【文献】
J of Bone and Mineral Research, 2014, Vol.29, No.4, pp 935-943
【文献】
The New England Journal of Medicine, 2014, Vol.370, No.5, pp 412-420
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域が、SEQ ID NO:7で示されるHCDR1、SEQ ID NO:8または13で示されるHCDR2およびSEQ ID NO:9で示されるHCDR3を含み、該軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:10で示されるLCDR1、SEQ ID NO:11で示されるLCDR2およびSEQ ID NO:12で示されるLCDR3を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。
抗体またはその抗原結合フラグメントが、マウス抗体またはそのフラグメントである、請求項1に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
マウス抗体の重鎖可変領域配列が、SEQ ID NO:5またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも95%の同一性を有する配列として示される、請求項2に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
マウス抗体の軽鎖可変領域配列が、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:6に対して少なくとも95%の同一性を有する配列として示される、請求項2に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
マウス抗体の重鎖可変領域配列が、SEQ ID NO:5として示され、マウス抗体の軽鎖可変領域配列が、SEQ ID NO:6として示される、請求項2〜4のいずれか1項に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
抗体またはその抗原結合フラグメントが、キメラ化抗体もしくはヒト化抗体またはそれらのフラグメントである、請求項1に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
ヒト化抗体が、ヒト生殖細胞系列重鎖IGHV1-18*01のFR1、FR2、FR3およびFR4領域のフレームワーク配列、またはそれらの変異体を含み、好ましくは、変異配列が0〜10個のアミノ酸の逆突然変異を含む、請求項6に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
ヒト化抗体が、SEQ ID NO:14〜16もしくはそれらの変異体、またはSEQ ID NO:14〜16に対して少なくとも95%の同一性を有する配列から選ばれる重鎖可変領域配列を含む、請求項7に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
ヒト化抗体が、ヒト生殖細胞系列軽鎖IGKV1-39*01またはIGKV4-1*01のFR1、FR2、FR3およびFR4領域のフレームワーク配列、またはそれらの変異体を含み、好ましくは、変異配列が0〜10個のアミノ酸の逆突然変異を含む、請求項6に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
ヒト化抗体が、SEQ ID NO:17〜19もしくはこれらの変異体、またはSEQ ID NO:17〜19に対して少なくとも95%の同一性を有する配列から選ばれる軽鎖可変領域配列を含む、請求項9に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
ヒト化抗体が、SEQ ID NO:14〜16から選ばれる重鎖可変領域配列およびSEQ ID NO:17〜19から選ばれる軽鎖可変領域配列を含む、請求項6〜10のいずれか1項に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
(a)〜(c)のいずれかから選ばれる重鎖可変領域配列と軽鎖可変領域配列との組み合わせを含む、請求項11に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
(a)SEQ ID NO:14の重鎖可変領域配列およびSEQ ID NO:17の軽鎖可変領域配列、
(b)SEQ ID NO:15の重鎖可変領域配列およびSEQ ID NO:18の軽鎖可変領域配列、または、
(c)SEQ ID NO:16の重鎖可変領域配列およびSEQ ID NO:19の軽鎖可変領域配列
請求項6に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、ヒト化抗体の重鎖定常領域が、ヒトIgG1もしくはその変異体、ヒトIgG2もしくはその変異体、ヒトIgG3もしくはその変異体、またはヒトIgG4もしくはその変異体に由来する定常領域、好ましくは、ヒトIgG1もしくはその変異体またはヒトIgG4もしくはその変異体に由来する定常領域、最も好ましくは、ヒトIgG4またはその変異体に由来する定常領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。
SEQ ID NO:24〜26またはSEQ ID NO:24〜26に対して少なくとも90%の同一性を有する配列から選ばれる全長の重鎖配列を含む、請求項13に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
ヒト化抗体の軽鎖定常領域が、ヒトκもしくはλまたはそれらの変異体から選ばれる定常領域を含む、請求項6に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
SEQ ID NO:24〜26から選ばれる全長の重鎖配列およびSEQ ID NO:27〜29から選ばれる全長の軽鎖配列を含む、請求項6〜16のいずれか1項に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
ヒト化抗体が、以下の全長の軽鎖配列と全長の重鎖配列との組み合わせのいずれかから選ばれる、請求項17に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
Ab-10:SEQ ID NO:24の重鎖配列およびSEQ ID NO:27の軽鎖配列、
Ab-9:SEQ ID NO:25の重鎖配列およびSEQ ID NO:28の軽鎖配列、または、
Ab-5:SEQ ID NO:26の重鎖配列およびSEQ ID NO:29の軽鎖配列
骨量、骨塩密度、骨塩量または骨強度の少なくとも1つを増強するための薬物の製造における、請求項1〜18のいずれか1項に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは請求項22に記載の医薬組成物の使用。
疾患または障害が、骨粗鬆症、骨減少症もしくは変形性関節症、関節リウマチ、歯周病、または多発性骨髄腫から選ばれ、好ましくは骨粗鬆症である、SOST介在性の骨疾患または骨障害を治療するための薬物の製造における、請求項1〜18のいずれか1項に記載のヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは請求項22に記載の医薬組成物の使用。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、骨粗鬆症などの骨疾患の治療のための、新規標的に対して開発された新規の抗体を提供する。該抗体は、高い親和性、高い有効性、延長された半減期および少ない投与回数を特徴とする。さらに、本発明の新規の分子は高い溶解性と優れた安定性を有し、これは製剤の製造を容易とし、それにより製造原価が低減される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の抗体は、本明細書において開示される特異的ポリペプチド配列を含むキメラ化モノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体である。これらはヒト・スクレロスチンに対して高親和性に特異的に結合し、哺乳類、好ましくはヒトの骨量、骨塩密度、骨塩量および骨強度からなる群より選ばれる少なくとも1つを増加させるために使用することができる。
【0010】
本発明は、少なくとも1つのCDR領域を含むSOST抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ここで、該CDR領域は、以下の配列もしくはその変異体、または以下と少なくとも95%の同一性があるアミノ酸配列から選ばれる。
重鎖可変領域HCDR配列:SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8またはSEQ ID NO:9;および、
軽鎖可変領域LCDR配列:SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11またはSEQ ID NO:12
【0011】
本発明の好ましい実施態様では、抗体の重鎖可変領域が、下記の配列またはその変異体から選ばれる少なくとも1つのHCDR領域を含む、上記のSOST抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9
【0012】
本発明の好ましい実施態様では、抗体の軽鎖可変領域が、下記の配列またはその変異体から選ばれる少なくとも1つのLCDR領域を含む、上記のSOST抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12
【0013】
本発明の好ましい実施態様では、抗体が、HCDR領域配列として、SEQ ID NO:7 (HCDR1)、SEQ ID NO:8 (HCDR2)およびSEQ ID NO:9 (HCDR3)またはそれらの変異体、ならびにLCDR領域配列として、SEQ ID NO:10 (LCDR1)、SEQ ID NO:11 (LCDR2)およびSEQ ID NO:12 (LCDR3)またはそれらの変異体を含む、上記のSOST抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0014】
本発明の好ましい実施態様では、CDR領域の変異体が、抗体活性を最適化する1〜3個のアミノ酸変異を有するCDR領域であり、HCDR2領域の変異体が、好ましくはSEQ ID NO:13として示される、上記のSOST抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0015】
