ジメチルインドール(CAS番号:875−79−6)やナフトスチリル(CAS番号:130−00−7)等の置換インドールが挙げられる。
【0122】
前記一般式(7)で表される化合物においてZがオキシ基である場合、すなわちベンゾフラン類である場合としては、例えば、無置換のベンゾフラン(CAS番号:271−89−6)に加え、2−ブチルベンゾフラン(CAS番号:4265−27−4)やジフェニレンオキシド(CAS番号:132−64−9)等の置換ベンゾフランが挙げられる。
【0123】
前記一般式(7)で表される化合物においてZがチオ基である場合、すなわちベンゾチオフェン類である場合としては、例えば、無置換のベンゾチオフェン(CAS番号:95−15−8)に加え、2−メチルベンゾチオフェン(CAS番号:1195−14−8)やジベンゾチオフェン(CAS番号:132−65−0)等の置換ベンゾフランが挙げられる。
【0124】
前記一般式(10)で表される化合物においてQが−N(R
37)−で表される2価基であり、Rが−N(R
38)−で表される2価基である場合、すなわちビピロール類である場合としては、例えば、無置換のビピロール(CAS番号:10087−64−6)に加え、5,5’−ジメチル−ビピロール(CAS番号:90888−56−5)や1,1’−ジメチル−ビピロール(CAS番号:34671−26−6)等の置換ビピロールが挙げられる。
【0125】
前記一般式(10)においてQが−N(R
37)−で表される2価基であり、Rがオキシ基である場合、すなわちフラニルピロール類である場合としては、例えば、無置換のフラニルピロール(CAS番号:63122−43−0)に加え、1−メチル−フラニルピロール(CAS番号:124494−77−5)やベンゾフラニルインドール(CAS番号:78842−63−4)等の置換フラニルピロールが挙げられる。前記一般式(10)で表される化合物においてQがオキシ基であり、Rが−N(R
38)−で表される2価基である場合も、同様の例が挙げられる。
【0126】
前記一般式(10)で表される化合物においてQが−N(R
37)−で表される2価基であり、Rがチオ基である場合、すなわちチエニルピロール類である場合としては、例えば、無置換のチエニルピロール(CAS番号:52707−46−7)に加え、1−メチル−チエニルピロール(CAS番号:34671−27−7)やチエニルドール(CAS番号:55968−16−6)等の置換チエニルピロールが挙げられる。前記一般式(10)で表される化合物においてQがチオ基であり、Rが−N(R
38)−で表される2価基である場合も、同様の例が挙げられる。
【0127】
前記一般式(10)で表される化合物においてQがオキシ基であり、Rがオキシ基である場合、すなわちビフラン類である場合としては、例えば、無置換のビフラン(CAS番号:5905−00−0)に加え、5,5’−ジメチル−ビフラン(CAS番号:17490−66−3)や5,5’−ジシアノ−ビフラン(CAS番号:261719−71−5)等の置換ビフランが挙げられる。
【0128】
前記一般式(10)で表される化合物においてQがオキシ基であり、Rがチオ基である場合、すなわちチエニルフラン類である場合としては、例えば、無置換のチエニルフラン(CAS番号:27521−80−8)に加え、2−メチル−チエニルフラン(CAS番号:125261−84−9)やチエニルフランカルボアルデヒド(CAS番号:32364−30−0)等の置換チエニルフランが挙げられる。前記一般式(10)で表される化合物においてQがチオ基であり、Rがオキシ基である場合も、同様の例が挙げられる。
【0129】
前記一般式(10)で表される化合物においてQがチオ基であり、Rがチオ基である場合、すなわちビチオフェン類である場合としては、例えば、無置換のビチオフェン(CAS番号:492−97−7)に加え、5,5’−ジメチル−ビチオフェン(CAS番号:16303−58−5)やビチオフェン−ジメタノール(CAS番号:170110−96−0)等の置換ビチオフェンが挙げられる。
【0130】
前記一般式(11)で表される化合物の例としては、無置換のビフェニル(CAS番号:92−52−4)に加え、p−ターフェニル(CAS番号:92−94−4)等の置換ビフェニルが挙げられる。これらの有機発光分子(B)は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0131】
有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)は、前記例の中から自由に選択し、任意の組み合わせで使用することができるが、TTA過程により光アップコンバージョンされた光を発するためには、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)の最低三重項励起状態のエネルギー準位が近いことが三重項−三重項エネルギー移動の効率の観点から好ましい。そのため、次式
【0133】
(式中、ET,Dyeは有機光増感分子(A)の最低三重項励起状態のエネルギー準位であり、ET,Emiは有機発光分子(B)の最低三重項励起状態のエネルギー準位である。)で表されるΔETが、有機光増感分子(A)と有機発光分子(B)との任意の組み合わせについて、好ましくは−0.5eV以上2.0eV以下であり、より好ましくは−0.3eV以上1.0eV以下であり、さらに好ましくは−0.2eV以上0.5eV以下であり、特に好ましくは−0.1eV以上0.3eV以下である。1eVとは、電子1個を1Vの電位差で加速したときに電子が得るエネルギーである。
【0134】
本実施形態の光波長変換要素中における有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)の含有量は、特に制限はないが、光波長変換要素を100質量部とした場合、それぞれ、通常は0.000001〜10質量部であり、好ましくは0.00001〜5質量部であり、より好ましくは0.0001〜1質量部である。
【0135】
前記深共晶溶媒(C)としては、塩と水素結合ドナーとの混合物であって共晶により融点が大きく降下している混合物であればよく、常温(25℃)で液体のものであっても常温(25℃)で固体のものであってもよいが、常温(25℃)で固体の塩と常温(25℃)で固体又は液体の水素結合ドナーとの混合物であって常温(25℃)で液体の混合物が好ましい。前記深共晶溶媒(C)を構成する塩としては、ハロゲン塩を用いることができ、前記ハロゲン塩としては非金属ハロゲン塩が好ましい。前記深共晶溶媒(C)を構成する塩が非金属ハロゲン塩である場合、前記深共晶溶媒(C)が、金属を含まないものとなるので、環境に優しく、普通の応用上、使用し易い。前記深共晶溶媒(C)としては、前記深共晶溶媒(C)は、常温(25℃)で固体の非金属ハロゲン塩と、常温(25℃)で固体又は液体の水素結合ドナーとの混合物であって、常温(25℃)で液体の混合物であることが特に好ましい。さらに、本発明の光波長変換要素に用いる深共晶溶媒(C)は、光学的透明性の高い、常温(25℃)で液体の混合物であることが好ましい。