本発明の好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合フラグメントが、マウス抗体またはそのフラグメントである、上記のSOST抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0016】
本発明の好ましい実施態様では、前記マウス抗体の重鎖可変領域配列が、SEQ ID NO:5またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列として示される、上記のSOST抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0017】
本発明の好ましい実施態様では、 前記マウス抗体の軽鎖可変領域配列が、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:6に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列として示される、上記のSOST抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0018】
本発明の好ましい実施態様では、前記マウス抗体の重鎖可変領域配列が、SEQ ID NO:5として示され、前記マウス抗体の軽鎖可変領域配列が、SEQ ID NO:6として示される、上記のSOST抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0019】
本発明の好ましい実施態様では、抗体重鎖可変領域が、マウスIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4に由来する重鎖FR領域またはそれらの変異体をさらに含む、上記のマウス抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0020】
本発明の好ましい実施態様では、マウスIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4に由来する重鎖定常領域をさらに含む、上記のマウス抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0021】
本発明の好ましい実施態様では、抗体軽鎖可変領域が、マウスκもしくはλ鎖またはそれらの変異体から選ばれる軽鎖FR領域をさらに含む、上記のマウス抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0022】
本発明の好ましい実施態様では、マウスκもしくはλ鎖またはそれらの変異体から選ばれる軽鎖定常領域をさらに含む、上記のマウス抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0023】
本発明の好ましい実施態様では、前記抗体が、キメラ化抗体もしくはヒト化抗体またはそれらのフラグメントである、上記のSOST抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0024】
本発明の好ましい実施態様では、ヒト化抗体重鎖可変領域が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4に由来する重鎖FR領域またはそれらの変異体をさらに含む、上記のヒト化SOST抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0025】
本発明の好ましい実施態様では、ヒト化抗体重鎖可変領域上の重鎖FR領域配列が、ヒト生殖細胞系列重鎖IGHV1-18*01のFR1、FR2、FR3およびFR4領域のフレームワーク配列、またはそれらの変異体に由来し、好ましくは、変異配列が0〜10個のアミノ酸の逆突然変異を含む、上記のヒト化SOST抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0026】
本発明の好ましい実施態様では、ヒト化抗体が、SEQ ID NO:14〜16もしくはそれらの変異体、またはSEQ ID NO:14〜16に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列から選ばれる重鎖可変領域配列を含む、上記のヒト化SOST抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0027】
本発明の好ましい実施態様では、ヒト化抗体軽鎖可変領域上の軽鎖FR領域配列が、ヒト生殖細胞系列軽鎖IGKV1-39*01および/またはIGKV4-1*01のFR1、FR2、FR3およびFR4領域のフレームワーク配列、またはそれらの変異体に由来し、好ましくは、変異体が0〜10個のアミノ酸の逆突然変異を含む、上記のヒト化SOST抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0028】
本発明の好ましい実施態様では、ヒト化抗体が、SEQ ID NO:17〜19もしくはこれらの変異体、またはSEQ ID NO:17〜19に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列から選ばれる軽鎖可変領域配列を含む、上記のヒト化SOST抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0029】
本発明の好ましい実施態様では、ヒト化抗体が、SEQ ID NO:14〜16から選ばれる重鎖可変領域およびSEQ ID NO:17〜19から選ばれる軽鎖可変領域を含む、上記のヒト化SOST抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0030】
本発明の好ましい実施態様では、ヒト化抗体が、(a)〜(c)のいずれかから選ばれる重鎖可変領域配列と軽鎖可変領域配列との組み合わせを含む、上記のヒト化SOST抗体またはそのフラグメントが提供される:
(a)SEQ ID NO:14の重鎖可変領域配列およびSEQ ID NO:17の軽鎖可変領域配列、
(b)SEQ ID NO:15の重鎖可変領域配列およびSEQ ID NO:18の軽鎖可変領域配列、または、
(c)SEQ ID NO:16の重鎖可変領域配列およびSEQ ID NO:19の軽鎖可変領域配列。
【0031】
本発明の好ましい実施態様では、ヒト化抗体の重鎖定常領域が、ヒトIgG1もしくはその変異体、ヒトIgG2もしくはその変異体、ヒトIgG3もしくはその変異体、またはヒトIgG4もしくはその変異体に由来する定常領域、好ましくは、ヒトIgG1もしくはその変異体またはヒトIgG4もしくはその変異体に由来する定常領域、最も好ましくは、ヒトIgG4またはその変異体に由来する定常領域を含む、上記のヒト化SOST抗体またはそのフラグメントが提供される。定常領域は、性能を改変するため、「YTE」などの修飾を伴うこともできる。
【0032】
本発明の好ましい実施態様では、ヒト化抗体が、SEQ ID NO:24〜26またはSEQ ID NO:24〜26に対して少なくとも90%の同一性を有する配列から選ばれる全長の重鎖配列を含む、上記のヒト化SOST抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0033】
本発明の好ましい実施態様では、ヒト化抗体の軽鎖可変領域が、ヒトκもしくはλ鎖またはそれらの変異体から任意に選ばれる軽鎖FR領域をさらに含む、上記のヒト化SOST抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0034】
本発明の好ましい実施態様では、ヒトκもしくはλ鎖またはそれらの変異体から選ばれる軽鎖定常領域をさらに含む、上記のヒト化SOST抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0035】
本発明の好ましい実施態様では、ヒト化抗体が、SEQ ID NO:27〜29またはSEQ ID NO:27〜29に対して少なくとも90%の同一性を有する配列から選ばれる全長の軽鎖配列を含む、上記のヒト化SOST抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0036】
本発明の好ましい実施態様では、ヒト化抗体が、SEQ ID NO:24〜26から選ばれる全長の重鎖およびSEQ ID NO:27〜29から選ばれる全長の軽鎖を含む、上記のヒト化SOST抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0037】
本発明の好ましい実施態様では、ヒト化抗体が、以下のいずれかから選ばれる、全長の軽鎖配列と全長の重鎖配列との組み合わせを含む、上記のヒト化SOST抗体またはそのフラグメントが提供される:
Ab-10:SEQ ID NO:24として示される重鎖およびSEQ ID NO:27として示される軽鎖、
Ab-9:SEQ ID NO:25として示される重鎖およびSEQ ID NO:28として示される軽鎖、または、
Ab-5:SEQ ID NO:26として示される重鎖およびSEQ ID NO:29として示される軽鎖。
【0038】
本発明の好ましい実施態様では、抗原結合フラグメントがFab、Fv、sFvまたはF(ab’)
2である、上記のSOST抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される
【0039】
本発明は、上記のSOST抗体または抗原結合フラグメントの発現前駆体産物をコードするDNA配列をさらに提供する。
本発明は、上記のDNA配列を含む発現ベクターをさらに提供する。
本発明は、上記の発現ベクターにより形質転換された宿主細胞をさらに提供する。
【0040】
本発明の好ましい実施態様では、宿主細胞が哺乳類細胞、好ましくはCHO細胞である、上記の宿主細胞が提供される。
【0041】
本発明は、上記のSOST抗体またはその抗原結合フラグメント、および1種以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体を含む医薬組成物をさらに提供する。
本発明は、骨量、骨塩密度、骨塩量または骨強度の少なくとも1つを増強するための薬物の製造における、上記のSOST抗体またはその抗原結合フラグメント、またはこれらと同一のものを含む医薬組成物の使用をさらに提供する。
【0042】
本発明は、疾患または障害が、骨粗鬆症、骨減少症もしくは変形性関節症、関節リウマチ、歯周病、または多発性骨髄腫から選ばれ、好ましくは骨粗鬆症である、SOST介在性の骨疾患または骨障害を治療するための薬物の製造における、上記のSOST抗体またはその抗原結合フラグメント、またはこれらと同一のものを含む医薬組成物の使用をさらに提供する。