【0136】
前記金属ハロゲン塩としては、例えば塩化亜鉛が挙げられる。前記非金属ハロゲン塩としては、特に限定されないが、例えば、第4級アンモニウムハライド、第4級ホスホニウムハライド、第3級アンモニウムハライド、第1級アンモニウムハライド等が挙げられる。
【0137】
前記第4級アンモニウムハライドとしては、特に限定されないが、例えば、塩化コリン、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化メチルトリオクチルアンモニウム、塩化テトラオクチルアンモニウム、アセチルコリンクロリド、クロロコリンクロリド、臭化テトラエチルアンモニウム、N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチルベンゼンメタンアミニウムクロリド、フルオロコリンブロミド、臭化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0138】
前記第4級ホスホニウムハライドとしては、例えば、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド等が挙げられる。前記第3級アンモニウムハライドとしては、例えば、2−(ジエチルアミノ)エタノール塩酸塩が挙げられる。前記第1級アンモニウムハライドとしては、例えば、エチルアミン塩酸塩が挙げられる。
【0139】
前記水素結合ドナーとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、グリセリン、乳酸、酒石酸、ブドウ糖、ショ糖、キシロース、アスコルビン酸、クエン酸、尿素、チオ尿素、1−メチル尿素、1,3−ジメチル尿素、1,1−ジメチル尿素、アセトアミド、ベンズアミド、2,2,2−トリフルオロアセトアミド、イミダゾール、アジピン酸、安息香酸、マロン酸、シュウ酸、フェニル酢酸、3−フェニルプロピオン酸、コハク酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、レブリン酸、イタコン酸、キシリトール、D−ソルビトール、D−イソソルビド、4−ヒドロキシ安息香酸、コーヒー酸、p−クマル酸、trans−ケイ皮酸、スベリン酸、没食子酸、レゾルシノール、ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール;蟻酸、酢酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テチラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、トリアコンタン酸、等の脂肪酸、等が挙げられる。
【0140】
前記深共晶溶媒(C)の含有量は、光波長変換要素100質量部に対して、通常10質量部以上であり、好ましくは30質量部以上である。
【0141】
本発明の光波長変換要素は、通常公知の技術を用いて有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を深共晶溶媒(C)中に溶解および/または分散させて溶液または分散液を得る方法によって製造することができる。前記方法において、必要に応じて、通常公知の技術を用いてその他の添加剤を深共晶溶媒(C)中で有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)に混合して、溶液または分散液を得てもよい。また、前記方法において、必要に応じて、超音波分散機、ビーズミル、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、ボールミル、アトライター、サンドミル、ロールミル、マイクロ波分散機等の公知の分散機を単独または組み合わせて使用し、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を微粉砕、微分散して、溶液または分散液を得てもよい。
【0142】
また、本発明の光波長変換要素を製造する他の方法として、例えば、まず、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を揮発性有機溶媒中に溶解および/または分散させ、次に、得られた溶液および/または分散体を深共晶溶媒(C)と撹拌混合して目視上均質かつ透明な溶液および/または分散体を生成させ、さらにその溶液および/または分散体から減圧下でこの揮発性有機溶媒を痕跡量以下まで除去する方法を用いることもできる。この方法は、均質かつ透明に混和した状態の光波長変換要素を得られやすく、安定性や光波長変換効率の高い光波長変換要素を得ることができるので、本発明の光波長変換要素を得る方法としてより好ましい。
【0143】
前記方法に用いる揮発性有機溶媒は、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を溶解および/または分散させることができ、かつ深共晶溶媒(C)と均質かつ透明に混和でき、さらに減圧下で痕跡量程度まで除去できるような揮発性を有する有機溶媒であれば、特に制限はない。ここで、「痕跡量」とは、光吸収スペクトルの測定に基づいて深共晶溶媒(C)中に混在する揮発性有機溶媒をノイズレベル以下でしか検出できない量とする。前記揮発性有機溶媒は、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を溶解させることができる揮発性有機溶媒であることが好ましい。前記揮発性有機溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系溶媒等を用いることができる。有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を溶解させることができる揮発性有機溶媒を使用する場合、その揮発性有機溶媒は有機光増感分子および有機発光分子の溶解性に合わせて適宜選択できる。
【0144】
前記撹拌混合の手段としては、超音波、バブリング、撹拌機、液送ポンプ、粉砕機、ビーズミル、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、マイクロ波等の公知の技術または装置を用いることができる。これらの手段は、1種を使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0145】
さらに、本発明の光波長変換要素において、必要に応じて、有機光増感分子(A)、有機発光分子(B)、深共晶溶媒(C)以外の成分として、取り扱い時の利便性等を改善するために、イオン性や非イオン性のゲル化剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0146】
本発明の光波長変換要素は、その水分量が、1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることがさらに好ましく、0.001質量%以下であることが最も好ましい。これにより、より高い光波長変換効率を有する光波長変換要素を実現できる。