【0043】
本発明は、疾患または障害が、骨粗鬆症、骨減少症もしくは変形性関節症、関節リウマチ、歯周病、または多発性骨髄腫から選ばれ、好ましくは骨粗鬆症であり、上記のSOST抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはこれらと同一のものを含む医薬組成物の治療的有効量を、それが必要な患者に投与することを含む、SOST介在性の疾患または障害を治療または予防するための方法をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
薬物の投与量は、使用した具体的化合物の活性、患者年齢、患者体重、患者の健康状態、患者の食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬物の組み合わせ等を含む種々の要因により決まるが、これらに限定されるわけではないということは、当業者には周知のことである。さらに、治療方法、抗体またはその組成物の1日投与量、または薬学的に許容される塩の型などの最適な治療様式は、従来の治療計画に従って確認することができる。
【0047】
本発明をより理解しやすくするため、専門用語および科学用語を以下に具体的に定義する。本明細書の他の場所で具体的に定義される場合を除き、本明細書で使用される他のすべての専門用語および科学用語は、当業者により一般に理解されるものと同じ意味を持つ。
【0048】
〔用語〕
本明細書で用いられるアミノ酸の1文字記号および3文字記号は、J. Biol. Chem., 243, p3558(1968)で記述されているものである。
【0049】
本明細書において使用される場合、「スクレロスチン(Sclerostin)」もしくは「SOST」または「SOSTタンパク質」の用語は、スクレロスチン(SOST)遺伝子発現産物(タンパク質)を指す。例えばマウスSOST(m-SOST)またはカニクイザルSOST(cyno-SOST)など、他に特に規定がなければ、この用語は、本発明においてヒトSOST(h-SOST)を指す。本発明において用いられるヒト、マウスおよびカニクイザルSOSTのヌクレオチド配列はGenBankから得られ、例えばNP_079513.1は、ヒトSOSTタンパク質配列を与える。
【0050】
本明細書では、本発明の抗スクレロスチン抗体に関連する「抗体」(または単に「本発明の抗体」)の用語は、モノクローナル抗体を指す。本発明によるモノクローナル抗体またはmAbは、真核生物、原核生物またはファージのクローン細胞株に限られないが、単一クローン細胞株から得られた抗体を指す。モノクローナル抗体または抗原結合フラグメントは、例えば、ハイブリドーマ技術、組み換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術もしくは他の先行技術の組み合わせ、またはこの技術分野で容易に知ることができる他の技術などの、組み換えにより得ることができる。
【0051】
「モノクローナル抗体」もしくは「本発明の抗体」、または単に「抗体」は、完全なままの抗体(無傷または全長のFc領域を含む)である、または、抗原結合部分、例えば、キメラ化またはヒト化抗体のFabフラグメント、Fab’フラグメントまたはF(ab’)
2フラグメントを含む抗体の部分またはフラグメントである。特に好ましい本発明の抗体の抗原結合フラグメントは、哺乳類スクレロスチンの生物活性特性の1つ以上を、インビボまたはインビトロで阻害または中和する能力を保持する。例えば、一実施態様では、本発明の抗体の抗原結合部分は、ヒト・スクレロスチンと1種以上のそのリガンドとの相互作用を阻害する、および/または受容体を介したヒト・スクレロスチンの1種以上の機能を阻害する。
【0052】
さらに、本明細書において、「モノクローナル抗体」もしくは「本発明の抗体」、または単に「抗体」は、LCVRおよびHCVRをコードし、リンカー配列を有するDNA(Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, 第113巻、RosenburgおよびMoore編集、Springer-Verlag, ニューヨーク、ページ269〜315, 1994を参照)を結合することにより作成される単鎖Fvフラグメントであってもよい。抗原結合フラグメントまたは部分が特定されているかどうかに関わらず、本明細書において「抗体」の用語は、かかるフラグメントまたは部分および単鎖型を含む。他に示されない限り、タンパク質は、該タンパク質がスクレロスチンに特異的に結合する能力を保持する限りは、「抗体」の用語の中に含まれる。
【0053】
本発明の「抗スクレロスチン抗体」、「ヒト・スクレロスチンに対して特異的に結合する抗体」、「抗SOST抗体」、「抗SOST」、「SOST抗体」または「SOSTに結合する抗体」の用語は、十分な親和性を持ってSOSTに結合する能力のある抗体を指し、その結果、該抗体は、SOSTを標的とする診断薬および/または治療薬として使用することができる。
【0054】
本明細書において、「特異的結合」の用語は、競合的ELISA、BIACORE(登録商標)アッセイまたはKINEXA(登録商標)アッセイなどの、本技術分野で利用できる技術により測定されるものの用語である。例えば、該用語は、本発明の抗体の抗原結合ドメインが、多くの抗原が持つ特定のエピトープに対して特異的である場合に適用され、この場合、抗原結合ドメインを持つ抗体は、かかるエピトープを持つ様々な抗原に特異的に結合する。「エピトープ」の用語は、1種以上の抗体の抗原結合領域において、抗体により認識され、結合される分子部分を指す。
【0055】
本発明の抗体に関して「生物活性」の語句は、エピトープまたは抗原結合親和性、スクレロスチンの生物活性をインビボまたはインビトロで中和または弱める能力、ヒト・スクレロスチンおよびLRP-6に結合しブロックするスクレロスチン抗体のインビトロ結合実験(例えば、本明細書の実施例1および2で記述される)またはその他のインビトロ活性実験において測定されるIC50、抗体のインビボおよび/またはインビトロ安定性を含むが、これらに限定されない。上記の特性または特徴は、これらに限定されないがELISA、競合的ELISA、表面プラスモン共鳴分析、制限のないインビトロおよびインビボ中和測定、受容体結合および異なる起源(ヒト、霊長類を含む)または必要であれば任意の他の起源からの組織切片を用いる免疫組織化学を含む、本領域で技術的に認められた方法を用いて観察または測定することができる。
【0056】
スクレロスチンに関して「生物活性」の語句は、スクレロスチンの他のタンパク質(例えば受容体またはTGF-βファミリーメンバー)への特異的結合、ヒト・スクレロスチンの1種以上の受容体介在性機能、情報伝達、免疫特性、インビボまたはインビトロでの安定性、インビボまたはインビトロでの他のタンパク質のレベルまたは活性への影響(例えば、実施例1〜5を参照)、スクレロスチン発現レベルおよび組織分布を含むが、これらに限定されない。
【0057】
本明細書において、本発明の抗体の生物活性について「阻害する」または「中和する」の用語は、スクレロスチンの生物活性を実質的に弱める、阻止する、妨げる、抑制する、減じる、中断する、除去する、停止する、減少する、または無効にする能力を意味する(例えば、本明細書の実施例2において測定される。)。
【0058】
本明細書において「Kabat番号付け」の用語は、この技術分野で認知されており、抗体の重鎖および軽鎖領域の他のアミノ酸残基よりも、より可変である(すなわち超可変の)アミノ酸残基を番号付けする体系を指す(Kabat他、Ann. NY Acad. Sci. 190:382-93 (1971);Kabat他、Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版、U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242 (1991))。抗体可変領域におけるCDRの位置は、Kabat番号付けまたは単に「Kabat」に従う。
【0059】
本明細書中で互換的に用いられる「被験者」および「患者」の用語は、動物、特にヒトを指す。ある実施例において、被験者は、スクレロスチンのレベルの減少またはスクレロスチンの生物活性の低下から恩恵を受ける疾患もしくは障害または病気を患っていることによりさらに特徴付けられる。
【0060】
「ベクター」の用語は、ベクターが操作可能に結合された核酸を運ぶことのできる核酸分子を指す。かかる用語は、プラスミドおよびウイルスベクターを含むが、これらに限定されない。あるベクターは、ベクターが導入された宿主細胞中で自律性に複製する能力があるが、他のベクターは、宿主細胞に導入されれば、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、その結果、該ベクターは宿主ゲノムと共に複製される。さらに、あるベクターは、ベクターが操作可能に結合された遺伝子の発現を方向付ける能力がある。かかるベクターは、本明細書では、「組み換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ぶ。例示されたベクターは、本技術分野で周知である。
【0061】
本明細書では、「細胞」、「宿主細胞」および「細胞培養物」の語句は互換的に使用され、本発明のHCVR、LCVRまたは抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された本発明のすべてのポリヌクレオチドまたはすべての組み換えベクターのレシピエントである様々な細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞は、本発明のモノクローナル抗体またはその軽鎖もしくは重鎖を発現している1種以上の組み換えベクターまたはポリヌクレオチドで形質転換、形質導入または感染させた細胞を含む。
【0062】
全長抗体の各重鎖は、N-末端重鎖可変領域(本明細書では「HCVR」)および重鎖定常領域を含む。全長抗体の各軽鎖は、N-末端軽鎖可変領域(本明細書では「LCVR」)および軽鎖定常領域を含む。HCVRおよびLCVR領域は、相補性決定領域(「CDR」)と呼ばれる超可変領域にさらに細分される。CDRの中に分散された、より保存された領域は、フレームワーク領域(「FR」)と呼ばれる。特定の抗原またはエピトープに結合する抗体の機能的能力は、主に、抗体の可変領域に存在する6個のCDRにより影響を受ける。各HCVRおよびLCVRは、3個のCDR(HCVR中のHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにLCVR中のLCDR1、LCDR2およびLCDR3)および4個のFRを含み、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて次の順序で配列されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。CDRは、抗原と特異的な相互作用を形成する大部分の残基を含む。可変領域内におけるCDRの位置付けは、Kabatに従う。
【0063】
軽鎖はκまたはλとして分類され、本技術分野で知られるように、特定の定常領域により特徴付けられる。重鎖はγ、μ、α、δまたはεとして分類され、それぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEとして、抗体のアイソタイプを定義する。次に、これらのアイソタイプのいくつかは、さらにサブクラスに分割される。たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4である。各重鎖型は、本技術分野で容易に知られる配列を有する特定の定常領域により特徴付けられる。軽鎖定常領域κおよび重鎖定常領域IgG1、IgG2、IgG3、IgG4は、本発明の抗体において好ましい定常領域である。キメラ化抗体は、非ヒト起源、好ましくはラットまたはマウスからの定常領域を有してもよい。
【0064】
本明細書において、「抗原結合領域」または「抗原結合部分」は、抗体分子の可変領域内の一部分を指し、抗原と相互作用するアミノ酸残基を含み、抗体に抗原に対する特異性と親和性を与える。この抗体部分は、抗原結合残基の適切な高次構造の維持に対して必要なフレームワークアミノ酸残基を含む。
【0065】
本発明における好ましい抗体は、SEQ ID NO:7、8、9、10、11および12のアミノ酸配列を有する6個のCDRを含む。本発明におけるより好ましい抗体は、SEQ ID NO:19、27、28、32、36および40のアミノ酸配列を有する6個のCDRを含む。より好ましくは、本発明の抗体において最適化されたCDRは、親抗体に存在するCDRに比較した場合、少なくとも1個のアミノ酸置換を含み、本発明の抗体において最適化されたCDRは、SEQ ID NO:7、13、9、10、11および12のアミノ酸配列を有する6個のCDRを含む。好ましいこれらの抗体のCDRは、以下の表1で説明される位置に存在する。CDRは、Kabatに従って可変領域に配置される。
【0066】
本発明における好ましい抗体は、SEQ ID NO:14、15および16のアミノ酸配列を有するHCVRを含む。本発明における他の好ましいモノクローナル抗体は、SEQ ID NO:17、18および19のアミノ酸配列を有するLCVRを含む。より好ましくは、本発明の抗体は、SEQ ID NO:14のHCVRおよびSEQ ID NO:17のLCVRを含む。本発明の他の抗体は、SEQ ID NO:15のHCVRおよびSEQ ID NO:18のLCVRを含む。本発明におけるより好ましい抗体は、SEQ ID NO:16のHCVRおよびSEQ ID NO:19のLCVRを含む。本発明のかかるHCVRは、好ましくはヒト起源の重鎖定常領域に結合しており、好ましくはIgG1またはIgG4の重鎖定常領域に、最も好ましくはIgG4の重鎖定常領域に結合している。かかるLCVRは、好ましくは軽鎖定常領域に結合しており、好ましくはヒト起源の軽鎖定常領域に結合しており、好ましくはκ鎖に結合している。
【0067】
本発明におけるひとつの好ましい抗体は、SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチドおよびSEQ ID NO:27のアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドを含む。
本発明における他の好ましい抗体は、SEQ ID NO:25のアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチドおよびSEQ ID NO:28のアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドを含む。
本発明における他の好ましい抗体は、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチドおよびSEQ ID NO: 29のアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドを含む。
これらのSEQ ID NOは、以下の表1に記載される。
【0069】
本発明の抗体は、ヒト・スクレロスチンに対するK
Dが、好ましくは約10 nM、3 nM、1 nMまたは0.3 nM未満、より好ましくは約0.1 nM未満であることによりさらに特徴付けられる。さらに、かかる抗体は、カニクイザル・スクレロスチンに対するK
Dが、約10 nM、3 nM、1 nMまたは0.3 nM未満、より好ましくは約0.1 nM未満であることにより、さらに特徴付けられることが好ましい。
【0070】
本発明の抗体は、ヒト・スクレロスチンとLRP-6との結合を阻害する実験(例えば、本明細書の実施例2を参照)において測定されるように、好ましくはIC50が100 nM以下、約50または30 nM以下、より好ましくは約25 nM、さらに好ましくは約20 nM(例えば17.9 nM)以下であることによりさらに特徴付けられる。
【0071】
より好ましくは、本発明の抗体は、ヒト・スクレロスチンに対するK
Dが、約10 nM、3 nM、1 nMまたは0.3 nM未満、より好ましくは約0.1 nM未満であることによりさらに特徴付けられ、さらに、ヒト・スクレロスチンとLRP-6との結合を阻害する実験において測定されるように、IC50が100 nM以下、約50または30 nM以下、より好ましくは約25 nM、さらに好ましくは約20 nM(例えば17.9 nM)以下であることにより特徴付けられる。前記抗体の中の、6個のCDR、HCVR、LCVR、HCVRおよびLCVR、完全な重鎖、完全な軽鎖、または完全な重鎖および完全な軽鎖は、本明細書中のSEQ ID NOに示されるように、特定の配列により定義される。
【0072】
さらに好ましくは、本発明の抗体は、ヒト・スクレロスチンに対するK
Dが、約10 nM、3 nM、1 nMまたは0.3 nM未満、より好ましくは約0.1 nM未満であることによりさらに特徴付けられ、さらに、ヒト・スクレロスチンとLRP-6との結合を阻害する実験において測定されるように、IC50が100 nM以下、約50または30 nM以下、より好ましくは約25 nM、さらに好ましくは約20 nM(例えば17.9 nM)以下であることにより特徴付けられ;また、カニクイザル・スクレロスチンを用いることによるスクレロスチン抗体のインビトロELISA結合実験において測定されるように、K
Dが、10 nM、3 nM、1 nMまたは0.3 nM未満、より好ましくは0.1 nM未満であることによりさらに特徴付けられる。前記抗体の中の、6個のCDR、HCVR、LCVR、HCVRおよびLCVR、完全な重鎖、完全な軽鎖、または完全な重鎖および完全な軽鎖は、本明細書中のSEQ ID NOに示されるように、特定の配列により定義される。
【0073】
〔抗体の発現〕
本発明は、本発明の抗スクレロスチン抗体を発現する宿主細胞にも向けられる。本発明の抗体を産生する宿主細胞株の樹立と単離は、本技術分野で周知の標準技術を用いて達成することができる。
【0074】
原核生物(細菌)および真核生物発現系(酵母、バキュロウイルス、植物、哺乳類およびその他の動物細胞、遺伝子導入動物、ならびにハイブリドーマ細胞など)およびファージディスプレイ発現系を含む、本技術分野で周知の多種多様の宿主発現系は、本発明の抗体の発現に使用することができる。
【0075】
本発明の抗体は、宿主細胞における免疫グロブリン軽鎖および重鎖遺伝子の組み換え発現により調製することができる。組み換え技術により抗体を発現させるため、宿主細胞は、抗体の免疫グロブリン軽鎖および/または重鎖をコードするDNAフラグメントを運ぶ1種以上の組み換え発現ベクターにより、軽鎖および/または重鎖が宿主細胞で発現されるように、形質転換され、形質導入され、または感染されられる。重鎖および軽鎖は、これらが1種のベクターに操作可能に結合された異なるプロモーターから独立して発現されてもよく、あるいは、重鎖および軽鎖は、これらが2種のベクターに操作可能に結合された異なるプロモーターから独立して発現されてもよい(ひとつは重鎖を発現し、ひとつは軽鎖を発現する)。任意に、重鎖および軽鎖は異なる宿主細胞に発現されてもよい。
【0076】
さらに、組み換え発現ベクターは、宿主細胞から、抗スクレロスチン抗体軽鎖および/または重鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。抗スクレロスチン抗体軽鎖および/または重鎖遺伝子は、シグナルペプチドが操作可能に抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームに結合するように、ベクターにクローン化することができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチドでよい。好ましくは、組み換え抗体は、宿主細胞が培養される培養液中へ分泌され、この培養液から抗体が回収され、生成される。
【0077】
HCVR領域をコードする単離されたDNAは、HCVRをコードするDNAを、重鎖定常領域をコードする他のDNA分子に操作可能に結合させることにより、全長重鎖遺伝子に変換される。ヒトおよび他の哺乳類の重鎖定常領域遺伝子の配列は、本技術範囲において周知である。これらの領域を包含するDNAフラグメントは、例えば、標準的なPCR増幅により得ることができる。重鎖定常領域は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgA、IgE、IgMまたはIgD)、任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)またはサブクラスの定常領域、および、Kabat(上記)で説明されるこれらの任意のアロタイプ変異体でよい。好ましい重鎖定常領域は、IgG1もしくはその変異体の定常領域、またはIgG4もしくはその変異体を含む。
【0078】
LCVR領域をコードする単離されたDNAは、LCVRをコードするDNAを、軽鎖定常領域をコードする他のDNA分子に操作可能に結合させることにより、全長軽鎖遺伝子(およびFab軽鎖遺伝子)に変換される。ヒトおよび他の哺乳類の軽鎖定常領域遺伝子の配列は、本技術範囲において周知である。これらの領域を包含するDNAフラグメントは、例えば、標準的なPCR増幅により得ることができる。軽鎖定常領域は、κまたはλ定常領域である。
【0079】