【0147】
また、本発明の光波長変換要素は、その酸素濃度が、100質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることがより好ましく、1質量ppm以下であることがさらに好ましく、0.1質量ppm以下であることが最も好ましい。これにより、より高い光波長変換効率を有する光波長変換要素を実現できる。
【0148】
本発明の光波長変換要素は、太陽電池、光触媒、光触媒型水素・酸素発生装置、光アップコンバージョンフィルター等に用いることができる。
【0149】
本発明の太陽電池は、本発明の光波長変換要素を用いたものである。
【0150】
本発明の太陽電池の一例を、
図1に基づいて説明する。本発明の一例に係る太陽電池は、
図1に示すように、光電変換層(太陽電池層)1と、光電変換層1における光入射側の面上に配設された短冊状の受光面電極7と、光電変換層1における光入射側の面の裏面上に積層された透明背面電極2と、透明背面電極2における光入射側の面の裏面上に積層された透明絶縁膜3と、透明絶縁膜3における光入射側の面の裏面上に積層された、本発明の光波長変換要素を用いたアップコンバージョン層4と、アップコンバージョン層4における光入射側の面の裏面上に積層された光反射膜5とを備えている。
【0151】
光電変換層1としては、特に限定されるものではなく、色素増感太陽電池や有機薄膜太陽電池等の有機系光電変換層、化合物半導体系光電変換層、シリコン系光電変換層等を用いることができる。
【0152】
受光面電極7および光反射膜5は、Ag、Al、Ti、Cr、Mo、W、Ni、Cu等の金属で形成することができる。透明背面電極2は、ITO(酸化インジウムスズ)、SnO
2、ZnO等の透明導電体で形成することができる。透明絶縁膜3は、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、およびポリエーテルニトリル等の樹脂で形成することができる。
【0153】
アップコンバージョン層4は、後述する本発明の光アップコンバージョンフィルターと同様に、セルと、セル中に封入された光波長変換要素とで形成されていてもよく、光波長変換要素のみで形成されていてもよい。アップコンバージョン層4が光波長変換要素のみで形成されている場合、透明絶縁膜3、アップコンバージョン層4、および光反射膜5をそれらの周縁で封止樹脂等の封止部材により封止すればよい。
【0154】
図1の構成では、特に有機光増感分子(A)が500〜700nmの範囲内に吸収極大波長を有する場合等に、太陽からの入射光6を、アップコンバージョン層4がアップコンバートする(より短い波長の光に変換する)ことにより、光電変換層1が発電に使用できる波長範囲の光の強度を高めて、太陽電池の発電効率をさらに高めることができる。
【0155】
なお、
図1の構成では、アップコンバージョン層4を透明絶縁膜3と光反射膜5との間に配置していたが、アップコンバージョン層4の配置位置を、受光面電極7における光入射側等のような他の配置位置に変更してもよい。その場合には、アップコンバージョン層4と受光面電極7との間に透明絶縁膜を設けてもよい。
【0156】
また、
図1の太陽電池において、受光面電極7を、光電変換層1における光入射側の面の全体に形成された透明電極に置き換えてもよい。また、
図1の太陽電池において、透明絶縁膜3を省略してもよい。ただし、アップコンバージョン層4が光波長変換要素のみで形成されている場合には、光波長変換要素と透明背面電極2との接触を避けるために透明絶縁膜3を光波長変換要素と透明背面電極2との間に配置することが好ましい。また、
図1の太陽電池において、アップコンバージョン層4の配置位置を受光面電極7における光入射側に変更し、かつ透明絶縁膜3を省略した場合には、透明背面電極2を光反射電極に置き換えて光反射膜5を省略してもよい。
【0157】
本発明の光触媒は、本発明の光波長変換要素を用いたものである。例えば、
図1の太陽電池における受光面電極7、光電変換層1、透明背面電極2、および透明絶縁膜3に代えて、光触媒層を配置することにより、光触媒を実現することができる。
【0158】
本発明の一例に係る光触媒は、
図2に示すように、光触媒が添加された水10(光触媒層)が収容され、光触媒が添加された水10以外の空間にガス9が充填されたガラスチャンネル8と、ガラスチャンネル8の側面上および底面上に形成されたアップコンバージョン層4と、アップコンバージョン層4の外側の面上に形成された光反射膜5と、光反射膜5を支持するために光反射膜5の外側の面上に形成された機械的支持体11とを備えている。
【0159】
また、
図2の構成では、特に有機光増感分子(A)が500〜700nmの範囲内に吸収極大波長を有する場合等に、太陽からの入射光6を、アップコンバージョン層4がアップコンバートする(より短い波長の光に変換する)ことにより、水10に添加された光触媒が触媒反応に使用できる波長範囲の光の強度を高めて、光触媒の変換効率をさらに高めることができる。
【0160】
本発明の光触媒型水素・酸素発生装置は、本発明の光波長変換要素を用いたものである。例えば、
図1の太陽電池における受光面電極7、光電変換層1、透明背面電極2、および透明絶縁膜3に代えて、光触媒層を配置することにより、光触媒型水素・酸素発生装置を実現することができる。
【0161】
また、本発明の光アップコンバージョンフィルターは、光をより短い波長の光に変換する光アップコンバージョンフィルターであって、前記光波長変換要素と、セルとを備え、前記光波長変換要素が前記セル中に封入されている。
【0162】
前記セルとしては、光を透過しうるセルであれば特に限定されるものではないが、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等からなる2枚のガラス板を重ね合わせてそれらの周縁部を融着接合した構成のセルを用いることができる。
【0163】
前記光波長変換要素は、その酸素濃度が、100質量ppm以下の状態で前記セル中に封入されていることが好ましく、10質量ppm以下の状態で前記セル中に封入されていることがより好ましく、1質量ppm以下の状態で前記セル中に封入されていることがさらに好ましく、0.1質量ppm以下の状態で前記セル中に封入されていることが最も好ましい。
【0164】
前記光アップコンバージョンフィルターは、例えば、光波長変換要素をセル中に注入し、必要に応じてその酸素濃度が100質量ppm以下となるまで脱酸素処理を行った後、セルを封止する方法によって得ることができる。前記脱酸素処理の方法としては、例えば、ロータリーポンプやターボ分子ポンプ等の真空ポンプを用いて光波長変換要素を減圧処理する方法、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを光波長変換要素中にバブリングさせる方法、光波長変換要素を凍結させた後で真空ポンプを用いて減圧処理(真空脱気)する方法(凍結真空脱気法)等が挙げられる。
【0165】