本発明で使用される好ましい哺乳類宿主細胞は、CHO細胞(例えばATCC CRL-9096)、HEK 293E細胞(例えばATCC CRL-1573)、NS0細胞、SP2/0細胞およびCOS細胞(例えばATCC CRL-1650、CRL-1651)。さらに本発明で使用される宿主細胞には、他の哺乳類細胞、酵母細胞および原核細胞が含まれる。抗体遺伝子をコードする組み換え発現ベクターが哺乳類宿主細胞に導入されると、宿主細胞中で抗体を発現させるのに十分な期間、または、より好ましくは、宿主細胞が成長している培養液中へ抗体を分泌させるのに十分な期間、宿主細胞を培養することにより抗体が産生される。抗体は、標準的な精製法を用いることにより、宿主細胞および/または培養液から回収することができる。
【0080】
発現産物(全抗体の形態、軽鎖および重鎖、または免疫グロブリンの他の形態にある)は、硫安塩析、イオン交換、アフィニティー、逆相および疎水性相互作用カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む、本技術分野における標準的な方法に従って精製することができる。医薬用途としては、少なくとも約90%、92%、94%または96%の均一性のある実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、98〜99%以上の均一性が最も好ましい。ひとたび所望の均一性に精製、部分精製または精製されれば、本明細書で説明する通り、無菌抗体が薬学的に使用され得る。
【0081】
〔ヒト化抗体〕
治療目的で使用される本発明の抗体は、好ましくは、哺乳類に由来するフレームワークおよび定常領域の配列(抗体中に存在する程度まで)を有し、該抗体は、哺乳類において、治療抗体に対する免疫反応を誘導する治療抗体の可能性を低減させるための治療薬として使用される。ヒト化抗体は、治療への応用や、マウス起源の抗体またはマウス起源の部分を含む抗体がヒト被験者に投与される場合に、高い頻度で観察されるヒト抗マウス抗体反応の可能性の低減において有益であるため、ヒト化抗体は特に重要である。好ましくは、注入されたヒト化抗体は、例えばマウス抗体と比較した場合、自然に存在するヒト抗体に近い半減期を有し、その結果、被験者への投与頻度または投与量を低減することができる。
【0082】
本明細書において「ヒト化抗体」の用語は、少なくとも一部分がヒト起源である抗体を指す。例えば、ヒト化抗体は、非ヒト起源(マウスなど)の抗体に由来する部分とヒト起源の抗体に由来する部分を含み、例えば従来法(例えば合成)により互いに化学的に結合され、または遺伝子工学技術を用いて、近接するポリペプチドとして調製される。
【0083】
「ヒト化抗体」は、好ましくは、親抗体(例えば非ヒト抗体、好ましくはマウスモノクローナル抗体)が起源であるまたは由来するCDRを有するが、該抗体がヒト細胞で産生されるかどうかに関わらず、フレームワークおよび定常領域は、それが存在する程度(または、その主要部分もしくは基本部分が、例えば、少なくとも約90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%に至る程度)まで、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン領域(例えばthe International ImMunoGeneTics Databaseを参照)またはその組み換え型もしくは変異型に見られる核酸配列情報によりコードされる。好ましくは、ヒト化抗体の少なくとも2、3、4、5または6個のCDRは、ELISAアッセイなどのスクリーニングアッセイにより同定される、改善された特異性、親和性または中和作用などの所望の特性を生み出すために、ヒト化抗体が由来する非ヒト親抗体のCDRにより最適化される。好ましくは、本発明の抗体において最適化されたCDRは、親抗体に存在するCDAと比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。本発明のヒト化抗体のCDRにおけるアミノ酸置換は、親抗体のCDRと比較して(本明細書の実施例4を参照)、抗体の不安定性の可能性を低下させる(例えばCDR中のAsn残基の除去)、または、被験者に投与する場合において、抗体の免疫原性を低下させる(例えばIMMUNOFILTERTM技術により予測されるように)。
【0084】
ヒト化抗体は、好ましくは、非ヒト抗体に由来する最小配列を含む。ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、親抗体から移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見出されない残基を含むことができる。ヒト化抗体は、本技術分野における常法を用いて、インビトロ変異原性試験を行うことができる。その結果、ヒト化組み換え抗体のHCVRおよびLCVR領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列HCVRおよびLCVR配列に関連するものに由来するが、インビボでヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に自然に存在する配列でなくてもよい。ヒト化組み換え抗体のHCVRおよびLCVRフレームワーク領域のかかるアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列配列に対して、少なくとも90%、92%、94%、95%、96%、98%またはそれ以上、好ましくは少なくとも99%以上、最も好ましくは100%の相同性を有することが期待される。
【0085】
好ましい実施態様では、本発明のヒト化抗体は、ヒト生殖細胞系列重鎖フレームワーク配列およびヒト生殖細胞系列軽鎖フレームワーク配列を含む。かかるフレームワーク配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含める公共DNAデータベースから、または公表された参考文献から取得することができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、ヒト生殖細胞系列配列データベースである「VBase」で見出すことができ(ウェブ
www.mrccpe.com.ac.uk/vbaseで入手可能)、またKabat, EAら、1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版で見出すことができる。本発明の好ましい実施態様では、SOSTヒト化抗体のマウスCDR配列は、SEQ ID NO:7、8、9、10、11および12から選ばれる。ヒト抗体可変領域フレームワークは設計され選択されるが、ここで、抗体の軽鎖可変領域に関する軽鎖FR領域配列は、ヒト生殖細胞系列軽鎖IGKV1-39 * 01およびIGKV4-1 * 01のFR1、FR2、FR3領域およびFR4領域に由来し、また、抗体の重鎖可変領域に関する重鎖FR領域配列は、ヒト生殖細胞系列重鎖IGHV1-18*01のFR1、FR2、FR3領域およびFR4領域に由来する。
【0086】
本技術分野において、ヒト化抗体を産生するために利用可能な方法がいくつかある。例えば、ヒト化抗体は、スクレロスチン、好ましくはヒト・スクレロスチンに特異的に結合する親抗体(例えば、マウス抗体またはハイブリドーマにより産生される抗体)のHCVRおよびLCVRをコードする核酸配列を得ることにより産生することができる。ここでは、該HCVRおよびLCVR(非ヒト)におけるCDRを同定し、かかるCDRをコードする核酸配列を、選択されたヒト・フレームワークをコードする核酸配列に移植する。CDR領域は、任意に、ランダム突然変異誘発により、または、CDR領域をフレームワーク領域に移植する前に、異なるアミノ酸を持つCDRにおいて1個以上のアミノ酸を置換するための特定の位置での突然変異誘発により最適化される。また、CDR領域は、ヒト・フレームワーク領域に挿入した後で、当業者に入手可能な方法を用いて最適化される。
【0087】
CDRをコードする配列を、選択されたヒト・フレームワークをコードする配列に移植した後、結果として得られたヒト化可変重鎖および可変軽鎖配列をコードするDNA配列が発現され、スクレロスチンに結合するヒト化抗体が産生される。ヒト化HCVRおよびLCVRは、全抗スクレロスチン抗体分子の部分として、すなわちヒト定常部ドメイン配列を有する融合タンパク質として発現される。しかしながら、HCVRおよびLCVR配列は、定常部配列の存在しない、ヒト化抗スクレロスチンFvを産生するようにも発現される。
【0088】
使用することのできる、マウス抗体のヒト化を含む方法をさらに記載する参考文献には、例えば、Queenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2869, 1991およびWinterとその共働者の方法[Jonesら、Nature, 321:522 (1986);Riechmannら、Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyenら、Science, 239:1534 (1988)]が含まれる。
【0089】
〔治療用途〕
本発明の抗スクレロスチンモノクローナル抗体を含む医薬組成物は、それを必要としている被験者に有効量が投与された場合、脊椎骨もしくは非脊椎骨またはその両方において、骨量、骨塩密度、骨塩量または骨強度の少なくとも1つを増加させるために使用することができる。本発明の抗スクレロスチンモノクローナル抗体を含む医薬組成物は、それを必要としている被験者に有効量が投与された場合、脊椎骨および/または非脊椎骨の骨折の発生を減少させるために使用することができる。骨折の発生の減少には、未治療の対照集団と比較した場合には、被験者に対する骨折の可能性または実際の発生率の減少が含まれる。
【0090】
さらに、本発明の抗体は、スクレロスチンの存在が、好ましくない病理学的効果の原因または一因となっている場合に、または、スクレロスチンのレベルもしくはスクレロスチンの生物活性の減少が、被験者において治療的有用性を有する場合に、病気、疾患または障害の治療に有用である。そのような病気、疾患または障害には、骨粗鬆症、骨減少症、変形性関節症、変形性関節症に伴う疼痛、歯周病または多発性骨髄腫が含まれるが、これらに限定されない。被験者は男性または女性である。好ましくは、被験者は、椎骨および/または非脊椎骨の骨折のリスクがあり、より好ましくは、被験者は、骨粗鬆症のリスクがあるか、または骨粗鬆症を患っている。被験者は、好ましくは女性であり、より好ましくは、閉経後骨粗鬆症のリスクまたは閉経後骨粗鬆症を有する女性である。骨粗鬆症のいかなるステージにある被験者でも、本発明の方法から恩恵が得られることが期待される。
【0091】
さらに、上記の疾患の少なくとも1つの治療のための薬物の製造において、本発明の抗体の使用が期待される。
【0092】
「治療」および「治療する」の用語は、本明細書に記載された疾患の悪化の緩徐化、中断、抑止、制御または停止というすべての過程を指すことが意図されているが、必ずしもすべての疾患症状の完全な消失を意味しない。本明細書では、「治療」には、哺乳類、特にヒトにおける疾患または障害の治療のために、本発明の化合物を投与することが含まれ、また、(a)疾患がさらに悪化することの抑制、すなわち疾患の進行抑止、および(b)疾患の緩和、すなわち疾患もしくは障害の軽減を引き起こすこと、または疾患もしくは障害の症状もしくは合併症を軽減することが含まれる。投与方法は調整することができ、求められる最適な反応(例えば治療効果)をもたらすことができる。例えば、単回急速投与してもよく、数回に分割して、時間をかけて独立に投与してもよく、または、投与量を、治療状況の緊急の程度に応じて、比例的に減少または増加させてもよい。
【0093】
〔医薬組成物〕
本発明の抗体は、被験者への投与に適した医薬組成物に組み入れることができる。本発明の抗体は、単独で、または薬学的に許容される担体および/または希釈剤と組み合わせて、単回投与または反復投与により投与してもよい。かかる医薬組成物は、選択された投与方法に適するように設計され、また、分散剤、緩衝液、界面活性剤、防腐剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などの薬学的に許容される希釈剤、担体および/または賦形剤が適切に用いられる。前記組成物は、例えば、専門家に一般に知られる製剤技術の概要を提供する、Remington, The Science and Practice of Pharmacy、第19版、編集者Gennaro、Mack Publishing Co., Easton, PA 1995に開示される従来技術に従って設計することができる。医薬組成物に対して適切な担体には、本発明のモノクローナル抗体と組み合わせた場合に、その分子活性を保持し、被験者の免疫系と非反応である任意の材料が含まれる。
【0094】
本発明の抗スクレロスチンモノクローナル抗体を含む医薬組成物は、本明細書で示された、例えば骨粗鬆症、変形性関節症または他の骨変性疾患のリスクがある、またはそれらの症状を示す被験者に、標準的投与方法を用いて投与することができる。
【0095】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、本発明の抗体の「有効量」を含む。有効量とは、所望の治療結果を実現するのに必要な(投与量もしくは投与期間または投与手段に対する)量を指す。抗体の有効量は、疾患状態、年齢、性別もしくは個人の体重、または個人において所望の反応を引き出す抗体もしくは抗体部分の能力などの要因に従って、変動する。また有効量は、治療的に有用な効果が、抗体の毒性または有害効果を上回る量である。
【0096】
有効量は、被験者への治療的有用性を与えるのに必要な活性薬剤の、少なくとも最小用量であるが、毒性用量より少ない。すなわち、本発明の抗体の有効量または治療的有効量は、哺乳類、好ましくはヒトにおいて、(i)骨量、骨塩密度、骨塩量または骨強度の少なくとも1つを増加させる量、もしくは(ii)スクレロスチンの存在が、好ましくない病理学的効果の原因または一因である場合に、病気、疾患または障害を治療する量、または(iii)スクレロスチンのレベルまたはスクレロスチンの生物活性の減少が、哺乳類、好ましくはヒトにおいて、有益な治療効果をもたらす量であり、前記の病気、疾患または障害には、骨粗鬆症、骨減少症、変形性関節症、関節リウマチ、歯周病または多発性骨髄腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0097】
以下、本発明を、実施例を参照してさらに説明する。しかしながら、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0098】
本発明の実施例または試験例において、具体的な条件が記載されていない場合、実験は、通常、従来の条件下で、または原料または製品の製造者により提案された条件に従って実施される。Sambrookら、Molecular Cloning, Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory;Contemporary Molecular Biology Approach, Ausubelら著、Greene Publishing Association, Wiley Interscience, NYを参照する。試薬の供給源が具体的に示されていない場合、該試薬は、市販の従来試薬である。
【実施例1】
【0099】
〔SOSTのクローニングと発現〕
Hisタグを持つヒト・スクレロスチン(His-h-SOST)のコード配列、Flagタグを持つヒト・スクレロスチン(h-SOST-Flag)のコード配列、Flagタグを持つマウス・スクレロスチン(m-SOST-Flag)のコード配列、およびFlagタグを持つカニクイザル・スクレロスチン(cyno-SOST-Flag)のコード配列は、CROであるShanghai Xuguan Biotechnology Development Co., Ltdにより合成され(上記のスクレロスチン組み換えタンパク質のテンプレート配列は、本発明により設計された。)、pTT5ベクター(Biovector、カタログ番号102762)にそれぞれクローン化された。組み換えSOSTタンパク質は293細胞に発現させ、実施例で精製された。精製されたタンパク質は、以下の実施例の実験で使用することができる。
【0100】
His-h-SOSTのDNA配列:
h-SOST-FlagのDNA配列:
m-SOST-FlagのDNA配列:
cyno-SOST-FlagのDNA配列:
【実施例2】
【0101】
〔SOST組み換えタンパク質の精製〕
(1)Hisタグを持つSOST組み換えタンパク質の精製ステップ
細胞発現上清を高速遠心分離して不純物を除去し、緩衝液をPBSに交換し、イミダゾールを終濃度5 mMで添加した。ニッケルカラムを5 mMイミダゾールを含むPBS溶液で平衡化し、2〜5カラム量で洗浄した。続いて、上清をカラム上に充填した。カラムを、5 mMイミダゾールを含むPBS溶液で、A
280測定値がベースラインまで減少するまで洗浄した。次に、クロマトグラフィーカラムをPBS+10 mMイミダゾールで洗浄して、非特異的に結合したタンパク質を除去し、溶出液を回収した。目的タンパク質は、300 mMイミダゾールを含むPBS溶液で溶出し、溶出ピークを集めた。
【0102】
集めた溶出物は、イオン交換(SPカラム)によりさらに精製した。A液の調製:0.01 M PB、pH 8.0。B液の調製:A液+1 M NaCl。イミダゾールを含むPBS溶液で溶出した目的タンパク質は、先ずA液に対して透析した。SPカラムをA液で平衡化し;サンプルを充填し;B液の濃度勾配を0〜100%として;目的タンパク質を10カラム量で溶出し、溶出ピークを集めた。得られたタンパク質は、電気泳動、ペプチドマッピングおよびLC-MSにより同定し、誤りのないサンプルを、使用のために等分した。Hisタグを持つヒト・スクレロスチン(His-h-SOST)が得られた。
【0103】
(2)Flagタグを持つSOST組み換えタンパク質の精製ステップ
サンプルは高速遠心分離して不純物を除去し、適当な量に濃縮した。Flagアフィニティーカラムを0.5×PBSで平衡化し、2〜5カラム量で洗浄した。次に、細胞発現上清サンプルを、不純物を除去した後、カラム上に充填した。カラムは、0.5×PBSで、A
280測定値がベースラインまで減少するまで洗浄した。次に、カラムを0.3 M NaClを含むPBSで洗浄し、不純物タンパク質を洗い流して集めた。目的タンパク質は、0.1 M酢酸(pH 3.5〜4.0)で溶出して回収し、pHを中性に調整した。回収したサンプルは、電気泳動、ペプチドマッピングおよびLC-MSにより同定し、誤りのないサンプルを、使用のために等分した。
【0104】
Flagタグを持つヒト・スクレロスチン(h-SOST-Flag)、Flagタグを持つマウス・スクレロスチン(m-SOST-Flag)およびFlagタグを持つカニクイザル・スクレロスチン(cyno-SOST-Flag)が得られ、本発明において、抗体の性能試験に使用した。
【実施例3】
【0105】
〔抗ヒトSOSTモノクローナル抗体の産生〕
抗ヒトSOSTモノクローナル抗体は、免疫マウスにより産生された。実験用SJL白色マウス、雌性、6週齢(Beijing Weitong Lihua Experimental Animal Technology Co., Ltd., 動物生産許可番号:SCXK (Beijing) 2012-0001)。
飼育環境:SPFレベル。マウスを購入した後、マウスは、実験室で、12/12時間の明暗サイクル、20〜25℃の温度、40〜60%の湿度で1週間飼育した。環境に馴化したマウスは、各群10匹のマウスの2群(A/B)に分けた。
【0106】
Hisタグを持つヒトSOST組み換えタンパク質を、免疫原として使用した。A群においては、フロイントアジュバント(Sigma、ロット番号:F5881/F5506)を乳化のために用いた。初回免疫はフロイント完全アジュバント(CFA)を用いて行い、追加免疫はフロイント不完全アジュバント(IFA)を用いて行った。抗原とアジュバントの比率は1:1、200μL/200μg/マウス(初回免疫)、200μL/100μg/マウス(追加免疫)とした。B群においては、Titermax(Sigma、ロット番号:T2684)およびAlum(Thremo、ロット番号:77161)を用いて交差免疫を行った。抗原とアジュバント(Titermax)の比率は1:1、抗原とアジュバント(Alum)の比率は3:1、200μL/200μg/マウス(初回免疫)、200μL/100μg/マウス(追加免疫)とした。抗原は乳化し、第0、14、28、42、56日に接種した。
【0107】
第0日に、A/B群のマウスに対し、乳化した抗原を50μg/マウスで腹腔内(IP)注射した。第14日に、マウスに対し、複数箇所(通常、背部に6〜8箇所)に、25μg/マウスで皮下(s.c.)注射した。第28および42日に、抗原の背部または腹腔内注射を、背部のしこりおよび腹部の腫脹状態によって選択した。追加免疫は、脾細胞融合の3日前に、生理食塩水で処方した抗原溶液の腹腔内(IP)注射により、200μg/マウスで行った。
【0108】
血中力価測定は、第22、36、50および64日に行った。ヒト・スクレロスチンに対するマウス血清の結合活性は、試験例1のELISA法により測定した。この結果を表2に示した。第4回免疫後、高い血清中力価を持ち、プラットフォームとして役立つマウスを選抜し、脾細胞融合に供した。ハイブリドーマ細胞は、最適化されたPEG介在融合手順を用いて、脾細胞をミエローマSp2/0細胞(ATCC(登録商標)、CRL-8287
TM)と融合することにより得た。マウス血清中の抗ヒトSOST抗体によるヒトSOSTとヒトLRP-6との結合を阻害する活性は、試験例2のようにして検出し、インビトロで優れた結合活性および阻害活性を示すモノクローナルハイブリドーマ細胞株Ab-1を選択した。その結果を表2に示した。