前記光アップコンバージョンフィルターは、前記太陽電池、光触媒、光触媒型水素・酸素発生装置のアップコンバージョン層4として利用することができる。
【0166】
なお、本発明の光波長変換要素を用いた太陽電池、光触媒、光触媒型水素・酸素発生装置、光アップコンバージョンフィルター等の物品においては、光波長変換要素の酸素濃度を低減するために酸素ゲッターを共存させてもよい。また、本発明の光波長変換要素を用いた太陽電池、光触媒、光触媒型水素・酸素発生装置、光アップコンバージョンフィルター等の物品においては、光波長変換要素の酸素濃度を低減するために水吸収材料を共存させてもよい。
【実施例】
【0167】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0168】
〔実施例1〜15で使用した深共晶溶媒〕
以下の実施例1〜15では、深共晶溶媒として、塩化コリン(以下、「ChCl」と略記する)とグリセリン(以下、「G」と略記する)とのモル比ChCl:G=1:2の混合物(参照;以下、「深共晶溶媒ChCl−G2」と表記する)、ChClとエチレングリコール(以下、「EG」と略記する)とのモル比ChCl:EG=1:2の混合物(非特許文献1参照;以下、「深共晶溶媒ChCl−EG2」と表記する)、塩化テトラブチルアンモニウム(以下、「TBAC」と略記する)とGとのモル比TBAC:G=1:3の混合物(非特許文献4参照;以下、「深共晶溶媒TBAC−G3」と表記する)、TBACとGとのモル比TBAC:G=1:4の混合物(非特許文献4参照;以下、「深共晶溶媒TBAC−G4」と表記する)、TBACとGとのモル比TBAC:G=1:5の混合物(非特許文献4参照;以下、「深共晶溶媒TBAC−G5」と表記する)、TBACとEGとのモル比TBAC:EG=1:3の混合物(非特許文献4参照;以下、「深共晶溶媒TBAC−EG3」と表記する)、TBACとEGとのモル比TBAC:EG=1:4の混合物(非特許文献4参照;以下、「深共晶溶媒TBAC−EG4」と表記する)、及びTBACと乳酸(以下、「LA」と略記する)とのモル比TBAC:LA=1:2の混合物(非特許文献5参照;以下、「深共晶溶媒TBAC−LA2」と表記する)を使用した。
【0169】
〔深共晶溶媒の作製方法〕
以下の実施例で使用した深共晶溶媒は、非特許文献1〜3を参考にして、以下の方法で作製した。すなわち、まず、洗浄済みガラス製のバイアル瓶(内容量20mL)内に、粉末のハロゲン塩(ChCl又はTBAC)と、粉末又は液体の水素結合ドナー(G、EG、又はLA)とを所望のモル比となるように分取した。次いで、ホットスターラー(ホットプレート付きマグネチックスターラー)により、バイアル瓶を80℃で加熱しながらバイアル瓶の内容物を撹拌子で10分程度撹拌し、無色透明な液体として深共晶溶媒を得た。
【0170】
〔実施例1〕
まず、洗浄済みのガラス製のバイアル瓶(内容量15mL)内に、有機光増感分子(A)としてのメソ−テトラフェニル−テトラベンゾポルフィリンパラジウムのトルエン溶液(本溶液中の濃度2.0×10
−4M、試料中の最終濃度:1×10
−5M)20μLと、有機発光分子(B)としてのペリレンのトルエン溶液(本溶液中の濃度4.0×10
−3M、試料中の最終濃度:3×10
−3M)300μLとをそれぞれ分取した。
【0171】
次いで、そのバイアル瓶を真空容器内に入れ、スクロールポンプにより10分間真空引きした。これにより、トルエンが揮発し、バイアル瓶の内壁面に有機光増感分子(A)及び有機発光分子(B)の微粉末が析出した。その後、そのバイアル瓶を大気中に取り出した。
【0172】
次いで、そのバイアル瓶内に、深共晶溶媒TBAC−G3を400μL分取した。そのバイアル瓶をホットスターラーに載せ、約10分間、撹拌子で撹拌しながら80℃で加熱した。有機光増感分子(A)及び有機発光分子(B)の微粉末が深共晶溶媒に溶解して透明な液体となっていることを目視で確認した。そのバイアル瓶を真空容器内に入れ、スクロールポンプ(先に使用したものと同じ)により2時間真空引き(脱酸素)することにより、光波長変換要素を得た。
【0173】
光波長変換要素が入ったバイアル瓶をアルゴン雰囲気のグルーブボックスの内部に移し、アルゴン雰囲気中で、光波長変換要素を石英管(内寸1mm×1mm、外寸2mm×2mm、長さ25mmの正方形断面形状の片端閉じ管)に注入し、開口部をハンダで封止することにより、光波長変換要素の測定用試料を得た。測定用試料をグローボックスから取り出し、光吸収スペクトル及びアップコンバージョン発光スペクトルの測定を行った。
【0174】
測定用試料の光吸収スペクトルは、紫外可視近赤外分光光度計により光路長1mmの条件で測定した。測定された測定用試料の光吸収スペクトルを
図3に示す。
【0175】
測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルは、以下のようにして測定した。すなわち、測定用試料に対して、励起光として、連続波He−Neレーザー発光器から出射させた連続波レーザー光(波長:633nm、出力パワー:6mW、スポット径:0.8mm)を測定用試料に照射した。そして、測定用試料からの発光を、入射励起光に対する直角方向に配置された集光レンズにより平行光とした後、その平行光をもう一枚のレンズによって分光器の入口スリットに再集光し、分光器の背後に設置された電子冷却シリコンCCD(Charge Coupled Device)検出器によって発光(アップコンバージョン発光)のスペクトルを測定した。このようにして測定されたアップコンバージョン発光スペクトルに対し、分光器内に搭載された回折格子の回折効率波長依存性、および電子冷却シリコンCCD検出器の検出感度波長依存性によるスペクトル形状の歪みを補正した。測定された補正済みの測定用試料のアップコンバージョン(図中では「UC」と略記する)発光スペクトルを
図4に示す。
【0176】
〔実施例2〕
深共晶溶媒TBAC−G3に代えて深共晶溶媒TBAC−G4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換要素の測定用試料を得た。
【0177】
実施例1と同様にして測定した測定用試料の光吸収スペクトルを
図5に示す。実施例1と同様にして測定した測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルを
図6に示す。測定用試料は、アップコンバージョン発光スペクトルの測定と同様の条件で連続波レーザー光を照射したところ、
図7に示すように、測定用試料からの青色発光が目視で確認された。
【0178】
〔実施例3〕
深共晶溶媒TBAC−G3に代えて深共晶溶媒TBAC−G5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換要素の測定用試料を得た。実施例1と同様にして測定した測定用試料の光吸収スペクトルを
図8に示す。実施例1と同様にして測定した測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルを
図9に示す。
【0179】
〔実施例4〕
深共晶溶媒TBAC−G3に代えて深共晶溶媒TBAC−LA2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして光波長変換要素の測定用試料を得た。
【0180】
実施例1と同様にして測定した測定用試料の光吸収スペクトルを
図10に示す。実施例1と同様にして測定した測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルを
図11に示す。
【0181】
〔実施例5〕
深共晶溶媒TBAC−G3に代えて深共晶溶媒TBAC−EG3を用い、洗浄済みのガラス製のバイアル瓶(内容量15mL)に代えて洗浄済みのガラス製のバイアル瓶(内容量8mL)を用い、深共晶溶媒を分取した後の真空引きの時間を2時間から1時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換要素の測定用試料を得た。
【0182】
実施例1と同様にして測定した測定用試料の光吸収スペクトルを
図12に示す。実施例1と同様にして測定した測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルを
図13に示す。
【0183】
〔実施例6〕
深共晶溶媒TBAC−EG3に代えて深共晶溶媒TBAC−EG4を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、光波長変換要素の測定用試料を得た。
【0184】
実施例1と同様にして測定した測定用試料の光吸収スペクトルを
図14に示す。実施例1と同様にして測定した測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルを
図15に示す。
【0185】
以上のように、実施例1〜6で得られた、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)が深共晶溶媒(C)中に溶解されている光波長変換要素は、赤色光(波長620〜750nmの光;実施例1〜6では波長633nmの光)を、それより短波長の青色光(450〜495nmの波長の光)にアップコンバージョンできることが確認された。
【0186】
〔実施例7〕
まず、洗浄済みのガラス製のバイアル瓶(内容量15mL)内に、深共晶溶媒TBAC−G4を400μL分取した。次いで、そのバイアル瓶を真空容器内に入れ、スクロールポンプにより2時間真空引き(脱酸素)した。
【0187】
次いで、深共晶溶媒が入ったバイアル瓶をアルゴン雰囲気のグルーブボックスの内部に移し、グルーブボックス中で、有機光増感分子(A)としての10−メチル−9−アクリドンのメタノール溶液(本溶液中の濃度1.0×10
−3M、試料中の最終濃度:1.15×10
−4M)46μLと、有機発光分子(B)としての1−メチルナフタレンのメタノール溶液(本溶液中の濃度2.0×10
−2M、試料中の最終濃度:5×10
−3M)100μLとをそれぞれバイアル瓶に分取した。次に、バイアル瓶の内容物に対し、ガラス製パスツールピペットを用いて「吸い・吐き」を繰り返し行うことにより、撹拌及び均一化を行った。さらに、バイアル瓶の内容物に対し、バスソニケーター(Branson Ultrasonics Corporation製、型番「3510」)による超音波分散(撹拌)を5分間行った。
【0188】
次いで、そのバイアル瓶を真空容器内に移し、スクロールポンプにより1時間真空引きすることで、メタノールを除去した。これにより、光波長変換要素を得た。
【0189】
光波長変換要素が入ったバイアル瓶をアルゴン雰囲気のグルーブボックスの内部に移し、アルゴン雰囲気中で、光波長変換要素を石英管(内寸1mm×1mm、外寸2mm×2mm、長さ25mmの正方形断面形状の片端閉じ管)に注入し、開口部をハンダで封止することにより、光波長変換要素の測定用試料を得た。測定用試料をグルーブボックスから取り出し、光吸収スペクトル及びアップコンバージョン発光スペクトルの測定を行った。実施例1と同様にして測定した測定用試料の光吸収スペクトルを
図16に示す。
【0190】
測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルは、励起光として、連続波He−Neレーザー発光器から出射させた連続波レーザー光に代えて、連続波ダイオードレーザー発光器から出射させた連続波レーザー光(波長:405nm、出力パワー:3mW、スポット径:0.8mm)を測定用試料に照射したこと以外は、実施例1と同様にして測定した。測定された測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルを
図17に示す。
【0191】
〔実施例8〕
有機発光分子(B)として1−メチルナフタレンのメタノール溶液(本溶液中の濃度2.0×10
−2M、試料中の最終濃度:5×10
−3M)に代えてアセナフテンのメタノール溶液(本溶液中の濃度2.0×10
−2M、試料中の最終濃度:5×10
−3M)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、光波長変換要素の測定用試料を得た。
【0192】
実施例1と同様にして測定した測定用試料の光吸収スペクトルを
図18に示す。実施例7と同様にして測定した測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルを
図19に示す。
【0193】
〔実施例9〕
有機発光分子(B)として1−メチルナフタレンのメタノール溶液(本溶液中の濃度2.0×10
−2M、試料中の最終濃度:5×10
−3M)に代えて2,6−ジ−t−ブチルナフタレンのメタノール溶液(本溶液中の濃度2.0×10
−2M、試料中の最終濃度:5×10
−3M)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、光波長変換要素の測定用試料を得た。実施例1と同様にして測定した測定用試料の光吸収スペクトルを
図20に示す。実施例7と同様にして測定した測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルを
図21に示す。
【0194】
〔実施例10〕
有機光増感分子(A)としての10−メチル−9−アクリドンのメタノール溶液(本溶液中の濃度1.0×10
−3M、試料中の最終濃度:1.15×10
−4M)46μLに代えて10−メチル−9−アクリドンのメタノール溶液(本溶液中の濃度1.0×10
−3M、試料中の最終濃度:1.33×10
−4M)53μLを用い、有機発光分子(B)として1−メチルナフタレンのメタノール溶液(本溶液中の濃度2.0×10
−2M、試料中の最終濃度:5×10
−3M)に代えて2,6−ジ−t−ブチルナフタレンのメタノール溶液(本溶液中の濃度2.0×10
−2M、試料中の最終濃度:5×10