【0109】
【表2】
【実施例4】
【0110】
〔マウス抗ヒト・スクレロスチン抗体のヒト化〕
インビトロで優れた生物活性を示すモノクローナルハイブリドーマ細胞株Ab-1を選択した。このハイブリドーマを配列決定し、さらにヒト化、組み換え発現および活性評価を行った。
【0111】
ハイブリドーマ配列決定の過程は以下のように実施した。ハイブリドーマ細胞を対数増殖期で回収し、RNAをTrizol(Invitrogen 15596-018、キット使用説明書に従った)で単離した後、RNAの逆転写(PrimeScript(登録商標)逆転写酵素、タカラ、カタログ番号2680A)を使用説明書の通りに行った。逆転写により得られたcDNAは、マウスIgプライマーセット(Novagen、TB326 Rev.B 0503)を用いてPCRにより増幅し、配列決定会社において配列決定した。得られたDNAに対応するアミノ酸配列は、SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6として示される。
【0112】
ハイブリドーマ細胞から得られた重鎖可変領域:
ハイブリドーマ細胞から得られた軽鎖可変領域:
【0113】
マウス抗ヒトSOSTモノクローナル抗体のヒト化は、本技術分野の多数の文献に開示された方法通りに行った。簡単には、親(マウス抗体)の定常領域ドメインをヒト定常領域ドメインで置き換え、ヒト抗体生殖細胞系列を、マウス抗体とヒト抗体との間の相同性に従って選択した。本発明において優れた活性を示す候補分子をヒト化し、その結果は以下の通りであった。
(1)マウス抗スクレロスチン抗体のCDR領域
VH/VL CDRのアミノ酸残基を同定し、Kabat番号付け体系によりアノテートした。
本発明において、マウスAb-1のCDR配列は表3に示される。
【0114】
【表3】
【0115】
(2)ヒト生殖細胞系列のFR領域配列の選択
マウス抗体のVH/VL CDRの代表的構造に基づいて、重鎖および軽鎖の可変領域配列を抗体Germlineデータベースと比較し、高い相同性を有するヒト生殖細胞系列テンプレートを選択した。ここで、ヒト生殖細胞系列軽鎖のフレームワーク領域は、ヒトκ軽鎖遺伝子に由来し、好ましくは、ヒト生殖細胞系列軽鎖テンプレートのIGKV1-39*01またはIGKV4-1*01が本発明において選択された。ヒト生殖細胞系列重鎖のフレームワーク領域は、ヒト重鎖に由来し、好ましくは、ヒト生殖細胞系列重鎖テンプレートのIGHV1-18*01が本発明において選択された。マウス抗体Ab-1のCDR領域は、ヒト化可変領域を置き換えた後、IgG定常領域と再結合して、選択されたヒト化テンプレートに移植された。マウス抗体の三次元構造に基づき、包埋残基、CDR領域と直接相互作用する残基、およびVLおよびVHの高次構造に重要な作用を持つ残基について、逆突然変異を行った。また、CDR領域の化学的不安定性を示す残基(重鎖CDR2は最適化され、新たな重鎖CDR2配列DIDPNDGDILYNQKFRD、SEQ ID NO:13が得られた。)は最適化され、最終的なヒト化分子が得られた。最終的なヒト化分子の重鎖可変領域配列は、SEQ ID NO:14〜16として示され、これらの配列は、SEQ ID NO:20〜22として示される重鎖定常領域のいずれかと結合させることができる。最終的なヒト化分子の軽鎖可変領域配列は、SEQ ID NO:17〜19として示され、これらの配列は、SEQ ID NO:23として示される軽鎖定常領域配列と、それぞれ結合させることができる。
【0116】
1)重鎖可変領域:
Ab-5の重鎖可変領域:
Ab-9の重鎖可変領域:
Ab-10の重鎖可変領域:
【0117】
2)各抗体の重鎖定常領域は以下の配列のいずれかである:
ヒトIgG4(Kアミノ酸残基は欠失)の重鎖定常領域:
ヒトIgG4の重鎖定常領域:
ヒトIgG2の重鎖定常領域:
【0118】
3)軽鎖可変領域:
Ab-5の軽鎖可変領域:
Ab-9の軽鎖可変領域:
Ab-10の軽鎖可変領域:
【0119】
4)軽鎖定常領域はヒトκ鎖に由来する:
【0120】
抗体は、遺伝子クローニングおよび組み換え発現により、クローン化され、発現され、また精製された後、結合ELISAアッセイ(試験例1および試験例3)、抗原と受容体との結合阻害アッセイ(試験例2)、ビアコア(Biacore、試験例4)、細胞活性測定(試験例5)などにより検出された。最終的に、最高の活性を保持するヒト化抗体Ab-5、Ab-9およびAb-10が選ばれ、配列は以下に示される:
ヒト化抗体Ab-10:
重鎖:
軽鎖:
ヒト化抗体Ab-9:
重鎖:
軽鎖:
ヒト化抗体Ab-5:
重鎖:
軽鎖:
本発明のヒト化抗ヒトSOST抗体とヒト・スクレロスチン(h-SOST-Flag)との結合活性のデータは、表4に示される。
【0122】
〔結合ELISAアッセイ〕
スクレロスチン抗体は、スクレロスチンと、細胞膜上のスクレロスチン受容体との結合を阻害し、それによって、スクレロスチンの下流シグナル伝達経路を阻害する。ELISA実験を、スクレロスチン抗体の結合特性の検出に用いた。Flagタグを持つスクレロスチン(h-SOST-FLAG、SEQID NO:2によりコードされる)を、ビオチン標識キット(同人化学、LK03)によりビオチン化し、96ウェルEIA/RIAプレート上に、プレート上にコートしたストレプトアビジンへの結合を用いて固定化した。抗体を添加した後、シグナル強度を用いて、抗体とヒト・スクレロスチンとの結合活性を測定した。
【0123】
ストレプトアビジン(Sigma、S4762-5MG)をPBS、pH 7.4(Sigma、P4417-100TAB)で希釈し、5μg/mLの濃度とした。これを、50μL/ウェルの量で、96ウェルEIA/RIAプレート(Corning、CLS3590-100EA)に添加した後、プレートを、インキュベーター中で37℃、2時間インキュベートした。液体を捨てて、プレートを、PBS中で5%脱脂乳(Guangming skim milk)を含むブロッキング溶液の200μL/ウェルでブロックし、インキュベーター中で37℃、2.5時間または4℃、一晩(16〜18時間)インキュベートした。ブロッキング後、ブロッキング溶液を捨て、プレートをPBST緩衝液(pH 7.4、0.05% Tween-20を含むPBS)で5回洗浄した。ビオチン化SOST-FLAGタンパク質(R&D SYSTEM、1505-LR-025)をサンプル希釈緩衝液(pH 7.4、1% BSAを含むPBS)で0.5μg/mLに希釈し、各ウェルに50μL/ウェルで添加した後、プレートをインキュベーター中で37℃、2時間インキュベートした。インキュベート後、プレート中の反応溶液を捨て、プレートをPBSTで6回洗浄した。次に、サンプル希釈緩衝液で段階希釈した抗体を50μL/ウェルで添加し、プレートをインキュベーター中で37℃、2時間インキュベートした。インキュベート後、プレートをPBSTで6回洗浄し、サンプル希釈緩衝液で希釈したHRP標識ヤギ抗マウス二次抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号115-035-003)またはHRP標識ヤギ抗ヒト二次抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号109-035-003)を100μL/ウェルで添加し、37℃、1時間インキュベートした。プレートをPBSTで6回洗浄した後、50μL/ウェルのTMB基質(KPL、カタログ番号52-00-03)を各ウェルに添加し、室温で10〜15分間インキュベートした。反応は、50μLの1 M H
2SO
4を各ウェルに添加することにより停止した。NOVOStarマイクロプレートリーダーを用い、450 nmの波長でOD値を読み取った後、本発明のスクレロスチン抗体とヒト・スクレロスチンとの結合のEC50値を算出した。この結果を表4に示した。
【0125】
この結果より、本発明のヒト化抗ヒトSOST抗体は、親抗体と同じ結合活性を維持することが示された。
【0126】
〔スクレロスチンとLRP-6との結合を阻害する抗SOST抗体のアッセイ〕
スクレロスチンは、細胞膜上のwnt/β-カテニンシグナル伝達経路の共受容体LRP5/LRP-6と結合し、wnt/β-カテニンシグナル伝達経路の活性を阻害して、骨形成を阻止する。この実験において、選別された抗ヒトSOST抗体の、ヒトSOST/サルSOSTとヒトLRP-6との結合を阻止する活性が、インビトロ阻害アッセイを用いて検出された。陽性対照はロモソズマブ(Romosozumab);製造方法は参考文献WHO Drug Information, Vol. 25, No. 4, 2011, 413-465, P434に記載の通りである。)であった。
【0127】
方法は、ヤギ抗ヒトFc抗体を96ウェルEIA/RIAプレート上にコートした後、LRP-6-Fc融合タンパク質を添加し、インキュベートするというものである。ビオチン化スクレロスチンタンパク質と抗スクレロスチン抗体を一緒にインキュベートした後、そのプレートに添加しインキュベートした。プレートを洗浄後、ビオチン化スクレロスチンとLRP-6との結合量を測定し、スクレロスチン抗体の阻害活性のIC50値を算出した。
【0128】
ヤギ抗ヒトFc抗体をpH 7.4のPBS緩衝液(Sigma、P4417-100TAB)で希釈し、1μg/mLの濃度として、96ウェルEIA/RIAプレートに100μL/ウェルの量で添加した後、プレートを37℃で2時間インキュベートした。液体を捨てた後、プレートを、PBS中で5%脱脂乳(Guangming skim milk)を含むブロッキング溶液200μL/ウェルでブロックし、37℃で2.5時間インキュベートした。ブロッキング後、ブロッキング溶液を捨て、プレートを、PBST緩衝液(pH 7.4、0.05% Tween-20を含むPBS)で5回洗浄した。LPR-6-Fc融合タンパク質(R&D SYSTEM、1505-LRP-025)をサンプル希釈緩衝液(pH 7.4、1% BSAを含むPBS)で1μg/mLに希釈し、50μL/ウェルで添加した後、プレートを37℃で2時間インキュベートした。ヒト・スクレロスチンタンパク質(R&D SYSTEM、1406-ST/CF)を、1.12μg/mLの濃度でビオチン標識キット(同人化学、LK03)を用いて標識し、30μL/ウェルの量で希釈プレートに添加した。そこへ、適当な濃度に希釈した被験スクレロスチン抗体を、30μL/ウェルで各ウェルに添加した後、プレートを混合し、インキュベーター中で37℃、2時間インキュベートした。インキュベート後、プレートの反応溶液を捨てた。プレートは、PBSTで6回洗浄した後、希釈プレートの抗原と抗体との混合物をプレートに添加し、4℃で一晩(16〜18時間)インキュベートした。プレートの溶液を捨て、プレートをPBSTで6回洗浄した。次に、サンプル希釈緩衝液で1:600の比率で希釈したストレプトアビジン−ペルオキシダーゼポリマー(Sigma、S2438-250UG)を、50μL/ウェルで各ウェルに添加し、プレートは、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBSTで6回洗浄した後、50μL/ウェルのTMB基質(KPL、カタログ番号52-00-03)を各ウェルに添加し、室温で3〜10分間インキュベートした。反応は、50μLの1 M H