−3M)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、光波長変換要素の測定用試料を得た。実施例1と同様にして測定した測定用試料の光吸収スペクトルを
図22に示す。
【0195】
測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルは、励起光として、連続波He−Neレーザー発光器から出射させた連続波レーザー光に代えて、連続波ダイオードレーザー発光器から出射させた連続波レーザー光(波長:405nm、出力パワー:3mW、スポット径:0.8mm)を測定用試料に照射し、分光器の入口スリットへの入射光路に400nmショートパスフィルターを配置し、分光器内に搭載された回折格子の回折効率波長依存性、電子冷却シリコンCCD検出器の検出感度波長依存性、および400nmショートパスフィルターの透過率波長依存性によるスペクトル形状の歪みを補正したこと以外は、実施例1と同様にして測定した。測定された測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルを
図23に示す。
【0196】
〔実施例11〕
深共晶溶媒TBAC−G4に代えて深共晶溶媒TBAC−EG4を用い、深共晶溶媒のみが入ったバイアル瓶をスクロールポンプにより2時間真空引き(脱酸素)する工程を省略し(真空引きによって揮発しやすい深共晶溶媒を用いているため)、有機光増感分子(A)及び有機発光分子(B)の分取、ガラス製パスツールピペットを用いた撹拌及び均一化、及び超音波分散を大気中で行ったこと以外は、実施例10と同様にして、光波長変換要素の測定用試料を得た。
【0197】
実施例1と同様にして測定した測定用試料の光吸収スペクトルを
図24に示す。実施例10と同様にして測定した測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルを
図25に示す。
【0198】
〔実施例12〕
有機光増感分子(A)としての10−メチル−9−アクリドンのメタノール溶液(本溶液中の濃度1.0×10
−3M、試料中の最終濃度:1.15×10
−4M)46μLに代えて10−メチル−9−アクリドンのメタノール溶液(本溶液中の濃度1.0×10
−3M、試料中の最終濃度:1.33×10
−4M)53μLを用い、有機発光分子(B)として1−メチルナフタレンのメタノール溶液(本溶液中の濃度2.0×10
−2M、試料中の最終濃度:5×10
−3M)に代えてアセナフテンのメタノール溶液(本溶液中の濃度2.0×10
−2M、試料中の最終濃度:5×10
−3M)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、光波長変換要素の測定用試料を得た。
【0199】
実施例1と同様にして測定した測定用試料の光吸収スペクトルを
図26に示す。実施例10と同様にして測定した測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルを
図27に示す。
【0200】
〔実施例13〕
深共晶溶媒TBAC−G4に代えて深共晶溶媒ChCl−G2を用いたこと以外は、実施例12と同様にして、光波長変換要素の測定用試料を得た。
【0201】
実施例1と同様にして測定した測定用試料の光吸収スペクトルを
図28に示す。実施例10と同様にして測定した測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルを
図29に示す。
【0202】
〔実施例14〕
深共晶溶媒TBAC−G4に代えて深共晶溶媒TBAC−EG4を用い、深共晶溶媒のみが入ったバイアル瓶をスクロールポンプにより2時間真空引き(脱酸素)する工程を省略し(真空引きによって揮発しやすい深共晶溶媒を用いているため)、有機光増感分子(A)及び有機発光分子(B)の分取、ガラス製パスツールピペットを用いた撹拌及び均一化、及び超音波分散を大気中で行ったこと以外は、実施例12と同様にして、光波長変換要素の測定用試料を得た。
【0203】
実施例1と同様にして測定した測定用試料の光吸収スペクトルを
図30に示す。実施例10と同様にして測定した測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルを
図31に示す。
【0204】
〔実施例15〕
深共晶溶媒TBAC−G4に代えて深共晶溶媒ChCl−EG2を用い、深共晶溶媒のみが入ったバイアル瓶をスクロールポンプにより2時間真空引き(脱酸素)する工程を省略し(真空引きによって揮発しやすい深共晶溶媒を用いているため)、有機光増感分子(A)及び有機発光分子(B)の分取、ガラス製パスツールピペットを用いた撹拌及び均一化、及び超音波分散を大気中で行ったこと以外は、実施例12と同様にして、光波長変換要素の測定用試料を得た。
【0205】
実施例1と同様にして測定した測定用試料の光吸収スペクトルを
図32に示す。実施例10と同様にして測定した測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルを
図33に示す。
【0206】
以上のように、実施例7〜15で得られた、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)が深共晶溶媒(C)中に溶解されている光波長変換要素は、可視光(400nm以上の波長の光;実施例7〜15では波長405nmの紫色光)を、それより短波長の紫外光(350nm以下の波長の光)にアップコンバージョンできることが確認された。
【0207】
〔実施例16〜18で使用した深共晶溶媒〕
以下の実施例16〜18では、ハロゲン塩として前記のTBAC(以下、塩化テトラブチルアンモニウムを[N
4444Cl]と略記する)、塩化メチルトリオクチルアンモニウム(以下、[N
8881Cl]と略記する)、塩化テトラオクチルアンモニウム(以下、[N
8888Cl]と略記する)、及び水素結合ドナーとして、グリセリン(以下、「G」と略記する)、マロン酸(以下、「MA」と略記する)、デカン酸(以下、「DA」と略記する)、のそれぞれを予め十分に真空加熱乾燥した後、所定量を混合させて深共晶溶媒を作製した。
【0208】
〔深共晶溶媒の作製方法〕
非特許文献1〜3及び6を参考にして、深共晶溶媒として[N
4444Cl]とGとのモル比で[N
4444Cl]:G=1:2、[N
4444Cl]:G=1:4(以下、[N
4444Cl]−G4と表記する)の混合物;[N
4444Cl]とMAとのモル比で[N
4444Cl]:MA=1:1、[N
4444Cl]:MA=1:2の混合物;[N
8881Cl]とGとのモル比で[N
8881Cl]:G=1:2(以下、[N
8881Cl]−G2と表記する)の混合物;[N
8881Cl]とMAとのモル比で[N
8881Cl]:MA=1:1(以下、[N
8881Cl]−MA1と表記する)、[N
8881Cl]:MA=1:2の混合物;[N
8888Cl]とGとのモル比で[N
8888Cl]:G=1:2(以下、[N
8888Cl]−G2と表記する)の混合物;[N
4444Cl]とDAとのモル比で[N
4444Cl]:DA=1:1(以下、[N
4444Cl]−DA1と表記する)、[N
4444Cl]:DA=1:2(以下、[N
4444Cl]−DA2と表記する)、[N
4444Cl]:DA=1:4(以下、[N
4444Cl]−DA4と表記する)、[N
4444Cl]:DA=2:3(以下、[N
4444Cl]2−DA3と表記する)、[N
4444Cl]:DA=1:3(以下、[N
4444Cl]−DA3と表記する)の混合物;[N
8881Cl]とDAとのモル比で[N
8881Cl]:DA=1:1(以下、[N
8881Cl]−DA1と表記する)、[N
8881Cl]:DA=1:2(以下、[N
8881Cl]−DA2と表記する)、[N
8881Cl]:DA=1:4(以下、[N
8881Cl]−DA4と表記する)の混合物;[N
8888Cl]とDAのモル比で[N
8888Cl]:DA=1:2(以下、[N
8888Cl]−DA2と表記する)の混合物、をそれぞれ作製した。
【0209】
上記の深共晶溶媒の作製の結果、[N
4444Cl]−G4、[N
8881Cl]−G2、[N
8881Cl]−MA1、[N
8888Cl]−G2、[N
4444Cl]−DA1、[N
4444Cl]−DA2、[N
4444Cl]−DA3、[N
4444Cl]2−DA3、[N
8881Cl]−DA2、[N
8888Cl]−DA2、の混合物で、室温下で均一透明な液状物を得ることができたが、他の混合物は白濁(液体と固体微結晶との混合物)または固形物となり、アップコンバージョン発光の試料として不適切な形態となった。
【0210】
上記の深共晶溶媒の作製により得られた均一溶液、[N
4444Cl]−G4、[N
8888Cl]−DA2、[N
4444Cl]−DA3、[N
4444Cl]−DA2、[N
4444Cl]−DA1、ChCl−G2、ChCl−EG2の混合物の有機発光分子9,10−ジフェニルアントラセン(以下、DPAと表記する青色発光分子)に対する溶解性を確認した。得られた深共晶溶媒の発光分子DPAに対する溶解度[M]の測定値は下表1の通りである。
【0211】
【表1】
【0212】
上記の表1中のケース1〜4はDPAに対して高い溶解性を示しており、これらの深共晶溶媒のうち、水素結合ドナーとしてデカン酸いると、光アップコンバージョンを行うのに適する3×10
−3Mオーダー以上の発光分子(DPA)濃度を達成できることがわかった。対照的に、表1の5〜7に示した従来最もよく知られているDESのグループである塩化コリンとグリセロールやエチレングリコールとを組み合わせたDES類では3×10
−3Mオーダー以上の発光分子(DPA)濃度を達成できておらず、光アップコンバージョンを行うのには適さないことがわかった。この結果は、光アップコンバージョンの試料に水素結合ドナーとしてデカン酸を用いることによる解決と進歩性を示しており、これは上述の目的に特に適した手段の発明である。
デカン酸を用いた場合に高い溶解度が達成できるメカニズムとして、以下の理由が考えられる。すなわち、デカン酸は無極性の疎水性長鎖アルキル基を有し、無極性の多環芳香族炭化水素化合物の有機発光分子と溶質−溶媒の親和性を向上させるためと考えられる。
【0213】
〔調製例1〕
深共晶溶媒の原料として、先ずはハロゲン塩に[N
4444Cl]及び[N
8888Cl])の2種類と、水素結合ドナーDAを前記の通りの所定のモル比となるように洗浄済みガラス製のバイアル瓶(内容量20mL)内にそれぞれ分取した。次いで、ホットスターラーにより、バイアル瓶を60℃に加熱しながらバイアル瓶の内容物を撹拌子で30〜60分程度撹拌、深共晶溶媒として、[N
4444Cl]−DA1、[N
4444Cl]−DA2、[N
4444Cl]−DA3、[N
4444Cl]2−DA3、[N
8888Cl]−DA2の5つの無色透明な液体を得た。以下の実施例では、[N
4444Cl]−DA2、を深共晶溶媒に用いてアップコンバージョン発光スペクトルの測定を行った。
【0214】
〔実施例16〕
洗浄済みガラス製のバイアル瓶(内容量20mL)内に、有機光増感分子(A)としてオクタエチルポルフィリン金属錯体(以下PtOEPと表記する)のトルエン溶液(試料中の最終濃度:5.5×10
−5M)、有機発光分子(B)としてのDPAのトルエン溶液(試料中の最終濃度:3×10
−3M)をそれぞれ分取した。
【0215】
次いで、そのバイアル瓶を真空容器内に入れ、スクロールポンプにより10分間真空引きした。これにより、トルエンが揮発し、バイアル瓶の内壁面に有機光増感分子PtOEP及び有機発光分子DPAの微粉末が析出した。その後、そのバイアル瓶を大気中に取り出した。
【0216】
次いで、そのバイアル瓶内に、深共晶溶媒[N
4444Cl]−DA3を400μL分取した。そのバイアル瓶を密栓してホットスターラーに載せ、約10分間、撹拌子で撹拌しながら60〜70℃に加熱した。有機光増感分子PtOEP及び有機発光分子DPAの微粉末が深共晶溶媒に溶解して透明な液体となっていることを目視で確認した。そのバイアル瓶を窒素雰囲気グローブボックス内に入れ、そのバイアル瓶の密栓を解放して、ホットスターラーに載せ、約1時間加熱撹拌し、脱酸素及び脱水することにより光波長変換要素を得た。
【0217】
光波長変換要素が入ったバイアル瓶を窒素雰囲気のグローブボックスの内部に移し、光波長変換要素を石英管(内寸1mm×1mm、外寸2mm×2mm、長さ25mmの正方形断面形状の片端閉じ管)に注入し、開口部をハンダで封止することにより、光波長変換要素の測定用試料を得た。測定用試料をグローブボックスから取り出し、光吸収スペクトル及びアップコンバージョン発光スペクトルの測定を行った。測定用試料は、アップコンバージョン発光スペクトルの測定と同様の条件で連続波レーザー光(波長:532nm、出力パワー:4mW、スポット径:0.8mm)を照射したところ、
図34に示すように、測定用試料から青色発光が目視で確認された。
【0218】
測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルは、以下のようにして測定した。すなわち、測定用試料に対して、励起光として、連続波He−Neレーザー発光器から出射させた連続波レーザー光(波長:532nm、励起光:3.2mW/cm
2、出力パワー:16mW、光路長:1mm、スポット径:0.8mm)を測定用試料に照射した。そして、測定用試料からの発光を、入射励起光に対する直角方向に配置された集光レンズにより平行光とした後、その平行光をもう一枚のレンズによって分光器の入口スリットに再集光し、分光器の背後に設置された電子冷却シリコンCCD(Charge Coupled Device)検出器によってアップコンバージョン発光スペクトルを測定した。このようにして測定された発光スペクトルに対し、分光器内に搭載された回折格子の回折効率波長依存性、および電子冷却シリコンCCD検出器の検出感度波長依存性によるスペクトル形状の歪みを補正した。測定された補正済みの測定用試料のアップコンバージョン(以降の図中では「UC」と略記する)発光スペクトルを