2SO
4を各ウェルに添加することにより停止した。450 nmの波長でのOD値をNOVOStarマイクロプレートリーダーで読み取った後、ヒト・スクレロスチンとLRP-6との結合を阻害するスクレロスチン抗体のIC50値を算出した。この結果を表5に示した。
【0129】
上記の方法により、サル・スクレロスチン(SEQ ID NO:4によりコードされ、発現される)とLRP-6との結合を阻害する、本発明のスクレロスチン抗体のIC50値を測定することができる。この結果を表5に示した。
【0130】
【表5】
(注)N/Aは未測定を示す。
【0131】
結果より、本発明のヒト化抗ヒトSOST抗体の、ヒト/サル・スクレロスチンとLRP-6との結合を阻止する阻害活性は、陽性抗体であるロモソズマブの阻害活性に匹敵することが示される。
【0132】
〔ビアコア(Biacore)測定〕
ヒト化抗SOST抗体の、ヒト、サルおよびマウスSOSTとの親和性を測定するため、ビアコア(GE)を使用した。
一定量の被験抗体の親和性捕獲のための抗ヒト捕獲抗体を、ヒト抗体捕獲キット(GE、カタログ番号BR-1008-39)の使用説明書に記載の方法に従って、ビアコア装置(GE、ビアコアX100)のCM5バイオセンサーチップ(GE、カタログ番号BR-1000-12)に共有結合的に結合させた。次に、濃度勾配をつけたSOST抗原(ヒトSOST、R&D SYSTEM、カタログ番号1406-ST-025/CF, R&D;サルSOST、cyno-SOST-Flag、精製により取得した。実施例1のSEQ ID NO:4によりコードされる。;マウスSOST、m-SOST-Flag、精製により取得した。実施例1のSEQ ID NO:3によりコードされる。)を、バイオチップの表面に流した。反応シグナルは、ビアコア装置(GE、BiacoreX100)を用いてリアルタイムに検出し、会合解離曲線を得た。実験における解離の各サイクルが終了した後、バイオチップを洗浄し、ヒト抗体捕獲キットの再生溶液で再生させた。実験で使用したアミノ基結合キット(GE、カタログ番号BR-1000-50)はGEより購入し、緩衝液はHBS-EP+10×緩衝液(GE、カタログ番号BR-1006-69)であり、この緩衝液は、脱イオン水で1×(pH 7.4)に希釈した。
得られたデータは、(1:1)ラングミュア(Langmuir)モデルを用いるBIAevaluationバージョン4.1ソフトウェア、GEによりフィットさせ、親和性値を出力した。この結果を表6に示した。
【0133】
【表6】
(注)noは親和性の未測定を示す。
【0134】
本発明のヒト化抗体Ab-5は、ヒトSOSTおよびサルSOSTに対して高い親和性を有し、かかる親和性は、陽性分子と比較して10倍以上高い。
【0135】
〔細胞に対する抗スクレロスチン抗体の活性試験〕
この試験では、細胞に対する本発明のSOST抗体のインビトロ活性を、細胞のアルカリホスファターゼ(ALP)活性を測定することによるEC50値に従って評価した。
C2C12細胞(中国科学院細胞バンク、カタログ番号GNM26)を、10%FBSを含むDMEM培養液中で培養し、1週間に2〜3回、1:5または1:10の比率で継代した。継代時、培養液を捨て、5 mLの0.25%トリプシンを用いて細胞層を洗った後、トリプシンを除いた。細胞は、インキュベーター中で3〜5分間消化し、新鮮培養液に再懸濁した。100μLの細胞懸濁液を、5×10
4細胞/mLの密度で96ウェル培養プレートに加えた。培養液は10%FBSを含むDMEMであり、10%FBSを含むDMEM培養液を100μLだけ、96ウェルプレートの外側に添加した。次に、培養プレートを、24時間(37℃、5%CO
2)インキュベーター中で培養した。細胞の接着が観察されたら、培養液を捨て、10%FBSを含むDMEM培養液70μLを各ウェルに添加した。10μLのwnt3a(R&D、カタログ番号5036-WN-010)を、終濃度100 ng/mLで、またSOST(R&D、カタログ番号1406-ST-025)を、終濃度5μg/mLで、それぞれ各ウェルに添加した。試験サンプルは、PBSで異なる濃度勾配に希釈し、異なる濃度の試験サンプル10μLを、培養プレートに添加した。次に、培養プレートを、3日間(37℃、5%CO
2)インキュベーター中で培養した。培養液を捨て、150μLのALP基質を各ウェルに添加し、培養プレートを2時間インキュベーター中で培養した。波長450 nmでのOD値をマイクロプレートリーダー(PerkinElmer、カタログ番号VICTOR
3)で測定し、EC50値を算出した。この結果を表7に示した。
【0137】
結果より、本発明のヒト化SOST抗体Ab-5が細胞に作用する活性は、陽性抗体ロモソズマブの活性に匹敵することが示された。
【0138】
薬物動力学的評価
〔カニクイザルにおけるヒト化抗SOST抗体のT1/2の評価〕
実験で使用した3匹のカニクイザルは、雌性、4〜5年齢、4 kg未満であり、Guangxi Guidong Primate Breeding Development Co., Ltdから購入した。飼育環境:通常の飼育室。カニクイザルを購入した後、各サルは独立したケージで維持し、自由に飲水と食餌をさせた。実験室環境への馴化期間は、温度23〜29℃、相対湿度40〜70%で少なくとも14日間であり、12/12時間周期の明暗サイクル調節を行った。実験開始1日前に3匹のカニクイザルに番号を付けた。実験当日、各カニクイザルに、被験薬物および陽性分子(30 mg/kg)を、8 mL/サル/投与で皮下注射した。
サルは、サル用椅子に固定し、血液を、肘静脈または伏在静脈から採取(毎回約1.5 mLの血液を採取)し、血清を得た後−20℃で保存した。血液採取時間ポイントは、投与前12時間、第1日は投与後1 h、2 h、4 h、8 h、12 h、24 h(第2日)、第3日、第5日、第7日、第14日、第21日および第28日とした。血液サンプルを採取した後、血清中の薬物濃度をELISAで測定し、PK分析を行った。この結果を表8に示した。
【0140】
結果より、ヒト化候補分子(Ab-5)は、インビボでカニクイザルにおいてより長い半減期を有し、陽性分子のロモソズマブの半減期の約2倍であることが示された。
【0141】
インビボでの生物活性評価
〔カニクイザルにおけるヒト化抗SOST抗体のインビボ有効性の評価〕
実験で使用した3匹のカニクイザルは、雌性、4〜5年齢、4 kg未満であり、Guangxi Guidong Primate Breeding Development Co., Ltdから購入した。飼育環境:通常の飼育室。カニクイザルを購入した後、各サルは独立したケージで維持し、自由に飲水と食餌をさせた。実験室環境への馴化期間は、温度23〜29℃、相対湿度40〜70%で少なくとも14日間であり、12/12時間周期の明暗サイクル調節を行った。実験開始1日前に3匹のカニクイザルに番号を付け、次に、麻酔後採血し、血清および血漿を得た。さらに、腰椎および橈骨遠位端の骨塩密度および骨塩量を測定し、得られた値を基準値とした。各カニクイザルに、被験薬物(10、30、60 mg/kgの異なる用量)および陽性分子(30 mg/kg)を、8 mL/サル/投与で皮下注射した。薬物は、月に1回、全部で2回投与した。実験中、投与後第4週および8週において、動物の腰椎および橈骨遠位端の、それぞれ骨塩密度および骨塩量を測定した。実験2か月後、すべての動物は麻酔し、安楽死させた(過剰量のペントバルビタールナトリウムによる)。この後、第2〜第5腰椎および橈骨遠位端の骨塩密度および骨塩量を測定した。
結果を、表9、
図1および
図2に示した。
【0143】
結果より、本発明のヒト化抗SOST抗体のインビボ有効性が、カニクイザルにおいて用量依存性であることが示された。10 mg/kgのヒト化抗SOST抗体Ab-5の有効性は、30 mg/kgの陽性分子と同等であった(
図2)。これは、本発明のヒト化抗SOST抗体の有効性が、サルにおいて、陽性分子であるロモソズマブの有効性の3倍高いことを意味する。同用量を投与した場合、ヒト化抗体のAUC
0-t (mg/mL*day)は22.3であり、これは、陽性抗体であるロモソズマブのもの(9.95)の2倍以上大きい(
図1参照)。
【0144】
溶解性試験
〔ヒト化抗SOST抗体の溶解性〕
ヒト化抗SOST抗体の溶解性を測定するため、順次濃度を上げる抗体Ab-5および陽性抗体ロモソズマブについて、可溶性抗体単量体の量、沈殿、高分子の量を測定した。試験において、抗体の出発濃度は10 mg/mLとし、これはpH 7.4のPBS緩衝液に溶解した。サンプルは、限外ろ過濃縮器(Millipore、Amicon Ultra-15 50K)で、4℃、4000 rpmで遠心した。遠心中、5〜10分間隔でサンプルを採取し、抗体濃度が30 mg/mLおよび90 mg/mLに到達するまで、抗体濃度を測定した。異なる濃度条件下のサンプルを採取し、それぞれSEC-HPLC分析にかけた。この結果を表10に示した。
【0146】
上記の結果より、本発明の抗体濃度が最大90 mg/mLまでの場合、沈殿はなく依然として澄明であり、抗体単量体の量は変化しないことが示された。しかしながら、同一濃度での陽性分子では大量の沈殿が出現し、抗体単量体の量は95.8%から92%に減少した。
【0147】
安定性評価
〔ヒト化抗SOST抗体の安定性〕
本発明のヒト化抗SOST抗体の安定性を測定するため、抗体Ab-5および陽性抗体ロモソズマブを、pH 7.4のPBS緩衝液中に4℃で7日間放置した。安定性を測定するため、2つの方法を用いた。1つの方法は、肉眼で見ることのできる不溶性沈殿の生成量を評価するもので、放置前後での不溶性沈殿濃度の変化を算出するもの;他の方法は、サンプル中の可溶性抗体単量体含量の変化を、SEC-HPLCにより測定するものである。初期の抗体濃度は30 mg/mLであり、この濃度は、陽性抗体が到達し得る最高の可溶濃度であった。この結果を表11に示した。
【0149】
上記の結果より、陽性抗体では19.3%の沈殿が生じ、到達し得る濃度(30 mg/mL)での開始時点では陽性抗体は沈殿しないとしても、放置後7日で、抗体単量体の量の減少が観察されることが示された。一方、本発明の抗体は、沈殿もなく非常に安定であり、溶液は澄明であった。
【0150】
溶解性および安定性の結果を考慮すると、抗体製剤という側面において、本発明の抗体は、陽性抗体より優れた性能を有する。本発明の抗体は、90 mg/mLという高濃度で製剤化できるが安定である。