図35に示す。
【0219】
〔実施例17〕
さらに実施例16におけるアップコンバージョン量子効率の有機発光分子DPA濃度への依存性を測定し、その結果を
図36に示すが、DPA濃度が3×10
−3M程度以上に達するとアップコンバージョン量子効率が一定の上限値となることを見出した。なお、この絶対値は通常、有用なアップコンバージョン量子効率を達成するための有機発光分子濃度は1×10
−3〜1×10
−2M以上が必要である事から、上述のように、本発明で見出された、デカン酸を用いた深共晶溶媒は本実施形態にとってより有用であると言える(参考文献;[1]Y.Murakami,Chem.Phys.Lett.56,516(2011).[2]T.F.Schulze et al,Energy environ.Sci.,8,103(2015).)。
【0220】
〔実施例18〕
実施例16と同様にして深共晶溶媒[N
4444Cl]−DA3(
図37中の#1)と共に、[N
4444Cl]−DA2(
図37中の#2)、[N
4444Cl]2−DA3(
図37中の#3)、[N
4444Cl]−DA(
図37中の#4)、[N
8888Cl]−DA2(
図37中の#5)を用いて、これら5種類の深共晶溶媒を含む各光波長変換要素を用いて、入射光の連続波レーザーの出力パワーを0W/cm
2〜5W/cm
2まで変化させて、有機増感分子(PtOET)から有機発光分子(DPA)へのエネルギー移動によるアップコンバージョン量子効率の変化を測定すると共に、各光波長変換要素における入射光強度依存性を評価し、結果を
図37に示した。その結果、いずれの光波長変換要素においても入射光強度が約2W/cm
2以上でアップコンバージョン量子効率が最大化され、一定値となることを見出した。
【0221】
〔実施例19〕
実施例16と同様にして、実施例18で用いた同5種類の光波長変換要素を用いて、それぞれにおける有機増感分子(PtOEP)から有機発光分子(DPA)へのエネルギー移動量子効率並びに、十分に高い入射光強度を用いて上限一定値となったアップコンバージョン量子効率を測定した。これらの深共晶溶媒を含む光波長変換要素の粘度ηに対する有機増感分子(PtOET)から有機発光分子(DPA)へのエネルギー移動量子効率の関係を
図38に、アップコンバージョン量子効率(最大値が100%の定義)を
図39に示した。透明な均一溶液の深共晶溶媒は、比較的高粘度であるが、これにより有機増感分子(PtOET)の励起状態を長寿命とすることで、より低粘度であるイオン液体[N
8881][NTf
2]と同程度に有機増感分子(PtOET)から有機発光分子(DPA)への三重項エネルギーの移動を可能にしていることを見出した。一方、アップコンバージョン量子効率は、光波長変換要素の粘度ηの低下と共に増大する傾向が見られた。注目すべきは、最も粘度ηの低い光波長変換要素#1においては、そのアップコンバージョン量子効率が、従来のイオン液体を用いて作製した試料の中で最も高いアップコンバージョン量子効率を示していた試料(
図39中の#lL)を上回る、約40%以上もの値を示した。
【0222】
〔実施例20〕
洗浄済みガラス製のバイアル瓶(内容量20mL)内に、有機光増感分子(A)としてオクタエチルポルフィリン金属錯体(以下PtOEPと表記する)のトルエン溶液(試料中の最終濃度:5.5×10
−5M)、有機発光分子(B)としてのDPAのトルエン溶液(試料中の最終濃度:4×10
−3M)をそれぞれ分取した。
【0223】
次いで、そのバイアル瓶を真空容器内に入れ、スクロールポンプにより10分間真空引きした。これにより、トルエンが揮発し、バイアル瓶の内壁面に有機光増感分子PtOEP及び有機発光分子DPAの微粉末が析出した。その後、そのバイアル瓶を大気中に取り出した。
【0224】
次いで、そのバイアル瓶内に、深共晶溶媒[N
4444Cl]−DA2を400μL分取した。そのバイアル瓶を密栓してホットスターラーに載せ、約10分間、撹拌子で撹拌しながら60〜70℃に加熱した。有機光増感分子PtOEP及び有機発光分子DPAの微粉末が深共晶溶媒に溶解して透明な液体となっていることを目視で確認した。そのバイアル瓶を窒素雰囲気グローブボックス内に入れ、そのバイアル瓶の密栓を解放して、ホットスターラーに載せ、約1時間加熱撹拌し、脱酸素及び脱水することにより光波長変換要素を得た。
【0225】
光波長変換要素が入ったバイアル瓶を窒素雰囲気のグローブボックスの内部に移し、光波長変換要素を石英管(内寸1mm×1mm、外寸2mm×2mm、長さ25mmの正方形断面形状の片端閉じ管)に注入し、開口部をハンダで封止することにより、光波長変換要素の測定用試料を得た。測定用試料をグローブボックスから取り出し、光吸収スペクトル及びアップコンバージョン発光スペクトルの測定を行った。
【0226】
測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルは、以下のようにして測定した。すなわち、測定用試料に対して、励起光として、連続波He−Neレーザー発光器から出射させた連続波レーザー光(波長:532nm、励起光:1.6W/cm
2、出力パワー:8mW、スポット径:0.8mm)を測定用試料に照射した。そして、測定用試料からの発光を、入射励起光に対する直角方向に配置された集光レンズにより平行光とした後、その平行光をもう一枚のレンズによって分光器の入口スリットに再集光し、分光器の背後に設置された電子冷却シリコンCCD(Charge Coupled Device)検出器によってアップコンバージョン発光及び有機増感分子PtOEPのりん光のスペクトルを測定した。このようにして測定された発光スペクトルに対し、分光器内に搭載された回折格子の波長依存性、および電子冷却シリコンCCD検出器の感度の波長依存性を用いてスペクトルの補正を行った。測定された補正済みの測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルを
図40に示す。
【0227】
その結果、入射光子2個から1個のアップコンバージョンされた光子が放出される効率を1と定義すると吸収波長400〜500nmの青色のアップコンバージョン発光の量子効率は24%であり、吸収波長650nm付近の有機増感分子からのりん光の量子収率は3%であった。
【0228】
〔実施例21〕
有機増感分子PtOEPの濃度を2.5×10
−5Mに変更したこと以外は、実施例20と同様にして、光波長変換要素の測定用試料を作製し、同様に連続波レーザー光(波長:532nm)を測定用試料に照射し、測定条件1(励起光:0.6W/cm
2、出力パワー:3mW、測定時間30秒)における光吸収スペクトル(
図41)及び測定条件2(励起光:0.1W/cm
2、出力パワー:0.5mW、測定時間5分)における光吸収スペクトル(
図42)を測定し、アップコンバージョン発光強度とりん光強度の経時変化を測定した。その結果、いずれの測定条件の場合でもアップコンバージョン発光強度とりん光強度に有意な変化は見られず、少なくともこの時間スケールでの経時安定性が確認された。